村上正行 少し長くなるが、とある本の引用から始め
る。『「最近の若者はダメだ」は昔から言われ ているが、特に今の若者はひどい。まず、当 事者意識が完全に欠如している。さらに、独 り立ちをしようとせず、常に何かに依存し、
消費し、批判するだけの「お客さま」でいつ づけようとしている。これはゆゆしき事態で あり、日本社会のありかたにかかわる重大な 問題である。』という文章がある。これを読ん で、どのように感じたであろうか。“また、最 近の若者批判か”と思ったかもしれないが、こ れは小此木啓吾「モラトリアム人間の時代」
(1978)の一節である。つまり、今から40年前 にも、若者批判の言説があったことを示して おり、いつの時代においても同じようなこと が繰り返されている、ということでもある。
そんな中、若者の活字離れ、読書離れ、が 話題になることがある。最近の若者は本を読 まない、ということだが、本当にそうだろう か。全国大学生活協同組合連合会(生協)が 実施している第52回(2016年度)学生生活実 態調査によると、1日の読書時間は平均24.4分 となっており、前年から4.4分減少している。
また、1日の読書時間が0の学生の割合も49.1%
となり、2015年から3.9%増加、2013年度から 比べると8.6%増加しているそうである。ただ、
読書をしている人の平均読書時間は48.6分であ り、ある程度の読書はしていると言える。実 のところ、この傾向は若者に限った話ではな い。文化庁が実施している「国語に関する世 論調査」で2013年度に読書についての調査が 行われている。1か月に本を1冊も「読まない」
と回答した人は全体の47.5%となっており、70 歳以上が59.6%、60代が47.8%と高く、10代が 42.7%、20代は40.5%と他の年代よりはやや低 い結果となっている。従って、若者が読書離 れしている、というわけではなく、読書をす る人としない人の二極化が進んでいると言え
るだろう。ただ、この「国語に関する世論調査」
での「人が最も読書すべき時期はいつ頃だと 考えるか」という質問には、10代が44.8%と飛 び抜けて高い結果となっており、“若いうちに 読書をしておくべきだ”と考える人が多いこと が分かる。年齢を重ねて「もっと若い時にやっ ておけばよかった」と思うのかもしれないが、
若い時に多様な知識を獲得することによって、
大きな効果をもたらす可能性もあるだろう。
若いうちに読書をしたほうがいい、という ことであるが、読書のスタイルも多様化しつ つあるのかもしれない。ここ数年、電子書籍 も少しずつではあるが普及してきている。ジャ ストシステムによる「モバイル&ソーシャル メディア月次定点調査」の2016年度総集編に よると、1月度調査18.5%、10月度調査23.5%、
12月度調査20.5%と、おおむね20%前後となっ ている。Kindleなどの電子書籍リーダーで読 むことはもちろんのこと、アプリをインストー ルすれば、スマートフォンやタブレットで読 むことができるようになっている。また、外 国語学習に着目すれば、テキストを読むだけ ではなく、リスニングなどにも活用すること ができる本も増えている。Amazonには無料 の本も一定数準備されており、その中には洋 書も多数含まれている。昔と違って、さまざ まな形で本に接することができると言えよう。
書店、インターネット、そして、「知の拠点」
である図書館。学生には、形態にとらわれず、
いろいろな本に出会い、いろいろな本を読ん で、学んでほしいと願っている。そして、私 自身も読書を通じて、学び続けていきたいと 思う。
むらかみ まさゆき
(教授・教育工学・大学教育学)
若者の読書離れは本当か?
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研究者と図書館