SENがある郡部高校生徒のための進路指導実践 ~高校から社会へ移行することの意味を考える~
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(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第47号(平成27年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.47(2015):131-138. SENがある郡部高校生徒のための進路指導実践 ~高校から社会へ移行することの意味を考える~ 菊 地 信 二1・二 宮 信 一2 1. 北海道幕別高等学校・2北海道教育大学釧路校地域学校教育専攻. A practice of the career guidance for the surrounding high school students who have SEN -Consider the meaning of the transition from high school to societyKIKUCHI Shinji1 and NINOMIYA Shinichi2 Hokkaido Makubetsu High School Kushiro Campus, Hokkaido University of Education 1. 2. 要旨 郡部の高校には、発達障害の有無にかかわらず、中学校まで勉強に取り組む意味を見いだせず、 部活動にも積極的に参 加しなかった生徒たちや学習面での課題や育ちのプロセス、家庭環境から生まれる多様なニーズのある生徒が入学してく る。これをSENと捉え、これに着目した生徒への進路指導が求められている。この観点で先駆的に進路指導を行ってい るA高校の実践を整理した。本人の抱えるSENを明らかにした上で、本人、保護者と合意形成して作成する個別の計画 の活用、インターンシップを中心とした進路指導の構造化による「働くこと」の意味を学習させること、働く世界をリア ルに体験させることが有効な手立てであること、就労への意識を高めること、就職が決まるまで維持させること、働くた めに必要な具体的な力を養成するなどの実践項目が示された。. 1.はじめに. き内容を明らかにしていく必要があると考えられる。. 特別支援教育が始まり、発達障害が注目されるように. 本稿は、4年連続、就職率100%を達成した北海道十勝. なってきたことによって、漸く高校においても特別支援教. 管内のA高校の進路指導に着目し、進路指導部長である筆. 育が意識され始めてきている。しかし、高校から社会への. 者の現状認識と基本的な指導のスタンスをまとめ、SEN. 移行を指導する際に、課題となるのが、発達障害があると. のある生徒のための進路指導の実践を報告するものであ. いうことで生まれるニーズのみならず、障害の有無にかか. る。. わらず、生徒が抱える環境要因から生まれる多様なニーズ である。特に、郡部の高校では、多様な課題を抱えた生徒. 2.SENについて. が入学してくる。中学までの学習が積み上がっておらず、. SEN(Special Educational Needs・特別な教育的ニー. 学習に対しての意欲や意義を見出せない状況の生徒、家庭. ズ)は、1978年に英国のMary Warnockが議長となって発. 環境により経済的な問題を抱えている生徒、家族の考え方. 表された障害児・者の教育調査委員会の報告書で使用され. や期待に押しつぶされ自分の意志で行動することが困難な. るようになった概念で、特殊教育の対象となる子どもを 「障. 生徒、自分で判断し行動することが少なく他者に対して依. 害のある子ども」として捉えず、「特別な教育的ニーズ」. 存的な生徒、成功体験が少なく自信のなさ・不安を抱え自. のある子どもとして捉え、対象としたことに始まる。それ. 己有能感を抱けない生徒、育ちのプロセスの中で築き上げ. を受けて、英国政府は、1981年に「特別なニーズ教育」と. られたネガティブな自己像の生徒などである。しかし、こ. して教育法(Educational Act 1981)を改正している。. れらの課題は、就職活動を行うに当たっては、大変大きな. このSENの概念(図1)は、「障害がある」というこ. 障害となってあらわれる。それゆえ、進路指導をするにあ. とは必ずしも「SENがある」とは限らないということを. たっては、これらの生徒の抱える課題をSEN(Special. 示しているのと同時に、「『障害』はないがSENがある」. Educational Needs・特別な教育的ニーズ)として捉え、. 子どもをしっかり支援していくことの必要性を示してい. 注目することによって、高校の進路指導として取り組むべ. る。. - 131 -.
