別紙様式2 奈良な ら女子じ ょ し大学だいがく附属ふ ぞ くちゅうとう中 等きょういく教 育学校がっこう 22~26 平成23年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施計画書 (平成22年度指定、第2年次) 1 学校の概要 (1)学校名、校長名 学校名 奈良な ら女子じ ょ し大学だいがく附属ふ ぞ くちゅうとう中 等きょういく教 育学校がっこう 校長名 小林毅(奈良女子大学人間文化研究科教授) (2)所在地、電話番号、FAX番号 所在地 奈良県奈良市東紀寺町1-60-1 電話番号 0742-26-2571 FAX番号 0742-20-3660 (3)課程・学科・学年別生徒数、学級数及び教職員数 ① 課程・学科・学年別生徒数、学級数 全日制課程・普通科・各学年3クラス(合計18クラス) 前期課程 後期課程 計 1年 2年 3年 4年 5年 6年 男 59 57 60 58 64 60 358 女 62 66 63 60 70 61 382 計 121 123 123 118 134 121 740 ② 教職員数 校長 副校長 教諭 主幹 教諭 養護 教諭 非常勤 講師 教務 補佐 ALT ス ク ー ル カ ウ ン セ ラ ー 事務 職員 司書 計 1 2 37 3 2 19 5 2 1 4 0 76 ※事務職員は臨時雇用を含む 2 研究開発課題 中等教育6年間において、自然科学リテラシーを基盤とするリベラルアーツの育成 のためのカリキュラム開発と、高大接続のあり方についての研究開発 3 研究の概要 学校を卒業後も能力を伸ばしていく科学的素養を持った人間を育成するための、中 高6年一貫教育SSHカリキュラムを研究開発する。低・中学年の1年~4年では、全生 徒を対象として、文科系・理科系の区別なく「自然科学リテラシー」を育成するカリ キュラム・教材・指導方法を研究開発する。中・高学年の3年~6年においては、高等 教育を見通した「リベラルアーツ」の具現化をはかるためのカリキュラム・指導方法 の研究開発を行い、学習面での高大接続を目指す研究を進める。これらを通じて、問 いをたてる力、コミュニケーション能力、表現力を育成する。 2225
また、「サイエンス研究会」における生徒の研究活動を通じて、理数に興味関心の ある生徒の力をより伸ばす指導方法を研究する。そのことを通じて、本校と大学の教 員が連携して、高等教育との接続・連携を進めるためのカリキュラムの研究を行う。 4 研究開発の実施規模 全校生徒を対象に実施する。 5 研究の内容・方法・検証等 (1)現状の分析と研究の仮説 ① 本校の現状と課題 本校は、2000年度に中等教育学校となったが、それ以前の1970年代から完全中高6 年一貫教育を実践してきた。「自由・自主・自立」の校風のもと、生徒たちは6年間 をのびのびと過ごしている。伝統ある学園祭では、中高一貫の特性を活かした6年間 の縦のつながりを基軸として生徒が学園祭を自主的に運営し、3クラスの小規模性を 生かした学年間の横のつながりをもとに、教室展示・演劇・模擬店と活発な活動を展 開している。 しかし最近は、個人は「個性的」である一方、他人と議論をし共同して何かを積み 上げていくような集団形成ができない生徒が増えてきており、ルールやマナーといっ た公共性に乏しい生徒も増えつつある。このような生徒に、どのようにして21世紀の 担い手としてふさわしいシティズンシップを身につけさせ、またキャリア形成能力を 育成するか、その指導法の研究が必要となってきている。 一方、シティズンシップには自然科学的素養が不可欠であると考えるが、平成17年 ~21年度のSSH指定を受け、「自己学習力と自然科学リテラシーを育成するカリキ ュラム」をテーマに掲げた本校の研究開発は、この点において一定の成果を収めた。 様々な知識を組み合わせて問題を解決する力や粘り強く考える力など、応用的な問題 や実際に直面する問題への対応力について、自然科学リテラシー育成を主眼に置いた 指導方法・カリキュラムが、多くの科目・プログラムにおいて構築できた。高大連携 教育も大きく促進されたが、今後はさらに指導内容・研究内容の「接続」に踏み込ん だ連携を強めていくことが目標になる。 また、研究開発の成果の評価方法についても、課題は多い。たとえば「自然科学リ テラシー」については、「OECDの生徒の学習到達度調査(PISA)」の定義をもとに研 究を進め、それが育成できたかどうかを検証・評価するため、その問題にもとづくテ ストを2年間実施した結果、PISAの範疇においては本校生徒が身につけているリテラ シーはかなり高く、無回答率も非常に低いことが判明した。続いて、PISAの枠組み を重視しながらも本校独自の視点にもとづくテストを作成・実施し、分析と考察を行 ったが、試行錯誤の状態であり、さらなる評価研究が必要と考えている。 続いて研究成果の発信をめぐる課題である。現在本校SSHの研究内容については、 日本カリキュラム学会や日本数学教育学会等の学会、奈良県の学習指導研究会等の研 究会で発表し、本校の公開研究会では具体的な授業研究や生徒のポスター発表、また 理数教育や学問研究をめぐる講演やシンポジウムなど多彩な形で発信してきた。しか し学校内での研究推進に重点が置かれたため、一方向であったことは否めず、公立を 中心とする他の多くの学校に有効に利用できる形であったかについては課題も残った。 第Ⅱ期SSHにおいては、研究の成果をどのように普及していくか、より有効な方法を 考える必要がある。
