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熱電素子を用いた温度差発電活用の手引き

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Academic year: 2022

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熱電素子を用いた温度差発電活用の手引き

吉川 隆

Guide for utilizing temperature difference power generation using thermoelectric elements

Takashi YOSHIKAWA*

In 2020, a new cabinet was inaugurated, and concrete programs for zero greenhouse gas emissions in 2050 began to start. A major pillar of these measures is the power shift to clean energy toward carbon neutrality, and the core key technology is renewable energy. Against this background, it is an urgent task for us researchers or engineers to establish effective and highly efficient utilization methods for renewable energy.

In this paper, I will discuss the practical approach for temperature difference heat utilization, which is one of the elemental technologies in the heat utilization belonging to the renewable energy. Especially I will discuss the following points as difficulty in extracting large power with a thermoelectric element, correct measurement method of the generated power characteristics, and protection techniques to prevent complete incapacity of power generators. Those are based on our experiment, and very important points. If you are going to study temperature difference power generation, please refer to this.

Keyword thermoelectric, power generation, Peltier Element, Energy Harvesting,Guide, temperature, difference Sensor Network,

1.緒言

2020年に,新内閣が発足し,2050年温室効果ガスゼロ エミッションに向けての具体的なプログラムが始動し始 めた。これは2015年のパリ協定で提唱された2050年温室 効果ガス 80% 削減の目標を更に上回る壮大なプログラ ムとなる。その中の施策において大きな柱となるのがカー ボンニュートラルに向けたクリーンエネルギーへのパワ ーシフトであり,中心となるキーテクノロジーこそが再生 可能エネルギーとなる。そういった背景から,我々研究者,

或いは技術者としては再生可能エネルギーの効果的高効 率利用手法を確立する事が急務となっている。

再生可能エネルギーとして,太陽光発電,風力発電,水 力発電,地熱発電,バイオマス発電が注目されているが,

これ等は再生可能エネルギーの中の更に新エネルギーの

中の発電分野に分類される。新エネルギーのカテゴリーに は発電分野の他に熱利用分野と燃料分野が含まれる。本論 では熱利用分野の中のひとつの要素技術である温度差熱 利用についての活用アプローチについて論じる。

著者らは2017年より太陽熱を利用した温度差発電方式 に関する研究を実施してきた[1]。その経験に於いて,幾つ かの知見を得たのでその内容を踏まえて,熱電素子を利用 した温度差発電を行う際の留意点について示す。

2.熱電素子による温度差発電実験事始め 2.1 発電しない熱電素子

「熱電素子を用いた温度差発電は非常に簡単である。素 子を買ってきて端子に負荷を接続し,後は素子の両端に温 度差を与えれば発電完了」というのが熱電素子の謳い文句 であり,多くの人がそのマニュアルに則って実験を試みる のだが,「何だこれ?全然発電しないじゃないか,LEDす ら点灯しない」と見捨ててしまう,残念ながら多くの人が

近畿大学工業高等専門学校

総合システム工学科 電気電子コース

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その体験だけで終わってしまうのも事実である。その謳い 文句は誇大広告でも何でもなくその通りなのである。

先ず初めに,熱電素子の発電効率は非常に低いという事 を知っておく必要がある。熱電素子の発電効率ηを式(1)

に示す。式(1)に基づいて計算したものを図1に示す。

図1に示した様に,熱電素子の種類(熱電素子の発電指標 であるZT)によってその性能は少し変わるものの,熱電 素子の片面を人の手で温めた時の温度差として15℃程 度の温度差が得られたとしても,1%程度のエネルギー変 換効率を得るに過ぎないのである。「それは低い」,という 事になるのだが,発電量としてどれだけ低いのか?という 問いに行きつく。

(1)

ここで,TH:高温側温度,TC:低温側温度,

ZT:無次元性能指数 である。

図1 熱電素子の発電効率

そこで少し熱伝達に対する考察が必要になる。熱電素子 の両端に温度差を与えるわけであるから,熱電素子を通し て熱流が輸送される。よって熱電素子の発電量は輸送され る熱流によって決まってくる。この値は一般的に次式(2)

で与えられる(フーリエの法則)。

Q = ⊿T・S・(λ/b) (2)

ここで,ΔT:温度差 S:熱電素子の面積 b:熱電素子の厚さ

λ:熱伝導率[kcal/mh℃] である。

最終的にどれ位のパワーPが発電されるのか?という 答えは式(1)と式(2)の積によって式(3)の様に表 されることになる。ここで熱電素子としては4㎝角のもの 1枚を例として計算を行った。