(3) 菊 地 信 二 ・ 二 宮 信 一 図1 「障害」と「SEN」の概念の重なりと違い. である。つまり、障がいの有無に関わらず、卒業後の進路. 徳永(2001)の修正 (徳永2005). が決まり、その後、安定的な生活が送れるように指導する ことが求められているのである。 従来の一般的な高校進路指導において、卒業後の進路が 決まらないのは生徒や保護者に何らかの問題があるので あって、高校や教員の力量不足に要因がある等とは考えら れてこなかった。さらに「結果に責任は取れない」とし て、進路活動は「あくまで自己責任」であり、生徒や保護 者が決めた進路に「駄目出し」することはなく、だからと 言って「積極的な提案」もタブーとしてきた。加えて、生 徒の内面に踏み込むような指導には消極的であった。しか し、在籍する高校や担任、進路指導担当の教員は明らかに 生徒にとっての環境要因であり、これらの環境要因によっ て個々の進路が拓かれるか否かが決定していることも事実. 「『障害』はないがSENがある」とは器質的な損傷また. なのである。. は生育歴等に特記事項はないけれども、授業について行け. SENは、これまでの高校における進路指導の閉塞感に. ない子どもや心理的な問題で、集団行動が難しい子どもな. 新たな視点を与えるものとして重要な概念であると捉える. ども含まれ、一般には学級の他の子どもに比較して、授業. ことができる。. について行けない場合や行動上に特異的な問題がある場合 などが想定されている。なお、その理由として未熟な親の. 3.A高校の概要と課題. 育児、経済的な困窮、言語が英語でない等の文化・経済的. A高校は、全校生徒数98名(H27.5.1現在)の小規模校. な場合は、SENに含めないことになっている。しかしな. である。平成25年度入学生が24名となり、開校来はじめて. がら、文化・経済的な理由が根底にあるものの、学習の困. 1学級となった。平成26年度は60名の入学者を確保できた. 難さが表面化し、そのことが原因で行動化している場合. が、平成27年度は30名の入学者にとどまり、再び1学級と. は、SENのある子どもと判断する場合もある。また、S. なった。平成28年度入試は定員40名の一学級募集となる適. ENは教育分野以外では使用されない 。. 正配置計画案が北海道教育委員会(以下、道教委)から提. 例えば、高校においての学習の「遅れ」はどこに要因が. 示されている。. あるのかを考えてみる。SENで着眼するのは、 学習の「遅. 北海道十勝学区では、平成20年にP高校が、平成22年に. れ」そのものを含みつつ、その背景や取り巻く環境、進路. U高校が閉校となり、さらにQ高校が平成29年度入試より. が決まらないなどのさまざまな要因を探る。 学習の 「遅れ」. 募集停止が決定している。この動きは道教委が「適正規模. は、そのような環境の中にあるのであって、努力不足であ. を4学級から8学級相当とする」方針に沿った配置計画であ. るとか、表面的な態度や姿勢の問題として矮小化して捉え. り、今後も粛々と進行していくものと予想される。この学. ないのである。学習の「遅れ」の本質的原因究明と対策、. 区では、毎年約3千名の中卒生が高校に入学してくるが、. 同時に卒業後の「進路」を拓くための検討や工夫、改善の. 今後は、減少傾向が続き、当面増加に転じる見込みはない。. 対象にSENがあると考えるのである。. また、十勝学区には都市部及び近郊に私立高校が4校あり、. また、SENの有無の境界は「曖昧」である。不登校で. 郡部の公立高校の入学生徒の確保は難しい状況にある。さ. あっても学習に遅れがなければSENはないと言えるし、. らに、道教委は公私比率を7:3に、また公立校の入試倍率. 学習の遅れがあるから登校渋りとなり、不登校になってい. を1.0倍に調整する姿勢を崩していないため、A高校はそ. る場合はSENがあると考える。ある学校でSENがあっ. う遠くない将来に「募集停止」の危機に直面する可能性の. ても、転校によってSENがなくなるケースも珍しくない. 中にある。. 1). O市の東部に位置するA町は人口27.6千人で、3行政区. このように捉えると、むしろ「 『障害』はないがSEN. (A地区、B地区、C地区)に区分され、人口の約72%が. がある」生徒が多くいることに気づく。にもかかわらず、. O市に隣接するB地区に集中する。A高校が位置するA地. 通常、高校の教育の中ではそのような生徒たちは、残念な. 区の人口(6.1千人、全人口の22%)は減少する一方で、隣. がら見落とされてきているのである。担任が窓口となりつ. 接するA小学校、A中学校の児童生徒はすべての学年で1. つ、学校全体が一人一人の生徒やその保護者と向き合い、. 学級となる状況である。そこに通う児童生徒の多くは、少. どのようにして進路実現を図るのか、具体的な戦略をもっ. 子化による学校の統廃合によって農村部からスクールバス. て個別指導に当たることこそが高校の特別支援教育であ. で長距離通学を強いられている。. り、学校デザインで一番大事にしなければならないところ. また、A高校の在籍生徒の多くが列車通学をしており、. 1). 。. - 132 -.
