技術レポート
1
.はじめに 本研究の著者による先行研究として,参考文献 1)「コ ロナ放電を利用しない電気集塵装置-電極板の堆積状 態」があり,この先行研究の概要と課題を以下に述べる. この先行研究では,6枚の接地極板と 5枚の荷電極板 (いずれも SUS304製の平板,厚さ 0.4 mm)を,平行か つ互い違いにずらし,不平等電界を形成しやすいように 配列した 1段式の電気集塵装置(Electrostatic Precipitator, 以降 ESP と表記)を用いた.ESP の各極板には,コロ ナ放電用の突起を設けておらず,コロナ放電が発生しな いことを予め確認した直流高電圧 +8 kV を印加した.こ の ESP に,粉塵濃度 0.35 mg/m3のディーゼル排ガスを, 風速 9 m/s で通風し,18 h 後,極板を取り出し観察した.コロナ放電を利用しない電気集塵装置
-集塵率による考察-
片谷 篤史
*, 1,細野 洋
**,村田 光
**,飯塚 悠気
**,八幡 大志
**,水野 彰
*** (2016年3月14日受付;2016年5月25日受理)Electrostatic Precipitator without Using Corona Discharge
- Discussion based on Collection Efficiency -
Atsushi KATATANI
*, 1, Hiroshi HOSONO
**, Hikaru MURATA
**,
Yuki IIZUKA
**, Hiroshi YAHATA
**and Akira MIZUNO
***(Received March 14, 2016; Accepted May 25, 2016)
キーワード:静電気,電気集塵,再飛散,誘導荷電 *
パナソニック環境エンジニアリング株式会社
(〒486-8524 愛知県春日井市鷹来町字上仲田3905番 3) Panasonic Environmental Systems & Engineering Co., Ltd,
3905, Takaki-cho Kasugai-city, Aichi-pref., 486-8524, Japan
**
パナソニックエコシステムズ株式会社
(〒486-8522 愛知県春日井市鷹来町字下仲田 4017番) Panasonic Ecology Systems Co., Ltd, 4017, Takaki-cho
Kasugai-city, Aichi-pref., 486-8522, Japan *** 国立大学法人 豊橋技術科学大学
(〒441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘 1-1) Toyohashi University of Technology, 1-1, Hibarigaoka,
Tenpaku-ku, Toyohashi-city, Aich-pref., 441-8580, Japan 1 [email protected] その結果,極板に粉塵が付着・堆積していることを確認 した.また,いったん極板に付着した粉塵が再飛散する 際,誘導荷電作用により帯電し,電界中のクーロン力で 捕集されることを確認した.即ち,コロナ放電を利用し なくても,粉塵が捕集されることを確認した.しかし, この先行研究では,集塵率を測定しなかったので,集塵 率自体が不明であった.また,極板の風上端部と風下端 部に,粉塵が多く付着する傾向があったが,この点に関 する検討が必要であると考えた. そこで,今回の研究では,先行研究と同様の構造の ESP を用い,室内大気塵に関する集塵率を測定すること とした.また,2種類の板厚の極板を用い,端部条件の 変化が集塵率に及ぼす影響を確認することにした.
