「ときめき」 と脳血流の関連
アイカラーの影響
浅
井
雛
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日本メナード化粧品株式会社 総合研究所広
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日本メナード化粧品株式会社 総合研究所長谷川
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※ 日本福祉大学 健康科学部久
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子
日本福祉大学 健康科学部Relationship between Tokimeki and brain blood flow: Effects of eye shadow
Hinayo Asai
Research Laboratories, Nippon Menard Cosmetic Co., Ltd.
Osamu Hirose
Research Laboratories, Nippon Menard Cosmetic Co., Ltd.
Seiji Hasegawa
Research Laboratories, Nippon Menard Cosmetic Co., Ltd.
Satoru Nakata
Research Laboratories, Nippon Menard Cosmetic Co., Ltd.
Kana Sugiura
Faculty of Health Sciences, Nihon Fukushi University
Junko Kuze
Faculty of Health Sciences, Nihon Fukushi University
Keywords: ときめき, 化粧品, アイカラー, 脳血流
研究ノート
受付:2019. 9. 9受理:2019.12. 4. はじめに
化粧は外見を美しく変化させるだけでなく, 内面にも 変化をもたらしており, 化粧の心理効果については様々 な報告がある. 宇山らは, メイクを行った時の気持ちの 変化として, 積極性の上昇やリラクゼーション効果, 気 分の高揚, 安心感の増加などを確認している1). また, 森地らは, メイクによる不安などのネガティブ感情の減 少や幸福感の増加などの心理変化に加えて, ストレスホ ルモンとして知られているコルチゾールの減少や, SOD, カタラーゼなどの抗酸化酵素活性の増加といっ た生体指標の変化も確認している2). そのため, メイク は生体にも影響を及ぼしていると考えられる. メイクによる心理変化の 1 つとして 「ときめき」 があ る. 「ときめき」 は気分の高揚などのポジティブな感情 変化であるが, 「ときめき」 の感情状態はその対象によっ て異なる面がある. 筆者らは 「ときめき」 に関する研究 を進め, 女性の 「ときめき」 尺度の作成や, 異性と化粧 品に対する 「ときめき」 の感情状態の違いを明らかにし た3). つまり, 「ときめき」 による感情状態や生体の変化 に関する研究を進める上では, 「ときめき」 の対象を明 確にする必要があると考えられる. 化粧の中でもアイカラーやリップなどのポイントメイ クは, 見た目の印象を大きく左右するアイテムである. 実際に, 多くの女性が目の周りのメイクを重視している ことや, アイカラーは色の種類が豊富なことが知られて いる. アイカラーの色の違いによって見た目の印象が変 化するため, アイカラーの色の違いは使用者の心理状態 にも影響を与えることが考えられる. そこで, 本研究では, 普段使用しているアイカラーと, 使用経験が無い色のアイカラーを用いて, アイカラー使 用により印象が変わった自分の顔を見たときの 「ときめ き」 などの感情状態について調査した. さらに, アイカ ラー使用による生体の変化を検証するため, 脳の活性化 の 指 標 で あ る 脳 血 流 に お け る 酸 素 化 ヘ モ グ ロ ビ ン (Oxy-Hb) の計測も行った.. 方法