(4) SENがある郡部高校生徒のための進路指導実践 様々な教育活動がJRの運行の影響を受けている。さらに. 生徒はまた一斉に反発し、退学者を増大させる危険性が高. B地区にある私立K高校は1学年定員117名(普通科80名、. まり、指導困難な状況が繰り返されることになるからであ. 福祉科37名)で、ここ数年定員を超えて新入生を確保して. る。. おり、A高校にとっては、地元の子どもが減少する中、A. 平成26年度の入学生は60名であった。しかし、指導困難. 地区やB地区の生徒がどれだけ入学してくるのかが大きな. 状態の複数生徒が同様の事故を繰り返し、数名の生徒が退. 課題となっており、K高校との違いを明らかにする取り組. 学した。彼らは「学校に通う」という義務教育段階までに. みが求められている。. 獲得していなければならない力が身についていなかった。 当たり前に学校に行くという文化に同化していない「不登. 4.A高校の生徒の状況. 校」や「学校嫌い」や学校文化に同化しないで、同様の問. 平成20年度のA高校の全校生徒は191名であった。その. 題や課題を持つ地域での友人との交流が生活の中心となる. 内、町内生は54名で全体の28.3%にとどまり、O市内生が. 「学校不適応」も多い3)。中学校までの学校不適応はその. 約7割を占めていた。校内は落ち着きなく、授業や全校集. 後の就業行動にも大きな影響を与えるだけに、どういう背. 会でもじっとしていられない、整列ができない、私語が絶. 景を持った生徒が入学しているのかは、高校をデザインす. えない等、多くの課題を抱える高校であった。. る上で、また彼ら・彼女らを卒業後スムーズに社会に移行. 図2及び表1は、平成18年度以降の卒業年度毎の新. させていくためにも、入学してくる生徒の学びの環境や育. 入生出身地域別(O市、A町)在籍率と卒業率、進路内定率. ちの背景を正確に掌握する必要がある。どのような家庭に. である2)。これによると、新入生の出身地別在籍率は平成. 育ち、どのような環境で教育を受けてきたのか。また、ど. 20年度以降に大きな変化が見られる。町内生が一時O市. のような要因で教育を受けることができなかったのか。高. 内生を上回るときもあり、その後は現在までほぼ拮抗し. 校だけでは何ともしがたい生徒もいて、早い段階で退学し. ている。平成26年度の全校生徒の出身地域別在籍率はA町. てしまう生徒もいる。これらの生徒たちにもっと何とかし. 49.2%、O市45.8%とほぼ同率となった。このような状況に. てあげられなかったのかと公教育の責任と役割について考. なってから学校全体が落ち着きはじめ、卒業後の進路決定 率も徐々に改善の兆しが見え始めた。平成23年度卒業生以. 表1 A高校の卒業年度毎の進路内定数と 入学時の出身地別在籍数比較一覧(筆者作成). 降、4年連続で進路実現100%となっている。 このことは、A高校が近年、比較的安定した学校経営が できていることや就職率100%を維持してきているという 変貌を遂げた要因として、町内生の増加という理由が示さ れる。しかし、過去に中堅都市のO市内からの通学生が増 えることによって、様々な問題や困難を抱えた生徒を受け 入れ、そのことが学校全体の問題を深刻化させ、生徒指導 の負担感を増大させていたことがあるがゆえに、 「指導を 弱めればいつでも過去の荒れた高校に戻るのでは」という 懸念を抱く教員もいる。再びそのような状態になったとき に、価値意識と行動規範を生徒に求めようとするならば、. 図2 町内生の在籍率(対O市)と卒業、進路決定率 (筆者作成). - 133 -.
(5) 菊 地 信 二 ・ 二 宮 信 一 える。義務教育のかなり早い段階から「学校を通した成功. 当時は、基礎的学力や基本的生活習慣の習得、対人関係、. 物語」にコミットしない・できない若者が、学校的価値、. 学習に対する姿勢や態度等に課題がある生徒が多く、 「指. 社会が求めていると思われる価値を内在化することなく、. 導に従わない」「指導を拒否する」というような学校に背. 卒業もしくは中途退学という形で学校を離れることによっ. を向ける生徒の存在が進路決定に大きく影響していた。全. て、非正規雇用で従事したり、場合によっては労働そのも. 日制普通科高校といえば、どこも「進学重視型」カリキュ. のから疎外された状況に置かれたりすることになるからで. ラムであり、教育内容を見ると「最も働くことから遠い距. ある 。. 離にある高校」といえる。しかし、毎年卒業予定者の半数. つまり、A高校が、学ぶ習慣が身についていない生徒を. 近くの生徒が経済的な理由(消極的理由)を主として「就. 受け入れる「地域高校」であるとするならば、地域での生. 職」を希望する。その中には特別支援教育の対象となる生. 活や通学に体力を奪われ、登校するだけで精一杯で、授業. 徒やSENのある生徒も当然含まれている。無業卒業者が. に参加することもできない生徒たちが多いだけに、中途退. 2割を超えていた頃は、生徒の教育的ニーズに応えていた. 学を防止する意味でも地元の小中学校と連携し、地元を意. とは言い難い状況にあったと思われる。. 識した生徒募集を行うべきである。. 多くの高校生は進学校以外に在籍しており、「働くのが. また、積極的に「A高校で学びたい」という意義や意味. 