はじめに 世界各地で、異常気象が頻発し、猛威を振 るっている。2020 年 1 月、オーストラリアで、 大規模な森林火災が発生し、日本の本州の半 分と同じ面積が焼き尽くされ、同時に、保水 力をなくしてしまった大地で大洪水が発生 し、都市機能がマヒしている。さらに、ニュー サウスウェールズ州の内陸部では、大きな砂 嵐が発生し、住宅を飲み込んでいる。この事 態は、10 年後、このまま地球温暖化が進む と全世界的な規模でこのような事態が頻発 し、さらに、海に面した国では海面上昇の脅 威にさらされるのである。また、食糧問題に も大きな影響が出てくる。今、地球温暖化や 気候変動と言っていたことが、世界的には「気 候危機(Climate Crisis)」と呼ばれる事態に なっている。この 2020 年は、地球の分岐点 と言われる 2030 年までの 10 年をどのように 人類として過ごすかに関わっている重要な年 である。SDGs(持続可能な開発目標)が各 国を越えて、グローバルガバナンスとして提 起され、決定されたことは、極めて新たな地 球時代に突入したことを意味している。 椙山人間学研究センターの「環境と人間プ ロジェクト」の役割はますます重要なものに なってきており、単なる研究から、地球的な 規模での探究と世界各地と連携しながら、何 らかのactionを引き起こすことが重要である。 このような事態に対して、2019 年は、「環 境と人間プロジェクト」にとっても極めて大 きな 1 年であった。 2019 年 3 月末、大陸間水・気候変動プロ
水・気候変動問題を中心に創る大陸間 SDGs 教育
―パリ地球子ども広場公演から世界へ―
Intercontinental Education for SDGs about the problem of water and climate change
―From Global Kids Square in Paris to World―
A Report of
‘Environment and Human being’
Research Project
「環境と人間」プロジェクト研究報告
椙山女学園大学教育学部教授宇土 泰寛
Yasuhiro Uto 椙山女学園大学教育学部客員教授林 敏博
Toshihiro Hayashi 椙山女学園大学教育学部准教授渡邉 康
Ko Watanabe 岡崎市立生平小学校教頭山本 典弘
Norihiro Yamamotoジェクトとして日本・フランス・ブルキナファ ソの子どもたちが、アジア・ヨーロッパ・ア フリカの 3 つの大陸を越えて、地球子ども広 場(Global Kids Square)活動の一環として、 フランスに集結し、パリ公演を行い、世界の 気候変動問題に対して「パリ子ども宣言」を 発した。 次に、これらの活動を、日本の研究者、学 校関係者に、6 月の日本国際理解教育学会を 椙山女学園大学で開催し、中国・韓国・タイ など海外からの参加者も含めて、公開シンポ ジウムで広めた。8 月には、北海道の旭川で 開かれた全国海外子女教育国際理解教育研究 協議会(全海研)の全国大会に参加し、11 月には、東海ブロック国際理解教育研究大会 を椙山女学園大学で開催し、多くの先生方に 広めることができた。 これらの活動には、この活動の全体的な方 向付けと組織的対応、活動内容の研究が必要 である。今年度、「環境と人間プロジェクト」 の活動として、環境と人間プロジェクト研究 員を中心に、定期的に、「大陸間 SDGs 教育 研究会」を開催した。その場所として、本学 EX 棟 207 号室を研究の拠点にして、定期的 に開催したのである。 また、ここでは、従来、UR 団地との提携 活動として実施していたジオラマを使った SDGs 教育は解体処分の危機に陥っていた が、この 207 号室に半分の大きさにして移管 して、椙山こども園の子どもたちの参加に よって、学び合いを継続することができた。 さらに、高学年用のジオラマ作成を行った。 ここには、水・気候変動教育、そしてモビリ ティ・マネジメント教育の要素がしかけられ ている。さらに、外国人児童や特別支援の子 どもたちへの学びも言語コードを逓減するこ とによって、可能とする新たな学び論の教育 学的研究もしかけられている。 国内の活動は、宇土ゼミを中心に、岡崎市 立生平小学校への出前授業の第3弾も行った。 これらの国内の活動を踏まえて、「パリ子 ども宣言」を大陸を越えて広めるために、9 月にブラジル、10 月にマレーシアに行き、 現地校や日本人学校の訪問、現地調査等を行 い、問題の共有を図った。この 2 月に、これ らの活動の報告と 2020 年度の活動方針を議 論するために、ヨーロッパを訪問した。 このように日本の国内、椙山女学園での活 動、そして、世界での活動など、これまでの 活動の継続と拡大を図ってきた。この経過と 内容を以下の章で具体的に報告する。 1 環境と人間プロジェクトの活動概要と経 過 1.1 環境と人間プロジェクト活動の概要 (1) 地 球 子 ど も 広 場(GKS:GlobalKids Square)活動 活動場所 EX 棟 207 号室 ①ジオラマ(プラレール)を使った地球子 ども広場活動 ジオラマを使った活動プログラム / 椙山こども園の園児と学生 ②ジオラマ(Nゲージ)を使った地球子ど も広場活動 ジオラマの物語化 → 絵本・インスタ グラム → 多言語化 ⇒ 海外へ 地球子ども広場プロジェクトメンバー 大学 2 年生∼ 4 年生 ③新美南吉の物語と SDGs 教育としてのモ ビリティ・マネジメント教育 新美南吉の物語 → 新たな SDGs との
関わり → 海外の交流校などへ紹介 ④出前授業のプログラム開発と教育実践 シリーズ第 3 弾「100 年後の地球の物語」 宇土ゼミ 4 年生 情意・認知・価値・技能の 4 つの側面論 でのプログラム開発 (2)大陸間 SDGs 教育研究活動~大陸間水・ 気候変動教育と地球子ども広場活動を中心 に~ 大陸間 SDGs 教育研究会 月 1 回 18:30 ∼ 20:30 EX 棟 207 号室 ①研究活動テーマ: 「大陸を越えた学び合いによる SDGs と しての水・気候変動教育の創出」 ② 椙山人間学研究センターの「環境と人間 プロジェクト」の研究活動 メンバー: 椙山人間学研究センターの環 境と人間プロジェクト研究員、 大陸間教育プロジェクト「地 球 子 ど も 広 場(Global Kids Square)」、 国 際 理 解 教 育 学 会名古屋チーム等のメンバー ③ 環境と人間プロジェクト研究員 宇土泰寛、渡邉康、林敏博、山本典弘、 天野幸輔、中村眞子、野崎健太郎、川 野幸彦 (3)大陸を越えた海外の学校等とのネット ワークづくりと交流活動 ヨーロッパ: フランス・アルザス地方 ストラスブール市 アフリカ: ブルキナファソ・ワガドゥグー 市 ル・クルーゼ学園 南アメリカ: ブラジル・ベレン市 越知日伯学園 アジア:フィリピン、マレーシア 日本・愛知県岡崎市立生平小学校 (4)広報活動 「椙山大陸間 SDGs 教育」 プロジェクト+フェイスブック・インスタ グラム、椙山女学園大学 HP など 1.2 大陸間水・気候変動教育と地球子ども 広場活動の経緯 地球子ども広場パリ公演に向けた今までの 取り組みとその後の展開について ①椙山女学園大学附属小学校が、ブルキナ ファソへ、2010 年に机といすを寄贈 ル・クルーゼ学園小学校との交流が始ま り、大陸を越えた水プロジェクト開始 ② 2015 年 日本・フランス・ブルキナファ ソの子どもたちによる合唱 水の学び合いを通した 3 か国の合唱「I LOVE WATER」を椙山女学園大学で発表 ③ 2016 年 大 陸 間 ミ ュ ー ジ カ ル「I LOVE WATER ∼人と水の精の物語」 ブルキナファソの児童と教師を招聘し、 日本とブルキナファソの子どもたちによる 合同のミュージカル「I LOVE WATER ∼ 人と水の精の物語」を名古屋で上演、パリ 協定を受けて、気候変動問題を加え、フラ ンスの子どもたちも映像で出演 ④大学(宇土ゼミ)と企業(アサヒ飲料)が 連携し、小学校への出前授業を実施 2017 年度の 1 回目は、日常的な自然と 社会の循環についての「水と森の物語」を、 2018 年度の 2 回目は日本も含めて世界的 に起こっている「異常気象の物語」を作成 し、小学校での SDGs の教育を水と気候変
