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中小企業を中心とする民間企業の高等教育機関に対 する学習需要

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(1)

中小企業を中心とする民間企業の高等教育機関に対 する学習需要

著者 山本 和人

雑誌名 東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学

巻 40

ページ 233‑240

発行年 2000

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009059/

(2)

中小企業を中心とする民間企業の高等教育機関に対する学習需要

  山本 和人

(平成11年9月30日受理)

Small and Midsize Enterprises Needs for Lifelong

       Learning in Higher Education

 Kazuhito YAMAMoTo

(Received on September 30,1999)

はじめに

 生涯学習の学習機会の需要が高まる中,大学など高等 教育機関がもっ教育・学習資源の一層の活用が求められ ている1).また,顕著な学習機会の増加は,地方自治体 や大学などの公開講座に現れている.従来から地方自治 体を中心に,大学や高等学校等の公開講座などでは,一 般市民・地域住民を対象として学習機会の提供が行われ てきている.しかし,それらの講座の学習内容は,教養 を中心とするもので,必ずしも職業生活と直接結びっい たり,職業的な再教育や訓練のための学習機会とは必ず しもいえないものであった.また,一方では,より高度 な,新しい企業活動を求めて,高等教育機関に対する産 業界あるいは企業などからの「産学共同」の要望は,か なり以前から存在している.これまで民間企業が高等教 育機関を利用・活用するという場合,大学院へ人材を送 りこみ,より新しい最先端の知識・技術を教育すること や,共同研究を行う場合などであった2).

 今後,各地に数多く存在する高等教育機関の資源活用 を図る際の最も大きな提供先の一っとして,地域社会に 存在する民間企業への支援がある.民間企業が事業展開 を図る上で必要な,人材の再教育や知識・技術習得の生 涯学習の機会提供を,企業にとってより身近な大学など の高等教育機関が行うことである.具体的な試みとして は,文部省の支援のもとに,「リカレント教育」や「リ フレッシュ教育」が行われはじめている3).

 これまでの多くの生涯学習に関わる調査研究は,その 多くが,地方自治体の教養的な学習機会への参加の実態

と住民の学習要求調査が中心であった5).また,企業を 対象とした調査であっても,多くは大企業を中心とする 企業対象の調査という傾向があった6).

 今回の調査では,多くの大学にとって提供先となるべ き民間企業の中でも,大学が立地する地域の中小企業を 中心に調べるものである.本研究では,企業活動と関わ る学習機会提供として,大学にどのような期待がもたれ ているか,企業における大学に対する具体的な要望はど のようなものか,その需要を明らかにする.

1 本稿の目的

 既に今回の調査結果にっいては,中間報告な内容とし て,「民間企業における事業主の高等教育機関に対する 学習需要」として発表してある7).また,『民間企業の 高等教育機関に対する学習機会についての需要調査報告 書』で,調査結果の概要を示してある8).本稿では,民 間企業としての中小企業を中心とする事業所が,その立 地する市町村に所在する大学等の高等教育機関に,事業 所としてどのような期待をもっているかにっいて検討す

るものである.

 先の中間報告では,経営者としての事業主個人の生涯 学習にっいて検討したものであったが,本稿では,人材 育成等にかける費用が予算的には大企業ほど充分にはな い中小企業が,一方,社会人を受け入れたり共同研究を 行う上で必ずしも充分な体制をもっているとはいえない

「地元」の国立大学とは異なる大学に,どのような期待 を寄せているかという点を中心に検討するものである.

2 調査および調査対象について

心理教育学科 社会教育研究室 調査は,埼玉県西部地区の所沢市・狭山市・入間市・飯

(3)

山本 和人

能市に事業所を持っ従業員10名以上の企業(事業所)及 び経営者(事業主)を対象に行ったものである.

