Title
二流体モデル方程式の数学的適切性に及ぼす 付加慣性力項の
ガリレイ変換不変性の影響
Author(s)
江頭 竜
Citation
福岡工業大学エレクトロニクス研究所所報 第34巻 P1-P7
Issue Date
2017-10
URI
http://hdl.handle.net/11478/771
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion publisher
福岡工業大学 機関リポジトリ
FITREPO
二流体モデル方程式の数学的適切性に及ぼす
付加慣性力項のガリレイ変換不変性の影響
江頭 竜(工学部知能機械工学科)
Effect of the Galilean Transformation Invariance of Added Inertia Force Term
on Mathematical Well-Posedness of Two Fluid Model Equation
Ryu EGASHIRA (Department of Intelligent Mechanical Engineering, Faculty of Engineering)
Abstract
Effect of the Galilean transformation invariance of added inertia force term on mathematical well-posedness of two fluid model equation is investigated on the basis of eigenvalue analysis. Ill-posedness of the conventional two fluid model equation is known well since Lyczkowski et al. pointed it out in 1978. However, the reason for the ill-posedness has not yet been clarified. Eames et al. recently derived a formula of added inertia force term being invariant under the Galilean transformation, while Lyczkowski et al. studied the mathematical well-posedness using a not-invariant formula. The difference of mathematical well-posedness due to the above two formulas is demonstrated for the actual conditions.
Keywords:Two Fluid Model Equation, Mathematical Well-Posedness, Added Inertia Force, Eigenvalue Analysis
1. 緒言 マイクロバブル水のように莫大な数の微細な気泡を含む 液体の流れは,平均化モデル方程式を用いることが有効で ある.ここで云う平均化とは,気泡を含む液体の中にある 適切な大きさの領域を考え,この領域内で流体力学の基礎 方程式を平均することを意味している.平均化モデルの中 でこれまで最も実績のあるモデルは,気液各相で平均化す る「二流体モデル」である.しかしながら,1978 年に Lyczkowski らが二流体モデル方程式の数学的不適切性を指 摘して以来(1),今日まで,この不適切性の問題は未だ解決さ れていない.モデル方程式が数学的に不適切であると,例 えばその方程式を差分法で解いて数値解析を行う場合,き ざみ幅を小さくすると安定した解を得ることができない. すなわち,数学的に不適切な二流体モデル方程式をそのま ま数値的に解こうとしても,高周波成分が瞬時に増幅して 計算が破綻することになる.それにもかかわらず,二流体 モデル方程式は原子炉安全解析等で広く用いられており, それらを用いた数値解析により,安定で物理的に矛盾のな い結果が実際にこれまで数多く得られてきた.このように 相反する事実,すなわち,数学的に不適切であるにもかか わらず数値解が得られているという事実は,数値計算を行 うために支配方程式を差分化する際,数値拡散等の効果に より不安定性が抑えられてきたものと解釈されている(2). さて,二流体モデル方程式には一般に付加慣性力の項が 含まれている.本来,付加慣性力の式に限らず,物理法則 を表す式はガリレイ変換に対して不変でなければならない が,2004 年に Eames らがガリレイ変換に対して不変な付 加慣性力の式を導出(3)するまで,ガリレイ変換に対して不変 で は な い 付 加 慣 性 力 の 式 が 用 い ら れ て き た . も ち ろ ん Lyczkowski らが 1978 年に調べた二流体モデル方程式(1)に おける付加慣性力の式もガリレイ変換に対して不変ではな かった.著者はこれまでに,気泡の界面平均圧力を導入し た新しい二流体モデル方程式を導出し(4),Eames らが導出 した付加慣性力の式を用いて数学的適切性を調べ,調べた 限りの条件では数学的に適切であることがわかった(5).しか しながら,著者の導出した二流体モデル方程式では新たに 界面平均圧力が考慮されているだけでなく,通常無視され ることの多い液体の圧縮性も考慮され,気液の流速も異な るものとされているため,従来の二流体モデル方程式とは いくつかの点で異なっている.したがって,二流体モデル 方程式の数学的適切性に及ぼす界面圧力の効果,液体の圧 縮性の効果,付加慣性力のガリレイ変換における不変性の 効果など,それぞれ単独の効果は未解明である. そこで本研究の目的は,Lyczkowski らが調べた二流体モ デル方程式におけるガリレイ変換に対して不変ではない付 加慣性力の式をガリレイ変換に対して不変な付加慣性力の 式に置き換えて,その数学的適切性を調べることにより付 加慣性力の式のガリレイ変換不変性が二流体モデル方程式 の数学的適切性に及ぼす影響を明らかにすることである.
