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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

超音波ディジタル波形解析システムと物質評価への 応用に関する研究

岡部, 弘高

https://doi.org/10.11501/3070060

出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

超音波ディジタル波形解析システムと 物質評価への応用に関する研究

平成5年2月

岡部 弘高

(4)

目次

第l章序論...1

1.1本研究の背景と目的…H・H・...2

1.2超音波計測…・・・・…...5

1.2.1発振と検出…H・H・...……H・H・...…...・H・...…...5

1.2.2方法と装置 ・・…・・……・・...6

1.3本論文の構成…・・・……H・H・...・H・...・H・..…・...11

第2章超音波ディジタル波形解析システム ...13

2.1緒言...…...…..…・…・………14 2.2時間領域…H・H・-…一一…...14

2.2.1従来型測定のディジタル化-…...……一……H・H・...14

2.2.2自動音速測定…...・H・-…H・H・-…H・H・-…H・H・-…...…一… ……ー・…・…H・H・...・H・-…・16 2.3周波数領域...18

2.3.1緒言…H・H・-…H・H・-…H・H・-…H・H・-…H・H・..…・…H・H・-…H・H・...18

2.3.2ディジタル処理単パルス超音波スペクトロスコピー法...・H・-…・・…H・H・.20 2.3.2.1超音波スペクトロスコピーの実現方法・…………・・…....・H・....・H・-…20 2.3.2.2単パルス(Pulse Excitation)法…………...・H・-…H・H・-…・・・・…..……21

2.3.3装置...……H・H・-一… -…・ …一一……..25

2.3.3.1全体の構成.…...・H・-…・・...25

2.3.3.2トランスデューサ(Transd u cer)…・...25

2.3.3.3雷気回路…H・H・-…・・…・・…一一……H・H・..…・……一...30

2.3.4パルス法におけるデータ処理...32

2.3.4.1高速フーリエ変換(FFT)…ー……一...32

2.3.4.2超音波の吸収の求め方…...・H・-…..…・・…-…..……・・………H・H・...・H・.33 2.3.4.3超音波音速の求め方……・・…...33

2.4ケフレンシー領域…H・H・....・H・-…...36

2.4.1緒言.…・・・……H・H・-…H・H・-…H・H・....・H・....・H・..…'"・H・...・H・..,・H・- …・… 一……一……・….36

2.4.2理論.…・...37

-1A

(5)

2.4.2.1超音波散乱…...37

2.4.2.2ケフレンシー解析.……...・H・-…-…...40

2.4.3 装置…・・…・・・…・・…・…・・・・…...42

2.4.4データ処理-…...42

第3章走査型超音波スペクトロスコピーシステムによるCFRPの構造評価…...・H・.44 3.1緒言...45

3.2実験方法...46

3.2.1測定装置……H・H・-…・・…H・H・-…H・H・...……H・H・...46

3.2.2試料…H・H・-…H・H・...46

3.3結果と考察…H・H・-…H・H・..…・・・…...・H・..…・...49

3.3.1スペクトルイメージ...49

3.3.2位相イメージ.…...52

3.4結論・・…...・H・...54

第4章ケフレンシー解析によるCFRPの構造評価...55

4.1緒言…・・...56

4.2実験方法...57

4.3結果と考察...57

4.3.1測定系の特性…・……・…H・H・-…...57

4.3.2自己相関イメージ.…・...・H・-…...59

4.3.3ケフレンシー解析...66

4.4結論..…...69

ハU 1i 1i 1i ぺL AHT A斗 7 7 7 7 7 7 7

沼似観の…移転

口HM

↓介,

. 液…

るよ…

置装

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… ロ

… ート1 . ク

… ル 件 べ

……

セ 条

科 定 定 考 波

… 方 試 測 測 と 音 言 験 1 ユ 3

超 緒

実ロロロ結章日ロ3戸コFhυ 第

- 11 -

(6)

5.3.1超音波吸収.・…・・……一一…...74 5.3.2音速..……....……H・H・-…H・H・...…...81 5.4結論...81

第6章超音波スペクトロスコピー装置による高分子の強誘電性相転移の観測…・84 6.1緒言…H・H・-…一…一一……H・H・...…...85 6.1.1強誘電性相転移の超音波測定について…・・……・……....・H・...・H・...・H・....・H・..85 6.1.2フッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体について....・H・....・H・-…・….85 6.2実験方法…一…・・…H・H・..…・・・…...・H・...…..…・....・H・-…H・H・...……・・…・・…H・H・-……....・H・....・H・..86 6.2.1試料…ー……一一…・・……...……….86 6.2.2測定セル...・H・-…H・H・-…一…………一………H・H・...87

6.2.3測定条件.…-…・...・H・...…....・H・....・H・..… …・・・・…・・ ………ー…....・H・....・H・-…..89 6.3結果と考察...89

6.3.1超音波吸収…...・H・...・H・..…・・…...……・・…・・…..…一一………一…H・H・...…...・H・...・H・..91 6.3.2音速…・・・・…..…・ ・・ ……… ……・・ … …… …一一…...・H・- … …・・……….94 6.4結論....・H・-…...99

第7章熱硬化性樹脂の硬化過程における音速変化…・・………・・…H・H・...・H・....・H・-……100

7.1緒言………・ ・ ...・H・...・H・...・H・-…・・…...・H・-…...……...・H・-………...・H・-…….101 7.2実験方法…一一………...・H・-……… ……...・H・...・H・...・…… ・・……・・・・ぃ… …..一 一…-…・...・H・-…103 7.2.1試料…一一……・・・・ -…-…・…... 一………H・H・-…H・H・...・H・-…・・・…...……一..….103 7.2.2測定方法…一...103 7.3結果と考察..…・・…..…..…...・H・ ...・H・-…一…・・…一...・H・-…・・・・……… …...・...105 7.4 結論…一- ……… ・・ ・・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ …112

第8章総括…・・…・・…・・…・・・・………H・H・-……… … ・・ ・ …一………・・…H・H・...…...・H・-…一一……・・…115 参考文献...・……..…・・……H・H・ ・・ … ・ ・…・ …一……・・ …ー・・ …・・…・・・ ・・…・ ・… …・・…一…H・H・..… ・・119 謝 辞.…・・H・H・...・H・...・H・・…・…・・・……・…・・……・・…・・…・・…...…....…・……・・…・・…-…・…-……-…・・…・….122

ー111 -

(7)

土日十 弘 冊 一恥 序

- 1 -

(8)

Î . Î本研究の背景と目的

最近の超音波の利用技術の発展には目を見張るものがあり、 超音波診断などの 医学関係から非破壊検査や各種加工などの工業的利用法まで、 その応用範囲は非 常に幅広いものとなっている1,2)。 また、 エレクトロニクスなどの技術の発展にと もなって益々高度化されつつあり、 物性の測定手段としての超音波も、 その測定 技術の進歩は著しし\3・6)。 しかし、 電気的測定や光学的測定に比べて超音波の測定 には多大な労力と時間を要し、 まして多周波数での分散測定になれば、 なおいっ そう多くの時間を費やさなければならない。 さらに、 現在の超音波測定によって 得られるのは音速や減衰などに限られ、 実験が難しい割りに最終的に得られる情 報が少なく、 また再現性も低い場合が多いので波形の解釈も難しい。 もちろん、