事業所の選定は,各市の「商工会議所」が発行する1995 年度の『会員名簿』を台帳として,合計3,485事業所を 母集団とした.そして,従業員10〜29名までの事業所 については3分の1を抽出(792事業所),30人以上の事 業所については全数(1,107事業所)を対象とした.4市 の中には,本店・支店関係などで事業主が重複している ところもあったが,同一市内で業種が同一であれば,重 複を避けた.そのため,実際に抽出した事業所数は1898 事業所であった.因みに,各市の会員名簿のデータは,

1993年度時点でのものであり,従業員数の変化も考えら れるし,事業所移転などにより返送された調査票もあっ た.こうしたことから,「バブル経済」の転換点を経過 する中で,かなりの変動があったと想像される.

 なお,配布先の地域分布は,所沢市46.9%,狭山市 20.2%,入間市23.7%,飯能市8.8%,4市以外0.4%

であった.4市における事業所数の構成比に対応してい

るといえる.

 調査期間は,平成9年1月27日〜3月10日.なお,2 月末日までに返送されたものは回収票に含めた.

 配布数は1898票,回収数は634票(回収率は33.4%)

であった.調査票の配布・回収とも,郵送により行った.

有効回収数は,事業主を対象とした調査票は561票で 29.6%,事業所を対象としたものは,603票で31.8%で あった(今回の分析は,この事業所としての回答があっ た603票について行う).

 なお,回答のあった事業所の概要は以下のとおりであ る.事業所の従業員規模は,表1のようであった.先に も述べたが,台帳に掲載されていた従業員規模には変動 があったことがうかがえる.

さらに,業種別の構成は,表3のとおりであった.

表3 業種分類(N=603)

     粟   鑑粟謹爪比 種$

05 03

建設粟    製造業   供給・水道粟

  91    2フ2    28

運斡・通信業

  73

      不明        その他        公務業   金融・採険業  不動産業  サービス業

 182        46        05       !71 02 tLl 1.O

表1 正規の従業員規模(Nニ603)

1.4        5●9        10・29      30−59      60−99  10L9         14.1         3S.5         tg.6      8」6

 調査結果の全体報告については,『民間企業の高等教 育機関に対する学習機会についての需要調査報告書』を 参照のこと.

 なお,本調査は,東京家政大学平成8年度「特色ある 教育研究費」の交付を受けて実施したものである.

3 中小企業にとっての生涯学習

(1)生涯学習の認知

 事業所調査に回答した担当者は,ほぼ半数が事業主す なわち経営者であった(46. 8%).しかし,「研修・教育・

人事の担当者(または,それに相当する部署の担当者

(長))」からの回答もかなりあった(40.6%).これらの 回答者による,事業体としての生涯学習に対する認知は,

経営者の場合とそれほど差はなく,表4のようである.

生涯学習に対する認識は次第に高まっている状況の中で は,40%に満たないというのは低い比率といえよう.

表4 事業所の生涯学習にっいての認知(N=603,561)

    よく知っている聞いたことはあるはじめて聞いた   不明 事黍所調査(%}    3e.5    512     3.5     Z8 事案主・ (%}    392     572     36      0

幾撫人)

比率

100−299   300−499  5GO−999  1000人以上   不明   7.1    1.3    0.7    0.2    zo

 また,事業所の資本金高については,表2のとおりで

ある.

 また,調査票に回答している研修や人事を担当する立 場にある者自身の生涯学習の必要性については,表5の ように,経営者の場合と同様にかなり高いものがある.

表5 研修・人事担当者自身の生涯学習の必要性(Nニ603,561)

    必要である  必要ではない  わからない   不明 事業所調査(%)     77.1     5.0     15.4     2.5

2 資本金高(Nニ603)

資本金{万円)  toopi下   101〜500  501〜量000  1001〜5000 5001・v10000 比率       O.3     12.1     27.9     26J      66

10001〜100000 100001以上    不明    7.8       6▼S      12,1

(2)行われている事業所での教育・研修・訓練  まず,それぞれの事業所では,従業員のために,教育・

研修・訓練の機会を設けているかどうかでは,71.6%の

(4)

事業所で設けていると回答している.

