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BM学群のFDと個人的授業改善の取り組み

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Academic year: 2021

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BM 学群の FD と個人的授業改善の取り組み

山口 有次 キーワード:授業参観、オムニバス授業、発言回数、課題レポート、e-Campus

概要

 BM 学群は、2019 年度に新宿区百人町の新キャンパスへ移転予定であり、その立地的 メリットを活かし、多数の施策を進めることが決まっている。それらを効果的に実行する ためには、それに携わる教員の教育能力を高めるファカルティ・ディベロプメント (FD) が不可欠である。既に 2014 年度から「教員相互の授業参観」をはじめとする FD の取り組 みを始めている。授業参観は、授業公開した教員にとっても、参観した教員にとっても、 大変よい刺激となり、参加した教員に授業改善の知見を得る良い機会を提供した。だが、 多くの教員が公開・参観しているとは言い難い。ある程度義務的な活動にならないと、な かなか教員が進んで活動に参加することに至らない。この取り組みが重要かつ不可欠であ ることに疑いの余地は無く、BM 学群では今後も工夫しながら継続していく方針である。 また、多数の教員によるオムニバス授業は、各教員が他の教員の講義を楽しんで聴講する 動きが見られ、教員の興味・関心に基づく、ゆるやかな授業参観として重要な知見を含ん でいる。  一方、こうした FD の成果を踏まえ、筆者が担当する専攻科目において、学生の積極的 な発言機会を増やす、毎回の授業に課題レポート提出を義務付けて授業外の学修時間を増 やすことを試みた。その結果、履修者数が 100 〜 200 人程度の場合でも、授業中の発言を 積極的に引き出すことは可能であり、発言率は概ね半数程度に限られたが、発言者の授業 1回当たり平均発言回数は一定水準以上を達成できた。ただし、履修者数が増えると1人・ 授業1回当たりの平均発言回数が減ることは避けられない。  毎回の授業に課題レポート提出を義務付けると、8 割程度の提出率を維持でき、授業時 間外の学修時間を確保し、授業の理解度を向上させることが可能である。これは、履修者 数が 200 人近くても同様である。ただし、毎回の授業前の課題レポート提出は、それをみ る教員の負荷が大きい。課題レポートを1本に限定し、そのかわり授業期間中に十分な時 間をかけて内容を充実させる方法も試したが、一長一短ある。今後は、毎回の授業前の課

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題レポート提出と研究視点の課題レポート提出の長所を組み合わせる方法を模索したい。

1.はじめに

 BM 学群は、2019 年度に新宿区百人町の新キャンパスへ移転予定であり、その立地的 メリットを活かし、以下の施策を進めることが決まっている。  • 専攻科目と実習に関する都心部の企業や他大学等との連携強化  • 学内外における専攻科目と関連性を持たせた定常的実習場所の設定  • 海外の大学との提携強化  • 学群と大学院の連携強化  • 多数の科目におけるアクティブ・ラーニングの推進  • e ラーニングの活用促進  • 学期制・時間割・授業時間を含めた教育の質の向上  • 学修成果を確認できる制度  これらを効果的に実行するためには、それに携わる教員の教育能力を高めるファカル ティ・ディベロプメント (FD)は不可欠である。BM 学群では、2014 年度から、「教員相 互の授業参観」をはじめとする FD の取り組みを始めている。それぞれはまだ発展途上に あるが、毎年工夫を重ねながら継続している。  一方、「多数の科目におけるアクティブ・ラーニングの推進」は、大規模履修者数の授 業では容易でない。まずは、授業内で多数の学生の発言を引き出し、教員と学生で活発な 議論を展開することが重要であり、さらに、主体的な学修を促しながら十分な学修時間を 確保することも当面の大きな課題といえる。そこで、BM 学群の FD の成果も踏まえ、筆 者の担当授業において、学生の積極的な発言機会を増やす、毎回の授業に課題レポート提 出を義務付けて授業外の学修時間を増やすことを試みた。  本稿は、BM 学群における FD の取り組みを記録・紹介するとともに、その成果を活か して筆者の担当授業において試みた発言機会増加と毎回授業の課題レポート提出に関する 実績データを共有することを目的とする。