江頭 竜 2. 支配方程式と無次元化および線形化 2.1 支配方程式 □本研究では,Lyczkowski ら(1)が対象とした二流体モデル 方程式を用いる.以下にその方程式を示す. ・液相に関する質量保存の式 [(1 ) L] [(1 ) LuL] 0 t x (1) ・気相に関する質量保存の式 ( G) ( G Gu ) 0 t x (2) ・液相に関する運動量保存の式 2 [(1 ) ] [(1 ) LuL] [(1 ) LuL] p FAI t x x (3) ・気相に関する運動量保存の式 2 ( ) ( G Gu ) ( G Gu ) p FAI t x x (4) ・液相に関するエネルギー保存の式 2 1 L L L L D D p Dt c Dt (5) ・気相に関するエネルギー保存の式 2 1 G G G G D D p Dt c Dt (6) ここで,t は時間, x は空間座標, はボイド率(気相体積 率),は密度, u は流速, p は圧力, c は音速であり,下 添え字の G , L はそれぞれ気相,液相を表す.また, L L D u Dt t x , G G D u Dt t x である.F は気泡に働く付加慣性力であるが,緒言でも述AI べたように,Lyczkowski ら(1)はガリレイ変換に対して不変 ではない以下の式を用いた. 0 0 0 0 1 2 1 2 1 G G L L AI L D u D u F Dt Dt (7) ここで,下添え字 0 は基準状態を表す.本研究では,ガリ レイ変換に対して不変な付加慣性力の式としてEames ら(3) が液相の圧縮性も考慮して導出した以下の式を用いる. 1 2 ( ) G G L L G AI L L G L D u D u D F u u Dt Dt Dt 3 ( ) G L G L D u u Dt (8) ここで,1,2,3は定数で,付加質量係数に対応する. 2.2 無次元化 □代表長さを L ,代表速度を U として,以下のような無次 元変数を導入する.無次元量には「」を付すことにする. U t t L ,x x L , L L u u U , G G u u U , 0 L L L , 0 G G L , 2 0 L p p U , (9) L L c c U , G G c c U ここで,L0は基準状態における液相の密度である.式(9) で定義した無次元量を用いて,式(1)~(8)を無次元化すると, 結局,有次元変数の式に無次元量を表す「」を付けた式に なる.ただしL0 である.煩雑さを避けるため,以降,1 無次元量を表す「」を省略し,断らない限り変数はすべて 無次元変数とする. 2.3 線形化 非線形方程式に対する数学的適切性の評価法は今のとこ ろ確立されていないため,線形の一次元二流体モデル方程 式を導出し,線形方程式に対して数学的適切性の評価を行 うことにする. 本研究では,膨張・収縮していない気泡が液体と相対的 に滑っている定常一様な流れを基準状態とし,このような 一様流からの各物理量の微小な変動を考える.基準状態の 変数には下添え字 0 を付け,基準状態の一様流の気相流速 をuG0,液相流速をuL0と表す.また,一次の変動量を表す 変数には「' 」を付し,さらに( 1)を乗じる.以下 に,各変数の一次までの摂動展開を示す. 0(1 ) ,uLuL0uL,uGuG0uG, 1 L L ,GG0(1G),pp0(1p), (10) 0 L L L c c c,cGcG0cG ここで,G0,cG0,cL0はそれぞれ基準状態における気相 の密度,気相の音速,液相の音速である.式(10)を無次元化 された支配方程式に代入し, 2 ( ) O 以下の項を省略すると, 線形化された支配方程式が得られる.まず,付加慣性力の 式(7)と式(8)を線形化すると,それぞれ以下のようになる. 0 0 G G L L AI m D u D u F A Dt Dt , (11) 0 0 0 1 0 2 0( 0 0) G G L L G AI G L D u D u D F u u Dt Dt Dt , 0 3 0( 0 0) G L G L D u u Dt (12) ここで, 0 0 0 1 2 1 2 1 m A , (13) 0 0 L L D u Dt t x , 0 0 G G D u Dt t x と お い た . 式(11) と 式 (12) を 比 較 す る と , 式 (12) で 1 Am 0 ,23 とおくと式(11)になる.したがって0 以降では,線形化された付加慣性力の式として式(12)を用い ることとし,必要に応じて1Am 0,23 とおくこ0 とでLyczkowski らが用いた付加慣性力の式(1)に帰着させる ことにする.式(1)~(6)を線形化した式はそれぞれ以下のと おりである. ・液相に関する質量保存の式 0 (1 0) 0 0 L L u t t x 0 0 0 (1 ) L (1 ) L 0 L u u x x (14) ・気相に関する質量保存の式 0 0 0 0 0 0 0 G G t G t GuG x 0 0 0 0 0 0 G G G G G u u x x (15)
