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認知文法を援用した意識化指導

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Academic year: 2021

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文法指導の問題点は,説明一辺倒,つまり,演繹的(deductive)になっ てしまうことである。その問題点を解決するための1つの方策として, 「意識化指導(consciousness-raising instruction)」が考えられる。意識化 指導とは,明示的で演繹的な文法説明に代わり,データの中から規則を発 見させようとする暗示的で帰納的な(inductive)指導方法である。 本研究の目的は,データ駆動型(data-driven)の意識化指導の問題点を 指摘し,認知文法(Cognitive Grammar)を援用した意識化タスクを開発 することにある。 1.意識化指導 1.1 学習プロセスと意識レベル 母語習得は多くのサンプルから無意識的に規則を見つけ出す帰納的な学 習プロセスをたどる。意識化タスクに基づく帰納的な意識化指導は,母語 習得という自然な環境の中で起こるこのようなプロセスを人為的な教室と いう環境の中で再現しようとする試みである。したがって,この指導方法 では,教室という学習環境により意識レベルは必然的に無意識的から意識 的へと上がるが,学習プロセスは母語習得と同様に帰納的である(表1)。 キーワード:意識化タスク,認知文法,文法指導

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表1:学習プロセスと意識レベル 母語習得 外国語学習 学習プロセス 帰納的 帰納的 演繹的 意識レベル 低い 高い 高い (島田, 2019, p. 134 に基づく) この意識化指導の中心は,目標とする文法の特性の「理解」にある。し たがって,目標とする特性を含む文を「産出」することまでは要求しない。 つまり,意識化指導の目的は,意識レベルを上げて,特定の文法の特性に 注意(attention)を向けさせ,「それについて考え,議論する」ことであ る(Ellis, 2003, p. 163)。 1.2 データと操作 意識化指導は,具体的には意識化タスクにより実施される。そして,意 識化タスクは「データ」の提供とそのデータに対する「操作(operation)」 から構成される(図1)。 データ 規則 操作 図1:データと操作 (島田, 2019, p. 136 に基づく) データとは端的に言えば例文を指す。その例文は具体的には, (1)音声によるものと文字によるもの,(2)単一文と連続文,(3)文法的 に正しい文と正しくない文,などが挙げられる(Ellis, 1992, pp. 161!2)。 操作とは,生徒が規則を発見するために,教師の指示にしたがってデー タに働きかける行為をいう。意識化タスクにおける具体的な操作のタイプ としては,

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(1)下線を引くなどして,目標とする文法特性に該当する箇所を特定する, (2)例文の正誤を判断する,(3)例文を規則にしたがって分類する,(4) 規則を文章化する,などが挙げられる(Ellis, 1997, pp. 161!2)。 1.3 意識化指導の問題点 データ駆動型の意識化タスクでは,データの整理・分類により形式上の 違いという規則性が見いだされる。そして,データが連続文(特に,結束 性のあるディスコース)の場合には,新情報は旧情報の後に来るという 「文末焦点の原則」という意味を見い出す場合がある。与格交替,複文に おける従属節の位置,能動態と受動態の使い分けなどがその一例である (島田, 2018)。 しかし,文法項目によっては,特に単一文の場合には,その言語形式上 の違いという規則性にどんな意味があるのかまではわからない場合がある。 その一つの例として,動詞の目的語の位置に来る補文標識(complemen-tizer)についての不定詞と動名詞の使い分けを扱ったデータ駆動型意識化 タスクを例に挙げ,その指導手順について考察する。 ■データ

(1) I wanted to play tennis.

(2) He promised to come home soon. (3) Emi finished reading the long story. (4) We decided to walk to the nearby station. (5) Ken enjoyed watching spy movies. (6) John denied killing his wife.

