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初任者研修実施についての一考察 ―初任者研修実施校校長の視点から―

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(1)初任者研修実施についての一考察 −初任者研修実施校校長の視点から−. 時田詠子. 群馬大学教育実践研究 第 26 号. 群馬大学教育学部. 169∼175 頁. 別刷 2009. 附属教育臨床総合センター.

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(3) 169. 群馬大学教育実践研究 第 26 号 169 ~ 175 頁 2009. 初任者研修実施についての一考察 ―初任者研修実施校校長の視点から― 時. 田. 詠. 子. 早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程 (2008 年 10 月 31 日受理). 1 はじめに. ように関わっているのだろうか。「小・中学校初任者 研修の手引き(2)」や筆者の経験によると、校長は主に. (1)問題の所在. 事前には初任研年間指導計画の作成、研修過程では経. 初任者研修(以後「初任研」と記す。)制度が、1989. 営方針、職務上の心構えについての講話、事後は初任. (平成元)年に開始されてから、約 20 年が経とうと. 研年間指導報告の作成等に関わることが多い。 そこで、. している。筆者は本制度の創設まもない頃から 1997. 本稿の目的は、1)初任者の力量について初任者を預. (平成9)年度までに3名の初任者の指導教員として. かる校長がどのように意識しているかを探ること、2). 初任研に関わってきた。当初は先行的な実践研究が少. 初任研実施についてのよい点と改善すべき点を探るこ. なく、指導教員として参加した研修会でも疑問や課題. と、1)と 2)の課題を踏まえ、3)初任研実施への提. ばかりを発表し合ったのを覚えている。3人目の初任. 言をすることとした。. 者を迎えた 1997(平成9)年度には、本制度の趣旨が. 本稿の研究方法は、主に校長(2006 年度G県小中学. 各学校に概ね理解され、研修会でも各学校の有意義な. 校初任研実施校)への質問紙調査であるが、それを補. 取組が報告されるようになった。しかし、研修内容や. 完するものとしてインタビュー調査も行った。. 時間数の縛りがきつくなったり、関係書類が質量とも に増え負担に感じたりしたことも記憶にある。 筆者は、本学教育学研究科にて拙稿「義務教育現場. 質問紙調査内容は「校長先生ご自身が初任者だった 頃と今の初任者を比べた時、 教師の力量の面から見て、 それぞれのよい点と改善点は何だと思いますか。具体. で求められる教員養成課程における力量形成の在り. 的に記述して下さい。(A4判大用紙1枚)」である。. 方」(2008 年1月)をまとめた(1)。その際、初任研実. 広く様々な意見を収集するため、自由記述による回答. 施校校長が初任研制度を積極的に評価しつつも種々の. をお願いした(3)。調査用紙の配布は、初任研がG県総. 要望を持っていること、初任研がなかった頃のよさを. 合教育センターで行われた際(2006 年 12 月)、初任. 求めていること等が窺えた。これは教員の力量形成の. 者を通して初任研実施校校長先生に手渡していただく. 在り方を探ろうとした筆者にとっては思わぬ副産物で. 方法をとった。さらに調査用紙の回収は、筆者宅への. あった。本稿はその際収集したデータを用い、上記拙. 郵送とした。2006 年度G県小中学校初任研実施校は. 稿で論じきれなかった点も含めて改めて校長の視点か. 119 校であり、うち 100 校の校長先生からの質問紙調. ら初任研を探ろうとするものである。. 査の回答が得られた(回収率 84%)。 また、インタビュー調査内容は「初任研を実施する. (2)研究の目的と方法. 上で、初任研のよい点と改善点は何だと思いますか。」. 初任研で初任者の指導に最も直接関わるのは指導. であり、筆者が調査対象者の勤務校に出向き(2007. 教員であるが、校長の視点つまり経営者の目から初任. 年夏季休業中)、直接校長先生に回答を伺った。調査. 研を見直すことは意義深いと思われる。ところで、校. 対象者抽出方法は、前述拙稿テーマである教師の力量. 長は経営者として初任研の事前事後、研修過程でどの. に対する捉え方(4)や校種の偏りが無いこと、質問紙調.

