ちが う立場になって読んでみる
‑クラスで宮沢賢治 「注文の多い料理店」を推薦 しよう‑
細川 太輔
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.課題意識国語科部では 「言葉 を使 って豊かに生活す る子 の育成 一読みを中核 とした感性 と論理 を育てる学習の追究‑」
とい うテーマで今年度 か ら研究 をしている.教科理論 にも書かれているが、言葉 を、表面的 に意味を考 えず に使 う子 どもが増 えている。そのため言葉 に実感 をもつ子 どもになってほ しい と私 はず っ と願 っている。言葉 の意味 を解釈 し、言葉 に意味 をこめて表現 して コ ミュニケーシ ョンを した り、思考 をした りす る。それができる子が言 葉 を使 って豊か に生活す る子であると考 えている。
では文学的文章の学習で どうや って言葉 を使 って豊かに生活す る子 を育てるのか。それは感性 と論理の両面が 文学の解釈で身 に付 けることである と考 える。言葉 を言葉 として とらえるだけでな く、言葉 の奥 に潜 んでいる意 味や象徴やイメージを見つ ける思考や、言葉 の総体である作品か ら主題 を兄いだす思考 は感性 とも言 えるし、論 理 とも言 える。作品の世界 を支 えている意味の構造 を論理で解釈 し、そ こか ら感性で感動 してい くか らである。
その よ うな言葉か らいろいろな意味を兄いだす思考 を文学の解釈で経験す る事で、 日常生活で も他者の言葉 の意 味や、その言葉 の背景な どを理解できるよ うになると考 えている。本稿では言葉の総体である作 品か ら意味 を紡
ぎだす過程 を思考 ととらえ、それを深 めるための手だてを追求す ることにした。
2.
研究の視点 ・手立て本稿では以下 の4つ の手 だてで、児童 に深 く考 えさせ ることにした0
( 1 )
多様 な考 えの中か ら取捨選択 して 自分 の考 え をもたせ るただ こ う思 う、 とい うだけで高学年 の段階では深 く考 えるとは思 っていない。本 当にそ うなのか、多様 な立場 の意見 を吟味 し、批判 し、その中で残 ったものが 自分 の意見 とさせたい。そのため3つの手だてをとった。
1つ 目は最初 に解釈 の選択肢 を作 る とい うことである。いきな り子 どもに考 えさせ るのではな く、多様 な解釈 の選択肢 をあ らか じめ提示 して多様 な考 えを見せ る中で、多様 な可能性 を考 えなが ら自分 の考 えをもっ ことがで きる と考 えた。
2つ 目は議論 で解釈 をぶつ け合 うとい うことである。最終的 には解釈 の多様性 を認 めなが らも、相手の意見 に 反論 をぶつ けることで、その解釈が本 当に成立す るのか考 えることができるよ うにした。多様 な解釈が並列的 に 並ぶのではな く、解釈がぶつか り合 う中で解釈 が深 まってい く。友達 の意見 を批判す るのはなかなか小学生段階 では難 しいが、10月か ら毎朝 のス ピーチで、反対意見、反論 を行わせて、その ような思考方法 に慣れ させ るよ う にした。
3つ 目は新聞 に貼 る自分の意見を書 く際 に自分 とは異 なる意見 を批判 して 自分 の意見 を書 くよ うにさせた。 自 分 の頭 の中で議論 をし、多様 な意見を吟味 して最終的な意見 を書 き、それを新聞に貼 ることで、吟味 した自分 の 意見 をもてるよ うになると考 えた。
( 2 )
主体 的に読 ませ る「注文の多い料理店」 は教師が読む ことを決 めた教材ではない。秋 で どん ぐりがた くさん落 ち始 めた ころに、
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こんな話がある と私 が 「どん ぐりと山猫」 を紹介 した。 「どん ぐりと山猫」の不思議 を3つ クラスで追究 した後、