動をテーマに実施した。この物語から生ま れた関心を理科的なろ過実験や土砂崩れを ジオラマで実際に引き起こしたり、個々の 行為が地球温暖化につながり、異常な積乱 雲や台風が発生する現象になったりするこ との「見える化」を図った。さらに、自ら の価値観や日常的な生活を問い直し、実際 にどのような行動をしたらよいかをゲーム を通して学べるプログラムを開発してきた。 この出前授業の手法は、新しいカリキュ ラムマネジメントのプロジェクト学習でも あり、大きな成果を引き起こし、実際に様々 な災害に対する防災教育にもなっている。 この出前授業が生平小学校の SDGs 教育 導入の契機になり、子どもたち自身が主体 的な活動を行った。2019 年度は、現在生 きている人々がどのように行動するかを問 う「100 年後の地球の物語」を実施した。 手法も、クロマキーの映像を使うなどこの 3 年間で大きな進歩があった。 ⑤地域にある団地(UR)と連携した持続可 能なまちづくりをジオラマで実施 ジオラマの作成と様々な気候変動によっ て引き起こされる事態に対応する活動を実 施した。言語コードを逓減し、多様な子ど もたちとの学び合いによる市民性の育成を 図った。これらのプロジェクト型の新たな 試みが、いろいろな自治体から関心をもた れた。しかし、UR と大学の提携が終了し、 この団地プロジェクトも、2019 年 5 月 16 日に、最後の会を実施した。 ⑥ 2019 年 パ リ 地 球 子 ど も 広 場(Global Kids Square in PARIS)公演を実施 2019 年 3 月 30 日 16 時 ~18 時 に、 パ リ 日本文化会館の地上階小ホールで、日本語 とフランス語による地球子ども広場のパリ 公演を、笹川日仏財団、パリ日本文化会館 の共催を得て実施した。サイバー空間「地 球子ども広場」上で「水と気候変動問題」 に関してこれまで学んで来た成果を日本、 フランス、ブルキナファソ 3 か国の子ども たちが直接会い、各国の取り組みについて 歌と身体表現や映像を取り入れた発表会と 意見交換を行い、「パリ子ども宣言」を創っ た。 ⑦パリ公演の成果を学会と全海研全国大会、 東海ブロック国際理解教育研究大会で公表 2019 年 6 月に、日本国際理解教育学会 (会場 椙山女学園大学)の公開国際シンポ ジウムで、フランスとブルキナファソから 2 人を招聘し、3 か国のメンバーで実施し た。11 月には、東海ブロック国際理解教 育研究大会(会場 椙山女学園大学)で国 際教育交流とシンポジウムを実施し、多く の学校の先生方に公表した。 ⑧パリ子ども宣言を世界に広げる 2019 年 9 月 に、 ブ ラ ジ ル を 訪 問 し、 SDGs 教育のモビリティ・マネジメントに 関わるクリチバ市を訪問、続いてサンパウ ロ日本人学校と現地校、リオデジャネイロ 日本人学校と現地校を訪問し、講演を行っ た。さらに、世界的に注目されているアマ ゾン川の河口に位置するベレン市に行き、 現地校や日系社会の中心になっている日系 人の協会や日系人の方々とお会いした。そ して、日系の現地校である越智日伯学園と 交流することになった。 10 月には、マレーシアのペナン島を訪 問し、ペナン日本人学校と椙山女学園大学 の国際交流提携大学であるマレーシア科学
大学を訪問した。また、ペナン島の歴史や 現在の問題を調査した。 2 パ リ 地 球 子 ど も 広 場(GlobalKids SquareinPARIS)公演 2.1 パリ地球子ども広場に向けて (1)日仏の学校を核にした SDGs としての地 球社会の未来づくりへ 日仏の初等教育では、未来に向けてたいへ ん意義のある実践がなされているにも関わら ず、交流があまり行われておらず、この度の 未来の地球社会、地域社会に大きな影響を及 ぼす国連の SDGs とパリ協定を共通課題とし て、日仏が核になりながら、大陸を越えて、 ブルキナファソ等ともネットワークをつく り、地球社会の未来づくりに向けて、本プロ ジェクトは活動を行っている。この活動に対 して、パリ日本文化会館からお誘いがあり、 2019 年 3 月 30 日、パリ日本文化会館で「地 球子ども広場での大陸を越えた学び合いと公 演」を実施することになった。 (2)地球子ども広場パリ公演の内容に向け た取り組み フランス事前打ち合わせ会議 12 月 18 日(火)、パリ フランス会議参加者 日 本: 林敏博・岡崎ますみ・ばんた くや フランス:
Ecole Stoskopf in Strasbourg Mr. Roisin Gilles
ブルキナファソ:
Le Creuset Plus ル・クルーゼ学園 カトリーヌ・ザカネ理事長
会議議題
① Global Kids Square : GKS プロジェ クトリーダー挨拶 椙山女学園大学教授 学部長 宇土 泰寛のメッセージを代読 ② 2018 年 2 月フランス会議での決定 事項の確認 1) ブルキナファソ、フランス、日本 での実践 Action 1 合唱:学び→伝え・学 び合う 歌詞を出し合 い、合唱へ テーマ: 気候変動 それぞれの地 域での気候変動 水不足・洪水・水の汚染・ 健康・安全 Action 2 劇づくり:多様な方法 テーマ: 気候変動 それぞれの 地域と地球での気候変動 3 月のパリ地球子ども広場での子 ども会議と表現活動へ向けて 学び → ショートストーリー → 劇化 → 合唱と劇づくり ③ 2019 年 3 月 地球子ども広場パリ 公演の実施に向けての確認 パリ会場までの移動計画、合同練 習の日程と内容確認、公演当日の 役割と動き 日程: 2019 年 3 月 30 日 場所: パリ日本文化会館 「地球 子ども広場での大陸を越え た学び合いと公演」 ④ 今後の予定 日本での国際シンポジ ウム(2019 年 6 月)の概要の説明 1) 日本国際理解教育学会 2019
年 6 月 公開国際シンポジウム テーマ: 大陸を越えた学びの場として地球 子ども広場と多文化共生の学校・ 地域づくり 2) 東海ブロック国際理解教育研究大 会 2019 年 11 月国際教育交流と シンポジウム テーマ: 多文化共生の心を育み、持続可能 な社会づくりをめざした国際理解 教育∼「愛・地球」つなげよう学 びの世界地図∼ 〈 参考〉SDGs の目標(6)(13)+(11・ 15・17・10) 水と気候変動の問題は、世界的な規模 での異常気象に現れているように、喫 緊の課題として日々の生活に大きな影 響を及ぼす事態となっている。国連持 続可能な開発サミットで決められた 2030 年までの SDGs(持続可能な開発 目標)の達成のために、具体的な教育 を提起し、世界にメッセージを表出し、 具体的な活動をしていく。 2.2 地球子ども広場パリ公演での実施内容 (1)パリ公演 「パリ地球子ども広場」を実施し、世界の 水・気候変動問題に対して、子どもたちが創 るパリ協定とも言える「パリ子ども宣言」を めざす。
地 球 子 ど も 広 場 Global Kids Square in PARIS 場所 地上階小ホール 入場無料 言語 日本語とフランス語 日時 2019 年 3 月 30 日 16 時 ~18 時 共催 椙山女学園大学、パリ日本文化会館 協力 椙山女学園大学附属小学校、岡崎市 立生平小学校 テアトルアカデミー名古屋校 名古屋市立蓬来小学校、名古屋市立 猪子石中学校(日本)、 ル・クルーゼ学園 Le Creuset Plus (ブルキナファソ)、