(4) 170. 時田詠子. 査回答用紙にて特徴的かつ具体的な記述のある校長先. 等である。. 生であることを視点に小学校長2名、中学校長2名を. 読売新聞教育取材班(2006)は、「文部科学省によ. 抽出した。さらに、質問紙調査及びインタビュー調査. ると公立学校に 2004 年度に採用された教師 19,565 人. データの分析手法は、自由記述の様々な意見を同種の. のうち、勤務態度などを見極める1年間の条件付採用. 内容毎に手作業でまとめた。実際の回答数も後述の表. 期間後、前年より 80 人多い 191 人が採用されなかっ. 内に括弧でその人数を示すようにした。. た。このうち、精神疾患を含む病気で退職したのは 61 人。死亡は5人で、そのうち4人までが自殺だった。」 と述べている(8)。夢一杯で着任した初任者が、リアリ. 2 初任者の力量についての校長の意識 現場の校長が初任者に求める力量を述べる前に、初. ティ・ショックをうまく乗り越えられず、心の病にな. 任時代を含む若い教師に必要な力量、初任者の抱える. り退職するというケースも増えている。つまり、最近. 生の問題から考えられる必要な力量について、先行研. の初任者には先行研究で挙げられた指導面での力量だ. 究より挙げたい。. けでなく、精神面での強さもさらに求められているこ. 木原(2007)は、初任者の力量形成の第一の指標は. とが窺える。. 「子どもを動かし統制する技術」、「授業の円滑な遂. では、初任研実施校校長は昔(校長が初任者だった. 行を達成する形式や技術」としている(5)。また、天笠. 頃)と今の初任者の力量をどう見ているのだろうか。. (1987)は、「若い教師には情熱の上に自らの思いを. それについて質問紙調査を行った結果が表1及び表2. 子どもに伝え、子どもの思いを汲み取る適切な指導技. である。なお、文部科学省平成 16 年度学校教員統計. 術やそれを支える専門的知識が必要である。」と述べ. 調査に拠ると校長が初任者だった頃とは今から約 30. ている(6)。村山・氏家(2005)は、初任者の抱える問. 年前であり、初任研が無かった時期である。また、校. 題から何を学んだかについて初任者へのインタビュー. 長から見た昔と今の初任者を比較する意図は、初任研. よりまとめている。そこでは、子ども理解や集団を動. の有無に拠り、初任者の力量面でのよい点と改善すべ. かす力、授業力、保護者対応力の不足が問題として挙. き点の相違が見られる可能性があると考えたからであ. げられている(7)。. る。ただし、ここで気を付けなければいけないことは、. 以上、先行研究より、初任者を含む若い教師に求め られる力量は教職への情熱を基盤とした子どもを理解. その昔と今の相違は初任研の有無だけが要因ではない ということである。. し動かす力、保護者への対応力、指導技術、専門知識. 表1 (注)<. 校長が初任者だった頃の初任者の力量面でのよい点と改善すべき点. >内の数は、人数。<. >のない意見は1人の意見。複数回答あり。. よい点 (1)先輩から積極的に学び、仕事や研修への意欲態度に優れ 使命感があった。<54人> (2)子どもとの触れ合いに基づく学級経営ができた。<23人> (3)試行錯誤しつつ初任者のよさを生かす指導ができた。 <18人>. 改善すべき点 (1)指導が、独善に陥りがちだった。<4人> (2)服務規律の面でルーズだった。<2人> (3)その他. <2人>. ○組織人としての自覚や行動に欠けていた。 ○初任研が整備されておらず、新任の時から一人. (4)自主的で、生きて働く力があった。<9人> (5)その他. N=100. <7人>. 前の態度をとっていた。.

