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過剰適応の関係維持/対立回避的行動から見たサブタイプおよび統合的葛藤解決スキルと本来感との関連

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(1)Title. 過剰適応の関係維持/対立回避的行動から見たサブタイプおよび統合的 葛藤解決スキルと本来感との関連. Author(s). 益子, 洋人. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 67(1): 53-60. Issue Date. 2016-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/8023. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 過剰適応の関係維持/対立回避的行動から見たサブタイプ および統合的葛藤解決スキルと本来感との関連 益 子 洋 人 北海道教育大学札幌校教育心理学研究室. The Relationship between Subtypes of External Adaptive Behavior of Over-Adaptation, Integrating Conflict Resolution Skills, and Sense of Authenticity. MASHIKO Hirohito Department of Educational Psychology, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 過剰適応の視点から青年の適応様式のサブタイプを分類し,そのタイプや統合的葛藤解決ス キルと本来感の関連を検討することを目的とした。大学生184名を分析対象とした。関係維持 /対立回避的行動に対する確認的因子分析の結果,「他者志向」因子と「自己抑制」因子とい う2つの因子を抽出できることが示唆された。また,クラスタ分析の結果,青年の適応様式は 「気まま型」 「他者志向型」 「自己抑制型」 「両高型」の4タイプに分類しうることが示唆された。 さらに,適応様式のタイプと統合的葛藤解決スキルの高低を独立変数,本来感を従属変数とす る2要因分散分析の結果,適応様式のタイプとスキルの主効果が有意であり, 「気まま型」と「他 者志向型」は「自己抑制型」や「両高型」より本来感が高く,スキル高群は低群より本来感が 高いことが示唆された。タイプごとの青年のイメージや,タイプおよび統合的葛藤解決スキル と本来感との関連が考察された。 Key words:青年期,過剰適応,関係維持/対立回避的行動,統合的葛藤解決スキル,本来感. 問題と目的. 益子(2013a)によれば,近年では,この概念は, ①外的適応(社会的・文化的環境に適応している. 本邦における青年の適応を検討するにあたり,. こと)と内的適応(幸福感・満足感を経験してお. 「過剰適応」という概念が注目されている。「過. り心的状態が安定していること)という2側面か. 剰適応」の確定的な定義は,いまだ存在していな. ら捉えられること,②外的適応を,対人関係を維. い。しかし,過剰適応の先行研究をreviewした. 持するための適応行動(関係維持/対立回避的行. 53.

(3) 益 子 洋 人. 動)と考える場合が多くなっているという。すな. 子の機能に交絡し,それぞれの機能を捉えにくく. わち, 「過剰適応」といえば,対人関係上の適応. なるだろう。. がよく,内的適応が損なわれた状態を指すことが. その一方,関係維持/対立回避的行動を②下位. 浸透してきていることがうかがわれる。このこと. 因子ごとに検討することにも,下位因子間の機能. を踏まえ,本稿では,過剰適応を「関係維持/対. の差異が不明確になるという短所が存在するよう. 立回避的な行動をとりがちで内的適応を損ないや. に思われる。たとえば,前述の4つの下位因子の. すい心理的構え」と定義することにする。. うち, 「よく思われたい欲求」や「期待に沿う努力」,. 現在の過剰適応研究の課題としては,第1に,. 「他者配慮」は,先行研究における因子間相関が. 関係維持/対立回避的行動の内容を精査し,内的. 比較的高いこと(たとえば,諸井・坂上・野島・. 適応との関連を検討する必要があると思われる。. 岡本(2015)は.35-.58と報告している),因子分. 先行研究においてもっとも頻繁に使用されている. 析を行うと,「よく思われたい欲求」が「期待に. 過剰適応尺度(石津・安保,2008)には,外的適. 沿う努力」とまとまったり(益子,2008),「期待. 