• 検索結果がありません。

地磁気観測所テクニカルレポート: 第12巻第1,2号 (第17号)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "地磁気観測所テクニカルレポート: 第12巻第1,2号 (第17号)"

Copied!
29
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)

1.はじめに  太陽活動と地球磁気圏や電離圏の擾乱には密接な 関係があり,太陽フレア(太陽面爆発現象)などの 太陽現象が,しばしば磁気嵐などの活発な地磁気擾 乱を引き起こすことがある.磁気嵐発生時は,デリ ンジャー現象と呼ばれる短波通信障害が起こること が古くから知られているが,近年では高エネルギー 粒子による人工衛星の機器故障や,急激な磁場変化 に伴う誘導電流が送電網に障害を与えることによっ て起こる大規模停電など,地磁気現象が日常生活に も影響を与えることが懸念されており,地磁気活動 の監視と迅速な情報発信は重要性を増している.  そのようなニーズに対応するため,地磁気観測所 では地磁気の活動程度を表す指標のひとつである K 指数の日合計の速報値を,1日に1回の更新頻度で 2012年からホームページ上で発信してきた.K指数 は1日を3時間ごとの8区間に分け, 各区間におい て地磁気活動が静かな日の日変化曲線からのずれの 程度を準対数目盛で表し,0~9の10階級に分けた ものであり,数字が大きくなるほど地磁気活動が活 発であったことを意味する.K指数の読み取りは, 前日24時間分の K指数を1日に1回,職員が手作業 (以下ハンドスケール)で読み取っている.しかし, 地磁気現象の発生から終了までの時間が,K指数に 影響を与えるほど振幅の大きな現象に限ったとして も,短いもので数時間程度であることを考えると, 1日1回の情報発信では十分な速報性を持っている とは言い難い.また,職員の手作業に頼る方法で は,夜間などの勤務時間外での情報発信は不可能で ある.より速報性の高い情報発信を行うには,計算 機による自動読み取り手法の使用が必要不可欠であ る.  国 際 地 球 電 磁 気 学・超 高 層 大 気 物 理 学 協 会 (International Association of Geomagnetism and

Aeronomy, 以下 IAGA)は,K指数の計算機による 読み取りについて,4種類の手法(USGS法,AS 法,FMI法,LRNS法)を 承 認 し て お り(IAGA News1993),それぞれの手法のサブルーチンコー ドも公開されている.地磁気観測所でもこれらの手 法についての調査がなされ(山田(1997);小池 他 (1998)),現在ではそれらの手法のひとつである LRNS法(Hattingh et al.(1989))を業務に取り入 れ,ハンドスケールによる読み取り値との比較参考 に利用している.しかし,その LRNS法も高頻度の 速報発信に向いている手法とは言えず,ハンドス ケールによる読み取りと同じ1日1回の頻度でしか 計算を行っていない.本稿では,速報性の高い情報 発信を行うために新たに開発した,より高頻度で K 指数を算出する新手法について報告する.なお本調 査は,平成24年度から26年度にかけて行われた調査 研究「地磁気現象検出の迅速化と地磁気現象に関す る情報活用に関わる調査」の一環として行われたも のである. 2.LRNS法の問題点  地磁気観測所が業務に取り入れている LRNS法に K指数速報値を計算機で算出する新しい手法 1 地磁気観測所テクニカルレポート 第12巻第1,2号 1 -9頁 平成27年3月

Technical Report of the Kakioka Magnetic Observatory Vol.12, No.1,2, pp.1 - 9, March 2015

K指数速報値を計算機で算出する新しい手法

長町信吾 地磁気観測所調査課 2014年9月30日受領,2015年1月21日改訂,2015年1月30日受理 要   旨  地磁気変化の静穏時曲線を1時間ごとの折れ線で表現し K指数を計算機で読み取る手法を新た に開発した.K指数読み取り精度は LRNS法よりも概ね高く,特に K指数5以上のスレットスコ アで LRNS法よりも良い結果が得られた.この方法を用いて1時間ごとに地磁気活動を評価し, 地磁気観測所ホームページで速報発信を開始した.

(3)

は,K指数を速報的に算出するうえで以下の(イ) (ロ)のような問題点がある.また,速報性とは別 に(ハ)のような問題がある. (イ)欠測があると計算できない  LRNS法では連続する24時間分のデータから静穏 時曲線を推定する.その24時間中に1つでもデータ の抜けがあると計算できなくなってしまう.数分程 度の抜けであれば,直線内挿等の方法でダミーデー タを挿入することで問題を回避できるかもしれない が,もし仮に半日にもおよぶ欠測が発生したとし て,そのすべてをダミーデータに置き換えることは 現実的な処理とは言い難い.ひとたび欠測が生じて しまえば,欠測発生から24時間が経過しないと K指 数を算定できないため,速報性が大きく損なわれる ことになる. (ロ)計算区間の区切り方によって精度が異なる  LRNS法で使用する24時間分のデータの区切り方 によっては,同じ時間帯であっても異なる形の静穏 時曲線を算出することがある.例えば,3時から6 時までの3時間分の静穏時曲線を算出したい場合で も,その日の0時から24時の24時間分のデータで算 出した結果と,前日の12時から当日の12時までの24 時間分のデータで算出した結果では異なっている可 能性がある.ゆえに LRNS法を使用する場合は,最 も信頼できる結果を出力すると期待できる,日変化 の小さくなる夜間に計算期間の区切りを設定するこ とが推奨されている.K指数を速報的に算出するに は,計算する24時間分のデータの区切りを準リアル タイムに変えながら計算しなければならないが, データの区切り位置によっては精度に差が出てしま う可能性がある. (ハ)擾乱の周期によっては静穏時曲線の推定精度 が下がる  磁気嵐の主相の発達時のような,周期数時間以上 の擾乱が発生した場合,その擾乱に引きずられたよ うな形の適切ではない静穏時曲線を推定してしまう 場合がある.K指数は実際の地磁気変化と静穏時変 化との較差から算出されるため,このような場合は K指数を過小評価してしまう.その一例として2012 年11月 1 日 の 水 平 成 分(以 下 H成 分)の 変 化 と, LRNS法による推定静穏時曲線を図1に示す.6時 から12時にかけて磁気嵐の主相が発達し,100nT以 上の変化を示している.LRNS法による推定静穏時 曲線は,その主相の発達に引きずられる形で大きく 下にさがっている.通常の静穏時変化は50nT程度 の振幅なので,この LRNS法による推定は明らかに 不適切である.実際,6時から9時の間の K指数は ハンドスケールでの読み取りでは5であったのに対 し,LRNS法での読み取りでは2と過小評価されて いる.この問題は,LRNS法導入の調査段階から認 識されていながら(小池 他(1998)),現在まで有 用な改善策を見出すことができていない. 3.新手法  前章の3つの問題点を LRNS法の改良により解消 することは困難と考え,新手法を開発することにし た.  新手法の基本的なアイディアは以下の2点であ る. ・毎正時瞬間値を結んだ1時間ごとの折れ線で静穏 時曲線を表現する ・各々の時間帯の折れ線が過去の統計から妥当と考 えられる範囲を超えた場合は修正を施す  図2に模式図を示す.図2(上)の長破線が毎正 2 長町信吾 図1 2012年11月1日の H成分.青線が観測値,赤線が LRNS法による推定静穏時曲線. 図2 新手法の模式図.上図の長破線は毎正時瞬間値を結 んだ直線,点線で挟まれた範囲が過去の統計から静 穏時曲線として妥当と考えられる範囲.下図が採用 静穏時曲線.1時台と2時台は上図の点線の範囲を 逸脱しているため,修正が加えられている.また, 2時台の採用静穏時直線の始点は1時台の線の終点 に繋がるよう平行移動している.点線は平行移動前 の直線.