(5) 171. 初任者研修実施についての一考察. 表2 (注)<. 校長から見た今の初任者の力量面でのよい点と改善すべき点. >内の数は合計人数、(. )内の数は内数で(. )なしの意見は1人の意見。複数回答あり。 N=100. よい点 (1)指導力がある。<26人>. 改善すべき点 (1)子どもと向かい合う力や接し方<11人>. ○幅広い知識と理解力を持っている。(7). ○子どもの心を感じ取るのが難しいようだ。(5). ○臨時経験のある初任者は、力があり即戦力となる。(6). ○子どもと真剣に向き合い、自分らしく課題を解. ○教科の指導内容に関して高い能力を有している。(5) ○指導力があり、一通りのことはこなせる。(5) ○初任研により指導技術を身に付けている。礼儀や服務 規律がしっかりしている。野球の投手に例えるなら、 小さくまとまって迫力に欠けるが、コントロールが良 く、プレートさばきも良く、即戦力的。. 決し、自分を向上させようとする力が弱い。(3) ○生徒指導がうまくできない。(3). (2)熱意や使命感の不足<9人> ○私事を優先し生活を楽しんでいるが、周囲に貢 献しようという態度に乏しい。(2) ○情熱や自信等人間的魅力にやや乏しい。(2). ○指導案の立て方等文章力がある。. ○使命感や協働性・協調性を高めたい。. ○知識が豊富で失敗が少ない。. ○人の話は素直に聞くが、実践への意欲に欠ける。. (2)まじめに意欲的に指導、仕事をする。<14人>. ○臨時経験者で新鮮な気持ちに欠ける者がいる。. ○まじめに自分の仕事にあたっている。(6). ○楽な方に流れやすい。. ○素直さや謙虚さがある。(4). ○自己研修(自費)の意欲に欠ける。. ○先輩の言葉を忠実に実行しようとする。(2) ○授業改善、学級経営への意欲が高い。(2). (3)今日的な課題に対応する力がある。<9人> ○パソコン等新しい教育機器をうまく活用できる。(8) ○英会話力がある。. (4)自信があり、自分の考えを主張できる。<6人> ○自分の考え、行動についてはっきり発言できる。(2) ○コミュニケーション能力や課題への対応力が高い。(2) ○自信を持って発言したり授業を行ったりしている。 ○考え方がしっかりしている。. (5)子どもへの愛情がある。<3人> ○子どもへの愛情が深い。(2) ○子どもを育てようという意欲が見られる。. (6)その他<7人> ○平均的でおとなしく、そつなく行動できる。(2) ○若々しく学校全体が生き生きする。(2) ○物事にあまりこだわらない。 ○精神的なゆとりがある。. (3)指示待ち傾向がある。<5人> ○自立できない面があり、責任感に乏しい。(2) ○自力で考え実行していく野性味が欲しい。(2) ○様々なことに知的好奇心を示すことが弱い。. (4)先輩から学ぶ姿勢が弱い。<4人> ○他教員のよさを吸収する意識が薄い。(2) ○新卒の初任者には、プライドが高く謙虚さに欠 け、先輩から学ぶ姿勢が少ない者がいる。(2). (5)体験不足<3人> ○直接体験が少なく、教師自身が知らないで、指 導に臨むことがある。(2) ○長期休業中に多くの体験研修をして欲しい。. (6)人間性についての改善点<2人> ○人間が小さくまとまっている。 ○教科指導や生活指導だけでなく、教師の人間性 が重要である。. (7)その他<3人> ○一般常識が不足している。(3). ○常識がある。. 校長の語る「昔と今の初任者の力量」は、校長のキ. ついては比較的高く評価されている反面、コミュニケ. ャリアコース、地域性、経験年数等に拠り異なり、主. ーション能力、熱意・使命感、学ぶ姿勢など、人間力. 観的な面があることは否めない。ただ、学校評価や人. に関わる力量について校長は課題を感じていることが. 事考課制度が導入され出した今、校長が学校や職員を. 認められる。. 客観的に見ようとする意識が強まっていることは事実. 先行研究等では、今の初任者には情熱を基盤とした. だと思われる。表1及び表2を整理したのが表3であ. 専門知識や指導技術面及び精神面での強さを求める傾. る。表3より、昔の初任者のよい点が今の初任者に一. 向があった。しかし、現場の校長は、今の初任者の指. 部欠けていること、昔の初任者の改善すべき点が今の. 導技術には一定の評価をしており、熱意・使命感、学. 初任者のよい点にほぼなっていることが窺える。すな. ぶ姿勢等の昔の初任者がより強く持っていた力量を期. わち今の初任者は授業、学級経営に関わる指導技術に. 待していることが窺える。.