応,すなわち,関係維持/対立回避的行動を測定. に沿う努力」が「他者配慮」とまとまったり(藤. する下位因子として,「よく思われたい欲求」「期. 元・吉良,2014)するなどの,より少数の因子が. 待に沿う努力」 「他者配慮」という3因子が仮定. 抽出されることが報告されている。このことから,. されている(ここに「自己抑制」を含めて4因子. 関係維持/対立回避的行動の下位因子には,相互. と仮定する場合もある(たとえば,風間,2015) 。. に一定の類似性を持つものが含まれていると考え. 本稿でも, 「自己抑制」が「自分自身が思ってい. られる。それにもかかわらず,関係維持/対立回. ることは,外に出さない」のような行動的側面を. 避的行動を現状のままの下位因子ごとに検討する. 扱っていることから,関係維持/対立回避的行動. のならば,モデルを複雑化し,かえって因子間の. を測定する下位因子であると考え,4因子として. 機能の差異を不明確にするのではないか。. 扱う) 。. このように,現在の過剰適応研究における関係. 従来の研究では, 「関係維持/対立回避的行動」. 維持/対立回避的行動は,簡略すぎるか,または. の側面を検討する場合は,①内的適応と対になる. 詳細すぎるかしているため,必要十分な下位因子. 1つの概念として検討するか,②下位因子ごとに. を設定する必要があると考えられる。では,どの. 検討するかの,どちらかの方法がとられてきた。. ような下位因子が適切なのだろうか。過剰適応の. しかし,関係維持/対立回避的行動を①内的適応. 行動様式としては,たとえば,①優秀なよい子と. と対になる1つの概念として検討することには,. して頑張るタイプと,②口数少なく他者に迷惑を. 下位因子間の機能の差異を見出せないという短所. かけないように努めるタイプという,いくつかの. が存在すると考えられる。たとえば,関係維持/. サブタイプの存在が示唆されてきた(村瀬・杉. 対立回避的行動に含まれる前述の4因子は,複数. 山・石井・若子,1994)。また,風間(2015)は. の先行研究で, 「他者配慮」 「よく思われたい欲求」. 関係維持/対立回避的行動の構造を検討し,①’. 「期待に沿う努力」は抑うつと無相関であるのに. 「よく思われたい欲求」,「期待に沿う努力」,「他. 対し, 「自己抑制」は.12-.21の有意な関連を示す. 者配慮」の3側面からなる「他者志向的行動」と,. と 報 告 さ れ て い る( 石 津・ 安 保, 2008; 風 間,. ②’「自己抑制」からなる「自己抑制的行動」に. 2015など) 。このことから,関係維持/対立回避. まとめた。これらのうち,①と①’は,他者の希. 的行動の下位因子は,内的適応に対してそれぞれ. 望を叶えようとする「他者志向」傾向として,②. 異なる機能をもつことがうかがわれる。そのため,. と②’は,他者に迷惑をかけないようにする「自. 関係維持/対立回避的行動を1つの概念だとみな. 己抑制」傾向として,それぞれ別の因子を仮定で. すのならば,それぞれの下位因子の機能が他の因. きるように思われる。. 54.

(4) 過剰適応の関係維持/対立回避的行動から見たサブタイプおよび統合的葛藤解決スキルと本来感との関連. このように関係維持/対立回避的行動を「他者. 第2に,適応様式のサブタイプとスキルの高低と. 志向」と「自己抑制」の2次元から分類し,内的. いう観点から内的適応との関連を検討することを. 適応状態との関連を検討することは,関係維持/. 目的とする。青年期には他者との親密な関係性の. 対立回避的行動の下位因子間のもっとも際立った. 形成が重要だとされているため,統合的葛藤解決. 差異に注目し,過剰適応現象により明瞭な説明を. スキルは,どのような青年においても,一定程度. 与えることになるだろう。そこで,本研究では,. 内的適応を高めるだろう。しかし,特に関係維持. 第1に,関係維持/対立回避的行動から過剰適応. /対立回避的行動をとるような青年,たとえば,. のサブタイプを再分類し,関係維持/対立回避的. 「他者志向」と「自己抑制」がともに高い青年に. 行動の様相によって内的適応の状態が異なるかを. おいて,内的適応を高めるだろう。. 探索的に検討することを目的とする。もしも関係. なお,内的適応の指標としては,本来感(Sense. 維持/対立回避的行動が「他者志向」 「自己抑制」. of Authenticity)を取り上げる。本来感は,伊藤・. の2側面に大別できるのならば,それらの高低の. 小玉(2005)によれば, 「より安定的で,揺るぎない. 組み合わせによって,青年を過剰適応の視点から. 自己の感覚によりしっかりと基づいている」自尊感. 4タイプに分類することができるだろう。