・液相に関する質量保存の式 0[uL0 2(uG0 uL0)] t 0 0 3 0 0 0 [(1 ) ( )] L L G L u u u t 1 0 (1 0 1 0) G L u u t t 2 0[uL0 2(uG0 uL0)uG0 p0] x 2 0 0 3 0 0 0 0 [(1 ) ( ) ] L L G L G u u u u x 1 0 0 [2(1 0) 1 0] 0 G L G L u u u u x x 0 0 (1 )p p 0 x (16) ・気相に関する質量保存の式 0[ 0 0 2( 0 0)] 0 0 0 G GuG uG uL t GuG t 0( 0 1) 1 0 G L G u u t t 2 0[ G0uG0 2(uG0 uL0)uG0 p0] x 2 0 0 0 3 0( 0 0) 0] G L GuG uG uL uG x x 0 0(2 0 1) 1 0 0 G L G G L u u u u x x 0 0 0 p p x (17) ・液相に関するエネルギー保存の式 0 0 0 0 2 2 0 0 0 L L L L L L p p p p u u t c t x c x (18) ・気相に関するエネルギー保存の式 0 0 0 2 0 0 2 0 0 0 0 G G G G G G G G p p p p u u t c t x c x (19) 3. 固有値解析 3.1 係数行列 □式(14)~(19)を行列形式でまとめると 0 t x U U A B (20) と表される.ここで,変数ベクトル [ , , , , , ]T G L L G u u p U とし, A と B は定数からなる[6×6]の正方行列で,下に示 すとおりである. 3.2 固有方程式 式(20)の固有方程式は,行列式A 0の場合,AB 0 で求められる.したがってまず, A0を確認しておく. 係数行列 A より, 2 2 0 0 0 0 0 [(1 ) G G L ] C c c A 0 0 1 0 1 0 [G(1 ) (1 )] (21) であり,00 ,気泡が球形の場合1 10.5であることか ら,常にA0が満足されていることがわかる.ここで,C は定数である.Lyczkowski ら(1)が用いた付加慣性力の式で は1Am 0とおけばよかったから,この場合は式(13)より 1 0.5(1 2 0) (1 0) 0 であり,やはり A0が満足さ れている.以上より,式(20)の固有方程式はAB0で 以下のように求められる. 2 2 3 2 1( L0) ( G0) 2( G0) 3( L0) ( G0) A u u A u A u u 2 2 4( G0) 5( L0) 6( G0) 7 0 A u A u A u A (22) ここで, 2 2 1 [(1 0 1 0) G0 1(1 0)][(1 0) G0 G0 0 L0] A c c 2 2 2 G0 0(1 0)( 2 L0 3 G0 G0)( G0 L0) A c c u u 2 3 G0 G0(1 0)[ 2(1 0) 3 0]( G0 L0) A c u u 2 2 4 G0 L0(1 0)[{(1 0) G0 1}G0) 0 0] A c c p 2 2 2 5 G0 G0[ 0(1 0 1) L0 (1 0) 0] A c c p 2 2 6 G0 G0 L0 2(1 0)( G0 L0) A c c u u 2 2 7 G0 G0 L0(1 0) 0 A c c p である.式(22)はの4 次式となっており,式(22)の 4 つの 固有値がすべて実数であれば線形化された二流体モデル 方程式(20)は数学的に適切であるといえる(6). 係数A ~1 A のうち相対速度7 uG0uL0を含むA ,2 A ,3 A6 に,Eames ら(3)の付加慣性力の式(8)の係数 2 と3が含ま れており,逆に2と3は相対速度uG0uL0を含んでいる係 数A ,2 A ,3 A にしか現れない.このことは,相対速度6 0 0 G L u u が0 のときには Eames ら(3)の付加慣性力の式(8)の 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 1 0 0 1 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 1 1 0 3 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 [ ( )] (1 ) 0 (1 ) ( ) 0 [ ( )] ( ) 0 ( ) 0 0 0 1 0 0 0 0 0 G G L G L L G L G G G L G G L G G L G G u u u u u u u u u u u u p c p c A 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 0 0 2 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 2 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 3 0 0 1 0 (1 ) 0 0 0 0 [ ( ) ] [2(1 ) ] (1 ) [(1 ) ( ) ] 0 [ ( ) ] (2 ) ( L L G G G G G L G L G L L L G L G G G G L G G G L u u u u u u u u p u u p u u u u u u u u p u u p u B 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 0 ) 0 0 0 0 0 0 0 0 G L G G G L L L G G G G u u u p u u c p u u c