2
.実験装置および方法 図 1 に,ESP に用いる極板の形状を示す.全長 200 mm,幅 36 mm であり板厚は 0.4 mm と 0.8 mm である.(板 厚 0.8 mm については,板厚 0.4 mm の極板を 2枚重ねて 用いることとした.)先行研究と同様に,コロナ放電用 の突起を設けない形状である. 図 2 に,ESP の極板配置を示す.接地に繋がれている 7 枚の極板が接地極板(図 1 の形状)であり,直流高電 圧が印加される 6 枚の極板が荷電極板(これも図 1 の形 状)である.荷電極板の風上端を接地極板の風上端より も 30 mm 風下側にずらし,平行かつ互い違いに配置し て,不平等電界を形成しやすい構造とした.隣接する極 The authors have been studied the electrostatic precipitator (ESP), which can charge suspended particles instead of corona discharge, to collect particles with Coulomb's force in strong electric field. By the observation of the vestiges of attached particles on the electrode-plates in the previous first-study, it was confirmed that the particles were collected mainly by the gradient force and then re-entrained into the gas stream with acquired induction charge. In the parallel plate section set at the downstream, these charged particles were collected. The collection efficiency of this first study, however, was not measured. In order to clarify the performance of particle collection, we measured the size-dependent collection-efficiency in this second study.板の間隔は 10 mm である.(注記:隣接する極板につい て,板厚中心の仮想面間の距離で 10 mm.)全て板厚 0.4 mm の極板を用いる場合をケース 1 とし,また,全て板 厚 0.8 mm の極板を用いる場合をケース 2 とし,それぞ れのケースで集塵率を測定することとした. 印加する直流電圧は,最大 -8 kV であるが,この電圧 では放電電流は流れず,コロナ放電が発生しないことを, 予め確認している.(注記:印加電圧を変化させた時の 放電電流値は,-8 kV で 0 µA,-9.5 kV で 0.2 µA,-10 kV で 1 µA であった.-8 kV で放電電流は測定されなかった. 但し,トリチェルパルスの発生の有無については未確認 である.)印加電圧値を,-8 kV,-6 kV,-4 kV,-2 kV と 降下させ,最終 0 kV とし,5種類の電圧値で集塵率を測 定することにした. 図 3 は実験装置の系統を,表 1 は実験装置の仕様を示 す.室内大気塵を除去対象の粒子とした(注記 1参照). #1 と #2 は入口ダクトおよび接続ダクト,#3 は ESP 収 納ダクト,#4,#5,#6 は接続ダクト,#7 は出口ダクト, #8 は可変速ファンである.ダクトは全てアクリル製で ある. 各ダクト部 #1 から #8 を直列に接続し,これに室内大 気塵を含む空気を通風できるものを,本 ESP 実験の実 験装置とした.#9 は直流高圧電源で,ESP 収納ダクト に接続される.高電圧回路の電圧と電流を,#12電圧計 と #13電流計で確認した.#11風速計で,入口ダクトの 吸い込み位置の風速を計り,#3 ESP 収納ダクトの内部 風速が 2 m/s になるように,風速調節を行った.#10 パ ーティクルカウンターで空気中の粉塵の個数濃度を測定 した.ESP の入口と出口で切り替えて測定することによ り,(1)式で表される集塵率を求めた. 集塵率 = [ 1 -(出口個数 / 入口個数)]× 100% (1) 尚,このパーティクルカウンターは,粒径別に粉塵粒 子の個数濃度を測定できるもので,(1) 粒径 0.3 µm 以上 の全個数,(2) 0.3 から 0.5 µm の個数,(3) 0.5 から 1.0 µm の個数,(4) 1.0 から 2.0 µm の個数,(5) 2.0 から 5.0 µm の個数,そして(6) 5.0 µm 以上の個数を,同時に測 定することができる. 各ケースについて,各電圧で入口と出口の濃度測定を 5回行い,その平均値を用いて集塵率を測定した.この 図 1 実験で用いる極板
Fig.1 Electrode-plate for experiment.
図 2 極板の配置
Fig.2 Layout of electrode-plates.
図 3 実験装置の系統図
Fig.3 Schematic diagram of test equipment. 表 1 実験装置の仕様
Table 1 Specification of test equipment. Items Details Duct
(#1,2,4,5,6,7) W 121, H 140, L 200 mm (Inside) ESP duct (#3) Duct ; W 121, H 32, L 300 mm with slots for fixing electrode-plates( Inside ) Fan (#8) MU1238A-11B (Oriental Motor Co., Ltd.) Quantity ; 2 (tandem coupled)
With a variable frequency controller High voltage
power supply (#9)
HVα-10K10N/OLTS/100 (Maxelec Co.,Ltd.) Max. output ; DC -10 kV, 10 mA
Ripple 0.01% Particle
counter (#10)
KC-01E (RION), Light scattering method Range ; 0.3, 0.5, 1, 2, 5 over µm
Sampling volume for individual measurement ; sample-mode of 283 mL (per 34 s)
Wind velocity
Meter (#11)Climomaster MODEL6531 (Kanomax)Mode;1 s measuring & 10 times ave. Voltage meter
& Probe (#12)Digital multi meter type73303 (Yokogawa)Ratio;1/1000 (FLUKE), For high voltage Current meter
測定を 5度行い,集塵率の再現性を確認することにした. また,測定に先立ち,実験装置を,各ケースの電圧条件 で最低 30分間稼働させ,集塵率が安定したことを確認 した上で,測定を開始することとした. (注記 1:先行研究では,極板への色濃い付着が期待で きる「高濃度のディーゼル排ガスの粉塵」を観察の対象 とした.一方,今回は,粒径別の個数濃度を測ることが できるパーティクルカウンター用いるので,測定対象の 粉塵を「室内の大気塵」とした.)
