九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
民事判例研究
梁田, 史郎
九州大学大学院法学府
https://doi.org/10.15017/10980
出版情報:九大法学. 89, pp.397-413, 2004-09-15. 九大法学会 バージョン:
権利関係:
鮒
田傑断 締 購
謝 判例研究 民事判例研究 共有特許権取消審決取消訴訟の原告適格
最高裁平成一四年三月二五日第二小法廷判決︑平成=二年
︵行ヒ︶第一五四号︑破棄差戻し︑民集五六一三号五七四頁
︻はじめに︼ 梁 田 史 郎
ユ 共有に係る実用新案権︑商標権︑特許権において︑共同審
判については共有者全員が共同でなすべきとする規定︵実用
新案法四一条︑商標法五六条一項︑特許法=二二条三項︶が あるため︑共有者の一人が単独で審判を請求することはできない︒ところが︑共同で請求した審判についてなされた審決の取消訴訟に関しては︑原告適格についての規定がないため︑共有者の一人が提起した取消訴訟が適法か否かが問題となる︒この点について争われた一連の事件において︑最判平成一四年二月二二日︵二小︶︵民集五六巻二号三四八頁︶︹後述⑤事・件︑以下﹁⑤事件﹂と表記する︺は︑最高裁判所として初めて︑共有者の一人が提起した商標登録無効審決取消訴訟を︑民法で規定される共有物の保存行為として適法と判示した︒本件は特許の事例についても同様に共有者の一人が提起した審決取消訴訟を適法とする旨の判示をなしたものである︒ ところで︑審決取消訴訟は︑共有者全員の有する一個の権利の存否を決するものであるため︑共有者全員につき合一確定の要請があり︑従来判例は︑固有必要的共同訴訟と解してきた︒しかし︑本件は特許権成立後に共有者の一人が提起した審決取消訴訟について︑保存行為として共有者の一人に原告適格を認めつつ︑各共有者が共同して又は各別に取消訴訟を提起した場合には︑類似必要的共同訴訟に当たると解し︑A旦確定の要請は充たされるものとした︒⑤事件以降︑従来
の判例は変更されたと解すべきなのか︑それとも従来問題と
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九 なった事件とは事案が異なるに過ぎないのか︒ 本件は︑無体財産権の問題であるだけでなく︑共有一般において︑共有者の一人がいかなる行為を単独でなしうるのかという問題を考える上でも興味深い事件であり︑今回取り上げることとした︒本件については既に︑民訴法学者︑無体財産権法学者による評釈がある煙︑手続的観点のみではなく実
体法の共有を考察しなおす立場から視座を提供できれば幸い
である︒ 本稿では︑本件事案の概要および原審︑最高裁震害を概観
した後︑︻評釈︼として︑以下の手順で検討を進めることと
する︒まず︑一において本件における問題点を抽出し︑検討
内容を特定する︒次いで二では︑本件原審と最高裁判旨の理
論構成を分析し︑両者の相違点を明らかにする︒三では︑本
件で問題とされた審決取消訴訟の原告適格について︑本件出
現までの判例および学説を整理する︒四では︑本件最高裁が︑
学説でも通説とされる保存行為説を採用したことに鑑み︑共
有物の保存行為とは何かという点について検討する︒最後に
五で︑三および四での整理を踏まえ︑先例および学説との関
係において本件の位置づけを試み︑本判決の射程および意義
について考察し︑その上で私見を述べたい︒ ︻事実︼ X︵原告・上告人︶及び訴外会社︵以下﹁訴外A﹂と表記する︶は︑名称を﹁パチンコ装置﹂とする発明に係る特許権の共有者である︒ 訴外Bおよび訴外Cがそれぞれ本件特許につき特許異議の ヨ 申立てをしたところ︑特許庁は︑本件発明は特許法二九条二項の規定︵新規性の欠如︶により特許を受けることができないものであるとして本件特許を取り消す旨の決定をし︑その謄本はXおよび理外Aに送達された︒ これに対しXが単独で上記決定の取消を求めて︑Y︵特許庁長官・被告︶を訴えた︒ 原審判決︵東京高判平成=二年三月一二日︶は︑本件訴訟を共有者全員につき合一確定の要請があることによる固有必要的共同訴訟として︑Xの原告適格を認めず訴えを却下した︒その論旨は要約すると以下に述べるとおりである︒ 行政事件訴訟法三二条一項により︑共有者の一人が提起した訴訟の確定判決の効力が訴えを提起しなかった他の共有者にも及ぶというXの主張については︑同一特許権の共有者の
ように利害関係を共通にする者が同項にいう﹁第三者﹂に当
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たるとする点で必ずしも正当とは解されない︒また︑当該訴えについて請求棄却の判決が確定したときには︑審決の結論には蝦疵がないことが確定する︑とXは主張するが︑それだけでは︑当該判決の効力が訴えを提起しなかった他の共有者にも及び︑当該他の共有者が改めて提起する取消決定の取消の訴えにおいて︑異なった内容の判決がされることはあり得ないとする論拠が明らかではない︒この場合に︑請求棄却の判決が確定する時点では出訴期間が経過していることにより︑他の共有者が改めて訴えを提起することはできないことが通常ではあるが︑そのこと自体は当該判決の効力が及ぶゆえの効果であるということはできない︒Xは︑共有者の一人の訴え提起により他の共有者との関係でも審決の確定が遮断される︑と主張するが︑その点も明確であるとはいえない︒仮に特許権の共有が民法上の共有と解されるとしても︑共有者の一人が保存行為として取消決定の取消訴訟を適法に提起でき