(4)

時瞬間値をそれぞれ結んだ折れ線,点線が過去の統 計から求めた,各々の折れ線が収まるべきと考えら れる範囲を表している.0時台の時間帯では,長破 線が点線の示す範囲に収まっているため,長破線を そのまま静穏時曲線として採用する.一方で1時台 および2時台の時間帯では,長破線は点線が示す範 囲を逸脱しているため,点線の範囲に収まるように 修正を加える.また,修正が加わった時間帯では, 修正後の直線の終点が正時瞬間値と一致しなくな る.このような場合でも静穏時曲線に不連続を生じ させないよう,次の時間帯での直線の始点が前の時 間帯の終点と繋がるように上下に平行移動させる. 最終的な採用静穏時曲線は図2(下)のようになる.  新手法では静穏時曲線の算出に毎正時瞬間値しか 使用しない.このため,短期間の欠測が生じたとし ても,静穏時曲線算定に大きな影響は与えることは なく,仮に長期間の欠測が生じたとしても,復旧後 速やかに静穏時曲線の算定を再開することができる と考えられ,前章(イ)の問題点の改善が期待でき る.また,24時間ごとを一区切りとする LRNS法と 異なり,新手法では1時間ごとが一区切りとなるた め,前章(ロ)の問題点は発生しない.また,過去 の統計を参照することで,静穏時曲線が長周期の磁 場擾乱に引きずられにくくし,(ハ)の問題点を改 善できると期待される.さらに,1時間ごとに静穏 時曲線を決められることから,地磁気の擾乱具合を 1時間ごとに自動判定し,速報発信に利用すること も可能になると考えられる.  次節から上記のアイディア2点について詳しく述 べる. 3.1 毎正時瞬間値を結んだ1時間ごとの折れ線 で静穏時曲線を表現する  K指数が0と判定されるような地磁気活動が極め て静穏な時間帯は,想定される静穏時変化と実際の 地磁気変化との差がほとんどないということを意味 する.図3に,1日を通して K指数が0と判定され た2012年10月20日の H成分の変化を示す.これに毎 正時を直線で結んだ折れ線を重ねてみる.図の見た 目の印象からは,この1時間ごとの折れ線表現でも 静穏時曲線をある程度的確に表現できているように 感じられる.  この折れ線表現が実際に K指数0をどこまで正し く的中させるかを調査した.1992年~2012年の20年 分の確定毎分値から,H成分と D成分それぞれで K 指数0と判定された日時を抜き出し,折れ線表現か ら読み取られた K指数との比較を行った.その正答 率と誤答率を表1に示す.概ね,75%程度の正答率 であり,99%以上が1以下と判定される.また,3 以上と判定された事例は存在しない.次章で詳しく 述べるが,これは LRNS法の正答率と同等の成績で ある.K指数0の判定においては折れ線表現でも LRNS法と同程度の妥当な判定が行えることが分 かった. 3.2 過去の統計から妥当と考えられる範囲を超 えた場合は修正を施す  K指数が0以外の時間帯にも折れ線表現を適用し ようとする場合,単純に毎正時を結んでしまうと, 例えば磁気嵐中などの長周期の地磁気変化に引きず られてしまい,前章で述べた LRNS法の(ハ)と同 様の問題が発生してしまう.そこで,各々の時間帯 における直線が取り得る傾きに制限を与えることを 考える.前節の調査で使用した1992年~2012年の K 指数0の日時において,各月,各時間ごとに取り得 た直線の傾きの最大値と最小値を調べた.静穏時曲 線として妥当な直線の傾きは,その最大値と最小値 を超えない範囲に分布するものと考え,もし単純に 毎正時を結んだ直線の傾きがその最大値(もしくは 最小値)を超えた場合は,その最大値(もしくは最 小値)を妥当な静穏時直線の傾きとして適用するも のとした.例えば,H成分で1月の0時台において K指数が0であった事例は237事例あり,傾きの最 大 値 は5.50nT/hour,最 小 値 は -18.00nT/hourで あった.もし,1月の0時台に単純な毎正時直線の 傾きが7.20nT/hourになったとすると,K指数0の ときの最大傾きを超えているので,5.50nT/hourを その区間の静穏時直線の傾きとして採用する.図4 K指数速報値を計算機で算出する新しい手法 3 図3 K指数が全ての期間で0と判定された2012年10月20 日の H成分.青線が観測値,赤線が毎正時を結んだ 1時間ごとの折れ線. 表1 折れ線表現での K指数正答率.ただし,1992年~2012 年の K指数0と判定された日時のみでの調査結果.

(5)

に2012年10月8日の H成分を例として示す.6時 ごろから磁気嵐の主相が発達しており,そのまま毎 正時を直線で結んだ線では主相の発達に引きずられ る形となり,もっともらしい静穏時曲線にはならな いが(図中赤線),上述の方法で傾きに制限を加え れば主相の発達の影響を軽減することができる(図 中緑線). 4.LRNS法と新手法との比較 4.1 正答率  新手法がどの程度正しく K指数を読み取ることが できるかを評価するため,LRNS法での読み取り結 果との比較を行った.期間は2008年から2012年で, 地点は柿岡である.新手法での読み取りには,確定 毎秒値を使用した.確定毎秒値には発雷時などに発 生するパルス状のノイズや,感度測定用の較正信号 のようなステップ状の異常値が含まれる.そこで, 前後差(あるデータとそれの1秒前のデータの差) が5nT以上ある場合をパルス状の異常値として除 去(欠測扱い)した.また,柿岡構内にある副磁力 計のデータと確定毎秒値の差をとり,過去2時間分 の差分値の中間値から2nT以上の差があるものは ステップ状の異常値と判断し除去した.一方で,比 較対象となる LRNS法での読み取りでは,異常値を 欠測扱いするとその日一日で K指数を判定できなく なるため,すでに異常値処理がなされ,欠測の存在 しない確定毎分値を使用した.LRNS法と新手法の それぞれの正答率を表2~4に示す.横にハンドス ケールでの読み取り値,縦にハンドスケールの読み 4 長町信吾 図4 2012年10月8日の H成分.青線が観測値,赤線が毎 正時を結んだ折れ線,緑線が各時間帯における直線 の傾きに制限を加えたもの. 表2 LRNS法および新手法の正答率(H成分).横がハンドスケールでの読み取り値,縦がハンドスケールと各手法での読み取 り値の偏差,表中の数字はそれぞれの場合の事例数を表す. 表3 LRNS法および新手法の正答率(D成分).記述方法は表2に同じ. 表4 LRNS法および新手法の正答率(H,D成分のどちらか大きい方).記述方法は表2に同じ.

