国立歴史民俗博物館研究報告 第207集 2018年2月
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[論文要旨]
沖縄の戦後復興から
高度経済成長の民俗学的考察
An Ethnographic Study of Okinawa from the Post-War Reconstruction to the Rapid Economic Growth Period : Case Studies of Communities Seized
by the US Forces and Graves Rebuilt after the End of the War
はじめに
❶米軍統治下の沖縄における高度経済成長
❷復帰前後の自動車台数の全国統計
❸軍に接収されたシマ
❹門中の団体による墓の再建事業
❺復興期・高度経済成長期における墓の再建
おわりに戦後の米軍統治下における沖縄の高度経済成長という課題に対し,沖縄の戦後史の先行研究から改めて学 び,その上で復帰前の沖縄の復興の指標として全国の自動車台数と人口の統計から自動車の普及率を比較し た。米軍統治下の沖縄には,日本本土から生活物資・自動車が輸入されていたが,その資金は基地収入に依 拠し,沖縄の生産力は成長せずに輸入超過の状態だった。戦後沖縄の米軍統治下における高度経済成長は,
日本の高度経済成長と同時進行ではあるものの収支のバランスや生産力の面では全く異なるものだった。
民俗学からの高度経済成長の研究を進めるため,当事者たる人々自らが記録した字誌・門中誌などの資料 を参照し,戦争・戦後体験の記述から当時の生活を知ることを試みた。まず軍に接収されたシマ(村落)に ついて,返還されても帰れなかったシマ,返還後に帰れたシマ,いまだに帰れなくとも人間関係の維持に取 り組んでいるシマから,人々が置かれた状況下で生活を取り戻したことを今回は土地を中心に論じた。
次に,戦後の復興期から経済成長期に門中の団体が実施した戦災後の墓の再建を分析した。それは戦前以 来の祖先祭祀の再開であり,生き残った人間関係の構築であり,亡くなった戦死者の供養にもつながる事業 だった。本稿では,戦後間もなくの墓の「移葬」(1952 年)と「墓地修復事業」(1953 年),那覇市の都市計 画による墓の「移転」(1954 年,1951 年~ 55 年),「遷葬」と偉人の顕彰(1955 年~ 58 年),門中有志の寄 付による墓の「修復・改修」(1958 年,1970 年)の 7 事例を挙げた。祖先祭祀の中核となる墓所の再建は土 木工事をともなうため門中で資金を集めることが必要であり,その実施に向けてそれぞれの事情や苦労がう かがえた。
復帰以降も今日に至るまで,門中にとって大きな事業である墓地の改修という事例は,沖縄の戦後史・現 代史,そして民俗学の研究・調査にとって多くの可能性を抱く考察対象である。
【キーワード】沖縄の高度経済成長,米軍統治下,軍に接収されたシマ(村落),戦災後の墓の再建,字誌・
門中誌
武井基晃
TAKEI Motoaki
軍に接収されたシマ,戦災後の墓の再建を事例に