② 研究の仮説 ②-1 「自然科学リテラシー」 第Ⅰ期SSHと同様に、本校における理数教育の基本概念は「自然科学リテラシー」 である。これは、PISAにおける次の概念に基づいて定義した。 数学的リテラシー :数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の 個人の生活、職業生活、友人や家族や親族との社会生活、建 設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において確実 な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力 科学的リテラシー :自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について 理解し、意思決定するために、科学的知識を使用し、課題を 明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力 主に数学科の教育により「数学的リテラシー」を、主に理科・数学科の教育により 「科学的リテラシー」を育成する。この2つのリテラシーを統合・活用する力として 「問題解決能力」をとらえ、数学科・理科が中心となってこの力の育成を図る。 「問題解決能力」とは、「問題解決の道筋が瞬時には明白でなく、応用可能と思わ れるリテラシー領域あるいはカリキュラム領域が数学、科学、または読解のうちの単 一の領域だけには存在していない、現実の領域横断的な状況に直面した場合に、認知 プロセスを用いて、問題に対処し、解決することができる能力」と定義されている。 したがって、「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」を活用して、問題解決が 総合的にできる素養・力として「自然科学リテラシー」を定義する。 ②-2 「リベラルアーツ」 今回のSSHでは、「自然科学リテラシー」を身に付けたうえで、特定分野の知識・ 技術のみを狭く専門的に極めるのではなく、自然科学や人文社会科学の枠にとらわれ ずに、それぞれのものの見方や考え方を身につけることに重きを置く「21世紀におけ る新しいリベラルアーツ教育」のカリキュラムを研究開発したいと考えている。その 理由は以下のとおりである。 先の「本校の現状と課題」において、最近の生徒には他人と議論し共同して何かを 積み上げていくような集団形成ができない課題が見られることを指摘した。この傾向 は、現在のSSH研究における大きな課題でもあった。いわゆる理系の特定分野の研究 には興味を示すが、人文社会科学に対する理解に乏しい単なる「研究屋」を生んでし まう傾向はなかったかという反省は、本校内でも絶えず議論を呼んだところであった。
また一方で、現在の全世界的な課題は、ある学問の一領域だけで解決できるもので はなくなった。たとえば、ユネスコの提唱するESD(Education for Sustainable Development:持続発展教育)では、自らの考えを持って、新しい社会秩序を作り上 げていく、地球的な視野を持つ市民を育成するための教育が期待されており、その担 い手づくりのために、他人や社会、また自然環境との関係性などを認識し、「関わ り」、「つながり」を尊重できる個人を育むことが強調されている。 以上の課題の克服のためには、文理の枠組みにとらわれない幅広い視野と深い専門 性を持つ理数(自然科学)に強い生徒を育成することが急務であると考え、その実現の ために今回設定したのが「リベラルアーツ」の概念である。 「リベラルアーツ」はもともと、「自由七科」(文法・修辞学・弁証法・算術・幾 何・天文・音楽)から構成される、中世ヨーロッパにおけるエリート養成のための教 養教育を指し、それは単なる知識や技能の集合体であった。また明治以降の高等教育 におけるいわゆる「教養教育」は、専門教育に対置された概念であり、幅広い分野を 浅く広く学ぶ教育であった。しかし、「21世紀におけるリベラルアーツ教育」がめざ すのは、このどちらとも異なる。そこでめざすのは、狭い知識や技能の集合体ではな く、自然科学や人文社会科学を問わず、専門的なものの見方や考え方(discipline) を学ぶことを通じて、どのような専門分野に進んでも通用する基礎を習得することで あり、狭い専門性を超えた深い「教養」をめざそうとするものである。著名な歴史学 者の阿部謹也は「教養とは自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のために何 ができるかを知っている状態、あるいはそれを知ろうと努力している状態である。」 (『学問と「世間」』岩波新書)と述べているが、そのような見方や考え方をさまざま な場(自然科学、人文社会科学)を通じて学ぶことにより、より高い科学観と倫理観 をもった理数(自然科学)に強い生徒を育成できると考えている。
②-3 研究の仮説 ■研究仮説■ 1~4年生においては、理数に偏らない総合的な考え方のカリキュラムの 基で、全生徒に「自然科学リテラシー」を軸とした科学的思考力の育成を 目指す教育を行うことにより、理数(自然科学)に興味や関心を持つ生徒を 育成できる。 3~6年生においては「リベラルアーツ」の涵養をめざし、学習面での高 大接続を目指したテーマの、少人数の討論型授業を設置することにより、 文理に捉われない幅広い視野と専門性を背景に、より高い科学観を持った 理数(自然科学)に強い生徒を育成できる。 さらに、前期課程生から始めるサイエンス研究会の活動では、科学的思 考力、問いをたてる力、議論する力、表現力を育成できる。 第一に、「自然科学リテラシーの育成」を分節化し、より具体化すると以下のよう になる。 A.数学的リテラシーの育成 数学において、テクノロジー(PC、グラフ電卓等)を活用して、数学における 「実験」や試行錯誤を繰り返しながら学習することで、数学的リテラシーを育成 し、創造性をのばし、自己学習力、問題発見能力を高めることができる。 B.科学的リテラシーの育成 理科において、観察・実験を重視した授業の積み重ねと、生徒が自ら仮説を立 てて探究する課題研究を行うことで、科学的リテラシーを育成し、自ら主体的に 学習する生徒を育てることができる。 これらのリテラシーと、それを活用する問題解決能力を、メディアリテラシーと読 解力を基にして接合することにより、本校生徒全体の理数の力を引き上げ、生徒の独 創力・論理的思考力・問題発見能力をさらに伸ばすことができると考える。 第二に、リベラルアーツ教育について、具体的には以下のとおりである。 