踵骨脱臼骨折の治療経験
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(2) 271. た.翌日,全身麻酔下に観血的整復固定術をおこなっ. 骨・舟状骨骨折,さらに腓骨遠位端の骨折を認めた(図. た.創外固定を脛骨,踵骨にそれぞれ挿入し,牽引を. 7,8).. 加えたが整復は困難であった.そのため踵骨側はいっ たん抜去した.足底より小切開でエレバを挿入して, てこの原理で整復しようとしたがこれも困難であっ た.転位した骨片を直視下に観察するために腓骨骨軸 から足背前面にカーブするような Ollier 皮切を短縮 した約 4 cm の皮切を加えた(図 2).直下の踵腓靭帯 と腓骨筋腱をそれぞれ腹側と背側によけた.足関節を 内反させ,骨片をエレバで直接的に押し下げて牽引を 加えることで整復位が得られた(図 3).圧着を加え る必要があり同一皮切から外側より中空海綿骨用骨螺 子(キャニュレイティドスクリューⓇ,メイラ)直径 4.0 mm,42 mm(16 mm スレッド)を挿入した.そ の位置で,踵骨側にも骨折部またぐ形で外側よりピン. 図 2 術中の展開写真 円:腓骨 矢印:腓骨筋腱. を刺入し創外固定を締結した(図 4). 結果:術後 2 週間で創外固定抜去し ROM 訓練を開 始した.受傷から約 6 週間で部分荷重開始し,受傷か ら約 3 カ月で螺子を抜去した(図 5).ROM は背屈が 健側 10 度に対して 5 度と若干の制限が残った.足部 外側に軽度の痺れあるも骨癒合は良好であり術後 4 カ 月で社会復帰レベルまで改善した.JOA score は術 前 17 点,術後 4 カ月の時点で 85 点であった(図 6). 症例 2:44 歳 男性 現病歴:トラックの荷台約 1.5 m から転落し足部を 内反するような形で受傷した. 初診時身体所見:患肢外側の腫脹,膨隆を認めた.. 図 3 術中イメージ像 展開部よりエレバを挿入し骨片を直接的に整 復.. 明らかな水泡形成なし. 初診時画像所見:同様に踵骨脱臼骨折に加えて立方. 図 4 術直後足関節単純 X 線正面像,軸位 CCS にて骨片間を圧迫固定.さらに踵骨側にも骨折部またぐ形で 外側よりピンを刺入し創外固定を追加. ― 99 ―.
(3) 272. 踵骨脱臼骨折の治療経験. 治療経過:受傷から 11 日目に外果遠位に切開を加. 開始し術後 4 週間で距踵関節の K-wire を抜去,8 週. え oiller 皮切でアプローチ,脱臼骨片の観血的整復術. 間で踵立方関節間の K-wire 抜去し部分荷重を開始し. を行った.踵立方関節をステイプルで固定,外果を引. た.約 1 年後に腓骨の抜釘を行った(図 10).可動域. き寄せ締結法で固定した.最後に,踵骨下方より距踵. に関しては 1 例目と同様に 5 度の背屈制限が残った.. 間を 2 本の K-wire で固定,踵骨後方より踵立方関節. 歩行自体は問題なく仕事にも復帰したが,第 1 趾~ 3. を 2 本の K-wire で固定した(図 9).早期より ROM. 趾足底に痺れを認め,長時間歩行時の足底の疼痛と. 図 5 術後 3 カ月の CT 像 (a)冠状断,(b)矢状断 関節面の整復,骨癒合が確認できる.. 図 8 初診時時 CT 像 (a)冠状断,(b)矢状断 (a)踵骨外側骨片の立方骨外側への脱臼を認める. (b)立方骨骨折 Sanders: type IIA を認める.. 図 6 抜釘時(術後 4 カ月)の足関節単純 X 線 (a)側面像,(b)軸位. 図 9 術直後足関節単純 X 線 (a)正面像,(b)軸位. 図 7 初診時踵骨単純 X 線 (a)側面像,(b)軸位 (a),(b)Essex-Lopresti: tongue type を 疑 う骨折を認める.. 図 10 抜釘時(術後 10)の CT 像 (a)側面像,(b)軸位. ― 100 ―.