 その教育・研修・訓練の機会設定の有無にっいて,業 種別に見たのが,表6である.業種によって差が見られ る.また,業種は規模と関わる場合があり,変数として 業種がどれくらいの位置付けかは,さらに検討する必要 がある.

表6 業種別に見た従業員の教育・研修・訓練の設定(N=603)

 業種

農業・林業・漁業 鉱業 建設業 製造業

電気・ガス・熱供給・水道業 運輸・通信業 卸・小売・飲食業 金融・保険業 不動産業 サービス業 公務 その他 不明

設けている   いない    不明

  33.3         66.7      00   500       50.0        00   フ6.4       236        0.0   62.2       378       0.O   tOO.O        O.0        00   79.5      205       0.0   70.0         27.3      2.7   tOO.0        0.O        O.0   66.7         333      0.0   74.8      25.2       00   1000       0.O       O.0   67.2         32.8      00   66.7         33.3      0.0

 さらに,事業所が設けている教育・研修・訓練の内容 は,表7のようである.

表7 事業所がもうけている教育・研修・訓練の内容(M=435)

     内   容

1あいさつ、接客、電話の応対などのしかた 2事桑所の仕事内容にかかわる作業手順など 3商品や製品などに関する知識・技術

4新商品や新製品などに関する開発のための知識・技術 5広く教養を身につけること

6スポーツや健康管理に関する知識など 7家庭生活や子どもの教育に関する知識など 8経済や時の動きに関すること

9英会話や中国語など国際化に関連した知識・技術など 10コンピュータやワープロなどの情報処理に関する知識・技術 11高齢者の特徴や対応の仕方について

t2人間関係や人の心理について 13その他

比率 708

77.0

678

35,2

193

13,1 4.1

163

8.0 41.8

87

29.4 6.4

 ここに見られるように,「事業所の仕事内容にかかわ る作業手順など」「あいさっ,接客,電話の対応などの しかた」「商品や製品などに関する知識・技術」は,7割 前後の事業所で行われている.

 それらに続くのが,「コンピュータやワープロなどの 情報処理に関する知識・技術」「新商品や新製品などに 関する開発のための知識・技術」「人間関係や人の心理」

などが続いている.

 さらに,より詳細に,業種別に教育・研修・訓練の内 容について見ると,表8のような結果となった.

 次に,別な角度からの,教育・研修・訓練の内容にっ いてその実施の有無を見ると,表9のようである.

 「従業員の創造性の開発」「幅広い教養」「家庭教育の ための知識」「昇進・昇格のための資格取得」などは,

従業員である個人が行うべき事と考えられているようで

ある.

(3)従業員に必要な生涯学習

 上で見たように,従業員に対する教育・研修・訓練は,

かなりの事業所で行われている.そうした中で,従業員 の生涯学習という観点から,っまり職業活動を継続する 中で,従業員が生涯学習をすることの必要性は,表10に 示すように,7割を超える事業所が「必要である」とし ている.業種によって若干異なるものの,必要性は全体 として高いことを示している(表11).

 そして,どのような内容の生涯学習を必要と考えてい るかといえば,表12に見られるようなものである.先に 示した表7の数値と比較してみた数値が「差」の欄に示 してある.この値は,従業員に必要であると考えられな がら,実際には行われていないという数値でもある.数 値から判断するに,「広く教養を身につけること」「経済 や時の動き」「スポーツや健康管理に関する知識」「人間 関係や人の心理」など,多くの自治体で行っている教養 を中心とした講座の内容とよく似た内容が示されている.

逆に,マイナスの値である「事業所の仕事内容に関わる 作業手順」「商品や製品などに関する知識・技術」など は,大学や自治体の生涯学習の場では任せられない内容 と考えられる.

(4)大学と中小企業との関わり

 大学と地域における中小企業との,あるいは,より一 般的には,企業と大学との関係のあり方が議論されてい る.ここでは,実際に中小企業を中心に見た場合,大学 などとの関わりの薄さを示している(表13).

