1. は じ め に
ご紹介ありがとうございます。日本GTL 技術研究組合 の乗杉と申します。本日の講演ですが「エネルギーの多様 性,安定供給を求めて GTL 技術の実証研究プロジェク ト」とのタイトルで,お話いたします。 今年に入りまして,石油学会,JOGMEC の成果報告会な どの複数の場におきまして,私どもの研究プロジェクトに ついて講演させていただく機会がございまして,ここにい らっしゃる皆様の何人かの方々は,すでにそういった内容 はご存知かもしれません。 そこで,本日の講演では,これまでの講演内容の一部を 割愛する代わりに,まず前半において,GTL プロジェク トの最近の動向,またGTL プロジェクトをめぐる種々の 議論について,話題提供させていただきたいと思っており ます。そして後半に,日本GTL 技術研究組合による実証 研究プロジェクトのご紹介をするという構成で進めて行き たいと思います。2. GTL とは
すでに多くの方がご存知とは思いますが,ものの順序で すので,GTL について,ごく簡単におさらいをしておき ます。GTL とは,天然ガスから石油製品を造るというこ とで,それを可能にする技術,またその石油製品を指して います。図1 に示しますように,3 つの工程に分かれてお ります。 最初の工程は,合成ガス製造工程で,原料である天然ガ ス,メタン,これに水,またプロセスによって酸素または 炭酸ガスを加えて,触媒により合成ガスといわれる一酸化 炭素および水素を製造する工程。さらにこれを原料として, フィッシャー・トロプシュ合成(FT)工程を経て,原油 に相当するFT 粗油という FT 合成油を製造していく工程。 最後に,原油を石油製品にするための精製と同じように, FT 粗油からナフサとか灯軽油などの石油製品を生産する アップグレーディング工程からなっています。3. GTL 技術開発の意義
すでに本日のこれまでの講演でも述べられております ように,LNG,パイプライン輸送,NGH,CNG などの技 術は,天然ガスの組成を変化させずに,天然ガスを天然ガ ス市場へ持っていく,天然ガスの輸送技術であるといえま しょう。 一方,GTL はこれらとは全く異なり,天然ガスを化学 変化によって組成を変化させ液体燃料化するもので,市場 は,石油製品市場となります。こういった特性から,GTL 技術は,原油に代わる液体燃料資源の確保を可能とする もので,エネルギー資源の多様性の確保および安定供給のSeeking for energy diversifi cation and its stable supply – GTL Demonstration project in progress –
Yoichi Norisugi
Abstract: GTL (Gas-to-Liquids) is the key strategic technology to secure natural gas resources as alternative
source of liquid fuel and its products are expected to have high qualities as clean fuel and lubricant base oil.
Nippon GTL Technology Research Association and JOGMEC launched a joint demonstration project last year to verify the process performance of unique JAPAN-GTL technology on the scale of 500B/D, which is the fi nal step toward commercial use of the technology. In the project, scaling-up methods, from demonstration to commercial scale (more than 15,000B/D/ train), will be also studied with the goal of developing both technically and economically competitive GTL technology.
Key words:energy diversifi cation, GTL, JAPAN-GTL, Nippon GTL Technology Research Association
* 平成 19 年 10 月 19 日,平成 19 年度石油技術協会秋季講演会「エネル ギー輸送への新たな挑戦」にて講演 This paper was presented at the 2007 JAPT Autum Meeting entitled “New Challenges for Energy Transportation” held in Tokyo, Japan, on October 19, 2007.
