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設計教育とデジタルエンジニアリング

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Academic year: 2021

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設計教育とデジタルエンジニアリング

1. 設計教育の必要性

 現在の日本の産業は,独創的な発想,

設計による高付加価値な製品を実現し ていく必要があり,大学教育も学生の そのような志向を涵養するべきであろ う.筆者は,東京大学工学部機械系の 一学年に対して,以下のアンケートを 2 年後期,3 年前期,3 年後期に追跡 的に実施した.

 設問:「以下の四つについて,自分 が得意である,好きであると考える相 対順位を回答せよ」.

 選択肢:①これまでになかったよう な独創的な設計案を考案する,②さま ざまな要因をバランスよく組み合わせ て問題を解決する,③問題を分析しそ の構造や性質を解明する,④幅広く多 くの知識や情報に通じている.

 集計結果を図 1 に示す.たとえば「独 創的設計」を 1 位として回答した学生 の割合は,2 年後期で 17%,3 年前期 で 13%,3 年後期で 9%であった.こ の結果は独創的設計への志向が高くな い可能性を示しており,筆者らはその 志向を高めたいと考えている.機械工 学において,現象の解析に比べ設計や 創造的思考は理論的な体系が確立され ておらず,学生に設計や創造の機会を 与え経験を通して教育することが効果 的である.

2. トップを伸ばす教育と最低ラ インを底上げする教育

 企業などの現場においてチームによ り行われる設計では,チームのメンバ 全員が一定以上のレベルにあることが 重要な AND 型の側面と,チーム内で のトップのレベルの高さが重要な OR 型の側面とがある.システム全体の信 頼性が構成要素の信頼性の積で決まる 場合,システムを構成要素ごとに分担 してチーム設計する作業は AND 型に 近く,いっぽう,チームによる方針や 企画の策定において,チーム内で出さ れた発想や案の中で最も優れたものを 基に議論が展開される場合は OR 型に 近いと考えられる.

 したがって,大学の設計教育におい ても,学生全員の最低ラインを底上げ する教育と,(必ずしも学生全員では ない)トップを伸ばす教育の両側面が 必要である.以下では,東京大学工学 部機械系の設計教育の例(1)を概説する.

3. CAD を用いた設計・製作

 大学での設計教育において,課題が 図面や CAD モデルの作成で終了する と,教員が指摘する以外には設計の優 劣が結果に現れず,設計の重要性を実 感をもって学生に教育することができ な い. そ こ で, 三 次 元 CAD(Solid

Edge,シーメンス PLM ソフトウェア)

を用いて学生 4~ 5 名のチームにより スターリングエンジンを設計し,作成 した図面を用いて学生自身が部品加 工,組み立てし,運転して性能を計測 する必修課題を,学生全員に与えてい る(図 2).見本となる設計例は提示 するが,できるだけ独自の設計を考え るように指導しており,結果としてさ まざまな構造のエンジンが設計,製作 される.

4. CAD/CAE/RP/CAM を 用 いた振動設計

  三 次 元 CAD,CAE,RP(Rapid Prototyping),CAM などのツールを 駆使して,ある制約条件下で要求機能 や性能を達成する方式や形状を設計す る課題として,揺れない片持ばりを設 計する必修課題を,学生全員に与えて いる(図 3).この課題では,学生が 三次元 CAD および有限要素解析ソフ トウェア(ANSYS,サイバネットシ ステム)を用いて設計・解析し,ABS 樹 脂 の RP(FDM-8000,Stratasys)

または A2017(ジュラルミン)のワ イヤカットで製作した片持ばりを加振 器に取り付け,周波数を掃引して加振 する際に梁(はり)先端のゲイン(先 端変位/加振変位)の周波数応答関数 を計測する(スキャニングレーザドッ プ ラ 計 PSV-300F,Polytec Japan).

この周波数応答関数ができるだけ 1 か ら外れないような片持ばりの形状を設 計せよという課題である.この課題で は,梁実物の CCD 画像により振動の 様子を現実感のある動画で確認できる ため,固有振動数,モード形状,共振 といった振動学の基本概念についてよ り深く理解できるだけでなく,それら の概念を解析のみでなく形状の発想に つなげる思考を体験できる.

5. 実践的設計教育:学生フォー ミュラ

 前記 2 例は,機械系学生が習得すべ き必修課題として学生全員に与えられ ている.いっぽう,より高度で実践的 な設計,ものづくりの体験を希望する 一部の学生に対しては,(社)自動車 技術会主催の全日本学生フォーミュラ 大会に出場する一連の過程を体験する 課 外 活 動 を 学 科 と し て 支 援 し て い る(2).これは,所定の規格を満たす フォーミュラカーの企画,設計・製作,

広報,渉外活動のすべてを学生自らの 手で行い,また車両性能だけでなく,

コスト,デザイン(設計手法等),プ レゼンテーションなども自動車会社の 技術者等による審査を受ける,実践的 な内容となっている(図 4).

6. おわりに

 以上で述べたような設計教育を大学 で行うにあたっては,CAD,CAE,

RP,CAM などデジタルエンジニアリ ングを活用することが有効であり,ソ フトウェアベンダからも教育支援プロ グラム(たとえば文献(3))が提供さ れている.そのような枠組みなどを活 用し,学生の創造的設計への志向を高 める設計教育を行っていくことが期待

(原稿受付 2008 年 1 月 8 日)される.

〔 村上 存,濱口哲也,草加浩平 東 京大学〕

●文 献

( 1 )村上 存・ほか,東京大学機械系三学科に おける 3 次元 CAD による設計教育,設計 工学, 42-11 (2007), 621-629.

( 2 )(http://utff.com/)

( 3 )Hans-Kurt Lübberstedt, “GO PLM (Global Opportunities in Product Lifecycle Man- agement)” Overview: Training Tomorrow’s Product Engineers, Siemens PLM Soft- ware - GO PLM Program Forum in Tokyo, 2007-10.

図 1 学生アンケート結果(回答 54 名)

100%

80%

60%

40%

20%

0%

回答割合

4位 3位 2位 1位

独創設計 調整設計 分析解明 知識情報

2 年 後 期 2 年 後 期

2 年 後 期 2 年 後 期

3 年 前 期 3 年 前 期 3 年 前 期 3 年 前 期

3 年 後 期 3 年 後 期 3 年 後 期 3 年 後 期

図 2 スターリングエンジンの設計・製作

図 3 片持ち梁の振動設計

振幅倍率,ゲイン(倍

周波数(Hz)

010 5 10 15 20 25 30

210 410 610 810 1010 1210 1410 1610 1810 2010

計算  実験

18Hz 37Hz 62Hz 231Hz

図 4 学生フォーミュラ

日本機械学会誌 2008. 3 Vol. 111 No.1072

225

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