論文 USD590 クラスを主筋に用いカットオフした RC 梁に関する研究
堀田 和史*1・丸田 誠*2・永井 覚*3・池沼 良章*4
要旨:USD590級の高強度主筋と普通強度コンクリートを組み合わせた場合の研究は少なく,施工合理化上必
要な2段筋をカットオフした場合の構造性能を把握するため,今回実験を行った。実験因子はカットオフの 有無と長さ,コンクリート設計基準強度(21,36N/mm2),横補強筋間隔と量を変化させた。実験結果から,
曲げに関して,最大強度はAIJ略算式,ACI式で評価できた。カットオフ長さL/4+15db (L:梁長さ,db:
鉄筋公称径)では既往の強度評価式でも良好に評価できたが,カットオフ長さをL/6+d(d:有効せい)とし た場合は定着長さが足りず,既往の強度評価式で良好に評価できなく,変形能も通し配筋の場合より劣った。
キーワード:高強度鉄筋,USD590,カットオフ主筋,最大強度
1. はじめに
近年,鉄筋コンクリート(以
下 RC)造建物の高層化や合理
化などに伴い,使用する鉄筋や コンクリートも高強度化する傾 向にある。高層RC建物では降 伏点が 590~685N/mm2の高強 度鉄筋が実際の工事で利用され るようになってきた。しかし,
JIS G 3112-1987(鉄筋コンクリ ート用棒鋼) ,日本建築学会 2010 年版鉄筋コンクリート構 造計算規準・同解説(以下、RC 規準 1))に降伏点が 490N/mm2 を超えるような高強度鉄筋は規
定されていない。そのため,一般的なRC建築物には
SD390以下(一部SD490)が用いられている。筆者ら
は,USD590 を主筋に用い普通強度コンクリートと組 み合わせた梁実験を行い,その復元力特性を検討した。
文献2),3)。
多段配筋を行う場合,通常2段筋はカットオフし継 手箇所を減らす等の工夫がなされる。SD590を用いた 場合でも2段筋をカットオフした梁の構造性能の検証 は重要となる 。そこで,2 段筋をカット オフした
USD590 主筋と普通強度コンクリートを組み合わせた
5体の梁実験を行ったのでここに報告する。
2. 実験概要 2.1 試験体
RC 規準1)では,2 段筋をカットオフした際の定着長
さ(以下カットオフ長さ)は最大曲げモーメント発生位 置から付着作用による長さに基づき検定することとして いる。一方,配筋指針 4)では一律にカットオフ長さは L/4+15db(L:梁長さ,db:鉄筋公称径)として示され ている。西村,市之瀬ら5)は付着及びカットオフを有す る梁の実験を元に,付着強度の提案式からカットオフ筋 が曲げ計算上不要となる断面について示している。今回,
この文献 5)の付着強度式にRC 規準の考え方(有効せ
いdを足すこと)から導き出したカットオフ長さを中心 に試験体を設計した。
表-1に試験体一覧,図-1に配筋の一例,図-2に試 験体断面図を示す。試験体は縮尺約1/2の梁部材であり,
破壊形式はAIJ略算式1) と付着割裂強度6)の余裕度から
15-B10,15-B11では曲げ破壊及び曲げ降伏後の付着割裂
破壊,15-B12~14では曲げ破壊と計画した。せん断スパ
*1大成建設株式会社 修(工) (正会員)
*2静岡理工科大学 教授 博 (工) (正会員)
*3有限会社SKサービス 代表取締役 工修 (正会員)
*4東京鉄鋼株式会社 開発部
表―1 試験体一覧
図―1 試験体配筋図の一例(15-B11)
2000
4-D6@35(SD785) 4+4-D16(USD590) カットオフ長さ 740mm
鋼種
(SD785)
間隔
(mm) pw(%) pwσwy (N/mm2)
15-B10 通し配筋
15-B11 L/4+15db=500+240=740mm二段筋カットオフ長さ
15-B12 50 0.84 6.63
15-B13 125 0.34 2.65
15-B14 36 100 0.42 3.80
300×