また,. 情である「本当の自尊感情(True Self-Esteem) 」. 先行研究によれば,「期待に沿う努力」や「自己. とほぼ同義と考えられている。これは,何らかの. 抑制」は,ともに内的適応に負の関連を示すこと. 優秀さの基準に適ったり,対人的・心内的期待に. が示唆されている(益子,2008) 。よって,4タ. 応えたりすることで得られる他者の評価によって. イプの内的適応は,「他者志向」と「自己抑制」. 変化しない自尊感情であり,過剰適応的な青年の. がともに低い群>「他者志向」と「自己抑制」の. 内的適応を測定する指標として,より適切である. いずれかが高い群>「他者志向」と「自己抑制」. と考えられている(益子,2013)。本稿においても,. がともに高い群の順になるだろう。. 内的適応の指標として「本来感」を用いる。. また,過剰適応研究の課題としては,第2に,. 以上,本研究では,過剰適応の視点から青年の. 過剰適応者の内的適応を高めるための援助要因を. 適応様式のサブタイプを分類し,それらのタイプ. 検討することが挙げられる。過剰適応的な青年に. や統合的葛藤解決スキルと本来感との関連を検討. 対する援助要因としては,統合的葛藤解決スキル. することを目的とする。本研究の仮説は,以下の. の有効性が示唆されている(益子,2013b)。こ. 通りである。. れは, 「日常的な対人葛藤において個人が用いる, 葛藤当事者双方がお互いに納得・満足して葛藤を. 仮説①:過剰適応の関係維持/対立回避的行動の. 解決するためのスキル」と定義されている(益子,. 側面は,「他者志向」と「自己抑制」の. 2013b) 。このスキルは,他者との関係性を損な. 2つの側面に再構成できるだろう。. いにくいという意味で「関係維持/対立回避的行. 仮説②:青 年の適応様式は,「他者志向」と「自. 動と同様の機能を持ち」ながら, 「社会的に承認. 己抑制」の組み合わせから,4タイプに. されやすく,不利益を避けられるような方法」で. 分類できるだろう。. あるため,他者との関係性が損なわれることを恐. 仮説③:本 来感は,「他者志向」と「自己抑制」. れる過剰適応者にとって,比較的抵抗感の低い方. が両方とも低い群>「他者志向」と「自. 法であると仮定されている(益子,2013b)。. 己抑制」のいずれかが高い群>「他者志. しかし,過剰適応の視点から青年の適応タイプ. 向」と「自己抑制」が両方とも高い群の. を分類したとき,統合的葛藤解決スキルが,どの. 順に,高くなるだろう。. ような青年にどの程度有効だと考えられるのかに 関する知見は見当たらない。そこで,本研究では,. 仮説④:本来感は,統合的葛藤解決スキルの高い 群で高くなるだろう。. 55.

(5) 益 子 洋 人. 方 法 1). 第7項目の共通性や因子負荷量が低く,削除した 場合のα係数が高まることが示されたので,6項. 調査協力者. 目による分析を行った。本研究のデータにおける. 関東地方のA,B大学に通う18歳から25歳の学. 6項目のα係数は,.86であった。. 生を調査対象とした。調査内容の全項目のうち,. 手続き. 1割以上に欠損が見られた回答は無効とし,それ. 2つの講義で質問紙を配布して,回答を求め,. 以外の回答は欠損値を項目の平均値で補完して,. 講義時間内に回収した。講義のうち,1つは一般. 分析に使用した。有効回答率は93.88%となり,. 教養の選択科目であり,もう1つは福祉系学科の. 有効数は184名(男性74名,女性110名,平均年齢. 選択科目であった。. 19.40±1.50歳)となった。. 分析にはSPSS 22.0,AMOS 22.0を用いた。. 調査内容. 倫理的配慮. ⑴ 関係維持/対立回避的行動尺度. 調査は無記名で行い,倫理的配慮として「完答. 石津・安保(2008)が作成した過剰適応尺度か. の義務はないこと」 「成績とは無関係であること」. ら,内的適応を測定していると考えられる「自己. 「調査後の用紙はシュレッダーにかけて破棄する. 不全感」6項目を除き,関係維持/対立回避的行. こと」をフェイスシートに記載し,実施時に口頭. 動を測定していると考えられる「他者配慮」8項. でも説明を加えた。. 目, 「期待に沿う努力」7項目,「人からよく思わ れたい欲求」5項目,「自己抑制」7項目の,4 因子27項目を使用した。先行研究(石津・安保,. 結 果. 2008)によれば,一定の信頼性・妥当性が確認さ. 関係維持/対立回避的行動の因子構造の再検討. れている。 「以下の質問に対して,自分にもっと. 関係維持/対立回避的行動の因子構造を再検討. も当てはまると思う番号に○をつけて下さい」と. するため,仮説に基づいて因子数を2に固定し,. 