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在宅脳卒中後遺症者の心理的適応

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Academic year: 2021

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在宅脳卒中後遺症者の心理的適応

冨 佐 江

現在, わが国の脳血管疾患患者数は年毎に増加してい る. したがって今後, 施設, 在宅で生活する脳卒中後遺症 者のために, 質の高い やかで生きがいのある生活を実 現させる努力が必要とされる. リハビリテーションの目 的の一つは「社会参加」や「地域再定住」である.社会参 加には, 全人間的観点から, 障害の受容を含む心理社会 的観点の重要性は従来から注目されてきた. しかし, 脳 卒中後遺症者が「社会参加」するために,QOL,心理的因 子, 疾患の特性や ADL などの能力低下の要因がどのよ うな因果関係にあるのか, また, 医学的リハビリテー ションの役割については明らかにされていなかった. 一方,心理社会的な調査では,精神的状態 (情緒.知的), 社会的人間関係, 経済的状態, 自覚的 (主観的) 康状態 などの質問紙に回答するためには, 一定水準以上の認知 機能が必要とされる. QOL の尺度や, 心理尺度は, 一般 社会人, 学生, 一般高齢者や, 高血圧, 糖尿病などの慢性 疾患患者のために開発されたものが多く, 高次脳機能障 害を伴うことが多い脳卒中後遺症者に対して, これらの 尺度を 用した場合の信頼性については十 な検討は行 われていなかった. したがって, われわれは, 第一に在宅 脳卒中高齢者を対象に, 高齢者, 障害者の評価に用いら れている評価尺度の信頼性を検討した. その結果, 生活 満足感」, 不安」・「うつ」「自尊感情」「 康関連 QOL の 領域」について,失語,痴呆を除く対象者に対して信頼性 が確認された. 次にわれわれは, 視覚障害者の心理適応の評価に用い られる Nottingham Adjustment Scale Japanese Version (NAS-J) を用いて, 在宅脳卒中後遺症者を対象に再テス ト信頼性を検討した. その結果, NAS-Jは良好な再テス ト信頼性を示した. 内的整合性では, ローカス・オブ・ コントロール」の領域を除いて良好な内的整合性を示し た. 以上の予備研究を踏まえ, a 在宅脳卒中後遺症者の心 理的適応に関する心理的因子と疾患の特性の諸側面を特 定すること,さらに,b 社会参加にどのような心理的な因 子が関わるのかを明らかにし, c そこに医学的リハビリ テーションがどのように介入できるのか検討することを 目的とした. 具体的には, The Nottingham Adjustment Scale Japanese Version (NAS-J) を用いて①在宅脳卒中 後遺症者の心理的適応と ADL, 経過年数の関係を示す 基本モデルと, ②心理的適応と社会参加の関係をしめす 心理社会モデルの 2つのモデルを構築し, 共 散構造 析によりその妥当性の検証を行った. 対象者は, S市内の 3つの病院を退院し, 在宅生活を 送っており, 失語, 痴呆のない 151人の在宅脳卒中後遺 症者であった. 平 年齢は 63.8歳, ADL は, 80%が食事, 起き上がり, 整容動作が自立しており, 最も難しい動作 である入浴は 60%が自立しており, 比較的自立度が高い 集団であった. 2つのモデルの構築と共 散構造 析に おける潜在変数を次のように仮定した. 行動主体とし ての自己」は「ローカス・オブ・コントロール」「自己効 力感」の観測変数, 内的自己価値」は, 不安,うつ」「自 尊感情」の観測変数, 障害の認容」は「障害の受容」「障 害に対する態度」のそれぞれの観測変数を用いた. 次に, 社会参加を代表するものとして, 社会活動」と「役割遂 行」の潜在変数を用いた. 社会活動」は, 老研式活動能 力指標の「知的能動性」「社会的役割」を観測変数とした. 役割遂行」は,SF-36の「身体役割」[精神役割]を観測 変数とした. (図) 59 Kitakanto Med J 2007;57:59∼60 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科作業療法学専攻 平成18年11月1日 受付 論文別刷請求先 〒371-0034 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科作業療法学専攻 外里冨佐江

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検証の結果, 2つのモデルの妥当性は証明された. すな わち, 将来の役割に対するコントロール可能感や成功可 能感が高いほど自 に対する自己価値が高く, 不安やう つ傾向が低く, 障害に対して肯定的であった. ADL の 獲得は, 具体的に社会参加に結びつく効果と, 個人の心 理面に影響を与え, 自己効力感, 自己価値を高めながら, 行動を変容させ, 社会参加を促進する効果があることが わかった.さらに「価値観の転換」を伴うとされた「障害 の受容」は, 自尊感情」との密接な因果関係が明らかに されたが, 直接社会参加に影響していなかった. 社会参 加を推進するためには, 内的自己価値」や「行動主体と しての自己」を高めるような働きかけが必要であること がわかった. 本研究の限界としては, 在宅脳卒中後遺症者のほぼ半 数が 65歳以上で高齢であったこと, ADL の自立度が高 かったことが挙げられる. 意義としては, 次の 3点があ る. 第一点は本邦で初めて在宅脳卒中後遺症者に対して, 長く論議されてきた「障害の受容」を含む心理的適応を 実証的に明らかにしたことである. 第二点は, 在宅脳卒 中後遺症者を対象として心理的適応と, ADL, 社会参加 の関係を初めて実証的に明らかにしたことである. 第三 点は, 医学リハビリテーションの役割が, 身体機能の向 上や ADL の改善のみならず, 脳卒中後遺症者の自尊感 情, 自己効力感に関わることの重要性を明らかにしたこ とである. 在宅脳卒中後遺症者の心理的適応 図 脳卒中後遺症者の心理社会モデル (結果) 60

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