嫌」というのでもなく、「何が何でも働きたい」という積. を見いだせないまま入学してくる生徒も少なくない。「自. 極性にも欠き、職種にこだわりもなく「生きるためには働. 宅から近い」 「自力通学できる」ことを理由に、彼らは今. かなければならない」と思っている。こういう意識はむし. の状態、能力で無理なく入学できる高校を選択し、進学し. ろ多数派である3)。そのように考えると、例え短期間であっ. てくるのである。さらに「A高校は(生徒指導が)緩い」. ても正規に働く経験、ごく普通の労働者になることの経験. という根拠のない噂を鵜呑みにして来る生徒もいる。この. は貴重なものとなる。. ような状況では、積極的に高校で学ぶことの価値を見つけ. そこで、A高校では、進路指導方針の一つに「一人も. 出し、 学校生活を送るということは困難である。 学力不振、. 置き去りにしない(見捨てない)」という方針を打ち出し. 不登校経験、部活動をしない等の背景には、親の社会・階. た。過去4年間の就職希望者は89名で、この間全員の就職. 層的地位や家庭が持つ文化度の低さも大きく反映している. を叶えてきた。加えて、100%の決定時期が年々早まって. ことも無視できないが、そのような生徒が来るという前提. 来ている。平成27年3月に卒業した就職希望者16名全員の. で、学校作り、学級経営、授業作り、生徒指導、進路指導. 就職が内定したのは12月中旬であった。それは進路指導部. をしなければならないのである。. のみならず、担任を中心とする学年団の取り組みが、それ. 4). までと質的に大きな転換が図られた成果と考える。具体的 5.非進学校の進路指導の課題. には「働くことを通して、積極的に社会参加する生徒を育. (1)「一人も置き去りにしない」というA高校進路指導の. てる」という大目標を掲げ、進学希望生徒であっても「 『い. スタンス. つかは働く』という意識」を抱かせ、 「『働きたくない』 『今. 十勝管内新規学卒の職業紹介状況では、ここ数年求職者. は決めたくない』を認めない」指導を徹底し、浸透させ、. (ハローワークの紹介を希望する)数が9月当初から卒業. 教員の意識転換が図られてきた結果である。第3学年の6月. 時3月までの間に100名近く減少している。上級学校への進. に行う5日間のインターンシップは今年度4年目となった。. 路変更なら良いが、あてもなく「紹介はいらない」という. 4年連続進路実現100%と重なるのは偶然ではない。. ことになると、資料統計上の支援対象から外れていく。お. このインターンシップは、「総合的な学習の時間」を積. そらく、そのほとんどは就職に挑戦してもすぐに諦めてし. 極的に活用して行われており、5日間設定されている。一. まったり、一度も挑戦しないまま卒業(ゼロ回受験)して. 般的には高校2年生で行うインターンシップが多い中、A. しまったりする生徒たちと思われ、彼らのこの状態が多く. 高校では3年生で行うのであるが、これには大きな意味が. の学校現場でほとんど議論されていないのも事実である。. ある。詳細については後述するが、この時期に実施するこ. 十勝管内において平成26年4月末段階で、卒業後も職業紹. とで、その後の進路活動に躊躇なく突入できる絶好の機会. 介を希望しつつも内定にこぎ着けなかった生徒は、就職希. となり、自らの進路と向き合うきっかけとなっている。 様々. 望者全体の約5%(40名)程度であった。このような生徒は例. な事業所における実体験が働くことへの憧れをつくり、当. 年同程度数いて、決まらなかった生徒については、「その. たり前に額に汗して、一生懸命働く大人の姿を見て、 「こ. 他の進路」として各高校は分類することになる。一般的に. んな職場で働きたい」「この人たちと働きたい」という思. は新規学卒就職を逃すとその後は正規のルートに乗って就. いを膨らませる機会とした。. 職することは難しくなり、若者の抱える課題や困難を更に. 平成23年度卒業の未内定生徒が最後に就職を決めたの. 増大させることになる。. は、卒業式から1ヶ月経った平成24年4月であった。働く. A高校では、平成22年度卒業生以前は、2割以上の生徒. 実体験は、生徒に就職しようとする意欲をかき立て、何度. が無業卒業 (進学も就職も決めないで卒業) 状態であった。. も挑戦する強い心を育んだ。そして、次に続く学年は「自. - 134 -.
(6) SENがある郡部高校生徒のための進路指導実践 分たちも進路実現100%を目指す」 「年内に進路を決める」. をかけていた。それをあえて5日間に拡大させた理由は二. と高い目標を掲げるようになった。. つある。一つは「2日間程度引き受けても効果は期待でき. A高校の進路指導は「100%」に強いこだわりをもって. ない」という企業側の声と「1日で十分」と考える官公庁. いる。 「100%」が続くから「自分たちも就職できる」とい. の「意義は分かるが受け入れ体制がとれない」という声で. う生徒の期待や希望となっていく。未内定者が一人でもい. あった。もう一つは、特別支援教育コーディネーターで進. たら「もしかして自分は決まらないかもしれない」という. 路指導部長である筆者が前任校(E高等養護学校及びN高. 不安につながり、自信がもてない生徒のモチベーションを. 校農業科昼間定時制)で長期間のインターンシップを行っ. 