** 日本 GLT 技術研究組合 Nippon GTL Technology Resarch Association, (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 Japan Oil, Gas and Metals National
観点から,エネルギー資源の大部分を海外に依存する我が 国にとって,極めて戦略的な技術になり得るものと思われ ます。 上流企業にとりましても,皆さん上流企業の方が多いか と思いますけれど,新しい鉱区権益を取っていく際に,ホ スト国から「あなた方の技術は他社とどういうところが 違うのかね」というような問いかけを受け,他社との技術 の差別化が図れないと,なかなか新しい鉱区権益を取得す ることが困難になってきている状況があるかと思います。 GTL 技術は,天然ガス資源開発の新たな選択肢をホスト 国に提供するといった意味で,他社との差別化を可能にす る,非常に戦略的な技術であると考えております。
4. GTL プロジェクトの動向
GTL プロジェクトの動向ですが,図 2 に示しますように, 皆さんご承知のとおり,南アフリカでは,PetroSA とか Sasol が,一部は原料が石炭ですが,すでに長年この GTL の商業規模のプロジェクトを実施しているというところで す。また,マレーシアのサラワク州ビンツルではShell が GTL プラントを長年操業してきております。 今年に入りまして,新たにこれに加わったのがカタール におけるSasol による Oryx-1 プロジェクトです。プラント 能力は34,000 B/D です。ここからの GTL の製品の出荷が, 今年始まっております。しかしながら,皆さんご承知の方 もいらっしゃるかもしれませんが,必ずしも運転がうまく いっていない。恐らくFT 工程のどこかの不具合,そうい うものに起因して,当初の生産能力というものをいまだ達 成せずにいるという状況がございます。 同じカタールですが,Shell が,第 1 期,第 2 期合わせ ますと140,000 B/D の GTL プラントの建設計画(Pearl プ ロジェクト)を持っており,このうち第1 期の工事がすで に開始されております。カタール以外では,ナイジェリア におきまして,ガス田ではなくて随伴ガスを利用したプロ ジェクトですが,Sasol/Chevron が 34,000 B/D のプラント 図1 GTL 製造工程 図2 GTL プロジェクトの世界的動向ホスト国の事情によりなかなか芳しい進捗というものを聞 いておりません。そういった状況が現在あります。 一方,新しくこのGTL の技術を獲得しようという会 社も複数ありまして,例えばTotal とか,ベネズエラの 国営石油会社のPDVSA,また隣国の韓国でも民間のコン ソーシアムが結成され,官の支援を受けまして,こちらも GTL の技術開発を開始したという情報を得ております。
5. GTL プロジェクトの現在の投資環境
GTL プロジェクトの現在の投資環境をどのように見る かですが,先ほど述べたように最近のGTL プロジェクト をめぐる状況は必ずしも順風満帆の状況にはありません。 この一番の理由としては,世界的な短期間でのプラントコ ストの上昇が挙げられると思います。 現在の投資環境についていいますと,確かにGTL プラ ントからの石油製品の価格も上昇していて,現在のプラン トコストであっても,今の製品価格であればプロジェクト の経済性が認められる。しかしながら,「プラントコストは, ここ数年でどうなるのだろうか,このまま高止まるのであ ろうか」という様子見をしたいという状況があります。一 方,製品価格につきましても,プロジェクトライフの20 年, 30 年という期間で,「今のような価格で高止まるのであろ うか」,そういった心理が,実際GTL プロジェクトの事業 に投資する人たちにとっても,また,資源を提供するホ スト国にとっても1 つの悩みどころではないかと思ってい ます。 別ないい方をしますと,2002 年以降の急激な油価,ま たプラントコストの上昇が,仮に無く,安定的に推移し てきているとした場合,皆さんどう思われるでしょうか。 私は,現在止まっているプロジェクトのなかの,いくつ かはもうすでに立ち上がっていたのではないかと思ってお ります。こういった現在のGTL プロジェクトの投資環境 は,GTL プラントのみならず,LNG,化学製品のプラン ト,製油所など,初期に非常に大きな投資を必要とするプ ロジェクトの意思決定に非常に大きな影響を与えているの ではないかと思っています。 これに関連し,アジアにおける石油製品価格を見てみま すと,確かに2002 年前後からドバイ原油の価格上昇とと 合 PPI を除き,ほかのコストインデックスでは,原材料 価格は反映されているものの,これを単に積み上げただ けであり,需給がタイトとなったことによる,いわゆる売 り手市場となったことによる,コスト上昇が見込まれてい ないということです。この見方によれば,実際のコストは 2002, 3 年当時と比べると,現在は,100%程度まで上がっ ているのではないかという見方をする方も多くいらっしゃ います。