教示し,5件法(1:あてはまらない~5:あて. 分析(最尤法・Promax回転)を行ったところ,. はまる)で回答を求めた。. 固有値は7.46,3.59,1.60…と推移していたため,. ⑵ 統 合 的 葛 藤 解 決 ス キ ル 尺 度(Integrating. 2因子解を採用可能だと判断した。その後,最大. Conflict Resolution Skills Scale ; ICRS-S). 因子負荷量が.50以下の項目や,.15以上の多重負. 益子(2013b)のICRS-Sを使用した。「丁寧な. 荷をもつ項目を削除しながら,繰り返し因子分析. 自己表現」 「粘り強さ」 「受容・共感」 「統合的志向」. を行った結果,12項目(「相手がどんな気持ちか. 各4項目ずつ,4因子16項目で構成されており,. 考えることが多い」「自分が少し困っても,相手. 一定の信頼性・妥当性が確認されている。原版に. のために何かしてあげることが多い」「人がして. 準拠して教示し,5件法(1:あてはまらない~. ほしいことは何かと考える」「『自分さえ我慢すれ. 5:あてはまる)で回答を求めた。本研究では全. ばいい』と思うことが多い」「人からの要求に敏. ての因子の合計得点を「スキル得点」として使用. 感なほうである」「やりたくないことでも無理を. した。本研究におけるα係数は,.88となった。. してやることが多い」「期待にこたえないと,し. ⑶ 本来感尺度. かられそうで心配になる」「他者からの期待を敏. 伊藤・小玉(2005)の本来感尺度を使用した。. 感に感じている」「自分の価値がなくなってしま. 1因子7項目で構成されており,一定の信頼性,. うのではないかと心配になりがむしゃらにがんば. 妥当性が確認されている。原版に準拠して教示し,. る」「相手にきらわれないように行動する」「他人. 5件法(1:あてはまらない~5:あてはまる). の顔色や様子が気になるほうである」「心に思っ. で回答を求めた。確認的因子分析を行ったところ,. ていることを人に伝えない」)を削除し,2因子. 56.

(6) 過剰適応の関係維持/対立回避的行動から見たサブタイプおよび統合的葛藤解決スキルと本来感との関連. 15項目が抽出された。累積寄与率は44.45%であっ. パターンによる適応様式のタイプを検討するた. た。. め,関係維持/対立回避的行動についてK-means. 第1因子は風間(2015)の「自己抑制的行動」. 法・Qモードのクラスタ分析を行なった。その結. に相当する項目が属していた。そこで, 「自己抑制」. 果,各クラスタの人数や解釈可能性を踏まえて4. 因子とした。第2因子は風間(2015)の「他者志. 群に分類するのが適当と判断した。. 向的行動」 に含まれる項目が属していた。そこで,. 第1クラスタは「他者志向」と「自己抑制」が. 「他者志向」因子とした。α係数は,順に.86,.81. ともに低いことを特徴としていたので「気まま型」. であった。. とした。第2クラスタは「他者志向」が高いこと. さらに,従来の因子構造と,ここで得た新しい. を特徴としていたので「他者志向型」とした。第. 因子構造の適合度を比較した。その結果,従来の. 3クラスタは「自己抑制」が高いことを特徴とし. 因 子 構 造 の 適 合 度 は,GFI=.75,AGFI=.71,. ていたので「自己抑制型」とした。第4クラスタ. CFI=.80,RMSEA=.09,AIC=886.33だ っ た の. は「他者志向」と「自己抑制」がともに高いこと. に対して, 新しい因子構造の適合度は,GFI=.91,. を特徴としていたので「両高型」とした。. AGFI=.87,CFI=.95,RMSEA=.06,AIC=. この結果をFigure 1に示す。. 216.60となり,新しい因子構造の適合度の方が高 Table 1 各変数の記述統計量. かった。 各変数の記述統計 次に,使用した尺度や因子について,合計得点. M. SD. 他者志向. 3.30. 0.67. 自己抑制. 2.46. 0.61. 統合的葛藤解決スキル. 3.72. 0.63. 本来感. 3.50. 0.89. 関係維持・対立回避的行動. を項目数で除した記述統計量を算出した。 結果をTable 1に示す。 関係維持/対立回避的行動の組み合わせパターン による適応様式のタイプの分析 次に,関係維持/対立回避的行動の組み合わせ. 1.50. 1.14 0.87. 1.00 0.52. 0.50. 0.45 他者志向. 0.00. 自己抑制 -0.50. -0.50 -0.74. -1.00 -1.50. -1.18-1.24 気 ま ま 型. 他 者 志 向 型. 自 己 抑 制 型. 両 高 型. Figure 1 クラスタ分析の結果. 57.