 大学が大衆化する中で,大学と地域社会や企業などと の「コミュニケーション」の必要性が指摘されているし,

大学開放の戦略の一っにも掲げられている9).事業所か らの要望では,「どちらかといえば必要になる」という 回答が多いものの,「どちらともいえない」という回答 が最も多い(表14).

 このような回答にとどまっているのは,大学と事業所 を結ぶ情報の流れの回路が不充分であるということであ ろう.表には示さないが,「大学や短大などからの,従 業員の教育・研修・訓練の機会としてふさわしいと思わ れる学習機会の情報」が,「届いている」とする事業所 はわずか5.1%であり,82.4%の事業所は「届いていな い」と回答している.また,今後学習機会についての情 報は必要かどうかの問に対しては,41.3%の事業者が

(5)

山本 和人

表8 業種別に見た教育・研修・訓練の内容(M=435)

  業種

農業・林業・漁業 鉱業

建設業 製造業 電気・ガス・熱 供給・水道業 運輸・通信業 卸・小売・飲食業 金融・保険業 不動産業

サー一ビス業 公務 その他 不明

1あいさつ、接2事業所の仕3商品や製品4新商品や新5広く教養を 客、電話の応対事内容にかか

などのしかた わる作業手順        など

1 OO.0

100.0 47.6 66.7

82.4 80.0 78.8 85.7 100.0 71.4  0.0  0.0 75.0

100.0 100.0 73.8 77.5

88.2 77.1 75.0 85.7 100.0 76.6 100。0 71.1 75.0

などに関する知製品などに関す身につけること 識・技術    る開発のため

       の知識・技術     100.0       α0      0.0        0

     42.9      23.8      78.4      52.0

82.4 40.0 81.3 85.7 100.0 62.3 100.0 57.8 50.0

41.2 14.3 25.0 57.1 1 OO.0

28.6  0.0 35.6 50.0

0.0 0.0 14.3 19.6

23.5 28.6 20.0 32.1 50.0 10.4 0.0 22.2 0,0

6スポーツや 健康管理に関 する知識など

0.0 0.0 14.3 9.8

11.8 31.4 10.0 10.7 50.0 15.6 0,0 8.9

0.0

7家庭生活や8経済や時の

子どもの教育に動きに関するこ国語など国際 関する知識などと

0.0 0.0 2.4 1.0

5.9 11.4 6.3 7.1

0.0 3.9 0.0 2.2 0.0

0.0 0.0 4.8 12.7 1 7.6

20.0 16.3 67.9 50.0 10.4 0.0 11.1

0。0

9英会話や中10コンピュータ11高齢者の特12人間関係や13その他        やワープロなど徴や対応の仕 人の心理につ

化に関連した知の情報処理に 方について  いて 識・技術など  関する知識・技

α0 0.0 2.4 12,7 0.0 8.6 5.0 21.4 0.0 6.5

0.0 6.7 0.0

100.0  0.0 33.3 48.0 52.9 37.1 37.5 71.4 100.0 32.5 100.0 37.8 25。0

0.0 0.0 4.8 4。9 5.9 20.0 11.3 10.7 50。0 9』

0.0 6.7

0,0

 0.0 100.0 19.0 31.4 17.6 40.0 33.8 25.0 50.0 28.6  0.0 24.4 50.0

0099060605020 0.α14080306020

表9 従業員に対する教育・研修・訓練の実施(M==435):不明の数値は省略

・新入社員または、入職時のオリエンテーションや「社訓」などの研修

・職場や担当業務が決まった当初の技能訓練

・昇進・昇格のための資格を取得する時

・新しい機械を設置したり・新しいシステムに変更する時

・新規事業を展開する時

・仕事を行う上で必要な知識・技術やレベルを維持する時

・事業に関連した新しい知識・技術の獲得が必要なとき

・従業員の創造性を開発する時

・従業員の幅広い教養を獲得する時

・従業員の健康の維持・管理をする時

・従業員の家庭教育のための知識などを獲得する時

行う 69.2 66.0 24.1 64.8 50,8 62.5 63.9 17。9 13.8 23.4 5.5

行うときもある     1 4.5     22.8     25.5     27.6     27.6     33.1     30.6     49.4     50.8     43.2     24.4

行わない    14.7     8.7    45.5     3.9    11.0     2.5.