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指示① (1)~(6)の6つの文を2つのグループに分類しなさい。 ▼ヒント1:2つ目の動詞の形に注目しなさい。 指示② 1つ目の動詞に共通する特徴をさがしなさい。 指示①のヒントにより,(1)(2)(4)と(3)(5)(6)の2グループに 分類することはそんなに難しいことではない。この意識化タスクにおいて は,動詞の補文標識として不定詞が来る場合と動名詞が来る場合があると いう規則が帰納的に導かれる。そして,次のステップとして,指示②のよ うに,動詞の種類に注目させることができるが,want, promise, decide と finish, enjoy, avoid の,それぞれ3つの動詞に共通する特性を見い出すの はかなり困難である。むしろ,中島(2019)がいうように,「不定詞と動 名詞にはそれぞれに特有の意味があり,それと動詞の意味との相性によっ て,どの動詞が不定詞をとるのか動名詞をとるのかが,決まってくる」か らである(p. 93)。したがって,データ駆動型の意識化タスクでは,2つ の形式上の違いは見い出せても,その形式が意味的にどのように異なるの かはわからない場合がある。 次節からは,このようなデータ駆動型の意識化指導の限界ともいうべき 問題に対して,認知文法の知見を援用して,規則性に意味を見い出す新し いタイプの意識化タスクの開発を試みる。 2.認知文法 人は自分の考えを相手に正確に伝えるために,いくつかの異なった言語 形式から最も適切なものを積極的に選び出そうとする。文法はその形式選 択の一つの道具に過ぎない。この積極的な選択権の行使は,まず,事態を どのように把握するかによって始まる。 Neimeier(2017)は,言語に対する認知文法の見地として,「言語を認

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知の統合的な側面として扱い,文法現象を意味のあるものとしてみなして いる」,そして,「場面(situation)は,一般的には,言語形式で直接的に 反映されるものではなく,認知的な事態把握(construal)によって反映 される」と,言語の認知面の重要性を主張している(p. 55)。つまり,物 事に対する認知的な捉え方の違いが,言語形式の違いに反映されていると 考えることができる。 本節では,次節で試みる意識化タスクの教材開発の理論的基盤となる考 え方,すなわち,認知文法のアイコン性(iconicity)と卓越性(prominence) について,事態把握の近接性・距離(proximity/distance)の原則,およ び,トラジェクターとベンチマークの配列(trajectory/benchmark align-ment)の概念に焦点を当てて,その概要を示すことにする。 2.1 アイコン性 アイコン性の概念は,記号学(semiotics)に由来するもので,アイコ ンの記号はその意味のイメージを供給する。アイコン性には3つの原則が あり,その一つが近接性・距離の原則である。この近接性・距離の原則に ついて,Langacker(2008b)は,「意味的に一緒に属する要素は音韻的に も一緒に起こる」と説明している(p. 78)。 また,Neimeier(2017)は,その原則は「概念的に近い関係にあるもの は言語的にも近くに置かれるという事実を説明している」と述べている (p. 211)。そして,次のように2つの与格交替(二重目的語構文)を示し,

(1)Mary gave Peter a sweater. (2)Mary gave a sweater to Peter.

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の方が小さいので,概念的な距離も同様に,(2)よりも(1)の方が小さ い」と主張している。そして,(1)では「Peter はセーターを受け取った 人であり,セーターの新しい所有者である」が,(2)では「Mary は Peter にセーターを一時的に与えただけなのかもしれない」と説明している(p. 211)。 さらに,萩原(2008)も,同様に,二重目的語構文を示し,(1)では 「2つの目的語の間に「所有関係(have 関係)」が成り立っており」,(2) では「必ずしも「所有関係(have 関係)」は意味しない」と主張している。 そして,(2)では「「所有」ではなく,「移動」を表す」と説明している (p. 15)。 (1)は(2)に,(2)は(1)にそれぞれ書き換えることができるが, この2つの文の意味には微妙な違いがある。もし両者が同じ意味であると いうのであれば,2つの異なる形式は不要である。(1)では間接目的語と 直接目的語が隣接しているが,(2)では前置詞 to が a sweater と Peter の 間に入っていて,それが両者の距離を大きくしている。つまり,両者の位 置関係が近接ではなくなっている。この形式的な近接性の有無が意味的な 所有関係に反映されていると考えることができる。 2.2 卓越性 ある場面で最初に焦点を当てる参加者をトラジェクターといい,二番目 に焦点を当てる参加者をベンチマークという。このトラジェクターとベン チマークの関係は,図(figure)と地(ground)の関係でもある。長(2016) は,図と地の関係を,「我々が何らかの物体を視覚的に認知する際,視覚 的なスコープの中から何らかの対象を取り出すという行為を自然と行って いる。この取り出されたものが「図」であり,取り出されなかった背景に 相当する部分が「地」である」と説明している(p. 18)。たとえば,能動