Ecole Stoskopf à Strasbourg(フラ ンス) 協賛 笹川日仏財団 2010 年にブルキナファソへの椙山女学 園大学附属小学校の机といすの支援交流か ら始まり、既にあったフランスとブルキナ ファソの交流に合流し、「大陸間水プロジェ クト」として活動を本格化したプロジェク トの一環。 サイバー空間「地球子ども広場」上で「水 と気候変動問題」に関してこれまで学んで 来た成果を、日本、フランス、ブルキナファ ソ 3 か国の子どもたちが直接会い、各国の 取り組みについて歌と身体表現や映像を取 り入れた発表会と意見交換を行い、子ども たちのパリ宣言(子どもパリ協定)を創る。 (2)組織・メンバー 大陸間水・気候変動教育プロジェクト 「地 球子ども広場(GKS)プロジェクト」 地球子ども広場運営委員会:宇土泰寛・渡 邉康・林敏博・岡崎ますみ GKS プロジェクトリーダー:宇土泰寛
エデュケーションプロモーター:林敏博 アートディレクター:ばんたくや コンポーザー(音楽・作曲):渡邉康 コーディネーター:岡崎ますみ 映像制作:吉田裕亮国際文化交流協会 地球子ども広場参加者 ・ 通訳:渡辺瑞加(立命館大学 学生、椙山 女学園大学附属小学校・中学校・高等学校 卒業生) ・ 生徒: 川口ひな、瀬木友茉(名古屋市立猪 子石中学校 3 年生) 戸塚世那、溝川怜香(テアトルアカ デミー劇団中学 3 年) フランス: 大人1名 子ども 5 名、保護者 も参加 ストラスブール市
Mr. Roisin Gilles Ecole Gustave Stoskopf à Strasbourg ブルキナファソ:大人 2 名、子ども 4 名 ワガドゥグー市 カトリーヌ・ザカネ(理事長) Le Creuset Plus ル・クルーゼ学園 ジュール・ルワンガ(教員) Le Creuset Plus ル・クルーゼ学園 (3)内容 地球子ども広場パリ公演は、2015 年に第 1ステージとして行った水をテーマにした音 楽「I Love Water」での交流、2016 年に第 2 ステージとして行ったミュージカル公演に続 く第 3 ステージで、教育とアートをつなぐエ デュテイメントとして、椙山女学園大学とパ リ日本文化会館の共催で、笹川日仏財団から の助成を受けて行ったものである。 日本、フランス、ブルキナファソの子ども たちが、これまで、それぞれ身近なところで 水・気候変動の問題について学び、その学び を通して得た知識をもとに、課題を整理し解 決策の提案も含めてミュージカル、歌や劇、 影絵を使って表現した。 3 か国の子どもたちの発表は以下の通りで あった。 【ブルキナファソの子どもたちの発表】 【フランスの子どもたちの発表】 【3か国の子どもたちによる意見交換会の様子】
3 か国の子どもたちによる発表の後、意見 交換を行い、自分たちが住む地球を持続可能 なものにするためには、全世界の子どもたち がそれぞれ学びを共有し合うことが大切であ るということを確認し合い、世界の気候変動 問題に対して「パリ子ども宣言」を発した。 「パリ子ども宣言」 自然がおこっています。 美しい地球を壊しているのは私たち人間 です。 今こそ、地球への愛を取り戻すことが大 切です。 そのためにここパリの地で私たちは地球 子ども宣言をつくりました。 一つ、 地球を汚したり壊したりす るのをやめよう 一つ 地球温暖化を防ぎ、気候変 動を止めよう この 2 つのことを宇宙船地球号の仲間と協 力して実行していくために、グローバル キッズスクエアー (Global Kids Square) を 世界に広げ、それぞれの地域と地球的課題 の解決に取り組んでいくことをここに宣言 します。 2019 年 3 月 30 日 in Paris 3 椙山・環境と人間プロジェクト/ SDGs 研究会 3.1 研究会の目的と経過 ①研究会の目的 大陸を越えて、子どもたちが、自らの地域 の SDGs、特に水・気候変動問題について 調べ、学び合い、呼びかけのメッセージを 創り、様々な表現活動を通して、世界に向 けて SDGs への取り組みの重要性を訴える 教育づくりを行った。 ②研究会の開催 オープンな研究会として開催していく方針 のもと、毎月、基本的には最終木曜日に、 研究会を椙山女学園大学の EX 棟 207 号室 で行った。 第 1 回 6 月 14 日 SDGs と市民性教育、租税教育と地域づ くり 第 2 回 9 月 26 日 東海ブロック大会に向けて、研究会定時 開催に向けて 第 3 回 10 月 31 日 ブラジル訪問報告、SDGs と水・気候変 動教育 第 4 回 11 月 21 日 東海ブロック大会シンポジウムに向けて 第 5 回 12 月 19 日 マレーシア訪問報告、SDGs と市民性教 育、租税教育 第 6 回 1 月 9 日 フィリピンの水と教育問題の報告 ③研究会メンバー メンバーは、椙山人間学研究センターの環 境と人間プロジェクト、大陸間教育プロジェ ク ト「 地 球 子 ど も 広 場(Global Kids Square)」、国際理解教育学会名古屋チーム 等のメンバーを中心として構成し、賛同者を 増やしていった。 2019 年度 椙山人間学研究センター「環 境と人間プロジェクト」研究員 宇土泰寛、渡邉康、林敏博、山本典弘、
天野幸輔、中村眞子 同研究協力者 岡崎ますみ、井川和道、フレデリック・ デュマバン、ばんたくや、上田敏博 ☆ 椙山女学園大学教育学部と他学部の協力 者・学生 国際コミュニケーション学部など 3.2 大陸間教育ネットワーク(Figure―1 参 照) 4 公開国際シンポジウム(日本国際理解教 育学会第 29 回研究大会・椙山女学園大学) 4.1 概要 日 時 2019 年 6 月 15 日 14:00 ∼ 17:00 場 所 椙山女学園大学星が丘キャンパス 大学会館 3 階大講義室 Spirit テーマ 大陸を越えた学びの場としての地 球子ども広場と多文化共生の学 校・地域づくり 司 会: 林 敏博(椙山女学園大学 客 員教授) 通 訳: フ レ デ リ ッ ク・ デ ュ マ バ ン (Frederic DUMABIN)( フ ラ ンス) 趣旨説明: 宇土 泰寛(椙山女学園大学 教授) 合 唱: 渡邉 康(椙山女学園大学 准 教授) パネリスト: フランス: ク リ ス チ ャ ン・ ガ ル チ (Christian GALZI) (ストラスブール市プライオリティ 教育コーディネーター) ブルキナファソ: カトリーヌ・ザカネ (Catherine ZAKANE) Figure―1IntercontinentalGlocalLearningNetwork
(ル・クルーゼ学園理事長) 日 本: 山本 典弘(Norihiro YAMAMOTO) (愛知県岡崎市立生平小学校教頭) 4.2 公開国際シンポジウムのテーマと趣旨 シンポジウムテーマ: 大陸を越えた学びの場としての地球子ども 広場と多文化共生の学校・地域づくり シンポジウムの趣旨: 世界は、大きな変革の時代を迎えている。 かつて産業革命によって社会が一変したよう に、AI(人工知能)の進化は、超スマート 社会をつくり出し、交通革命はカネ、モノ、 情報だけではなく、ヒトの移動もボーダレス な状況を生み出し、ICT の進化は、大陸を越 えた人々の交流も可能としてきている。そこ では、多様な国籍や文化背景を持つ人々が共 に暮らす地域社会をつくると同時に、地域で の人々の行為が地球システムにも影響し、か つて経験したことのない災害も引き起こして いる。つまり、グローバル化と多文化化が同 時に進行する地球時代がより進展しており、 新しい宇宙船地球号の乗組員としての生き方 が再度問われている。学びの場にいる様々な 国籍や多様な文化を背負った子どもたちが いっしょになって、学校や地域、そして地球 システムの問題に対し、大陸を越えてつなが り合い、協働しながら行動するという新たな 教育と、その実践としての「地球子ども広場 (Global Kids Square)」の意義が問われるの