    2.3    27.1    30.1    29.0    63.7

(6)

表10従業員の生涯学習の必要性(M=603)

比率

必要である  必要ではない  わからない

    72.3      7.0      19.6

不明

1.2

表11業種別に見た従業員の生涯学習の必要性    業種

農業・林業・漁業 鉱業

建設業 製造業 電気・ガス・熱 供給・水道業 運輸・通信業 卸・小売・飲食業 金融・保険業 不動産業 サービス業 公務 その他 不明

必要である     33.1

0.0 72.7 73.2

94.1 63.6 72.7 82.1 66.7 72.8 100.0 68.7 66.7

必要ではない      0.0      0.0      10.9      8.5

0.0 9.1 8.2 0.0 0.0 6。8 0.0 3.0 0.0

わからない     66.7    100.0     1 6.4     1 8.3

0.0 25.0

1 7.3 17.9 33;3 19.4 0.0 25.4 33.3

不明

00000000

5.9 2.3 1.8 0.0 0.0 1.0 0.0 3.0 0.0

表12 従業員に必要な生涯学習の内容(M=436)

        内   容

1あいさつ、接客、電話の応対などのしかた 2事業所の仕事内容にかかわる作業手順など 3商品や製品などに関する知識・技術

4新商品や新製品などに関する開発のための知識・技術 5広く教養を身につけること

6スポーツや健康管理に関する知識など 7家庭生活や子どもの教育に関する知識など 8経済や時の動きに関すること

9英会話や中国語など国際化に関連した知識・技術など 10コンピュータやワープロなどの情報処理に関する知識・技術 11高齢者の特徴や対応の仕方について

12人間関係や人の心理について 13その他

比率

70.2 62.4 61.7 39.4 52.8 33.3 14.2 39.0 17.9 55.7 18.6 48.9 2.8

表6の比率.

70.8 77.0 67.8 35.2 19.3 13.1 4.1 16.3 8.0 41.8 8.7 29.4 6.4

一〇.6

−14.6

−6.1  4.2 33.5 2α2

Io.1 22.7  9.9 13.9  9.9 19.5

−3.6

表13事業所と大学・短大との関わり方(N=603) 表14大学とのっながりの必要性(N=603)

       関わり方 1生産活動の維持、管理を行う 2新製品の研究・開発を行う 3職能研修を行う

4レクリエーションや健康・スポーツ指導を行う 5景気や市場の動向を検討する

6関連業界の動向を検討する 7販売促進などのノウハウを手に入れる 8従業員の資質・能力を高める 9その他10特に関係はない

比率

6.3 8.3 11.6 7.0 11.3 11.3 8.6 23.9 1.7 50.6

  必要性の程度 たいへん必要になる どちらかといえば必要になる どちらともいえない あまり必要にはならない ほとんど必要にはならない 不明

比率

7.1 25.0 37.8 15.8 10.8 3.5

「必要である」と回答している.

 具体的にほしい情報がどのような経路で入手したいか にっいては,次の表15に表われている.表に見られる ように,中小企業の大学などに対する情報は,「定期的 に(大学・短大などから)情報を送ってもらう」方法を 希望する事業者が約半数の53.0%である.次に多いの

が,「業界団体,商工会議所などを通じて入手する」と いうもので,事業主調査の場合同様,「業界団体」など の位置付けが大きいことがうかがえる.