江頭 竜
表 1 計算条件
Table 1. Calculation condition physical value (a) atmospheric pressure,
water-air system (b) high pressure, water-vapor system pressure p [Pa] 0 6 0.1013 10 6 13.79 10 liquid density L0[kg/m3] 998.2 640.7 gas density G0[kg/m3] 1.206 64.07
sound velocity of liquid cL0[m/s] 1478 1067
sound velocity gas cG0[m/s] 343.6 304.8
第2 項と第 3 項は固有方程式に影響を及ぼさないことを意 味している.また,Lyczkowski ら(1)が用いた付加慣性力の 式の場合には1Am 0,23 とおけばよかったか0 ら,このときは,相対速度uG0uL0が0 でなくともA ,2 A ,3 6 A はいずれも 0 となる. 3.3 気相と液相の流速が等しい場合の固有方程式 本節では特別な場合として,一様流の気相の流速uG0と周 囲液体の流速uL0が等しい場合について考える.この仮定は 現在でも簡易的な二流体モデルでよく用いられる仮定であ る.一様流速をuG0uL0u0とするとA2A3A6 である0 から式(22)は以下のようになる. 4 2 1( 0) ( 4 5)( 0) 7 0 A u A A u A (23) このとき 4 つの固有値は以下のように陽的に求めることが できる. 2 4 5 4 5 1 7 0 1 ( ) ( ) 4 2 A A A A A A u A (24) ここで,A ,1 0 A 4 0,A 5 0,A であることを考え7 0 ると,二重根号内が正,すなわち 2 4 5 1 7 (A A) 4A A であれば 式(24)の 4 つの固有値はすべて実数となり,数学的に適切と なる.いま,判別式 D を 2 4 5 1 7 ( ) 4 D A A A A で定義すると, 2 2 2 4 4 0[(1 0) 0 0(1 0) 1] 0 0 G G G L D c c 2 2 2 2 2 2 0(1 0) 0[ 0 0 (1 0) 0] G p cL cG 2 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2G (1 )p c cG L[(1 ) GcG 2 0 1 0 0 1 0 0 0 {(1 2 ) G (1 2 ) (1 )} 2 2 0 0 0 0 1 0 0 {(1 ) G ((1 )(2 ) (1 2 )) G 2 1 0 0 0 2 (1 2 )} cL ] (25) である.式(24)より,一様流速u は固有値0 の大きさには 影響を及ぼすものの,式(24)の第 2 項にu が含まれないこ0 とから,一様流速u は数学的適切性には影響を及ぼさない0 ことがわかる. 式(25)から直ちに D の符号を知ることができないため, ここでは実際の代表的な条件を数値で与えて D の符号を調 べてみる.表1 に(a)大気圧・水-空気系での条件と(b)高圧・ 水-水蒸気系での条件を示す.無次元化に用いる代表速度と しては液相音速cL0を用いる.なお,(b)の条件は Lyczkowski ら(1)が用いた条件である. 気液の一様流速が等しい場合のボイド率0に対する判別 式 D の値を図 1 に示す.図 1 ではボイド率0が00 の1 範囲で示してあるが,マイクロ・ナノバブルを含む微細気 泡群を対象とする場合,ボイド率はほとんどの場合0.3 以下 であることを注意しておく.図 1 より,気液の一様流速が 等しい場合には,付加慣性力の式として Lyczkowski ら(1) が用いた式(7)の方が図 1(a)と(b)の両方ですべてのボイド率 0 に対して判別式 D が正,すなわち数学的に適切になって いるのに対し,Eamse ら(3)が導出した付加慣性力の式の場
(a) atmospheric pressure, water-air system
(b) high pressure, water-vapor system
図1 気液流速が等しい場合の判別式の値
Fig. 1. Value of determination at the same velocity of liquid phase and gas phase.