ると解することはできない︒
これに対してXが上告した︒主たる上告理由は︑以下の三
点である︒
まず︑本件訴えにおいてXに原告適格が認められない場合
には︑自己の権利の伸張防禦をなし得ないという不当な結果 の招来が不可避である︒第二に︑本件訴えは固有必要的共同訴訟ではなく類似必要的共同訴訟であり︑行政事件訴訟法三二条一項︑および同一三条により合一確定の要請は満たされる︒第三に︑本件訴えは共有権利︵特許権︶の保存行為として各共有者が独自になしうるものであるから︑実体法的観点からも固有必要的共同訴訟に親しまない︒
︻判旨︼破棄差戻し
﹁特許を受ける権利が共有に係るときは︑各共有者は︑他
の共有者と共同でなければ特許出願をすることができず︵特
許法三八条︶︑共有に係る特許を受ける権利について審判を
請求するときは︑共有者の全員が共同してしなければならな
いとされているが︵同法一三二条三項︶︑これは︑共有者の
有する一個の権利について特許を受けようとするには共有者
全員の意思の合致を要求したものにほかならない︒これに対
し︑いったん特許権の設定登録がされた後は︑特許権の共有
者は︑持分の譲渡や専用実施権の設定等の処分については他
の共有者の同意を必要とするものの︑他の共有者の同意を得
ないで特許発明の実施をすることができる︵同法七三条︶︒
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九 ところで︑いったん登録された特許権について特許の取消決定がされた場合に︑これに対する取消訴訟を提起することなく出訴期間を経過したときは︑特許権が初めから存在しなかったこととなり︑特許発明の実施をする権利が遡及的に消滅するものとされている︵同法一一四条三項︶︒したがって︑特許権の共有者の一人は︑共有に係る特許の取消決定がされ
たときは︑特許権の消滅を防ぐ保存行為として︑単独で取消
決定の取消訴訟を提起することができると解するのが相当で
ある︹傍線筆者︑以下同様︺︒なお︑特許法一三二条三項の
﹁特許権の共有者がその共有に係る権利について審判を請求
するとき﹂とは︑特許権の存続期間の延長登録の拒絶査定に
対する不服の審判︵同法六七条の三図一項︑一二一条︶や訂
正の審判︵同法一二六条︶等の場合を想定しているのであっ
て︑一般的に︑特許権の共有の場合に常に共有者の全員が共
同して行動しなければならないことまで予定しているものと
は解されない︒
特許権の共有者の一人が単独で取消決定の取消訴訟を提起
することができると解しても︑合一確定の要請に反するもの
とはいえない︒また︑各共有者が共同して又は各別に取消訴
訟を提起した場合には︑これらの訴訟は類似必要的共同訴訟 に当たるから︑併合して審理判断されることになり︑定の要請は充たされる︒﹂
︻評釈︼ 合一確
一 問題の所在
特許取消決定の取消の有無は︑共有者全員の有する一個の
権利の存否にかかわる問題であるから︑その結論が共有者ご
とに区々になることは許されず︑共有者全員について合一に
確定する必要がある︒そこで一方では︑本件原審のように︑
全共有者が共同でなければ当事者適格が認められないという
見解︵固有必要的共同訴訟説︶が見られる︒しかし︑この見
解に従うと︑何らかの理由で共有者全員の同意が得られない
場合︑他の共有者は訴訟を提起することができず︑出訴期間
が経過し特許権が消滅するのを待つしかなく︑特許権の存続
を望む共有者にとっては酷であろう︒そのため︑特許権の共 有の性質からして︑共有者の一人による審決取消訴訟の提起
は認められないのか︑認められるとすればどのような理論構
成によってそれが可能なのかが考察されなければならないと
考える︒
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特許権の共有においても原則的には民法の規定が適用されるのであり︵民法二四六条︶︑共有の客体が所有権ではなく特許権であることを理由に︑持分権の処分制限︵特許法七三条一項︶等︑特別に規定する必要のある事項が︑特許法で規 ら 定されているものと解される︒このため特許法において明示的な規律のない問題が生じた場合は︑原則に戻って民法の理論に従って判断される︒民法の規定では︑共有物の変更については共有者全員の︑管理行為については持分の過半数の同意が必要とされているが︑保存行為については各共有者が単独でなしうるものとされている︵民法二五一︑二五二条︶︒本件において最高裁は︑審決取消訴訟をこの共有物の保存行為として︑共有者の一人に原告適格を認めた︒しかし︑共有物の保存行為の性質から︑いくつかの理論上の問題が生じる︒共有物の保存行為として共有者の一人が単独で行った行為の効力は︑必然的に他の共有者にも及ぶものと解され︑訴訟の場合には既判力が他の共有者に及び︑他の共有者に不利益を及ぼす可能性があるのではないか︑ということが理論上の主要な問題となろう︒本稿では︑この点を主に検討する︒ まず︑本件原審の判旨と最高裁の判旨の理論構成を検討する︒ 二 本件原審と最高裁の判旨の理論構成 本件原審の聖旨は上告理由も指摘するとおり︑明快とは言い難いところもあるようではあるが︑その趣旨は以下に述べるようなものと解される︒ 原審は︑審決取消訴訟の提起が共有物の保存行為とはいえないことを前提として︑共有者の一人が提起した判決の効力が他の共有者に及ぶかどうかを︑請求認容︑棄却の場合に分けて理論上の考察をしている︒まず︑請求認容すなわち取消判決確定の場合について︑行政事件訴訟法三二条一項を以下に述べるように解しているものと思われる︒すなわち︑この規定は︑原告とは利害関係が相反する第三者が︑当該処分が取消判決によって取り消されたことを争えなくなるという場面を問題とする規定であって︑原告とは利害関係を共通にする第三者が取消判決をいわば自己に有利に援用することができるかどうかという問題は必ずしも本条の想定するところで はない︑と︒この立場に立って︑原審は︑本条によって判決の効力が他の共有者に及ぶとする見解は︑必ずしも正当でないとしたものと思われる︒また請求棄却の場合︑取消審決の効力が確定するが︑それは︑他の共有者が出訴期間を徒過したことによるのであって︑判決の効力が及ぶからではないと魏 匂
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大九 した︒ つまり︑共有者の一人の提訴にかかる審決取消訴訟の判決の効力が︑理論上橘の共有者には及ばず︑合一確定の要請が満たされないことを理由に︑共有者の一人の原告適格を認めなかったのである︒しかし︑原審は︑なぜ審決取消訴訟の提起が保存行為に当たらないのかについては明言していない︒
以上の原審の判断に対し︑最高裁判決は︑共有に係る特許
の取消決定がされた場合︑取消訴訟を提起することなく出訴
期間を経過したときは︑遡及的に特許権が消滅してしまうの
で︑取消決定の取消訴訟を提起することは共有物の保存行為
であり︑特許権の共有者は︑単独で取消決定の取消訴訟を提
起することができるとした︒またこう解しても︑合一確定の
要請に反するものとはいえないとしているが︑最高裁はその
理由を明示していない︒すなわち︑保存行為だから理論上合
一確定の要請が満たされるのか︑実質的に合一確定の要請が
満たされる場合であるに過ぎないのか︑玉野だけからは明ら
かではないと思われる︒
そこで判旨が引用する同じ第二小法廷の判決である⑤事件
をみてみると︑合一確定について以下に述べるような説明が なされている︒すなわち︑﹁商標権の共有者の一人が単独で無効審決の取消訴訟を提起することができると解しても︑その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には︑その取消しの効力は他の共有者にも及び︵行政事件訴訟法三二条一項︶︑再度︑特許庁で共有者全員との関係で審判手続が行われることになる︵商標法六三条二項の準用する特許法一八一条二項︶︒他方︑その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には︑他の共有者の出訴期間の満了により︑無効審決が確定し︑権利は初めから存在しなかったものとみなされることになる︵商標法四六条の二︶︒いずれの場合にも︑A旦確定の要請に反する事態は生じない︒さらに︑各共有者が共同して又は各別に取消訴訟を提起した場合には︑これらの訴訟は︑類似必要的共同訴訟に当たると解すべきであるから︑併合の上審理判断 されることになり︑合一確定の要請は充たされる﹂︑と︒ 以上の説明から︑⑤事件において最高裁は︑共有物の保存行為を理由として理論上合一確定の要請が満たされると述べているのではなく︑事実上合一確定の要請に反する事態が生じないことを理由として共有者の一人に当事者適格を認めても不都合はない︑としていることがうかがえる︒この趣旨と
本件最高裁の判旨とは同様であると思われる︒
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ここで注意すべきは︑本件が︑いったん特許権が成立した後の審決取消訴訟において︑保存行為の理論により共有者の一人の当事者適格を認めたということである︒⑤事件より前
の︵最高裁︶判例においては︑特許権等の登録前に︑審決取消
訴訟を共有者の一回忌単独で追行できるか否かが争われた事
例︵特許庁の審判手続きで当事者の対立がない︑いわゆる査
定系︶しか見られない︒⑤事件と本件が特許権について扱っ
たのに対し︑それより前の事件では特許を受ける権利につい
て扱っており︑審決取消訴訟がなされたときに当事者が有す
る権利︵すなわち特許権等か︑特許等を受ける権利か︶が異
ソなる︒
三 審決取消訴訟の原告適格に関するこれまでの判例・学説
︵一 j判例
ここで︑特許権または特許を受ける権利の共有者の一人に
よる審決取消訴訟提起の許否に関する︑これまでの判例を概
す 観する︒管見の限りで判例集に掲載されたすべての最上級審
の判決を挙げる︒