(7) 益 子 洋 人. Table 2 適応様式のタイプおよび統合的葛藤解決スキルの高低と本来感との関連 タイプ. スキル N. ①気まま型 ②他者志向型 ③自己抑制型 ④両高型 ***. p<.001;. **. p<.01;. M. SD. 低. 18. 3.56. 1.07. 高. 14. 4.19. 0.53. 低. 26. 3.48. 0.83. 高. 34. 4.00. 0.66. 低. 29. 3.14. 0.66. 高. 21. 3.66. 0.72. 低. 20. 2.72. 0.69. 高. 22. 3.44. 1.08. タイプ η2p. F ***. 8.19. 0.12. スキル高低 η2p. F 24.09. ***. 0.12. 交互作用. タイプの多重比較. η2p. F n.s.. 0.18. 0.00. (Scheffe) **. ①>④ , ③†; ②>④***, ③†. †. p<.10. 適応様式のタイプおよび統合的葛藤解決スキルの. 仮説①は支持された。また,クラスタ分析の結果,. 高低と本来感との関連. 過剰適応という観点から,現代の青年が「気まま. 上記の分析によって分類されたクラスタ群と,. 型」,「他者志向型」,「自己抑制型」,「両高型」と. 統合的葛藤解決スキルの高低を独立変数,本来感. いう4つのタイプに分類できることが示唆され. を従属変数とする2要因分散分析(4×2水準). た。よって,仮説②も支持された。. を行った。その結果,クラスタ群の主効果が有意. この4タイプの青年のイメージは,以下のよう. , 多重比較 (scheffe) であり (F(3, 175)=8.19, p<.001). になるだろう。すなわち, 「気まま型」の青年は,. の結果, 「気まま型」と「他者志向型」は,「自己. 他者の期待に応えたり,他者に遠慮して言いたい. 抑制型」や「両高型」よりも本来感が高かった。. ことを言えなかったりすることが少なく,自分の. また,スキルの高低の主効果が有意であり(F(1,. 希望や欲求を尊重することのできるタイプである. 175)=24.09, p<.001),スキル高群は,低群よりも. と考えられる。「他者志向型」の青年は,積極的. 本来感が高かった。交互作用は有意ではなかった. に他者のためになることを行おうと努めるタイプ. (F(3, 175)=0.18, n.s.)。. であると考えられる。このタイプは,村瀬ら(1994). この結果をTable 2に示す。. が指摘する, 「優秀なよい子として頑張るタイプ」 に相当するといえるだろう。「自己抑制型」の青. 考 察. 年は,自分の希望や欲求の主張を我慢したり,言 うとしても控えめに主張したりするタイプである. 本研究の目的は,過剰適応における関係維持/. と考えられる。このタイプは,村瀬ら(1994)が. 対立回避的行動の下位因子を整理して,過剰適応. 指摘する,「口数少なく,他者に迷惑をかけない. のサブタイプを見出し,それらのタイプと統合的. ように努めるタイプ」に相当するといえるだろう。. 葛藤解決スキルが,本来感とどのように関連する. このタイプは他者からは頑張っているように見え. のかを検討することであった。. ないため,教員や友人から周縁化されやすいタイ. 過剰適応尺度(石津・安保,2008)における,. プといえるかもしれない。そして,「両高型」の. 関係維持/対立回避的行動を測定する4因子(「他. 青年は,積極的に他者を気にかける一方で,自分. 者配慮」 「期待に沿う努力」「人からよく思われた. の希望や欲求の主張を我慢するタイプであると考. い欲求」 「自己抑制」)を改めて因子分析した結果,. えられる。典型的な過剰適応者のイメージの強い. 「他者配慮」 「期待に沿う努力」「人からよく思わ. タイプだといえるかもしれない。. れたい欲求」からなる「他者志向」と, 「自己抑制」. これらのクラスタ群と統合的葛藤解決スキルの. の2因子に再構成できることが示された。よって,. 高低を独立変数,本来感を従属変数とする2要因. 58.