である。 4.3 パネリストの発表概要とシンポジウム の展開 1.パネリスト発表 1) ク リ ス チ ャ ン・ ガ ル チ 「 フ ラ ン ス の SDGs 教育と地域づくり」 多民族・多文化化がたいへん進んでいる フランス・ストラスブール市の紹介から始 まり、そこでの子どもたちや家族、地域の 問題、そして、これらの現状に関わるフラ ンス政府のプライオリティ教育について、 その歴史と主な都市や地域の説明があっ た。そのプライオリティ教育の具体的な実 践として、自らが地域コーディネーターと して管轄している学校等の具体的な話が あった。教育が子どもたちの将来を決める という視点から、学校運営も学校関係者だ けでなく地域の人々も参加して行われてい るなど多様な具体策が提示された。 2) カトリーヌ・ザカネ 「ブルキナファソ の SDGs 教育と地域づくり」 サハラ砂漠の南の内陸国ブルキナファソ と学園の紹介から始まり、水問題での厳し い現状、その解決のためのプロジェクト活 動と地域での実践を紹介した。特に、コム ラ村での水問題と野菜作りなどによる社会 の変化についての説明もあった。また、森 林破壊、水質汚染、ビニール袋の汚染など、 地域の行政の問題から生活のための森林伐 採に至る厳しいアフリカの現状の訴えが あった。これらに対して、日本やフランス との大陸を越えた連携活動として、現状を 劇と音楽を融合して訴え、漫画を創って世 界に知らせるなどの発表があった。 3) 山本 典弘 「日本の SDGs 教育と地域 づくり」 SDGs についての概略、日本や愛知の SDGs 教育の説明から始まり、生平小学校
の「地域に働きかけ追究し続ける子どもの 育成」について、SDGs を取り入れる前の 実践と椙山女学園大学宇土ゼミの出前授業 が契機となり、SDGs を取り入れた実践を 紹介した。SDGs 教育への関わり方は、子 どもたちが「SDGs すごろく」をつくり、 ダンスでの表現を実施するなど豊かな実践 例の紹介があった。この活動を地域や多文 化交流の中で自分事として捉え、世界の SDGs につなげる実践への話があった。 2.質問・協議 それぞれのパネリストへの実践等について の質問があった。今回の協議では、日本での 多文化化のさらなる進展や世界的に反難民な どのナショナリズムの動向もあり、フランス のプライオリティ教育への質問が多くあっ た。それに対して、ガルチ氏から、80 か国 以上の人々が居住している現状や母語の違 い、一人一人に合った教育の可能性の探究と して、学級の教師の増員、地域の NPO の活 用など、日本の多文化共生の学校づくりに役 立つ話があった。 3.報告 林敏博 「地球子ども広場のパリ公演とパ リ子ども宣言」 3 か国の子どもたちが、それぞれの取り組 みを発表し、学び合う場として、2019 年 3 月 30 日に、パリ日本文化会館で、「地球子ど も 広 場 パ リ 公 演(Global Kids Square in PARIS)」を実施し、最後に「パリ子ども宣言」 を発表したことの報告があった。
4.まとめ
渡邉康 合唱 「We Love The Earth」 大陸間水プロジェクト活動でのミュージカ ル公演「I LOVE WATER ∼人と水の精の物
語」のテーマ曲「I LOVE WATER」に続く、 パリ公演でのテーマ曲の合唱曲が流された。 5 . 東海ブロック国際理解教育研究大会「シ ンポジウム」から「SDGs」を考える 5. 1 東海ブロック国際理解教育愛知大会の 概要 2019(令和元)年 11 月 23 日(土)、椙山 女学園大学教育学部及び大学会館で本研究大 会を開催した。分科会・アトラクション・シ ンポジウムなどに愛知・岐阜・三重・静岡各 県より約 180 名が参加した。 研究大会主題:多文化共生の心を育み、持 続可能な社会づくりをめざした国際理解教育 ―「愛・地球」つなげよう学びの世界地図― 今日の国際社会は、文化や生活を互いに 尊重し認め合う多文化共生社会の時代とな りました。しかしながら、世界各地では、 貧困・飢餓、健康、教育、水、人権など、 多くの課題も山積しています。また、地球 温暖化、生物多様性、環境問題など、地球 規模の課題を早急に解決しなければなりま せん。わたしたちは、持続可能な社会づく りをめざして、それぞれの地域において、 身近なことから世界的な課題について、探 究することができる子どもを育みたいと考 えています。そのためには、異なる価値や 文化でもお互いを認め合い、広い視野に 立って意見を交流し、豊かな発想と創造す る力を培い、自分事として課題を捉えるこ とが大切です。
東海ブロック国際理解教育研究大会は愛 知、静岡、岐阜、三重の4県の先生方が、多 文化共生、外国語活動、在外教育施設・現地 理解、SDGs 及び ESD について実践発表を 行った。また、シンポジウムでは、愛知県内 の特色ある学校の実践を紹介するとともに、 持続可能な社会づくりをめざした国際理解教 育について、会場と意見の交流を深めた。 5.2 分科会・アトラクションの内容 (1)分科会 ① 分科会1 多文化共生・外国人児童生 徒 ② 分科会2 外国語教育・小学校英語教 育実践 ③ 分科会3 在外教育施設・現地理解 ④ 分科会4 「愛・地球」SDGs・ESD (2)アトラクション 岡崎市立生平小学校 4・5・6年生による表現(ダンスと歌) 本研究大会テーマ曲「We love the earth」 作曲:渡邉康(椙山女学園大准教授)を岡崎 市立生平小学校4・5・6年生、33 名全員 で表現(ダンスと歌)を披露した。生平小学 校は、学校体育で実施している「リズムダン ス」の全国大会において、3年連続で上位入 賞(全国優勝1回、第2位2回)の実績を誇 る全国を代表する学校である。子どもたちの 柔らかく生き生きした動き、また、弾けるよ うな笑顔に、参観者の誰もが子どもたちに最 大 級 の 拍 手 を 送 っ た。 こ の「We love the earth」は、今後、本会との交流が深いフラ ンスやブルキナファソの学校においても「同 じ曲」で表現を伝え合う大陸間交流につなげ ていく。 5.3 シンポジウム 大学会館 3 階 大 講義室 Spirit テーマ 「愛・地球」つなげよう学びの世界 地図 ― SDGs でつむぐ「地域と教育」― 助 言 者 椙山女学園大学 教授 宇土泰寛(全海研副会長) コーディネー ター 椙山女学園大学 客員教 授 林 敏 博(名 古 屋 国 際 セ ン ター教育相談員) パネリスト 岡崎市立生平小学校 教頭 山本典弘(大会長・大会実行委 員長) パネリスト 犬山市立東小学校 教諭 酒井 俊輔(東小学校現職教育主任) 司 会 瀬戸市立南山中学校 教諭 大 澤周平(愛海研尾張地区事務局 長) 第 1 部 「愛・地球」学びの世界地図 プロ ローグ(林) 地球子ども広場と大陸間教育交流 フランス・パリ講演報告(林) 第 2 部 SDGs でつむぐ「地域と教育」 ○ 学校教育における「SDGs」と「大陸 間教育」(山本)
○ 岡崎市立生平小学校の実践から(山本) ○ 犬山市立東小学校の実践から(酒井) 質疑応答 (大澤) 助 言 椙山女学園大学 教授 宇土 泰寛 地域と共に「創造」していくために、生物 多様性・環境学習に SDGs の観点に迫る目標 を意識した愛鳥活動やふるさと教育の実践に 取り組む岡崎市立生平小学校の実践と環境・ 福祉・生産・国際理解など、幅広い分野での ESD 教育活動を実践している犬山市立東小 学校の実践をもとに、会場参加者との意見交 流を通して、SDGs・ESD 教育を中心とした シンポジウムを行った。また、こうした地域 での学びを積み重ね「学びの世界地図」とし てつなげるために、笹川日仏財団の助成を受 けて、フランス・パリで開催した「パリ地球 子ども広場」についても椙山女学園大学、林 敏博客員教授が紹介を行った。 パネリスト:岡崎市立生平小学校 教頭 山本 典弘 岡崎市立生平小学校では、38 年間継続 している愛鳥活動を「SDGs の視点」から 環境学習へ広げていった。児童の愛鳥活動 のほかにも、保護者や地域の方々が一体と なって、学校周辺の自然環境整備に力を注 ぎ、学校内にあるビオトープ「ふるさと池」 改修や広葉樹林の植樹など、「森を守ろう」 (SDGs 目標 13)につながる活動や河川環 境の調査から学びを深めるなど、地域の自 然を「自分事」として捉えることができる 児童を育んでいる。 