(6)

取り値と LRNS法および新手法での読み取り値の偏 差を,表中の数字はそれぞれの項目に該当する事例 数を表している.例えば,ハンドスケール2で偏差 +1の項目は,K指数がハンドスケールで2と判定 されたもののうち,各手法で3と判定された事例の 数を表している.網掛け部分は偏差0,すなわち正 答した事例数である.H成分と偏角成分(以下 D成 分),両成分でどちらか大きい方のみを採用した場 合とで別々に集計した.正答率は,例えば K指数0 の正答率では,「(ハンドスケール,計算機読み取り でともに K指数0と判定された数)/(ハンドスケー ルで K指数0と判定された数)×100」として計算 した.太字で示されている部分は,他方に比べて正 答率がより高かったものである.同率だったものも 太字で表している.  概して新手法の方が正答率が高い傾向にあるが, それほど極端に差があるわけではない.また,K指 数3の正答率は,いずれの成分でも LRNS法のほう が高い.K指数7は,どちらの方法でも正答するこ とができなかった.また,新手法では D成分でハン ドスケールの K=2を6と判定した事例が存在す る.これは2011年3月11日の東日本太平洋沖地震の 発生で副磁力計の計測が止まってしまい,同時に主 磁力計が地震で回転した際に生じたステップ状の異 常値を除去できなかったために起こったものであ り,新手法の K指数読み取り方法に直接の原因が あったものではない.  K指数0から2を「穏やか」,3と4を「やや乱 れている」,5以上を「乱れている」と3グループ に分けたうえでの正答率を比較した結果を表5~7 に示す.横がハンドスケールでの判定,縦が LRNS 法および新手法での判定,網掛け部分が正答した事 例数である.「やや乱れ」判定では LRNS法が,それ 以外では新手法のほうが正答率が高かった.これは 新手法が K指数3の判定成績が悪かった影響と考え られる.新手法では D成分で「穏やか→乱れてい る」の大外れが1例のみ存在するが,これは前述し た東日本太平洋沖地震の影響によるものである.ま た,LRNS法には「乱れている→穏やか」の大外れ も1例のみ存在する.これはまさに2章の図1で示 した事例である.一方で新手法では,このような大 外れは存在しない. 4.2 スレットスコア  表5~7を見ればわかるとおり,地磁気の活動度 は「穏やか」が圧倒的多数であり,「やや乱れてい る」や「乱れている」はごく少数である.このよう な稀にしか起こらない事象の予測精度の評価にはス レットスコアがよく用いられる.これは,稀にしか 起こらない事象が「起こった」か「起こらなかっ た」かの2つのカテゴリーに分けてその精度を評価 するもので,スレットスコアおよび空振り率,見逃 し率は表8中の表記を用いて次のように定義される (気象庁予報部(2013)).        D  スレットスコア=          B+ C+ D K指数速報値を計算機で算出する新しい手法 5 表5 3段階評価での正答率(H成分).横がハンドス ケールでの読み取り値,縦が各手法での読み取り 値,表中の数字はそれぞれの場合の事例数を表す. 表6 3段階評価での正答率(D成分).記述方法は表5 に同じ. 表7 3段階評価での正答率(H,D成分のどちらか大き い方).記述方法は表5に同じ. 表8 スレットスコアでの評価におけるカテゴリー分け

(7)

      B     空振り率=          B+ D       C     見逃し率=          C+ D  H,D成分のどちらか大きい方を採用した場合で, 稀にしか起こらない事象として,K指数3以上と設 定した場合と K指数5以上を設定した場合での LRNS法と新手法のスレットスコア,空振り率,見 逃し率を表9,10に示す.成績の良かった方を太字 で表している.  K指数3を閾値とした場合の見逃し率は LRNS法 の方が成績が良い.しかし,それ以外はすべて新手 法の方が好成績である.このことから,新手法は K 指数3を小さめに判定してしまう傾向はあるもの の,K指数が大きい場合の判定精度は LRNS法より も優れていることがわかる. 4.3 推定静穏時曲線の形  地磁気が静穏だった日,磁気嵐が起こった日など のいくつかの事例を抽出し,LRNS法および新手法 によって推定された静穏時曲線の見た目の違いにつ いても比較した.  図5は地磁気が静穏であった2012年9月26日の H 成分である.図中の数字は,ハンドスケールで読み 取られた K指数および LRNS法,新手法で読み取ら れた K指数である(新手法の K指数のみ1時間ごと 24個の数字が示されているが,これについては次章 で述べる).新手法の推定曲線は折れ線であるので 多少角ばって見えるが,LRNS法および実際の地磁 気変化とも大きな違いは無く,K指数の読み取りに おいても LRNS法,新手法ともにほぼ適切に行えて いる.一方,図1で示した2012年11月1日の磁気嵐 時の H成分に新手法の推定曲線を追加したものを 図6に示す.6時から12時の磁気嵐の主相で,新手 法では減少幅が小さくなり,K指数の過小評価も改 善している.図7はハンドスケールでの読み取りで K指数7と判定された区間を含む,2012年3月9日 の H成分である.図6と同様,新手法のほうが磁気 嵐の主相部分での減少幅が小さく,妥当な推定を 行っているように見えるが,LRNS法と同様に K指 数7を的中させることはできなかった. 5.新手法を用いた情報発信  前章の結果から,新手法は LRNS法と比較して同 等以上の正答率があることがわかった.特にスレッ トスコアの成績は LRNS法よりも良く,大きな K指 数をより適切に判定できている.加えて,LRNS法 が2章(ハ)の問題のため,1日1回の K指数判定 しか行っていなかったのに対し,新手法は1時間ご 6 長町信吾 表9 K=3を閾値とした場合のスレットスコア 表10 K=5を閾値とした場合のスレットスコア 図5 2012年9月26日の H成分.青線が観測値,赤線およ び緑線が LRNS法および新手法による推定静穏時曲 線.数字はそれぞれの手法で読み取られた K指数. 新手法のみ1時間ごとの「過去3時間内の疑似 K指 数」を記載している. 図6 2012年11月1日の H成分.線の色,数字の意味は図 5に同じ. 図7 2012年3月9日の H成分.線の色,数字の意味は図 5に同じ.

(8)

とに静穏時曲線を判定するため,最小で1時間ごと の活動度判定が可能になる.K指数は本来3時間ご とに決められる数字であるが,1時間ごとに「過去 3時間の疑似 K指数」を算出することで,1時間間 隔での地磁気活動度評価が可能である.図5~7に はこの1時間毎の疑似 K指数も示してある.  この新手法を用いた「過去3時間内の地磁気活 動」の速報を2014年6月末より,地磁気観測所ホー ムページで提供を開始した(図8).1時間ごとの 疑似 K指数とともに,4.1節で定義した「穏やか」 「やや乱れている」「乱れている」の3グループの判 定と,それを視覚的に表すロゴマークの表示を行っ ている(図9).更新間隔は1時間であるが,静穏 時直線の判定間隔を短縮する(例えば30分ごと)な どの工夫を行えば,将来的にはさらに更新頻度を上 げることができると考えられる. 6.まとめ  静穏時変化を1時間ごとの折れ線で表現し,K指 数を算出する新しい手法を開発した.IAGAが推奨 する K指数算出手法のひとつである LRNS法には, ・1日分のデータに1か所でも欠測があると,欠測 の無い時間帯においても算出できなくなる ・速報性が低い K指数速報値を計算機で算出する新しい手法 7 図8 2014年8月14日7:30(世界時)ごろの地磁気観測所ホームページ.4時から7時(世界時)の地磁気活動は K指数1相 当で「穏やか」という判定がアップロードされている. 図9 地磁気活動を表すロゴマーク.左が「穏やか」,中 央が「やや乱れている」,右が「乱れている」を表し ている.