低下させる。 「100%」が続くことにより相乗効果を生み出. てきた経験があり、その効果を確信していたことがあげら. し、4年連続の進路100%という結果をもたらした。ある生. れる。つまり、このインターンシップは、道内知的障害高. 徒が、パートでの採用内定であった。その時、生徒が「先. 等養護学校(以下、高養)で行う障害がある生徒が一般就. 生、俺のために100%は途絶えるの?」と聞いてきた。「そ. 労を目指し、就職を前提として行っていた5週間(以前は. んなことはないよ。君も立派な内定だ」と答えると笑顔で. 2 ヶ月間あった)の「現場実習」に習っており、さらに、. 一礼し教室に戻っていった。 「100%」は一人一人の生徒の. 高校のインターンシップ義務化前から北海道中小企業家同. 意識の中にしっかりと浸透している。自分の進路が決まれ. 友会O支部(現在は「T支部」に改称)の協力で20年以上. ば良いというのではなく、自分の進路内定が「100%」と. 続く取り組みとして行われていたN高校農業科昼間定時制. いう学校課題につながっていることの重要性を生徒自身が. のインターンシップをベースにしている。当時、N高校農. 自覚できているのである。. 業科昼間定時制では、学習不振、低学力、問題行動などで. しかし、進路が決まっても、すぐ辞めてしまう、続かず. 授業が成立しない現状を何とかしようと担当者が始めたも. 転職を繰り返えし、キャリア形成されない問題や課題もあ. のであったが、それをより効果のあるインターンシップに. る。「決まればいいのか」という批判もあるが、高校を終. 改善していくために、筆者が高養で行っていた「現場実習」. 了すれば、若者や保護者にとって必要な情報の提供が極端. の考えを基に作りなおしたのであった。N高校農業科昼間. に少なくなり、社会的な孤立につながりかねない現実もあ. 定時制は、すべての生徒が4年間通う昼間定時制高校であ. るだけに、卒業後のつながりも何らかの形で構築する必要. る。3年生で行う「企業体験学習(6日間)」は、2年生で行う 「農. がある。そこで、A高校では卒業後2年間は「ヤング同窓. 家委託実習(5日間のファームステイ)」とともに、特色ある. 会」を進路指導部主催で開催し、近況の交流や相談に積極. 4年目(就職して月に1度通学する)を支える教育課程には. 的に働きかけている。このような活動を通して早期離職し. 必要なレディネスとなっていた。一人一人違う4年目の在. た卒業生や倒産等で退職を余儀なくされた卒業生を連れて. り方をつくるために就職試験を受けて正式に内定をもらっ. ハローワークに出向き、短期間で再就職を実現するケース. て、就職先を確定させた。卒業後の就職は必ずしも100%. は珍しくない。A高校は、年度初めの会議で卒業生支援を. までは届いていなかったが、ほとんどの生徒にとって、働. 謳う。卒業しても卒業生の様子を気にかけ、必要な働きか. くことを通して社会参加させるに足るシステムとなって. けを進路指導部の役割として位置づけている。. いった。筆者が赴任した当時のA高校は、困難を抱える生 徒が大勢いた学校であった。また、2割以上の生徒が進路. (2)「進路実現100%」は高校の特別支援教育が目指す目標. を決めないまま卒業している状況でもあった。それらの課. 生徒の「教育的ニーズの多様性」を前提とした高校が求. 題を一刻も早く改善する必要があった。. められている。中学卒業後97%の生徒が高校へ進学する。. A高校のインターンシップは、四者面談(本人、保護者、. 当然ながら「特別な教育的ニーズ」に応える支援を必要と. 担任、進路指導部)から始まり、「なぜ5日間なのか」を丁. する生徒が入学することになるであろうし、それを前提と. 寧に説明し、生徒や保護者の意向を丁寧かつ綿密に聞き取. した教育が準備されなければならない。障がいに着目し、. り、必要な情報提供を行い、そこで確認した内容を重要視. 必要な支援をするのはもちろんだが、障がいの有無に目を. する。その後の進路を見据えた内容を個別に計画する。. 奪われるのではなく、個々の生徒が抱える様々な困難や特. 地元の中小企業家同友会や関係機関の協力を得ながら、. 別な教育的ニーズに目を向け、必要な支援を考え、どのよ. 生徒の希望に沿った事業所の確保に努めた。「一人一社」 、. うな形で社会参加をさせられるのかを検討することがより. 「一日6時間(5日で30時間以上)」を基本としたことで、. 重要となってくる。. 可能な限り一般就労に近い条件での実習と取り組みの個別. では、進路実現をすべての希望する生徒にどのように保. 化を図った。保護者説明会を開き、必要な説明と具体的な. 障するのか。A高校では、5日間のインターンシップを行. 協力要請を行った。生徒には毎日日誌を付けさせ、それを. うようになってから進路内定率100%となっていることか. 保護者と事業所は連絡ノートとして活用した。終了後の7. らインターンシップに効果があることが示されている。. 月には「インターンシップ報告会」を実施し、自分の取り. 平成21年度までは、わずか2日の体験であったが、勝手. 組みを振り返り、発表する。保護者や事業所、関係機関に. に休む生徒もいて、受け入れ事業所に多大な負担と迷惑. も案内し参加を呼びかける。1,2年生全員が参加し、3年. - 135 -.