このような欠点があるにもかかわらず超音波測定が行なわれるのは、 超音波は測 定対象を非破壊・無侵襲で評価できることや、 超音波でなければ測定できない対 象 ・ 場合があるためであり、 測定の簡素化、 実験で得られる情報の高度化などが

求められている。

このような測定の簡素化、 情報の高度化が可能になるための前提条件として は、 まず多周波数の同時測定が可能になる必要がある。 しかし、 従来の超音波の 測定は単一の周波数による計測が依然として主流であり、 多周波での同時測定の 考えは以前から提出されていたのであるが、 その実現には数々の障害が伴い、 そ れを実用化した例は少ない。 また、 実現された装置でも主としてセラミックのト ランスデューサ(Transducer)を使用していたこともあってその帯域は限られたも のであった。

ところが、 近年登場した高分子の圧電フィルムは共振ファクター(Q値〉が小 さく、 広帯域の特性を持ち、 セラミック等の従来のトランスデューサに比べると 多周波同時測定に適している。 そこで本研究では高分子圧電薄膜であるポリフッ 化ビニリデン(PVDF)やフッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体のフィル ムをトランスデューサとすることによって広帯域超音波ノぞルスを実現し、 その応 答波形を解析することによって測定の簡素化 ・ 高度化を計ることにした。

一方、 最近のエレクトロニクスの発展は目ざましく、 特にディジタル技術の発 展によって可能になった波形解析の手法はあらゆる分野で発展している。 しか し、 超音波測定においてのデータ処理は主に従来通りのアナログで行なわれるこ

-2-

(9)

とが多いようである。 ディジタル処理を用いた測定法もないわけではないが、 測 定後の一部の解析手段やデータの保存法として用いられる場合が多く、 測定から 解析まで一貫してディジタル化した例は少ない。 その理由としては、 超音波の周 波数が比較的高く、 ディジタル化に適さなかったことや、 従来の超音波測定で測 定される物理量が音速や減衰という数値であり、 波形をもっと積極的に解析する ためのディジタル化の必要がなかったためと考えられる。

また、 (超〉音波測定を他の電気的、 光学的測定に比較して次のように表現す る人がし1る九 『もしいま、 A か B か?という物理的な問題が起こったとする。

ところが、 音波はそれに対してrA です」あるいはrB ですよ」といった明確な 答えをくれることは稀である。 rきわめて Aらいしいが、 もしAでなければBで あることも可能である」という風なことも、 たまに起こりうる。 いわゆる「靴の 底からかかとを掻く」もどかしさを感じることがある。 これは、 一つには、 音波 の振動が着目する自由度と直接結合することは少なく、 その聞に温度・圧力など ほかの変数を介していることが多いためであろう。 しかし音波は、 系に対して穏 やかに摂動をかけ、 情報に富んだ含みのある答えを出してくる。 ラマン散乱、

NMR、 X線などのほかの手段を、 症状に合せて投与すれば鋭い効き目を持つペニ シリンのような薬だとすれば、 音波は漢方の薬にたとえることができる。 J 、ーー...

の指摘が示すように、 超音波波形の持つ情報は豊かであるが故に複雑で-ある。 そ して、 その複雑さゆえに波形解析を諦めざるをえなかったということがディジタ ル化の必要性を生まなかった最大の理由であろうと考えられる。

しかし、 コンピュータの発達によって超音波測定においても波形解析を行なう ことが可能になりつつあるのではないだろうか。 超音波波形をディジタル化し、

コンピュータで解析することによって、 超音波の持つ測定対象からの多くの情報 を、 得ることが可能になるはずである。 まさに、 超音波測定こそディジタル化と

コンビュータによる高度な波形解析を必要としていたのではないだろうか。

また一方、 著者は音波物性の動的測定と複合材料の構造評価という一見関連の 無し1二つの研究を行なっていた。 しかし、 以上で述べたような広帯域同時測定と ディジタル波形解析を実現させることができれば音波物性の動的測定も複合材料 の構造評価も同じ装置によって可能になるのみならず、 波形解析の方法を替える ことによって更に多くの応用が可能になるはずである。

- 3 -

(10)

本論文では、 超音波測定をディジタル化して装置は簡素化しながら、 高度な波 形解析を行うことで超音波の持つ豊かな情報を取り出すためのシステムに関する 基礎的検討を行なった結果について述べた。 具体的には、 超音波単パルスと高速 の波形記憶装置 ("wave memory" または、 川ransient r巴corder"と呼ばれる〉を用 いて波形をディジタル化して記憶することで広帯域同時測定を可能とし、 コン ピュータを用いて周波数領域での応答を解析する単パルス超音波スペクトロスコ ピー法と、 ケフレンシー{ Quefrency:自己相関やセプストラム(対数スペクトラ ムの “スペクトラム" )の横軸であり、 反響の遅れ時間を表わす)領域での解析 法を確立した。 そして、 そのシステムを複合材料である炭素繊維強化プラスチッ ク(CFRP)の構造評価、 および液品や高分子強誘電体の相転移の動的観測に応用 した。 その結果、 CFRPの評価においては、 従来の波形解析を用いない方法では不 可能だった波長以下の空間分解能と、 2次元走査画像において高いコントラスト を実現することができた。 また、 動的物性測定においては、 従来あまり知られて いなかった緩和周波数のシフトや音速変化の分散等の周波数領域における特異な 変化を観測することにも成功した。 ここで述べた応用に限らず、 超音波測定の特 徴である広い分野への適応性と波形解析法のさらなる発達によって、 本論文で述 べたシステムの有効性はさらに増していくものと考えられる。

- 4幅

(11)

1.2超音波計測

(超〉音波計測は基礎物性研究から産業、 医療における応用まで幅広く行われ ている。 ここでは、 まず超音波と物質とのかかわり合い及び超音波計測に関する 基本的事項をまとめて述べる。

超音波計測で対象となるのは、 物質の変形あるいは歪をともなった物理的 過程 であり、 物質と音波のかかわり合いは、 次のようになる九

音波の波としての性質=物質内および表面でのひずみ 弾性定数 物質の原子(分子〉間力 吸収 緩和ロス 緩和時間 緩和の機構 その他のロス

物質のひずみ

ロス〈吸収、 散乱〉の機構

電気的、 光学的など諸性質の変化 音波のフォノンとしての性質

物質内の励起とフォノンとの相互作用(吸収、 散乱〉

物質内の励起子生成

超音波による物性 ・材料評価などの工学計測においてその基礎となるのは、 信 頼度のある音速や減衰測定である。 本節では液体と固体における一般的測定方法 の概略5)を紹介する。

1 .2.1発振と検出

物性研究や材料評価における超音波計測では、 圧電効果を利用したトランス デューサを用いて超音波を発振する場合がほとんどである。 代表的なトランス デューサについて特性、 使用法を紹介する。

水晶振動子

最も古くから知られている圧電性結晶で、 物性研究のほとんどで用いられ ている。 結品から切り出された向きによって縦波用のXカット板と横波用の Yカット板がある。 水晶板の両面に金やクロムなどの電極を蒸着し、 交流電 圧を加えると板が振動し、 それが媒質中に超音波として放射される。 検出は 発振と逆の過程になり、 水晶板が超音波によって振動すると、 その両面聞に

- 5 -

(12)

電圧を発生することを利用する。 ほとんどの場合、 発振や検出効率を上げる ために、 振動子の機械的共振周波数で用いられる。 Xカット板では厚さが半 波長となる周波数が基本共振周波数となり、 その奇数倍の周波数で効率良く 使うことが可能である(例えば、 1MHzで、は2.86mm)。

