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着氷雪送電線部分模型の風洞内ギャロッピング再現実験

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Academic year: 2022

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着氷雪送電線部分模型の風洞内ギャロッピング再現実験

電力中央研究所 正会員  清水幹夫*1 東京大学大学院 正会員  石原 孟*2 東京大学大学院 学生会員 ファバンフック*2

1. はじめに

 風を受ける矩形柱等の自励振動現象はギャロッピング と称され,その発生メカニズムや振動性状については,

主に矩形断面について数多くの研究がなされてきた[1].

一方,着氷雪した送電線の風による自励振動現象もギャ ロッピングと呼ばれているが,これまで,①電線に作用 する風速,②着氷雪の形状と空力特性,③電線の応答,な どのデータが一貫して得られた例[2]は極めて少なく,そ の挙動分析は,上記矩形柱等の例に比較して,未だ不十 分と思われる.こうした背景の下,筆者らは,着氷雪 4 導体および単導体の部分模型を対象とした風洞実験によ り,一様流中でギャロッピングを再現し,上記①〜③の データを取得するとともに,振動特性の把握を試みた.

2. 実験方法

 実験には,東京大学の全径間風洞を用いた.実験対象 の模型は,これまでに実施した三分力天秤実験および大 振幅回転加振実験[3]と同様,着氷雪 4 導体および単導体 の部分模型とした.これらの諸元を表 1,着氷雪形状を 図 1 に示す.各部分模型 4-1.00D および 1-1.00D は,図 2,

3 に示すように 4 本のワイヤーを用いて風洞内に架設し た.図のように,振動系の風上側に風速測定用のピトー 管を設置し,模型の端板には,変位計測のターゲットと なるマーカー2箇所を貼付けた.また,図に示すワイヤー の絞りは,系のねじり(模型軸回りの回転)方向の剛性 を調整する措置であり,本文には,絞りの位置でワイ ヤーの間隔を0とした場合の結果を示す.なお,ワイヤー 1 本当りの張力は,絞りなしの状態で 58.8N に調整した.

 風速は,先ず5m/sとし,次に7〜10m/sまで1m/sステッ プで増加させ,以降,15m/s まで 0.5m/s ステップで増加 させた後,同様のステップで 7m/s まで減少させた.変位 の計測はカラートラッカーにより,各風速ステップごと に,ピトー管のモニター出力が安定した値を示すのを 待って,サンプリングタイム 1/30 秒で 120 秒間行った.

3. 実験結果と考察

3.1 風速と最大振幅との関係

 測定結果として,風速と鉛直方向およびねじり角の最 大振幅との関係を,各部分模型について図 4,5 に示す.

図より,いずれの部分模型についても,ある風速を境に 最大振幅が 0 に近い値から急激に増加し,ギャロッピン グの発生が確認できる.また,風速が低下する過程で,最

大振幅が 0 に近い値に戻り,ギャロッピングが止まるこ とがわかる.図中には,風速の増減方向を矢印で示した.

表 2 には,ギャロッピングが発生する風速,およびこれ が止まる 1 ステップ前の風速を示す.図 4,5 と表 2 より,

ギャロッピングが発生する風速を,止まる風速が下回る,

ヒステリシスの存在が認められる.

3.2 ギャロッピングの発生過程の解明

 本研究では,部分模型 4-1.00D の架設時,風速 11.5m/s においてギャロッピングの発生からリミットサイクルに 至る過渡応答が,図6のとおり測定された.以下では,こ の結果と既往のギャロッピングの発生条件との関係に基 づき,発生過程について考察する.

 既往のギャロッピングの発生条件としては,準定常理 論に基づく,Den Hartog の条件式[4]が挙げられる.

dC

L

/ dθ + C

D

< 0

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (1)

ここに,

C

D:抗力係数,

C

L:揚力係数,

θ

:迎え角である.

4-1.00D の

C

D

C

Lおよび空力モーメント係数

C

Mは図 7 に 示すとおりであり[3],図中の

C

D,CLが式(1)を満足する 迎え角の範囲は,以下のとおりとなる(単位:度).

12 < θ < 20, 64 < θ < 76, 172 < θ < 176

‥‥ (2)  一方,図 6(b)のねじり角の時刻歴に対し,過渡応答の 時間帯を拡大して示せば,図8となる.図8において,ギャ ロッピングの発生の瞬間,すなわち過渡応答の第一波の 振幅は 10 〜 20 度の間となっており,式(2)の迎え角の範 囲内にあることがわかる.なお,風向は水平であること から,模型のねじり角は着氷雪の迎え角と等価といえる.

 以上のことから,本研究の条件下では,模型のねじり 角が増加し,着氷雪の迎え角が Den Hartog のギャロッピ ングの条件式[4]を満たした段階で,ギャロッピングが発 生したことが検証された.