(7) 菊 地 信 二 ・ 二 宮 信 一 生の報告に耳を傾ける機会も作っている。一人一人がイン. ブ・マッチングという視点から職場を探し出し、本人の自. ターンシップの経験を発表するのであるが、 その 「報告会」. 信になるものを高校がしっかり作り上げ、それを支えてい. は、発表する生徒にとっての社会参加に向けた決意表明の. けば、就職への希望とつながる。. 場ともなっている。1,2年生にとっては「来年は自分たち. しかし、「障害がある」こと以外のところにSENが存. もここで報告する」という見通しと覚悟をもたせる場でも. 在することもある。例えば、自動車免許を所持しているこ. ある。また「報告集」を作成し、協力いただいた事業所に. とが応募要件となるような職場では、経済的理由で自動車. 配布している。この4年間でインターンシップは、該当学. 免許が取れなければ、それが就労に向けての妨げになる。. 年だけの取り組みから全校を巻き込んだ取り組みへと大成. 自分の発達的課題を自覚し、特性を踏まえた上で、職場を. 長を遂げた。. 見学し、対応してくれた人事の担当者の人柄も気に入り、. 5日間のインターンシップを行うようになって、社会参. 仕事も自分ならできると確信して「ここで働きたい」と考. 加する自分の姿を思い描けるようになり、希望進路を実現. えて、応募、内定を得ても、「危険な職場だから」と保護. させようとする姿勢と態度が生まれた。働く経験だけでな. 者が同意しなければ、就職には結びつかない。また、周囲. く、実習期間中「なぜ、働かなければならないのか」とい. の大人が、本人の発達的課題を保護するあまり、何でも先. う生徒の疑問に答えてくれる大人との対話にも期待し、受. 回りして本人が困らないようにしてしまったり、チャレン. け入れ事業所に依頼した。職場の確保はさほど難しくはな. ジすることの機会を奪ってしまったりすれば、すぐに「で. かったが、受け入れ事業所はどこでもいいわけではなく、. きない」「無理」と挑戦することから避けて生きて来るこ. 対象生徒に必要な効果が十分期待できるか、事業所の情報. とになる。このような場合の就労に向けた「障害」は、本. を集め、適切な環境があるかどうかを確認し、 「働くこと. 人の発達的課題ではなく、それまでの周囲の大人の対応と. を通して社会参加する」ことに直結した活動になっている. それに甘えてきた本人の育ちとなる。このように考えると. かということを重要視した。. 「働きたい」を叶えるのは、本人の努力、自己責任だけで. また、高校生のアルバイト経験は一般に「社会勉強」と. はないことに気づかされる。. 言われるが、アルバイトをすることで間違った労働観や金. 毎年ハローワークが報告する新規学卒生徒の職業紹介状. 銭感覚を身に付けてしまうことも多い。アルバイトをした. 況では、高校への高い進学率を背景に、中卒求職者は例年. くても雇ってもらえない、雇ってもらえたとしても続かな. 0から3名程度で推移する。しかし、高校に入学した生徒の. い生徒も多くいる。それだけに、きちんと働く大人や事業. 中には、 「本当は高校には来たくなかった」 「働きたかった」. 所の存在に出会うことは重要になる。内在する障害がある. という生徒も少なくない。周囲の大人の都合で「高校ぐら. が故に失敗経験を活かしきれない生徒もいて「十勝障がい. い出ていないと就職できない」とか「みんな高校に行くの. 者就業・生活支援センターだいち」に情報提供を求めるこ. だから」と説得されている。中学校や保護者にとって「高. ともあった。. 校には行きたくない」「働きたい」という生徒の「希望」. A高校のインターンシップは、単なる体験活動ではな. は想定外であり、受け入れがたいものになっている。義務. く、高校卒業後の進路にしっかり向き合わせるための個別. 教育のかなり早い時期から、学校文化になじめない、勉強. の課題学習の場そのものである。また早期離職の問題もあ. することでうまく行った経験を持ち合わせていない生徒に. るが、 「辞める前に相談する。自分一人で決めない」「困っ. とって、高校進学は、中学校がやっと終ったのに、まだあ. たときは、助けを求める」ことを在学中にしっかり教えて. と3年も高校に行かなければならないのかと将来に希望を. おかなければならない。このような実践のためには、進路. 見いだせないまま窮地に追い込むことでもあるのである。. 決定の時期までに保護者と学校がしっかりとした信頼関係. 「話を聞きなさい」と言っても、話を聞いて今まで「いい. を築くことが大変重要であると考えている。. 思い」や「いい経験」を積んで来なかったのである。そも そも「話を聞く」こと自体を教わっていない、身について. 6.多様なSENを捉え、対応する. いないのである。一日学校で過ごす体力も身についていな. 「障がいがある」ことによってSENが生まれるわけで. い。これは、義務教育段階までの教育課題であり、責任で. はない。例えば、場面緘黙のような「話すこと」が困難な. はあるが、 「高校だけは行け」と言われ、必要な学力や体力、. ことによってSENが生まれると考えてしまうが、工事現. 対人関係能力を身につけないまま、義務教育を終了してい. 場では声を出しても聞こえないことはよくあり、身振りや. る生徒にとって大人の理不尽さや身勝手さに不信感を抱く. 手振り、手旗を振ってやりとりすることを考えれば、業務. のは当然である。郡部の高校に入学してくる生徒の一番の. を遂行する上で「声」は必要なくなる。野菜などの仕分け. 困難は、大人を信頼できないというかたくなな姿勢や態度. を行う物流の職場であれば、これも「声」は必要がない。. の払拭となってしまっている。これもまたSENと捉える. 企業が働く機会を提供し、高校がその情報を得て、本人や. ことができ、ここに就労に向けた高校の教育的課題がある. 保護者に伝えれば、就労に結びつく。場面緘黙という状態. ことが示されている。. のみを捉えて「無理」 「難しい」と突き放すのではなく、ジョ. このようなSENは、医療モデルとしての障害ではな. - 136 -.