圧電セラミックス振動子

強誘電体の粉末を圧縮成型し、 焼結した後、 高電界を印加して分極処理し たもの。 ジルコン ・ チタン酸鉛系のものが主流で、 アメリカのクレバイト社 の商品名である PZT が通り名になっている。 水品と比べると、 感度は高 く、 形が自由にでき、 価格も安い。 しかし、 振動子内の減衰が大きく、 共振 は鋭くなく、 振動子の半径方向の共振が起き易いなどの欠点もある。

圧電半導体膜振動子

ZnO (酸化亜鉛〉やCdS (硫化カドミウム〉をスパッタリングで薄膜にし たもので、 数百MHz以上の高周波で用いられる。

圧電高分子膜振動子

1970年頃に開発されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)をはじめとする圧電 性高分子薄膜は低い音響インピーダンスを持ち、 液体や生体と相性が良い。

共振が鈍く広帯域特性を持つので、 パルスの送 受信に適しており、 本研究で も利用した。 通常、 数MHz'"'-'数百MHzの帯域で-用いられる。

1.2.2方法と装置

この節では本研究に関係の深い超音波ノぞルスを用いた代表的測定方法とその装 置を紹介 する。 測定法には連続波を用いた干渉法や共振法もあるが、 ここでは特 に紹介しない。

減衰測定

振Ipffiは距離 xに対してcxp(-αx) で減衰するので、 距離を変えて受波振幅 の変化を計り、 減衰定数αを求める。

液体

図1 - 1に一般的測定系を示す。 下方の水品から数MHz程度の共振周波

数の波束を1kHz 程度の繰返しで試料中に送り、 上方の水品で受波する。

- 6 -

(13)

一発のパルスは試料境界で反射を繰返し、 一連のパルスエコー列が見え る。 その内、 反射を受けていない最初のパルスのみに着目する。

団体

図1 - 2に測定法を示す。 固体では液体のように伝播距離を連続的に変 えることが出来ないので、 図のようにパルスの多重反射エコー列の減衰か らαを求める。 n番目のエコー列は、 試料の厚さをfとして2 n fだけ伝 播していることになる。 この測定では、 反射による振幅の変化と試料中の 減衰が区別できないので、 音響インピーダンスをミスマッチさせてほぼ完 全反射と見なせるようにする。

音速測定

超音波パルスの伝播時間τと距離2から音速f/τを求める。 τの精度を上 げるために多くの方法が提案されている。 そのうちの幾っかを紹介する。

パルスエコーオーバーラップ法

図1 - 3に概略を示す。 試料中の往復伝播時間 2τと矩形波発振器から 発生させるトリガーの周期が一致するとオシロスコープ上で全てのエコー 列が重なって表示される。 このときの矩形波発振器の周波数Fからτ= 1/

2Fが求まる。 数MHzから数十MHzで: 0.1%以上の高い精度の測定が可能で ある。

シングアラウンド;去

簡便な自動測定法。 図1 - 4に概略を示す。 受信波形をフィード、バック し次のパルスをトリガーする。 一度外部からトリガーすると後は自動的に パルスが発生する。 パルスがl周する周期Tを周波数カウンターで測定す る。 電気系での遅れが無視できるならば、 T = τとなるが、 無視できない ことが多く、 音速の絶対値測定には向かない。

TAC (Time - to - Amplitude Converter)法

TACとは時間間隔をDC電圧に変換する装置で、 線形性のよい積分器と スイッチを組み合せたものである。 TAC を用いた測定では\ 受波ノりレス 中の一位相点の到達時刻から音速の変化分を読み取るので、 絶対値は求ま

ー7・

(14)

増 幅 器

水品

溶融石英 オシロ

スコープ

試料

図1 - 1 液体の減衰測定

図1 - 2 多重反射による固体の減衰測定

- 8 -

(15)

試半:↓糟

仇ャ

オシロスコープ

(a)

2r

たi形j皮 オシロスコープ|

トリガー

円 ↓

器 一波 カ 周 ム 円リ 分 超 ト

2r

ノマjレス ・...::Lコー-

、‘,,,

J'目、、 LU

文11

-

3 パルスエコーオーバーラップ法のブロック図(a)と タイムチャート図(b)

- 9幽

(16)

τ

パルス発鉱器 増 幅 器

トリガー 試料

検 j皮 器

fe

図1 - 4 シングアラウンド法

受 j皮l 、 j皮 形, 、

飽 和I 1 増幅椛.

ストyプ↓

CA T

図1 - 5 TAC法による迅速測定

- 10 -

(17)

らない。 数10μs程度の時間を数10psの分解能で計れるので、 高速測定に 適している。

1 .3本論文の構成

本論文は、 1.1. 説で述べたように、 高分 子トランスデュ ーサの出現によって可 能に なった 超音波スペクトロスコピー法を実現させた広帯域 同時測定システムに 関する基礎的検討を行い、 更に 時間領域、 周波数領域、 ケフレンシー領域上での 超音波 波形のディジタル解析手法についての理論や応用について論じたものであ り、 全体で8章からなる。

第1章は序論であり、 超音波計測における現状と問題点、 および本論文の目的

と概要について述べた。

第2章では、 超音波ディジタル波形解析に関する理論や装置について総括して述べ

た。 従来の超音波測定においては単一周波数による測定が行われてきた。 本研究にお いては、 高分子トランスデューサを用いることによって広帯域超音波の送受信を可能 にし、 また、 ディジタル処理を用いた周波数およびケフレンシー領域での波形解析に よって高分解能構造評価が実現できることを示した。 広帯域測定による周波数解析 は、 スペクトロスコピーと呼ばれ、 本研究では広帯域での超音波吸収と音速の同時測 定をフーリエ変換による解析で可能にするPulse Excitation法を適用した。 ケフレン シー領域での解析は地震波のエコー解析や干渉を利用した厚さ測定に用いられている

方法を発展させたもので、 その理論を中心に述べた。

第3章では、 走査型の単ノマルス超音波スペクトロスコピーシステムを製作し、 強靭 性・軽量性を生かして航空機、 宇宙機器などの先端技術産業を始め、 非常に多くの分 野で用いられているCFRP (炭素繊維強化プラスチック〉の構造評価に応用した。

CFRP試料表面と内部構造の間で起こる干渉作用を周波数領域で解析することによっ て、 内部構造の評価や欠陥の識別が可能であることを示した。

第4章では、 パワースペクトルをフーリエ変換したケフレンシー領域での解析 によって、 CFRPの内部構造 がさらに高い 分解能で 評価できることを示した。 ま

(18)

た、 パワースペクトル を測定系の特性関数で規格化することによっ て、 より高い S川比および高精度のデータを得ることができることも示した。

第5章では、 本単パルス超音波スペクトロスコピー法の有効性を調べるため、 代表 的な液晶物質MBBAの吸収・音速の温度特性を測定し、 従来の単一周波数法による 測定結果と比較した。 スペクトルデータから抜き出した各周波数における測定結果は 単一周波数測定のものとよく一致した。 また、 従来法による異なる周波数での繰返し 測定は試料の分解の問題を避けられないが、 本測定法では一度で多周波数における信 頼性の高いデータが得られ、 nematic- isotropic相転移に伴う周波数特性変化からも 有用な知見を得ることが出来た。

