異文化交流を通した学習活動のあり方
-11歳児童を対象とした多文化交流プログラムからの考察一
LearningActivitiesinaMulticulturalExchangeProgram
forll-year-oldStudents I . は じ め に 目 次 I . は じ め に Ⅱ、活動内容の類型とその具体例 1.多文化交流プログラムの概略 2.学習活動の流れとその類型 Ⅲ 考 察 Ⅳ.まとめと今後の課題森 泉 哲
MORIIZUMISatoshi
異文化との共生を目指した国際理解教育や外国語教育は学校レベルを問わず、また学校教 育内外でも推進されるべき教育であり、研究並びに教育実践が積み重ねられている。様々な アプローチが提唱されているが、現在のところ、異文化との共生社会の構築を目指すには、 実際に異文化の人々との直接的交流の場を意図的に設定することにより、行動様式や思考様 式の準拠枠を広げることが重要であると主張されている(佐藤、1999)。 筆者は1999年より国際交流並びに平和教育を推進している民間非営利団体の会員であり、 1999年夏約1ヶ月間、多文化交流プログラムに参加するための、日本人11歳児童4名をリー ダーとしてイタリアへ引率し、そのプログラムにおける活動内容の類型化を行った(森泉、 2000a)。さらに日本人児童におけるプログラム参加時のカルチャー・ショックを記述し、 多文化交流活動においても、異文化に対するカルチャー・ショックは個人によって異なる一 方で、先行研究と比較的類似性が高いことなどを報告した(森泉、2000b)。2000年7月か ら8月の1ヶ月間に行われた11歳児童を対象とした多文化交流プログラムに、今回はホスト・ スタッフとして参加する機会を得た。そこで本稿では、先行研究(森泉、2000a)で行った 学習活動の類型を使用しながら、今回のプログラムにおける具体的な学習活動を紹介する。 −103−さらに参加児童からの自由記述法による評価を考察することを通して、本学習活動のあり方 について検討する。 Ⅱ 活 動 内 容 の 類 型 と そ の 具 体 例 1.多文化交流プログラムの概略
2000年7月26日からから8月22日にかけて社団法人C,1.sV・(国際子ども村)')東海支部が
主催した「ビレッジ」と呼ばれる11歳児童を対象とした多文化交流教育並びに平和教育プロ グラムにホスト・スタッフとして参加した。本プログラムは、異文化教育と平和教育を通し て、異文化に対する友好関係(cross-culturalfriendship)を築くことが目的とされ、毎年 同様なプログラムが世界約40地域で開催されている。ホスト・スタッフの仕事は、派遣され るリーダー及び参加児童のために、約1年前より、開催場所、食事、テーマ、会計、活動内 容などについて検討し、準備を行う。本プログラム開催中は、プログラムが円滑に行われる よう援助する役割を担っている。 ビレッジの参加国は9カ国であり、各国4名(男女各2名)ならびに引率リーダー1名の 5名から構成され、参加児童は合計36名であった。またこの他にジュニア・カウンセラーと 呼ばれる16∼17歳の高校生4名が、ビレッジ運営の手伝いとして参加した。さらに日本人ホスト・スタッフ5名が準備・運営に携わった。2)参加者は合計54名であった。
1ヶ月のプログラム期間中は、数日の特別の日を除外すると、参加児童や引率リーダーと ホスト・スタッフによって様々な教育活動が行われた。表1に示すように、特別な日とはプ ログラムの最初と中間の2回の2泊3日のホームステイ、そして観光旅行としての遠足 (Excursion)、買い物(ShoppingDay)のことである。その他、児童養護施設の訪問、水 泳なども行われた。また期間中は原則として参加者だけでの活動を通して、相互の友好関係 を深めていった。 上記以外の日は、1日のスケジュールに従って行動した(表2)。午前、午後、夜に各回 約1時間半から2時間の活動を行う時間があるが、この活動時間で何を行うかは、2日前く らいから活動準備委員会を組織し、派遣リーダー及びJC、スタッフ数名が当番制で準備と 当日の活動運営に携わった。夜の活動は、ほとんどナショナル・ナイトという各参加国がそ れぞれその国の踊りや歌などを披露したり、その国特有のお菓子を配ったりする発表会形式 の活動にあてられた。 ビレッジにおける使用言語は、英語と決められており、リーダーのミーティング等は全て 英語で行われる。しかし、子どもに連絡をする際は必ず通訳する時間が設けられ、各国ごと にリーダーが通訳を行う。各国が順番に通訳していくので膨大な時間を必要とするが、英語 母語国との差をつけないこと、そして子ども達に言語の多様性を意識させる機会を提供する ためでもあった。 −104−怠鴬e鍾局翁試典辿鋼撫 襲露奪鱒鍾画鋤誇篇毎 秒誕牽窪謂霊雪龍蓉︾季鍾