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態と受動態の選択に関して,事態把握が図であれば能動態を使うし,地で あれば能動態を使うというように,事態の把握の仕方によって選択される 言語形式が変わってくる。つまり,話に参加している人たちを前面に出す のか後ろに引っ込めるのかは,事態把握の結果によるものである。

Langacker(2008a)は,前置詞 above と below の違いをトラジェクター とベンチマークの配列の原則にもとづいて,次のように説明している。

(3)The lamp is above the table. (4)The table is below the lamp.

(3)と(4)が描写している場面状況は同じである。つまり,(3)では

「ランプがテーブルの上にある」,(4)では「テーブルがランプの下にある」

という場面状況である。しかしながら,これらの2つの異なる言語表現の 背後には事態をどのように把握するかという話者の選択がある。Where is the lamp? という問いには,ランプを際立たせるために(3)の応対が, Where is the table? という問いには,テーブルを際立たせるために(4)の 応対が適切である。そして,その選択を決定するのはディスコース(文脈) である(Langacker, 2008a, pp. 71!2; 長, 2016, pp. 20!21)。 3.認知文法を援用した意識化タスク この節ではデータ駆動型の意識化タスクの問題を解決するために,認知 文法を援用した意識化タスクについて,不定詞と動名詞,仮定法,態を例 にとってみていく。いずれもデータを与えてそれに対して操作を行うとい う指導手順は,データ駆動型の意識化タスクと何ら変わりはない。

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3.1 不定詞と動名詞 データ駆動型の意識化タスクによってデータを整理・分類すれば,動詞 にはその後に to 不定詞をとるものと動名詞をとるものの2つの種類があ ることがわかる。しかし,それだけでは動詞が後にとる to 不定詞と動名 詞の使い分けを,規則として説明することができない。どんな動詞が to 不定詞をとり,どんな動詞が動名詞をとるのかという問題は頭を悩ませる。 したがって,たとえば,動詞が decide の場合は to 不定詞を,finish の場 合は動名詞をとるといったように,動詞とのセットで覚えておくといった 説明が多い。これでは,生徒は,コロケーションを覚えるように,動詞と to 不定詞,または,動詞と動名詞といったそれぞれの組み合わせを一つ ひとつ覚えていくしかない。 ■データ

(1)I wanted to play tennis.

(2)He promised to come home soon. (3)Emi finished reading the long story. (4)We decided to walk to the nearby station. (5)Ken enjoyed watching spy movies. (6)John denied killing his wife.

■操作 指示① (1)~(6)の6つの文を2つのグループに分類しなさい。 ▼ヒント:2つ目の動詞の形に注目しなさい。 指示② それぞれの文に含まれる2つの行為について,1つ目の行為の あとに続いて2つ目の行為が起こる場合は〇を,起こらない場合は ×を記入しなさい。

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1つ目の行為 2つ目の行為 (1) want play (2) promise come (3) finish read (4) decide walk (5) enjoy watch (6) deny kill 指示③ 完成した表と指示①の分類から,どんなことがわかりますか。 まず,指示①によって,2つ目の動詞の形式に基づいて,下の表のよう に,to 不定詞(動詞の原形)と,動名詞(動詞~ing)の2つのグループ に分けることはデータ駆動型と同じ指導手順である。しかし,これだけで はどのような動詞が to 不定詞をとり,どのような動詞が動名詞をとるか はわからない。 to 不定詞(動詞の原形) 動名詞(動詞~ing)

(1)I wanted to play tennis. (3)Emi finished reading the long story.

(2) He promised to come home soon.

(5)Ken enjoyed watching spy mov-ies.