文理の枠に捉われない、広がりのある様々なテーマについての、ゼミ形式の小人数 講座「コロキウム」を開講し、探究型・討論型の授業展開によって知見を深めていく。 この講座には「文化と社会」「科学と技術」「数理科学」「総合数学」「生活科学」 など、さまざまな事象に対する、従来の教科・科目の枠を超えた多角的なアプローチ を実現する講座を、5年の全生徒対象の必履修科目として包摂・再編していく。この講 座を履修することによって、狭い知識や技能の集合体ではなく、専門的なものの見方 や考え方(discipline)を学ぶことができる。このことで、どのような専門分野に進んで も通用する基盤を習得することができ、より高い科学観と倫理観をもった理数(自然 科学)に強い生徒を育成できる。また、この「リベラルアーツ」のカリキュラム研究 は、生徒の学習面における高大接続カリキュラムを研究開発することになる。 第三に、サイエンス研究会の活動では、中等教育6年間の継続性を生かし、粘り強 い長期的な研究の姿勢を学ぶことで科学的思考力を育むことができる。また、先輩・ 後輩そしてサイエンス研究会内外の多様な生徒との相互交流や相互批判、本校教員や 大学教員を中心とする専門の研究者からの指導の中で、問いをたてる力、プレゼンテ ーション能力や議論する力を育成することができると考える。
(2)研究内容・方法・検証 カリキュラムは、基本的に6年間を2年ずつに区切る2-2-2制をとり、それぞれの2 年間のSSHに関する目標を、次のように設定する。 1・2年 理数に偏らない基礎・基本の徹底 3・4年 学問への興味・関心と学びへの意欲の育成 5・6年 高大接続を目指す先進的・総合的な視野を持つ理数教育 ① 自然科学リテラシーの育成 ①-1 数学的リテラシーの育成 数学科において、以下の内容を研究する。 ①-1-(1) 数学化サイクルを意図したカリキュラム開発 数学は自然科学の「言語」である。PISAの数学的リテラシーについて、「2003年 調査評価の枠組み」に数学化サイクルとして示されていることは、「現実世界の問題 において、それを解決するためにまず数学的世界に持ち込み、数学的な問題に置き換 える。そこで試行錯誤して数学的解答を得る。それを現実の世界にもどし現実的解答 を得る。」という一連の流れである。授業を通してこの定義を解釈すると、「自分た ちの身近な課題を、数学的な活動を通して解決しようとする力」をさすと考えられる。 自然現象や社会現象と数学とのつながりを十分に認識させ、数学が現実世界と乖離 した言語とならないように、また数学的リテラシーが身につくような、教材・指導法 の研究開発を行う。このことが、リベラルアーツ教育の観点とつながる。第Ⅰ期SSH から続くカリキュラム開発をさらに発展させ、数学化サイクルをより意識させる教科 横断的な内容の教材を研究する。数学科と理科の連携はいうまでもなく、他教科での 課題に関して数学的なアプローチができないか考察し、教材化していく。 ①-1-(2) テキストの作成と成果の発信 問題解決型学習を支援し、創造的な理数に強い生徒を育成するための教材や指導法 の開発を第Ⅰ期SSH以来行ってきた。「作図ツールを活用した発見型幾何学習(前期 課程)」・「グラフ電卓を活用した実験型関数学習(3年)」については教材を開発する ことができた。上記の数学化サイクルをさらに深め、その他の分野に関しても課題学 習を生かした授業開発を進め、教材として研究・蓄積した成果をワークシート・テキ スト(冊子)の形でまとめて発行し、全国的に発信する。 ①-1-(3) 数学教育における授業展開・方法の研究 本校では、ツールとしてテクノロジーが有効な単元や場面においては、生徒に活用 させてきた。上でも触れた作図ツール(CabriⅡ)やグラフ電卓以外でも、グラフ描画 ソフト(GRAPES)や数式処理システム(Mathematica)などを積極的に授業に取り入れ ている。 たとえば、生徒自らが図形の変化の中から不変なものとしての定理を発見し、発見 した事柄を作図ツールによる「実験」で確認して、その後に数学的に証明する。テク ノロジーを活用することにより、このような、自分たちで学習の体系を作り上げてい く、課題を発見することのできる生徒を育成し得ると考えている。 第Ⅰ期SSH以来の研究をさらに継続・発展させる形で、テクノロジーを利用した、 生徒たちが事象を具体的に取り扱うことのできるカリキュラム・指導方法の研究開発 を行う。 またグループ学習など、授業展開にも踏み込み、コミュニケーション(議論)・プレ ゼンテーション(表現)の能力を引き出せるような方法論を探る。
①-2 科学的リテラシーの育成 理科において、以下の内容を研究する。 ①-2-(1) 科学的リテラシー育成のためのカリキュラム開発 PISAの科学的リテラシーは、「科学的知識・概念」「科学的プロセス」「科学的 状況・文脈」の3つの柱で構成されている。本校では、生徒の科学的思考力を育成す るための授業を長年にわたって研究開発してきた。その成果を「科学的プロセス」の 観点に基づいて整理し直し、1年から6年までの典型的な授業を「ワークシート群」と してまとめた。 そこで次の段階として、「科学的状況・文脈」の観点から、以下の2つの視点を取 り入れて、カリキュラム開発を理科の指導内容全体に広げていく。 ■人間理解の視点 芸術や文学が自然や人間の美を追究するものであるとすれば、自然科学は自然や 人間の真理を探究する学問である。自然科学の最終目標は自然科学的アプローチに よる人間理解にあるという視点を取り入れたカリキュラムを研究開発する。 ■科学の価値判断の視点 科学・技術の発展と活用は、人間社会の持続的発展にとって最も重要な要素の1 つである。科学・技術の成果が有効に使われるためには、研究開発に携わる者、成 果の活用方法を意志決定する者、さらに、世論を形成する市民一人ひとりが、科学 ・技術の発展と活用に対して正しく判断できる思考法と科学的素養を身につける必 要がある。そのような思考法、科学的素養を育成するカリキュラムを研究開発する。 ①-2-(2) テキストの作成と成果の発信 第Ⅰ期SSHの研究において、PISAの科学的プロセスの観点に基づいて典型的な授 業を「ワークシート群」としてまとめた。