維持期の歩容改善
西羅 陽子1) 河西 由喜2) 久保田 将史3) 佐藤 吉智4) 1) みどりヶ丘介護老人保健施設
2) 第二協立病院 3) 大阪警察病院 4) 東香里病院
枚方市理学療法士会 2020年度脳卒中勉強会 時期別の歩行治療 資料
目次
正常歩行の復習
維持期脳卒中片麻痺の歩行の特徴(文献紹介)
維持期脳卒中片麻痺の歩容改善(文献紹介)
維持期の歩容改善に対する治療提示
正常歩行の復習
2足歩行の力学的原理
倒立振子
2足歩行を最も単純化した力学モデル
位置エネルギーと運動エネルギーが相互に変換され、効率的な運動が実現できる 大畑 光司先生: 第6回日本神経理学療法学会サテライトカンファレンス資料
石井 慎一郎著 :レクチャーノート 歩行の臨床バイオメカニクス
倒立振子を“転がす”ための機能
Rocker Function
歩行は3つの支点(回転軸)を有する倒立振子運動
山本 澄子先生: 脳卒中に対する運動療法 バイオメカニクスを考慮した運動療法の理論と実践 資料 石井 慎一郎著 :レクチャーノート 歩行の臨床バイオメカニクス
ロッカー機能と筋活動
Donald A.Neumann原著,嶋田智明他訳:筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.P584(一部引用)
Heel Rocker
Ankle Rocker
Forefoot Rocker
ピンクで塗られているのは 遠心性収縮,
斜線は求心性収縮を示す 前脛骨筋の遠心性収縮
ヒラメ筋の遠心性収縮
ヒラメ筋の求心性収縮
正常歩行における床反力作用点の軌跡
正常歩行における初期接地は踵骨の外側突起から行われる
Forefoot Rockerが始まる直前から、床反力作用点は外側から内側へ移動していく
石井 慎一郎著 :レクチャーノート 歩行の臨床バイオメカニクス
維持期脳卒中片麻痺の歩行の特徴
維持期脳卒中片麻痺者の歩行の特徴 (1)
田邊 泰雅, 山本 澄子 : 脳卒中片麻痺者の歩行速度増加に寄与する関節パワー ―前遊脚期から遊脚 初期の検討―. 理学療法科学, 2013, 28(5) : 613-618
中等度~軽度の麻痺を呈する片麻痺者8名 と 健常者8名に対し、
「通常」、「ゆっくり」、「速く」の速度条件で関節パワーを算出 脳卒中後片麻痺者の歩行速度増加による
前遊脚期~遊脚初期の股関節 と 前遊脚期の足関節 の正のパワーピーク値の変化を調べた
「速く」の速度条件で、麻痺側下肢の前遊脚期の足関節の正のパワーが健常者より小さく変移した 麻痺側下肢の前遊脚期での足関節底屈筋の弱化が歩行速度低下の一因になっている
維持期脳卒中片麻痺者の歩行の特徴 (2)
内藤 祐太郎, 他 : インソール式足圧力モニター装置を用いた歩行の定量的評価 ―慢性期脳卒中片麻痺 患者に対する臨床応用-. J UOEH(産業医科大学雑誌), 2014, 36(1) : 41-48
慢性期片麻痺者20名 と 健常高齢者36名 の、
平地歩行における足圧力をインソール式足圧力モニターで測定
・非麻痺側の踵部の荷重比は、
麻痺側踵部および健常者の踵部と比べて有意に高かった
・麻痺側立脚割合と10m歩行に要する時間との間には、
有意な負の相関が認められた
非麻痺側下肢の代償に基づく歩行パターンを呈している
維持期脳卒中片麻痺者の歩行の特徴(まとめ)
・麻痺側下肢の足関節機能の低下
・非麻痺側下肢の荷重を優位にした代償に基づく歩行パターンの形成 長期間に及ぶ非対称的で代償的運動制御
・麻痺側の不使用による機能低下
・非麻痺側への過剰な負荷による骨関節疾患
・加齢や体力低下などによる非麻痺側機能低下
維持期脳卒中片麻痺の歩容改善
維持期脳卒中片麻痺者の歩容改善 (1)
春名 弘一, 他 : 脳卒中片麻痺におけるGait Solution使用時の非麻痺側運動制御変化.日本義肢装具学 会誌,2011, Vol.27,No.4,232-239
慢性期片麻痺者3名に対し、Gait Solutionを装着し経時的変化を1週ごとの変化を示す 計測項目:1歩行周期の時間因子,EMG(非麻痺側前脛骨筋,内側腓腹筋の同時収縮)
〔結果〕
・1歩行周期の時間因子
GS介入期で,両脚支持期と非麻痺側立脚期が有意に短縮した
・EMGによる非麻痺側の同時収縮指標
3名中2名で,非麻痺側の前脛骨筋と内側腓腹筋の同時収縮指標が減尐した
治療用装具 GS による麻痺側前脛骨筋への介入が ,
非麻痺側下肢の代償に基づく歩行パターンの改善に寄与する
維持期脳卒中片麻痺者の歩容改善 (2)
慢性期片麻痺者1名に対し、油圧制動継手付短下肢装具を装着し,下腿三頭筋へのトレーニングを 加え効果を計測した
計測項目:10m歩行試験による最大歩行速度と最大歩幅,6分間歩行試験 等尺性底屈筋力(ハンドヘルドダイナモメータ)
〔結果〕
・最大歩行速度は改善,最大歩幅は増大,麻痺側単脚支持率は増加した
・6分間歩行距離は大きな変化はなかった
・等尺性底屈筋力は増加した
・歩容は,体幹前傾角度が減尐,立脚中期に身体重心が上昇,股関節の伸展と足関節の背屈が増 加した
油圧制動継手短下肢装具と麻痺側下腿三頭筋への介入が , 代償的な歩行パターンの改善に寄与する
宮田 伸吾 , 他 :慢性期脳梗塞片麻痺患者に対する油圧制動継手付短下肢装具と下腿三頭筋トレーニン グの併用効果 . 理学療法科学,2014,29(3)463-469
維持期脳卒中片麻痺者の歩容改善(まとめ)
• 足関節を固定するのではなく,前脛骨筋の活動を促通する油圧機能が付 いた治療用装具を使用することにより歩容改善がみられた.
• 加えて , 下腿三頭筋への治療も効果があった.
• 改善した点としては,立脚時間など特に対称性の改善であった.
前脛骨筋や下腿三頭筋など下腿へのアプローチにより歩容改善みられた
維持期の歩容改善に対する治療提示
麻痺側右下肢後方の Step 肢位から
① 腓腹筋を上方に把持し、前足部(母趾側)へ 体重が移動するように誘導する
② 麻痺側腓腹筋の筋腹を上方に維持し、股・
膝関節伸展・足関節背屈方向に接踵を促す 体幹や非麻痺側下肢の伸展は維持する
③ ①⇔②を繰り返し、麻痺側足底への感覚入 力を促進、腓腹筋や前脛骨筋の活動を高 める
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麻痺側足部機能改善が、非麻痺側代償パターン軽減や歩行速度改善に繋がる
Back ward step
古澤 正道著:脳卒中後遺症者へのボバースアプローチ 臨床編 運動と医学の出版社 P133(一部引用)