表15大学・短大などからの情報入手の方法(M=249)

       情報入手の方法

1直接大学などに電話などでたずねて入手する 2業界団体、商工会議所などを通じて入手する 3定期的に情報を送ってもらう

4教育委員会など市役所(行政)から入手する 5地元の商店街や組合などを通じて入手する 6その他

6.4 44.6 53.0 10.4 3.2 2.0

(7)

山本 和人

表16地元の大学に対する事業所の期待(N=603) 表20主涯学習の成果を生かす手立て(M=230)

1どのような専門の研究者、教員がいるかについての情報が匿U 2大学などの図書館を開放して、利用できるようにしてほしい 3グラウンドや体育館などスポーツ施設を開放してほしい 4講堂など式典ができる施設を利用できるようにしてほしい 5一般の講義室などを利用できるようにしてほしい

6コンピュータルームや実験室などを利用できるようにしてほしい 7さまざまな相談ができる窓ロを設置してほしい

8公闘講座をもっと開催してほしい 9学生や教職員と交流できるようにしてほしい 10事業活動に役立つアイディアを提供してほしい 11卒業する学生が地元に就職してほしい 12共同研究をしてほしい

13特にはない 14その他

21.4 27.4 25.0 8.6 8.l t3.8 14.3 24.9 8.5 19.9 22.1 2.7 25.9 1.5

      生かす手立て 1特に何もない

2奨励金等として、金一封を出す 3給料が上がる

4研修歴が残り、人事の判断に使われる 5昇進・昇格する場合がある

6事業所内の資格(社内資格)に活きる

7その他

比率

37.0 10.9 11.7 23.5 10.9 21.3 3.9

表17 従業員の教育・研修・訓練に大学などが関わる可能性(N=603)

  可能性

大いに二ある 少しはある ほとんどない わからない  不明

比率 7.8 27.9 40.3 19.7 4.3

表18大学などが関わる教育・研修・訓練の内容(N=230)

       内容

1あいさつ、接客、電話の応対などのしかたについて 2事業所の仕事内容にかかわる作業手順など 3商品や製品などに関する知識・技術

4新商品や新製品などに関する關発のための知識・技術 5広く教養を身につけること

6スポーツや健庫管理に関する知織など 7家庭生活や子どもの教育に関する知識など 8経済や時の動きに関すること

9英会話や中国語など国際化に関連した知識・技術など 10コンピュータやワープロなどの情報処理に関する知識・技術 11高齢者の特徴や対応の仕方について

12人間関係や人の心理について 13その他

比率

31.3 16.5 30.4 34.3 51.7 25.7 11.3 32.6 18.7 33.5 12.2 36.1 1.3

表19大学が関わる際の教育・研修・訓練の実施方法や形態(M=230)

である.「ほとんどない」(40.3%)とする事業所の方が

多い.

 その従業員に対する教育・研修・訓練の内容はどのよ うなものか示すのが,表18である.また,その際の実施 方法・形態にっいての考えは,表19に示すとおりである.

 一般に,自己啓発の方法をたずねると,「専門学校や 大学等の講座」をあげる人は少ない10).

(6)中小企業における生涯学習成果の評価

 最後に,中小企業は,これまで検討してきた大学など における生涯学習の機会を利用したり,大学のもっ教育 資源を利用して教育・研修・訓練を行った場合,その成 果をどのように生かそうとしているであろうか.表20に 示すとおりである.ここには,各事業所が大学で教育・

研修・訓練をどの程度評価しているかという問題にもっ ながる.特に何もしていないとする事業者が置く最も多 く,37%である.だが,研修歴が残り,人事の判断に使 われる場合など,意味をもった使われ方を示していると

        実施方法

1大学などの学生として授業へ参加、出席する 2共同研究・共同開発を通して行う

3公開講座へ参加、出席する 4相談の受け付けや情報提供を得る 5出張講座として事業所に「出前え」を頼む 6印刷物となった研究成果を手に入れる 7講師を招いて指導や講演を依頼する 8その他9よくわからない

比率

9.6 13.5 59.1 20.0 16.1 19.1 32.6 0.4 6.1

(5)大学への中小企業の期待

 さらに,地元への期待,すなわち,「事業所の事業活 動に関連して,今後,地元の大学に対する期待すること」

をたずねた結果が,表16である.

