- 41 - はじめに
平成22年3月,文部科学省により生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として,「生徒指導 提要」が取りまとめられた。昭和56年に「生徒指導の手引」が改正されて以来,約30年振りとなる。
これは,新たな時代の様相,社会の状況,児童生徒の状況を踏まえながら,今日的な状況に照らし,
新しい形で内容を充実させたものとなっている。
これまで,当教育センターでは,「いじめの理解とその指導の在り方」や「不登校児童生徒への指 導・援助の在り方」,「不適応行動を示す児童生徒への望ましいかかわり方」等の調査研究を行って きた。特に,前回の調査研究を進める中で,ともすれば表面的に現れた問題行動への対応に追われが ちな生徒指導だけでなく,児童生徒が人生で遭遇する問題(心理的離乳,友人関係,進路選択,学業 不振など)を自分で乗り越えていく能力をはぐくむ教育活動の推進が必要であると考え,生徒指導の 原点に戻ることとした。
生徒指導の意義については,「生徒指導提要」において,「学校の教育目標を達成するうえで重要 な機能を果たすものであり,学習指導と並んで学校教育において重要な意義を持つもの」また,「教 育課程の内外において一人一人の児童生徒の健全な成長を促し,児童生徒自ら現在及び将来における 自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すという生徒指導の積極的な意義を踏まえ,
学校の教育活動全体を通じ,その一層の充実を図っていくことが必要」と述べられている。そして,
このことは「生徒指導の手引」でも述べられており,生徒指導を考える上でも普遍的なものであると 考える。
また,各学校種の学習指導要領が公示され,いよいよ小学校では平成23年度から全面実施となる。
各学校には,移行措置への対応とともに,変化の激しい時代に応じた教育「生きる力をはぐくむこと を目指した教育」の実践が求められている。
一方,児童生徒を取り巻く環境は,少子高齢化,高度情報化,国際化など社会の大きな変化の中,
家庭や地域の教育力の低下など問題行動を生みやすい状況となっている。特に,人間関係に関する問 題や規範意識の低下,有害サイトにアクセスすることによる被害やメールによるトラブル等,学校に おける生徒指導上の課題は多岐にわたるものとなっている。
このような状況において,学習指導要領の基本理念である「生きる力」は,生徒指導が求める理念 や目的と重なる部分が多く,また,そのような生徒指導を推進していくことは,ひいてはいじめや不 登校など生徒指導上の諸課題の未然防止につながるものと考える。
本研究は,鹿児島県内のすべての公立学校の自己指導能力をはぐくむ生徒指導に関する実態調査を 基に,自己指導能力の育成を推進する生徒指導の在り方について研究したものである。1年次は,各 学校の実態把握及び児童生徒実態把握シート内容の研究を中心に進め,2年次は,児童生徒実態把握 シート「学校楽シート」,自己指導能力をはぐくむ教育活動の展開例,及び生徒指導年間指導計画例たの を作成した。また,研究協力員による「学校楽シート」の結果を踏まえた教育活動の研究実践を行っ た。
本研究が,各学校における生徒指導の充実を図るために活用されることを期待したい。