パネリスト:犬山市立東小学校 教諭 酒井 俊輔 「ESD でつなぐ教育実践 ∼世界から見 る日本∼」というテーマで東小学校の3年 生の環境の学習、4年生の福祉と高齢者の 学習、5年生のお米から見る日本の学習、 6年生の日本の歴史・文化と国際理解の学 習を分りやすくまとめて提案した。また、 ESD カレンダーの作成における学習での 機能性や重要性について発表があり、参観 者からもその有効性についても協議され、 会場との意見交流も行われた。 シンポジウム助言 助言者:椙山女学園大学 教授 宇土 泰寛 東海ブロック国際理解教育研究会顧問、 椙山女学園大学教授宇土泰寛氏からは、① 次期学習指導要領における「主体的学び」 「対話的学び」「深い学び」を踏まえた学習 過程の質的改善、②地域へ、世界へ、大陸 を 越 え て つ な が り 合 い、SDGs の 内 容 で ICT と英語とグローバル教育の推進、③大 陸を越えて学び合う SDGs 教育のねらい、 愛知発!これからの「SDGs」について次 のように助言した。 世界中では、SDGs の目標においてもそ れぞれ課題があり、SDGs の重点ポイント が異なる。お互いの「自分事」を直接聞き 合い、映像などで紹介し合う中で、お互い の自分事を生で聞き合うことにより、「大 陸間教育」が深まっていくのではないか。 まずは地域から、そして、相手の地域を自 分事として捉えて考えること。SDGs の広 がりは「自分事」がキーワードとなる。 6 パリ子ども宣言を世界に広げる 2019 年 3 月にフランスのパリで採択した 「パリ子ども宣言」を世界に広め、地球的な 課題解決に向けて協働して取り組む大陸間教
育活動の拡大と、現地の水・気候変動問題の 現状と課題、課題解決に向けた取り組みを調 査する活動を行った。 9 月に、ブラジルを訪問し、SDGs 教育の モビリティ・マネジメントに関わるクリチバ 市を訪問、続いてサンパウロ日本人学校と現 地校、リオデジャネイロ日本人学校と現地校 を訪問し、講演を行った。さらに、世界的に 注目されているアマゾン川の河口に位置する ベレン市に行き、現地校や日系社会の中心に なっている日系人協会や日系人の方々とお会 いした。そして、日系の現地校である越知日 伯学園と交流することになった。 10 月には、マレーシアのペナン島を訪問 し、ペナン日本人学校と椙山女学園大学の国 際交流提携大学であるマレーシア科学大学を 訪問した。また、ペナン島の歴史や現在の問 題を調査した。 6.1 ブラジル訪問 《目的》 (1)SDGs のための教育プロジェクトにおけ る都市計画や地域づくりの事前調査 (2)水・気候変動教育やモビリティ・マネ ジメント教育と租税教育に関わる教育内容 の日本人学校及び現地校での実施の可能性 と大陸を超えた実践交流のための事前協議 (サンパウロ、リオデジャネイロ、ベレン の日本人学校及び現地校を訪問) (3)外国人児童生徒教育に生かすためのブ ラジル日系移民の歴史の調査研究 (クリチバ、サンパウロ、ベレンの日伯協 会、日伯援護協会を訪問) 《訪問の概要》 1)クリチバ訪問 目的(1)、(3) クリチバでは、SDGs のための教育プロ ジェクトにおける都市計画や地域づくりの事 前調査と、外国人児童生徒教育に生かすため のブラジル日系移民の歴史の調査研究を行っ た。 クリチバ日系協会を訪問し、副事務局長の 大島さんにお話を伺った。最近クリチバも気 温の変化が激しくなってきたが、地球温暖化 のことは 40 年前から言われていた。クリチ バに交通バスカードシステムを導入したの は、クリチバ市の初の日系人市長となったカ シオ谷口氏であるということであった。ま
た、以前はクリチバには日系人は少なかった が、今では約 15,000 家族、60,000 人ほど生 活しており、ブラジルではサンパウロについ で 2 番目に多い。ここにはパラナ大学という 良い大学があるので日系人が集まってきたと いうことがわかった。 2)サンパウロ訪問 目的(1)、(2)、(3) サンパウロでは、水・気候変動教育やモビ リティ・マネジメント教育と租税教育に関わ る教育内容の日本人学校及び現地校での実施 の可能性と大陸を超えた実践交流のための事 前協議を行った。 下の写真のように、サンパウロでも BRT システムが導入されているが、広大なサンパ ウロ市内全域をカバーするには至っていな い。大都市サンパウロには高層ビル群とファ ベイラが混在している。高層ビルに住む人は 公共交通機関は利用せずに、自家用車を複数 所有している。 「水・気候変動教育」をテーマに、これま で行ってきた大陸間教育活動について講話し た。子どもたちにはブラジルで生活する機会 を持つことができたことを生かして、ブラジ ルではどんなことが起こっているのかに興味 関心を持って生活することの大切さを伝え た。子どもたちはとても興味深そうに聞いて いた。 先生方とはグローバル人材育成の拠点とし ての日本人学校の役割と今後の活動のあり方 について討議する機会を得た。 続いて、現地校の教育の様子を視察するた めに、カトリック教系の私立の学校である
Escola Batista de Educação Integral (EBEI)校を訪問した。 外国人児童生徒教育に生かすための、ブラ ジル日系移民の歴史の調査研究のため、サン パウロにある日系移民博物館を訪問した。 3)リオデジャネイロ訪問 目的(1)、(2) リオデジャネイロ日本人学校を訪問し、 「水・気候変動教育」をテーマに、これまで 行ってきた大陸間教育活動について講話し た。サンパウロ日本人学校に比べると小学部 11 名、中学部 2 名で、児童生徒数も少ない小 規模校であったが、その特性を生かして、少 人数学習でわかる授業の展開を目指してい た。この学校でも、子どもたちはとても興味 深そうに聞いていた。 リオデジャネイロでも、左の写真のよう に、リオ・オリンピックに合わせて、市内を 走るトラムが作られたが、リオの市内を網羅
するには至っておらず、利用者も多くない。 車への依存度は増すばかりで、市内のいたる ところで常に交通渋滞が起こっている。 4)ベレン訪問 目的(1)、(2)、(3) ベレン市は、南緯 1 度 27 分、赤道直下の アマゾン川流域にある都市である。私たちが ベレン市を訪れたとき、日系移民 90 周年式 典がちょうど 1 週間前の 9 月 13 日に行われた ばかりであった。 90 年前に、このアマゾンの地に移住して きた日本人は、トメアスという村に入り、熱 帯林を切り倒して農地をつくり、作物を植え た。しかし、作物は育つことはなく多くの人々 がマラリアに倒れ亡くなっていき、この地を 離れていった人も多い。今ここで生活してい る日系人の人々はここまでたいへん苦労して こられたということを汎アマゾニア日伯協会 で、資料等を見せてもらいながら聞くことが できた。 越知日伯学園は、越知恭子学園長が設立し た日系の私立学校で、幼稚園、小学校、中学 校があった。学園の運営方針は、モンテッソー リ教育法により子どもの独立と自立を目指し ている。ポリグロット(多言語)教育法を取 り入れ、異文化教育も行い豊かな人間性を身
