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アミノ酸ラセミ化を利用した歯からの年齢推定:高年齢帯での有用性 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 内 容 の 要 約

氏名 井口 蘭

論文題目

アミノ酸ラセミ化を利用した歯からの年齢推定:高年齢帯での有用性

(Age estimation by using racemization of amino acid in a tooth: usefulness for elderly people) 学位論文内容の要約 研究の目的 歯は人体の組織の中で最も硬い組織であり、身元不明死体の個人識別において重要な情報源の一つと なる。実際に東日本大震災では、歯の情報から約15%の身元不明遺体の身元が確認されている。歯を 用いた個人識別の多くは、その治療痕を用いてなされるが、歯は治療痕以外にも死者の年齢に関わる情 報をもっている。 歯の成長期においては歯の石灰化および萌出状態から年齢推定が行われている一方、成人では、咬耗 や第 2 象牙質などの加齢に伴う生理学的変化を用いられている。しかしこれらの方法は、技術や知識 にかなりの専門性を必要としている。その上にそれらの形態的変化は個人の生活環境に影響を受けると 考えられており、視覚を用いた鑑定方法のため主観的な判断となることも含め、推定年齢と実年齢が一 致しないことも少なくない。 エナメル質に含まれるアスパラギン酸 (Asp) において、D 体が年齢依存的に増えることを応用し、 D-Asp と L-Asp の比が年齢推定に適応可能であることが報告された。その後エナメル質、象牙質、セ メント質、そしてそれらを含めた全歯牙を用いるなど改良された方法が研究され、現在では歯に含まれ るAsp のラセミ化 Aspartic acid racemization (AAR) を利用した年齢推定法は、最も正確な方法の一 つとして、実際の年齢鑑定にも活用されている。 しかし AAR を利用した年齢推定法が、今後我が国で確実に増加する高年齢層にも同じ精度をもっ て適用できるか否か検証した研究はほとんど見られない。先行研究の多くは分析方法について言及した ものが多く、高年齢層に特化した分析を行った研究はほとんど認められない。 そこで我々は、来たるべき超高齢化社会に対応すべく、AAR を利用した年齢推定法が高年齢帯にも 適応可能か否か研究を行った。 方法 年齢既知の抜去歯70 歯 (10~90 歳、52.9±2.8 歳) から縦断切片を作成後、洗浄し粉末化した。粉 末化した試料10mg に 6N 塩酸 5ml を加え、100℃6時間加水分解を行った。ロータリー式遠心エバポ レーターにて乾燥後、純粋5ml を加え、強酸性陽イオン交換樹脂に通し、2N アンモニア水 5ml にて アミノ酸を溶出させた。溶出液をエバポレーターおよびデシケーターにて乾燥させた。2ml 混合液 (イ ソプロピルアルコール:塩化アセチル=8:2) を加え、100℃で 30 分間にてエステル化を行い、乾燥させ た。800μl 塩化メチレンと 200μl 無水トリフルオロ酢酸を加え、室温にて 30 分間アミド化させ、誘 導体化を完了させた。再度試料を乾燥後、酢酸エチルに溶解させ、ガスクロマトグラフに注入した。カ ラムは光学活性固相Chirasil-Val が塗布されたものを用い、D-Asp と L-Asp の検出量の比 D/L を用い たラセミ化率In[(1+D/L)/(1-D/L) ]と年齢との相関関係を分析した。

本研究の試料は、エナメル質や象牙質などを複数の組織を含んでいるために、1 試料からの再現性を 確認するために、2 試料 (21 歳、65 歳) を 7~8 回分析し、1 試料からのラセミ化率の再現性を平均値 および標準誤差にて評価した。

(2)

学 位 論 文 内 容 の 要 約 ( 続 紙 ) 氏名 井口 蘭 次に、抜去歯70 歯のラセミ化率を分析し、全年齢層と高年齢層 (60 歳以上) の 2 群に分け、ラセミ 化率と年齢について単回帰分析をおこなった。 得られた回帰曲線から算出した推定年齢と実年齢との差を推定誤差として、各年齢層 (10~19 歳、 20~29 歳、30~39 歳、40~49 歳、50~59 歳、60~69 歳、70~79 歳、80~89 歳、90 歳~) および 60 歳未満と 60 歳以上について統計的解析を行った。 統計分析はSPSS ver.16.0 を用いて、Shapiro-Wilk 検定、単回帰分析、t検定を行った。 結果 A 再現性の評価 ラセミ化率の平均値は21 歳、65 歳それぞれ 0.11523、0.24111、標準偏差は 0.00340、0.00354 であ った。 B 年齢層による年齢とラセミ化率の相関関係 全 年 齢 帯 に お け る ラ セ ミ 化 率 と 年 齢 に つ い て 回 帰 分 析 を 行 っ た と こ ろ 、 回 帰 曲 線 は In[(1+D/L)/(1-D/L)]=0.002x+0.073、有意確率 (P) は 0.01 未満、相関係数 (R) は 0.971、決定係数 (R2) は0.943 と高い値を示した。その一方で、60 歳以上の回帰曲線は In[(1+D/L)/(1-D/L)]=0.002x+0.101、 P<0.01、R=0.71、R2=0.504 であり、相関関係を認めたが、全年齢帯と比較し低い値を示した。 C 推定年齢と実年齢の差の検討 全年齢層での推定誤差は、平均は-1.1 歳で標準偏差は 5.6 歳であった。一方各年齢層における推定 誤差は、高年齢になるにつれ標準偏差は高くなる傾向を認めた。 2:60 歳未満と 60 歳以上 60 歳未満における推定誤差の平均値±標準偏差は、-0.9±3.6 歳であったが、60 歳以上では-1.4± 7.4 歳となり、高年齢帯では標準偏差の上昇を認めた。また 60 歳未満と 60 歳以上の推定誤差について t 検定を行ったところ、有意差は認められなかった 。 結論 複数の組織を含んだ縦断切片を試料として用いた場合でも、象牙質のみを用いた結果と近い相関関係 を得られた。本研究によって、煩雑で健康被害の懼れのある象牙質の単離を省略できる可能性が示され、 本法の普及に寄与するものと考えられる。 また、高年齢帯においても適応可能であるが、年齢推定結果が60 歳以上の推定年齢がなった場合、 実年齢との推定誤差が大きい可能性があり、法医実務に応用する際にはこの点に注意が必要であること が示された。

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