卒業論文 2008年2月
レイトレーシングによる形状変動シミュレーションの可視化
鬼頭宏和, 情報文化学部 自然情報学科 複雑システム系, 050400126
本研究では,脊柱特発性側弯症の成因解明のために実施した脊柱有限要素モデルを用いた椎体の成長 に伴う非線形座屈解析の数値結果から,形状と応力の変動過程を仮想現実感のある動画で可視化する プログラムを開発した.脊柱有限要素モデルは 6 面体,5 面体,4 面体要素で構成されている.このモ デルの表面を抽出し,平面多角形により形状の静止画を作成した.さらに,その平面に応力に応じた 色を配置することで応力状態を表現した.その静止画を連続して描画することで動画を作成した.本 研究では,仮想現実感を得るために,レイトレーシング法を用いた POV-Ray を使用した. キーワード: 特発性側弯症, 成長変形, 可視化, 有限要素モデル, レイトレーシング, 動画, POV-Ray 1 はじめに3D-CG (3 Dimensional Computer Graphics) は数値シ ミュレーションの結果を可視化する上で不可欠な技術と なっている.その結果が時間と共に変動する場合には,動 画によってその結果を仮想現実感を伴って理解すること ができる.近年,ボランティアプログラマのチーム POV-Ray Teamによって開発が進められている POV-Ray (Per-sistance of Vision Ray Tracer)は,それを実現するための 有力なツールとなっている. 一方,我々の研究室では,脊柱特発性側弯症の成因解 明を目指して,大規模な脊柱有限要素モデルを用いた成 長シミュレーションを行っている.そこで得られた数値 結果によれば,椎体の成長に伴って,最初は胸椎の後弯 が減少し,その後,極限点型の座屈が生じ,側弯形態の 変形に飛び移り,さらに成長が進むと安定な経路に戻る といった複雑な動きをすることが確認された.しかしな がら,特定の点に注目した経路図や変形図だけではその 動きを想像することは難しい. 本研究では,仮想現実感を伴ってその数値結果を理解 するために,レイトレーシング法を用いた POV-Ray を 用いて,動画を作成できるプログラムを作成した. 2 脊柱有限要素モデル 成長シミュレーションに用いた脊柱有限要素モデルを図 1に示す.このモデルは,節点数 69658,要素数 59356, 6面体,5 面体,4 面体要素の構成比はそれぞれ 88.35%, 11.63%, 0.02%である.本研究では,表面を形成する 4 角形あるいは 3 角形平面で 3 次元形状を構成した. 3 可視化の方法 本研究では,青山による成長シミュレーションの数値 解析結果を用いて,Pov-Ray により形状と応力の変動過 x1 x2 x3 x2 x1 x3 x1 x2 x3 Fig. 1 脊柱有限要素モデル Fig. 2 椎体の成長に伴う脊柱有限要素モデルの形状と応力変 動の一コマ 程を動画で可視化するプログラムを開発した.Pov-Ray では,光源情報,視点情報,物体情報を与える必要があ る.光源情報,視点情報は視聴者が設定することにして, 物体情報の作成が主なポイントとなる. 3.1 静止画の作成 成長履歴のステップごとに,有限 要素モデルの表面を構成する要素の面とその面を構成す る節点の座標を抽出し,Pov-Ray の関数 polygon を用い て,形状情報を作成した.なお,節点番号は,表面の節 点のみを抽出することから,欠番の多い並びとなってい る.本研究では,欠番のない並びに修正する処理を施し た.また,有限要素表面の 4 角形は平面ではない場合が あることから,三角形に分割した. 応力は体積応力,ひずみエネルギー密度あるいは Mises 応力を色情報に置き換えて,Pov-Ray の関数 texture を 使って節点ごとに割り当てた. 3.2 動画の作成 Pov-Rayを用いた動画の作成方法と して,2 つの方法が考えられる.一つは,変動前と変動 後の物体情報を与えて,clock 変数を用いた補完情報から 静止画の並びを作り出す方法であり,もう一つは,時間 ステップごとに物体情報を与えて静止画の並びを作る方 法である.本研究では,時間ステップごとに数値解析結 果が用意されていることから,後者の方法を用いた. 4 動画の作成例 本研究で開発したプログラムを用いて,成長シミュレー ションの数値解析結果から作成した動画の一コマを図 2 に示す.