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交流プログラムの際重要であると指摘した。3)これらの理論を援用して、プログラム用に配
布される活動マニュアル及び事前研修、そして1ヶ月の活動記録ノート及びビデオを通して 類型化を行った。その結果、プログラム1ヶ月間の流れは、以下のように類型化された。 第1週は「お互いに知り合う」きっかけを作る活動が行われる。例えば、お互いの名前を 覚える活動(NameGame)が主に行われる。この他、プログラム全期間を通して、ジェス チャーつきの歌、体育的な要素が強い活動(RunningGame)、更に笑いが起こるような参 加者全員が楽しめる活動(FunGame)などが行われる。第2週は、お互いにさらに友情関 係を高める「お互いに協力する」活動(Co-operationGame)が組まれる。第2週の後半か ら第3週は主に協力関係をさらに深化させた「信頼関係を築く_│ような活動(TrustGame) が行われる。第4週はビレッジを振り返り、将来につなげるような活動を行う。自分の意見 を表現し、また相手の意見を聞くディスカッション的な活動が多くなり、「平和や世界につ いて学びあう」活動が多くなる。つまり地球人として解決していかなくてはならない問題に ついて擬似体験などを通したシミュレーション(Simulation)活動が行われ、その感想や解 決策を話し合うような時間がかかる大きな質の高い活動(High-qualityGame)を行う。こ の流れに沿って、1ヶ月間の学習活動の目的、活動例を振り返ると、表3に示すようになる。 今回行った活動を類型化しても、森泉(2000a)と矛盾点はないように思われるので、類型 化の枠組みは多少の修正を加えてはいるが、ほぼそのまま使用した。しかし具体的例におい ては、今回使用した活動を紹介する。 (1)第1週目お互いに知り合う まず異文化交流の際は、お互いに知り合うことが始まり、それは相手の名前を知ることか らである。ゲームを通して楽しく相手の名前を覚えられる。これは前述の通り最初の1週間、 特に最初の2日間は名前を紹介するゲームが多かった。 ①BalloonGame あらかじめ人数分の風船を用意しておき、一人一人に風船を配り、風船に自分の名前を書 いてもらう。次に円を作り、音楽が始まったら風船をバレーボールのようにして叩きなが −106−ら誰かに渡す。音楽が止まったところで、自分に一番近い風船をつかみ、その風船に書か れている名前の友達を探す。 ②Train 列車のように次々と友達をつなげていきながら名前を覚えるゲームである。まず一人が、 ある一人の所に行き、”Mynameisxxx,What1syourname?”と聞く。その相手は自 分の名前を''Mynameisxxx、州と答えると、その聞いた相手が相手の名前を叫びながら、 3回ジャンプする。名前を聞かれた相手が今度は列車の先頭になり、名前を聞く相手を探 す。全員が終わるまでこれが繰り返される。列車として連なっている全員が名前を叫ぶの で、非常ににぎやかに楽しくできる活動である。 ③NewspaperGame 全員が円を作って座るが、新聞紙を丸めたものを持った者が円の中心に立つ。円の中心に いる者から新聞紙でたたかれる前に、相手の名前を叫ばなくてはいけないゲームである。 鬼にたたかれてしまった人が今度は鬼になり、ゲームが再開される。 (2)第2週目お互いに協力する 相互協力活動(Co-operationGame)を中心に第2週の活動が行われる。この段階では、 名前までは覚えたが、まだ親しい関係になっていないという状況下において、協調関係を構 築することを目的としている。またこの時期、さらにお互いを深く知るために、異文化理解 的な活動も行われる。 ① ホ ス ピ タ ル ・ ゲ ー ム 病原菌を4,5人決める。菌に触られたらその場に倒れ死ぬ。生き残っている者が病人を 発見したら、4人1組で救急車を編成し、あらかじめ決めておいた病院の陣地へ運んで生 きかえらせる。これは、お互いに手を握りあい、また病人を助けるという目的があるので、 楽しみながらも教育的なゲームである。 ②ヒューマン・ノット(HumanKnot) 円の内側を向いて立ったまま目を閉じる。手を前方に出し、目を閉じたまま円の中心に歩 いて行き、お互いに手を取り合う。目をあけて一つ一つ絡み付いている手を放さないよう にして、ほぐしていく。絡み合っている手をほぐしていく際に、お互いに協力しないとう まくいかない。うまく一つの大きな輪になっていると感動する。 −107−