このコスト上昇の事例として,Poten & Partners が,複 数のLNG プラントについて,それぞれの単位生産量(年 間生産量1 トン)あたりの EPC コストを算定し,稼動開 始年によるその推移をグラフにしています。これによりま すと,プラント規模の拡大に伴うスケールメリットにより, 下がる傾向にあったものが,2004 年前後を境として,上 昇傾向に変化しています。EPC(LNG プラント建設)期間 を2,3 年とすると,建設開始の意思決定のタイミングは, このプラント稼動開始年から2,3 年前ということになり ます。そのような目で見ると,2004 年が底のように見え ますが,実際は2001, 2 年ぐらいから急激に LNG プラント のEPC コストが上がっており,2005 年までに 50% 以上の 上昇を見ていると読むことができます。
6. GTL の比較優位性をめぐる議論
私自身このような立場になってから,いろいろな方から, メディアの方も含めて,「GTL プロジェクトの経済性はど うなのか」,「何かエネルギー効率は悪いようだけれども, 炭酸ガスを多く出すのでは」,「本当にGTL 製品は,世の なかに売っていけるのか」というようなことを聞かれます。 次は,こうした問いかけに対して,「こういう見方がある」 という話題提供をさせていただきたいと思っています。 まずプロジェクトの経済性ですが,天然ガス資源を対 象とするマネタイズの手段,貨幣化の手段には複数の手段 があり,GTL の経済性について本当の意味でのこれらと の定量的な比較というのは,それほど簡単なことだとは思 いません。もちろん,LNG と Pipeline,CNG,NGH,これ は輸送手段が違うだけで,実際の供給先は天然ガスのマー ケットですから,同じ土俵で,その相対的な優位性につい て議論ができそうだなという感じはします。しかしながら,GTL は,先ほど申し上げましたように, その特徴として,売り先は石油製品市場です。したがって, GTL と他の貨幣化の手段との比較となりますと,比較す べき重要な要素に,「今後石油製品市場がどうなるのか」, 「天然ガス市場がどうなっていくのか」,「その相対的な関 係はどうなっていくのか」といった見通しの観点が入って こないと,本当の意味での比較はできないのではないかと 思っております。 こちらの図3 は,BP 統計のデータを基に作成した図で す。まず左の図ですが,単位発熱量当たりのガス価,油価 の推移をプロットしたものです。異なる複数の天然ガス市 場でのガス価およびOECD 諸国へ輸入された原油の平均 油価がプロットされています。異なる天然ガス市場ですが, LNG で入ってくる日本市場,米国市場および EU 市場です。 いい忘れましたが,価格はCIF 価格でプロットされており ます。これを一見すると,「熱量等価のガス価と油価が連 動しているね」という見方ができるわけです。 右の図は,同じデータを使用していますが,ガス価と油 価との相対的な関係の推移をプロットしたものです。例え ばガス価と油価が熱量換算で等価であれば1,ガス価が高 ければ1 以上です。 2002 年ぐらいに油価が上がっていくわけですが,日本 のガス価を見てみると,それ以前は,熱量換算するとガス 価のほうが相対的に高い。それが2002 年以降,油価の上 昇とともに,むしろガス価が割安になってくるということ で,いつでもガス価が割安だったのではないのです。これ は,恐らくLNG の販売契約で規定されている,ガス価と 油価とを関連付ける,いわゆる「S 字カーブ」といわれる 換算式を反映しているのではないかと思います。 ほかの天然ガス市場を見ますと全く様相は違います。 EU に関しては,大体 0.8 前後を行き来している。米国に 関しては,少し前をさかのぼると,ガス価は油価の半分だっ た。それが今は,ほとんど油価と等価になっている。 油価とガス価の関係は,それぞれの市場によっても違い ますし,油価とガス価の関係を1 つの換算式で表現して, GTL と他の貨幣化技術の経済性について,その優位を議 論するというのは,少し危険ではないかと考えております。 すなわち,それぞれの市場間の相対的関係を,1 つの前提, シナリオだけに基づいて議論するのは適当ではないのかな と思っております。 もう1 つ,経済性を議論するときに重要なのは時間の概 念です。例えばあるプロジェクト,LNG でも GTL でも, そのプロジェクトのFS が終了した段階で,プロジェクト の意思決定が直ちに可能な状況にあるかどうかは,重要な ことと思います。それができなければ投資機会の損失にな るわけで,そういった意味でも,天然ガス市場とGTL の 石油製品市場とでは,異なるのではないかということを, また後ほど述べたいと思います。 次は,GTL の環境特性についてです。本来なら環境特 性といったときに,炭酸ガス,温暖化ガスのみならず, VOC とか環境へ悪影響を及ぼすすべての原因物質につい て議論しなければいけないのですが,ここでは炭酸ガスだ けについて議論させていただきたいと思います。 一般的に,炭酸ガスの排出量を,原油由来の軽油,天 然ガス由来の軽油というもので比べたときに,原油から 製品を生産する石油精製のエネルギー効率というのは大体 90%。一方,天然ガスから石油製品を生産する GTL のエ ネルギー効率は60%台といわれております。