(6) 172. 時田詠子. 表3 校長から見た昔と今の初任者の力量面での比較 力量面でのよい点 昔の初任者 (約30年前). 今の初任者. 力量面での改善すべき点. ○先輩から学び、仕事や研修への意欲態度、使命感 が ○教科指導や生徒指導、学級経営の知識が不十分な あった。 まま教壇に立っていた。 ○子どもとの触れ合いに基づく学級経営ができた。 ○系統だった研修が少なく、研修内容をあまり身に ○初任者が試行錯誤し、初任者自身のよさを生かし 付けていなかった。 た子どもへの指導ができた。 ○指導力があり、意欲的に仕事に取り組む。 ○今日的な課題に対応する力がある。 ○自信があり、自分の考えを主張できる。. 3 初任研実施についてのよい点と改善すべき点 校長から見た昔と今の初任者の力量は時代の変化. ○子どもと向かい合う力や接し方に問題がある。 ○熱意や使命感がやや欠如している。 ○受身的で、指示待ち傾向がある。 ○先輩から学ぼうとする姿勢が弱い。 ○体験が不足し、人間性や一般常識に課題がある。. そのよさが初任研の中に自然に定着し、気付きにくく なったからだと思われる。. 等に拠る面があるが、初任研実施に拠る面もあると思. 表3と表4を比べると、初任研の書類や校外研修日. われる。そこで、初任研実施におけるよい点や改善す. が多いため、子どもと向き合う力が不足する、計画に. べき点について校長に質問紙調査(自由記述)及びイ. 基づき与えられた研修のため受身的かつ指示待ち傾向. ンタビュー調査を行った結果が表4である。改善すべ. があるなど、初任研実施における改善点と今の初任者. き点については多くの意見があげられたので、類似の. の力量面での改善点がリンクしている傾向が見られ. ものはまとめて整理した。よい点が少なかったのは、. る。. 表4 (注)<. >(. 初任研実施におけるよい点と改善すべき点. )内の数は、人数。(. )のない意見は 1 人の意見。複数回答あり。. よい点 ○力量を高めるための初任研が充 実している。(9) ○指導教員を中心に初任研校内サ ポート体制が整っている。(6) ○初任研が充実しているので、やる 気のある者は、職能成長すること ができる。(4) ○研修指導体制が充実しているの で、昔の初任者より指導力が身に 付く。(3) ○初任研が充実しているので、知識 ・理解・技能を有している。(3) ○後補充の制度は安心できる。(2) ○初任者同士の学び合いが研修の 中に確保されている。. N=100. 改善すべき点 (1)研修に追われ負担が大きいので精選すべきである。<17人> ○初任研に時間を取られ、ゆとりがない。(5) ○研修に追われ、自分の個性が出しにくい。(3) ○初任研の内容が盛り沢山なので、1年間早期決戦型でなく2~3年にわたり研修した 方がよい。(3) ○初任研のレポートが多く、負担過重である。(3) ○研修に追われ周囲への配慮がなくなったり自律神経失調症になってしまう初任者が いる現状を考えるべきである。(2) ○初任研の内容は網羅的でなく絞った研修をすべきである。. (2)子どもとの触れ合いの時間を確保すべきである。<13人> ○初任研の日数を減らし、子どもとの時間や教材研究の時間を増やすべきである。(10) ○校外研修が多すぎるので、校内での研修を多くすべき。(3). (3)受身的な研修にならないようにしたい。<6人> ○受身的な教師の育成にならないとよい。(5) ○計画された初任研だけでなく、初任者の自己課題を現場職員に問いながら解決してい くことが必要。. (4)事後の報告・連絡が困難である。<3人> ○初任者だけでなく指導教員も報告書作成や研修があり、双方が書類を通したやや事務 的な人間関係となっている。(2) ○報告・連絡において、初任研の指導教員の負担が大きい。. (5)その他<14人> ○その他 ・学ぶ機会が十分にある。 ・多くの指導資料があり、教材研 究がしやすい。. ○初任研にお金をかけすぎる。(2) ○会議で積極的に自分の意見を言って欲しい。(2) ○幅広い教養と常識、教科指導力をもっと高めたい。 ○学校組織での対応が強調され、初任者が自分自身で何とかしようという教師自身の生 きる力が弱まっている。 ○教育実習の経験が指導に生かされていない。 ○初任者が少なく横の繋がりが取りにくい。 ○児童の問題行動の多様化や保護者の価値観の多様化に伴い、児童や保護者への対応力 を求めたい。 ○試行期間を3年にし、向いてない人はやめさせるべきである。教育実習の評価を採用 試験に活用すべきである。 ○その他(4).