合には図1(a)の大気圧・水-空気系ではすべての0に対して D が正であるが図(b)の高圧・水-水蒸気系では,0が約0.1 以上で負になる領域,すなわち数学的に不適切な領域が存 在することがわかる. 3.4 固有多項式の概形 式(22)の左辺を ( )f とおき,表1 の 2 つの条件(a)と(b) に対してyf( ) の曲線の概形を描けば,軸との交点を 調べることによって固有値が実数か否かを知ることができ る.ボイド率0を0.00001,0.01,0.2 の 3 種類に固定し, 表1 の(a)大気圧・水-空気系の条件に対するy f( ) のグラ フを図2 に,表 1 の(b)高圧・水-水蒸気系の条件に対するグ ラフを図3 に示す.一様流速の組合せを 0 と 500m/s(無次 元流速では(a)の場合 0.34,(b)の場合 0.47)の組合せで 4 通りとした.図2 と図 3 の左の列は付加慣性力の式として Eames ら(3)が 導 出 し た 式(8) を 用 い た 場 合 , 右 の 列 は Lyczkowski ら(1)が用いた式(7)を用いた場合である.なお付 加慣性力の式で用いられる係数は1230.5とした. 図2 と図 3 より,y f( ) の概形の特徴として,すべて の曲線がW 形をしていることがわかる.すなわち,すべて の曲線が1 つの極大値と 2 つの極小値をもっている.また, 図2 と図 3 の気液の一様流速が等しいuG0uL0 (赤線)0 と図2 のuG0uL00.34(青線),図3 のuG0uL00.47(青 線)の曲線を比較すると,式(23)からもわかるとおり,気液 の流速が等しい場合にはuG0uL0 の曲線をそのままの0 形で軸方向にu だけ平行移動した曲線になっている.こ0 のことは,先述したように,気液の流速が等しい場合の数 学的適切性には一様流速u は影響を及ぼさないことを表し0 ている.図2 と図 3 の計算条件で明らかに 4 つの実数解を もたない条件は,図3(b)のボイド率00.01でLyczkowski ら(1)が用いた付加慣性力の式の場合で気液の一様流速が異 なるとき(2 つの異なる実数と 2 つの異なる虚数)と,図 3(c)のボイド率00.2で Eames ら(3)が導出した付加慣性 力の式を用いた場合で気液の流速が等しいとき(異なる 4 つの虚数)である. 4. 結言 □ 本 報 で は , 数 学 的 に 不 適 切 で あ る と さ れ て い る Lyczkowski ら(1)が調べた二流体モデル方程式において,ガ リレイ変換に対して不変ではない付加慣性力の式をガリレ イ変換に対して不変なそれに置き換えた場合の二流体モデ ル方程式の数学的適切性を調べ,以下のような結果を得た. (1)Eames ら(3)が 導 出 し た 付 加 慣 性 力 の 式 に お い て , 1 (1 2 0) (2 2 0) ,23 とおけば,Lyczkowski0 ら(1)が用いた付加慣性力の式に帰着する. (2)いずれの付加慣性力の式を用いても固有方程式は固有値 の四次方程式となる. (3)気液の流速が等しい場合の数学的適切性について以下の ことがわかった. ・この場合の4 つの固有値は陽的に求められる. ・Lyczkowski ら(1)が用いた付加慣性力の式の場合は大気圧 条件下の水-空気系でも,高圧条件下の水-水蒸気系でも, すべての固有値が実数となり数学的に適切である.一方, Eames ら(3)が導出した付加慣性力の式を用いた場合には, 水-空気系では大気圧条件下でも高圧条件下でも,あらゆ るボイド率に対してすべての固有値が実数であるが,水-水蒸気系では,大気圧条件下ではあらゆるボイド率に対し て実数であるものの,高圧条件下ではボイド率が0.1 以上 で固有値が実数にならない領域があり,数学的に不適切な ボイド率の範囲がある. ・一様流速は数学的適切性に影響を及ぼさない. 謝辞 □本研究の一部は科研費15K05813 の助成を受けたもので あり,また一部は福岡工業大学の平成28 年度若手・新任教 員スタートアップ支援の助成を受けたものである.ここに 深く謝意を表す. (平成29年7月20日受付) 文 献
(1) Lyczkowski, R. W., Gidaspow, D., Solbrig, C.W., Hughes, E.D. : “Characteristics and Stability Analyses of Transient One-dimensional Two-phase flow equations and their finite difference approximations”, Nuclear Science Engineering, Vol.66, pp.378-396 (1978)
(2) 大川富雄,片岡勲:「気泡流条件における二流体モデルの数学的適切 性」,日本機械学会論文集B 編,Vol.66,No.646,pp.1281-1287 (2000) (3) Eames, I., Hunt, J.C.R. “Forces on Bodies Moving Unsteadily in Rapidly Compressed Flows”, Journal of Fluid Mechanics, Vol.505, pp.349-364 (2004)