に付け、平和を愛し地球規模で生活できる国 際人の育成を目指していた。これは、私たち が行っている大陸間教育活動のねらいと一致 するもので、これからは連携して活動してい くこととなった。 6.2 ペナン訪問 租税教育においては、租税の役割としくみ の学習が小学校段階においても指導内容とし て明記され、小学校 6 年生の社会科において は、従来の歴史学習より先に学ぶように改訂 されている。そこでは、自然災害や公共交通、 多文化共生など SDGs の目標を実現するため の地域づくり、街づくり、そして、持続可能 な地球社会づくりへの社会参画が重視されて いる。また、世界中には、グローバル化の進 展の中で、地球的課題への対応として炭素税 など新たな税制も国際的な広がりを持ってお り、租税教育の国際化も求められている。さ らに、世界中の日本人学校では、日本の教育 に沿って学んでいる子どもたちがたくさんお り、海外での教育展開も重要な課題になって いる。 このような新しい課題を探究するために、 「SDGs と租税教育研究会」を立ち上げ、今回、 上記の問題意識のもと、マレーシアのペナン を税理士会の方といっしょに訪問し、生徒向 けに授業を行った。 《目的》 (1)SDGs のための教育プロジェクトにおけ る都市計画や地域づくりの事前調査と租税 教育の海外での教育展開(今回は SDGs と 租税教育を結びつけて授業を行う初めての 試み) (2)水・気候変動教育やモビリティ・マネ ジメント教育と租税教育に関わる教育内容 の日本人学校及び現地校での実施の可能性 と大陸を超えた実践交流のための事前協議 (ペナン日本人学校及び現地校との連携の 可能性を探る) 《訪問の概要》 1.ペナン日本人学校訪問 目的(1)、(2) ペナン日本人学校の 5、6 年生の児童を対象 に、「多文化共生時代の SDGs と租税教育」 をテーマに授業を行った。 SDGs と租税教育を結びつけて授業を行う 初めての試みであったが、日本人学校の先生 方からも好評で、参加児童からたくさんの質 問もあり、とてもよい成果が得られたと感じ た。 訪問後に、日本人学校の先生と個別に話を する機会を持ち、今後の学校教育目標を水・ 気候変動をテーマとした SDGs の教育展開の 方向にしていくための相談を受け、来年度以 降ペナン日本人学校としても少しずつ教育実 践を行っていきたいということであったた め、今後もサポートを続けていきたいと考え ている。 2.マレーシア科学大学訪問 マ レ ー シ ア 科 学 大 学(Universiti Sains Malaysia : USM)は、椙山女学園大学の国 際交流提携大学で、大学の構内には、株式会
社 東 レ の 援 助 に よ り、 日 本 文 化 セ ン タ ー (Japanese Cultural Centre : JCC)がつくら
れている。そのセンターは、 (1)マレーシアにおいて日本語・日本の文 化を広めること (2)マレーシアの文化を日本に紹介するこ とを通してマレーシアと日本との相互交流 を深めること (3)日本とマレーシアの文化に精通したグ ローバルな人材を育成すること の3つの目標があり、マレーシアと日本の架 け橋の役割を担っている。 今回のペナン訪問では、そのセンター長を 務めている副田雅紀氏と会い、ペナンの現地 校と水・気候変動教育やモビリティ・マネジ メント教育を連携して行うことの可能性につ いて相談した。副田氏は大学の近くにあるハ ンチャン・ハイスクールをはじめ、多くの現 地校とのつながりもあり、学校の校長先生方 に説明をして連携の可否を聞いていただくよ うに依頼した。 7 西山っ子地球子ども広場から椙山地球子 ども広場へ 7.1 西山っ子地球子ども広場 〈場所〉 アーバンラフレ虹ヶ丘中団地 〈時間〉 2015 年 5 月∼ 2019 年 5 月 〈目的〉 自分の住む町をジオラマで実際に 作ったり、動かしたり、役になりきっ たりする活動を通して、想像力を働か せ、世界に興味をもつなどの知的な活 動をすることができる空間をつくる。 水・気候変動問題とモビリティ・マネ ジメント、町づくりなど SDGs の課題 と関わりながら、活動を展開する。 2015 年 5 月以来、4 年間にわたって続けて きた UR 都市機構の虹ヶ丘中団地での西山っ 子地球子ども広場も、UR と大学の提携期間 終了のために、ついに、5 年目を迎えた 2019 年 5 月 16 日(木)に最終回とせざるを得な かった。 水・気候変動問題とモビリティ・マネジメ ント教育をつなげ、英会話を用い、物語化を 図るなど、プロジェクト活動につなげること
をめざした。宇土ゼミの 4 年生を中心に、他 のゼミのメンバーも加わり、3 年生のメン バーやプロジェクトに関心のある 2 年生、他 学部のメンバーなどが参加して実施してき た。 最終回には、小学生のころ参加した子も中 学生になり、幼稚園児だった子が小学生に なっており、この 4 年間の中で、大きく成長 した子たちも参加してくれた。 そして、2015 年の最初は、プラレールの 線路をつなぐだけの簡単な町しかなかったジ オラマが、どんどん成長し、東海地方をより リアルに表したジオラマへと発展したのであ る。このジオラマを通した活動の中で、大き なジオラマの電車などを動かすには協力が必 要であることに気づき、一人一人の子が学ぶ と同時に、協働的な活動から生まれるコミュ ニケーションや認識の拡大や俯瞰的な視点、 学びのコミュニティの生成、そこでのルール の発生、問題解決のための振り返る内省力、 解決策の提言など、多くの資質形成ができ た。そこで、これらの学びから生まれる過程 を考察し、その中にしかける多様な要素や項 目を考えたとき、さらなる学びとなる物語化 や多言語化が生まれたのである。 これらは、エンゲストロームの拡張的学習 理論やレイブとウェンガーの正統的周辺参加 理論などにも通じる学びの発生であった。 この西山っ子地球子ども広場の活動は、宇 土ゼミの学生を中心に4年間実施してきた活 動であり、今までのゼミで積み上げてきた分 析、考察をもとに、最終年度になった 2019 年の宇土ゼミの大林千紗は、幼稚園児から小 学生になった児童A子の 4 年間の行為に注目 し、特に“役割”と“対話”に着目して児童 A の居場所形成における成長と所属意識を高 めた転換点を追っていった。そして、エンゲ ストロームの活動理論と対比しながら、西 山っ子地球子ども広場活動理論を次の図のよ うに考えたのである。
7.2 椙山地球子ども広場 団地からの撤去作業を 5 月 20 日に実施し た。これは子どもたちには一切公表しておら ず、ゼミ生とプロジェクトメンバーで、ジオ ラマを分解し、車に積む作業をしていたら、 子どもたちが集まって来て、何にもなくなっ た部屋に入り、「本当に、楽しかったな」と つぶやき、床に落ちていたジオラマの山の部 品を手に取って、まるで宝物のように、「こ れ持って行っていい」と言うのである。ごみ にしか見えないような小さな部品だったが、 「いいよ」と言って、車でお別れをした時も、 車が見えなくなるまで、手を振っていてくれ たのである。本当に、子どもたちの居場所に もなっていたのだなと、新たな感銘を受けな がら大学に帰ってきた。 このジオラマは、場所を取るので、壊すの はもったいないと思いつつも、どうしようと 思案しているとき、環境と人間プロジェクト で、EX 棟の部屋を利用できないかと検討し、 人間学研究センターの甲斐センター長に話を して、207号室を借りることができた。その おかげで、ジオラマは半分の大きさになった ものの、新しい部屋に設置し、ジオラマ活動 ②道具 ①主体 ④共同体 ⑤ルール ⑥分業 ③対象 ⑦結果 ・事故が起こっても責めない ・役割は譲り合う ・子ども ・仲間 ・ファシリテーターとしての学生、教員 ・ポイント係 ・車掌係 ・タイムキー パー ・事故 ・何分連続して走ら せることができた か ・タイムトライアル ・復旧作業 ・ジオラマ 図:西山っ子地球子ども広場活動理論
を継続できることになった。 そして、8 月から、椙山こども園の園児た ちが来て、新たな学び合いの活動が始まっ た。このジオラマプロジェクトには、宇土ゼ ミ生だけではなく、教育学部の 3 年生、2 年 生も関わり、国際コミュニケーション学部の 学生など幅広いメンバーが関わってくれた。 その様子は椙山女学園大学のホームページに 掲載された。 こども園の園児がジオラマを通して地球環境 とモビリティマネジメント(交通環境)を学ぶ 11 月 22 日(金)、星が丘キャンパスに隣接 し今年度開園した椙山女学園大学附属椙山 こども園の園児が教育学部の宇土泰寛教授 を訪問し、2 つのジオラマを見学しました。 これらのジオラマは宇土教授と教育学部の 学生有志が中心となり作成。山から流れた 水が川になり、やがて海に注ぐまでを再現 しており、途中の街には名古屋城、新幹線、 リニア新幹線、中部国際空港はもちろんの こと、フランスやブラジルなどの外国も作 られています。 子どもたちは大雨による崖崩れがあっては いけないと斜面にフェンスを張ることや万 が一に備えて病院やドクターヘリを配置す る場所について提案。また列車同士が衝突 しないようにレールポイントを巧みに操作 していました。 子どもたちは時間が過ぎるのを忘れてい つまでも夢中になっていました。 このジオラマを通した大陸間 SDGs 教育 プロジェクトは、宇土教授を中心に、フラ ンス、アフリカ、ブラジルとつながってお り、言葉の壁を低くしているので、幼児で も、外国人児童でも学べる新しい学びの方 法なのです。こども園の子どもたちは、8 月以来、3 回目の挑戦で、すばらしい認知 力と協力性、コミュニケーション力の伸び が見られています。こども園の先生方と大 学でより連携して、このプロジェクト型の 学び合いを継続していきたいと話し合って います。 ジオラマを通した活動で、幼児から低学年 児童用の「プラレールを使ったジオラマ」と 小学校中学年以上を対象にした「Nゲージを 使ったジオラマ」を制作した。ジオラマには、