(7) 初任者研修実施についての一考察. 173. 昔と今の初任者の力量形成の違いは初任者を取り. った事例」「我が子中心の保護者が増え、初任者への. 巻く環境の違い、例えば初任研の有無、人間関係の結. クレームが多く寄せられるようになった事例」「初任. びつき、保護者と学校との力関係、学校評価の有無、. 者に対しての全職員による指導態勢の弱体化、ことに. 様々な社会の要請等に影響される傾向がある。校長へ. インフォーマルな指導が少なくなってしまった事例」. のインタビュー調査では、「今の初任者は子どもとの. 等があげられた。インタビュー調査及び質問紙調査、. 触れ合いが少ないせいか子どもを動かす力に欠け、初. 筆者の経験も踏まえ、昔と今の初任者を取り巻く環境. 任者が威圧的に従わせようとしたことで子どもとの信. をイメージ化すると図1のようになる。. 頼関係、ひいては保護者との信頼関係が揺らいでしま. 図1より、昔の初任者を取り巻く環境については、. 実施後の報告書の提出が義務付けられている。研修に. 学校内では初任研がない分、全職員で初任者を育てよ. 関わる書類は多く、負担を感じる初任者や指導教員も. うという体制があったことが窺える。指導教員的な存. いるが、それにより確実に研修が推進されているとも. 在はいたが、今のように固定的な指導教員はおらず、. 言える。直接初任研に係わらない職員は一歩ひいて初. 指導すべき点に気付いた教員が指導できる雰囲気があ. 任者に接したり、指導教員に遠慮し指導すべき場面で. った。従って、ある面今に比べ同僚性があったとも言. も指導を控えることもある。. える。また、保護者や地域社会も温かく初任者の成長. また、各学校間の初任者への指導は昔に比べ質や量. を見守る態勢があった。子どもと初任者の触れ合いに. がそろってきたと考えられる。事実、初任研のよい点. ついては、授業以外に休み時間や放課後の時間も子ど. について、ある校長は、「初任研により初任者は指導. もと遊んだり話したりするゆとりがあった。授業で学. 技術を身に付けている。礼儀や服務規律がしっかりし. 習内容が身に付かない子どもがいれば、「残り勉」と. ている。野球の投手に例えるなら、小さくまとまって. 称し子どもを放課後残し、分かるまで教えられる時間. 迫力に欠けるが、コントロールが良くプレートさばき. 的余裕があった。そんな中から、子ども理解が図られ. も良く、即戦力的である。」と、また、補助的に行っ. 次の日の授業に繋げることができた。. た指導教員へのインタビューで、ある指導教員は「初. 今は初任研制度に則って経験豊かな指導教員によ (9). 任研は深く大きな失敗を防ぐことができる。」とも述. るマンツーマン指導が行われている 。それは綿密に. べている。これらの意見より初任研は、教員として普. 立てられた研修計画に基づき実施され、 計画書の提出、. 遍的なニーズ、そして即戦力というニーズには、応え.