. 調査対象者 日常的にアイカラーを使用している女子大学生 12 名 とした. . 事前調査 色の種類が偏らないよう選定した 8 種類の市販のアイ カラーの中から, 使用経験が無い色のアイカラーを調査 対象者に選択させた. 使用経験が無い色が 2 種類以上あ る場合は, その中から使用してみたい心惹かれるような 色を選択させた. 尚, 使用経験が無い色に対する感情状 態については, 使用した際の自分の顔の印象がさまざま である可能性が考えられたため, 2 種類の色を選択させ た. . 本調査 実験スケジュールを図 1 に示した. 調査対象者にはア イカラー以外の化粧は普段通り行った状態で入室させ, 普段使用している色と, 事前に選択した使用経験が無い 色 2 種類の合計 3 種類について, 使用前後における下記 項目の変化量を比較した. さらに, アイカラー使用によ り見た目の印象が変わったことによる心理, 生体変化を 捉えるため, 鏡で自分の顔を確認する時間と, 見られて いる意識付けのため写真撮影の時間を設けた. .. 心理指標「ときめき」 の度合いについては Visual Analog Scale (VAS) にて評価し, ときめき度として算出した. また, アイカラーそのものの色みと, 顔に塗布したときの色み について, 色の嗜好性と似合い度を 6 段階にて回答させ, 色の嗜好性, 似合い度が高いほどスコアが高くなるよう 集計した. 尚, アンケート用紙を図 2 に示した. また, アイカラー使用前後に女性の 「ときめき」 尺 度3)を用いて, その時の気分を 「全く当てはまらない」 から 「非常によく当てはまる」 までの 6 件法にて記入さ 図 実験手順
せた. この尺度は 20 項目で, 「不満」, 「平穏」, 「動揺」, 「幸福」, 「強気」 の 5 因子からなる質問紙である. .. 生理指標 ウェアラブル光トポグラフィ WOT-100 (16 チャンネ ル, 日立ハイテクノロジーズ) を用いて, 前額部の脳血 流の酸素化ヘモグロビン (Oxy-Hb) 変化量を計測した. 尚, 本測定対象となる前頭前野は認知や情動にかかわる 部位で, Oxy-Hb の変化は脳の活動状態の指標となる. .. 分析方法 アンケートについては, アイカラー使用前後における ときめき度変化量を目的変数, 色の嗜好性, 似合い度に 関するアンケート 4 項目のスコアを説明変数として偏最 小二乗回帰 (PLS:Partial Least Squares) 分析を行 い, ときめき度に対する各アンケート項目の寄与率を算 出した. 女性の 「ときめき」 尺度については, 各因子に含まれ る感情語のスコアを加算したものを心理スコアとして算 出した. 脳血流計測データについては, 使用前の写真撮影後 10 秒間の平均値と使用後の写真撮影後 10 秒間の平均値 の差を変化量として算出した. . 倫理的配慮 研究の目的及び個人情報の取り扱い(個人が特定され ないよう無記名の調査票を用いること, 得られたデータ は研究以外の目的に使用しないこと) に関する説明をし, 同意が得られた者に試験を実施した. 本研究は, 本学倫 理審査委会の承認を得て実施した (18-09-02).
. 結果
使用経験が無い色については, 2 種類の平均値を検定 に用いて, 使用前後の測定値と, 普段使用している色と 図 アンケート使用経験が無い色における使用前後の測定値の差につい て, 対応ある 2 群の t 検定を行った. . 心理状態の変化 ときめき度については, 普段の色と使用経験が無い色 のどちらにおいても使用前後に増加した. さらに, 普段 の色を使用した時よりも使用経験が無い色を使用した時 の方が, ときめき度がより増加した (図 3). PLS 分析 によるときめき度に対するアンケートのスコアの寄与率 は色の嗜好性が正の値を示し, 顔に塗布した際の色の嗜 好性が最も寄与率が高かった. 似合い度については負の 値を示した (図 4). 尚, PLS 分析については, 潜在変 数 2, 重相関係数 0.414 であった. また, 使用前後における女性の 「ときめき」 尺度の各 因子についてスコアを比較すると, 普段の色使用時では, 「動揺」 スコアが減少した. 使用経験が無い色では 「平 穏」 スコアが減少し, 「幸福」 スコアが増加した (図 5). しかし, 群間差は認められなかった. . 脳血流の変化 毛髪のノイズが大きい左右両サイドのチャンネルは除 いた 8 チャンネルを解析した. また, 計測中ノイズが多 かった 1 名のデータは解析から除外した. 普段の色と使用経験が無い色の変化を比較したところ, CH13 および 15 において, 普段の色使用における脳血 流の減少に対して, 使用経験が無い色では脳血流の減少 が有意に小さかった (図 6). 図 ときめき度変化量の比較 図 ときめき度に対する各アンケート項目の寄与率 図 使用前後の心理スコアの変化