(8) SENがある郡部高校生徒のための進路指導実践 く、環境要因の中に個々の困難や生きにくさをみていくこ. 「学校で学ぶこと」に積極的に取り組んでこなかった生. ととして捉えることができる。これに気づかなければ、 「排. 徒にとって「わかる授業」は、学校が取り組むべき重要課. 除」の対象になっていく可能性が高い。 不登校であったり、. 題であることは言うまでもない。どの生徒も学ぶことが 「楽. 学校生活や教育に希望を見つけたりすることができずに高. しい」と思える経験が必要である。その保障の上に、生徒. 校まで来てしまった生徒が抱えるSENを、高校はしっか. と教師、保護者と学校との間に信頼関係が生まれ、自分の. りと受け止め、社会参加に向けた教育を行っていかなけれ. 得意を知り、「それで勝負したい」と自分の将来に希望と. ばならない。A高校は「インターンシップ」をはじめ、あ. 期待を抱く若者、青年が育っていくのである。. らゆる教育機会を通して、生徒の大人化、社会化を図り、. 障がいがあるからではなく、そこにニーズがあるから支. 社会参加を支えてきているといえる。 「いつかは働くのだ」. 援するのである。生徒一人一人の教育的ニーズを見極め、. という決意と覚悟が必要だが、就職が決まらないのは「生. 必要な手立てを講じ、一人一人違った進路の実現という生. 徒の能力が低いから」 「保護者の力がないから」と自己責. 徒や保護者の負託に応える信頼される教師、高校とならな. 任に帰してはならない。ここに高校と教員の意識改革の必. ければならない。そして高校卒業後の自分の活躍できる 「居. 要性がある。高校教育の再考が求められている。. 場所」を確保して卒業させることが最も重要な教育課題で ある。. 7.働くために必要な具体的な力を育む 進学校以外の多くの生徒にとって、学校は 「学びの場」. 8.考察. ではなく、いわゆる 「友人と過ごす場」 となっている。こ. 現在、学区の拡大によって、ますます高校の二極化が進. の機能によって、多くの人が救われているのも事実である. み、高校間の様々な格差が顕著となっている。故に郡部高. が、中学校時代から勉強に集中した経験も、それによって. 校が「うちは高校だから」と適格者主義を貫こうとするに. 得た成功体験もなく、 かといって部活動にも積極的に参加. は無理がある。未だ高校には厳格な履修修得制限があり、. しなかった生徒が増えてきている。学校の重要な機能であ. 懲戒指導がある。高校としてのスタイルを維持し、貫くた. る 「社会化」 は、 集団への適応という形で特別活動を通し. めにも必要な部分も多くあるが、形式に囚われ、本来の指. て指導されることが多い。 教科・科目の学習にも特別活動. 導や教育を見失う危うさもある。この危うさを多くの高校. にも積極的に参加することのない彼ら・彼女らに対しては. の教員は感じている。高校統廃合によって学校がなくなっ. 「社会化」 の方向付けは伝わりにくいと思われる。 入学し. た町が衰退する現実をみると、目の前にいる生徒たちに必. た高校がある意味厳しくない(生徒指導が緩い)からこそ. 要なことは、大人への信頼、学習することの意味と成功体. 「学校に足が向いた」のであろう。高校を終えても結局は. 験、そして教育や大人との関係性の回復であり、未来に期. 社会に適応する(労働で言えば正規雇用労働に継続して従. 待と希望をもって生きることである。. 事する) ことができず、 相対的に低い位置に(非正規雇用労. 都市部と郡部、進学校と非進学校の役割は違う、むしろ. 働市場に) 留まっていることになる3)。. 違っていい。入学時点での生徒の状態や持っているリスク. そのような彼ら・彼女らであっても「学校から社会への. 要因がそもそも違うからであり、そのような観点から、郡. 移行」の具体的な場面で進路選択に直面したとき、 どうい. 部の全日制普通科高校の果たすべき役割は見直されなけれ. う思いを抱き、具体的にどんな活動をするのかは、入学し. ばならないと考える。旧来の高校観とこれからの高校観を. た高校やそこで出会う担任や進路指導次第であり、その後. 見直す機会がきている。中学校は、卒業段階で「働きたい」. の生き方を変えることは十分あり得ることである。. 気持ちの生徒がいるのなら、きちんと受け止める必要があ. 働くために必要な力とは何かを考えるとき、社会に出る. る。教育の目的の先には「社会参加」と「働く」がある。. までの間に一人一人の教育的ニーズや能力に応じて次の力. かつては徒弟制度の下で多くの職人が育ち、日本の高度経. を獲得さる必要がある。①時間を管理する能力、②金銭を. 済成長を支えてきた。そして中卒である彼ら・彼女らを定. 管理する能力、③心身の健康と体力、④自己理解とメタ認. 時制高校や企業内学校が支えてきた。働きながら「高校へ. 知、⑤自己肯定感の5 つである。社会に出たときに不適応. 通う」ことが必要だと実感した時に高校に通えばいいし、. を起こし、様々な事件や事故に巻き込まれないためにも、. 高校全入時代、大学希望者全入時代なのであるから、行き. 上記の力を身に付けさせなければならない。時間を守るこ. たいとき、学びたいときに入学すれば良いのであって、そ. とができない、金銭にルーズ、気持ちが弱く心が折れてし. れができる時代でもある。. まう、自分に自信がもてない等の課題を抱える大人は多. 高校も願書を出せば合格する高校が半数を占めている。. い。これらの課題を生徒個人の問題としてではなく、学校. そういう時代であることを高校も保護者も中学校もきちん. 教育の課題と考えるべきであり、学校教育ですべてを解決. と受け止め、すべての若者、青年が働くことを通して社会. することはできないとしても、今までの学校教育が十分に. 参加できるよう育て教育していかなければならない。. 行ってこなかったことで生きにくさを作っている状況も多. また、高校の教育を検討する中で、総合学科ではなく商. くあると考えなければならない。. 業・農業・工業などの専門科目を特化し、できる限り普通. - 137 -.