(4) 273. いった愁訴も残った.JOA score は,術前 23 点から 術後 5 カ月で 70 点であった.. 考 察 踵骨脱臼骨折は,1977 年に Biga と Thomine らが 報告し1)5),その後いくつかの報告が散見されるも,そ の数は決して多くはない.過去の報告では徒手的な整 復に関しては偽関節の報告も多く,観血的整復術が必 要とされている.ただし,その固定法に関しては症例 により異なっている.頻度は,踵骨関節内骨折 126 例. 図 11 症例 2 初診時踵骨単純 X 線 側面像 ベーラー角 38 度(白線間)と比較的保たれて いる.. 中 11 例;8.7%,平均 40 歳,手術症例 279 例中 17 例: 6 %,平均 43 歳と比較的稀であり,壮年期に多い特 徴がある.受傷起点は内反位での後足部への軸圧が原 因と考えられている2)6). 踵骨の外側にはいくつかの重要な靭帯組織が存在し ている.その中でも後外側の支持組織としては踵腓靭 帯や距踵靭帯があり,前面には踵立方関節を形成し踵 立方靭帯で安定化されている.前方突起には二分靭帯 が付着している.そのため内向きの受傷ではそれぞれ の靭帯付着部で裂離骨折の危険性がある.踵立方関節 はいわゆる depression type の骨折を認めることが多 い. 診断に関して,大きく分けて 4 つの特徴がある.①. 図 12 参考文献 4 より引用 距骨の内反傾斜を認める(白線).. べーラー角は保たれていることが多い.症例 2 では足 関節単純 Xp 側面像ではべーラー角は保たれているよ うに捉え得る.側面像のみの評価ではなく,3 次元で の画像評価が重要である.特に CT を用いた画像評価 7) が有用である(図 11) .②足関節正面の Xp では距. 骨が内反していることが多く,報告では 17 例中 12 例 に同所見が見られた(図 12)4).これは外果側の支持 組織の破綻によるものであることが容易に想像でき る.整復,骨接合術後の整復位評価に有用な画像とな る.③足関節側面像(踵骨)で関節面が二重に見える (double dencity sign)ことが報告されている7).こ の sign は 16 例中 17 例にみられたと報告があり,感. 図 13 症例 1 受傷時踵骨単純 X 線 側面像 距骨外側の骨片と内側の正常関節面(白線) が二重に見える(double dencity sign).. 度の高い所見であると考える.こちらも①と同様に多 方向での画像評価の重要性を示唆している(図 13). ④腓骨遠位端や踵立方関節にも随伴した骨折をきたし 靭帯の破綻を伴う.隣接する骨の骨折は患者のその後. 血的な整復の阻害因子となることが報告されている7).. の ADL に密接に関わることが予想される.. 欧米ではプレート固定が推奨されているが,日本では. 治療に関して,観血的な整復術は過去の報告でも必. スクリューやピンニングでの固定が報告されている. 須とされることが多い.これは腓骨筋腱の介在が非観. 3)4)7) (図 12) .自験例でも外側小切開での整復,スク. ― 101 ―.
(5) 踵骨脱臼骨折の治療経験. 274. リュー固定,経皮的ピンニングで良好な整復位の保持. 参 考 文 献. が可能であった.固定性においてプレート固定が勝る ことは周知の事実ではあるが,術後の皮膚トラブルは 避けるべき合併症の 1 つである.少なくとも今回の 2 例とも良好な整復位が得られ早期から ROM を開始す ることができた.さらに術後の皮膚トラブルを起こす ことなく,術後も軽度の痺れは残存するも実生活にお いて満足する成果が得られた.改善すべき点として 2 例目に関しては若干の偏平化,足背,足趾の痺れや長 時間歩行時の疼痛が愁訴として残った.関節面でのア ライメントが良好であるが今回のような K-wire だけ の固定では横方向の安定性が不十分であることが容易 に想像できる.そのような意味でも,外側からの載距 突起をとらえるラグスクリュー固定は非常に有効であ ることが示唆された.. 結 語 比較的稀とされる踵骨脱臼骨折を 2 例経験した. 治療法に関してはさらなる検討が必要であるが,受. 1) Biga, N., Thomine, J. M.: Fracture-dislocation of the calcaneus. Apropos of 4 cases. Rev. Chir. Orthop. Reparatrice Appar. Mot., 63:191-202, 1997. 2) Essex-Lopresti, P.: The mechanism, reduction technique, and results in fractures of the os calcis. Clin. Orthop. Relat. Res., 290:3-16, 1993. 3) Ebraheim, N. A., et al.: Calcaneus fractures with subluxation of the posterior facet. A surgical indication. Clin. Orthop. Relat. Res., 377:210-216, 2000. 4) 岩崎英二ら:踵骨脱臼骨折の 1 例.東日本整災会誌, 29:450-453, 2017. 5) JIMENO-VIDAL, F.: Isolated fracture of the sustentaculum tali with outward luxation of the calcaneus. Z. Orthop. Ihre. Grenzgeb., 93:30-46, 1960. 6) Sanders, R., et al.: Operative treatment in 120 displaced intraarticular calcaneal fractures. Results using a prognostic computed tomography scan classification. Clin. Orthop. Relat. Res., 290:87-95, 1993. 7) Schepers, T., et al.: Functional outcome following a locked fracture-dislocation of the calcaneus. Int. Orthop., 37:1833-1838, 2013.. 傷起点からその治療法に関してはいくつかのポイント に分けられることが推測された.. ― 102 ―.
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