第6章では、 融点下にキュリ一点が見出された初めての高分子であるフッ化ビニリ デン三フッ化エチレン共重合体の強誘電的相転移における吸収・音速の周波数・温度 特性について述べた。 この試料の相転移の詳細に関しては不明なことが多く、 超音波 による測定も行なわれていなかった。 測定の結果、 相転移点近傍では音速に周波数分 散が存在すること、 吸収の周波数特性が温度よって変化することがわかった。 更に、

本強誘電性高分子における相転移挙動の特徴とスペクトロスコピー法による測定の利 点に関して述べた。

第7章では、 広範囲の音速変化に追従可能なディジタル化音速測定システムを製作 し、 最近高硬度・透明性で注目されているアリルエステル 樹脂の熱硬化過程で行った 動的音速測定の結果について述べた。 種々の硬化温度での音速の時間変化から熱硬化 過程における本樹脂の力学特性の経時変化と温度に依存した硬化機構が明らかになっ た。

第8章では以上の研究の結果 を総括するとともに、 今後の課題と展望について 述べた。

- 12-

(19)

第2章

超音波ディジタル波形解析システム

- 13 -

(20)

2. Î緒言

最近の超音波測定においてはディジタル処理が用いられつつあるが、 未だアナ ログ処理の方が多いのが現状である。 理由として、 超音波の周波数範囲が比較的 高くディジタル化に適さなかったこと、 従来の超音波測定で測定される物理量が 立速や減衰というある値であり、 波形を詳細に解析する必要がなかったため、 ア ナログ処理で充分であったことなどが考えられる。 また、 波形解析を行なおうに も、 超音波の振動が多くの自由度と結合するため、 その波形は非常に複雑にな り、 現実的には不可能であったことも忘れてはならない。

ところで、 最近のエレクトロニクスの発展は目ざましく、 特にディジタル技術 の発展によって波形解析の手法はあらゆる分野で用いられるようになった。 例え ば、 ICやLSI にはディジタルデータの演算の容易性 に着目し、 オーバーサンプ リングしてAD変換した波形に各種演算を施し、 更には DA変換によってフィー

ドバックまで行うものも登場している。 それらの波形解析の手法を超音波に適用 すれば、 超音波の持つ複雑な波形をも取り扱うことが可能になるのではないだろ うか。 このような考えのもとに、 高速 の波形記憶装置("wave memory"や "tran­

sient recorder"などと呼ばれる〉を用いて波形をディジタル化して解析を行なうシ ステムについての基礎的検討を行なった。

本章では、 本論文で行った波形解析の理論や、 装置の基礎的構成などについて まとめて論じた。 波形解析の手法としては、 その解析領域を特に意識し、 時間領 域、 周波数領域、 ケフレンシー(Quefrency) 領域について、 その有効性や応用に ついて論じた。

2.2時間領域

2.2. Î従来型測定のディジタル化

従来の音速測定装置にはパルスエコーオーバーラップ法、 シングアラウンド 法、 RF(Radio Frequency)ノ勺レスとTAC (Time Amplitude Converter)を用いたもの など様々な方法1-6)が用いられている。 ここでは TAC を用いたシステム5,7) の波形 から音速への変換部分を高速の波形記憶装置(wave mernory)に置き換え、 ディ

ー14 -

(21)

ジタル化した後にコンビュータによって処理を行なうデ ィジタル化RF pulse音速 測定法の検討を行なった。

図 2 - 1に装置の概略を示した。 その方法は次の通りである。 試料は2枚の同 じ厚さのアルミのバッファによって挟まれており、 一方のバッファに張り付けら れた水品振動子を超音波トランスデューサとしてパルス発振器(pulsegenerator) で発生させた RF pulse (5MHz) で駆動する。 トランスデューサで発生した超音波 は、 その一部がバッファと試料の境界で反射し元のトランスデューサに戻り、 残

りは試料を透過し、 更に反対のバッファも透過してもう一方のトランスデューサ に到達する。 トランスデューサで電気信号へと逆変換された反射波と透過波は波 形記憶装置(wave memory)で AD 変換されて記憶される。 この時系列のデータ はGP-IB(General Purpos巴InterfaceBus)を介してコンピュータへ転送されて波形

解析をうけ、 反射波と透過波の到達時刻の差から試料の透過時間が算出される。

実験に用いた "wave m巴mory"のAD変換に要する時聞が10ns/wordで、 典型的

Tran�ducer (Quartz)

Specimen Bu伽(Al)

A Amplifier

Pulse 一予'

Generator

I

Trigger

図2- 1 ディジタル化音速測定システム

(22)

試料透過時聞が数μ秒であり、 次節で述べる最小自乗法を併用した場合の本シス テムの音速の絶体および相対誤差は約0.1%になる。

2.2.2自動音速測定

図2 - 2に実測例を示した。 パルス発生のトリガーによってデータを取り込ん でいるので、 パルス発生時が時間軸の原点となっている。 反射波と透過波はその 測定時刻と振幅は異なるが、 波形の拡大図より明らかなように、 その波形はほぼ 等しい形をしており、 このような場合には音速を決定できる。 一方、 試料によっ ては反射波と透過波の波形が違う場合があり、 その場合には群速度と位相速度が 異なっている異常分散によるものと考えられ、 単純に音速を決定出来ない。

立速の決定は次のようにして行なう。 反射波形中の(a)点と透過波形中の(b)点 のようにRF pulse中の対応するゼロクロス点を決定する。 そのために、 まずコン ビュータが振幅の最も大きい部分のゼロクロス点を選ぶ。 ただし、 波形によって は対応するゼロクロス点が選択されないことがあるので、 最初の1回だけは人間 (マニュアル〉による確認が必要である。 2回目以降の測定では、 前回の測定で 求めたゼロクロス点の前後1/4波長の間で新たにゼロクロス点を求めるので、 波 形がある程度変化しても、 対応するゼロクロス点を間違えることはない。 また、

ゼロクロス点の時刻は、 ゼロクロス点の前後5個、 計1 0個のデータ点に最小自 乗法を適用して計算するので、 サンプリングレート以上の時間分解能が得られ る。 こうして得られた(a)点と(b)点の時刻の差をとって試料中の透過時間を求 め、 試料の厚さを透過時間で除算して音速が決定される。 1回の測定に要する時 間は、 約1秒である。

以上で述べたディジタル化音速測定法の長所としては、 コンビュータとの相性 がよく、 自動測定に適していることがあげられる。 第7章で示したアリルエステ ル樹脂の音速測定は、 試料の厚さの変化を差動トランスによってリアノレタイムに 動補正しており、 これもコンビュータを用いて初めて可能となった。 また、 最 新のディジタル技術によって時間軸の誤差は非常に小さいと考えてよいので、 絶 体及び相対精度の高い測定が可能である。 一方、 短所としては、 アナログ方式に 比べてデータl点当たりの測定時間が約1秒と長いこと、 音速の分解能が0.1 % と比較的低いことなどが上げられるが、 本研究で行なった実験では特に問題にな

りない。

- 16 -

(23)

、、\

\\(〉否\〉N)ω℃2コ仏E〈

、、\、\ nu \ ー,A

1i

\

、、戸、Jnu nU1A 戸、J

0.0 5.0

(〉)ω勺ヨコ巳E〈

13.5 13.0 11.5 12.0 12.5

Time (μs)

refletted wave

transrnitted wave

\ \ \ \ \ \ \ \ \ nu A山内/臼\

\ \ \

18.0

\

\

\

16.0 Time (μs) \ \

\

\

\

1.0 14.0

12.0 10.0

0.5

0.0

-0.5

(〉)ωヨヨ弘巳〈

17.5 17.0 16.5 Tirne (μs)