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2.BM 学群の FD

 BM 学群では、FD や直接的な授業改善、学生の学修改善、履修指導の質的向上、ある いは、入試対策に貢献する各種の取り組みを開始した。開始年度で整理すると以下のとお りである。 〈2014 年度から〉  • 教員相互の授業参観  • 多数の教員によるオムニバス授業「特別講義(音楽産業論)」開講  • 高大連携をにらんだ「高校生のビジネスアイデアコンテスト」  • 有志ゼミ4年生による「母校訪問プロジェクト」 〈2015 年度から〉  • 初年次教育科目「社会人基礎」の共通シラバスとパワーポイント作成  • 1年生向けに「さくら〜にんぐ」の「さくドリル」80 点達成の定着化  • 目標にあわせて系統的な科目履修を促す「学修ストーリー」作成とその活用  • 複数教員による実習科目「ビジネス演習(会社経営)」開講  • ゼミ活動活性化を目指した「ゼミ対抗コンペ」を改編し、個人・グループでの研究成 果発表を促す「BM アカデミックワークショップ」開催 〈2016 年度から〉  • BM 学群生に配布した iPad を活かす電子教科書を複数科目に導入  • 大規模履修者数授業における授業補助アルバイト制度  このうち、直接的な FD として、2014 年度から「教員相互の授業参観」を開始した。実 施期間は秋学期の 11 月に限定し、公開授業は有志の専任教員を募り、参観者も参加を希 望する専任教員とした。さらに、申し込みの手続きやフィードバックなど、授業公開する 側の教員、参観する教員の相互に負荷を抑えるよう配慮した。初年度の公開授業は担当教 員 9 人・16 授業であり、参観は延べ 14 人であった。これはフィードバックシートの提出 件数であり、単に参加しただけを含めると 20 人近い。  この結果、授業公開した教員にとっても、参観した教員にとっても、大変よい刺激と なった。また、参加した教員には、授業改善を促す知見を得る機会を提供した。 〈「教員相互の授業参観」効果の例〉  • 自分と他の教員の授業の様子の違いを感じる。他の教員の授業運営の工夫を知る。

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 • ベテラン教員、学生満足度の高い授業の巧みな授業運営手法を学ぶ。  • 自分と専門分野の異なる授業の様子を知る。  • 他の教員による効果的な授業進行や、学生の理解度向上のための様々な努力をしてい る姿、熱意を感じる。  • 授業を担当していると見えない、教室全体の様子を垣間見ることができる。 〈「教員相互の授業参観」授業改善を促す知見の例〉  • 授業における学生の発言の上手な引き出し方、学生に考えさせる工夫、意図的な脱線 話の使い方、メリハリの付け方、シラバスの書き方、個人ワークとグループワークの 取り入れ方、リアクションペーパーの使い方など。  • パソコンの操作にしばられ、パソコンのまわりで話をすることが中心にならないよう な工夫。  • 授業の最後に「本日の 3 問クイズ」を出し、出席カードの裏に回答を記載させること で、達成度をチェックする。  • 授業冒頭に音楽を流すことで、学生の集中力を高める。授業途中、学生にプリントの 穴埋め問題を考えさせる際にも BGM を流し、学修効果を上げる。  • 自分のノート、あるいはプリントに加筆した自分の資料をつくるよう促し、それを チェックする。  ただし、授業を公開した教員、および、授業を参観した教員は、一定の成果を得たが、 多くの教員が公開・参観しているとは言い難い。そこで、2015 年度は、公開授業は、原 則として参観を希望する専任教員一人一科目に限定することで負荷をさらに軽減した。そ して、中心テーマとして、BM 学群のガイダンス科目「現代経営入門」に関する教員相互 学習となるよう工夫した。この結果、公開授業は教員 7 人・8 授業であったが、参観した 教員は 2 人に限られた。  そこで、2016 年度は、BM 学類の8つのプログラムと AM 学類の2つのコースから 1 科目ずつ公開することにした。そして、各プログラム・コースのコーディネーターを設 定し、公開科目の選定に関する調整を行った。これを通じて、同じ学問分野の教員間の相 互学習と、異なる学問分野の教員間の教育方法の相互学習という二次元的効果を期待し た。この結果、公開授業は教員 7 人・8 授業であった。現在、その効果は検証中である。  このように、初年度は一定の活動を促すことができたが、2 年目からは大きく活動量が 停滞した。ある程度義務的な活動にならないと、なかなか教員が進んで活動に参加するこ とに至らないことがわかる。そこで、3 年目は、プログラム・コースごとにコーディネー ターを設定し、一定の教員グループの中で授業参観を促した。ゆるやかな強制力が働くこ