従いまして, それだけエネルギー効率が悪いということで,炭酸ガスの 排出量は,GTL 軽油のほうが多いのではないかというこ とがいわれております。 また,生産過程でそういうことですので,実際その製 品利用の過程において,ほとんど原油由来の軽油も,GTL 軽油も,実際使用するときに出る炭酸ガスはそれほど大き く違わないだろうから,GTL 軽油というのは環境に優し くないというのが一般的な見方であります。 ところが,別の見方をしているグループがあり,その 見方をご紹介します。今申し上げたのは,まさに軽油と軽 油を比べただけです。ここでは議論を非常に簡略化してお りますが,ご承知のとおり原油からは軽油のみならず,原 油のなかには,GTL 粗油に含まれていないような重質分 が含まれておりますから,重油も連産品として生産され ます。 したがって軽油だけを単独で生産することができない世 界が,石油精製にはあるわけです。そういう意味で,こう いったほかの副産品も併せてその製品が利用されたとき, 図3 油価とガス価の推移 データ(BP 統計),2007
もちろん,炭酸ガスの排出は,全産業界の問題でもあり, GTL 生産もその例外ではなく,生産過程における排出量 削減に向けた技術開発を,今後も進めて行かなければなら ないのは,いうまでもないことです。 最後になりますがGTL の市場性についてです。GTL の 主たる製品と考えられるGTL 軽油については,ニート, すなわちGTL 軽油 100% であっても,製品の輸送,貯蔵, 利用まで,既存のインフラが使えます。しかしながら,実 際そういうマーケットがあるかというと現在はありませ ん。現在それほど多くのGTL 軽油がまだ生産されていな いからと考えられますが,一方,石油由来の軽油との混合 による利用については,特定の市場,ヨーロッパとかタイ においてはすでに実現しています。 GTL の性状については問題がないということですが, それでは本当にGTL 軽油,軽油の需要があるのか。ヨー ロッパでのあるスタディでは,陸上輸送に使われる燃料, ガソリンと軽油の比率の世界的な推移を予測しています が,これによると,2000 年でその比率は,約 2 対 1 ですが, この比率がだんだん低下していき2020 年では,1.4 程度ま で低下してゆく。すなわち,軽油の需要が世界的に比率と して増えてゆくといっています。西ヨーロッパのEU15 カ 国で見ると,2000 年で 1 であった比率が,2020 年には,0.5 を切ってしまう,すなわちガソリンの需要が,軽油の半分 係にあると思います。従いまして,天然ガスのマーケット, 需給関係によっては,プロジェクトの意思決定までにかな り時間がかかってしまう。過去にそういうことはいくらで もございました。そういう性格を天然ガス市場は持ってい ることを付け加えたいと思います。
7. 日本 GTL 技術研究組合による実証
研究プロジェクト
ここから,私どもGTL 技術研究組合によるプロジェク トのご紹介です。図4 に示します私どもの技術研究組合の 概要ですが,昨年,2006 年 10 月 25 日に設立されました。 私どもの組合を構成する民間6 社は,国際石油開発㈱,新 日本石油㈱,石油資源開発㈱,コスモ石油㈱,新日鉄エン ジニアリング㈱,千代田化工建設㈱です。この6 社が組合 に対してマンパワーおよび研究資金を拠出しております。 JOGMEC と組合との間で共同研究契約が締結されてお り,JOGMEC も同じくマンパワーと研究資金を拠出してい ます。ちなみに研究費の総額は約360 億円,このうち民間 6 社が 3 分の 1 の約 120 億円を負担することになっており ます。 図5 に示しますように,実証プラントの建設地は,新 潟県新潟市の新潟東港。以前にGTL パイロットプラント, 7B/D をやりましたけれど,これは北海道勇払でした。 図4 日本 GTL 技術研究組合の概要図6 が,海上から見たプラントの敷地です。右側に備蓄 基地,南側にJPO のプラント,そこに隣接した敷地です。 さる9 月 5 日に起工式が開催されまして,ただちに杭打ち 作業が開始されました。 図7 が,プラントの完成予想図ですが,敷地のサイズは, たて横で,約180 m および 230 m。このなかに主要なプラ ント部分,合成ガスの製造装置,FT 合成装置,アップグレー ディング装置が配置されることになっています。 私どものJAPAN - GTL の技術開発の経緯ですが,図 8 に示しますように今から約10 年近く前から各社および JOGMEC(当時の石油公団)によって開始されています。 まず,最初はラボスケール,ベンチスケールの,非常に小 さな容量でのプロセス研究とか,触媒の開発というものが 実施されました。その次の段階,北海道の勇払におきまし て,パイロットプラント7B/D のプラントが稼動いたしま した。この結果,当初の研究目標,定量的な研究目標をす べてクリアしました。また,ほかの外国企業がすでに開発 している技術と比べても,遜色がない,部分的にはそれを 越える部分もある,そういうポテンシャルも持っているこ とを確認して,現在の実証スケールのプラントへ移行して いるわけです。 北海道勇払の時点から新たに,今回,新日本石油㈱がこ 図5 GTL 実証プラント建設地 図6 GTL 実証プラント敷地 図7 GTL 実証プラント完成予想図