(8) 過剰適応の関係維持/対立回避的行動から見たサブタイプおよび統合的葛藤解決スキルと本来感との関連. 分散分析の結果,クラスタ群の主効果が見られ,. スキルは,自他の希望や欲求を両方とも尊重し,. 「気まま型」や「他者志向型」は「自己抑制型」. 実現するためのスキルであると考えられている。. や 「両高型」 より本来感が高かった。この結果は,. そのため,このスキルの高い青年は, 「自己抑制型」. 本来感は「自己抑制」因子の影響を受けるという. や「両高型」として適応しながらも自己の欲求を. 点では,先行研究(益子,2008)の結果や,仮説. 実現することができるため,本来感を高めうるの. ③を支持していた。しかし,「他者志向」因子の. だろう。逆に,たとえ気ままな行動や他者のため. 影響を受けていないという点では,先行研究の結. になる行動をとっていたとしても,このスキルが. 果や,仮説を支持しなかった。. 発達していなければ,関係性への無頓着な行動が. これは,先行研究と本研究における調査協力者. わがままと見られたり,他者のためになる行動が. の特徴の違いによるものかもしれない。先行研究. おせっかいと思われたりして,他者との関係性の. (益子,2008)における調査対象者は,様々な学. 構築が阻害され,本来感は低い水準にとどまるの. 科の大学生であったのに対して,本研究の調査対. かもしれない。この結果からは,統合的葛藤解決. 象者は,少なからず福祉系学科の学生が混在して. スキルは,過剰適応的な青年だけではなく,どの. いた。福祉系学科の学生は,その専攻内容から,. タイプの青年にも必要なスキルであることが示唆. 「他者を援助したい」という欲求や希望をもって. されたといえるだろう。. いることが多いと考えられる。本来感は,自分の 価値観や嗜好,欲求にしたがって行為をすること によって得られる(Kernis,2003)と考えられて. まとめと本研究の限界. いるため,福祉系学科の学生の自発的な「他者を. 本研究の目的は,過剰適応における関係維持/. 援助したい」という欲求に基づく行動は,本来感. 対立回避的行動の下位因子を整理して,過剰適応. を低下させる要因にはならなかったのかもしれな. のサブタイプを見出し,それらのタイプと統合的. い。. 葛藤解決スキルが,本来感とどのように関連する. 一方で,本研究においても「自己抑制」因子の. のかを検討することであった。分析の結果,過剰. 高い群で本来感が低かったということは,それが. 適応の観点から,青年の適応タイプは「他者志向」. 前述したような調査対象者の差異を越えて,内的. 「自己抑制」の2次元4タイプに分類できること. 適応を低下させる要因として機能することを示唆. が示唆された。また,それらのうち, 「自己抑制」. する結果であるといえるだろう。. 因子の高いタイプは,本来感が低下しやすいこと,. また,分散分析の結果,スキル高低の主効果も. 統合的葛藤解決スキルは,タイプの差異を越えて. 見られ,高群は低群より本来感が高かった。この. 青年の本来感を高めることが示唆された。. 結果は先行研究(益子,2013b)と同様の結果で. 本研究の限界としては,第1に,適応タイプが. あり,仮説④を支持する結果となった。. 変動する可能性を扱えていないという限界が存在. 注目したいのは,スキル高群の青年は,タイプ. する。たとえば,臨床的には,もともと「両高型」. ごとの比較では本来感が低くなりがちだとされた. であったが,次第に頑張れなくなるのにしたがい,. 「自己抑制型」や「両高型」であったとしても,. 「自己抑制型」に移行したと思われる事例が見ら. 低群の「気まま型」や「他者志向型」の青年たち. れることがある。また,高校では「自己抑制型」. とほぼ同程度の本来感を保っていることである。. だった学生が,大学への入学を契機として,サー. このことは,逆に言えば,本来感が高まりやすい. クルやバイトなど,複数の役割を得, 「他者志向型」. タイプの青年であったとしても,統合的葛藤解決. に変化することも起こりうる。しかし,本研究は. スキルが低ければ,本来感は低い水準でとどまる. 横断的研究であるため,適応タイプの変動を検討. ことを示していると解釈できる。統合的葛藤解決. することはできなかった。今後は,縦断的研究の. 59.