(4)We decided to walk to the nearby station.

(6)John denied killing his wife.

そこで,指示②で,1つ目の動詞とその後に続く2つ目の動詞との関係 性について考えさせる。具体的には,文に含まれる2つの動詞(行為)に 連続性があるかないかについて考えさせる。すると,(1),(2),(4)では, 1つ目の行為の後に2つ目の行為が起こることがわかる。一方,(3),(5), (6)では,必ずしも1つ目の行為の後に2つ目の行為が起こるわけではな い。したがって,指示②の答えは,下表のように整理される。

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(1) want 〇 play (3) finish × read (2) promise 〇 come (5) enjoy × watch (4) decide 〇 walk (6) deny × kill

認知文法では,概念的に同じものに属する場合は言語的に距離が近くな り,同じものに属さない場合には距離が遠くなると考える。そして,1つ の文における2つの動詞の距離は,1つ目の動詞が2つ目の動詞に与える 影響の度合いを反映していると説明する。この考えに基づけば,動詞とそ の補文標識との距離は, 原形不定詞 < to 不定詞 < 動名詞 <that 節 の順に大きくなっていく(Niemeir, 2017, pp. 211!212)。つまり,動詞と の距離は動名詞よりも to 不定詞の方が近いということになる。

さらに,to には,たとえば,He went to Tokyo. という文における前置 詞 to と同様に,未来への目標志向性があることにも気づかせることがで きる。 3.2 仮定法 仮定法が難しいのは,現実でないことが起こる可能性について「かりに ~である(あった)としたら」と仮定すること,そして,現実ではないこ との可能性にも度合いがあり,その度合いの違いが形式に反映されていく つもの種類があるに起因する。 ■データ ありえない ありそうもない ありえる <!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 1.明日晴れたら <!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 2.今夜彼女がパーティに来たら <!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 3.1億円の宝くじに当たったら

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!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 4.飛行機を持っていたら <!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 5.もっと早く着いていたら <!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 6.一生懸命に勉強していたら

(1)If it is fine tomorrow, we will go on a picnic. (2)If she comes to the party tonight, you will meet her. (3)If I won the 10 million yen lottery, I would quit my job. (4)If I had a plane, I would fly to London to see you.

(5)If you had arrived earlier, you would have caught the train. (6)If you had studied harder, you would have passed the test.

■操作 指示① (1)~(6)の場面が実現する可能性はどれくらいありますか。 その度合いを破線上に●で示しなさい。 指示② 上記6つの問題文(英文)を3つに分類しなさい。 ▼ヒント:場面の実現可能性を3つの段階(ありえる!ありそうも ない!ありえない)で整理しなさい。 指示③ 上記の分類からどんなことがわかりますか。 ▼ヒント:実現可能性の3つの段階と,それぞれを表す言語形式と の関係を考えてみましょう。 (1)明日晴れることや,(2)今夜彼女がパーティに来ることは,現実に十 分に起こりえることである。そして,(3)一億円の宝くじに当たることや, (4)飛行機を所有することは,全くありえないわけでもないが,現実には その可能性は極めて低い。さらに,(5)もっと早く着いていればや,(6) もっと一生懸命に勉強していればは,過ぎてしまったことに対して,そう

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でなかったらと仮定している。しかし,過ぎてしまったことは変えようが ない。したがって,それぞれの場面が起こりうる度合いは次のように位置 づけることができる。 ありえない ありそうもない ありえる <!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!● (1)(2) <!!!!!!!!!!!!!!!!!!●<!!!!!!!!!!!!! (3)(4) ●<!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (5)(6) 上の図に示すように,ありえる(possible)→ ありそうにない(unlikely) → ありえない(impossible)と,ベース(ありえる)からの「距離」が 大きくなるにつれて,その実現不可能性は大きくなっていく。そして,そ の不可能性の大きさに応じて,条件節(If 節)の時制が,たとえば,If it is fine tomorrow,(現 在)→ if we won the 10 million yen lottery,(過 去)→ If you had studied harder,(過去完了)と,下の図のように,過去に向かっ て移動して(ずれて)いくことがわかる。また,主節の形式も,条件節の 時制の変化に応じて,条件節が過去の場合は will の過去である would を 用い,さらに,過去完了の場合には would have passed と過去完了形を用 いて,時制が一つずつずれていく。 ●<!!!!!!!!!!●<!!!!!!!!!!● 過去完了 過去 現在 仮定法過去は,現実にはありえないことや確率の低いことを想像する時 に用いる。そして,仮定法過去完了は,実際には起こらなかったことに対 して,もし起こっていたらと仮定する。時制としての過去形は,現在から

