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<会議の概要>
2017年8月26日から28日の3日間,ニュー ジーランドのマッセイ大学で開催されたAsian Association of Social Psychology 2017 Conferenceに 参加した。AASPは,アジア太平洋地域の研究者 に研究を議論し,促進し,広めるための場を提供 することを目的とし,2年ごとに1回開催されて いる国際学会である。
本 年 度 の 主 テ ー マ は「Making a difference with
social science」であった。6件の基調講演があり,
「Making a difference with positive social science and education」 と「Making a difference with intergroup relations」がサブテーマとして掲げられていた。
さらに98件のポスター発表と240件の口頭発表 があり,中国,韓国,インドネシア,フィリピン,
米国など様々な国からの研究者が参加していた。
開催地となったマッセイ大学のあるアルバニー は,ニュージーランドの北島北部に位置する ニュージーランド最大の都市オークランドからバ スで40分の所に位置している。オークランドと いえばスカイタワーなどが有名であるが,アルバ ニーは変化に富む自然環境と広大な土地を有して おり,のどかな景色が広がっていた。
<研究報告>
学会の2日目,27日にポスター発表を行った。
ポスター発表は観光,異文化,教育など様々なテー マがあった。「Health and well-being」というテー マで題目を “A positive aspects of sensitive person”
として発表を行った。発表時間はランチの時間を 含む1時間で,ランチを取る会場と同じ会場で あったため多くの参加者と交流ができた。
発表内容は感受性の高さと芸術の関係を検討し たというものであった。研究1として感受性の高 さに関する新たな尺度を作成し,研究2として一 般大生と芸術大生の感受性の高さと芸術関心度の 関係について検討した。研究1より先行研究と同 じ低感覚閾,易興奮性,美的感受性の3因子構造 であることが分かった。しかし,美的感受性のみ 他の2因子と相関がなく,独立していた。研究2 より低感覚閾と美的感受性が高いと芸術関心度が 高いことが示された。さらに一般大生と芸術大生 の感受性の高さを比較した結果,一般大生よりも 芸術大生の方が易興奮性,美的感受性において有 意に高いことが分かった。ポスター発表での質疑 応答では,研究の疑問点や問題点の議論を深め,
今後の研究に向けたアドバイスを頂けた。
<聴講した研究発表>
印象に残っている研究発表は2つあった。1つ 目は口頭にて発表されていた解釈バイアス修正法
(CBM-I)についての研究である。CBM-Iとは,
肯定的にも否定的にも解釈できる状況で肯定的な 解釈を繰り返しイメージし,解釈を修正する方法 である。CBM-I介入によりストレスフルな状況 における行動のパターンに影響があるということ を示していた。具体的には介入を行うことで,ス トレスフルな状況を脅威ととらえるのではなく Rikkyo Psychological Research
2018 Vol. 60, 105-106 海外出張報告
Asian Association of Social Psychology 2017 Conference
参加報告
立教大学大学院現代心理学研究科 田中 有希乃
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る。日本に帰国してから現在でも連絡を取り合 い,今後の研究活動への意欲へとつながっている。
AASPに限らず,今後も国際学会に積極的に参加 したいと考えている。
最 後 に 主 催 国 で あ る ポ ー ラ ン ド を は じ め,
AASP関係者各位,学会参加費や渡航費の援助を して頂きました立教大学現代心理学研究科の関係 者の皆様に深謝申し上げたい。
チャンスだと評価したり,ポジティブ情動を高め るということが明らかにされていた。
2つ目は,ポスターにて発表されていたGrit(や り抜く力)の研究である。Gritの研究の第一人者 であるAngela Lee Duckworth教授はプレゼンイベ ントTEDの中で成功している人の共通項として gritを紹介していた。このプレゼンがgritを知る きっかけとなり,今回の学会でも興味を持った。
学会では2人の研究者がgritの研究を発表してお り,Gritの尺度を新たに作成した研究と,Gritと Big Five,知能との関連を国公立大学と私立大学 で検討した研究であった。
<感想>
今回の学会では自身の研究分野とは異なる様々 な研究に多くふれることができた。異なる研究分 野の方々とのディスカッションにより,改めて自 分の研究を考えるきっかけとなった。なにより コーヒーブレイクや発表の議論の中で,様々な国 から来ている参加者と交流し,異なる研究分野 の先生や院生と出会えたことは大きな収穫であ
写真 1 オークランド 写真 2 ポスター発表中の様子
写真 3 学会の様子