 「共同研究」についての期待は2.7%と最も低く,大 学の施設開放に対する要望が強いといえる.また,4分 の1は「特にはない」としている.

 従業員の教育・研修・訓練に,今後大学が関与する可 能性にっいては,表17のようである.大学が関わる可能 性は「大いにある」「少しはある」を合計しても35.7%

いえる.

 平成11年に出された生涯学習審議会答申は,学習の成 果を「個人のキャリア開発に生かす」ことをあげている が,それにふさわしい生涯学習支援を大学が行う必要が あるのではなかろうか.

(7)業界団体等との関わりと期待

 表21に示すのは,「従業員に対する教育・研修・訓練 を行ったり,研修機会の情報を入手する際,業界団体や 商工会などの団体は,どのくらい重要であるか」をたず     表21業界団体等との関わりへの期待

  重要度

1たいへん重要である 2どちらかといえば重要である 3どちらともいえない 4あまり重要ではない 5重要ではない

不明

比率

22,7 38.e 19.4 12.4 2.8 4.0

ねた結果である.事業主を対象とした調査の場合と同じ く,業界団体や商工会などは,非常に重要視されている といえるであろう.大学との情報交換が充分でないとい

(8)

うことを先に述べたが,大学はこのような業界団体との 関係を深めることが,中小企業の生涯学習を考える場合,

重要な点であろう.

4 中小企業の生涯学習需要

 大学をはじめとする高等教育機関に,中小企業は期待 を寄せっっも,大学からの十分な情報提供のないまま,

中小企業にとって大学は,「縁遠い存在」になっている と思われる.中小企業から大学への要望が,施設開放な どに集中するように,大学にどのような施設・技術・教 員がいるか,必ずしも伝えられているわけではない.

 このような条件の中で,事業所の活動に関わる大学に 期待する内容は,「教養的な学習」「スポーツや健康管理」

「経済や時の動き」といった,個人で取り組むべきと考 えるような内容となっている.大学の専門性がどこにあ るのかにっいて情報がない中では,必ずしも大学の持て る資源を活用できるような対応を考えられないでいるの ではないだろうか.大学とのっながりについての「必要 性である」と回答する比率の低さは,そのようなことと 無関係ではないであろう.

 さらに,事業主調査の分析でも指摘したことであるが,

中小企業と関わる業界団体や同業者組織の重要性が指摘 できる.中小企業は,そうした組織を頼りながら事業活 動を展開しているといえる.学習情報の提供や大学との っながりも,そのような組織を介在させることによって,

関係づくりがうまく行くのではないだろうか.事業所の 近くに存在する大学といえども,中小企業と付き合えて いるわけではないのである.

5 今後の課題

 本稿では,中小企業が立地する地域社会に存在する

「地元」の大学対して,生涯学習の学習機会提供機関と して,どのような関わりと期待をもっているか,企業・

事業所としてどのようにとらえているかを述べた.

 数として多い中小企業は,事業主をはじめとして,時 代に応じた技術革新や変化への対応のため,生涯学習を 最も必要としていると考えられる.しかし,それを支援 すると期待される大学は地域やそこに存在する中小企業 に対し,情報を充分に提供しているとはいえない.どの ようなコミュニケーションが必要なのか,業界団体との 関わり方などを検討すべきであろう.

 また,日本の雇用にっいての考え方や労働観が少しず

っ変化するとともに,終身雇用や年功序列というシステ ムが徐々に崩れてきている.「大企業」がさまざまに

「アウトソーシング」を行い,人材育成を社外に任せる 傾向は,働くことだけではなく,学習のし方も変化させ るはずである.生涯学習の体制整備は,中小企業のあり 様にどのような変化を与えることになるか,今後検討し ていくべき課題である.