今後、この成果の上に、上記2つの視点を 取り入れたカリキュラム開発を行い、そのカリキュラムや実践内容を資料集や副読本 の形にまとめ、全国的に発信することによって成果を広め、外部からの評価を受ける。 テキストの一例としては、現代科学の状況や文脈を理解するために、教科書の「参 考」などにしか書かれていない項目も含め、現代社会で必要となる知識や概念を集め た本校独自の副読本を作成する。 ①-2-(3) 理科教育における授業展開・方法の研究 ・「実験ハンドブック」を用いて、正確な実験技術の育成を継続する。 ・ 科学と社会のつながりに注目すると、物理・化学・生物・地学の分野の壁はなく、 互いに関連しながら発展してきている。このことを念頭におき、たとえば、遺伝子 という1つのテーマを、各科目の授業の中でそれぞれの視点から取り上げ、現代科 学がおかれている状況や文脈を理解させることのできる授業展開・方法を研究する。 ・ 実験データ等の正確なデータに基づいて自分の考えを主張する態度、および、コミ ュニケーション能力の育成を継続する。 ② リベラルアーツ教育 中・高学年においては、その学習内容が大学での学びにつながるような、専門性に 裏付けられた深みや広がりのあるものになっていくべきである。自然科学についての 専門性も深めつつ、多面的な見方や考え方ができることが、真の科学的な思考力を育 む。そのために、文理の垣根を越えた討論型の授業を展開し、議論する力をより伸ば したい。学校設定科目「コロキウム」は、ラテン語の colloquium(談話、会談)に由 来し、討論会やシンポジウムなどを意味する語である。5年生で少人数の必履修科目 として、様々なテーマの講座を開講する予定であり、文化人・シティズンを啓蒙する
単なる教養講座ではなく、広い視野でかつ専門的な科学理解につながるものにしたい。 また、「リベラルアーツ」の視点を各教科の学習でも意識し、学際的・教科横断的 ・統合的な教材を研究、開発する。 以上を通じて、生徒の学習面での高大接続を実現するカリキュラム研究を、本校と 本学の教員が連携して進めていく。 ● 2010年度の実施内容 リベラルアーツ教育の視点を持った数学と理科における授業研究 教科・科目・ 対象者 数学・「総合数学」・5年選択者13名 単元 数えるって難しい 単元目標 数えるという活動が数学的にどのような意味をもつのか理解する とともに、数や量に関する概念の獲得、無限という考え方の理 解、数の発展の理解などを目指す。また、数の発展の裏側にある 歴史的背景や哲学的背景を概観し、現在の社会や生活にどのよう に結びつくのかを俯瞰する。 教科・科目・ 対象者 理科・自然探究Ⅱ(化学分野)・4年 単元 物質量 単元目標 物理量の一つである物質量を学び、物質を物質量という単位で考 えることにより、化学変化を量的に捉えられるようにする。さら に、呼吸中の分子の多さと地球規模の循環を具体的に扱うことに より、個人の活動が地球環境に影響を及ぼすという観点について 考えさせる。 ● 2012年度から実施のコロキウム 学校設定科目「コロキウム」の枠組み等について決定した。 ・理念 ① 21世紀に求められるCitizenship(市民的素養)形成支援の教育 ② 真の意味での高大接続“学問の根底にある精神”を中等教育において学ぶ ③ 文理の垣根を越えた対話(双方向)型の授業 ・形態と評価 5年必履修2単位として、8講座程度を開講する。 ポートフォリオや表現活動等により評価するとともに、学んだことの意味を考え させることを重視する。 ③ サイエンス研究会の活動 第Ⅰ期SSH以来、理数に興味・関心のある生徒による「サイエンス研究会」を組織 し、課外活動において生徒が数学・理科・科学技術に関する特色ある研究を進められ るように指導・助言を行ってきた。現在は、物理班・化学班・生物班・地学班・数学 班に分かれ、研究テーマ別に活動している。「サイエンス研究会」での研究成果は、 理数系コンテストや学会で、引き続き発表する予定である。 サイエンス研究会で学習・研究を進めてきた生徒には、「テーマ研究」を履修して 本校教員や大学教員・研究者とゼミ形式で研究を進めるように指導する。このサイエ ンス研究会の指導を通じて、理数の才能をより伸張させるための指導方法の研究を行
い、明確化することによって、理数教育における才能教育への提言を行う。 また、理数に興味のある生徒だけではなく、全生徒に科学の楽しさ、面白さ、重要 さを伝えられるように、次のような活動を行う。 ○サイエンスミーティングの実施 サイエンス研究会の活動を多くの生徒と共有するために、全生徒を対象にサイエ ンスミーティングを実施する。例えば、サイエンス研究会のいくつかのチームが、サ イエンス研究会以外の低学年の生徒向けに、実験講座などを数回開催する。このこと で、一般的な生徒の科学への興味関心を高め、科学的素養を育む基礎となることを目 指す。 ○サイエンス夏の学校の実施 1年生、2年生の希望者を対象に「サイエンス夏の学校」を実施する。これによっ て、科学的リテラシーの基礎・基本をより確実なものにできると考える。具体的な内 容としては、次のようになる。 ・自然体験、数学の基本的問題の探究、天体観測などを行う。 ・半日程度じっくりと時間をかけて観察・実験を行い、その結果についてデータ解 析を行う。 ○小学校・幼稚園の「かがくのひろば」の実施 小学校・幼稚園(本学附属小・幼を含む)を対象に、科学の面白さをわかりやすく伝 える「かがくのひろば」を実施する。サイエンス研究会の生徒が「かがくのひろば」 を主催することは、生徒たちがより科学を理解することができ、科学の素晴らしさを 伝える面白さを体験できる、意義あるプログラムだと考える。 ●2010年度の実施内容 裾野を広げる取組として、サイエンスミーティングを実施した。その結果 、 たくさんの1年生がサイエンス研究会に入り、活発に活動している。 実施日 タイトル 内容 参加者 4月30日 (金) 放課後 サイエンス研 究 会 の1 年 間 の取り組みの 紹介 サイエンス研究会の2年生(10名)が、1年生 に対し、サイエンス研究会の1年間の取り 組みを紹介した。