まず︑①大判昭和八年七月七日︵五民︶︵民集一二巻一八号
一八四九頁︶︹以下﹁①事件﹂と表記する︒以下︑②から⑥ の判例についても同様︺が存在する︒これは︑大正一〇年の旧特許法の下︑特許局の審査とその抗告審判︑および抗告審判と旧憲法のもと特許庁の上級行政官庁としての性格を持つところの大審院における訴訟手続きとの間に︑続審的関係が認められ︵旧特許法一一一条の二︑同=五条参照︶︑しかも︑共有者の審判請求に共有者全員の共同を要求する現行特許法=二二条三項のような規定のない制度の下︑共有実用新案権の登録無効の審判に対する抗告審判請求について判示された︒①事件は︑審決取消訴訟を固有必要的共同訴訟としつつ︑他の共有者の﹁自己ノ権利ノ伸張防禦ヲ為ス能ハサルカ如キ不当ノ結果﹂を避けるために︑旧民事訴訟法六二条一項
︵現行四〇条一項︶により一人が提起した抗告審判請求は他
の者にも利益な行為としてその効力を生じるので︑共同当事
者全員に利益となるときは︑その訴訟行為は全員のために効
力があるものとした︒
次に︑大審院への上告の制度を廃止し︑これに代えて東京
高裁へ訴えを提起できるようにした︵旧特許法一二八条の二︶
昭和二三年の改正後の︑大正一〇年法の下における先例とし
ては︑②審判昭和三六年八月三一日︵一面︶︵民集一五巻七
号二〇四〇頁︶がある︒これは実用新案登録の共同出願人の
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九 一人が登録出願拒絶査定に対する抗告審決の取消訴訟を提起
した事案において︑大審院時代とは異なり︑特許庁の抗告審
判手続きと東京高裁の取消訴訟手続きとの連続的関係を否定
し︑訴え提起に必要的共同訴訟の特則である旧民訴法六二条
一項︵現行四〇条一項目の類推を認めず︑審決取消訴訟が固
有必要的共同訴訟であることを理由に︑訴えを却下した原審
を支持したものである︒
昭和三四年の現行特許法施行後の先例としては︑まず︑③
最判昭和五五年一月一八日︵子壷︶︵判時九五六号五〇頁︑
油日四〇八号六七頁︑金判五九七号四九頁︶がある︒②事件
と類似の事案︑すなわち実用新案登録出願拒絶査定に対する
不服審判の審決取消訴訟︵査定系︶において︑審決取消を求
めて訴えを提起することは︑民法二五二条但書にいう保存行
為に当たらないことを明言し︑固有必要的共同訴訟であるこ
とを理由に︑共同審判請求人の一人による提訴を不適法とし
た︒その後︑やはり③事件と同様の事案︵査定系︶において︑
④最判平成七年三月七日︵三曹︶︵民集四九巻三号九四四頁︶
は︑③事件を引用しながら︑合一確定の要請から実用新案登
録を受ける権利の共有者が提起する審決取消訴訟を固有必要
的共同訴訟と解すべきであるのは︑実用新案法四一条の準用 する特許法一三二条三項と同趣旨であることを確認し︑その旨を改めて判示した︒ 以上のように権利登録前の査定系の事例に関して︑判例は
一貫して審決取消訴訟を固有必要的共同訴訟として取扱って
きた︒これに対し︑平成一四年︑共有商標権︵権利登録後︶
の登録無効審決取消に関して︑共有者の一人が単独で取消訴
訟を提起することの許否が争われた事案︵当事者の対立があ
るいわゆる当事者系︶において︑⑤最判平成一四年二月ニニ
日︵二小︶︵剛臆五六巻二号三四八頁︶は︑﹁︵商標登録無効
審決︶取消訴訟の提起は︑商標権の消滅を防ぐ保存行為に当
たるから︑商標権の共有者の一人が単独でもすることができ
るものと解される︒⁝このような場合に︑共有に係る商標登
録の無効審決に対する取消訴訟が固有必要的共同訴訟である
と解して︑共有者の一人が単独で提起した訴えは不適法であ
るとすると︑出訴期間の満了と同時に無効審決が確定し︑商
標権が初めから存在しなかったこととなり︑不当な結果とな りりかねない﹂として︑最高裁において初めて︑共有者の一人
組よる無効審決の取消訴訟提起を保存行為として認めるに至っ
た︒続いて︑⑥最判平成一四年二月二八日︵三小︶︵判時一
七七九号八七頁︑判タ一〇八七号九五頁︑金壷一一五〇号一
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七頁︶が︑⑤事件と同様の事案において同様の判示をなした︒その直後の判例である本件は︑特許庁長官を被告とするものではあるが︑登録後すなわち特許権成立後の審決取消訴訟として︑当事者系の事例と共通性を有するものと思われる︒ このように︑特許権と特許を受ける権利︵特許法三三条︶を区別し︑前者の場合︑共有者の一人に保存行為として訴えの提起を認め︑後者についてはそれを認めない判例の態度は︑発明が保護されるためには特許登録を受けなければならないとする特許法の趣旨に由来するものと解される︒そしてこの区別は︑実用新案権︑商標権の場合にも等しく当てはまるものと思われる︒︵二︶学説
特許権または特許を受ける権利が共有にかかる場合におけ
る審決取消訴訟の当事者適格に関する問題について︑学説は
主に︑①固有必要的共同訴訟説︑②旧民訴法六二条一項︵現
行四〇条一項︶類推説︑③保存行為説︵民法二五二条但書適 も用説︶の対立があり︑今日では保存行為説が通説とされる︒
登録前の特許等を受ける権利と登録後の特許権等を区別し結