子 どもたちが推薦 したい宮沢賢治作品を選び、不思議 に注 目しなが ら推薦カー ドを書 かせた。そのカー ドを交流 した後、 クラスで保護者相手 に推薦 したい作品を決めた。それが 「注文の多い料理店」である。子 どもたちが注 文の多い料理店 を読 みた くなるよ う、 「どん ぐりと山猫」か ら単元 を始 めた り、4月 か ら注文 の多い料理店 の立 て札 をおいた りは したが、子 どもが不思議 に思い、楽 しめる作品であるか ら 「注文の多い料理店」を選ぶ ことは 予想がついていた。教師が読む作品を決 めたのではな く、子 どもが決 めた作品なので、子 どもは主体的 に解釈 を 行 っている。家で宮沢賢治の作品を読 んできた り、インターネ ッ トで調べてきた りす る児童 もいる。 ゲーム ソフ トを買 うためにとっておいたお小遣いで宮沢賢治の本 を買 う児童 もいるほ どである。子 どもが読みたい、 と思 う 単元計画 は深 く考 えるために必要不可欠である。
また場面 ごとに区切 って読むのではな く、子 どもが不思議 に思 うところを中心 に読む ことにした。子 どもが読 み深めたい、 と思 う場面 を取 り上 げて解釈す ることで、多様 な視点が生まれ、議論 が活発 にな り、解釈が深 まる
と考 えている。子 どもの 「大好 き」「お気 に入 り」「はてな」 を大切 にした授業 を計画 した。
( 3 )
解釈 の根拠 を複 数 もたせ る筆者 は子 どもの解釈 の根拠 は4つ を考 えている。
1つは本文である。 当然本文 を しっか りと読 まなければ解釈 は深 ま らない。
2つ 目は資料 である。子 どもには宮沢賢治 の作品 にい ろい ろな場面で出会 わせてい る。子 どもが調べて きた
『注文の多い料理店』の序文や宮沢賢治が書いた解説、猫 に関す る文章は印刷 してクラスで配布 をした、それ ら の資料 は子 どもの解釈 の根拠 となる と考 えた。
3つ 目は他 の作品である。子 どもには並行読書 をさせている。学校司書の協力で、図書 の時間に読み聞かせ を して頂いた り、図書室の本だけでな く、隣の小金井 中学校 の本 まで借 りてきて くだ さった りして、教室 に宮沢賢 治文庫 を作 ることができた。毎朝5分 は宮沢賢治の作品を読む時間を取 った り、宮沢賢治カー ドを作 り、学校や 家庭で読 んだ本 を記録 させていった りした。並行読書 は読書量 を担保す るだけではな く、他 の作品を読む ことで、
作品を解釈す る根拠 を見つ ける手がか りとなる。例 えば 『注文 の多い料理店』 に 「注文 の多い料理店」 は4つ 目 に掲載 されているが、最初 に 「どん ぐりと山猫」があ り、同 じ作品集の 「山猫」で もあるので、共通点 も多い。
1つの連続 したお話 とい うだけでな く、 シ リーズ として読む中で、解釈が深 まって くることは考 えられ る。
4つ 目は自分の経験 である。言葉 を言葉 として受 け止 めるだ けでな く、その意味 を具体的 にイメージすること を重要 と考 えている。普段か ら、具体的な事象 を言葉 と言 う抽象的な記号 に置 き換 える活動である、生活文や 日 記 に毎 日取 り組 んでいる。生活 とい う形 のないものに意味 を与 え、抽象的な記号 にす る活動 を普段か ら行 うこと で、言葉 に具体的なイ メージをもたせ る思考力を育てている。
この1‑ 4は子 どもには根拠 として示 しているが、実際は学習経験 として積み重なってお り、それが融合 して 自分の解釈 を作 っているため、特 にどの根拠 を中心 に解釈 を作 るかは限定は しない。 しか し1つの根拠ではな く、
複数の根拠 をもたせ ることで、思考 が多様化 し、深 まる と考 えた。
3.