3
.結果および考察 集塵率の全測定を,初冬の 16日間で行った.その期 間内の測定環境における温度は,12 から 19℃の範囲内 であり,湿度は,37 から 68% Rh の範囲内であった. 本研究における濃度は,全て気体 1 L 中の粒子個数で ある個数濃度で示される.期間中の室内大気塵の濃度に ついて,0.3 µm 以上の全個数濃度が最小の時と最大の時 の各粒径毎の濃度値を表 2 に示す.最大時と最小時で, 全個数濃度には数倍の開きがあった.しかし,各測定日 の各回の測定中の全個数濃度は,概ね安定していた. また,濃度が最大,最小いずれの場合でも,粒径 0.3 から 0.5 µm の粒子個数が,測定された全粒子個数の約 7割から 9割を占めた.また,粒径が大きくなるにつれて, 測定される粒子個数は減る傾向にあった.特に粒径 5.0 µm を超える粒子は,殆ど測定されなかったので,集塵 率の評価は,5.0 µm 以下の粒子で行った. 一方で,全個数濃度が安定していても,粒径 1.0 から 2.0 µm と,2.0 から 5.0 µm の個数濃度は比較的変動した. ケース 1 の各測定回における各粒径の個数濃度とその変 動幅を表 3 に示す.ケース 2 の個数濃度と変動幅は,表 3 の内容と同程度であったので記載を省く.3.1
粒径0.3
μm
以上の粒子についての集塵率 ESP の印加電圧を変えた時の,0.3 µm 以上の全粒子個 数についての集塵率を図 4 に示す.図 4(a)は,ケース 1 表 2 測定時の室内大気塵の最大および最小個数濃度 Table 2 The measured maximum and minimum concentration.(By counted particle number in room atmosphere) Size of
Particle [µm]
Counted number per 1 L (1×10-3 m3) Max. concentration
(ratio to all [%]) (ratio to all [%])Min. concentration 5.0 over 0 ( 0%) 3 ( 0.1%) 2.0 to 5.0 25 ( 0.1%) 50 ( 1.1%) 1.0 to 2.0 200 ( 0.7%) 317 ( 6.6%) 0.5 to 1.0 1,927 ( 6.3%) 1,087 ( 22.7%) 0.3 to 0.5 28,373 ( 92.9%) 3,325 ( 69.5%) All over 0.3 30,525 ( 100.0%) 4,782 ( 100.0%) 表 3 流入側の個数濃度の範囲(ケース 1:極板厚さ 0.4 mm)
Table 3 The range of counted particle number at inlet of ESP. (Case 1 of plate thickness : 0.4 mm) Size of
particle [µm]
Range of counted particle-number per 1 L (Range-ratio [%] to the center value of range)
1st measurement 2nd measurement 3rd measurement 4th measurement 5th measurement
2.0 to 5.0 7 – 38 (±68.9) 9 – 23 (±43.8) 3 – 19 (±72.7) 4 – 17 (±61.9) 5 – 18 (±56.5) 1.0 to 2.0 49 – 97 (±32.9) 58 – 119 (±34.5) 121 – 186 (±21.2) 60 – 91 (±20.5) 55 – 79 (±17.9) 0.5 to 1.0 423 – 572 (±15.0) 488 – 669 (±15.6) 1,446 – 1,921 (±14.1) 768 – 883 ( ±7.0) 622 – 759 ( ±9.9) 0.3 to 0.5 4,848 – 5,990 (±10.5)5,107 – 5,647 ( ±5.0) 19,806 – 23,373 ( ±8.3)11,081 – 12,487 ( ±6.0)10,434 – 11,521 ( ±5.0) All over 0.3 5,403 – 6,590 ( ±9.9)5,699 – 6,387 ( ±5.7)21,500 – 25,378 ( ±8.3)12,012 – 13,362 ( ±5.3)11,166 – 12,322 ( ±4.9) 図 4 集塵率特性(粒径 0.3 µm 以上全て)
Fig.4 Collection efficiency. (all diameters over 0.3 µm) (a)ケース 1:極板板厚 0.4 mm
(a)Case 1 :Plate thickness 0.4 mm.