(9)

・擾乱の周期によっては精度が下がる という欠点があったが,新手法はそれらの欠点を改 善 す る こ と が で き た.K指 数 の 判 定 精 度 も 概 ね LRNS法より成績が良く,スレットスコア,空振り 率,見逃し率の評価でも,特に K指数5を閾値とし た場合で LRNS法よりも高い成績を収めた.  地磁気活動度を「穏やか(K指数2以下)」,「やや 乱れている(K指数3および4)」,「乱れている(K 指数5以上)」の3段階でカテゴリー分けし,新手 法を用いて1時間ごとに評価した結果を地磁気観測 所ホームページで速報発信するサービスを2014年6 月末より開始した.静穏時直線を判定する時間間隔 を短縮するなどの改良を加えれば,1時間よりもさ らに短い間隔で更新することが可能になると考えら れる. 参考文献

Hattingh, M., L. Loubser, D. Nagtegaal, Computer K-index estimation by a new linear-phase, robust, non-linear smoothing method, Geophys. J. Int,99, 533-547,1989 IAGA News,32,27-28,1993 気象庁予報部,平成25年度数値予報研修テキスト,130-134,2013 小池捷春,玉谷智佐,長谷川一美,デジタル K採用に関 する調査─試験運用結果とその評価─,地磁気観測 所技術報告,38(1),1-10,1998 山田雄二,K指数決定のデジタル化について─ LRNS法の 場合─,地磁気観測所技術報告,37,58-68,1997 8 長町信吾

(10)

K指数速報値を計算機で算出する新しい手法 9

A new comput

at

i

onal

met

hod f

or

r

api

d es

t

i

mat

i

on of

t

he K-

i

ndex

by

Shingo NAGAMACHI Kakioka Magnetic Observatory

Received 30 September2014; received in revised form 21 January 2015; accepted 30 January 2015

Abstract

We have developed a new computational method for estimating the K-index. This method represents the quiet-day pattern of geomagnetic variation by a polygonal curve with inflection points at intervals of one hour. The accuracy of this new method is higher than that of the Linear-phase Robust Non-linear Smoothing (LRNS) method; in particular, we have obtained good results for the K >5 threat score. By using this method, we have begun to upload rapid geomagnetic activity estimates onto the website of the Kakioka Magnetic Observatory.

(11)

1.はじめに  地球磁場に貫かれた海水が流動する時,海水中に 起電力が生まれることはマイケル・ファラデーが理 論的に予想し,自らテームズ河で実験したことで知 られている.その後,津波の起電力を測定する試み は数多く行われているが,確実な信号が得られた報 告は見当たらない(Manoj et al.(2010)).  一方,海水中に励起された電流は2次的に磁場を 発生し,津波による誘導磁場(以下,津波誘導磁 場)として,海底に設置された磁力計で信号が得ら れただけでなく,起電力の信号も得られた報告があ る(Toh et al.(2011)).陸上の地磁気観測施設に よって津波誘導磁場が観測された例としては,2010 年2月27日チリ沿岸の地震津波(M8.8)で,震央 から3500km離れたイースター島(IPM)で明瞭な 現象の報告がある(Manoj(2011)).さらに2011年 3 月11日 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 津 波 で は,父 島 (CBI)での津波誘導磁場の現象が報告されている (Hamano et al.(2011)).後者の現象については, 津波と誘導磁場に関する数値モデルも開発され,詳 細な解析による研究が報告されている(舘畑・浜野 (2011);舘畑・浜野(2012)).  今回,新たな津波誘導磁場の記録を求め,父島 (CBI)に関して2013年から1995年までのデータを 遡って調査した. 2.理論  津波誘導磁場に関する基礎として,津波誘導磁場 の理論を述べる.潮汐流の様に,鉛直方向に均一な 海水の流動に対する詳細な考察は,Sanford(1971) に詳しい.その後,津波誘導磁場を軌道衛星から観 測するために,実用的でシンプルな考察と定式が発 表された(Tyler(2005)).さらに海底に設置した観 測装置で津波誘導磁場を検知するために,海底の自 己 誘 導 効 果 ま で を 考 慮 し た 定 式 化 が 行 わ れ た (Sugioka et al.(2014)).  地球磁場下で海水の流動がフレミングの右手の法 則(Fleming’srighthand rule)に従って誘導電流を 生じ,さらにアンペールの法則(Ampere’s law)に 従って2次的に生まれる津波誘導磁場の原理を示す 父島(CBI)における津波誘導磁場の現象記録 11 地磁気観測所テクニカルレポート 第12巻第1,2号 11 -19頁 平成27年3月

Technical Report of the Kakioka Magnetic Observatory Vol.12, No.1,2, pp.11 - 19, March 2015

父島(CBI

)における津波誘導磁場の現象記録

舘畑秀衛 地磁気観測所技術課 2014年10月7日受領,2014年12月15日改訂,2015年1月30日受理 要   旨  津波によって導電性のある海水が流動する時,地球磁場との相互作用によって起電力が生じ, 海水中に誘導電流が流れる.この電流から2次的に誘導磁場が生まれる.陸上の観測施設から津 波による誘導磁場が観測された例は,2010年2月27日チリ中部沿岸の地震津波による太平洋の イースター島での報告と,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による津波による観測の報 告がある.陸上からの誘導磁場の明瞭な観測の報告は,この2例のみで,観測点としてもイース ター島と父島だけであった.しかし父島二見港検潮所で高さ1m以上の津波を観測した例は過去 にもあり,さらに過去の津波に関する誘導磁場の現象を発掘すべく,父島の地磁気観測データを 1995年まで遡って精査したところ,他にも誘導磁場の現象が発見された.前述の平成23年(2011 年)東北地方太平洋沖地震津波に加えて,新たに明瞭な事例が4例,不確実な事例1例が発見さ れ,父島での観測例は合計6例となった.明瞭な事例には,津波の高さが22cmの小津波もある. 津波の振幅と誘導磁場の地磁気の鉛直 Z成分(以下,Z成分)の振幅との比は,感度として約1.0 (nT/m)となった.また父島二見港検潮記録に対して,誘導磁場の方が10~20分程早く発現する 性質があり,防災上注目に値すると思われる.

(12)

(図1).  図1から,北半球の下向きの地球磁場下では,海 水の運動方向に向かって左手の方向に誘導電流が流 れることが理解される.この磁力線は,電流 Jから 円弧を描いて観測点を通過する.津波が観測点から 十分遠距離にあれば,対称性から磁力線は島の水平 面に対して垂直に通過すると近似でき,津波誘導磁 場は鉛直成分が卓越すると考えられる(図2).  また,津波が父島から離れていても津波誘導磁場 は観測点に届くため,検潮記録よりも早く発現する と予想される.つまり津波誘導磁場の観測は,一種 の遠隔観測の性質を持つと考えられる.  図1,2は模式的に示している.津波が観測点に 向かって進行するとき,津波誘導磁場が観測点を下 向きに通過する.地磁気観測では下向きの磁場を正 とするため,津波の「押し波」が地磁気 Z成分の正 の変化として観測される.  図3に父島二見検潮所と地磁気観測点(CBI)の 位置を示す.二見検潮所は,父島の西側二見港の北 側の海岸に位置し,父島(CBI)は検潮所の北西側 の三日月山の上の標高155mに位置している.  なお,この地磁気観測点位置は,2002年12月2日 の移設後の位置である. 3.データとフィルター処理  父島(CBI)は1970年11月の予備観測が始まりだ が,データは公開されている1993年11月以降の秒値 データを使用した.この期間のセンサーは主に島津 製作所の MB-162である.ただし近隣道路からの車 両ノイズのため,2002年12月2日に観測点移設が行 われて現在の場所に移動している.  二見港検潮所は1975年4月の開所で,検潮記録は 1990年からデジタル化しており,15秒サンプリング のデータを使用した.調査対象とした津波は,1994 年10月4日22時22分北海道東方沖地震(M8.2)か ら,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震津波 までとした.  検潮データ,地磁気データともにフィルター処理 を行った.検潮データは1日2回程度の潮汐成分を 含み,地磁気データも日変化等の長周期成分を含ん でいるため,周期3~30分程度の津波と津波誘導磁 場を分離する処理が必要になる.  検潮データは,潮汐成分除去のために FFTを応 用した透過特性1~60分のバンドパスフィルタを用 い,地磁気データには,60分間の移動平均値を差し 引いて長周期成分を取り除くハイパスフィルターを 用いて処理した.  対比させる2種類のデータに異なるフィルター処 理を行ったのは,検潮データが滑らかなデータであ るのに対し,秒値地磁気データは秒単位の欠測が希 にあり,FFT処理に不向きであったためである. 4.津波誘導磁場の現象例  1994年から2011年までの津波で,父島で津波が観 測された20事例について調査を行った.それぞれの 津波による誘導磁場現象の有無と明瞭さの程度,津 波の高さ等を表1に示す.また,津波誘導磁場の観 測では別起源の地磁気変動がノイズとなり,観測不 能となる場合もあるため,柿岡のK指数日合計を磁 気的な擾乱の目安として示した.  各事例の津波の到達時刻(始まり),および高さ に関しては気象庁地球環境・海洋部の確定値を用い た.確定値とは,平常潮位(潮汐成分を含む)から の最大高さである.津波誘導磁場の現象の初動,お 12 舘畑秀衛 図1 地球磁場,津波の海水流動,起電力,2次誘導磁場 の関係   3次元の x,y,z座標で,津波は x方向に伝播して おり,海水の流速を Vxとし,津波誘導磁場が発生 するメカニズムを示す.各変数は,F;全磁力,Vx; 流速,J;誘導電流,b;津波誘導磁場である. 図2 津波によって誘導される磁場と地磁気観測点 津波から発生する誘導磁場が,地磁気観測点を通過 する様子を模式的に示す.各変数は,Vx;津波によ る海水の流速,b;海水単位体積からの誘導磁場で ある.