(8) 174. 時田詠子. る制度と考えることができるかもしれない。. 職員は、全職員で初任者を育てるという意識が低かっ たり、指導教員に遠慮して初任者への指導を控えたり. 4 初任研実施への提言. することがある。管理職や指導教員は、全職員が共通. 校長からみた、昔の初任者に比べて今の初任者に不. 理解の下、全職員で初任者を育てる学校風土の醸成や. 足している力量、初任研実施における改善すべき点を. 体制づくりをするとともに、初任者が全職員から学ぶ. 鑑み、次の7点を提言としたい。. 姿勢を持つよう、指導したい。. (1)学校経営に生かす初任研. (5)初任者と指導サイドの人間関係作りの重要性. 初任研をお荷物と受け止める校長もいる。しかし、. 最近の初任者は、本心をなかなか打ち明けず、自分. 学校経営の核の1つとして、全職員が積極的前向きに. でなんとか問題を処理しようと背負い込み、その問題. 関われる学校態勢を整えれば、学校のお荷物どころか. が大きくなってから、管理職や指導教員等が気付くと. 学校の活性化に繋がる。また、校長は初任研計画書や. いう傾向がある。着任当初、指導サイドも初任者の気. 報告書の確認、講話だけでなく、自ら参観指導(初任. 持ちが読めず、 腫れ物にでも触るような対応だったり、. 者の授業を見て指導助言すること)を行ったり、示範. 逆に高レベルな要求を強いてしまったりすることもあ. 指導(自らが手本となるような授業を初任者に見せる. る。管理職や指導教員は、まず、初任者と全職員が胸. こと)を行ったりするなど、必要に応じて初任者に直. 襟を開き、温かく前向きな人間関係の構築に努力する. 接関わることも重要であろう。そんな校長の姿勢が全. ことが重要であろう。. 職員で取り組む初任研を創ることに繋がると考える。 (6)初任者としての基礎基本と自主性の重視 (2)研修内容や提出書類の精選. 初任者全員が同じ研修内容をこなすことは、同じよ. 系統だった研修ができる初任研は初任者自身の力. うな考えを持つ個性に欠ける初任者を生むことに繋が. 量アップに繋がるが、研修内容や形式的な提出書類が. るというネガティブな考え方もあるが、一方大きな間. 多過ぎるというデメリットもある。初任者が消化不良. 違いを避け初任者の質を揃えたり、初任者の基礎基本. をおこし、初任研と子どもへの指導の双方が中途半端. を徹底したりするというポジティブな考え方もあろ. となってしまう初任者も一部いる。そこで、校外や校. う。従って、決められた研修内容だけでなく、初任者. 内の研修内容についての精選及び提出書類の精選が必. の自己課題等を一層研修内容に加え、初任者の裁量幅. 要であろう。. を広げたい。それがやらされる研修でなく、自らやる 研修となり、指示待ち傾向や受身がちな初任者を減ら. (3)子どもに寄り添いながら学ぶ初任者. すことに繋がるであろう。. 初任者が学級をあける校外の研修が年間約 25 日間 と多く、総合教育センター等で学んだ理論や技術を子. (7)養成教育と現職教育との緊密な連携を図った研修. どもの前で実践化する時間が少ないという声が多かっ. 計画の改善の必要性. た。初任者は子どもとの触れ合いの中で理論と実践が. 養成課程で学習した「学習指導要領」を初任者研修. 融合できることを実感しながら成長する。初任者が授. で再度行ったり、敢えて1年目の忙しい時期に社会貢. 業だけでなく休み時間等も、子どもに寄り添い、試行. 献活動を行ったりするなど、研修時期を改善した方が. 錯誤を繰り返しながら学ぶ昔の学校のよさを取り戻す. よいものがある。それには、養成現場と教育現場と教. ことも必要であろう。. 育行政の3者が緊密な連携を図り、3者のよさが機能 するより効果的な研修計画を作成することが重要であ る。. (4)指導教員からだけではなく同僚からも学ぶ初任者 指導教員がマンツーマンで指導する初任研では、計 画的・具体的な指導ができる。反面、直接担当しない. 5 おわりに 本稿では、初任研実施校校長の目を通した、初任研.