400 2000 21
1.32
備考 pt(%)
16-D16
12-D16
4-D6
横補強筋
二段筋カットオフ長さ L/6+d=333+344=678mm
35 1.21 9.47
0.99 試験
体名 断面 b×D (mm)
L (mm)
Fc (N/mm2)
主筋
(USD590)
コンクリート工学年次論文集,Vol.39,No.2,2017
ン比M/QDは2.5,主筋にはUSD590級の鉄筋を試験体 共通で使用した。試験体断面b×Dは300mm×400mmを 基本とした。コンクリート強度Fcは21,36N/mm2の2 水準,引張鉄筋比ptは0.99,1.32%の2水準,せん断補 強筋はSD785級でせん断補強筋比pwは0.34,0.42,0.84,
1.21%の4水準と計画した。配筋形式は2段配筋でD16
を6本あるいは8本の2段配筋とした。15-B10は2段筋 も通し配筋で,15-B11~15-B14の2段筋はカットオフし ている。15-B11は配筋指針に倣いL/4+15db とし,15-B12
~14は文献5)の付着強度から計算すると L/6+d(d:有
効梁せい)となり,この長さをカットオフ長さとした。
15-B12,15-B13,15-B14は文献4)の試験体15-B6,15-B7 の比較試験体である。15-B6は15-B12と,15-B7は15-B14 とカットオフ以外は共通である。15-B13は15-B12より
pwを1/2.5減らしており,その他の因子は共通である。
2.2 加力方法
載荷は両端の加力スタブが平行になるように逆対称 曲げモーメントを与え,正負交番繰り返しで行った。制 御は変形制御とし,部材角 R で1.25×10-3[rad.]を正負1 回,2.5,5.0,7.5,10,15,20,40×10-3[rad.]を各2回繰 り返す載荷計画とした。ひび割れ幅の測定はクラックス ケールにより,各サイクルの正負1回目のピーク時と除 荷時について計測した。
3. 実験結果
3.1 破壊性状およびせん断力-部材変形角関係 最終破壊状況を図-4 に示し,全試験体のせん断力
Q-部材変形角R関係を図―5に示す。図-5中の曲げ
終局強度はAIJ略算式1)を用いた。
全ての試験体でR=1.25×10-3rad.で目視による曲げひ び割れを確認した。その後は曲げひび割れから派生し た曲げせん断ひび割れを,R=5.0×10-3rad.で全ての試験 体でせん断 ひび割れ を確認した。曲げ ひび割れ は
R=10×10-3rad.までは残留ひび割れ幅は小さく,除荷時
には比較的ひび割れは閉じていた。通し配筋とカット オフで曲げ・せん断ひび割れ発生タイミングの差は顕 著に見られなかった。
15-B10はR=40×10-3rad.で最大強度334.9kNを記録し 典型的な曲げ型のループを描いた。強度は,上昇して いたが加力装置の関係でR=40×10-3rad.までとした。こ の時点では,主筋に沿った付着ひび割れは発生せず,
せん断ひび割れが端部に見受けられた程度であった。
15-B11は R=40×10-3rad.で最大強度321.4kNを記録し
(a) 15-B10
(b) 15-B11
(c) 15-B12
(d) 15-B13
(e) 15-B14
図―4 破壊性状 図-3 載荷装置(単位 mm)
【15-B11】 【15-B13】
図-2 試験体断面図の一例 表-2 鉄筋の引張試験結果
表-3 コンクリート圧縮試験結果
300 33 78 78 78 33 300
33 78 78 78 33
鉄筋種類 鉄筋径 降伏点 (N/mm2)
引張強さ (N/mm2)
降伏ひずみ (μ)
ヤング係数 (×105N/mm2)
USD590 D16 632 766 3407 1.93
SD785 D6 924 1081 7036 1.84
圧縮強度 (N/mm2)
ヤング係数
(×104N/mm2) ポアソン比