16.0 15.5 15.0

反射波と透過波の波形

-1.0 14.5

図2-2

- 17 -

(24)

2.3周波数領域

2.3.1緒言

スペクトロスコピーとは、 通常分光学と訳されているように、 光学の分野で周 波数に対する特性を調べることを指す言葉である。 同様に、 超音波スペクトロス コピーとは、 音波物性に関して周波数依存性を調べることを意味している。 ただ し、 超音波の測定に関しては周波数依存性に限定せず、 もっと一般的にある周波 数における超音波測定という意味で用いられることがある。 これは、 従来、 通常 の超音波測定では超音波トランスデューサを共振周波数で使用しており、 周波数 (波長〉依存性を調べるには、 異なる超音波トランスデューサおよび発振 ・検知 回路を必要とし、 計測系は複雑で、 しかも一連の測定には長時間を有したという 事情とも関係しているのかもしれない。 しかし、 ここでは本来の周波数特性を議 論するという意味でスペクトロスコピーを用いることとする。

「超音波スペクトロスコピー」に関する基礎・応用研究は多岐に渡っており、

同名の成書1.3)をはじめ、 文部省特定研究「超音波スペクトロスコピーとその物質

工学への応用J (昭和5 9年~昭和6 1年) 8)や、 既に1 2回を数えた「超音波 エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム」などにおいても多数の研 究が報告されている。 また、 海外ではIEEEのUltrasonic Symposiumでも同様で ある。

従来多周波で測定を行うということは、 ある周波数で測定を行い、 次に周波数 を変えてまた測定をやり直すことを意味していた。 なぜならば、 測定には一定の 共振周波数を使用したので、 容易には周波数の変更が出来なかったのである。 さ りに、 そのようにして多周波の測定を行なうためには異なる発振回路と検知装置 が必要で、 周波数を変えての測定には長時間を必要としたのである。 多周波の測 定を同時に行うことができれば測定に要する時間は随分短縮できるはずである。

この考えは早くからあり、 その為にし1くつかの方法が提出されてきた。 しかし、

理論的には単純なそれらの方法もその実現には多くの解決すべき問題が残されて いた。 それは第ーには超音波を発生する超音波トランスデューサの改良であり、

第二には発振回路などの電気回路に関するものである。 その後改良された超音波 トランスデューサや発展した電子工学の技術によって、 それらの方法のいくつか

- 18 -

(25)

は実行に移されたが、 どれもまだ充分な能力を持っているとは言い難かった。 し かし近年の様々な技術の発展によって、 従来は不可能であった方法にも可能性が 見出されてきたということもまた事実である。 さて、 広帯域の超音波を発生する 方法として最も有効なのはデルタ関数的な電気パルスによって超音波トランス デューサを励起する方法であろう。 電気ノマルスは広帯域特性を持つので超音波ト ランスデューサが十分な広帯域特性を持てば、 発生する超音波も広帯域特性を持 つはずである。 このような超音波パルスの使用とそれによって得られる周波数ス ペクトルの解析を最初に唱えたのはKräutkramer9)で、 その後Gericke10,ll)らによっ て金属の欠陥の非破壊検査などの手段10・13)として研究が重ねられてきた。 しかし 主としてセラミックのトランスデューサを使用していたこともあってその帯域は 限られたものであった。

近年登場した高分子の圧電フィルムは共振ファクター(Q値〉が小さく、 広帯 域の特性を持ち、 セラミック等のトランスデューサに比べると超音波ノマルスの発 生に適している。 そこで本研究では高分子圧電薄膜であるポリフッ化ビニリデン (PVDF)やフッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体(VDF/TrFE copolymer)

フィルムをトランスデューサとすることによって広帯域超音波パルスを実現し、

その周波数スペクトルを解析するシステムに関する基礎的検討を行った。 また、

発達著しいエレクトロニクス技術で可能となったディジタル処理を採用すること によって高度の処理能力をシステムに持たせることが可能となった。 この節で は、 このシステムの概要を説明する。

- 19 -

(26)

2.3.2ディジタル処理単パルス超音波スペクトロスコピー法

2.3.2.1超音波スペクトロスコピーの実現方法

対象物の周波数依存性を調べるには数多くの方法がある。 ここではGerickeに よる分類に従って、 比較的早期から行われていた主要な方法を簡単に紹介する。

(a) Manual Frequency Variation

設も早くから行われていて、 吸収の測定を行う時によく使われる方法であるo pulse echo装置の周波数をmanualで変えるもので、 そのためには変調できる発振 およひ検知装置を必要とする。 トランスデューサの帯域が小さい場合は、 周波数 を変える度にトランスデューサを替えなければならない。

(b) Frequency Modulation

こちらはmanualの代りにautomaticに周波数を変調するもので、 干渉計で使わ れてきた方法である。 通常使われている水晶振動子では、 共振周波数より低い周 波数で駆動される。 干渉計で使用される装置の増幅作用はリニアな特性を持って いるわけではないので、 単に干渉ピークを発見するために用いられる。

(c) Multiple Frequency

いくつかの異なる周波数のパルスエコー装置を、 一つの広帯域トランスデュー サに接続して使う方法である。 この方法を用いればリアルタイムでスペクトロス コピーが可能になり、 時間に依存する現象の観測が可能になる。 欠点としては装 置が大掛かりになるため、 現実的にはぜいぜい二つの周波数での測定しかできな いことである。

(d) Pulse Shape Examination

超音波パルスは広い周波数成分を持つので、 その波形を対象物に作用させる前 後で比べて、 その変化から周波数特性を知ろうとする方法である。 例えば、 高周 波になるほど吸収が大きくなる場合、 入力された矩形ノりレスはそのエッジが丸く なるという変化を生ずる。 しかし、 パルスの外形からそれ以上の情報を得るのは

困難であろう。

-20 -

(27)

2.3.2.2単パルス(Pulse Excitation)法

前節四番目のPulse Shape Examinationのパルス変化の解析をフーリエ変換 で行 う方法1叫2)である。 その原理は次のようなものである。

|

pulse

I

ransdu

peClm

|

ωucer I � x(t), X(ω)

p(t) gl(t) h(t) g2(t)

P(ω) CJl(ω) H(ω) CJ2(ω)

ここで、小文字は時間領域、大文字は周波数領域の関数を表わす。

図のように、パルスジェネレターで発生したパルス電圧の時間に対する関数 をp(t)、 同様にしてトランスデューサーの超音波発信時の特性関数をgl(t)、受信時 の関数をgρ)、試料の関数h(t)として最終的に観測される関数x(t)は次式 (2-1)の ように表せる。

民(t3) d

(2 - 1)

さて、p(t), gl(t), g2(t), h(t), x(t)のフーリエ変換は次の式のように定義される。

州円ldt

(2

-

2)

(2・3)

(2 - 4)

(2 - 5)

(2

- 6)

鴫2 1 -

(28)

また、 前の式に対するフーリエ逆変換は次のようになる。

p(吋Jト町恥削ω叫)

. e-i門iω川川ωω吋t吐d 白以ω(い吋

t

包以ω((吋

t

h

(1吋 lト刷(刷ω叫,) .

e-i門ωω吋t可d

X(1吋l卜刷(w:ω叫〕

亡川

(2

-

7)