様々な学びのしかけを作っており、この全体 の構想としかけ、学びのしかけの意義と解説 を宇土が担当し、ジオラマ本体の制作を渋谷 純一が担当した。 この活動は、SDGs 教育など、新たな教育 の課題になっているテーマを学習するときど のような方法があるかと言う実験的な試みで もある。これからの学びを考えたとき、多様 な子どもたちが共に学ぶ方法としてテキスト 型からコンテキスト型の学び合いへと言う発 想を重視していく必要がある。その時、言語 コードを逓減する方法として具体物でよりリ アルな社会を提示し、その運営操作で、社会 参画を促す市民性教育の一環でもある。言語 コードを下げる学び合いの場により、Nゲー ジを使ったジオラマにも、こども園の園児た ちもたいへん関心を示したのである。 異年齢の子どもたち、日本語がまだ十分話 せない外国からの子どもたち、特別支援の子 どもたち、そして、大陸を越えて学び合う地 球子ども広場の子どもたちの学び合いなど、 多文化共生社会のインクルーシブな教育への 応用など、多様なアプローチの一つとしての 可能性を持っているのである ジオラマの活動を見るこども園の園児たち さらに、このジオラマのパートに QR コー ドを付けて、そこをスマートフォンで検索す るとそのパートの説明や物語が出てくる計画 を学生たちと考えており、今年度は、そのコ ンテンツを作る活動を行った。そのために、 パーツごとを写真に撮り、その学びのしかけ の内容を調べ、物語などにするのである。そ の活動を通して、ジオラマの物語化→絵本・ インスタグラム→多言語化 ⇒広報へと展開 していくのである。実際に、椙山こども園の 園児たちについても、豪雨災害で電車の事故 が発生し、ドクターヘリが出動することに なった時に、ドクターヘリを絵にして学びを 深めたのである。 プラレールを使ったジオラマ Nゲージを使ったジオラマ
8 出前授業 8.1 出前授業の経緯 水・気候変動教育のプログラム開発とその 実践をめざした地域の学校との連携事業とし て、2017 年度から岡崎市立生平小学校への 出前授業を実施している。 1 年目の 2017 年度は、アサヒ飲料(株) との協働プロジェクトによる水の循環をテー マにした小学校での実践を実施した。 この研究開発は、宇土ゼミの学生とアサヒ 飲料の担当者と毎月研究協議を重ねてできあ がったものである。 2017 年 12 月 19 日(火)9:35 ∼ 11:25 に、 生平小学校体育館で、3 年生から 5 年生まで の合計 30 名の児童への授業であった。 この出前授業は、「三ツ矢サイダー」出前 授業プログラム∼水と森の関係を探る 安全 でおいしい水ができるまで∼(椙山女学園大 学版)で、タイトルと内容は、「水と森の物語」 で、「私たちの生活に必要不可欠な水。水は どのようにして生まれ、どのように活用され ているのだろうか。ジオラマや紙芝居を教材 として水循環のしくみをわかりやすく学びな がら、水の価値、環境保全の大切さについて 学ぶ。また、ゲーム形式で水の大切さに気づ き、他の国が考える水の価値についても学 び、〝私たちが、今、できること〟をテーマ に子どもたちが考え、発表する。」というも のであった。このプログラムの理論的構成 は、宇土の 4 つの側面論を用いて、 情意的側面: 「えこるん」と「にこるん」 のファンタジーによる水の物 語 認知的側面: ろ過装置での実験と観察 科学的認知による体験的理解 ブルキナファソの映像 山や地形など自然環境と世界 への認知的拡大 価値的側面: 世界の水の使用量と自分の水 の使用量との視覚的な比較と 自らへの問い 技能的側面: すごろくに描かれている水へ の態度や技能をゲームをしな がら学ぶ 2 年目の 2018 年度は、宇土ゼミを中心と した大陸間水・気候変動教育プロジェクトの パートⅡの活動として、世界的にも問題にな り、SDGs 教育でも主テーマである「気候変 動問題」を加えて、10 月 22 日(月)に実施 した。 2017 年度のパートⅠは、平常時の日常生 活での水の循環の物語であり、水の循環、水 のろ過実験、映像、すごろくをキーワードに した「水と森の物語」であったのに対して、 2018 年度は、平常時に対して、気候変動に よる異常気象を題材にした「日本と世界の異 常気象の物語」である。ここでは、熱による 対流と土砂崩れ実験を取り入れ、価値的側面 では、4 つのコーナーを、技能的側面では、 すごろくにより、異常気象時の行動の仕方や 判断を題材にしている。 8.2 2019 年度の出前授業 3 年目の今年度(2019 年度)は、パートⅢ として、個人の行為と地球システムの相互関 係を課題にして、プログラム開発を行った。 つまり、個人や地域での活動が、地球全体に 影響し、地球システム自体が気候危機として 出現し、今度は地域や個人に対して、大洪水
や異常気象として現れるというこの危機の循 環である。 2019 年度 テーマ:100 年後の地球の物語 1)目 的 出前交流授業を通して、将来の 地球環境について学び、生平の 自然や環境について考え「今、 自分たちができること」につい て考えを持つことができるよう にする。 2)テーマ 100 年後の地球の物語 ∼未来の地球を守るのはわたし たちだ!今一人ひとりにできる ことを考えよう∼ 3)日 時 2020 年 1 月 28 日(火) 10:35 ∼ 12:10 3,4 限 4)場 所 岡崎市立生平小学校 体育館 岡崎市生平町字鶸場 25-1 5)参加者 椙山女学園大学教育学部宇土ゼ ミ 9 名(4 年 8 名、2 年 1 名) 引 率 同 大 学 教 授 宇 土 泰 寛、准教授 渡邉康、客員教授 林敏博 6)対 象 全学年(1・2 年生は 3 限のみ。) 7)授業内容(概要) 時間 (分) 経過 時間 (分) 内容 担当 者 5 5 開会式 校長先生挨拶 自己紹介 ・学生、教授紹介 関谷 5 10 プロロー グ 「かんきょうってなんだろう?」 生活科を交えて環境とは何かを 知らせる。 大林 中川 15 25 情意的側 面 物語 「100年後の地球の姿」 地 球 温 暖 化 が 進 行 し 続 け る と 100 年後の地球はどうなってし まうのかを実際の予測を基に物 語を作成。劇と映像を融合し情 意的に訴える。 大林 中川 15 40 認知的側 面 実験①② 「ろ過できない汚れってなんだろ う」 ろ過装置を使い、水溶液の中で も、ろ過できないものがあるこ とを知る。 延谷 纐纈 関谷 認知的側 面 実験③ 「目の前の汚れが世界に!魚や鳥 はどうなってしまうのだろう」 1か所でも海が汚れると、世界全 体に汚れが広がることを知る。 延谷 纐纈 関谷 10 50 休 憩 20 70 価値的側 面 道徳 「地球を救おう子ども会議」 オリジナルの副読本を用いて生 平小学校の未来を想像し、今自 分たちにできることを考える。 角南 大島 15 85 技能的側 面 すごろく 「100 年 後 に 届 け! 生 平 小 学 校 2020年の木」 すごろくを通して自分自身は地 球のために何をするのか考え、 実際に行動するきっかけとなる よう発信する。 竹内 5 90 エピロー グ まとめ ・ 児童がこの授業で学んだこと や感想などを発表する。 大島 8)授業内容 プロローグ「かんきょうってなんだろう?」 情意的側面「100 年後の地球の姿」 【目的】 ①「かんきょうってなんだろう?」 人的環境、物的環境、自然環境、社会環境 といった身の回りのものすべてが環境であ ることが分かる。 ②「100 年後の地球の姿」 目的 1: 私たちが普段使っているものや 行っていることが、100 年後の未 来に影響を及ぼしていることを知 る。 目的 2: 地球温暖化が進むと、100 年後の 地球はどうなってしまうのかを一 人一人が考える。 目的 3: 未来に悪影響を与えないために 今、私たち一人一人ができること