15-B10 20.6 26.1 0.155
15-B11 21.3 26.8 0.153
15-B12 21.2 26.5 0.155
15-B13 21.3 27.2 0.159
15-B14 36 40.4 30.1 0.192
試験体名 Fc
圧縮試験
21
15-B10 と同様に曲げ型のループを描いた。主筋降伏後,
細かいひび割れが繋がっていき,主筋に沿った付着ひび 割れが若干見られた。
15-B12は文献3)で示した15-B6をカットオフした試験
体 で あ り , 主 筋 の 降 伏 し た R=15×10-3rad.で 最 大 強 度
247.8kN を記録し,その後は徐々に耐力が下がっていき主
筋に沿って付着のひび割れが見られ,付着割裂破壊の様相 を呈した。特に下端筋位置での付着ひび割れによる損傷が 大きかった。
15-B13は15-B12に対してせん断補強筋量を減らした
試験体で, 主筋の降伏した R=15×10-3rad.で最大強度
228.8kNを記録し, AIJ略算式の曲げ終局強度を下回る
結果となった。せん断補強筋量が15-B12に比べ少ないた め,その後のサイクルでは耐力低下も著しく,主筋がス リップしている傾向が見られた。せん断・付着ひび割れ
は共に 15-B12 に比べて大きく開きカバーコンクリート
の剥離も見られた。
15-B14は文献3)に示した15-B7をカットオフした試 験体であり ,主筋降伏時の R=15×10-3rad.で最大強度 263.9kN を記録し,R=20×10-3rad.を超えた辺りから強度 低下が生じ付着割裂破壊の様相を呈した。
4. 考察
4.1最大強度と変形性能
図-6 に繰返し載荷を除いた正側の包絡線を示す。縦
軸はせん断力 Q(kN),横軸は部材全体の変形角 R(×
10-3rad)で,(a)では主筋16本,(b) Fc21,(c) Fc36間の比 較を行い,カットオフ長さの及ぼす影響を検討した。
(a)は主筋が16本の比較であるが, 15-B10,15-B11と もに良好な曲げ型の包絡線を描いている。両者の違いは 殆んど無いことが分かる。配筋指針のL/4+15db確保され れば当因子では,良好な結果が得られることが分かった。
(b)は12本配筋で低Fc時のカットオフ長さ・pwを変 えることで強度,変形性能の検討を行った。15-B6 をカ ットオフした15-B12は曲げ降伏後耐力が下がり,曲げ降 伏後の付着割裂破壊となった。15-B12のpwを減らした
15-B13も同様の結果であるが,pwが少ないため強度も
低く主筋降伏後の強度低下は著しかった。計算上必要な カットオフ筋の延長長さを確保したが,コンクリート強 度が低い場合,通し配筋の試験体より強度低下が大きい 結果となった。
(c)はFc36を用い,12本配筋のカットオフの有無によ る比較検討を行った。15-B7をカットオフした15-B14は 曲げ降伏後のR=15×10-3rad.以降強度低下が生じた。付着 割裂の影響と考えられる。この結果は(b)と同様な結果で あり,2 段筋目の主筋の付着長さが小さいことに起因し ていると考えられる。
4.2 実験値と各強度計算式
既往の提案式による強度算定結果と実験結果を示し,
強度の比較を行う。最大強度の実験値と計算値を一覧に
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400
-40 -20 0 20 40
せん断力Q(kN)
部材変形角R(×10-3rad.)
15-B13
USD590,σB=21.3N/mm2, pt=0.99%,pw=0.34%
二段配筋カットオフ長さ L/6+d=333+344=678 曲げ終局強度 232.9kN
最大強度Qmax 228.8kN
曲げひび割れ発生 45.9kN せん断ひび割れ発生 82.2kN
0.8Qmax
-50 -30 -10 10 30 50
部材変形角R(×10-3rad.)