(2 -8)

(2 - 9)

(2・10)

(2・11)

この ときX刈(tけ)は式(ρ2-1り) のようにPぱ(t), g/t), gZ(t), h(t)のコンボリューションなの で、 フーリエ変換された関数X(ω) はp(t), gl(t), gZ(t), h(t)のフーリエ変換P(ω),

G](ω), G2(ω), H(ω) を使うと、 式(2-12)のように、 各関数の単純な積で表すことが できる。

X(ω) = P(ω)・G1(ω) . H (ω)・G2(ω) (2 - 12)

従って、 パルスとトランスデューサの周波数領域での特性関数がわかれば、 観 測された関数のフーリエ変換後の 関数X(ω)から試料の特性関数H(ω)、 すなわち 試料の周波数に対する依存性を計算できる。 また、 試料無しで

X'(ω) = P(ω)・G1 (ω) . G2 (ω)

となるような測定を行ない、 式(2-12)を式(2-13)で割る と X(ω)

一一一= H(ω) X'(ω)

(2 - 13)

(2 - 14)

となって、 各特性関数は不明でも試科の特性関数は求めることができる。

さて、 トランスデューサを駆動する電圧は広帯域特性を持っていなければなら ないので、 Pulse Excitation法ではδ関数的矩形パルスを使用する。 パルスの1幅を T、 高さをH としたとき、 そのエネルギースペクトルは式(2-2)より次のようにな る。

自22 -

(29)

削=HT判明 初(手)

(2 - 15)

これは図2 - 3のように、 周波数0でE工の強度を持ち、 周波数領域ではT-1の

周期で急激に減少するような関数なので、 実際の測定は T-1 より低い周波数で行

なわなければならない。 従って広帯域特性をパルスに持たせるには、 Tを短く、 H を大きくすればよい。 このように、 矩形パルスは単一のパルス中に広い周波数成 分を持つことができるのでフーリエ変換による解析には最も適している。

以上がPulseExcitation法の概要である。 その理論は単純なものであっても、 こ

の方法が現実に行われなかった最大の理由は、 トランスデューサの帯域が十分で なかったということであろう。 つまりG1(ω),G2(ω)がフラットな特性を持ってい ないならば、 X(ω)にH(ω)の性格が充分に反映されないことになる。 また、 数年 前までは、 フーリエ変換を自在に行うほどには小型計算機の能力が高くなかった ということも忘れではならない。 しかし、 高分子圧電膜などの広帯域トランス デューサや広帯域アンプの発達、 計算機の能力の飛躍的増大によって、 単純かっ 強力でありながら理論上のものでしかなかったこの方法にも実現の可能性が生ま れたのである。

本研究では以上のような単ノぞルスCPuls巴Excitation)法を採用した超音波スペ クトロスコピーシステムの基礎的検討を行った。 装置の詳細は次の節で解説す る。

- 23 -

(30)

HTSin (�苧)

(り二五 (乎)

HT 2π

一合)仏一

H=150V

一門 「

(])仏ω匂ヨコハ凶呂〈

20 40 60 80 100 Frequency

f

(MHz)

矩形ノ勺レスとそのパワースペクトラム

ー-

唱ー

図2-3

Time

t

-24 -

(31)

2.3.3装置

2.3.3.1全体の構成

装置は超音波の送受信方法によって透過型と反射型の2つに分けられる。 透過 型のブロックダイアグラムを図2-4に、 反射型を図2- 5に示した。 その概要 は次の通りである。 パルス発振器(pulse generator)によって発生した広い周波数 成分を持つ矩形電気パルスを送信用トランスデューサによって広帯域の超音波に 変換する。 試料を透過、 または反射させた超音波を受信用トランスデューサに よって再び電気信号に逆変換し、 増幅の後ディジタル化して、 分岐したパルス ジェネレータのパルスをトリガとして高速の波形記憶装置(wave memory)に記 録させる。 ディジタル化した信号はGP-IBを介してさらにコンビューターヘ転送 し、 高速フーリエ変換(FFT)による波形解析を行なう。 FFT によるパワー ・ スペ クトラムから吸収量の、 そして実部と虚部の位相角の変化量から音速を計算する ことが出来る。 FFTの計算は1秒以下で終了し、 実験を行いながら周波数領域での 結果をモニターすることも可能である。 また、 得られたデータはディスクに記録 し、 実験後、 更に解析を行なってプリンターやプロッターに必要に応じて結果を 出力する。

このシステムは、 従来の超音波測定装置に比べて非常に単純かつコンパクトに 納まっており、 測定の容易さとあわせてこのシステムの長所と言えるであろう。

現在この装置の帯域を制限しているのは主にトランスデューサで、 より一層の改 良が望まれる。 また各装置の改良は現在も進んでおり、 それによってこの手法は より強力なものになっていくと考えられる。

2.3.3.2トランスデューサ(Transduce r)

従来の超音波測定で最もよく使われているトランスデューサは水品であり、 71<

聞の厚さで決る共振周波数で使用される場合が多い。 干渉計のように周波数を掃 引して使う場合には、 共振周波数以下の周波数で使用される。 しかし、 この場合 も水品のQ値(Quality Factor)*が大きいために、 共振周波数から離れた周波数で は著しく発信効率が落ちてしまう。 従って、 充分に広い周波数成分を持つパルス でトランスデューサを励起しても、 共振周波数付近の周波数成分だけが大きい超

- 25 -

(32)

Pulse

ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 『 ー ー ・1 Transducer

GP-IB

Computer

図2-4 透過型超音波スペクトロスコピーシステムの概略

! - ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

t 一一一�

dd Uaob v,、J

・'

EA

rz、F3

‘・ ー ー ー 、・ ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー' Amplifier

||

Computer

刈2-5 反射型超音波スペクトロスコピーシステムの概略

- 26 -

(33)

音波しか発生しないことになる。 また、 最近の超音波トランスデューサにはジル コン酸塩(PbZr03)とチタン酸塩(PbTiOT3)を適当な比率で混合して作った 圧 電セラミック振動子 PZTがある。 PZTは電歪効果が大きく温度特牲も良いなどの 特徴があるが、 Q 値が大きいので広帯域特性という点では期待できない。 ただ し、 セラミック振動子は成型が容易なので、 テーパー〈素子の表裏面を非平行に して、 連続的に素子の厚さを変える〉をつけて 広帯域特性を得ょうとする試みが ある。 また、 水晶や他の共振型振動子にダンパーれをつけてQ値を落とすことも よく行なわれている。

以上のような超音波トランスデューサは単ノぞルス(Pulse Excitation)法に使う

トランスデューサとしては帯域が狭すぎた。 しかし、 1970年頃から登場した高分 子の圧電薄膜は柔らかい フィルム状で Q値が小さく、 単パルス法のように同時に 広帯域の超音波を発生させることに適している。

電性高分子として最初に開発されたのはポリ フッ化ビニリデン(PVDF)であ る。 PVDFの分子鎖は大きな双極子モーメントを持つ[ - CH2 CF 2 - ]が連なった比 較的単純な構造単位を持っていて、 溶融成形したPVDFフィルムを延伸し、 さら に高電界を加えて分極処理(ポーリング〉すると、 高い圧電性を示す。 通常使わ れるものは厚さが数μmから数十μmで、 その両面にアルミ等の電極を蒸着して電 界を加えると、 X - cut 71<品同様に厚み振動を起こす。 その物理的性質をいくつか の圧電物質と比較して表2 - 1に示した。 その特徴としては次のような点を上げ ることが出来る。