(9) 菊 地 信 二 ・ 二 宮 信 一 科目を選択必修として軽減し、学外での作業や実習を単位. う。今いる生徒の現状を受け止め、一人残らず社会への移. 化することで、よりリアルな「働く世界」への方向付けを. 行を実現する責任がどの高校にもある。. する必要がある。可能な選択肢を示し『自分探し』とか『や. 一つの方策、方略としてA高校における取り組みを報告. りたいこと探し』を安易に容認するのではなく、働く生活. した。必要なあらゆる分野が連携し、彼ら・彼女らが希望. への方向付けをすることが一つの対策となる。また地域的. を持って社会に巣立ち活躍できる環境社会を整備するため. には労働の「場」と「機会」を創出することも不可欠であ. に必要となることは何かを検討していくことは今後の重要. 3). な教育的課題であると考える。. る 。 このような状況の中で行われているA高校の進路指導の 実践は、生徒の育ち、置かれている環境を捉えることに. 【参考・引用文献】. よって、本人の抱えるSENを発達的課題のみならず、環. 1)徳永 豊『特別な教育的ニーズ』の概念と特種教育の. 境要因の中からも探り、取り組むべき課題を明らかにして. 展開-英国における概念の変遷と我が国における意義に. いる。また、インターンシップを対象となる3年生だけで. ついて- 国立特別支援教育総合研究所研究紀要 第32. はなく、1,2年生の準備も含めた3年間の教育課程の中に組. 巻 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所、2005、. み込み、イベントや体験学習としてではなく構造化された. pp.50,pp.58,pp.59. 就職活動として作り上げ、 「働くこと」の意味を学習させ ることに重点を置いている。インターンシップでの「ほん. 2)A高校の学校要覧に掲載された数値から転記し、筆者 が作成した。. もの」体験は、「自分にもできることがあった」 という気. 3)長須正明 若者就業支援の現状と課題-イギリスにお. づきや「大事にされた」 「いい人たちだった」という心地. ける支援の展開と日本の若者の実態分析から-第II部 . よい思いを実感させることを重んじ、そこから 「食べて行. 日本の移行困難な若者と就業支援 第2章 高等教育非. くために働く」 を越える「働くことの意味や意義を育む」. 進学層の問題 労働政策研究報告書 No.35 独立行政. 教育としている。そのインターンシップを中心とした進路. 法人労働政策研究・研修機構、2005、pp.139,pp.140,. 指導では、保護者を巻き込み、本人、保護者と合意形成し. pp.148,pp.155,pp.158. ながら個別の計画を作成し活用する、就労への意識を高め. 4)長須正明 移行の危機にある若者の実態-無業・フリー. ることと就職が決まるまで生徒の気持ちを維持させる、働. ターの若者へのインタビュー調査(中間報告)―第3章. くために必要な具体的な力を養成するなど、社会への移行. 「彼ら・彼女らにとって学校とは何だったのか」労働政. を充分に踏まえた実践が行われていた。. 策研究報告書 No.6 独立行政法人労働政策研究・研修 機構、2004、pp.91-92. 9.終わりに 本報告では、学校から社会への移行の課題をSENに注 目して展開した。特別支援教育が始まって9年。充分に浸 透したとは言い難い状況もあるが、教育の対象を「障がい のある」とするから拒否や排除が生まれ、通常高校の「対 象外」となってしまう。しかし、SENの有無で一人一人 の生徒を捉えるとき、 「SENのある生徒」は、通常高校 が担っていかなければならない対象や課題となる。障がい の有無によらず、 「わかる」 「進路がひらく」が保障される ことが重要で、すべての若者が働くことを通して社会参加 できるよう導く環境とシステムの構築が高校までの教育と 地域、社会に期待される。 先に述べたとおり、英国では、教育において「障害のあ る子ども」という概念はなく、 「SEN」という用語を使 用する。診断された障害ではなく、教育的援助について言 及する教育学的概念であり、学習における困難と特別な教 育的手立てで説明される概念である1)。政治的、政策的な 意図をもって制定されたものであるが、教育の既成概念を 払拭して、教員や学校がパラダイムチェンジするに必要な 強制力を持った「教育法」である。日本の特別支援教育も ここ数年で周辺法の整備やそれに関わる環境整備がすすめ られてきたが、 「強制力」という点ではまだ弱いように思. - 138 -.
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