(13)

父島(CBI)における津波誘導磁場の現象記録 13 図3 父島(CBI)と父島二見港検潮所 父島(CBI)の位置を赤丸で示し,父島二見検潮所を青丸で示す.国土地理院の webサービス地図を利用した. 表1 調査対象とした地震津波 津波誘導磁場が明瞭に現れている事例を◎,認められる事例を○,不確実な事例を△,ノイズ等で判別できない事例を × で示している.さらに柿岡(KAK)の日合計 K指数20以上と,津波高さ20cm以上を灰色で示している.2010年12月22日 父島近海地震津波の津波高さ22cmは,津波の最大高さの気象庁確定値であり,括弧内の13cmは振幅比較に使用した部分 の高さである.日合計 K指数は,0~24UTCの合計である.

(14)

よび振幅は今回の調査で読み取った.磁場の振幅 は,津波の高さの測定方法に準じて,津波誘導磁場 と推定されるシグナル部分の正の最大値(片振幅) を振幅とした.図4,図6~図10は地磁気 Z成分と 検潮記録を対比させて表示している.ただし,それ ぞれは適宜,オフセットしている.地震の発生時刻 に関しては利便性のために日本標準時(JST),他の 時刻は特に記述がなければ協定世界時(UTC)であ る.それぞれの現象と津波誘導磁場に関する幾つか の知見を以下に紹介する. 4.1 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震 (M9.0)  調査対象とした事例中,最も明瞭な津波誘導磁場 の記録である.当日の日合計 K指数は29で静穏とは 言えないが,誘導磁場が現れた数時間の間は比較的 静穏であったのと,津波の高さが182cmと高かった ため,最も明瞭な記録となっている(図4).  検潮記録による津波の到達時刻は,07:11であ る.一方,津波誘導磁場の初動は06:48であり,約 20分早く現象が現れている.津波の最大高さは07:46 に182cmを記録しており,誘導磁場の方は07:41に 1.6nTである.  津波誘導磁場を読み取る場合,例えば別起源の現 象が混入して判定が難しい場合がある.前述のよう に,津波誘導磁場は Z成分に卓越する性質があるこ とを利用し,地磁気の水平 H成分(以下,H成分) と Z成分を見比べるのが有効である.地磁気の垂直 成分である Z成分と,水平成分である H成分を, フィルター処理を行わない元データの状態で示す (図5).  元データでは津波誘導磁場と同時に,フィルター 処理で除去されていた長周期変動が確認できる.電 離圏、磁気圏を流れる電流による磁場は,水平成分 が卓越する性質がある.Z成分に津波の初動に対応 する津波誘導磁場が現れているが,対応する時刻の H成分では微弱であるので,垂直成分が卓越してい る.一方,06:00から Z成分の津波と同程度の周期 の現象があり,津波誘導磁場の初動と見紛いそうで あるが,H成分に注目すると Z成分に対応するピー クがあり,別起源の現象と判定される.同様に10:40 頃の現象も別起源と推定される.  この津波は調査した事例のうち,最も明瞭な津波 誘導磁場であるが,それでも他の起源の磁場が混入 するため,常に H成分と Z成分を比較して判定しな ければならない.  以降の事例は同様に H,Z成分の比較吟味を行っ 14 舘畑秀衛 図4 2011年3月11日14時46分平成23年(2011年)東北地 方太平洋沖地震津波(M9.0) 赤線で Z成分の磁場を,青線で二見港検潮所での津 波波形を示す.青丸で津波到達時刻を示し,赤丸で 津波誘導磁場の発現時刻を示す.振幅を読み取った 相と高さとを細実線でしめす.これらは図6~図10 で同様である.Z成分の一部をノイズとして削除し ている. 図5 2011年3月11日14時46分平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震津波(M9.0)での現象 灰四角で他起源による現象を示す.矢印で津波到達時刻と津波誘導磁場の現象を示す.

(15)

て判定している. 4.2 2010年12月22日父島近海の地震(M7.8)  震源が父島東方約170kmであり,調査期間で最も 近い波源の津波である.津波の高さは父島二見港で 22cmの小津波であるが,津波誘導磁場が明瞭に現 れている(図6).津波の到達時刻は17:43であり, 津波誘導磁場の初動は17:30頃と思われる.津波の 最大高さは18:11に記録されている.それぞれ振幅 が小さい波形であるため,青丸と赤丸で初動の対応 を示すと共に,対応する相を小黒丸で示した.17:05 頃から,Z成分の一部のデータを削除している.東 北地方太平洋沖地震津波と同様に,H成分との比較 から別起源の現象の重なりと判定したためである.  この津波では,赤丸,青丸で示した,それぞれの 初動部分の対応が良いが,後続する部分では対応が 良くない.後述する振幅の対比では初動の部分で高 さを比較している. 4.3 2010年02月27日チリ中部沿岸の地震  この津波は遠地津波特有の紡錘状に始まる検潮記 録となっており,津波の初動が不明瞭だが到達時刻 は05:21,津波誘導磁場の初動は05:03頃と思われ る(図7).津波の最大高さは07:22に43cm,対応 する津波誘導磁場の最大高さは06:48頃に約0.4nT となっている.  東北地方太平洋沖地震津波の津波波形と津波誘導 磁場では,それぞれの一山一山が対応させられる類 似性があるが,この事例では類似性が見られない. 4.4 2009年01月04日インドネシア,パプアの地 震(M7.4)  震央は父島から南南西約3100kmの遠地津波で, この事例だけが南方からの津波である(図8).津 波の到達時刻は00:17,高さは00:55に36cmとなっ ている.検潮波形は紡錘状に始まる遠地津波特有の ものになっている.対応する津波誘導磁場は00:00 頃から認められそうだが,津波の周期が約15分であ るのに対し,Z成分の現象は30分近い周期で,それ ぞれが異なっている.津波誘導磁場として,確実な 現象とは言い難い. 4.5 2007年1月13日千島列島東方(シムシル島 東方沖)(M8.2)の地震津波  震央が父島から北東に約2500kmの地震であり, 比較的珍しい正断層の地震による津波である(図 9).到 達 時 刻 は07:24,高 さ は08:32に38cmと なっている.日合計 K指数は0と静穏な期間だが, Z成分には周期1時間半程度の緩やかに変動する成 分が含まれている.津波誘導磁場の初動が判別し難 いが07:10頃と思われ,振幅は約0.4nT程度である. 比較的明瞭な津波誘導磁場の事例である. 4.6 2006年11月15日 千 島 列 島 東 方 の 地 震 (M7.9)  4.5の千島列島東方(シムシル島東方沖)地震の 約2ヶ月前に発生した地震で,震央も比較的近い が,発生した海域の水深が異なるのと,この地震が 逆断層とメカニズムが異なるために津波の波形も異 父島(CBI)における津波誘導磁場の現象記録 15 図6 2010年12月22日02時19分父島近海の地震(M7.8) Z成分の一部をノイズとして削除している.相の対 比のために小黒丸で,それぞれの波形のピークを示 す.津波の最大高さの確定値は,黒四角で示すピー クである.今回,振幅を対比するために使用したの は,小黒丸で示したピークである. 図7 2010年 2 月27日15時34分 チ リ 中 部 沿 岸 の 地 震 (M8.8) 相の対応が困難だが,それぞれの振幅を読取った ピークを小黒丸で示す. 図8 2009年01月04日04時43分インドネシア・パプアの地 震(M7.4)