3. フィルム状なので任意の形状に加工できる。 例えば凹面状に加工して、 超 立波顕微鏡などに使われる。 また水晶やPZT に比べて大面積のトランス デューサを容易に作製することが可能である。

b. 固有音響インピーダンス***が 他のトランスデューサに比べて低く、 水や 人体に近いので'71<中や生体中に超音波を放射するときに境界での反射が少 なく、 超音波エネルギーを効率よく伝えることが出来る。

c. 固有音響インピーダンスが低いことから Q値が低くなり、 ダンパ一等を っけなくても短いパルスが放射できる。

- 27 -

(34)

d.横方向の結合振動がなく、 ほとんど純粋な厚み振動をするので、 きれいな 超音波を放射できる。

e.薄 膜状で誘電率が比較的小さいので、 そのまま高周波超音波を放射でき る。 厚さ30μmのフィルムでは基本波で-約25MHzの超音波を放射できる。

f.耐侯性、 耐薬品性に優れる。

以上のような特徴を利用して音響素子や、 水中用や医療用の超音波素子として 使われる。 また、 その焦電効果や非線形電気光学効果、 電場による偏光特性を 使ってさまざまな分野にも応用されている。 本研究では 、 PVDF の周波数特性が フラットで広帯域超音波トランスデューサに適しているということに着目して超 音波スペクトロスコピーシステムに採用した。 今回の実験にトランスデューサと して使用したのは、 呉羽化学工業から提供された厚さ 30μm と100μm のPVDF のフィルムで、 両面にアルミ電極を蒸着してあり、 ポーリングの温度は120---130

表2 - 1 PVDFと他の圧電材料の諸物性

密度ρ 比誘電率 圧電率d 音速c インピーダンス

機械的 電気機械

物質名 (1ぴkglm3) ε/ε。 (PC川) (km/s) pc Q値 結合係数

(lOSPa' s/m) k(%)

PVDF 1.79 12 20 1.4 2.5 5 20

7Jく品 2.65 4.5 2 5.7 15 105以上 11

ロッシェル塩 1.77 350 275 3.2 5.6 100 73

PZT 7.5 1400 300 3.2 24 1000 68

水(OOC) 1.0 80 1.4 1.4

空気(OOC) 1.29 X 10-3 l 0.33 4.27 X 10-4

- 28 -

(35)

℃である。このPVDFフィルムの欠点は温度によって特性が変化することで、そ のために校正が必要になる。特に600C以上で使用すると、脱分極現象が起きて著 しく特性が悪化し、不可逆的劣化を生ずるので注意を要する。第6章で述べた フッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体の強誘電的相転移の観測では、室温 から900Cまでの測定を行うために、トランスデューサ部の温度が低くなるような セルを作製しなければならなかった。しかし、他の高分子トランスデューサな ど、より高温まで使用できるものも研究されており、それらの登場が待ち望まれ る。また、フッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体もトランスデューサとし て用いられており、高い圧電率や延伸を必要としないなどの優れた特性を持って いる。CFRPの評価に用いたトランスデューサは、この共重合体の薄膜を球面上 にコーティングしたものである。以上述べたように、高分子圧電膜の発展には非 常に著しいものがある。

*Q値:共振回路で共振の鋭さを表す値で、 次の式で定義される。

Q=己;

fr:共振周波数 日:強度が共振時の会になる周波数

**夕、、ンパー:振動子のQを落とすために振動子の裏につける吸音材で、ベークラ イトやゴム、エポキシ樹脂に比重の大きな鉛等を入れて、振動子のインピー ダンスに近づけてある。形状は、指数関数型や円錐形で、先端を細くして背 面からの反射を無くすようにしてある。

口問有音響インピーダンス:媒質の境界面での反射率と透過率は、両媒質の密 度と音速の積で決り、これを固有音響インピーダンス又はp c (ローシー)と 呼ぶ。

- 29 -

(36)

2.3.3.3電気回路

a. パルス ・ ジェ ネ レータ

最初は岩崎通信機(株〉社製〈岩通〉のパルス ・ ジェネレータPG - 230 (最大 出力電圧+10V、 パルス幅 10ns'"'-'50ms)を使用した。 しかし、 PVDFフィルムと のインピーダンスのマッチングが悪いため、 実際に使えるパルス幅は 80ns以上で あり出力も小さくなった。 そのために、 超音波の吸収が大きくなる液品の相転移 点近傍では透過超音波の強度不足で測定が困難になる等の不都合が生じた。 次に 使用し たの は 、 東 北 金属工業(株〉社 製のポケッ ト ・ ノイズシ ミュレータ MO DEL - 5580 (最大出力電圧250V、 パルス幅50ns固定〉である。 本来ノイズシ ミュレータはパルスによって白色ノイズを発生し、 基板上のIC 等の素子のノイ ズ耐性をテストするためのものであるが、 他の高出力の発振器に比べて非常に安 価という点から採用した。 ポケット・ ノイズシミュレータは一応の成果を上げた が、 充電式のため長時間の測定の聞に出力が低下し、 その校正をしなければなら なかった。 そこで次に採用したのは同じ東北金属工業のポータブルタイプのノイ ズシミュレータHTG ・ 2111K(最大出力電圧1000V、 パルス幅 5, 10, 25, 40,

80ns)である。 CFRPの評価、 高分子強誘電体の実験にはこれを使用した。 ただ し、 トランスデューサの劣化を防ぐため、 励起電圧は測定に支障のない最低限 (約200V)にしfこ。

b.広帯域アンプ

当初、 アンプには自作のもの(利得: 20d B)と市販の RF Amplifer (同:

132dB)を二段で使用していたが、 RF Ampliferの帯域が狭くS/N比も悪かった ので、 増幅率が26dBのものをもう1台自作し、 FR Amplifer に代えて使用した。

作アンプは高速のOPアンプLH0032(バンド幅70MHz、 スルーレート500V/

μs、 フルパワー応答10MHz )を非反転増幅で使用した単純なものである。 広帯 域アンプは高価な市販品を使用しなくても、 最近市販され始めた超高速のOPア ンプ(例えばCLC 22 0 :ノくンドl隔200MHz、 スルーレート8000V/μs)を使えば安 価で簡単に作ることが可能である。CFRPの評価では 10MHz 以 上の高周波を増幅

する必要があったので、 CLC 220を用いたアンプ(利得: 26dB)を作製して実験

- 30 -

(37)

に用いた。

C. 波形記憶装置(wave memory又はtransient recorder)

岩通のDIGI TALMEM O RY DM-901 (A D変換の分解能8b i t s、 記憶容量 2048words、 最高サンプリングレート10ns/word、 GP IBインター フェー ス〉を使- 用した。 最高速で 2 k wordsの測定に要する時間は20μsであり、 一回の測定は瞬 時に終了する。 逐次AD 変換型の波形記憶装置としては非常に 高速であり、 サン プリング定理 によれば、 10nsの書き込み速度 で 5 0MHzまでの 周波数成分を 50kHzの分解能で調べられることにな る。 ただ、 AD変換の分解能8 bitsでは電圧 の分解能はフルレンジの1%程度しかないので 、 成分強度の小さい周波数ではSI N比が悪くなり、 解析が充分に行なえない。 高速の波形記憶装置の分解能として は5 ns/word= 200MHzで10bitsのものなども登場してき ている。 また 、 一度 CRT卜に波形をストレージしたものをAD 変換するストレージ ・ スコープは