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400
-40 -20 0 20 40
せん断力Q(kN)
15-B14
曲げ終局強度 232.9kN 最大強度Qmax 263.9kN
曲げひび割れ発生 40.4kN せん断ひび割れ発生 108.4kN
0.8Qmax
USD590,σB=40.4N/mm2, pt=0.99%,pw=0.42%
二段配筋カットオフ長さ L/6+d=333+344=678
-50 -30 -10 10 30 50
部材変形角R(×10-3rad.) -400
-300 -200 -100 0 100 200 300 400
-40 -20 0 20 40
せん断力Q(kN)
部材変形角R(×10-3rad.)
15-B12
USD590,σB=21.2N/mm2, pt=0.99%,pw=0.84%
二段配筋カットオフ長さ L/6+d=333+344=678
-50 -30 -10 10 30 50
部材変形角R(×10-3rad.) 曲げ終局強度 232.9kN 最大強度Qmax 247.8kN
曲げひび割れ発生 44.4kN せん断ひび割れ発生 44.4kN
0.8Qmax
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400
-40 -20 0 20 40
-50 -30 -10 10 30 50
せん断力Q(kN)
部材変形角R(×10-3rad.)
15-B10
USD590,σB=20.6N/mm2, pt=1.32%,pw=1.21%
通し配筋 曲げ終局強度 302.3kN
最大強度Qmax 334.9kN
曲げひび割れ発生 52.8kN せん断ひび割れ発生 89.6kN
0.8Qmax
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400
-40 -20 0 20 40
15-B11
USD590,σB=21.3N/mm2, pt=1.32%,pw=1.21%
二段配筋カットオフ長さ L/4+15db=500+240=740
-50 -30 -10 10 30 50
部材変形角R(×10-3rad.) 曲げ終局強度 302.3kN 最大強度Qmax 321.4kN
曲げひび割れ発生 49.1kN せん断ひび割れ発生 89.8kN
0.8Qmax
せん断力Q(kN)
(a)15-B10 (b)15-B11
(c)15-B12 (d)15-B13 (e)15-B14 図―5 せん断力 Q-部材変形角 R 関係
して表-4に示す。計算強度のうち,曲げ強度はRC規 準1)の曲げ強度略算式,ACI規準7)の曲げ終局強度算定 方法を用いた。せん断終局強度はAIJ終局指針A法8)を 用い,付着割裂強度はAIJ終局指針式8)および靭性指針 式6)を用いた。せん断終局強度および付着割裂強度の計 算では,コンクリート圧縮強度の有効係数の式はCEB式,
jtは最外縁間距離を用いた。また,付着割裂強度の計算 では,試験体は横打ちで製作したため,上端筋の低減は 考慮していない。
試験体の最大強度は,曲げ終局強度AIJ略算式計算値 の0.98~1.13倍,ACI式計算値の1.00~1.18倍であった。
どちらの式もUSD590級の鉄筋と低強度・普通強度コン クリートを組合せた梁部材・カットオフ梁部材の曲げ終 局強度を精度良く評価できている。
16本配筋の15-B10,15-B11は大変形時(Rp=0.02)の付 着割裂破壊の余裕度は1.13~1.17であり危険側であった。
しかし,15-B10,15-B11ともに曲げ降伏後付着割裂破壊 しなかったのは付着割裂強度τbuと設計用付着応力度τf
の比が1.60あり,またpwが多く,カットオフ長さも長 かったためと考えられる。しかし,12 本配筋の 15-B12
~15-B14 は計算では大変形時(Rp=0.02)に付着割裂破壊 しないと予想されていたが,曲げ降伏後付着割裂破壊と なった。特に15-B13については付着割裂破壊の傾向が強 くみられた。
表-4 実験強度と計算強度一覧
15-B10 334.9 310.6 1.08 283.4 1.18 629.3 0.53 440.5 0.76 3.04 4.86 1.60 475.6 0.70 285.3 1.17 F
15-B11 321.4 302.3 1.06 283.8 1.13 629.5 0.51 440.7 0.73 3.04 4.86 1.60 475.8 0.68 285.5 1.13 F