(b)ケース 2:極板板厚 0.8 mm (b)Case 2 :Plate thickness 0.8 mm.
(板厚 0.4 mm の場合)であり,図 4(b)はケース 2(板厚 0.8 mm の場合)である.両ケースとも,5度の測定回の 測定値を示し,5度の測定の平均値を実線で示す.両ケ ースとも電圧の増加とともに集塵率は上昇しており,平 均値(実線)で比較すると,両ケースともほぼ同じ集塵 率特性と言える.また,電圧が増加して(即ち,電界強 度が強くなって),集塵率が上昇する原因として,参考 文献 1)に述べられているように,「不平等電界中の極 板端部近傍に付着した粉塵が,再飛散する時,誘導荷電 作用で,(再飛散する)粉塵が帯電し,この帯電粉塵が, 電界中でクーロン力により捕集される」ことが挙げられ るが,また一方で,大気中の浮遊粉塵が,もともと帯電 していることに触れた報告2-7)もあるので,この帯電粉 塵が,強電界で捕集されたことも考えられる.また,両 要因により捕集された可能性も考えられる. また,両ケースとも電圧 0 kV で,集塵率がほぼ同じ 2 %程度の値となっている.電界が存在しないのに集塵率 が現れた原因として,1)実験ダクト系がアクリル製であ り,通風による摩擦で帯電したダクトの内壁に粉塵が接 触して捕集されたこと,2)極板の風上端部に粉塵が接触 して捕集されたこと,が考えられる.ただし,後者に関 しては,ケース 1 よりもケース 2 の板厚が 2倍厚いが,両 ケースの集塵率がほぼ同じである事実からすると,極板 端部が厚くなったからといって,粉塵の衝突確率が増し 集塵率が増加するようなことはなかったものと思われる. 両ケースとも,各電圧値における各測定のバラツキが 最大となったのは,電圧 -8 kV の時であったが,各測定 の再現性は,概ねあると言える.
3.2
粒径0.3
から0.5
μm
の粒子についての集塵率 粒径 0.3 から 0.5 µm の粒子についての,ケース 1 の集 塵率を図 5 に示す.この粒径での粒子数は全粒子数の約 7割以上を占めるので,図 4(0.3 µm 以上の粒子につい ての集塵率)とほぼ似た特性を示している.ケース 2 の 集塵率特性は,ケース 1 と同様だったので記載を省く.3.3
粒径0.5
から1.0
μm
の粒子についての集塵率 ケース 1 における粒径 0.5 から 1.0 µm の粒子について の集塵率を図 6 に示す.電圧の増加とともに,全体とし ては集塵率が上昇する傾向にある.粒径 0.3 から 0.5 µm の場合と比べると,同電圧条件下での集塵率のバラツキ が大きくなっている.(ケース 2 においても同様の傾向 を示した.)バラツキが大きくなるということは,各測 定回の再現性が弱まることを意味するので,粒径が大き くなると測定の再現性が弱まるものと考える.その原因 としては,粉塵粒子の粒径が大きいと粉塵粒子の再飛散 が活発になることが考えられる.3.4
粒径1.0
から2.0
μm
の粒子についての集塵率 ケース 1 における粒径 1.0 から 2.0 µm の粒子について の集塵率を図 7 に示す.電圧の増加とともに,集塵率が 上昇する傾向は見られない.粒径 0.5 から 1.0 µm の場合 と比べると,同電圧条件下での集塵率のバラツキが更に 大きくなっている.(ケース 2 においても同様の傾向を 示した.)粒径が大きくなって,再飛散が更に顕著にな ったものと考える.粒径が 1.0 µm を超えると再飛散が 顕著になることは,過去の研究8, 9)でも報告されている. 今回の実験結果は,これらと矛盾していないと言える.3.5
粒径2.0
から5.0
μm
の粒子についての集塵率 ケース 1 における粒径 2.0 から 5.0 µm の粒子について の集塵率を図 8 に示す.電圧の増加とともに,集塵率が 上昇する傾向は全く見られない.粒径 1.0 から 2.0 µm の 場合と比べると,同電圧条件下での集塵率のバラツキが 図 6 集塵率特性(粒径 0.5 – 1.0 µm) (a)ケース 1:極板板厚 0.4 mmFig.6 Collection efficiency. (Diameter : 0.5 – 1.0 µm) (a)Case 1 :Plate thickness 0.4 mm.