P = 0.00004⊿T [W] (3)

ここで注目すべき点は,発電量は結局温度差の2乗に比 例するという点である。温度差ΔTを10℃としても4mW しか発電しないことになる。

2.2 寿命の短い熱電素子

2.1節にて理想的な状態で4mW 程度の発電が得ら れることが分かった。早速,片面に手を押し当てると何と かLEDを点灯させることができた!と一瞬喜ぶが,それ も束の間,あっという間に消えてしまった!という結果に なってしまう。断線かと思いきやそうではない。熱電素子 は従来熱伝導率を大きくする事を目指して作られている が,そんなに大きく出来ているわけではない。厳密には酸 化材料や有機材料を用いた熱伝導度が小さい熱電素子の 研究が進められているが,現状では低温域(100℃以下の 領域)に於いて,入手可能で熱発電量が最も多きいものは 今回使用しているBiTeの熱電素子となり,熱伝導率はせ いぜい熱伝導率 0.25[kcal/mh℃]となってしまう。そこ で一般的には,温度差を稼ぐために冷却面にヒートシンク を取り付け,放熱効果を増す。しかしヒートシンクを取り 付けても空冷である以上(空気は熱伝導度が小さいため,

熱を貯め込んでしまう),大きな改善は望めない。熱電素 子にヒートシンクを取り付けた発電実験を行ったレポー トを散見するものの,何れも短時間性能の評価ではないか と思われる。そこで定常的な温度差を得るための一工夫が 必要となる。

これら2つの課題(「発電しない」,「寿命が短い」)をク リアしなければ,熱電素子による発電装置は日の目を見な いことになってしまうのである。つまり,如何に大きな温 度差を与え続ける事ができるか,如何に温度差を保つこと ができるかという事が要点となる。一つめの定常的に温度 を与える方法については,アプリケーションによって様々 であり,別稿として議論を行うとして,本稿としては次節 に於いて温度差を一定に保つ方法について示す。

3.冷却面における水冷方式

第2節に於いて定常的な温度差を保つ事の重要性と難 しさを述べた。熱電素子の冷却面にヒートシンクを取り付 けて放熱面積を増しても,所詮ヒートシンク周りの空気は 短時間に温められ,温度差は減ってゆく。その特性は以前 数値解析を実施しているのでその文献を参照されたい[2]。 そこで我々はこの問題を解消するために,先ずは,冷却面 に空気の対流を与える実験を行った。こちらは人体の体温 と室温の温度差発電を行うものである。腕に熱電素子を取

(3)

り付けて手の動きに応じた自然対流が生じるというモデ ル化による実験を行った。その結果,一定の効果を得る事 はできたものの,大きな効果を得るには至らなかった[2]。 そこで,ヒートシンク面を水に浸した水冷方式を採用する こととした[3]。この方法ではほぼ理論通りの発電量が得 られた。空冷式,対流式,及び水冷式の実験結果を図2に 示す。

図2 冷却面の状態による発電特性

これらの結果より,熱電素子を発電装置として用いるに は冷却面を水冷方式にすることが重要である事が分かっ た。しかし我々のアプリケーションに於いては,ウエアラ ブルな発電装置を検討しており,水に代わる高熱伝導材料 を冷却面に取り付ける実験を試みている。未だ大きな効果 は得られていないがシリコン素材の熱伝導シートを用い た放熱機構を冷却面に取り付ける事で定常温度差を大き くする事は確認している。結果を図3に示す。

図3 可搬型温度差発電の放熱面構造の検討実験

定常温度差は放熱面にシリコン素材を用いることで,熱電 素子による定常的な発電能力を約2倍とすることが確認 できた。これは冷却面の放熱効果を保ったまま,熱容量が 大きいシリコンシートを挟むことで熱電素子放熱面の温 度上昇を抑えられた結果と考えられる。未だ,端緒的な実 験段階であるため,詳細な検討が必要と考えられる。

4.熱電素子の発電性能実験について 前節に於いて,熱電素子を用いた発電のための基本的な 放熱に関する要点を示した。次に実際にどれくらい発電し ているかを評価する方法についてその留意点について示 す。一般的に素材のI-V特性を測定する際は,ソースメー タなどを用いて電子負荷として逆起電力を与えて評価を 行う。しかし,素材としてではなく,発電装置として熱電 素子を組み込んだ状態でフィールドにて発電特性を評価 する際は一定負荷の下で簡易的な実験を行う必要がある。