のコンソーシアムのメンバーに加わっています。 この実証スケールでのプラントの実証が終わった時点 で,商業プラントに移行できるだけのすべてのノウハウ, 技術力を獲得することを目論んでおります。 図9 で示しているのは,私どもの JAPAN - GTL プロセス と他社との大きな違いです。天然ガスに炭酸ガスが含まれ ている場合,通常のプロセスですと,炭酸ガスの除去装置, また,空気中から酸素を取り出すような酸素製造装置とい うものが,合成ガスの原料を供給するために必要になって きます。それに対して私どものプロセスは,原料として炭 酸ガスを利用することにより,当然ながら,炭酸ガスの除 去装置は要らなくなりますし,またこの酸素製造装置,非 常に大きなCAPEX を占める装置が要らなくなる。したがっ てCAPEX の低減が期待できる。また,炭酸ガスが含まれ ることにより,未開発となっているガス田も開発できるよ うになるということです。 FT 合成工程は,Co 系触媒を用いたスラリー床反応器を 採用しており,世界最高水準の高活性触媒が,すでに開発 されています。 アップグレーディング工程では,FT 合成で得られた粗 油を,ナフサ,灯軽油,Wax に分留し,水素化精製しますが, Wax の水素化分解では,触媒担体を最適化することによ り,他社を大きく上回る高活性で,灯軽油の選択性が高い 触媒が開発されています。 今回の実証研究の範囲ですが,図10 に示しますように, 前のパイロット研究との一番大きな違いは,前の研究では 合成ガス工程,FT 合成工程まででしたが,今回は新日本 石油㈱が加わって,先ほど述べました非常に優れたワック ス分解の触媒を用いて,この工程も含めて,インテグレー トされたシステムとして実証を行うことにしております。 研究スケジュールですが,図11 に示しますように,昨 年,2006 年 10 月に組合が設立され,それとともに実証プ ラントの設計が開始されています。そして本年9 月に起工 式が行われ杭打ち作業などが始まっています。実際の運転 は,2008 年度の終わりごろ試運転が始まり,2009 年度か ら2010 年度にかけて,約 2 年度にわたり実証運転が行わ れます。そのあとこのプラントを解体して実証試験をすべ て終わるというスケジュールです。 こうした実証運転のスケジュールとともにもう1 つ,触 媒の改良とかスケールアップ,要するに今の500 B/D から 図8 GTL 技術の開発経緯 図9 JAPAN-GTL 技術の特徴
15,000,20,000 B/D に持っていくための信頼性ある設計ツー ルスを作るという観点から,反応シミュレーターを開発 し,実証運転からのデータのフィードバッグによって改良 を行っていく,こういった研究を並行して実施して行く計 画となっています。 また,私どもが狙っているのは,この実証プラントが終 わったら,直ちに商業プロジェクトを立ち上げたいという ことで,そのための種々の準備的な調査とか検討を行うこ とにしています。 本日の私の講演は以上でございます。ご静聴ありがと うございます。また,今回の秋季講演会にご招待いただ いた石油技術協会に感謝いたします。ありがとうございま した。 参 考 文 献 1) 今井章雄,2006:GTL 技術の LCA 評価と将来開発動向. エンジンテクノロジー,2006 年 10 月. 2) 日本機械輸出組合,2006:2006 年 PCI/LF(プラント コストインデックス/ ロケーションファクター)報告 書.
3) BP,2007:Statistical Review of World Energy 2007. 4) Charlie Cameron, 2006:The Diesel Pool:a 2020 Vision,
11th World Refining & Fuels Conference, Brussels.
5) EUCAR, CONCAWE and JRC, 2004:Well-to-Wheels analysis of future automotive fuels and power trains in the European context.
6) Poten & Partners, 2005:LNG in World Market, Nov.2005. 7) PricewaterhouseCoopers, 2003:Shell Middle Distillate
Synthesis (SMDS)Update of a Life Cycle Approach to Assess the Environmental Inputs and Outputs, and Associated Environmental Impacts, of Production and Use of Distillates from a Complex Refinery and SMDS Route. 8) Shell, 2004:GTL fact sheets, Shell Gas to Liquids, http://
www.shell.com/. 図10 研究目的および研究範囲