図 5 集塵率特性(粒径 0.3 – 0.5 µm) (a)ケース 1:極板板厚 0.4 mm
Fig.5 Collection efficiency. (Diameter: 0.3 – 0.5 µm) (a)Case 1 :Plate thickness 0.4 mm.
更に大きくなっている.(ケース 2 においても同様の傾 向を示した.)粒径が大きくなって,再飛散が更に一層 助長されたものと考える.
3.6
集塵率の総括 ケース 1(板厚 0.4 mm)とケース 2(板厚 0.8 mm) の両者とも,粒径が大きくなるに従って,集塵率のバラ ツキが大きくなる.(特に,粒径が 1.0 µm を超えると, 極端に大きくなる.)図 7(粒径 1.0 から 2.0 µm の集塵率) と図 8(粒径 2.0 から 5.0 µm の集塵率)を見ると,測定 回によっては,負の集塵率が現れている.これは粒子が 捕集されるのではなく増加していることを意味してい る.このことを,参考文献 1)に示す先行研究と照らし 合わせて考察する. 図 9 は,ESP の接地極板と荷電極板を,1枚ずつ取り 出し平面的に配置したもので,各位置にアルファベット の大文字で各エリアを示す名称を付してある.通風方向 は左から右である.ESP における極板配置では,荷電極 板を風下側にずらしたが,そのようにずれた配置となっ ている.参考文献 1)における各極板観察画像をよく見 ると,荷電極板の風上端 J と対向する接地極板のエリア 「C-D」(不平等電界エリア)と,接地極板の風下端 H と対向する荷電極板のエリア「N-P-Q-R」(不平等電界 エリア)には,比較的大きな塊りの粉塵が付着している. 一方で,荷電極板の中央付近のエリア「K-L-M」(平等 電界エリア)と,接地極板の中央付近のエリア「E-F-G」 (平等電界エリア)には,比較的小さな塊りの粉塵が付 着しており,大きな粉塵は存在していない.参考文献 1) で述べられているように,エリア「C-D」に付着した粉 塵は,対向する端部 J に接触した粉塵が再飛散したもの であり,エリア「N-P-Q-R」に付着した粉塵は,対向す る端部 H に接触した粉塵が再飛散したものである.即ち, 不平等電界エリアにおいて,極板端部では比較的大きな 粉塵が再飛散し,対向面に付着している.(注記:粉塵 粒子が再飛散する際,誘導荷電により粉塵粒子が電荷を 帯びて対向電極に付着するという報告9-13)が以前からあ る.これら報告と,参考文献 1)に示す先行研究におけ る極板観察結果の間に矛盾はないと思われる.)今回の 実験において,1.0 µm を超える比較的大きな粒径で,負 の集塵率が測定されたことは,(不平等電界部である) 極板端部に接触した比較的小さな粉塵が,極板端部で凝 集し,大きな粉塵の塊りとなって再飛散し,対向面に付 着したものと考えられる.ここで,大きな塊りとなって 再飛散した粉塵のなかで,誘導荷電作用で充分に電荷を 得ることができた粉塵は,対向面に捕集されやすいが, 誘導荷電で得られる電荷量が不十分な粉塵は,対向面に 捕集されることなく,ESP から流出する場合もあると考 えられる.そして,そのような場合に,負の集塵率が現 れやすいものと考えられる.一方,平等電界エリアでは, 極板端部が存在せず,大きな塊りの粉塵が再飛散する可 能性が低いので,比較的小さな塊りの粉塵しか捕集され なかったものと考えられる. 図 8 集塵率特性(粒径 2.0 – 5.0 µm) (a)ケース 1:極板板厚 0.4 mmFig.8 Collection efficiency. (Diameter : 2.0 – 5.0 µm) (a)Case 1 :Plate thickness 0.4 mm.