(16)

な っ て い る(図10).到 達 時 刻 は14:12,高 さ は 46cmである.津波誘導磁場は,2007年の地震に比 較して明瞭であり,現象の始まりが14:00頃,振幅 は0.3nT程度である. 4.7 その他の地震の精査結果と総括  調査対象とした期間の,2006年千島列島東方の地 震より過去の事例では,明瞭な津波誘導磁場が認め られなかった.特に1996年2月17日イリアンジャヤ の地震津波は,検潮記録で194cmと,父島二見検潮 所の開設以来最も高い津波であったが,今回の調査 では津波誘導磁場が認められなかった.また,1994 年10月4日の北海道東方沖の地震の津波は151cmの 高さであったが,残念ながら欠測中であった.  結果として平成23年(2011年)東北地方太平洋沖 地震津波に加えて,前述の2010年2月27日チリ地震 津波の津波誘導磁場は父島(CBI)でも明瞭に現れ て い る 他,2010年12月22日 父 島 近 海 の 地 震 津 波, 2007年1月13日千島列島東方地震津波,2006年11月 15日千島列島東方地震津波でも明瞭な現象が認めら れた.また,2009年1月4日インドネシア・パプア 地震津波でも,不確実ではあるが現象が認められ る. 5.考察  平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震津波の 津波誘導磁場は,検潮記録に対して位相差があるも のの,一山一山が対応させられるほど似ている.ま た千島列島からの津波2例(2006年,2007年)で も,検潮記録と津波誘導磁場の波形の対応が良い. しかし,2010年チリ中部沿岸の地震では,それぞれ の波形が大きく異なっている.前者の3例の津波の 波源が,三陸沖と千島列島の波源から小笠原諸島沿 いに南下する津波であるのに対し,後者の津波が小 笠原諸島を東から西に直行して通過する津波である ことが一因かもしれない.  今回の調査期間中,1995年~2004年以前の津波事 例に津波誘導磁場が認められなかった.2002年の観 測点移設が車両ノイズ対策であったことを考える と,この年を境に観測環境によって S/Nが異なって いる可能性がある.また,日合計 K指数が20以上の 事例が多く,別起源の磁場の影響を受けて津波誘導 磁場の信号が埋もれた事例もあると考えられる.  明瞭な現象の5例に関して,検潮記録と津波誘導 磁場の振幅を比較すると,それぞれの振幅比は約 1.0(nT/m)になった(表2).  また,同じデータではあるがグラフとして示す (図11).  表2から,振幅比は津波の高さによらず,ほぼ一 定であることから,1.0(nT/m)の値は地磁気観測 による津波の検知感度と言える.ただし,検知感度 は地磁気観測点と海岸までの距離によって異なると 考えられることと,津波の屈折が周囲の海底地形に よることを考え合わせると,この値は父島(CBI) に固有な値であり,他の陸上観測点では異なる可能 性がある.また,図11から津波誘導磁場と津波高さ とは,線形の関係と思われる.ただしデータが少な いため,津波の高さ1m~1.5mの事例があれば, 16 舘畑秀衛 図9 2007年01月13日13時23分千島列島東方(シムシル島 東方沖)の地震(M8.2) 相の対応は比較的良好だが,Z成分の第一波にやや 長周期のノイズが重なっていると思われる.それぞ れの対応するピークを小黒丸で示す. 図10 2006年11月15日20時14分 千 島 列 島 東 方 の 地 震 (M7.9) 相の対応が困難だが,それぞれの振幅を読取った ピークを小黒丸で示す. 図11 津波誘導磁場と津波高さの振幅

(17)

より正確な検知感度が得られると考えられる.その 意味でも,約1.7mの津波が観測された1994年10月 4日北海道東方沖(M8.2)の津波来週時に地磁気 データが欠測していたのが惜しまれる.  津波到達時刻と津波誘導磁場の初動を,明瞭な5 事例について比較すると,津波誘導磁場の方が10~ 20分早く現れているのが大きな特徴である.津波誘 導磁場の観測が遠隔観測の性質を持つことを客観的 に示している.  今後の課題として,今回得られた津波誘導磁場の 事例が,不確実なものを含めても6例に過ぎず,ま た主観的に判定しているため,より客観的な数値実 験を用いる解析が望まれる.観測点の移設を行った 2002年以前の津波誘導磁場が見つからなかったが, 地磁気の H成分を利用して Z成分から津波誘導磁場 以外の起源の現象を取り除く手法を開発すれば,新 たな現象が発掘できるかもしれない.  また,父島(CBI)のような島の地磁気観測点は, 日本では海上保安庁水路部八丈島(現在は観測終 了),海外では前述のイースター島(IPM)の他,グ アム島(GUA)フランス領ポリネシア(PPT)等が 太平洋に散在しており,新たな津波誘導磁場の観測 データが発見される可能性は高く,今回の知見を活 かして新たな観測例を発掘するのは大きな課題であ る. 6.まとめ  1995年7月30日チリ北部沿岸の地震津波から平成 23年(2011年)東北地方太平洋沖地震までの津波20 事例について,父島(CBI)における秒値データを 精査し,不確実なものを含めて津波誘導磁場の現象 6例を得た.磁気嵐の無い静穏な状態では,2010年 12月22日父島近海の地震で,高さ22cmの小津波で も明瞭な津波誘導磁場が認められた.今回,津波誘 導磁場が認められた事例の津波の高さから考える と,概ね高さ50cm以上の津波から津波誘導磁場が 観測できそうである.東北地方太平洋沖地震津波時 のK指数日合計が29であったことを考えると,高さ 1m以上の津波では,確実に津波誘導磁場が観測さ れると期待できる.  津波の高さと津波誘導磁場の振幅(片振幅)の比 を検知感度とすると,約1.0(nT/m)であった.  検潮儀に比較すれば検知力が低いものの,海抜 155mの高台からの遠隔観測であることが特徴であ る.平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震で は,高さ数十 mの大津波に被災し,多くの検潮施設 が観測不能となった(気象庁(2011)).津波誘導磁 場の観測は,巨大な津波でも観測を継続可能であ り,新しい巨大津波計としての応用が考えられる.  また,父島における津波誘導磁場の初動は,父島 二見検潮所での観測より10~20分早く発現する性質 があり,防災上注目に値する特徴と思われる.  今回の調査で得られた津波誘導磁場の調査結果 が,地磁気観測と津波防災科学との新たな「掛け 橋」となることを期待する. 謝辞  父島(CBI)での津波誘導磁場の発見者は,海洋 研究開発機構(JAMSTEC)の浜野洋三上席研究官 であり,今回の調査に関して多くの御指導を頂き, 心から感謝致します.  気象研究所地震火山研究部(現:気象庁地磁気観 測所技術課)の山崎明主任研究官には,多くのアド バイスを頂きました.心からお礼申し上げます.  地球環境・海洋部海洋気象課から,父島二見港検 潮所の検潮データを提供頂きました.  最後に,1970年11月の予備観測に始まり,綿々と 父島での地磁気観測を維持し続けている当所の諸兄 父島(CBI)における津波誘導磁場の現象記録 17 表2 津波の高さと津波誘導磁場の振幅 津波の高さ(m)と,津波誘導磁場(nT)の振幅比を示す.