15-B12 247.8 232.9 1.06 228.1 1.09 629.5 0.39 440.7 0.56 3.05 4.25 1.39 464.2 0.53 278.5 0.89 FB
15-B13 228.8 232.9 0.98 228.1 1.00 508.0 0.45 257.8 0.89 3.05 3.40 1.11 406.4 0.56 243.8 0.94 FB
15-B14 263.9 232.9 1.13 228.1 1.16 727.9 0.36 369.4 0.71 3.05 4.64 1.52 549.7 0.48 365.9 0.72 FB
付着割裂耐力 (Rp=0.02) Qbu2(KN)
Qe
Qbu2 破壊形式
F:曲げ破壊 FB:曲げ降伏後の付着割裂破壊 試験体名
実験 最大耐力
Qe(KN)
計算値 曲げ終局耐力
(AIJ略算) AIJQfu
(KN) Qe AIJQfu
曲げ終局耐力 (ACI略算)
ACIQfu (KN)
付着割裂 強度 τbu(N/mm2)
τbu τf
付着割裂耐力 (Rp=0) Qbu0(KN)
Qe
Qbu0
Qe ACIQfu
せん断 終局耐力
(Rp=0) Qsu0(KN)
Qe
QSU0
せん断 終局耐力
(Rp=0.02) Qsu2(KN)
Qe Qsu2
設計用 付着応力度
τf(N/mm2)
(a)15-B10
(b)15-B11
(c)15-B12~15-B14 図-7 歪ゲージ取り付け位置
T1A T5A T6A
T1B T7A T8A T9A
T10BT10AT11A T11B T9B
T8B
B1AB1B B2B B3B B4B B8B B9B B10BB11B B2A B3A B4A B5A B6A B7A B8A B9A B10AB11A N1
S1 S2 N2
S3 N3
S4 N4
S5 S6 S7
T2A T21B
T3A T22BT31BT32B
T4A T41BT42B
200 200 200 200 200 200 200 200 185 15
15 185 333
500 662
T5B T6B T7B
B5B B6B B7B
T1A T5A T6A
T1B T7A T8A T9A
T10BT10AT11A T11B T9B
T8B
B1AB1B B2B B3B B4B B8B B9B B10BB11B B2A B3A B4A B5A B6A B7A B8A B9A B10AB11A N1
S1 S2 N2
S3 N3
S4 N4
S5 S6 S7
T2A T21B
T3A T22BT31BT32B
T4A T41BT42B
200 200 200 200 200 200 200 200 185 15
15 185 333
500 662
T1AT1B T9A
T10BT10AT11A T11B T9B
B1AB1B B2B B3B B9B B10BB11B
B2A B3A B9A B10AB11A
N1 S1 S2
N2
S4 N4
S5 S6 S7 T8AT8B
B8BB8A B4BB4A
T2A T21B
T3A T22BT31B
T32B T4A
T41B T5A T6A T7A
B5A B6A B7A S3
N3
200 200 200 200 200 200 200 200 185 15
15 185 333
500
(b) Fc21 でのカットオフ長さ・
変形性能の検討
(b) 主筋 16 本でのカットオフの検討 (c) Fc36 でのカットオフ長さの検討 図-6 せん断力 Q-部材変形角 R 比較関係
0 100 200 300 400
0 10 20 30 40
せん断力Q(kN)
部材変形角R(×10-3rad.) 15-B10(通し配筋)
15-B11(カットオフ L/4+15db)
0 100 200 300 400
0 10 20 30 40
せん断力Q(kN)
部材変形角R(×10-3rad.) 15-B6 (通し配筋 pw=0.84%)
15-B12(カットオフ L/6+d pw=0.84%)
15-B13(カットオフ L/6+d pw=0.34%)
0 100 200 300 400
0 10 20 30 40
せん断力Q(kN)
部材変形角R(×10-3rad.) 15-B7 (通し配筋)
15-B14 (カットオフ L/6+d)
4.3 せん断補強筋・中子筋の歪性状
図-7 に歪ゲ ージ取り付け位置 を示し,図-8 に R=40.0×10-3rad.(1/25)時のせん断補強筋・中子筋の歪性 状を示す。15-B11のS2は計測不良により,測定できな かった。せん断補強筋・中子筋取り付けた歪値を見ると,