論を異にする判例に対して︑この点を意識的に区別し少なく
とも結論を異にすべきとする学説は︑ほとんど見当たらない ようである︒以下︑順に検討する︒
①固有必要的共同訴訟説は︑査定系事件における判例の立
場であって︑審決取消訴訟は審決と同様の意味において共有
者全員につき合一にのみ確定すべきであるから︑共有者全員
が共同して訴えなければ当事者適格を欠くとするものである︒
また︑現行の日本国憲法のもとでは︑行政権に属する特許庁
の審判手続きと司法権に属する審決取消訴訟手続の問に連続
的関係を認めないのが︑判例・多数説の立場である︒
②旧民訴法六二条一項︵現四〇条一項︶類推説は︑昭和二
二年以前の法制度の下においては当然に承認された考え方に
立つもので︑特許庁の審判手続きと東京高裁の訴訟手続との
間に実質的連続関係を肯定し︑取消訴訟の提起を︑上訴のよ
うに審判を共同で請求した共有者全員にとって利益になる行
為とみて︑この規定により︑共有者の一人による審決取消訴
訟の効力が他の共有者にも及ぶと解するものである︒
③保存行為説は︑共有の原則的規定として民法に規定され
ている︑共有物の保存行為として共有者の一人が審決取消訴
訟を提起しうると解するものである︒そして︑審決を取り消
すとの勝訴判決は訴えなかった他の共有者にも及び︵行政事
件訴訟法三二条一項︶︑敗訴判決のときは原告となった共有
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大九 者にのみ効力があり︑訴えなかった他の共有者には出訴期間徒過により審決確定という結果になるから︑結局︑合一確定の要請は満たされるとする︒また︑特許登録前の拒絶査定不服の審判︑補正却下決定不服の審判についても保存行為の理論を適用し︑共有者の一人による審判の請求を適法と見る見 ヨ解も成り立ちうる︑とするものも見られる︒
本件最高裁は︑保存行為の概念を用いて︑共有者の一人に
当事者適格を認めるという結果を導いた︒これは従来判例に
おいて共有物の保存行為として認められてきた例と整合性を
持つものだろうか︒またそもそも︑従来判例において認めら
れてきた例は︑保存行為として妥当なものだったのか︒次に︑
共有一般の問題関心から︑これらの問題について若干の検討
を加えたい︒
四 共有物の保存行為に関する学説・判例
それでは︑これまで学説・判例は保存行為をどのようなも
のと考えてきたのだろうか︒まず︑現行民法典の起草者の一
人置ある梅謙次郎は︑保存行為については各共有者が専断で
なしうるとしなければ︑往々にして物の殿滅︑亭亭をきたす
おそれがあるとした後︑具体例として﹁家屋ノ小修繕︑損敗 に シ易キ物ノ売却﹂をあげる︒また民法典の共有部分を起草したと考えられる富井政章は︑保存行為は物または権利を保全するのに欠くことのできないものであって︑他の共有者のためにも利益となりかつ迅速を要することが多いことを理由に︑他の共有者の同意なしに各共有者が単独でなすことができる どものとする︒その後の学説においても︑共有物の保存行為は︑財産の滅失・風損を防止してその現状を維持する行為である どとする点で︑特に異論を見ない︒ もっとも︑不法侵奪された共有物の引渡請求を︑理論的には不可分債権としながらも︑実質的には保存行為と見ること まができるとする見解もある︒ また︑訴え提起を保存行為とすることには懐疑的ながらも︑限定的にそれを認める見解もある︒すなわち︑保存行為は共有者全体の立場から見て好ましいとされるので︑その行為の結果は︑当然に他の共有者にも影響が及ぶ︒従って︑訴えの提起が保存行為としてなされる場合があるならばその既判力は他の共有者にも及ぶと解すべきである︒それゆえ︑訴え提起の場合は敗訴したときの結果をも考慮して保存行為となる ヨかどうかを決すべきであろう︑というものである︒
また︑次に述べるように︑判例が共有物の保存行為に該当
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するものとして共有者の一人による提訴を適法としているような行為について︑持分権の本質により︑当然に共有者の一 人が単独でなしうるとする説が広く主張されている︒なお︑ ロ 大正時代にその旨を明言した判例も存在する︒ 判例は共有関係を対外的に主張する場合は固有必要的共同訴訟としながら︑以下に述べるようなものを保存行為として︑共有者の一人に当事者適格を認めてきた︒すなわち︑共有地の不法占有による妨害排除とその明渡請求︹大判大正七年四月︻九日︵﹇民︶︵民録二四輯七三一頁︶︺︑共有土地の引渡請求︹大判大正︸○年六月=二日︵二民︶︵写録二七輯一一五五頁︶︺︑用水専用権の妨害排除請求︹大判大正一〇年七月一八日︵二民︶︵民録二七輯一三九二頁︶︺︑無効鉱業権登録や無効所有権登記の抹消請求︹大判大正一二年四月一六日︵二民︶︵民集二巻二四三頁︶︑最判昭和==年五月一〇日︵一画︶︵民
集一〇巻五号四八七頁︶︑最判昭和三三年七月二二日︵三小︶
︵民集一二巻一二号一八〇五頁︶︺︑共有要役地のための地役
権設定登記手続請求︹最判平成七年七月一八日︵三小︶︵民集
四九巻七号二六入四頁︶︺等である︒また最近では︑本件の