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の時間的な距離(temporal distance)を示しているが,仮定法では,その 比喩的な表現として,現実からの認識的な距離(epistemic distance)を表 すことになる。 なお,仮定法現在は動詞の原形を用いる。問題文(1),(2)の動詞には 原形ではなく現在形が用いられており,文法的には直説法現在として分類 すべきである。とはいうものの,仮定法の他の用法との整合性も考慮して, 本稿では,便宜上,仮定法として扱っている。 3.3 態 伝統的な文法指導では,能動態の主語と目的語を入れ替えることによっ て受動態を作るという形式的な操作で説明する場面が多くみられる。これ に対して,認知文法では,ある状況を行為をするものの観点からとらえる のか,それとも,行為を受けるものの観点からとらえるのかによって,能 動態と受動態を使い分ける。つまり,認知文法では形式よりも意味を重視 していることになる。 ■データ

(1)Picasso painted the picture.

( )

(2)Kennedy was killed by Oswald.

( )

(3)The crops were destroyed by the storm.

( )

(4)The police arrested the robbers.

( )

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( ) (6)Emi designed her house.

( )

(7)All the students opened their textbooks.

( )

(8)Ken was laughed at by everyone.

( ) ■操作 指示① 行為をするものを で囲み,その行為を受けるものを で囲みなさい。 指示② 行為をするものから行為を受けるものに向けて( )に矢 印を入れなさい。 指示③ 矢印の向きにもとづいて,問題文(1)~(8)を2つのグループ に分類しなさい。 指示④ 上記の分類からどんなことがわかりますか。 ▼ヒント:各グループにおいて主語の後には何が来ていますか。 問題文(1)~(8)は,矢印の方向にしたがって,(1)(4)(6)(7)と, (2)(3)(5)(8)の2つのグループに分類できる。

(1) Picasso → the picture (2) Kennedy ← Oswald (4) The police → the robbers (3) The crops ← The storm (6) Emi → her house (5) America ← Columbus (7) All the students → their textbooks (8) Ken ← everyone

(1)(4)(6)(7)のように,矢印が右向き(→)の場合が能動態,(2)(3)

(5)(8)のように,矢印が左向き(←)の場合が受動態である。受動態の

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形と同じく -ed で終わっている)こと,by のあることに気づかせる。な お,ここでは,注意を分散させないために,動詞はあえて規則動詞に限っ ている。 ある1つの場面には,行為をするものとその行為をうけるものが存在す る。行為をするものに焦点を当てたい場合は,それを前面に出し,行為を うけるものを後ろに引っ込める。その反対に,行為をうけるものに焦点を 当てたい場合は,それを前面に押し出し,行為をするものを後ろに引っ込 める。このように,認知文法では,行為をするもの,行為をうけるものの いずれに焦点を当てるかによって,言語形式が変わると考える。 劇場では役者にスポットライトを当てる。どの役者にスポットライトを 当てるかは演出家が決める。演出家は会話では「話し手」に他ならない。 つまり,話し手が誰にスポットライトを当てるかを決めることになる。し たがって,話し手が,行為をするものにスポットライトを当てれば能動態 となり,行為を受けるものにスポットライトを当てれば受動態となる。同 じ状況を異なる角度からスポットライトを当てているために,言語形式が 変わるがその意味するところは変わらない。つまり,矢印は常に行為をす るものから行為を受けるものに向かっていて,その方向は変わらない。 そして,行為をするもの,あるいは,行為をうけるものにスポットライ トを当てたいならば,それを目立たせるために文の初め,つまり,主語の 位置にもってくる。主語とは文のはじめ(starting-point)のことで,今か ら話そうとしていることに他ならない(Eastwood, 2006, p. 132)。 4.まとめ 意識化指導とは,明示的で演繹的な文法説明に代わり,データの中から 規則を発見させようとする暗示的で帰納的な指導方法である。データ駆動 型の意識化タスクでは,データの整理・分類により形式上の違いという規