全ての試験体で降伏歪を超えることなく弾性範囲内であ った。通し配筋の15-B10の歪は最大で1500μ程度,カ ットオフ試験体である15-B11の歪は最大でも2000μ程度 でカットオフによる影響は 500μ程度であった。15-B12 の歪は最大でも2000μで,15-B13は15-B12より pwを
1/2.5 減らしているため,せん断補強筋・中子筋共に
1000μ程度歪は大きかった。15-B14の歪は最大でも2500 μ程度であった。
4.4 主筋の付着性状
図-9 に各試験体の主筋の区間平均付着応力度 τaを 示す。区間平均付着応力度 τaは主筋が弾性範囲内時の ひずみ差により算出した。(文献3) 図-9中に曲げモー メントに対する文献8)の付着応力度τfと付着割裂強度 τbuを示した。カットオフ筋を含む試験体においては,
付着割裂強度の基準となる強度に0.6を乗じずに計算を 行った。R=1.25×10-3rad.(1/800)~R=5.0×10-3rad.(1/200)
のサイクルはここでは除いている。
全ての試験体に共通して端部に取り付けたひずみゲ ージはR=15.0×10-3rad.(1/67)で降伏ひずみ値を超えた。
(a)15-B10 では端部以外のひずみゲージは弾性範囲で
あり,最終サイクル R=40.0×10-3rad.(1/25)でも,区間 平均付着応力度τaは設計用付着応力度τfを超える部分 もあったが,付着割裂強度τbu以内に収まっていた。サ イクルが進むにつれて平均付着応力度τaは上昇してい ることから付着の劣化はなかったことが分かる。
(b)15-B11 のカットオフ端部である試験体中央一段筋
のT5A-T6A間,B6A-B7AはR=10.0×10-3rad.(1/100)で 平均付着応力度τaは最大になって以降,その後のサイク ルでは値は小さくなった。これは一段筋位置の軸方向に 伸びた付着ひび割れとも対応をしている。
(c)15-B12の2段筋はR=15.0×10-3rad.(1/67)で平均付 着応力度τaは最大になって以降,その後のサイクルでは
図-8 せん断補強筋・中子筋歪性状
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7
歪(μ)
せん断補強筋 ゲージ位置
15-B10 15-B11 15-B12 15-B13 15-B14
降伏歪 7201μ
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
N1 N2 N3 N4
歪(μ)
中子筋 ゲージ位置
15-B10 15-B11 15-B12 15-B13 15-B14
降伏歪 7201μ
(b)15-B11
0 1 2 3 4 5 6 7
T1A-T2A T2A-T3A T3A-T4A T4A-T5A T5A-T6A T6A-T7A T7A-T8A T8A-T9A T9A-T10A T10A-T11A
付着応力度(N/mm2) 15-B11 上端1段筋 正側 1/100 1/67 1/50 1/25
τ f τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
T1B-T21B T21B-T22B T22B-T31B T31B-T32B T32B-T41B T41B-T42B T8B-T9B T9B-T10B T10B-T11B
付着応力度(N/mm2) 15-B11 上端2段筋 正側
τ f
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1B-B2B B2B-B3B B3B-B4B B8B-B9B B9B-B10B B10B-B11B
付着応力度(N/mm2) 15-B11 下端2段筋 正側
τ f
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1A-B2A B2A-B3A B3A-B4A B4A-B5A B5A-B6A B6A-B7A B7A-B8A B8A-B9A B9A-B10A B10A-B11A
付着応力度(N/mm2) 15-B11 下端1段筋 正側
τ f τbu
(c)15-B12 図-9 付着応力度関係
0 1 2 3 4 5 6 7
T1A-T2A T2A-T3A T3A-T4A T4A-T5A T5A-T6A T6A-T7A T7A-T8A T8A-T9A T9A-T10A T10A-T11A
付着応力度(N/mm2) 15-B12 上端1段筋 正側 1/100 1/67 1/50 1/25
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
T1B-T21B T21B-T22B T22B-T31B T31B-T32B T32B-T41B T8B-T9B T9B-T10B T10B-T11B