(4) Yano, T., Egashira, R., Fujikawa, S. : “Linear Analysis of dispersive Waves in Bubbly Flows Based on Averaged Equation”, Journal of the Physical Society of Japan, Vol.75, No.10, Paper No.104401 (8 pages) (2006)
(5) Egashira, R., Kanagawa, T. : “Mathematical Well-posedness of Two-fluid Model Equation Taking Interfacial Pressure into Account”, Proceedings of International Conference on Multiphase Flow 2013, USB-proc. ICMF2013, pp.1-4 (2013) (6) 山口昌哉,野木達夫:「数値解析の基礎 偏微分方程式の初期値問
江頭 竜 Eames et al. Eames et al. Eames et al. Lyczkowski et al. Lyczkowski et al. Lyczkowski et al. 図2. 大気圧条件における水-空気系の固有多項式
Fig.2. Polynomials for water-air system in atmospheric pressure (b) void fraction 00.01
(a) void fraction 00.00001
(c) void fraction 00.2 0 0 G u , uL0 0 0 0.34 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.34 0 0.34 G u , uL00.34 0 0 G u , uL0 0 0 0.34 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.34 0 0.34 G u , uL00.34 0 0 G u , uL0 0 0 0.34 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.34 0 0.34 G u , uL00.34 0 0 G u , uL0 0 0 0.34 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.34 0 0.34 G u , uL00.34 0 0 G u , uL0 0 0 0.34 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.34 0 0.34 G u , uL00.34 0 0 G u , uL0 0 0 0.34 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.34 0 0.34 G u , uL00.34
Eames et al. Lyczkowski et al.
Eames et al. Lyczkowski et al.
Lyczkowski et al. Eames et al.
(b) void fraction 00.01 (a) void fraction 00.00001
(c) void fraction 00.2
図3. 高圧条件における水-水蒸気系の固有多項式
Fig.3. Polynomials for water-vapor system in high pressure
0 0 G u , uL0 0 0 0.47 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.47 0 0.47 G u , uL00.47 0 0 G u , uL0 0 0 0.47 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.47 0 0.47 G u , uL00.47 0 0 G u , uL0 0 0 0.47 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.47 0 0.47 G u , uL00.47 0 0 G u , uL0 0 0 0.47 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.47 0 0.47 G u , uL00.47 0 0 G u , uL0 0 0 0.47 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.47 0 0.47 G u , uL00.47 0 0 G u , uL0 0 0 0.47 G u , uL0 0 0 0 G u , uL00.47 0 0.47 G u , uL00.47