6つのグループがPower Pointや演示実験などの工夫を凝らして発 表した。 1年生20名 5月26日 (水) 放課後 サイエンス研 究会入会に向 けて サイエンス研究会の顧問が、①サイエンス 研究会の研究内容の紹介、②サイエンス研 究会入会の流れ、③サイエンス研究会各班 の紹介を行った。 1年生10名 また、裾野を広げる取組として、今年も「サイエンス夏の学校」を実施した。 実施日 講師 内容 場所 参加者, 引率 7月27日 (火)~7 月29日 (木) 宮崎勝巳 臨 海 実 習 、 地 質 観 察 、 ウ ニ の 発 生 実 験 、 水 族 館 の 見 学 京都大学フィールド科学教育 研究センター瀬戸臨海実験所 和歌山県西牟婁郡白浜町周辺 1年生27名 2年生11名 教員4名 TA2名 看護師1名
④ 国際交流 ④-1 ASPnetを活用した取り組み 多文化圏の学校との研究交流は、研究内容面での「学びあう関係」の構築にとどま らず、異なる見方・考え方に触れる絶好の機会であり、自分たちの「常識」を見直す ことで「発見する力」の伸張につながる。また言葉の問題は「障壁」にもなるが、逆 に、生徒たちのコミュニケーション能力を鍛えるよい機会となるととらえ、積極的に 国際交流を導入していく。英語科・社会科・国際交流委員会とも連携し、学校全体の 組織的な支援体制を構築しつつ、交流プログラムを位置づけ、実施する。 ・理数教育先進校の教員や生徒の訪問を受け入れ、授業を公開し、研究成果を発表し て議論することにより、理数教育の双方の課題について研究交流を行う
・ISSS(International Salon of Super Science student:アイトリプルエス)を中心に、 海外先進校に出向き、議論や共同研究、研究交流を行う ・海外先進校で生徒の研究指導を行っている教員へのインタビュー等により「発見す る力」を伸ばす指導法を探る ・ビデオ会議システムを利用して、先進校・大学・研究機関と本校生徒の研究交流を 行う。 ④-2 コミュニケーション能力の育成 ・英語科との連携を強め、英語で表現したり議論したりできる力を、長期的・段階的 に身につけられるようなプログラムを研究する ・奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)と連携する「奈良SSHコンソーシアム」の各 種講座の活用により、英語プレゼンテーション能力の育成プログラムを研究する ・前期課程生(中学生)も視野に入れた、英語によるプレゼンテーション能力の育成講 座を実施する。JSTの派遣授業や本学の教員の授業、大学のE-learningなども視野 に入れ、英語に触れる機会を増やすような方策を研究する ⑤ 大学・研究所との連携・高大接続 ⑤-1 「サイエンス基礎講座」の実施 生徒・保護者の希望者を対象として、自然科学リテラシーを育成していく上での基 本的な素養に関する講義を開講する。内容によっては、学年を指定して生徒全員が受 講する場合もある。例えば、考古学などの文科系と思われる学問においても、理数系 の学力が必要であることが実感できるような講義などにより、人文社会科学と自然科 学が有機的に絡み合いながら研究が進んでいることを実感させる。 このことにより、理数嫌いの生徒に対して自然科学への理解を促し、理数が得意な 生徒には文理融合の実態を理解させることで、学問の世界の素晴らしさを感じさせる ことができると考える。 ●2010年度の実施内容 実施日 タイトル 講師 大学等 対象 実施場所 6月19日 (土) 自 然 科 学 か ら 解 明 す る “ イ ネ と 稲 作の歴史” 佐藤洋一郎 総合地球環境学研 究所 (副所長・教授) 全学年の希望 者 保護者の希望 者 本校多目 的ホール 10月15 日 (金) 素 数 ゼ ミ の 秘密!? 吉村仁 静岡大学創造科学 技術大学院(教授) 1~3年生全員 保護者の希望 者 本学講堂
⑤-2 「サイエンス先端講座」の実施 科学の最先端の内容の講義を、大学教員・研究者を講師として開講する。中等教育 段階において、先端的科学に興味をもたせ、理解させるのに有効な講義内容、運営方 法を研究開発する。 ●2010年度の実施内容 実施日 タイトル 講師 大学等 対象 実施場所 7月16日 (土) 宇 宙 と 素 粒 子 野口誠之 奈良女子大学学長 全学年の希望 者 保護者の希望 者 本 校 多 目 的ホール 2月5日 (土) 遺 伝 子 ・ 脳 ・ こ こ ろ : 遺 伝 子 改 変 マ ウ ス を 用 いた研究 宮川 剛 藤 田 保 健 衛 生 大 学(教授) 全学年の希望 者 保護者の希望 者 本 校 多 目 的ホール ⑤-3 大学・研究所との幅広い連携・接続 本研究開発を進めるには、さらに大学・研究所との連携が不可欠であり、以下の大 学・研究所とは、引き続き連携を計画している。 奈良女子大学 京都大学(化学研究所・生存圏研究所・エネルギー理工学研究所・防災研究所) 同志社大学(理工学部)・同志社女子大学(薬学部) ATR(国際電気通信基礎技術研究所)、NAIST(奈良先端科学技術大学院大学) ⑤-4 高大接続 リベラルアーツ教育を推進するために開講を予定している学校設定科目「コロキウ ム」において、学習面での高大接続を実現するためのカリキュラム研究を、本学教員 および他大学の教員と連携して行う。さらに、大学教員が「コロキウム」において本 校生徒の指導を行うことで、高大接続におけるキーポイントを探り、本校教員と協働 してカリキュラム開発を行う。 将来的には、「コロキウム」等を通じて中等教育の生徒たちを指導・観察し、その 結果で大学に入学できるような接続入試も視野に入れて、研究を進める。