授業の実際( 1 )
単元名 ・活動名クラスで 「注文の多い料理店」を推薦 しよう
‑ 「注文の多い料理店」不思議新聞づ くり‑
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(2)ね らい 単 元 の 目標 ・評価
関心 .意欲 .態度 読む能力 言語 に関す る知識 .理解 .技能
うこ とがで き、 これ か らも読 もっ ことができるムエ に気付 くことがで きるoケ み たい とい う意欲 を高 め る こ 発表 した り、感想 を闘いた りして 自分 の読
とができる○ みを広 げることができるoオ .
物語 を解 釈 す る こ.とに前 向 き 叙述 か ら療数 の読 み を許容 し、新 聞や ノー 山猫 、紳 士、 色 な ど多様 な意 味 な感想 を書いているo トにま とめてい るo が考 えち れ る言葉 に着 目して 自 話 し合 い を通 して、複数 の読 み の中か ら自 分 の読 み を書 い た り、発表 した
(3)授業の分析 ・考 察 (彰選択肢の重要性
本実践 では、発表者 グループが前 もって解釈 の選択肢 を作 り、それ を基 に、または批判 して 自分の読みを作 る 活動 を取 り入れた。例 えば以下の よ うな場面 があった。児童 は、 「しろ くまの よ うな犬」 が生 き返 った理 由 につ いて話 し合 っている場面 について話 し合 っている。
C25 考 え② の全部幻覚だったに反対 なんです けど、全部幻覚だった ら、犬 も死 んでいないって ことにして、
宮沢賢治 さんの文章 には、 「犬 は死 んだ」って書いてあるか ら宮沢賢治 さんは、犬が死 んだって書 い ているのに全部幻覚 とい うのは、 ち ょっ と面倒 くさいか ら、書いてあるのに幻覚だったってい うのは おか しい。
C26 ぼ くは、考 え③ に反対なんです け ど、例 えば、 「い らっ しゃい」七か 「舌 なめず り」とい うのは、 レ ス トランの中でお肉 とかサ ラダとか出 され るじゃないですか、それ を食べ られ るか ら、宮沢賢治 さん は、食べ られ るものの気持 ちになって、それ を考 えたん じゃないか と思います。
T 食べ られ るっているのは、殺 されて食べ られ るってい うこと。だか ら、書いたんだ。
C27 私 は、① に反対 なんです け ど、 山の守 り神 にとっては、紳士 の よ うに勝手 に 「タンター ン」 と撃 っ ちゃ う人 は、困るか ら、反省 したか らといって、 また反省 したのを忘れて危 ない人間は食べ るか らと か と思 うか ら、反省 したか らとは違 うと思 う。
T これ さ、反省 したのかな。
C ちが う。
C28 ① に反対 で、反省 した って書 いてあ る じゃないですか、 で も、 「十 円だ け山鳥 を員 った」 ってあ る じゃないですか、多分 まだ反省 しきれていないんで、 この山猫軒 の ことを忘れないために、紙 くずの よ うに顔 をしたん じゃないかな と思います。
傍線部 で紹介 した よ うに児童 は、発表 グループが挙 げた選択肢 を批判 し、 自分 の意見 をもてている。 「紳士が 反省 したか ら」とい う発表者が作 った選択肢 に対 し、C27は紳士があま りにひ どい行動 を とっていたこと、C28 は最後 に10円だけ山鳥 を買 った ことを根拠 に批判 をし、 自分 の考 えを作 っている。テキス トか ら独力で考 えるよ
りも、発表者 グループの選択肢 を最初 に挙 げてお くことで、それ を批判 し、乗 り越 えて 自分の意見 を高めている。
この よ うに選択肢 を前 もって挙 げさせ ることは、選択肢 にとらわれ るとい う危険 もあるが、選択肢 を基 に議論 さ
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せることで、読みを深めることができる と見 ることができよ う。