(18)

に感謝致します. 参考文献

Hamano Y., Kasaya T., Ichihara H., Tatehata H., Magnetic signals from 2011 Tohoku earthquake tsunami observed at Chichijima magnetic station of JMA (MIS036-P80), Japan Geoscience Union Meeting (DVD),2011.

気象庁,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震調査 報 告 第 Ⅰ 編,気 象 庁 技 術 報 告 第133号,123-279, 2011.

Manoj, C., A. Kuvshinov, S. Neetu, and T. Harinarayana, Can undersea voltage measurements detect tsuna -mis?,Earth Pl.Sp.,62(3),353-358,DOI:10.5047/eps. 2009.10.001,2010.

Manoj, C., Stefan, M., and Chulliar, A., Observation of Magnetic Fields Generated by Tsunamis, EOS, Vol. 92, No.2, DOI:10.1029/2011EO020002,2011. Sanford, T. B., Motionally induced electric and magnetic

fields in the sea, J. Geophys. Res., 76(15), 3476-3492, DOI:10.1029/JC076i015p03476,1971.

Sugioka H., Hamano Y., Baba K., Kasaya T., Tada N.

and Suetsugu D., Tsunami: Ocean dynamo genera -tor, Sci. Rep.,4:3596, DOI:10.1038/srep03596,2014. 舘畑秀衛,浜野洋三,父島で観測された2011年東北地方 太平洋沖地震津波による磁場変動の数値モデルを用 いた定量的解析(A32-02),日本地震学会講演予稿集 秋季大会,34-34,日本地震学会,2011. 舘畑秀衛,浜野洋三,父島で観測された2011年東北地方 太平洋沖地震津波による磁場変動の数値モデルを用 いた定量的解析(その2),日本地球惑星科学連合大 会予稿集(CD-ROM),HDS26-P07,日本地球惑星科 学連合,2012.

Toh H., Satake K., Hamano Y., Fujii Y. and Goto T., Tsunami signals from the 2006 and 2007 Kuril earthquakes detected at a seafloor geomagnetic observatory, J. Geophys. Res.: Solid Earth (1978 2012) Volume 116, B02104,

DOI:10.1029/2010JB007873,2011.

Tyler R. H., A simple formula for estimating the magnetic fields generated by tsunami flow, Geophys. Res. Lett., vol. 32, L09608, DOI:10.1029/2005GL 022429,2005.

(19)

父島(CBI)における津波誘導磁場の現象記録 19

Ts

unami

-

i

nduced Magnet

i

c Fi

el

d Recor

ds

at

t

he Chi

chi

j

i

ma I

s

l

and Obs

er

vat

i

on s

t

at

i

on

by

Hidee TATEHATA

Kakioka Magnetic Observatory

Received 7 October2014; received in revised form 15 December2014; accepted 30 January 2015

Abstract

Because seawater conducts electricity, its movement can generate electric fields and currents through its geomagnetic field; these currents induce secondary magnetic fields. The Chichijima geomagnetic observation station (CBI) is located in the Pacific Ocean on Chichijima Island, where the tsunami observation station (Futami tide gauge) is also located. Tsunami and magnetic data can be obtained concurrently on Chichijima Island because the distance between these observation stations is only 1 km. Chichijima Island is therefore suitable as a site for research on tsunami-induced magnetic fields. After investigating about twenty tsunami events in the CBI database and Chichijima Futami tide gauge datafrom 1995 to 2013,Iidentified six casesoftsunami-induced phenomena.Ofthe six events, the signal of one was faint, but the signals of the following five events were clear: the 2011 earthquake and tsunami off the Pacific coast of Tohoku (2011/3/11 M9.0), the Chichijima Island earthquake (2010/12/22 M7.4), the 2010 Chile earthquake (2010/2/27 M8.8), the Kuril Islands tsunami (2007/01/13 M8.2), and the Kuril Islands tsunami (2006/11/15 M7.9). The fact that so many induced magnetic phenomena have been detected at one observation station may attract worldwide attention to the CBI. During periods of low solar activity, the induced magnetic signal can be detected if the amplitude (peak-to-trough distance) of the tsunami is1 m or more. If a major tsunami with an amplitude of2 m or more hits Chichijima Island, the induced magnetic fields are definitely detectable. Analysis of the five events with clear signals revealed that the ratio of tsunami amplitude to induced magnetic field amplitude is about1. 0 m per nT. The fact that the tsunami-induced perturbation of the magnetic field is detectable 10-20 min before the tsunami waveform arrives is a great advantage from the standpoint of disaster prevention. The magnetic field perturbations induced by tsunamis can therefore serve as a bridge between the sciences of geomagnetism and tsunami disaster prevention.

(20)

1.はじめに  伊豆大島は,主に玄武岩の成層火山であり,火山 活動が活発である.近年でも中規模噴火が1912年, 1950年,1986年に発生しており,間隔は36~38年で ある(気象庁,2013).玄武岩は磁化強度が大きい ことが知られており,地下の熱や応力変化に対する 磁場変化が大きく検出されやすい.1986年噴火にお いては,三原山火口南側の観測点で地磁気全磁力が 1980年からそれまでの増加傾向から減少傾向に変化 し,1986年には減少傾向が加速した(Yukutake et al.,1990).また,電気比抵抗にも噴火に先行すると みられる変化が1984年から見られた(例えば,歌 田,2009).これまで東京大学地震研究所が主に三 原山の南側で全磁力連続観測を実施してきた中で, 次の噴火に備えて地磁気観測所においても火山活動 に伴う全磁力変化を検出するために, 2007年3月か ら 観 測 空 白 域 で あ っ た 三 原 山 火 口 北 側 の 2 点 (MIK1,MIK2)で全磁力連続観測を開始した.各 観測点における測器等の機器配置及び観測システム については,三島ほか(2011)に詳しい.MIK1及び MIK2の2観測点は,磁力計1台に2センサーを接 続することで運用している.図1に全磁力連続観測 点の配置を示す.MIK1と MIK2の2地点間距離は 40m程度である.火山活動に起因する全磁力変動を 抽出するために,火山活動の影響が小さい東京大学 地震研究所の OSM 観測点を参照点として観測点と の全磁力差を求めている.これまでの地磁気観測所 伊豆大島火山活動監視のための地磁気全磁力観測 ─データの変動の要因に関する議論─ 21 地磁気観測所テクニカルレポート 第12巻第1,2号 21 -28頁 平成27年3月

Technical Report of the Kakioka Magnetic Observatory Vol.12, No.1,2, pp.21 - 28, March 2015