⑥ 検証・評価 1年生~3年生において、自然科学リテラシーがどれくらい生徒に身についたかは、 本校が独自に作成した「リテラシー測定テスト」(科学的リテラシーについては新た にPISA2006年実施調査問題を利用する)を用いて、3年次修了生徒を対象に4年生の10 月に調査を行う。 その調査結果をPISAの国際結果も参考にしながら、分析・考察することで、検証 ・評価する。また、このテストで測ることの難しいコミュニケーションの力、テクノ ロジーや実験器具などのツールを活用する力等についての検証・評価方法を研究する。 4年生~6年生においては、各種プログラムの受講者等に対するインタビュー・アン ケート調査・自己評価・ポートフォリオなどで、理数に関して上位の生徒たちが、後 期課程においてどれくらい能力を伸ばしたかを検証・評価する。 成績の上位、中位、下位より生徒を抽出し、継続してインタビューをすることによ り、リテラシー、リベラルアーツ教育の成果を検証する。また、インタビューの質問 内容を大学とともに開発することで、インタビュー形式の評価方法の研究を進める。 平成24年度から、5年生については「コロキウム」についてのポートフォリオ・ア ンケート調査・インタビューを行って、リベラルアーツ教育の効果を検証・評価する。 県内の学校と研究発表会や授業研究会、研究交流を実施することで、本校で開発し たSSHカリキュラムと指導方法を実践的に検証・評価し、より良いカリキュラムの開 発を目指す。このことを通じて、本校教員の力量を高めることができ、生徒の自然科 学リテラシーの能力をより伸ばすことができる。 (3)必要となる教育課程の特例等 ① 学校設定科目「コロキウム」 ①-1 設置理由 構想している内容に合致した教科・科目が既存の教科・科目に存在しないため。 ①-2 設置教科・科目名 教科横断型科目「コロキウム」 ①-3 目標 文理の枠に捉われない、専門性に裏付けられた深みや広がりのある様々なテーマ について、対話(双方向)型授業展開による少人数講座(ゼミ形式)を開設することによ り、リベラルアーツ教育を推進させる。 ①-4 内容 少人数の必履修科目として、各教科から専門性を背景に持ちつつも、従来の教科 の枠組みにとらわれない様々なテーマの講座を開講し、事象のとらえ方や考え方な ど「科学」に対する知見を深める。 ①-5 履修学年・単位数 5年生の必履修で、2単位 ①-6 指導方法 本校教員が中心となり、適宜、大学教員・大学院生・研究者の協力を得る。講義 だけでなく、実習やディスカッション、レポートを重視した指導を行う。 ② 総合学習「テーマ研究」 サイエンス研究会に所属する4、5、6年生の生徒が選択履修でき、各学年で1単位 を認定する。生徒は自分でテーマを設定し、本校教員や大学教員・研究者の指導を 受けながらテーマを深め、ゼミ形式で研究を進める。
6 研究計画・評価計画 第二年次以降の研究計画・評価計画は、重点的に研究・評価する項目についてのみ 書き、その年度以前と同様の研究を継続する場合については省略する。 (1)第一年次(平成22年度) ① 研究計画 ①-1 自然科学リテラシーの育成 数学的リテラシーでは、PISAの数学化サイクルを基にした課題学習を中心に授 業開発を進め、教材として研究してきた成果をまとめる。1・2年生では新しいカリ キュラムにおいて、指導方法の研究と実践を行う。 科学的リテラシーでは、学習する科学的知識・概念が、どのような状況や文脈 と関わるのかをワークシート群に明示し教材をまとめ、その実践をする。 ①-2 リベラルアーツ教育 教育課程委員会のリーダーシップのもとで、学校設定科目「コロキウム」の枠組 みを全教科で協議し作成する。 各教科でリベラルアーツ教育の観点から、学際的・教科横断的・統合的な教材を 研究、開発する。特に数学科では、自然現象や社会現象と数学とのつながりを十分 に認識させ、数学が現実世界を解析する言語であるという認識で、教材開発、指導 法の研究開発を行う。理科においては、学習内容が日常生活や科学・技術とどのよ うに関わり、また、地球環境にどのような影響を及ぼすかという観点で具体的に考 えさせる指導をすることによって、リベラルアーツ教育を推進する。 数学科・国語科・情報科で協議し、情報リテラシー育成の視点からプログラムの 開発を行う。 ①-3 サイエンス研究会の活動 「サイエンス研究会」での研究成果は、理数系コンテストや学会で引き続き発表 していく。 サイエンス研究会で学習・研究を進めてきた生徒には、「テーマ研究」を履修し て本校教員や大学教員・研究者とゼミ形式で研究を進めるように指導する。 研究テーマ別に分かれた、物理班・化学班・生物班・地学班・数学班の、それぞ れの活動への支援体制を強化し、第Ⅰ期SSH以来の成果と課題を踏まえた指導を行 う。大学教員とも連携しながら、指導方法をさらに研究していく。 ①-4 国際交流 現在交流のある、台湾の高瞻計画(台湾版SSH)指定校の高雄女子高級中学、また は韓国の忠南科学高校などを訪問し、研究した内容のプレゼンテーションや議論、 実験を含んだ共同研究・研究交流を5日間程度行う。 このための基礎準備として、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)外国人英語教 員による、科学英語の講座を集中講義的に開講し、英語でのプレゼンテーションや 議論を行える力を育成する。 ビデオ会議システムを利用して、先進校・大学・研究機関と本校生徒の研究交流 を行い、ISSSやASTY Camp、SCoPEで実施する共同研究や研究交流の素地をつ くる。 SSH海外交流プログラムを援助し、かつ実施運営する体制づくりを、国際交流委 員会・研究部・英語科・SSH専門部会が連携をとりつつ検討し具体化する。 ①-5 高大接続 「サイエンス基礎講座」、「サイエンス先端講座」については、大学教員・研究者 と連携して、実施する。 本学および京都大学宇治キャンパス、NAISTとは従来からの連携をさらに深め、