4. まとめ

 本研究により,空力特性が明らかな 4 導体および単導 体部分模型のギャロッピング挙動が,一貫性のある風速 および応答変位データとして測定された.また,本研究 の実験条件下におけるギャロッピングについては,着氷 雪の迎え角がDen Hartogの条件式を満たした段階で発生 し,発生風速は,風速の増加過程と減少過程との間で異 なるヒステリシスを示すことが判明した.

謝辞

 本研究の風洞実験の実施については,九州工業大学工 キーワード:ギャロッピング,風洞実験,送電線,4 導体,着氷雪,空力特性

*1 〒 270-1194 千葉県我孫子市我孫子 1646 TEL 070-5877-5534 FAX 04-7183-2962

*2 〒 113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1 TEL 03-5841-6096 FAX 03-5841-7454 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-667- 1-335

(2)

6.0m 1.27m 6.0m

2.7m 0.86m

0.24m

a b

ワイヤー 部分模型 絞り

支持点

↓ジグ

0 10 20 30 40 50 60 70

4 6 8 10 12 14 16

鉛直方向:最大振幅(cm)

風速(m/s)

0 20 40 60 80 100 120

4 6 8 10 12 14 16

ねじり角:最大振幅(deg)

風速(m/s)

0 10 20 30 40 50 60 70

4 6 8 10 12 14 16

鉛直方向:最大振幅(cm)

風速(m/s)

0 20 40 60 80 100 120

4 6 8 10 12 14 16

ねじり角:最大振幅(deg)

風速(m/s)

-10 -5 0 5 10 15 20 25 30

0 20 40 60 80 100 120

鉛直変位(cm)

 時刻(秒)

-90 -60 -30 0 30 60 90

0 20 40 60 80 100 120

ねじり角(deg)

 時刻(秒)

2 19

11.5°

23.5 1.9 38

11.50°

9.8 R5

1

18.6

着氷雪高さ

学部建設社会工学科の木村吉郎先生にご指導,多大なご助力 を頂きました.ここに心から感謝の意を表します.

参考文献

[1]例えば,Parkinson, G. V. : Aeroelastic Galloping in one Degree of Freedom, Proc. Int. Conf. Wind Effects on Buildings and Structures (Teddington), Her Majesty's Stationary Office, 1963.

[2]井上学,木村吉郎,藤野陽三,雪野昭實,井上浩男:着 氷 4 導体送電線に作用する動的空気力の特性に関する一 考察,土木学会第54回年次学術講演概要集第1部,pp. 742- 743,1999.

[3]清水幹夫,石原孟,ファバンフック:風洞実験による着 氷雪送電線の定常および非定常空力特性に関する研究,

第 18 回風工学シンポジウム論文集,pp. 245-250,2004.

[4]Den Hartog, J. P. : Mechanical Vibrations, McGraw-Hill, 1956.

表 1 試験体の諸元

図 1 着氷雪形状:4-1.00D の導体部断面図 注:

・単位:mm

・1-1.00Dと相似形

図 2 部分模型とワイヤーによる振動系の構成 図 3 部分模型の架設状況

←ピトー管 ジグ→

↑マーカー

名称 導体数 導体長(mm) 導体外形(mm) 質量(g) 4-1.00D 4 1270 19 4325 1-1.00D 1 1270 30 3647

図 4 4-1.00D 測定結果:風速と鉛直方向・ねじり角の最大振幅の関係

図 5 1-1.00D 測定結果:風速と鉛直方向・ねじり角の最大振幅の関係

(a)鉛直方向  (b)ねじり角

(a)鉛直方向  (b)ねじり角

図 6 鉛直変位・ねじり角の時刻歴:4-1.00D,風速 11.5m/s

(a)鉛直変位  (b)ねじり角

-20 -10 0 10 20 30

15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

ねじり角(deg)

 時刻(秒)

図 8 ギャロッピング発生時のねじり角 注:

図 6(b)の時刻 15 〜 25 秒 を拡大したもの.

図 7 4-1.00D の空力特性 表 2 ギャロッピング発生ステップと

止まる 1 ステップ前の風速

試験体 発生ステップ 止まる1 ステップ前 4-1.00D 11.5m/s 10.0m/s 1-1.00D 14.0m/s 12.0m/s

  ←部分模型

(a, b) = (38 cm, 74cm):4-1.00D (50 cm, 80cm):1-1.00D 注:a は導体の床上高さ,4-1.00D の場合

は下側に位置する導体が対象.

(=導体外径)

-8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

CD, CL CM

迎え角(度)

CD:抗力係数

CL:揚力係数

CM:空力モーメント係数

土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-668- 1-335

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