−108− ③ 自 文 化 や 自 分 に つ い て 絵 で 表 現 す る 図画工作を通して、自分や自文化について表現する活動も行われる。相手に知ってもらい たい自文化の特徴を絵で表現する。例えば、日本人では富士山や着物、習字等を描くこと が多い。逆に相手の文化の知っていることを絵に描く活動も行われる。 ④ 創 造 力 を 養 う 活 動 イマジナリー・カントリーは、小グループに分かれて、話し合いを通して自分たちの想像 上の国を創作する活動である。通貨、言語、土地、服装などを決める。この他、小道具だ 表 3 多 文 化 交 流 活 動 の 段 階 と 活 動 学 習 の 段 階 目的 活 動 例 第1週 第2週 第3週 第4週 友情を深める︵歌.楽しめる活動・体育的な活動︶ お互いに知り合う お互いに協力する 異 文 化 理 解 信頼関係を深める 平 和 ・ 文 化 ・ 世 界 について学びあう まとめと振り返り お互いについて知る グループ意識を高める 体の一部分が触れ合うケー ム 絵を描くことを通して自己。 自文化を表現する グループで創造力を高める 信頼関係を構築する 肌と肌が触れ合う 他者への共感力を養う 異 文 化コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 世 界 と 自 分 と の 繋 が り に つ いて考える 平 和 理 解 1 ヶ 月 を 振 り 返 り 、 信 頼 関 係 を 認 識 す る 思い出づくり 名前を覚えるケーム (BalloonGame,Train, NewspaperGame) 協 力 し て 運 ぶ (HospitalGame) 絡まった手を解いて大きな円 を作る(HumanKnot) 目文化の特徴を絵で描き、友 達 と 見 比 べ る 活 動 独自の国を創造する (ImaginaryCountry) ドラマを作る 協 力 し て 、 友 達 を 運 ぶ (CarrytheKid) 目隠しした友達を誘導する (Sheep) キ ス や ハ グ を す る (PassingShoes,Bingo) HandicapDay ス テ レ オ タ イ プ○ プラネタリアン (異文化シミュレーション) 人 間 の 生 活 に 何 が 必 要 な の か 考える(Auction) Peace-War-Peace Houseoffeelings ミ サ ン ガ 作 り ・ サ イ ン 帳 記 念 植 樹
けを用意して、創作ドラマを演じるという活動も行われた。 (3)第3週目信頼関係を築く 信頼関係を築く活動(TrustGame)が、2週目の後半より行われた。2回目のファミリー・ ウィークエンドのペアが確定し、相互協調関係よりもより深い関係である信頼関係を構築し たいという時期にこの活動が行われた。 ①CarrytheKid
お互いの耳と耳とが触れ合うように密着して仰向けに横になる。横になっている者は、両
手を頭上にあげ、その上を一人ずつ子どもを乗せて運ぶ。運ばれる者は横になっている子
どもを信用しなくてはならない。また下で運んでいる子ども達もふざけていると運ばれて いる子どもはけがをすることになるので、真剣に活動を行わなければならない。お互いに 信頼しあって行わなければならない活動である。 ②Sheep数グループに分かれる。グループごとに、羊飼い(Shepherd)1名を決め、残りは羊
(sheep)になる。活動が始まる前に、前進、後退、右、左の合図を決めておく。羊は目隠
しをされ、羊飼いの声の指示を頼りに羊飼いの所まで歩いていく。途中に障害物が置かれ たり、他の羊がいたりする。羊飼いにとっても合図だけでコミュニケーションを図らなく てはならず、想像以上に難しい活動であり、お互いの信頼関係がないと円滑に活動は行う ことができない。 ③PassingShoes 男子と女子の円をそれぞれ作る。それぞれの円で、音楽に合わせて靴など何か目標になる ものを音楽に合わせて手渡しをする。音楽が止まったところで、それを持っている人が前の方に出ていき、後ろ合わせになって腕を組む。号令とともに、どちらか一方に振り返り、