後に出現したものであるが︑不動産の共有者の一人が共有不
動産について実体法上の権利を有しないのに持分移転登記を 経由している者に対し︑単独でその持分移転登記の抹消登記を請求できる旨︹最判平成一五年七月一一日︵二小︶︵民集五七巻七号七八七頁︶︺が判示された︒五 本判決の射程および意義と私見
︵一 j射程および意義
妨害の排除や共有地の引渡︑あるいは無効登記の抹消請求
などに関し︑保存行為として共有者の一人による訴訟追行を
認めてきた判例の流れからすると︑本件判旨はその流れに従っ
たものだと言えるだろう︒
そして︑発明が保護されるためには特許登録を必要とする
という特許法の趣旨から︑最高裁は︑特許権登録後における
審決取消訴訟について共有物の保存行為として共有者の一人
に原告適格を与えても︑登録前の特許を受ける権利について
は︑以前と同様今後も共有者の一人に審決取消訴訟の原告適
格を認めないものと思われる︒その意味で本件は︑⑤⑥判決
が商標権登録後の当事者系の事件だったのに対して︑権利登
録後ならば当事者系ではなく特許庁長官を相手方とする事例
においても同様の法理が妥当することを示したにすぎず︑あ
くまで射程は特許権等登録後の事件に限られるものと思わ
娚 翁
04三
号89学法大
九 れる︒
︵二︶訴訟提起を保存行為とすることの理論上の問題点
しかし︑そもそも共有の権利保全のための訴え提起を保存
行為として認めてきた判例理論には︑検討の余地がある︒す
なわち︑勝訴したときは良いとして敗訴したときのことを考
えると︑訴訟提起が常に他の共有者の利益になる行為とは言
えないのではないであろうか︒たしかに︑共有者の一人が保
存行為として提訴したときに︑敗訴した場合は他の共有者に
既判力が及ぶ根拠はないというべきである︑という見解も主
の 張される︒しかし︑民法二五二条によると︑保存行為の範囲
について︑各共有者は単独で共有物全体すなわち他の共有者 むの持分についても管理権を有するものとされている︒そうで
ある以上︑共有者の一人が保存行為として提起した訴訟は︑
訴訟物につき管理処分権を有することに基づく民訴法上の法
定訴訟担当であって︑既判力は敗訴のときも他の共有者に及 お ぶものと解すべきである︵民訴法一一五条一項二号︶︒従っ
て︑勝訴したときだけ既判力あるいは反射的効力が他の共有
者にも及び︑敗訴したときは既判力が及ばず他の共有者が再
び同じ内容の訴訟を提起することができる︑と解することは
できないであろう︒判例が保存行為として共有者の一人に共 有物返還請求の訴えを提起することを認めているのは︑共有 者の不可分債権者的地位によるものと考えられ︑保存行為の概念を用いることが適当かどうかについては検討の余地がある︒ 以上のような前提に立てば︑保存行為として共有者の一人に訴訟の提起を認めるときは︑特に拙劣な訴訟追行をした場合や故意に放棄や認諾等をした場合に︑他の共有者の不利益ははなはだしいことになろう︒ そこで︑このような場合保存行為ではなく︑請求権の放棄 の場合と同じく︑むしろ処分行為と解さねばなるまい︒処分行為であるとするならば︑共有物の変更︵民二五一条︶にあたり共有者全員の同意が必要である︒保存行為とは共有物の現状を維持するだけの軽微な行為が予定されていたものであって︑他の共有者に不利益を及ぼし得る訴え提起は本来保存行為の概念になじまないというべきではないだろうか︒
︵三︶本件で保存行為理論を用いることの問題点
本件のような事例では︑出訴期聞の経過によって訴訟を提
起しなかった他の共有者が改めて訴えを提起する可能性のな
いことが通常であろうから︑敗訴のときの既判力を考える実
益はないともいえる︒そして勝訴の場合は取消審決が取り消
鮒
田傑
断 締 懸
姻
されるに過ぎず︑敗訴のときも取消審決の効果が確定するだけであり︑出訴期間の経過した他の共有者に実質的な不利益がないと言うこともでき︑審決取消訴訟の提起を保存行為と認めることが適当なようにも見える︒しかしながら︑保存行為として単独での訴訟提起を許す以上︑理論上敗訴したとき お も既判力は他の共有者にも及ぶと解さざるを得ないであろう︒ このような理論上の問題の他に︑民法二五二条の規定上︑保存行為とみなすならば他の共有者の反対があっても共有者の一人が単独でなしうると解さざるを得ず︑審決の取消を望まないものが共有者中にいる場合にも︑共有者の一人が単独 め で取消訴訟を提起しうるのかといった疑問も生じる︒この点︑特許法の存続について意欲を失った共有者がいる場合は特許権が消滅してもやむを得ないとされていることとの関係で矛 ソ盾が生じうる︒また︑費用の観点からしても︑保存行為の費用は共有者全員で負担すべきこととされていることから︑勝訴の見込みが薄いようなときにまで︑共有者の一人が提起した審決取消訴訟の費用を他の共有者にも負担させることにな ソるのでは︑不公平感が否めない︒︵四︶解釈論的検討 上述のような問題点を回避して︑かつ判例と同様の結論︑ すなわち権利成立前の特許等を受ける権利の場合は共有者全員でなければ当事者適格を認めず︑特許権等については各共有者が単独で審決取消訴訟を提起することができるという結論を導くことは︑審決取消訴訟を共有物の保存行為というよりは共有持分権の保存行為と解することによって可能になるかもしれない︒すなわち︑各共有者が一個の特許権等における自己の持分権を保存するためには︑特許権等について部分的存続の可能性がない以上︑結局一個の特許権等全体についての審決取消訴訟を提起せざるを得ないからである︒しかも共有物全体の保存行為として訴えているのではない以上︑敗訴したときの既判力は訴えを提起した共有者にのみ及ぶものと解され︑理論的な問題はより少ないように思われる︒ しかしながら︑そのように解しても︑権利成立前の査定系の事例において︑審決取消訴訟が固有必要的共同訴訟と解されることに変わりはなく︑それが妥当な解決といえるのかどうかは疑問である︒ そこで以下に述べるように解することはできないだろうか︒すなわち︑特許法三八条︑=二二条三項において共有者が共同しなければならないと規定されているのは︑共有者の有する一個の権利について特許を受けようとするには共有者全員㎝ 翁
04⑳
号89学法
大九 の意思の合致を要求したものにほかならない︑という本件最高裁の論理に従えば︑審決取消訴訟を保存行為と解するよりもむしろ︑審判請求をするという︑いったん示された全共有者の一致した意思に従って︑明示的にそれが撤回されない限り︑審決取消訴訟についても︑共有者全員の合意があるものとして共有者の一人に単独で訴訟提起を許す︑とでも解すべ
きではないか︒そのように解するときは︑③④事件のような
登録前の審決取消訴訟も︑いったん共同申請がなされた以上
共有者の一人による訴え提起を認めるべきことになる︒
保存行為の概念内容について︑従来我が国の学説は明確な
具体像を示すところまで至っていない︒そのこともあって︑
裁判所は個々の具体的事件を解決するために﹁保存行為﹂概
念を時に拡大解釈してきたかに見える︒今後︑外国立法・判
例実務も比較参照して︑とりわけ共有者の一人が単独でなし
うる﹁保存行為﹂について︑より立ち入った体系的な考察が 必要だと思われる︒
注︵1︶ 本稿に関する限り基本的に同じ法理が妥当するので︑
以下の記述はこの三者に共通するものである︒紹介する 先例︑学説についてもこの三者に共通するものと了解さ れたい︒
︵2︶ 管見の限りで︑堤龍弥﹁三三﹂リマークスニ七号︵二
〇〇三年︶一〇七頁︑横山久芳﹁判司﹂ジュリ一二四六
号︵二〇〇三年︶二四八頁の他︑最高裁判所調査官の高
部真規子﹁時の判例﹂ジュリ一二三四号︵二〇〇二年︶
一〇九頁も存在する︒
︵3︶ 特許付与後の特許異議申立制度は平成六年の特許法改
正により創設され︑平成一五年の改正により廃止された︒
その後は無効審判制度︵特許法=一三条︶に統合された︒
﹃産業財産権標準テキスト特許編﹄︵特許庁企画︑発明協
会制作︑二〇〇四年︶一五八頁︒
︵4︶ 中山信弘﹁特許を受ける権利の共有者の一人による審
決取消訴訟の適格性﹂田倉整先生古希記念﹃知的財産を
めぐる諸問題﹄︵発明協会︑一九九六年︶五五〇一五五二
頁は︑合有では原則として認められない分割請求も︑特
許権の共有者間では団体的規制を受けないために可能で
あると解されていることから︑特許権の共有を︑合有で
はなく民法にいう共有であるとし︑それゆえ合有である
からという理由で︑共有者の一人による提訴は違法とい
う結論を導くことはできない︑とする︒また︑共同所有
形態には種々のものが存在し︑ある特殊な共同所有形態
の財産︵たとえば組合財産︶については︑民法の共有の
規定がどの程度制約されるのか︑という問題に帰着する
と考えられている︑と指摘する︒なお後掲︵注5︶参照︒
朗
史田傑
究断
腋半民114 ︵5︶ 中山信弘編﹃注解特許法 上﹄第二版︵青林書院︑一 九八九年︶七二一頁︹中山信弘︺は︑特許権の共有にお いて持分権の譲渡や担保権の設定が自由に認められない のは︑その合有的性格というよりは︑各共有者が当該特 許発明の全範囲にわたり︑単独で自由に実施することが でき︑そのことは他の共有者の実施に法的にはなんらの 妨げとならないという無体財貨の特殊性に由来している︑ と指摘する︒この見解に従えば︑共有者の一人の特許権 実施が他の共有者に及ぼす経済的影響が大きく︑同意し ない者との共有を強いることを避けるため︑持分権の譲 渡制限のない通常の共有と異なり︑このような規律がな されているものと思われる︒なお前掲︵注4︶参照︒
︵6︶ 園部逸夫編﹃注解行政事件訴訟法﹄︵有斐閣︑一九八
九年︶四〇二頁︹村上敬一︺︒
︵7︶ 露里五六巻二号三五三頁︒
︵8︶ 竹田和彦﹃特許の知識﹄第六版︵ダイヤモンド社︑一
九九九年目二九二頁によれば︑行政庁である特許庁が行っ
た審決等の取消を求める行政訴訟を︑実務で﹁は︑査定系
の事件と当事者系の事件に区別しているよヶである︒前
者は拒絶査定不服の審判の審決取消訴訟に代表され︑特
許庁長官が被告となるもので︑後者は無効審判の審決取
消に代表され︑不利な審決を受けた無効審判の当事者の
一方面原告︑その相手方が被告というように対立当事者
の構造が採用されている︒本稿でもこの用語を用いる︒
︵9︶ 下級審裁判例を含めた詳細な整理は︑仁木弘明﹁特許 制度における必要的共同審判と必要的共同訴訟﹂三宅正 雄先生喜寿記念﹃特許争訟の諸問題﹄︵発明協会︑一九 八六年︶五六五頁以下参照︒