図 7 集塵率特性(粒径 1.0 – 2.0 µm) (a)ケース 1:極板板厚 0.4 mm
Fig.7 Collection efficiency. (Diameter : 1.0 – 2.0 µm) (a)Case 1 :Plate thickness 0.4 mm.
図 9 極板の各エリアの表示
本研究からは,極板の板厚が 0.4 mm の場合と 0.8 mm の場合との明確な差異を確認することはできなかった.
4
.結論 金属極板を複数枚用い,ギャップ 10 mm で平行かつ 互い違いにずらして配置した ESP を構成した.極板の 板厚は 0.4 mm と 0.8 mm の 2種類とした.これにコロナ 放電が発生しない程度の電圧(dc -8 kV 以下)を印加し, 室内大気塵を風速 2 m/s で通過させ,パーティクルカウ ンターを用いて集塵率を測定した.その結果,以下が判 明した. (1) 粒径 0.3 µm 以上の全粉塵粒子の集塵率は印加電圧 の増加とともに上昇した.最大電圧 -8 kV で集塵率 10%程度.測定の再現性は概ねあった. (2) 粒径 1.0 µm を超える比較的大きな粉塵の集塵率は, 測定するたびに大きく変動し,再現性が弱まった. (3) 粒径 1.0 µm 以下の集塵率について,極板の板厚が 0.4 mm と 0.8 mm の場合の明確な差異を確認するこ とはできなかった. 参考文献 1) 片谷篤史,細野 洋,村田 光,八幡大志,水野 彰: コロナ放電を利用しない電気集塵装置-電極板の堆積状 態-.静電気学会誌,39 [1] (2015) 272) Harry J. White: Industrial Electrostatic precipitation. Addison-Wesley Publishing Company (1963)
3) 静電気学会:静電気ハンドブック,オーム社 (1981) 4) 阪田総一郎:静電気を除去する低ノイズクリーンイオナ イザの開発.日本エアロゾル学会誌,エアロゾル研究, 17 (2002) 105 5) 吉田哲夫:IX-4 炉過による集塵.化学工学会誌,26 (1962) 1218 6) 藤谷雄二,平野靖史郎:ナノ粒子・ナノ材料の健康問題 - その 2-「ナノ粒子の測定法および気相中ナノ粒子の現 状」.日本衛生学雑誌,63 (2008) 663 7) 原野安土:電気力学天秤を用いて一粒を測る.日本エア ロゾル学会誌,エアロゾル研究,27 (2012) 357 8) 安本浩二,瑞慶覧章朝,高木康裕,江原由泰:交流電界 型電気集塵装置における再飛散防止と下流壁面への粒子 付着防止.粉体工学会誌,43(2006) 198
9) T. Yamamoto, T. Mimura, T. Sakurai, Y. Ehara, A. Zukeran and H. Kawakami: Novel EHD-assisted ESP for collection of low resistive diesel particles. IJPEST, 5 (2011) 151
10) A. Zukeran, Y. Ikeda, Y. Ehara, M. Matsuyama, T. Ito, T. Takahashi, H. Kawakami and T. Takamatsu: Two Stage Type Electrostatic Precipitator Re-entrainment Phenomena under Diesel Flue Gases. IEEE Transactions on Industry Applications,
35[2](1999)346
11) H. Kawakami, Zukeran, K. Yasumoto, T. Inui, Y. Ehara and T. Yamamoto: Diesel PM collection for marine emissions using double cylinder type electrostatic precipitator. IJPEST, 5 (2011) 174
12) H. Kawakami, Zukeran, K. Yasumoto, M. Kuboshima, Y. Ehara and T. Yamamoto: Diesel exhaust particle reduction using electrostatic precipitator. IJPEST, 5(2011) 179 13) Y. Ehara, R. Nakano, T. Yamamoto, Zukeran, T. Inui and H.
Kawakami: Performance of high velocity electrostatic precipitator for road tunnel. IJPEST, 5(2011) 157