. 考察
ときめき度については, 普段の色を使用した時より使 用経験が無い色を使用したときのほうが 「ときめき」 を 感じると考えられた. また, アンケートの PLS 分析よ り, 「ときめき」 には似合い度よりも色の嗜好性が関与 することが考えられ, 特に, アイカラーを顔に塗布した 時の色の嗜好性が強く関与することが示唆された. この ことについては, 心理スコアの変化において, 普段の色 使用時では動揺感が減少するといった落ち着く方向に変 化するのに対して, 使用経験が無い色では平穏感が減少 し, 幸福感が増加することから, 普段の自分の顔と違っ た印象により若干のドキドキ感が生じることが幸福感を もたらす 「ときめき」 の要因となる可能性が考えられた. 脳血流については, 左前額部において変化が確認され た. 左前頭前野の脳血流の低下については, うつ病患者 や疲労感が高いと生じることが報告されている4). また, 高齢者の化粧に関する報告では, 化粧をすることでスト レスホルモンであるコルチゾールが減少し, 左前額部の 脳血流が増加することから, 左側の脳血流の増加は快感 情を示すとされている5). そのため, 本実験においても, 使用経験が無い色を使用することで, 「ときめき」 が高 まったことによる脳への快刺激である可能性が示唆され た.. 結論
本研究では, 普段使用している色のアイカラーと使用 経験が無い色のアイカラーを使用した時の感情変化や脳 活動の変化を検証した. その結果, 普段の色よりも使用 経験が無い色を使用したほうが 「ときめき」 が高まり, 幸福感も増加した. さらに, アイカラーへの 「ときめき」 には色の嗜好性が強く関与していることや, 似合い度の 低さといった若干のドキドキ感が 「ときめき」 につなが ると考えられた. さらに, 普段の色と使用経験が無い色における脳活動 の変化も確認され, 使用経験が無い色の使用は脳に対し ても快刺激として認識される可能性が考えられた. 以上 より, 使用経験が無くても好きな色のアイカラーに挑戦 することは, 「ときめき」 といったポジティブな感情を もたらし, 脳に刺激を与える方法の 1 つであると考えら れた. 謝辞 本研究は日本メナード化粧品株式会社から日本福祉大 学健康科学部への 2018 年度受託研究により実施しまし た. 本研究にご協力いただいた被験者及び関係者の皆様 に感謝申し上げます. なお, 本研究の一部は, 日本健康心理学会第 32 回大 会 (久世淳子ほか), および 2018 年度日本福祉大学卒業 研究 (杉浦可奈) として発表されています. 引用文献 1 ) 宇山男・鈴木ゆかり・互恵子:メーキャップの心 理的有用性, 日本香粧品科学会誌, 14 (3), pp. 163-168 (1990) 2 ) 森地恵理子・広瀬統・中田悟・久世淳子:メイクアッ プの心理効果と生体防御機能に及ぼす影響. 日本福 図 脳血流変化量の比較祉大学情報社会科学論集, pp. 112-116 (2006) 3 ) 浅井雛代・山本彩子・広瀬統・長谷川靖司・中田悟・ 久世淳子:女性の 「ときめき」 尺度の作成. 日本福 祉大学情報社会科学論集, 日本福祉大学健康科学論 集, pp. 9-17 (2019) 4 ) 小山文彦・松浦直行・影山淳一・大月健郎:労働者 の抑うつ, 疲労, 睡眠障害と脳血流変化―99mTc-ECD SPECT を用いた検討―, 日本職業・災害医 学会会誌, 58, pp. 76-82 (2010) 5 ) 町田明子・白土真紀・高田定樹・八木透:脳波を用 いた高齢者に対する化粧療法の効果検証, 老年精神 医学雑誌, 23, pp. 978-986 (2012)