(9) 175. 初任者研修実施についての一考察. 実施についての一考察を行った。校長は初任研制度実. みが得られるものと思っていたが、初任研実施面でのよ. 施のプラス面を評価しつつも、よりよい初任研に向け. い点と改善点も多く寄せられたことは意外であった。実. ての改善を要望している。特に、初任研がなかった昔. 施校校長の初任研実施についての関心が高いことが窺わ. と初任研が実施されている今を身を持って体験してい. れる。. る校長は、昔のよさでもある校内で初任者を育てるこ. (4)拙稿(2008)では、教師に求められる力量を 30 の小項目、. とや書類でなく生の触れ合いの中から初任者を育てる. 例えば、ア教科に関する知識技能、……、シ集団を動か. ことを重要視している。「もっと現場に任せて欲し. す力、……、テ使命感、……ホ特別支援教育への理解力. い。」「現場での実践の中で初任者は成長する。」と. とした。それらをまとめ、4つの大項目「授業力」、「学. いう思いがあるのかもしれない。そんな校長の要望を. 級経営能力」、「人間力」、「現代的な課題への理解力」. 受け入れ、初任研担当指導主事の話によると、G県総. と定義した。それらの項目は当然、養成段階、現場段階. 合教育センターも校外研修日数及び研修内容、提出書. の両方で学ぶべきであるが、30 の小項目毎に尋ねた場. 類の精選・簡素化の方向に動いているようである。. 合、養成段階に力点を置く傾向がある者と現場段階に力. 初任研創設当時、校内の研修は校内指導教員が担う. 点を置く傾向がある者とがいることが分かった。そこで、. ものであったが、現在では拠点校指導教員と校内指導. 研究の客観性を保つため、養成段階に力点を置く傾向が. 教員の2人体制による初任研が半数を超えている。ま. ある校長2名、現場段階に力点を置く傾向がある校長2. た、初任研は校長だけでなく指導教員を中心とした全. 名を選んだ。. 職員が担うものであるから校長の視点だけではなく、. (5)木原成一郎(2007)「新任教師の抱える心配と力量形成」. 指導教員、直接指導を受ける初任者、さらに広く教育. グループ・ディダクティカ編『学びのための教師論』、. 委員会担当者、教員養成課程を担当する大学教員の視. pp.29-55. 点から研究することも重要であろう。 そこで、今後の課題とすると 1)校長以外の当事者 の視点から初任研実施についての追究、2)拠点校指 導教員と校内指導教員の連携、3)拠点校方式と従来 方式のよい点や改善点、4)近県や全国的な初任研実 施の現状と課題の追究等があり、さらに研究を深めた い。. (6)天笠茂(1987)「若い教師の成長とその条件」エイデル 研究所『若い教師の力量形成』、pp.2-22 (7)村山士郎・氏家真弓(2005)『失敗だらけの新人教師』 大月書店 (8)読売新聞教育取材班(2006)『教育ルネサンス教師力』 中央公論社、p.119 (9)伊豆倉哲(編集委員)(2006)「内外教育 2006 年 11 月 7日号」、pp.2-4 によると 2005 年度小学校で拠点校方. 注及び参考文献. 式をとっていたのは、全体の 75.7%(前年比 20.2%増)、. (1)拙稿(2008)群馬大学大学院教育学研究科(山崎雄介先. 中学校は 73.7%(19.0%増)であり、急速に拠点校方式が. 生ご指導)。サブタイトルとして「現場教員・学部学生. 増加している。本稿では拠点校指導教員と校内指導教員. ・大学教員が初任者に求める力量のずれに焦点をあてて」. を区別して論じてはいない。. を掲げた。 (2)群馬県教育委員会編(2007)『平成 19 年度小・中学校初 任者研修の手引』、p.49. 謝辞 本研究にあたり、質問紙調査やインタビュー調査に御協力. (3)実際の校長先生への質問紙調査内容は、3つであり、①下. 下さった 2006 年度G県初任研実施校の校長先生方、指導教. の注(4)で述べる 30 の小項目に分かれた教師の力量を大. 員の先生方、G県総合教育センター初任研担当指導主事の先. 学と現場のどちらで身に付けるべきか、②昔と今の初任. 生におかれましては、お忙しい中ご丁寧に御回答をいただ. 者の力量の違い、③現場体験に対する感想であった。筆. き、深く感謝致します。. 者は②の質問において初任者の力量面についての回答の. (ときた えいこ).

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