研究室訪問や大学教員による指導の機会を増やしていくよう企画する。サイエンス 研究会の各研究班の活動においては、大学教員からの個別指導・助言を積極的に仰 ぎ、研究内容の高大接続を実現する。 本学との高大連携特別プログラムに関する研究を進める。 ② 評価計画 ②-1 内部評価 自然科学リテラシーについては、通常の授業における評価、定期考査による評価、 レポートの評価、自己評価を中心に、目標が達成できたかどうかを検証・評価する。 また、数学的リテラシー・科学的リテラシーのそれぞれについて、引き続き4年 生全員を対象に本校独自の「リテラシー測定テスト」を実施し、PISA調査の結果 との比較や経年のデータと比較検証することで評価する。 ②-2 外部評価 SSH運営指導委員会を年間2回開催し、運営指導委員による評価を受ける。 また、保護者、学校評議員による評価を行う。 ③ 平成22年度研究実績 ③-1 自然科学リテラシーの育成 数学的リテラシーの育成では、2,3年生の「幾何」を中心に作図ツールを活用した 発見型の幾何学習を実施している。また3年生の「解析」ではグラフ電卓を活用した 実験型の関数学習を実施している。数学的リテラシーに関する研究をさらに進め、 数学的リテラシーを育成する教材開発と授業研究を実践し、その成果を学会や研究 会で発表した。 科学的リテラシーの育成では、科学的プロセスを重視した学習内容と指導方法に ついて研究した。特に1年生では、ティーチングアシスタント(TA)と実験および指 導方法の研究、実践を行った。後期課程生では、通常の授業や実験における課題研 究的要素を持った指導方法の研究・実践を行った。 ③-2 リベラルアーツ教育 教育課程委員会のリーダーシップのもとで、学校設定科目「コロキウム」の枠組 みを全教員で協議し作成した。 また、数学、理科の通常授業において、リベラルアーツ教育を目指した研究授業 を実施した。 ③-3 サイエンス研究会の活動 サイエンス研究会の研究成果を発表する場として、6月の校内研究発表会、7月の 奈良高校との合同研究発表会、9月の学園祭での展示・発表、2月の公開研究会での ポスター発表会を設定した。また、北九州のコンソーシアムへの参加や韓国ISSS を実施し、プレゼンテーションを重視した科学的リテラシーの育成を研究した。 サイエンス研究会で学習・研究を進めてきた生徒は、「テーマ研究」を履修し本 校教員や大学教員等とゼミ形式で研究を進めた。研究成果は理数系コンテストや学 会で発表を行った。 裾野を広げる取組として、サイエンス夏の学校を今年度も実施した。また、 サイエンス研究会の2年生が主催して、1年生に活動を紹介するサイエンスミ ーティングを実施した。その結果、1、2年生の活動が活発になっている。 ③-4 国際交流 ISSSやASTY Campで実施する共同研究や研究交流の基礎準備として、奈良先端 科学技術大学院大学(NAIST)外国人英語教員による、科学英語の講座を集中講義的 に開講し、英語でのプレゼンテーションや議論を行える力を育成した。
国際交流委員会・研究部・英語科・SSH専門部会が連携をとって、SSH海外交 流プログラムを運営する体制づくりを行った。 ③-5 高大接続 第一線で活躍している研究者による「サイエンス基礎講座」を2回実施した。ま た、最先端の研究を紹介する「サイエンス先端講座」を2回実施した。いずれも大 学や研究所の研究者による最先端の研究に触れることができた。 1,2年生の希望者には「奈良女子大学研究室訪問」を実施し、また6年生で希望す る生徒には「京都大学宇治キャンパス研究室訪問」を実施して、中等教育学校のそ れぞれの段階において理数への興味・関心を持たせ、学習への動機づけを行った。 5年生での進路を考えるキャリアガイダンスでも、同志社大学理工学部との連携で 研究室訪問をした。 サイエンス研究会の活動およびサイエンス研究会の発表会やASTY Campにおい て、大学教員、研究者から個別指導・助言を得、研究内容の高大接続を深めること ができた。 (2)第二年次(平成23年度) ① 研究計画 ①-1 自然科学リテラシーの育成 数学的リテラシーの育成では、テクノロジーを利用して、事象を具体的に考察す ることのできる教材開発を行い、ワークシートやテキスト(冊子)の形でまとめる。 科学的リテラシーの育成では、学習指導要領の改訂に対応する教材の開発を行う。 また、授業プリントや配布資料等をデジタル化して蓄積し、実践資料集作成の準備 をする。 生徒へのアンケートやインタビューなども実施しながら、カリキュラムの検証・ 評価についても研究を進める。 ①-2 リベラルアーツの育成 ワーキンググループをつくって定期的に研修会を開き、大学教員とも連携して学 校設定科目「コロキウム」の具体的な講座内容および評価について研究開発を行う。 数学、理科の通常授業において、リベラルアーツ教育を推進するための授業研究 を行う。 ①-3 国際交流 海外先進校で生徒の研究指導を行っている教員へのインタビュー等により「発見 する力」を伸ばす指導法を探る。 国際交流委員会のリーダーシップのもと、特に英語科との連携により、英語で表 現したり議論したりできる力を、長期的・段階的に身につけられるようなプログラ ムを計画する。英語によるプレゼンテーション能力の育成講座を実施する。 ② 評価計画 ②-1 内部評価 第一年次の研究に加えて、生徒からの評価、本校教員・大学教員による評価を行 い、内部評価の方法について研究を深める。 自然科学リテラシー(数学的リテラシー、科学的リテラシー)については、通過基 準を設け、引き続き4年生を対象に「リテラシー測定テスト」を実施してデータを 蓄積し、経年のデータと比較することで生徒全体のリテラシーの習熟度を評価する。 この際、科学的リテラシーについては新たにPISA2006年実施調査問題を利用する。 テストでは測ることの難しいコミュニケーションの力、テクノロジーや実験器具