2人とも同じ方向を向いていたら、お互いにキスをする。反対だった場合は、握手または 抱き合う。この活動は楽しい活動であるが、時期が早いと信頼関係ができておらず危険な 活動である。つまりお互いの協調性、そして信頼関係を構築してからの活動である。 (4)第4週平和・文化・世界について学びあう 最終週では平和、文化及び世界の問題について疑似体験を行い、それについて感じたこと を話し合った。その他、ビレッジ1ヶ月の思い出を振り返る活動を行った。 ① ハ ン デ ィ キ ャ ッ プ ・ デ ー 一人一人が、足や手を縛られ、目が見えなくなるなどの障害を持ち、実際に普段行われて いる活動を通して、体が不自由であるとどのように感じるのかを疑似体験する活動である。特に、お互いに助け合わないと活動が出来ないことや食事がとれないということに気づき、
体の不自由な人に対する共感力を養い、さらに人間は相互関係性の中で生きていることを 実感する活動である。 −109−② プ ラ ネ タ リ ア ン 異文化シミュレーションの1つである。子ども達は旅行者になり、リーダー扮する異星人 を訪問し、コミュニケーションを行う。1回目はただ観察をするだけであるが、2回目は、 言葉を使ってコミュニケーションする。3回目は接触するなど、あらゆるストラテジーを 使用する。こうすることによって、未知の文化に遭遇した時に、どう感じるのか、文化と はなにか、相手の文化を理解する際のストラテジー等を考える活動である。 ③ オ ー ク シ ョ ン 「地位」「お金」「食物」「住居」「友人」「家族」など日常生活に必要と思われるものの中 から、何が一番大切であるのか、お金に例えると値段はいくらになるのかを話し合う活動 である。個人や国、文化によって価値観の異質性ならびに同質性について考える活動であ り、人間生活の中で何が一番大切であるのか考え、話しあう活動である。 ④Peace-War-Peace この活動は平和とはなにかを考える活動である。グループごとにまず平和をイメージする 物を作製する。それを次のグループに渡し、どんな方法でも良いから平和を壊すように指 示をする。さらにもう一度それを元のグループに戻し、平和の状態に直すように指示をす る。この時にきれいな平和を作製したのに破壊されたという感情的なショックが大きい。 一方で壊す側は面白がって破壊することが多い。そのために振り返り討論は一人一人に感 想を聞き、類似したことが世界にも起こっているのか、また今後どうすべきかを考える機 会を十分与えるようにする。この活動を通して人間はいかに自文化中心主義に陥っている のか理解することができる。 Ⅲ 考 察 本セクションでは、本稿で示してきた多文化交流プログラムの活動が、参加児童に対して 効果的な内容であったのか、また適切な配列であったのかについて参加児童の評価を考察し ながら検討する。具体的には、本プログラムの最後に行われた自由記述法による質問紙調査 の結果から、活動全体について振り返る。自由記述法は、英語によって行われたが、翻訳が
必要な場合は、各国のリーダーが行った。4)児童に質問した項目は(1)このビレッジから
何を学びましたか?(2)今回学んだ体験を日常生活にどのように生かしていきたいですか? (3)このビレッジで好きだったことは何ですか?(4)このビレッジで嫌いだったことは 何ですか?(5)CISVにこれからどう関わっていきたいですか?の5問である。特にビレッ ジ全体並びに学習活動に密接に関係がある項目のみを取り上げて考察したい。 第1に、言語コミュニケーションの難しさについてである。これは各活動が英語を通して 行われたこと、また他国の子ども達とのコミュニケーションにおいても、お互いに共通語が ないことから挙げられていると思われる。例えば、日本の子どもからは「英語が話せなかつ −110−たので、大変だった。」という感想が書かれている。特に、ビレッジ開始1週間後、イマジ ナリー・カントリーという活動を通して、自分の創造する国をグループで作り上げ、参加者 全員が発表する活動を行った。この活動後、言語コミュニケーションの困難さがリーダーか ら指摘された。特に、英語運用能力が高い文化圏とそうではない文化圏との溝が指摘され、 このまま放置しておける問題ではないという結論になった。リーダー会議において2日間に
渡り、合計4時間に渡って言語と文化、そして異文化に対する感受性の問題が話し合われた。