付着応力度(N/mm2) 15-B12 上端2段筋 正側
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1B-B2B B2B-B3B B3B-B4B B8B-B9B B9B-B10B B10B-B11B
付着応力度(N/mm2) 15-B12 下端2段筋 正側
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1A-B2A B2A-B3A B3A-B4A B4A-B5A B5A-B6A B6A-B7A B7A-B8A B8A-B9A B9A-B10A B10A-B11A
付着応力度(N/mm2) 15-B12 下端1段筋 正側
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
T1A-T2A T2A-T3A T3A-T4A T4A-T5A T5A-T6A T6A-T7A T7A-T8A T8A-T9A T9A-T10A T10A-T11A
付着応力度(N/mm2) 15-B10 上端1段筋 正側 1/100 1/67 1/50 1/25
τ f
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
T1B-T21BT21B-T22B T22B-T31B T31B-T32B T32B-T41B T41B-T42BT42B-T5B T5B-T6B T6B-T7B T7B-T8B T8B-T9B T9B-T10BT10B-T11B
付着応力度(N/mm2) 15-B10 上端2段筋 正側
τf τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1B-B2B B2B-B3B B3B-B4B B4B-B5B B5B-B6B B6B-B7B B7B-B8B B8B-B9B B9B-B10B B10B-B11B
付着応力度(N/mm2) 15-B10 下端2段筋 正側
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1A-B2A B2A-B3A B3A-B4A B4A-B5A B5A-B6A B6A-B7A B7A-B8A B8A-B9A B9A-B10A B10A-B11A
付着応力度(N/mm2) 15-B10 下端1段筋 正側
τ f τbu
(a)15-B10
値は小さくなった。耐力も下がっているため,主筋の付 着劣化がこのサイクルで起きていることが分かる。一段 筋B6A-B7Aのみ1サイクル早いR=10.0×10-3rad.(1/100)
で平均付着応力度τaは最大になっているため,その位置 での付着ひび割れは伸展が早かった。
(d)15-B13 は R=10.0×10-3rad.(1/100)で平均付着応力 度τaが最大になる区間が15-B12に比べ多く, 1段筋の
T4A-T5A間は平均付着応力度τaが特に小さかった。
(e)15-B14の一段筋はR=15.0×10-3rad.(1/67)で端部か らT3Aまで降伏ひずみ値に達した。そのため,一段筋に 沿った付着ひび割れの伸展も早く,二段筋の1.0Dの位置 にあるT22B-T31B間でR=20.0×10-3rad.(1/50)まで平均 付着応力度τaは上昇し,付着割裂強度τbuを大きく超え た。R=40.0×10-3rad.(1/25)に向かう途中で耐力は下がっ ており,平均付着応力度τaも付着劣化によって値は小さ くい傾向が見られた。
本研究の試験体ではほとんどの試験体で曲げ破壊を 計画したが,付着割裂破壊となった試験体も見られたた め,区間平均付着応力度τaでは簡易に評価できず今後の 検討課題となる。
5. まとめ
USD590 級鉄筋(Pt=0.99,1.32%)と普通強度コンクリ ート(Fc21,36)を組合せたRC梁カットオフ部材の実験よ り以下の知見を得た。
1) 高強度鉄筋USD590を主筋に用い,二段筋をカット オフした場合の最大強度は既往のAIJ,ACI法の最 大曲げ強度で算定できる。
2) 高強度鉄筋USD590と低強度コンクリート(Fc21)を 用い,カットオフ長さをL/4+15dbとした場合,強度 および変形性能は概ね良好であった。
3) 高強度鉄筋USD590と低強度コンクリート(Fc21)を 用い,文献5)の方法でカットオフ長さをL/6+dと決 めた場合,せん断補強筋で主筋を十分拘束している 場合は曲げ強度は発現できるが,変形性能は通し筋 の場合より劣る。