を考える。 【内容】 《「かんきょうってなんだろう?」》 身近な具体例を用い、環境とは何かを知 る。生平小学校の周りの環境や学校内の環境 を写真を見ながら改めて知る。 《「100 年後の地球の姿」》 場面 1 ①∼③ 劇 しゅり・あおと・げんきは、100 年後の未 来からやってきた「ましろ」からの SOS の発信を受けて、実際にどのような状況に なっているのか興味を持ち、100 年後に行 き現状を知る。 場面 2 ①∼場面 3 ② クロマキー 100 年後の地球が、地球温暖化の影響に よって様々な面で変わってしまっている現 実を目の当たりにする。100 年後の未来が 明るい未来であるように今、私たち一人一 人ができることを考える。 場面 4 ①∼③ クロマキー 実際に 100 年後の未来で授業を受けてみ て、2020 年では当たり前だと思っていた ことが、100 年後の 2120 年では当たり前 ではないギャップを感じる。 場面 4 ④ 劇 実際に 100 年後の授業を受けてみて、海が 黒い原因について実験を交えて学ぶ。 8.3 生平小学校の先生からのまとめ 椙山女学園大学の学生による環境出前授業 (宇土ゼミ)を実施して学びを深めることが できた。本年度の出前授業では、「情意・認 知・価値・技能」による4つの側面論(宇土) による「100 年後の地球の物語」をテーマと して出前授業を行った。「情意的側面」では クロマキー手法と寸劇による「100 年後の地 球」について、「認知的側面」では水のろ過 実験を観察、「価値的側面」では、道徳「地 球を救おう子ども会議」の資料を基に縦割り グループで話し合った。最後に「技能的側面」 では、「100 年後に届け!生平小 2020 年の木」 と題して SDGs スゴロクをもとに学び合い、 葉の形をした画用紙に記して 2020 年の木に 掲示して自分で宣言をするという内容で締め くくった。 これらの活動を振り返ると、地球規模の開 発目標として提唱されている SDGs において も、一人一人の小さな行動が、やがて世界へ とつながることを意識して学習をさせること が大切であると考える。
おわりに 環境と人間の関係が、今ほど問われている ことはない。人類誕生以来、人類は地球の環 境と共に生きてきた。そこには、氷期の極め て厳しい状況もあり、間氷期の暖かな時期も あった。この自然のサイクルの中で、地球上 の生き物は何千年、何万年もかけて、適応し、 最後に、ホモサピエンスである現生人類が生 き延びてきている。 私たち、現生人類は、狩猟社会から、農業 社会へ、そして、産業革命を経て、工業社会 へ、そして、現在の情報社会へと進み、さら に、Society 5.0 と言われる新たな社会を迎え ようとしている。 しかし、地球は、一人の人間にとっては、 あまりにも大きく、地球上で生活しながら も、地球自体を意識することはなかった。し かし、1700 年代後半から 1800 年代前半にイ ギリスで起こった産業革命は、従来の社会生 活を一変させることになった。あらゆること を手や家畜を使って作業してきた人々の生活 が、蒸気機関の発明により一変した。交通機 関も一気に変わった。車社会が出現し、蒸気 船によって、大陸間の移動も可能となった。 この産業革命は、人類にとって便利になっ た生活を享受すると同時に、地球温暖化の原 因となる二酸化炭素の排出量を一気に増大さ せた。 そして、近年、日本はもちろん世界中で、 異常気象が引き起こされている。オーストラ リアで、現在起こっている広大な範囲の森林 火災や砂嵐、雨が降り出すと一気に降り、洪 水を引き起こしているように、極端化してき ている。 環境と人間の相互関係が、世界的には、気 候危機と言われるほど緊迫した事態になって い る。 こ の よ う な 課 題 に 対 し て、 人 類 は 1960 年代、アポロ計画により、地球の姿を 初めて見て、宇宙に浮かぶ青い惑星、地球の 姿を見た。そして、地球のあり方を問い直す 「宇宙船地球号」の概念を提起した。 その主な人物は、経済学者のケネス・E・ ボールディング(Kenneth E. Boulding)と 建築家であり、思想家のバックミンスター・ フラー(R. Buckminster Fuller)である。ボー ルディングは、1965 年に「宇宙船としての 地 球(Earth as a Space ship)」 を 書 き、 1966 年にワシントンで開かれた未来資源研 究所で、「来るべき宇宙船地球号の経済学 (The Economics of Coming Spaceship
Earth)」という論文を発表し、「カウボーイ 経済」から「宇宙飛行士経済」への転換を提 起したのである。バックミンスター・フラー は、『 宇 宙 船 地 球 号 操 縦 マ ニ ュ ア ル (Operating Manual for Spaceship Earth)』 において、化石燃料や原子力エネルギーに依 存することへの警告とエネルギー供給母船 「太陽号」などのクリーンエネルギーへの移 行を提示した。 それから半世紀たった今、国家中心の発想 からグローバルガバナンスとして、SDGs(持
続可能な開発目標)を決め、2030 年までに、 誰一人取り残さない地球社会を創ろうとして いるのである。 大陸間 SDGs 教育研究は、まさにこの世界 の動きと同調したものであり、椙山人間学研 究センターの環境と人間プロジェクトは、 EX 棟の 207 号室をベースに、こども園から 小学校、中高等学校、大学、大学院のあらゆ る段階の教育と連携しながら、この地球的課 題であり地域的課題に立ち向かおうとしてい るのである。この活動は、アジアの日本、ア フリカのブルキナファソ、ヨーロッパのフラ ンスの 3 つの大陸を越え、つながり合う活動 であったが、今年度は、今回の報告にあった ように、南アメリカ大陸のブラジル、アジア のフィリピンとマレーシアと拡大してきてい る。国内の学校からも問い合わせや相談が来 ている。個人的にも、活動への参加が増えて おり、さらに、海外と関係した方の参加もみ られる。 幼児教育から大学まで、多様な教育アプ ローチを研究開発し、さらに、世界に発信し ていきたい。そのためにも、豊かな人材を抱 える椙山女学園大学及び椙山女学園の各学校 の教職員の力をつなげていくことも必要と考 える。 今年度の活動を振り返り、多くの方々の理 解と協力をいただき、ここまでやって来るこ とができたと言える。そして、椙山人間学研 究センターのプロジェクトとして活動できた のは、大きな支えになった。 また、椙山女学園はじめ、笹川日仏財団、 パリ日本文化会館、日本税理士会連合会、ア サヒ飲料(株)など、これらの活動に関して 理解と協力をしていただき、深く感謝申し上 げる。 特に、笹川日仏財団からは、「パリ子ども 宣言」を作ったパリ公演の実施に当たっての ご支援をいただいた。日本税理士会連合会か らは、大陸間 SDGs 教育研究活動の一環とし ての租税教育に関係したフランス、ブルキナ ファソから日本に招聘した 2 人の渡航費やブ ラジル、マレーシアの日本人学校や現地校を 訪問し、パリ子ども宣言の交流拡大をより進 めるための費用をいただいた。椙山人間学研 究センターの環境と人間プロジェクト予算か ら、北海道の全海研全国大会参加と地球子ど も広場の活動運営に役立たせていただいた。 ほかにも、これらの活動を継続するために、 椙山女学園大学の学園研 B など多くの支援を もとに、活動が継続し、拡大していることに 感謝申し上げる。