 今回の調査結果のデータにっいても,まだ充分になさ れているわけではない.業種との関連,企業規模との関 連,立地する自治体との関係など,検討していきたい.

 特に事業主がどのようにして長期間,小さいながら事 業経営を行っていけるのか,学習活動との関連から更な

る調査と分析を行っていきたい.

       注

1)経済同友会『大衆化した新しい大学像を求めて  一学ぶ意欲と能力に応える改革を一」1994年.

2)白木万博「企業人からの指摘一大学・高専への要望一」

 『日本機会学会誌』Vol.94 No.8751991年.

3)中尾洋一「技術者のリフレッシュ教育に対する企業   のニーズと大学への期待」『大学と学生』325号   1992年.

4)岩瀬博「リフレッシュ教育の意義」『大学と学生』

 325号 1992年。

5)中には,地方自治体の生涯学習関係部署が,企業あ   るいはその従業員を対象とした要望調査を実施して   いるところもある.鳥取県生涯教育推進本部『企業   における生涯教育実態調査』1991年,千厩町教育委   員会『地域に貢献する企業と生涯学習一企業等にお   ける生涯学習実態調査報告書』1992年,などである.

6)国立教育研究所が行った調査では,従業員数の分類   では,99人以下が最も小さい規模である.また,

  1000人未満を中小企業ととらえている.全体で313   社から回答があったが,中小企業の回収数はそのう   ち,109社(34.8%)であった.国立教育研究所企   業・従業員調査研究班『職業生活の中の学習一企業   及び従業員の教育訓練。研修に関する調査報告書   (従業員調査の部)』,『職業生活の中の学習一企業及   び従業員の教育訓練・研修に関する調査報告書(企   業主調査の部)』1992年.また,労働省が行った   『職業能力開発及び人材育成に関する調査研究』

  1997年では,一番規模が小さいカテゴリーは,500

(9)

山本 和人

  人未満である.

7)拙著「民間企業における事業主の高等教育機関に対   する学習需要」創価大学『創価大学社会教育主事課   程年報』No.21998年度 1999年.

8)東京家政大学・社会教育研究室『民間企業の高等教   育機関に対する学習機会についての需要調査報告書』

  1999年.

9)齋藤忠夫他「座談会:企業と大学は互いに何を期待   するか」『電気学会雑誌』Vol.112 No. 61992年,

  有賀煕雄「ミニ・シンポジウム:大学における民事   訴訟法教育一H企業法務の立場から」『民訴雑誌』

  381992年など.また,徳島大学大学開放実践セ   ンター(『大学開放をめぐる環境と戦略一 1993 自   己点検・評価報告書』1994年.)では,「大学開放   のための重点戦略」として,「学内外との連携」を   「communication」として位置付けている.

10)労働省『民間教育訓練実態調査』1997年では,「専   門学校・大学等の講座」をあげる人は2.9%にしか   過ぎない.

参考文献

1 栗澤朱美,佐藤勝一『大学開放事業とその効果(下)』

 『岩手県立宮古短期大学研究紀要』第5巻 第2号   1995年.

2 杉本英二 「地域社会の情報化と社会人教育のあり   かた」小樽商科大学『商学討究』第47巻 第1号

  1996年.

3 日本労働研究機構 『企業内教育の現状と課題  一ホワイトカラー社員の教育訓練を題材として一』

  1996年.

4 日本労働研究機構『生涯学習社会を支える一個人  主導の職業能力開発のあり方に関する総合的研究か   ら一』1995年.

5 日本労働研究機構『企業内教育訓練と生産性向上に  関する研究』1996年.

6 徳島大学大学開放実践センター『生涯学習需要と大  学開放〜生涯教育需要調査(徳島県央地区)報告書  〜』 1992年.

7 徳島大学大学開放実践センター『徳島県民の生涯学  習〜成人の学習実態と学習ニーズ〜「生涯教育需  要調査」(平成2年,平成4年)の結果から』1993年.

参照

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