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とは一定の活動を促すことは間違いない。  「教員相互の授業参観」は、他大学でも試行錯誤しており、定番的なやり方は確立され ていない。しかし、この取り組みが重要かつ不可欠であることに疑いの余地は無く、BM 学群では今後も工夫しながら継続していく方針である。  また、2014 年度から開講したオムニバス授業「特別講義Ⅰ(音楽産業論 総論)」(春学 期)、「特別講義Ⅱ(音楽産業論 各論)」(秋学期)は、リーダー役の齋藤隆夫教授をはじ め、初年度に 13 〜 14 人の教員が携わった。音楽という共通テーマで、各教員の専門分野 あるいは専門知識から講義を行うユニークな内容となっており、何より各教員が他の教員 の講義を楽しんで聴講する動きが見られたことは大変意義深い。こうした、教員の興味・ 関心に基づく、ゆるやかな授業参観も重要な知見を含んでいる。  さらに、2016 年度の初年次教育科目「社会人基礎Ⅱ」(秋学期)では、学生のグループ発 表や個人発表の参考となるよう、1回5人、2回で計 10 人の教員が各 10 分の研究発表を 行い、学生へのアドバイスを加えた。これも、各教員が他の教員の研究内容や進め方の一 部を知ることができる貴重な機会と位置づけることができる。  さらに、この授業内で、BM 学群生に配布した iPad を活かす様々な取り組みを進め、 図書館の蔵書・論文・新聞記事検索を促し、2016 年度からは電子教科書を導入した。「さ くら〜にんぐ」の「さくドリル」も有効活用し、80 点達成を成績評価に組み込んだ。これ らにより、学生の情報リテラシーが向上するだけでなく、教員の情報リテラシーにも好影 響を与えている。

3.個人的な授業改善の取り組み

3 - 1 授業中の発言を引き出す授業の取り組み  こうした FD の成果を踏まえ、筆者が担当する専攻科目の授業で行った授業改革の取り 組みについて、実績データを分析して紹介する。  まず、日本の大学の授業は総じて、学生の積極的な発言が少ないといわれるなか、授業 中の発言回数を増やすことに 2015 年度から取り組んでいる。そのために、2つの方法を 試みた。ひとつは、毎回の授業内容に関する複数の質問項目を明記し、e-Campus で授業 期間開始時に公開した。もうひとつは、発言回数を成績評価の 20 〜 30%に組み入れ、履 修者の発言回数を記録し、発言しないと成績が悪化する仕組みをとった。挙手により指名 する発言者は、挙手が多数の場合できるだけ公平・均等に指名するよう心掛け、挙手がひ とりの場合には無制限で指名した。

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 この実績データを、実施方法にある程度慣れた 2016 年度の担当4科目(各科目の授業 計 13 回分)でみると、表 3-1 のとおりである。松本・秋山(2012)の調査データ(履修者数 140 人、70 人)では、発言率が 51.9%、62.9%であり、概ね同水準にある。一方、最多発 言者の授業1回当たり平均発言回数は 0.85 回、0.62 回、発言者の授業1回当たり平均発言 回数は 0.30 回、0.29 回であることから、本取り組みの実績データはこの水準より高い。  そして、図 3-1 に示すように、「履修者数」と全授業中 1 回以上の「発言者数」は、正の 相関関係がみられた。履修者数が 100 〜 200 人程度の場合でも、授業中の発言を積極的に 引き出すことは可能であるが、発言率は概ね半数程度に限られることがわかる。そして、 「履修者数」と「最多発言者の授業1回当たり平均発言回数」、「履修者数」と「発言者の授 業1回当たり平均発言回数」は負の相関関係がみられた。すなわち、履修者数が 100 〜 図 3-1 授業中の発言を引き出す授業実績データの関係 表 3-1 授業中の発言を引き出す授業の実績データ 科目 履修者数(人)「A」 の「発言者数」全授業中 1 回以上(人) 「B」 発言率(%) 「B」÷「A」 最多発言者の 授業1回当たり 平均発言回数(回) 発言者の 授業1回当たり 平均発言回数(回) 科目1 93 48 51.6 3.8 0.84 科目2 108 58 53.7 4.2 0.78 科目3 167 101 60.5 2.8 0.45 科目4 201 81 40.3 1.4 0.37 発言者数 (人) 平均発言数 (回) R2=0.6515 R2=0.9134 R2=0.9798 履修者数(人) 0 0 20 40 60 80 100 120 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 4.5 4.0 3.5 50 100 150 200 250 最多発言者の1回当たり 平均発言回数 最多発言者の1回当たり 平均発言回数 発言者の1回当たり 平均発言回数 発言者の1回当たり 平均発言回数 発言者数 発言者数