そこで,シャント抵抗を用いて解放端電圧と短絡電流の測 定を行うのであるが,その際,避けられない2つの留意点 が生じる。その2つの留意点について概説する。一つは,

シャント抵抗補正を行う必要があるという点と,もう一つ は測定には一定の時間を要するべしという点である。それ ぞれの説明を行う前に,まずはシャント抵抗を用いた簡易 な測定方法についてその概要を示す(図4)。

熱電素子は一般的に定電圧源モデルを用いて表される。

負荷端を解放端とした場合に,電圧を測定したものが解放 端電圧となり,非常に小さい抵抗値のシャント抵抗で負荷 端を短絡した時の電流(負荷端電流をシャント抵抗の抵抗 値で除したもの)が短絡電流となる。

図4 熱電素子の解放端電圧と短絡電流の測定

その結果,得られた熱電素子のI-V特性は図5に示すよ うに,測定によって求められた短絡電流と解放端電圧によ って表すことができる。のI-特性より,この状態(温度差)

における最大パワーPmaxは式(4)のように表される。

PmaxIs×Vo/4 (4)

(4)

図5 熱電素子のI-V特性

この計算を行う事により温度差発電装置の最大発電能力 を測定することができる。(最適負荷の条件の与え方に関 しては別稿にて示し本稿では述べない)[4]。

4.1 シャント抵抗補正を行う必要がある 先に,シャント抵抗を用いた最大発電能力の測定方法に 関して説明を行ったが,熱電素子の内部抵抗は決して大き いものではなく,一般的な熱電素子モジュールの内部抵抗 は数 Ω 程度である。それに対して十分小さいシャント抵 抗を用いれば問題はないが,熱電素子では数mA程度の発 電電流となるため,1mΩ 等の小さい抵抗を用いると μV オーダーの測定が必要となる。簡易的に測定できるマルチ メータでは1Ω 程度のシャント抵抗を用いる事が妥当と なる。そうするとシャント抵抗が無視できなくなってしま い,短絡電流を測定する際,図5のI-V特性於いて,IsVoを結んだ直線の動作線上でV=0上のIsの値を測定す るのではなく,やや小さい Is を測定しまう事になる。そ こで,妥当な最大電力Pmaxを得るには,式(5)のよう な補正が必要となる。

PmaxVo/4RVoV(R)-1) (5)

ここで,Vo:解放端電圧, V(R):シャント抵抗端電圧,

R:シャント抵抗。

この補正を行なわなければ,発電能力の実力値を過少評価 してしまう事になるので注意を要する。

4.2 測定には一定の時間を要する

もう一つの要注意事項は,電流値を測定する際にある一 定の時間をかけて定常的なシャント抵抗電圧を測定する 必要があるという点である。先に図4に於いて熱電素子の 等価回路を示したが,実は熱電素子の等価回路を厳密に示 すと,熱過渡特性を含む表現が必要となる。つまり,熱電 素子の両端に温度差を与えても瞬時に発電を行うのでは なく,電圧はそれから少し遅れて上がる特性を示す。これ は熱電素子の内部特性として熱容量をもっているため,

徐々に熱電素子の有効温度差が定常的なものに遷移する

ことを考えても容易に理解できる。その場合の熱電素子の 等価回路を図7に示す。

図6 熱電素子の時間遅延を含む等価回路

図6に示した等価回路にて負荷端電圧Vを式(6)によ って与えられる。

(6)

ここでR:シャント抵抗,r:内部抵抗,C:緩衝容量で あり,緩衝容量Cが満充電された初期状態(定常温度差と なった状態)にてスイッチをオンにした時の過渡特性を示 している。

式(6)が示す通り,コンデンサ容量Cを考慮すること で発電までの時間を要する事に加えて,シャント抵抗端の 電圧が定常値になるまで,一定の時間を必要とする事がわ かる。もしこのシャント抵抗の抵抗値が非常に大きければ それだけ定常値に達するまで長い時間を必要とするため,

注意を要する。特に自動測定をする際にはある程度連続的 なデータと取ることが必要となる。

他方,式(6)によると,解放端電圧は測定開始瞬時の 電圧を測定すれば解放端電圧Vo(=E)を測定できること になり,測定系の繋ぎ変えが不要となることがわかる。(但 し,シャント抵抗が小さい場合は瞬時に飽和してしまうの で測定が困難である。)