伊豆大島火山活動監視のための地磁気全磁力観測

─データの変動の要因に関する議論─

笹岡雅宏 地磁気観測所観測課 2014年5月30日受領,2014年10月8日改訂,2015年1月30日受理 要   旨  地磁気観測所では伊豆大島三原山の火山活動を監視するために,火口北側の2地点(MIK1, MIK2)において地磁気全磁力観測を実施している.柿岡及び鹿屋を参照点として MIK1及び MIK2 について全磁力差を求めて比較考察した.その結果,MIK1においては永年変化に近い傾向を示 すが,MIK2においては異常な全磁力の増加傾向を示すことが分かった.MIK1及び MIK2の全磁 力変化の長期的傾向については,現在の伊豆大島の静穏な火山活動,即ち山体の冷却に伴う帯磁 の継続を反映していないと考えられる.また MIK1及び MIK2の全磁力差と Dst指数との対応が確 認されることから,太陽活動による地磁気擾乱等の見掛け変化により伊豆大島の全磁力変化につ いては説明できる可能性がある.これら全磁力差に見られる半年周期の変動成分については,季 節変化を含む太陽活動周期が反映される外部磁場擾乱の残差と考えられる. 【調査ノート】 図1 三原山火口付近と伊豆大島全域の全磁力観測点配置 (◎:地磁気観測所連続観測点,●:東京大学地震研 究所連続観測点,△:大島特別地域気象観測所) この地図の作成には,国土地理院発行の「数値地図 10mメッシュ(火山標高)」を使用した.(承認番 号 平23情使,第467号)

(21)

の観測結果については,三島ほか(2011)及び田口 ほか(2014)が報告しており,また,観測成果につ いては火山噴火予知連絡会に報告している.一方, 現在の伊豆大島の火山活動は静穏に経過しており, 活動状況に変化は見られない(気象庁,2014).  三島ほか(2011)及び田口ほか(2014)の報告で は,全磁力から年周変化を除いた変動成分につい て,その変動の原因が考察された.共に MIK1及び MIK2の長期的な全磁力の変化傾向については火山 活動に起因すると述べているが,具体的に火山活動 と 関 連 付 け た 議 論 は 何 も 無 か っ た.田 口 ほ か (2014)は,数ヶ月周期の全磁力変動が2観測点で 見られ逆相的であり,降水量(土壌雨量)との関連 について述べている.しかし,通常の火山における 全磁力観測でよく見られる見掛け変化(例えば,磁 気嵐による地磁気擾乱の残差)について何も言及さ れていないため,実は通常見られる見かけ変化を降 水量の影響と誤認した可能性があるのではないかと 危惧される.そこで,この通常疑われる見かけの全 磁力変化の存在に留意するとともに,実際に火山性 の変化が地磁気観測所の全磁力観測で捉えられてい るのかどうかについて調査検討する.本稿では, 2007~2013年を調査期間として,全磁力の長期的変 化に関する考察により MIK1及び MIK2の全磁力変 動の要因について議論する. 2.観測データ  三島ほか(2011)及び田口ほか(2014)は,参照 点との全磁力差の日平均を扱って議論した.地磁気 データには,Sq(昼間の電離圏渦電流系に起因する 地磁気日変化),及び磁気圏を流れる荷電粒子がも たらす磁気嵐等の磁場擾乱を含む太陽活動起源の外 部磁場変動が見られる.太陽活動に起因する変動成 分には,日変化のほかに準27日周期や季節変化(春 季と秋季にピークを示す半年周期)などが見られ る.この広域的に見られる外部磁場変動成分は日平 均して取り除かれるようなことはない.一方,離島 における全磁力観測では,海洋潮汐に起因する見掛 けの全磁力変動が生じるが,日平均を求めることで この変動成分を除去することができる(笹井・石 川,1985).この見掛けの海洋潮汐変動は海岸に近 い観測点のほうがより大きく観測される.伊豆大島 の全磁力観測の場合,日平均を利用すると見掛けの 海洋潮汐変動を除くことができるが,太陽活動起源 の変動成分を残すことになる.夜間値を利用する と,Sqを除くことができるが,磁場擾乱成分と海洋 潮汐の見掛け変動は残る.島内の参照点を用いる場 合は海洋潮汐変動を無視できるため日平均が用いら れると思われるが,本稿では笹岡ほか(2014)にな らい夜間値(02:00~04:00)を利用する.  三島ほか(2011)に述べられているように,伊豆 大島の全磁力データには欠測期間があるが,欠測の 原因は専ら機器・ケーブルへの浸水による障害であ り,多雨の夏季によく見られた.磁力計1台を共有 しているため,機器障害があると2観測点同時の欠 測が多い.三島ほか(2011)及び田口ほか(2014) は参照点との全磁力差について同様な結果を示し た.また,両報告とも全磁力の年周変化について地 中温度や大気温度の年周変化との相関から振幅及び 位相を決定しているが,示された伊豆大島の全磁力 変化は周期関数的な明瞭な周期性にフィットするよ うに見えず,やや強引に年周変化を決定しているよ うに思える.田口ほか(2014)は各日の5年平均に 正弦関数をフィッティングして年周変化を求めてい るが,このフィッティング誤差の大きさは,全磁力 差からトレンド成分と年周変化を差し引いた残差成 分の大きさとほぼ同程度に見える.年周変化を評価 する際には火山性等他の要因の影響を受けていない 期間の全磁力データを用いるのが望ましいが,田口 ほか(2014)の方法では残差成分の変動が誤差と見 分けがつかないので,残差成分が示す変動について 物理的に考察するのはもともと困難ではないかと思 われる.  年周変化の振幅と同等な火山性の変化が観測され る場合には,年周変化を除去したほうがよいが,三 島ほか(2011)が指摘したように,年周変化を超え るような全磁力変化は見られない.本稿では,全磁 力差からトレンド成分や年周変化を除去しないが, それらは緩慢な変化であるため三島ほか(2011)及 び田口ほか(2014)が示したような MIK1及び MIK2 の全磁力変動の比較を示すことは可能と考える. 3.議論 3.1 全磁力の長期的変化  三島ほか(2011)及び田口ほか(2014)の両報告 によると,島内の参照点との全磁力差の長期的変化 について,MIK1及び MIK2は共に増加傾向を示し, 火山活動の変化が反映されていると述べた.本稿で は,日本の基準観測点である柿岡と鹿屋を参照点と して各観測点との全磁力差を求めることによって, 伊豆大島における永年変化に対する全磁力の長期的 変化について考察する.図2上に柿岡,鹿屋及びそ の全磁力差について示す.永年変化としては高緯度 側から低緯度側の全磁力差を求めると,2012年にか けて減少から増加に変化するものの調査期間につい ては概ね減少傾向を示す(低緯度側から求めた高緯 22 笹岡雅宏

参照

関連したドキュメント

地震による自動停止等 福島第一原発の原子炉においては、地震発生時点で、1 号機から 3 号機まで は稼働中であり、4 号機から

定率法 17 条第1項第 11 号及び輸徴法第 13

2 学校法人は、前項の書類及び第三十七条第三項第三号の監査報告書(第六十六条第四号において「財

・ 改正後薬機法第9条の2第1項各号、第 18 条の2第1項各号及び第3項 各号、第 23 条の2の 15 の2第1項各号及び第3項各号、第 23 条の

条第三項第二号の改正規定中 「

直接線評価 :幅約 8.0m,奥行約 16.0m,高さ約 3.2m スカイシャイン線評価 :幅約 112.5m,奥行約 27.6m,高さ約 3.2m (5)

(以下、福島第一北放水口付近)と、福島第一敷地沖合 15km 及び福島第二 敷地沖合

[r]