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則性が見いだされる。しかし,文法項目によっては,特に単一文の場合に は,その言語形式上の違いという規則性にどんな意味があるのかまではわ からない場合がある。 本研究の目的は,このようなデータ駆動型の意識化指導の問題点を指摘 し,認知文法を援用した意識化タスクを開発することにある。 認知文法では言語を認知の統合的な側面として扱い,文法現象を意味の あるものとしてみなす。そして,場面は,言語形式で直接的に反映される ものではなく,認知的な事態把握によって反映されていると考える。つま り,物事に対する認知的な捉え方の違いが,言語形式の違いに反映されて いると考えている。 本稿では,認知文法のアイコン性と卓越性について,事態把握の近接 性・距離の原則,および,トラジェクターとベンチマークの配列の概念を 概説し,これらの認知文法の知見を援用した規則性に意味を見い出す意識 化タスクの例として,不定詞と動名詞,仮定法,態を扱う教材の開発を試 みた。 参考文献 長加奈子(2016).『認知言語学を英語教育に生かす』金星堂

Eastwood, J.(2006). Oxford practice grammar : Intermediate. Oxford University Press.

Ellis, R.(1992). SLA research and language teaching. Oxford University Press. Ellis, R.(2003). Task-based language learning and teaching. Oxford University

Press.

萩野俊哉(2008).『英文法指導 Q & A こんなふうに教えてみよう』大修館書店 Langacker. R.(2008a). Cognitive grammar : A basic introduction. Oxford

Univer-sity Press.

Langacker, R.(2008b). Cognitive grammar as a basis for instruction. In Robinson, P. & Ellis, N.(Eds.), Handbook of cognitive linguistics and second language

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ac-quisition. Routledge.

中島平三(2019).『「育てる」教育から「育つ」教育へ学校英文法から考える』 大修館書店

Niemeier, S.(2017). Task-based grammar teaching of English : Where cognitive

grammar and task-based language teaching meet. Narr Studienbücher.

島田勝正(2018).「ディスコースの中で気づきを促す文法指導」『人間文化研 究』第8号 pp. 53!71.

島田勝正(2019).「意識化指導の理論と実践」『人間文化研究』第10号 pp. 131!146.

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Consciousness-Raising Instruction

with the Support of Cognitive Grammar

SHIMADA Katsumasa

Grammar Consciousness-Raising(CR)instruction is one of the inductive, as opposed to deductive, ways of teaching grammar, which involves discov-ery learning through problem solving with the use of such cognitive strate-gies as identification and classification. CR tasks consist of data and opera-tions. Learners are provided with L2 data of some kind and are required to perform some operation on the data. In terms of CR tasks, the teacher plays the role of guide in the task procedures. During CR tasks, by giving instruc-tions and suggesinstruc-tions to his/her learners, the teacher helps them to analyze the data and discover the rules for themselves. However, there are some cases in which data-driven CR tasks are not effective enough to make leaners notice grammatical features in the data. This is because learners do not gard grammatical phenomena as meaningful, despite them being directly re-flected in linguistic forms. In the framework of Cognitive Grammar, language is treated as an integral facet of cognition and grammatical phenomena are regarded as meaningful.

Grammar can be seen as a tool in leaners’ minds which allows them to ar-ticulate their ideas exactly as they want them to be perceived. Language us-ers can actively choose among different grammatical forms in order to con-vey their intended meaning. In this article, taking verb complementizers, conditionals and voices as examples, I will show some CR task materials that have been developed based on the proximity/distance principle and the no-tions of trajectory / benchmark alignment in the framework of Cognitive Grammar.

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Keywords : Consciousness-Raising task, Cognitive Grammar, grammar in-struction

参照

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