(9) 益 子 洋 人. 手続きを併用するなどして,適応タイプの変動の. 石津憲一郎・安保英勇(2008) .中学生の過剰適応傾向が. 可能性を考慮した検討を行う必要があるだろう。. 学校適応感とストレス反応に与える影響 教育心理学. 第2に,タイプ分類が便宜上の基準に基づいて いるという限界が存在する。本研究においては,. 研究,56,23-31. 石津憲一郎・安保英勇(2009) .中学生の過剰適応と学校 適応の包括的なプロセスに関する研究-個人内要因と. 分析手法の都合上,各適応タイプに属する人数が. しての気質と環境要因としての養育態度の影響の観点. ほぼ同数となるような基準によって分類を行っ. から- 教育心理学研究,57,442-453.. た。しかし,この基準は暫定的なものであり,さ らに望ましい基準が存在する可能性がある。たと. 伊藤正哉・小玉正博(2006) .大学生の主体的な自己形成 を支える自己感情の検討-本来感,自尊感情ならびにそ の随伴性に注目して- 教育心理学研究,54,222-232.. えば,本研究における「両高型」の青年は,一般. 風間惇希(2015).大学生における過剰適応と抑うつの関. 青年の母集団において非常に過剰適応傾向の強い. 連――自他の構造を背景要因とした新たな過剰適応の. 青年と, 「他者志向」因子と「自己抑制」因子が 中程度である平均的な青年を,分別できていない かもしれない。今後は,タイプ分類の基準につい て,更に検討を重ねていく必要があるだろう。 第3に, 「他者志向」と本来感との関連を求め た結果が,先行研究と一貫しなかったことについ て,解釈上の限界が存在する。本研究の「他者志 向」因子と本来感の関連に関する知見は,両者に 負の関連が見られるとする従来の知見と異なって いた。本研究では,この差を協力者の特徴の違い. 構造を仮定して―― 青年心理学研究,27,23-38. Kernis, M.H. (2003). Toward a conceptualization of optimal self-esteem. Psychological Inquiry, 14, 1-26. 益子洋人(2008).青年期における過剰適応傾向に関する 研究-外的適応行動と自己価値の随伴性,本来感との 関連- 文学研究論集(明治大学大学院文学研究科) , 30,243-251. 益子洋人(2013a).過剰適応の概念的検討-新しい定義 の提言- 明治大学心理社会学研究,9,43-55. 益子洋人(2013b).大学生における統合的葛藤解決スキ ルと過剰適応との関連-過剰適応を「関係維持・対立 回避的行動」と「本来感」から捉えて- 教育心理学 研究,61,133-145.. によるものと解釈したが,このような差が真に協. 諸井克英・坂上 舞・野島 彩・岡本有美子(2015).女. 力者の特徴の違いによるものなのか,それとも先. 子大学生における居場所感覚の基底にある心理学的機. 行研究の知見が統計的過誤によるものであったの かは,今後,さらに知見を増やして検討していく. 制の探索-過剰適応傾向,抑うつ傾向,および自尊心 との関連- 総合文化研究所紀要,32,71-83. 村瀬聡美・杉山登志郎・石井 卓・若子理恵(1994) .児. 必要があるだろう。. 童青年期におけるヒステリーの臨床的特徴とその意義に. 従来の過剰適応研究は,関係維持/対立回避的. ついて 児童青年糖神医学とその近接領域,35,1-11.. 行動の扱い方が簡略すぎたり,詳細すぎたりして いたため,適切な下位因子を設定する必要がある と考えられた。本研究の意義は,関係維持/対立 回避的行動に注目し, 「他者志向」と「自己抑制」 の2次元4タイプから,青年の適応タイプを分類 したこと,および,それらのタイプと統合的葛藤. 謝 辞 貴重な授業時間中に調査に協力してくださった 学生の皆さまと,調査の機会を与えてくださった 先生方に,心から感謝申し上げます。. 解決スキルが本来感に示す関連について,一定の 知見を提供したことであると思われる。. 註 1)本研究は,益子(2013b)で使用されたデータの一部. 引用文献 藤元慎太郎・吉良安之(2014).青年期における過剰適応. を再分析したものである。益子(2013b)とは欠損値の 補完の仕方が異なっているため,同一のデータではあ るが,有効回答者数が異なっている。. と自尊感情の研究 九州大学心理学研究(九州大学大 学院人間環境学研究院紀要),15,19-28.. 60. (札幌校特任准教授).

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