5.熱電素子の発電全損回避方式について 熱電モジュールは熱電素子を数百個直列接続して出力 電圧を高くしている。そのため,その中の一つでも欠損し た際には,出力を得られないという問題がある,そこで, 更に大きな出力電圧を得るためには熱電モジュールを複 数個直列接続して用いる事になる。しかし,先にも述べた 様に一つのモジュールの一つの素子が欠損しただけでも その部分が大きな負荷として働いてしまうため,極端に電 流値が低下してしまう。素子の欠損による全体出力パワー

(5)

の低下を軽減する方法として,熱電モジュールを多段個直 列する際に,できるだけ閾値電圧の小さいダイオードを各 モジュールに並列接続する方法を試みた。本保護回路(ダ イオード)を付加することで,故障時の発電電力の減少を 抑える事のみならず,正常時にも,熱電モジュールが発電 し続ける以上ダイオードには逆バイアスがかかるため,平 常時熱電基礎特性を低下させることなく機能することを 実験的にも確認している[5]。モジュールとしての保護ダ イオードの接続を図7に示す。(将来的にはモジュール内 の熱電素子間にダイオードを実装したモジュールが登場 する事が望ましい。)

図7 熱電素子の発電全損回避方式

6.結言

熱電素子を用いた発電装置を設計するうえで必要とな る,いくつかの留意点について概説を行った。我々は熱電 素子を用いたエネルギーハーベスティングに関する適用 化検討を行っている。そのアプリケーションの一つとして は小型無線端末用の電源としての利用であり,この場合,

平均して数百 μW の発電が必要となってくる[6]。ここで は僅か10℃程度の温度差で定常的な発電を行う事が重 要であり,これを達成するには現状の空冷式ではなく,水 冷式に模した可搬型の放熱機構を検討する必要がある。

もう一つは太陽熱を積極的に利用するソーラー熱発電 方式である[7][8][9]。こちらは数mW程度の発電を目 標としているが,太陽熱を如何に効率よく集熱できるか,

集熱した熱を外部に漏らすことなく蓄熱できるかといっ

た点が開発課題となっている。それ以外にも様々なアプリ ケーションを身の回りの環境に見出す事の出来る温度差 発電装置であるが,その成功例はこれまであまり報告され ていない。本論文で挙げた留意事項は実際に実験して気付 き,対応してきた点である。近い将来,電源の自給自足と いう時代が来るかもしれないという事を念頭に,熱電素子 の有効活用を行ってゆきたいと考えている。この報告が温 度差発電を行おうとしている技術者輩の一助となれば幸 いである。

謝辞

また,熱電発電の研究において実験などで,協力をして 下さった専攻科生,卒業研究生に感謝致します。

参考文献

[1] 吉川 隆,植田 裕樹,久保 武己,竹内 大喜,前川 涼 介,安場 悠斗,柳瀬 楓也,”ソーラーエネルギーベンチ”,

第23回日本高専学会(米子)講演論文集,P201 ,2017. [2]吉川 隆,森 優樹,”HEMS適用を指向した宅内温 度差発電の可能性について”,2015年3月,近畿大学工業 高等専門学校紀要 第8号,PP.59-64,2015第23回日本 高専学会(米子)講演論文集,P201 ,2017.9.

[3] 吉川隆,伊藤 聡真,小畑 周平,的早 耕太郎,森川 裕 汰,山下 玲伊,”熱電素子の水冷方式による発電効率の改 善”,第25回高専シンポジウム,PE-01,2020.

[4] 吉川 隆,”エナジーハーベスティング評価のための ダイレクトキャパシタ充電効率について”,2018年応用物 理学会春季学術講演会,20a-P8-2,2018.

[5] 的早 耕太郎,伊藤 聡真,小畑 周平,吉川 隆,”エ ナジーハーベスティング用熱電素子の故障対策について”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集(Web),

B-15-23,P.193, 2020.

[6] Takashi Yoshikawa, "HEMS with Energy Harvesting and Wireless Power Transmission", ICEE (International Conference on Electrical Engineering Proceedings, Okinawa, 2016.7.

[7] 吉川 隆,植田 裕樹,久保 武己,竹内 大喜,前川 涼介,安場 悠斗,柳瀬 楓也,”ソーラーエネルギーベ ンチの可能性について,電子情報通信学会ソサイエティ大 会講演論文集,P.292,2018.

[8] 吉川隆,清水 義朗,髙岡 奨,中川 大河,西宮 誠人,

平田 侑作,”ソーラーエネルギーベンチ その2”,第 25 回日本高専学会講演論文集,P.202, 2019.

[9] 吉川 隆,”ソーラーエネルギーベンチの評価”,2018 年 3 月,近畿大学工業高等専門学校紀要 第12号,

PP.43-50.2019.3.15.

参照

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