などのツールの活用する力等や、生徒個人のリテラシーの習熟度、また、リベラル アーツ教育の成果については、成績の上位、中位、下位より生徒を抽出し、継続し てインタビューをすることにより検証する。この際、インタビューの質問内容を大 学とともに開発することで、インタビュー形式の評価方法の研究を進める。 ②-2 外部評価 SSH運営指導委員会を年間2回開催し、運営指導委員による評価を受ける。 また、保護者、学校評議員による評価を実施しつつ、外部評価のあり方の研究を 続ける。 (3)第三年次(平成24年度) ① 研究計画 ①-1 自然科学リテラシーの育成 数学的リテラシーの育成では授業において、グループ学習やコミュニケーション (議論)、プレゼンテーション(表現)の能力を引き出せるような方法を研究する。ま た、教材として蓄積した成果を冊子の形でまとめ、発行する。 理科においても、探究型・課題研究型の学習の資料として、教材集あるいは副読 本を作成し発行する。 ① -2 リベラルアーツ教育 学校設定科目「コロキウム」を開講する。実践しながら、開発した教材を検討し、 引き続き大学教員と連携して教材開発を行う。 ② 評価計画 ②-1 内部評価 「リテラシー測定テスト」で蓄積したデータを基にして、「自然科学的リテラシ ー」について、経年の推移を分析することにより、実施内容の検証・評価を行う。 4年生~6年生においては、各種プログラムの受講者等に対するアンケート調査・ インタビュー・自己評価などで、特に理数に関して上位の生徒たちが、後期課程に おいてどれくらい能力を伸ばしたかを検証・評価する。 5年生については「コロキウム」についてのポートフォリオ・調査・インタビュ ーを行って、リベラルアーツ教育の効果を検証・評価する。 ②-2 外部評価 他のSSH実践校と研究交流を行う。 本校公開研究会において、3年間のSSH実践を公開し、外部の評価を受けるとと もに、学会等で報告する。 (4)第四年次(平成25年度) ① 研究計画 ①-1 リベラルアーツ教育 学校設定科目「コロキウム」の一年間の実践を踏まえ、開発したカリキュラムの 検証・評価に基づいて、さらなる授業方法・指導方法の改善を行う。 ①-2 サイエンス研究会の活動 中等教育6年間の継続性を生かした「サイエンス研究会」の活動報告を、発足時 から振り返ってまとめ、粘り強い長期的な研究の姿勢により、科学的思考力・ プレゼンテーション能力・議論する力を育成することができた成果を発行・ 発信する。 ② 評価計画 ②-1 内部評価
「リテラシー測定テスト」で蓄積したデータを基にして、「自然科学リテラシ ー」について、経年の推移を分析することにより、実施内容の検証・評価を行う。 4年生~6年生においては、各種プログラムの受講者等に対するアンケート調査・ インタビュー・自己評価・ポートフォリオなどで、特に理数に関して上位の生徒た ちが、後期課程においてどれくらい能力を伸ばしたかを検証・評価する。 5年生については「コロキウム」についてのポートフォリオ・調査・インタビュ ーを行って、リベラルアーツ教育の効果を検証・評価する。 ②-2 外部評価 県内の学校と研究発表会や授業研究会、研究交流を実施することにより、本校で 開発したSSHカリキュラムと指導方法を実践的に検証・評価する。 (5)第五年次(平成26年度) カリキュラムの検証・評価を行い、本研究開発のまとめとする。 それを基に、本校の「自然科学リテラシー」、「リベラルアーツ教育」に関するカ リキュラム・指導方法の提言を行う。 7 研究組織の概要 (1)各組織の役割 ① SSH運営指導委員会 SSH運営指導委員会は、専門的見地からSSH全体について指導、助言、評価を行 う。大学教員・研究者・学識経験者・行政機関の職員等で組織する。 ② 学校長・副校長・校内教頭 校長・副校長・校内教頭は、SSH運営指導委員会、奈良女子大学をはじめとする大 学・研究機関と連携しながら、SSHの全般的な運営を行う。 ③ 本学事務局・本校事務室 本学事務局(総務・企画課及び財務課)と本校事務室は、副校長・校内教頭と連携し ながら、SSHの経理処理を行う。 ④ SSH専門部会 「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「リベラルアーツ教育」「サイエンス 研究会」「国際交流」「高大接続」の各部門で構成し、それぞれの部門の研究を推進 する。本校数学科・理科の教員を中心に、人文社会科学系の教員も含めて構成し、連 携しながら研究を行う。 ⑤ 理数会議 本校理科、数学科教員で構成し、SSH事業や研究開発について協議し、サイエンス 研究会の情報交換をする。SSH専門部会の協議事項を、運営、実行する。 ⑥ 教育課程委員会 教育課程委員会は、SSH専門部会をはじめ関係部署と連携しつつ、特にSSHの研 究面・カリキュラム面での全体的な計画・立案・運営に提言・支援を行う。 ⑦ 国際交流委員会 国際交流委員会は、SSH専門部会をはじめ関係部署と連携しつつ、特にSSHの国 際交流事業での全体的な計画・立案・運営に提言・支援を行う。 ⑧ 研究部 研究部は、SSH専門部会・教育課程委員会・国際交流委員会をはじめ関係部署の指 示のもと、特にSSHの個別的な事業の計画・立案・運営に協力する。
(3)SSH運営指導委員会(予定) 氏名 所属 職名 備考(専門分野等) 重松 敬一 奈良教育大学 教授 数学教育 三村 徹郎 神戸大学 教授 植物生理学 森本 弘一 奈良教育大学 教授 理科教育 八尾 誠 京都大学 教授 不規則系物理学 山極 寿一 京都大学 教授 人類進化論 本多 進 和光純薬工業(株)ゲノム研究所 所長 植村 哲行 奈良県教育委員会事務局 指導主事 理科教育 富崎 松代 奈良女子大学 理事・副学長 確率論 植野 洋志 奈良女子大学 教授 応用生物化学 西村 拓生 奈良女子大学 教授 教育学 野口 哲子 奈良女子大学 教授 細胞生物学 松田 覚 奈良女子大学 教授 食健康学 宮林 謙吉 奈良女子大学 准教授 高エネルギー物理学 山下 靖 奈良女子大学 教授 数理情報学 (4)SSH研究部門と研究担当者(予定) 部門 氏名 所属 教科 [全体]SSH研究主任 米田 隆恒 附属中等教育学校 理科 [1] 数学的リテラシー 中澤 隆志 附属中等教育学校 数学 [2] 科学的リテラシー 矢野 幸洋 附属中等教育学校 理科 [3] リベラルアーツ教育 櫻井 昭 附属中等教育学校 理科 [4] サイエンス研究会 川口 慎二 附属中等教育学校 数学 [5] 国際交流 藤野 智美 櫻井 昭 塩川 史 附属中等教育学校 附属中等教育学校 附属中等教育学校 理科 理科 英語科 [6] 高大接続 横 弥直浩 附属中等教育学校 数学