話し合いの結果、この問題の対処法については、(1)リーダー及びスタッフとも、この 問題を深刻に考えていることを子ども達に示すこと、(2)子ども達の前で、言語や文化を 尊重することの重要性について説明すること(3)学習活動の指示を英語以外の言語を優先 して行うことという以上3点が確認され、実施された。この後、徐々にではあったが、英語 圏の子どもが非英語圏の子どもを無視するということがなくなり、逆に同じグループになっ た時に、お互いに助け合うようになった。 この言語を尊重する態度は、子ども達からの感想にも表れている。例えば、「コミュニケー ションの仕方について学び、また友達を尊重することを学んだ」(中国)、「異なった文化に ついて学び、彼らに寛容になることを学んだ」(イギリス)、「参加者全員それぞれ異なって いる。言語の障害に関わらず、友情を深めることができることを学んだ」(ドイツ)などが 挙げられる。特に言語について言及した感想が多数あり、例えば、「英語をうまく話せなかっ たが、多文化について学び、世界は小さいことを学んだ」(韓国)、「世界の異なった場所か ら集まり、同じ言語を話さない子ども達と協力できることを学んだ」(ルクセンブルク)、 「みんな異なっているということ、そして体で理解しあえるということ」(スウェーデン)、 「仲間はずれにしてはならないこと、そして言葉を使わなくてもコミュニケーションができ ることを学んだ」(アメリカ)などの感想が書かれており、円滑に言語コミュニケーション が行われなくても、言語の補足機能を果たすジェスチャーなど非言語コミュニケーションを 有効に使用して、異文化の子ども達とコミュニケーションを行ったことを示唆している。ま た「全て人々は、同等に価値があることを学んだ」(スウェーデン)というように、言葉や 文化が異なっているからこそ、お互いの文化や個性を認め合わなくてはならないということ に気づいている。 学習活動に関しては、直接的な感想は述べられていないが、上述の感想から推測すると、 学習活動全体を通して、異文化・異言語の友人との友情関係を構築し、異文化や自文化に対 する気づきを高め、協調関係や信頼関係の重要性について認識できたものと考えられよう。 とりわけ、今後の日常生活にどう生かしたいのかという質問に対しては、「自分の言語とは 異なっている人々とコミュニケーションをしようと努めたい」(中国)、「自分とは異なった 行動をする人に対しても、寛容でいたい」(ドイツ)、「英語をうまく話すことはできないが、 人々と友情関係を共有し、コミュニケーションしたい」(韓国)などの感想が挙げられてい ることからも、本プログラムでの様々な経験を通して、異文化に対する感受性が高まったこ −111−とが指摘できる。 しかし一方で、子ども達の感想からは、「学習活動が楽しかった」という意見も見られる が、学習活動が重要であったという認識はあまり記述されていない。これはビレッジで何が 好きであったのかに対する質問の回答に示されている。例えば、プログラム中に好きであっ たものは「休憩時間、カジノナイト、ドラキュラゲーム、ララバイの時間」(ドイツ)、「ス ナック・タイム、ナショナルダンス、民族衣装」(日本)、「JCショップ、休憩時間」(韓国) などが挙げられている。先述の異文化に対する感受性の高まりと矛盾した感想のように思わ れる。しかしこの年齢では、当然のように行われている学習活動よりも、自分の時間や娯楽 的なゲームなどのより目新しいものに一層興味が沸くのではなかろうかと推測できる。子ど も達が休憩時間や娯楽的なゲームが好きだからといって子どもの考えに迎合するようでは、 子ども達は他者に対する共感性・寛容性の必要性に気づき、言語を使用しなくてもコミュニ ケーションは可能であると気づくことはできなかったのではないかと思われるため、異文化 学習活動は行われなくてならないであろう。ただ、参加者の認知レベルに適応させた活動が 行われるべきことは言うまでもない。 1ヶ月を通して様々な活動を行ってきたが、4週目に行われた準備を非常に要する質の高 い活動については、特別注意を払って行われなければならない。特にハンディキャップ・デー では、「目の見えない人、耳の聞こえない人、足や手がない人がいかに大変であるのかがわ かった」(ノルウェー)などの活動に対する肯定的な意見が記述されていたが、Peace-War‐ Peaceの活動の感想では、「友達が作った物を壊したくなかった」「時間をかけて美しい物を 作ったのに、後で壊されて嫌だった」(ドイツ)などと指摘されており、参加児童に非常に 嫌な気持ちを抱かせてしまった。Peace-War-Peaceは、元来疑似体験をすることによって、 平和を破壊するのはいかに簡単で、失われた平和を取り戻すことはいかに困難であるのか、 つまり戦争の悲惨さ並びに平和の尊さを理解する目的がある。そのために、個人がどう感じ たのかを振り返るセッションが重要である。しかしこれが十分でないと、感想に述べられた ように、後々まで嫌な思いを引きずってしまうことがある。疑似体験の準備はかなり手間と 時間を要するが、疑似体験後の振り返りセッションの質問の仕方、意見の引き出し方、さら に今後の実生活にどうつなげていくのかを入念に準備しておかなくてはならないことを痛感 させられた。 Ⅳ . ま と め と 今 後 の 課 題 本稿では、筆者が参加した国際交流のボランティア団体におけるプログラムの類型、そし てその具体例、またその活動の評価を自由記述法によって考察を行った。今後解決しなくて ならない問題が3点あるので、それを指摘して、本稿のまとめとしたい。 まず第1に、活動の評価方法についてである。今回は、参加児童からの評価を自由記述法 −112−