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200 人程度の場合、履修者数が増えると1人・授業1回当たりの平均発言回数が減ってし まうことは避けられないことがわかる。なお、履修者の発言回数と定期試験結果には相関 関係はみられなかった。 3 - 2 毎回の授業前に課題レポート提出する授業の取り組み  日本の大学生の学修時間は欧米等の大学生に比べて短いといわれるなか、毎回の授業に 課題レポート提出を義務付け、学修時間を増やすことを 2015 年度にチャレンジした。そ のために、2つの方法を試みた。ひとつは、計 13 回の授業内容に関する課題レポートの テーマを明示し、授業開始前に e-Campus で提出することを求めた。もうひとつは、この 課題レポート提出を成績評価の 30%に組み入れ、課題レポートを提出しないと成績が悪 化する仕組みをとった。  この実績データを、2015 年度の担当4科目でみると、表 3-2 のとおり、提出率は概ね 80%前後となっている。そして、図 3-2 に示すように、「履修者数」と計 13 回中の「提出 率」は正の相関関係がみられた。履修者数が増えると提出率が落ちると予想されたが、履 修者数が多くても提出率を上げることができた。さらに、履修者の課題レポート提出回数 と定期試験の点数には正の相関関係がみられた。  すなわち、毎回の授業前に課題レポートを提出することを義務付けると、8 割程度の提 出率を維持でき、授業時間外の学修時間を確保し、授業の理解度を向上させることが可能 である。これは、履修者数が 200 人近くても同様である。ただし、毎回の授業前の課題レ ポート提出は、それをみる教員の負荷が大きいという課題も認識された。  そこで、2016 年度は、課題レポートを1本に限定し、そのかわり授業期間中に十分な時 間をかけて内容を充実させる方法を試した。評価における発言の比重を 20 〜 30%とし、課 題レポートも1本だが同等の比重とした。その結果、ある科目では、履修者 201 人中レポー ト提出者 181 人、全体の 90%がレポートを提出し、このうち内容が優良なレポートは 72 人、 表 3-2 毎回の授業前に課題レポート提出する授業の実績データ 科目 履修者数(人) 平均提出回数(回)計 13 回中の 計 13 回中の提出率(%) 科目1 49 9.9 76.0 科目2 94 10.1 77.5 科目3 167 11.0 84.8 科目4 183 10.7 82.1

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提出者の 40%、全履修者の 36%であった。毎回の授業前に課題レポート提出を義務付け るより学生の学修時間は減り、授業の理解度は下がるが、明確な課題を設定することで 研究視点での学修効果は大きくなったと認識している。  今後は、毎回の授業前の課題レポート提出と研究視点の課題レポートを組み合わせ、学 修効果をさらに高める方法を模索したい。

4.おわりに

 BM 学群では、2014 年度から新たな FD を展開しており、まだ道半ばであるが、今後 も各種の取り組みを継続し、試行錯誤しながら発展させていく方針である。特に、複数の 施策が FD 機能を持っていることから、複合的に進めることが望まれる。  また、FD の成果を活かしながら、個人的にも、担当授業において、授業中の発言を引 き出す、毎回の授業前に課題レポート提出することにより学生の負荷を高めて学修時間を 増やすよう工夫した。これも毎年、試行錯誤しながら発展させており、今後は特に e-Campus(Moodle)のさらなる活用を促進したい。学生の情報リテラシー教育とともに、 我々教員も情報リテラシー向上が必要不可欠と認識している。 図 3-2 毎回の授業前に課題レポート提出する授業実績データの関係 提出率 ( % ) R2=0.8416 R2=0.8416 履修者数(人) 0 74.0 76.0 78.0 80.0 82.0 84.0 86.0 40 20 60 80 100 120 140 160 180 200

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参考文献 松本浩司・秋山太郎:大人数授業におけるアクティブ・ラーニングの実践開発とその教育効果に関する 検討 ─異なる形式のアクティブ・ラーニングを採用することによる差異に注目して─,名古屋学院 大学研究年報 25 号,pp.1-39,2012 澤崎敏文:アクティブラーニングにおけるグループワーク可視化手法の提案について,仁愛女子短期大学 研究紀要 48 号,pp.7-12,2016 河西理恵・丸山仁司:PBL の学習効果と学生因子の関係について,「理学療法科学学会」理学療法科学 25 号(2),pp.203-208,2010

参照

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