② 自分 とは異なる立場 を批判 して自分の読み を作る。
毎時 自分 の考 えをカー ドに書 き、それ をま とめて新聞 を作 る活動 をお こなった。そ こで 自分 とは異 なる立場 を 受 け入れなが らも批判 し、 自分 の解釈 を書 かせ るよ うにした。
例 えば 「紙 くずの ようになった顔が もとの とお りになお らなかった」ことの意味 について児童が次 のよ うに書 いている。
私 は、① と④ の ミックスだ と思いますo理 由は、山猫軒では、山猫 に食べ られそ うにな り、がたがたふ る えていますが、 山猫軒 の外‑出る と猟 師 に 「おおい、おおい、 ここだぞい、早 く来 い」 とえ らそ うな発言 を しているか らですo
確 か に② の不思議 な世界だか らク リームも不思議 な もの とい う考 え方 もある と思 いますが、体 中にク リ‑
ムをぬつてい るのに、顔 だ けが紙 くずの よ うになるのはおか しい し、ちゃん と 「牛乳 のク リーム」と書 いて あるのでちが うと思いますo
また③ の意見はク リームのせいの紳士の顔 ?‑:=け年 を とった とい うのは、おか しい と思 うし、② と同 じ理 由
ぼ くは、 どれで もな くて、(丑に近いんです けど.(彰は失礼 な行動 をする と怒 りにあ うことを紳士の心 にき ざ みつ けるためで、山猫が神 とい う意見なんです けれ ど、 ぼ くは 「山猫」 が神 とい う意見以外 は同 じで、 山猫 が神 に反 対 です。 そ う考 える理 由は、子分 の猫 が、 「ど うせ ぼ くらにはほね もわ けて は くれ ない んだ」 と あって、 これ は本 当に食べてい る とい うことで、確 か にこれ はお どしだ とい う意見 もあ りますが、 「こそ こ そ言 っている」と書いてあるので、聞 こえてた とは限 らない し、 しか もこの文 は読者 に向けて書 いてあるの で反対 です。 しか も舌なめず りまで していて、 これは神 のす ることではない し、紳士 を食べ よ うとしていた ら、命 を大切 にしていないので、山猫 が神 とい う意見 に反対 です。 (筆者注児童 の中には山猫 が神 な ら命 を 大切 にす るので紳士 を食べない とい う考 えがある。 もし食べ るな ら、命 を大切 にしないか らと言 って紳士 を 罰 Lは しないだろ うとい う考 えである。)
下線部 の よ うに 「確かに〜」 とい う言葉 を使 って 自分 とは異 なる立場で解釈 をしてみて、それで もや っぱ りぼ くはこ う思 うんだ、 とい う意見 を書いている。 これは自分は こ う思 うとい う一つの立場 か らの解釈ではな く、い ろいろな解釈 を吟味 した上で 自分 の解釈 を深 めている と言 えよ う。
4.
まとめ以上の よ うに2つの視点か ら児童の解釈 の深ま りを分析 してきた。一方向か らじっ くりと考 えることも確 か に 大切である。 自分 な りに具体的 に解釈 した り、動作化 した り、イ メージ化 した りす ることによって解釈が深 まる ことは当然 ある。本稿ではそれ を低 ・中学年で じっ くりと取 り組 んだ上で、高学年ではそれをいろいろな立場で 解釈す る とい うことを提案す る。児童 は 自分 とは異なる立場 に自分 を一度 おき、そ こか らどの よ うに解釈できる かを考 える。その上で、 自分の解釈が妥 当か どうか吟味 をし、 自分 の解釈 を深 めているのである。
まだ児童 は多方面か ら解釈 している と言 って も、賛成 ・反対 の レベルで、その解釈 が本 当に成 り立つのか とい う生産的な批判が行われ る話 し合 いにはまだ到達 していない。議論 の レベルを止揚 し、論点や根拠 を明 らか にす るような話 し合い、授業 を考 えていきたい と考 えている。
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