︵10︶ 民草五六巻二号三五二︑三五三頁︒
︵11︶ 仁木・前掲︵注9︶五八六頁以下に詳しい︒本文で解
説する各学説の論者について︑同所のほか堤・前掲︵注2︶
を参照されたい︒
︵12︶ 仁木・前掲︵注9︶五八○頁︒
︵13︶ 梅謙次郎﹃訂正増補民法要義巻乃二物権編︵明治四四
年版復刻版︶﹄︵有斐閣︑一九八四年︶一九六頁︒
︵14︶ 富井政章﹃訂正民法原論第二巻物権︵大正一二年合冊
版復刻版︶﹄︵有斐閣︑一九八五年︶一六八︑一六九頁︒
︵15︶ 我妻榮﹃物権法﹄︵岩波書店︑一九三二年︶一八六頁︑
舟橋諄一﹃物権法﹄︵有斐閣︑一九六〇年︶三八三頁︑
末川博編﹃民事法学辞典・下巻﹄︵有斐閣︑一九六〇年︶
一九二〇頁︹片山金章︺︑川島武宜編﹃注釈民法︵7︶﹄
︵有斐閣︑一九六八年︶三二六頁︹川井健︺︑星野英一
﹃民法概論H︵物権・担保物権︶﹄︵良書普及会︑一九七
六年︶=二五頁︑我妻栄11有泉亨﹃新訂物権法﹄︵岩波
書店︑一九八三年︶三二一二頁︑広中俊雄﹃物権法﹄第二
版増補︵青林書院︑一九八七年︶四二八頁等︒ただし︑
星野同所は︑﹁今日では︑他の共有者の不利益にならない
ような行為を広く保存行為と認める傾向にある﹂と指摘
する︒
︵16︶ 我妻榮・前掲︵注15︶一九〇頁︑我妻栄11有泉亨・前
124
珊
04⑳
号89学法
大九 掲︵注15︶三二八頁︒
︵17︶ 舟橋・前掲︵注15︶三八三頁︒
︵18︶ 前掲︵注15︶﹃注釈民法︵7︶﹄三一五頁︹川井︺︑広
中・前掲︵注15︶四三七頁等︒我妻11有泉・前掲︵注15︶
三二三頁は︑保存行為の例として挙げるが持分権に基づ
いてもなしうるとする︵我妻榮・前掲︵注15︶の対応す
る部分︵一八六頁︶にこの記述は見られない︶︒
︵19︶ 大判大正一〇年三月一八日︵民一︶︵民抄録九一巻二
二八七三頁︑新聞一八三四号一九頁︶︒所有権に基づく共
有物引渡請求権は︑数人の債権者のある不可分債権であ
るとして︑各共有者が単独で引渡請求をすることができ
るものとした︒大正﹁○年度判例民事法四一事件︵大判
大正一〇年三月一八日︵民一︶︶︹我妻榮︺一=二頁参照︒
︵20︶ 玉井克哉﹁最判平成七年三月七日︵三小︶判批﹂特許
研究二一号︵一九九六年中七四頁︑難曲一七七九号︵二
〇〇二年︶八三頁︒
︵21︶ 昭和一五年度判例民事法四六事件︵大判昭和一五年五
月一四日︵民五﹀︶︹来栖三郎︺一八八頁参照︒
︵22︶ 広中・前掲︵注18︶同所︑兼子一﹁共有関係の訴訟﹂
法学新報五九巻︷二号︵一九五二年︶五八頁︹民事法研
究H︵酒井書店︑一九五四年︶所収一五三頁︺︒特許権
の共有の場合について中山・前掲︵注5︶七二五頁︹中
山︺︒
︵23︶ 昭和一七年度判例民事法三七事件︵大判昭和一七年七
二七日︵民二︶︶︹四宮和夫︺一五九頁︒ ︵24︶ 初期の判例である大判大正六年一二月二八日︵民一︶ ︵民録二三輯二二七三丁目は︑訴えを提起する目的が何で あるにせよ︑一旦判決が確定すれば既判力が生じ︑その ために客観的には存在しない権利関係も存在し︑客観的 には存在する権利関係も存在しなくなるのと同一の結果 を呈するので︑訴えの提起は共有者全員の一致が必要で あるところの処分行為である︑と判示した︒加藤正治 ﹁大判大正一〇年七月一八日︵民二︶判批﹂法協四﹇巻 一号︵一九二三年︶一七三頁以下は︑勝訴のときのみ保 存行為となり敗訴のときは処分行為となるとする︒
︵25︶ 行政事件の確定判決も︑請求棄却判決についてはもと
より︑形成力を有する取消判決を含めた請求認容判決に
ついても既判力を有するとの通説的見解について︑前掲
︵注6︶﹃注解行政事件訴訟法﹄四〇七頁︹村上︺参照︒
︵26︶ 滝井朋子﹁特許権等の共有者の一部の審決取消訴訟等
手続における当事者適格について﹂林良平先生還暦記念
﹃現代史法学の課題と展望 下﹄︵有斐閣︑一九八二年︶
二九七頁は︑﹁共有の対象たる特許権等の運命に重要な影
響を及ぼし得る如き行為︵すなわち手続行為︶について
は︑そもそも︑共有者単独でなし得べき保存行為という
概念は容れる余地がないように思われる︵第三者のなす
権利侵害に対する妨害排除的なものは別途考慮すべきで
ある︶﹂と指摘する︒
︵27︶ 特許法=二二条三項参照︒本件原審も同旨︒
︵28︶ この点を指摘するものとして︑水田耕一﹁特許権およ
び特許を享ける権利の共有︵その三︶﹂商事法務八〇五号
三五頁︵一九七八年︶︒なお︑山田誠一﹁共有者間の法律
関係︵一︶﹂法協一〇一巻一二号︵一九八四年︶一八六
六頁参照︒
︵29︶ ちなみにドイツでは︑各共有者の原告適格についてB
GB一〇一一条が﹁各共有者は︑共有物の全部に関して︑
所有権に基づく請求権を第三者に対して主張することが
できる︒ただし返還請求権は四三二条に従ってのみ主張
することができる﹂と︑返還請求については不可分債権
の規定に従うべきことのほかは︑各共有者が単独で共有
物に関する訴訟を提起しうることを規定しており︑保存
行為︵BGB七四四条二項︶とは別個に規定されている︒
田
傑
究蜥 締 購
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