4) 高強度鉄筋USD590と普通強度コンクリート(Fc36) を用い,カットオフ長さをL/6+dとした場合,計算 上の付着割裂強度の余裕度は大きかったが,曲げ降 伏後付着割裂破壊し,今後の課題となる。
参考文献
1) 日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同 解説,2010
2) 池沼良章ほか:高強度鉄筋USD590と普通コンクリ ートを用いたRC造梁部材に関する研究(その1)(そ
の 2)日本建築学会大会学術講演梗概集,構造 IV,
pp.131-134,2016.9(九州)
3) 堀田和史ほか:USD590 クラスを主筋に用いた RC 梁部材に関する研究コンクリート工学年次論文集, Vol. 38, No.2, pp. 247-252, 2016
4) 鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説,2010 5) 市之瀬敏勝,西村康志郎ほか:RC 規準の付着条項
に関する考察(その1)(その2)(その3)(その4),日本 建築学会大会学術講演梗概集,構造 IV, pp.21-26,
2014.9,pp.23-24, 2015.9.
6) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靭性保 証型耐震設計指針・同解説,1999
7) American Concrete Institute:Building Code and Commentary ACI 318-14
8) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の終局強度 型耐震設計指針・同解説 1991年
(e)15-B13
0 1 2 3 4 5 6 7
T1A-T2A T2A-T3A T3A-T4A T4A-T5A T5A-T6A T6A-T7A T7A-T8A T8A-T9A T9A-T10A T10A-T11A
付着応力度(N/mm2) 15-B13 上端1段筋 正側 1/100 1/67 1/50 1/25
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
T1B-T21B T21B-T22B T22B-T31B T31B-T32B T32B-T41B T8B-T9B T9B-T10B T10B-T11B
付着応力度(N/mm2) 15-B13 上端2段筋 正側
τf τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1B-B2B B2B-B3B B3B-B4B B8B-B9B B9B-B10B B10B-B11B
付着応力度(N/mm2) 15-B13 下端2段筋 正側
τ f
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1A-B2A B2A-B3A B3A-B4A B4A-B5A B5A-B6A B6A-B7A B7A-B8A B8A-B9A B9A-B10A B10A-B11A
付着応力度(N/mm2) 15-B13 下端1段筋 正側
τ f τbu
(f)15-B14 図―9 付着応力度分布
0 1 2 3 4 5 6 7
T1A-T2A T2A-T3A T3A-T4A T4A-T5A T5A-T6A T6A-T7A T7A-T8A T8A-T9A T9A-T10A T10A-T11A
付着応力度(N/mm2) 15-B14 上端1段筋 正側 1/100 1/67 1/50 1/25
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
T1B-T21B T21B-T22B T22B-T31B T31B-T32B T32B-T41B T8B-T9B T9B-T10B T10B-T11B
付着応力度(N/mm2) 15-B14 上端2段筋 正側
τf
τbu
τf
τbu
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1B-B2B B2B-B3B B3B-B4B B8B-B9B B9B-B10B B10B-B11B
付着応力度(N/mm2) 15-B14 下端2段筋 正側
τf
τbu
τf
τbu
τf
τbu
τf
τbu
τf
τbu
τf
τbu
τf
τbu
0 1 2 3 4 5 6 7
B1A-B2A B2A-B3A B3A-B4A B4A-B5A B5A-B6A B6A-B7A B7A-B8A B8A-B9A B9A-B10A B10A-B11A
付着応力度(N/mm2) 15-B14 下端1段筋 正側
τf
τbu