、王 一一二口 1)C、1.SV.とは、Children'slnternationalSummerVillagesの略であり、1954年アメリカ合衆国の ドレス・アレン博士によって創設された団体である。現在世界100ヶ国以上に協会を持ち、国際本部は 英国NewcastleuponTyneに置かれている。日本では1958年に関東支部、63年に関西支部、71年に東 海支部、89年に九州支部が設立された。87年には文部省所轄の社団法人として再組織化された。本稿で 考察を行った11歳児対象とした約1ヶ月の「ビレッジ」の他、12歳から16歳を対象とした2カ国間で行 うホームステイプログラムである「インターチェンジ」、17歳から19歳を対象とした「セミナーキャン プ」などの多文化交流・平和教育プログラムがある。 2)9ヶ国の内訳は、中国、ドイツ、イギリス、日本、韓国、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェー デン、アメリカである。ジュニア・カウンセラーは、日本から2名の他、中国、イギリスから各1名参 加した。 3)Allport(1954)における接触理論の条件とは、継続的で密接な接触であること、価値観が類似し ていること、協力的な相互依存関係が構築できること、接触の目標が達成可能であること、平等な地位 関係があることである。 4)子ども達の自由記述による回答の拙稿への引用は筆者が英語から日本語訳したものである。また引 用文の後の括弧内には参加児童の国名が示してある。 −113−
で求めたものを考察したが、妥当性がどの程度あるのか判断するのかは困難である。考察の
セクションでも示したように、子ども達は学習活動に参加することを通して異文化に対する
感受性が養われたと感じているが、学習活動の重要性についてはあまり認識がない。このこ
とから児童の評価だけでなく、第3者が評価することも今後検討されなくてはならない。ま
た量的な研究も必要であろう。第2に、学習活動の内容についてである。C,IS.V・は世界的な組織であり、様々な研修も
なされ、ゲームブックなども各支部で作成されてはいる。ただ、1ヶ月間に渡るプログラムの運営の忙しさや子ども達の世話等の理由から、準備不足で学習活動が行われるケースが多
い。より組織的に行うには、事前から組織だった研修が構築され、さらに学習活動を解説し
た学習活動事例集が作成されなければならない。また、常に子ども達により適した新しい活
動が開発されていかなくてはならない。最後に、どう参加型・交流型教育を運営していくのかという教育方法についてである。
Pike&Selby(1988)は、学習が促進できる環境は、指導者は誠実であること、学習者の感じたことを受け入れ、信用することも含めて学習者を尊敬すること、共感をもって学習者
を理解すべきであると述べている。学習者の学びを最大限にできるよう異文化教育を行って
いく者自身が努力をしていかなくてはならない。また今回、質の高い活動の考察で見られた
ように活動の振り返りセッションのあり方が問われている。事前に十分検討されなくては、
異文化理解を促進するどころか、異文化に対する誤解を助長しかねない。このようにまだ解
決されなくてはならない課題が多い。しかし実践並びに研究が積み重ねられることによって、
これらが解決されることを期待したい。引 用 文 献 Anport,G,W,1954.ThejVa"reofPr血dicaReading,MA:Addison-Wesley・ Pike,G,&Selby,D、1988.G/obajmeacher,GリobaILeamer・Hodder&Stoughton.[阿久沢真理 子(訳)1997.『地球市民を育む教育」東京:明石書店] 佐藤郡衛(1999)「新訂国際化と教育一日本の異文化間教育を考える−』東京:放送大学教育振興会 森泉哲(2000a)「小学校からの異文化教育のあり方:多文化交流プログラムからの一考察」中部地区 英語教育学会紀要第30号印刷中 森泉哲(2000b)「多文化交流プログラムにおける日本人11歳児童のカルチャー・ショック」名古屋女名 古 屋 女 子商科短期大学紀要第41号187-218頁 −114−