20ps/wordを達成しており、 CFR P の評価では、 このストレージ ・ スコープ(岩通 (株〉社製ST RAGE SCOP E TS - 81 23 :最速 サンプリング 周波数2SGHz相当〉

を用いた。 この装置によって 、 より高 周波まで 高精度の測定が可能になった。

d. コンビュータ

測定装置のコントロールおよびデータの解析には日本電気(株〉社製のパーソ ナルコンピュータ- PC-9801 を用いた。 1 k wordsの高速フー リエ変換はマシン語 のプログラムによって1,.._, 2秒程度の時間で完了する。 初期のプログラムは

BASICと マシ ン語で作成し、 転送から結果の表示まで十数秒を要した。 しかし、

最近ではC言語によって開発を行なっており、 コンピュータもより高速なものを 使用できるので 、 容易に1秒以下までの短縮が可能であ る。

コンビューターの発達は非常に著しく 、 数年前のミニコン程度の 計算能力を ノマーソナルコンピュータが実現しており、 データの解析能力は計算能力の増大と 共に著しく向上している。 本超音波スペクトロスコピー法でも温度変化まで考慮 して一度に処理するというよ うな 、 より高度な解析も可能になっていくものと期 待される。

-31 -

(38)

2.3.4パルス法におけるデータ処理

2.3.4.1高速フーリエ変換(FFT)

連続な関数のフーリエ変換は式 (2-6)で表せるが、 離散的なデータを扱うため には、 フーリエ変換を離散的な形に書き改める必要がある。 x( t)を時間間隔 dt で サンプリングしたとすると、 n 個目のデータは x n= x (n . dt)で表わせ、 離散的 フーリエ変換は

xm=X(m dω) = L Xn・exp( -im . dω. n . dt) . dt (n =ー∞,∞) (2 - 16)

で表される。 さらに現実には有限個の xロしか測定できないので、 データの個数を n個とすると式(2・16)は次式のように書き換えられる。

xm=Z xロWNEロロ・dt (n = 0, 1,・ .,N・1 : m = 0,1,・ ., N-1)

WNmロ=exp( -im' dω. n . dt) (2 - 17) ここでサンプリング間隔をdt= 1 とおくと、 dω=2π/(N'dt) = 2π/Nで、

XErE=22XII羽1 mn (n = 0,1, ・・.,N-1:m=0,1,・・.,N-1) (2 -18)

となる。 この式(2-18)が離散的フーリエ変換(DFT= Discrete Fourier Transform) の定義式である。 WNrnf1 は位相回転因子と呼ばれ、 複素平面上における回転を表 す。 DFTを行うには、 約N2 回の複素数演算が必要で、 このままでは計算機でも 膨大な時間を費やしてしまう。 そこで考え出されたのがFFT(Fast Fourier Trans- forma tion)で、 2を基数とするFFTでは複素数演算の合計回数は約

2

10凶回で

済む。 これは式(2-13)中に出て釆るN2個の位相回転因子を、 その周期性を利用 して分割すると同じ演算項が多数現われるので、 それらをうまく扱うことによっ て合計の演算数を大幅に減らすことで達成されている。 そのアルゴリズムは多数 提案されており、 現在も発展を続けている分野である。

研究を始めた当初は共同電子のFFT演算ノぞッケージFFT98 (Ver.2.0)を使用し た。 測定データを実数を表す配列に代入して演算パッケージをコールすれば、 各 周波数に対する実数と虚数の成分を簡単に得ることができ、 FFTに対する特別な

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(39)

知識を必要としない。 パワースペクトルは実数成分と虚数成分から絶対値を計算 して得ることが出来る。

しかし、 その後ハードウェア制御などを記述しやすく、 コンパイル後のプログ ラムの実行が高速であるという理由から実験プログラムをC言語で開発するよう になった。 FFT等の算術演算においても充分な高速性を発揮している。

2.3.4.2超音波の吸収の求め方

超音波の吸収は式(2-5)のようにして定義された特性関数H(ω)の絶対値の逆数 であるから、 式(2-14)の場合のように試料のある場合と無い場合について測定し た結果をフーリエ変換して除算すればよい。 しかし、 実際の実験では測定セルの 構造や、 試料の境界面での反射が起こるので、 単純に除算を行なっても吸収を求 めることはできない。 例えば液品用の測定セルでは、 トランスデューサ部は液晶 に直に接しており、 このような測定セルで吸収の絶対値を求める方法としては標 準物質による校正データと比較することが考えられる。 しかしトランスデューサ 部と試料、 標準物質との音響インピーダンスのマッチングが異なれば、 トランス デューサによる超音波の放射効率や検出効率自体が変化するので、 単純な比較は できなくなることに注意する必要がある。 第5章の液晶の測定では\ 吸収の絶対 値を求めることが目的ではなかったこともあり、 ある温度に対する相対的な吸収 を計算した。 相対的吸収も、 特性の変化を調べるには適しており、 吸収解析の一 つの手段として有効である。 第6章の高分子強誘電体の測定は式(2-14)が成り立 つ場合で、 試料のある場合とない場合のパワースペクトルを除算して絶対吸収を 求めた。 式(2-14)が成り立つ理由については第6章の測定セルのところで説明す る。

2.3.4.3超音波音速の求め方

各周波数での音速の絶対値の同時測定は現状では出来ない。 それは次のような 理由による。 ある周波数の音速の絶対値の測定には、 試料中でその超音波がどれ だけの位相変化をしたかを知る必要がある。 フーリエ変換されたデータの実部と 虚部がなす角が位相であるが、 位相が計算できるのは0から2π ラジアンまでな ので、 試料中で超音波が2π以上の位相変化を起こした場合には、 それを検出で

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きない。 しかも、 2π 以下の位相変化しか起こらないように試料を薄くするか 測定周波数を低くすると、 試料の厚さが波長程度かそれより短くなり、 媒質の有 限性が顕著に現われることになる。

ただ、 可能性としては周波数領域で各値が、 滑らかに繋がるように低周波数か り結ぶことで解析対象周波数帯で 2π以上の位相変化を検出するという方法があ る。 もちろん、 低周波数では媒質の有限性の効果が現れるが、 そこは解析対象周 波数から除外することになる。 しかし、 この方法を実行するためには周波数分解 能が現在の装置よりも大幅に高くなる必要があり、 現時点では精度的に不可能で あった。

以上のような理由から本研究では、 ある温度を基準として各周波数の温度によ る位相の変化から音速の変化を求めることにした。 基準温度T。 では音速の周波数 分散はないものとして、 そのときの音速をc 。、 測定データのある周波数の実部を

R(ω, To)、 虚部を1(ω, To)とすると、 その時の位相角8(ω, To)は、

。(ω,九)=畑山お)

同様に温度Tでは

。(ω3司=tat

QM)

なので、 位相の変化は

d8 (ω,古) = 8 (ω, T)・8(ω, To)

温度Tでの周波数f

(

\ 2πl = ��

)

の音速c(ω,T)は(2・19,20,21)から

dc

c(ω,T) = ー

生+d8(ω, T)

co ω

(2 ・ 19)

(2 - 20)

(2 - 21)

(2 - 22)

で求まる。 なお、 ds は試料の厚さである。 もし、 基準温度で周波数分散がないと いう仮定に誤りがあった場合は、 データに不自然さが現れると考えられるので、

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参照

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