レジン結合 固体潤滑剤被膜の摩擦 と耐久性 第 1 報 実験装置の製作
宮尾芳一 中川多津夫 田中久一郎
(平成 7 年 1 0 月 3 0 日 受理 )
Friction and Performance of Resin Bonded Solid Film Lubricants T h e P r e l i m i n a r y R e p o r t
Y o s h i k a z u M I Y A O T a t s u o N A K A C A W A a n d K y u i c h i r o T A N A X A
L u br i瓜血go i lmn' tf un c 血ni ne nv i r o nme n t ss u c l la SV a C u l m a nd ・ u g h t e np er a t
ur e, sos o l i dl u br ic an t shveb ee nus e d i n t h ea e r DS PC eWo r l d.
Te c h no l o g i c al ho w‑ho wde v e l o p edi nt h e s e丘e l d shSt X t e na p p l i e dt oge ne r a la p p
rat us . A
n ds ol i dl l l br ic
ant shv e0 0met oh o l d ani np o r t z L ntPS i do ni nl l l b r i c a t i o nen gnee nn g.
We p r o d u c edpwd e r e ds ol i dl ub r ian t smi x e d w i t hpl y m e rr e s i n t h a twer ea p p 血d t D t he s t l 血c eo ft hema t e 血 1 ,a n dd r i e d .Weo 洗e nu s ea t h h c o a 血gp r o du c e db yh ea tb℃a t ment .
The r ehveb e e nma nys t udi e s0 nt h ec o a 血gc au s e db ys o u dl u br ic a n t s ,bu tf e wone so n t r i b l o g y.So we ma de aba n 10 n ‑d i s c t y p e Bi c do n ‑a b r a s i o n me a s q r hg e q t l i p me n tt o i n s p ec tf u血 e nt a lc ha mc t e r i s dc 8 0 f so l i dl u b r i c a t in gc o a t iJ l g.
A c c o r d i n dy , t h e f ri c do n a l p r o p er t i e s o f mo l y t x l e nt n ( Mo ss ) d i s u lp hi de a L n d p P et r a Au o me t h yl e n e( Pm )c o a 血g sha v eb ee ns t u d i e dt nd e rt hec o nd i do no fr ep ea t e d c o nt a c t .
1.は じ め に
最近の各種産業機械は急速な進歩を遂げ,その高性能化に伴って潤滑条件 も非常に過酷な ものとなっている.通常.機械摺動部などの相対運動をする二面間の摩擦を減 らした り摩耗 を防 ぐには潤滑油を用いるのが常道とされてきた. しか し,潤滑油が使えない場合には固体 潤滑剤の使用も考え られる.固体潤滑剤の使用法は色々あり.固体潤滑剤粉末を高分子剤な ど混合 して材料の表面に塗布 し被膜 として使用されていることも多い.
しか し固体潤滑被膜に関する研究は,一般に使用温度範囲や対薬品性などの塗膜に関する 特性についての ものが多 く.使用に際 して重要 となる諸条件下での摩擦,摩耗,潤滑.すな わち トライボロジーに関する研究は少ない.特に諸条件下における寿命特性などは使用者に よる実用テス トに委ね られてお り十分な研究が要求される分野である.
そこで.繰 り返 し接触による摩擦係数,被膜寿命が調べ られるポールオ ンディスク式摩擦
‡機械工学科 助教授
料 金沢工業大学 教授
料‡金沢大学 名誉教授
宮尾芳一 ・中川多津夫 ・田中久一郎
摩耗測定装置を製作 した.そして .MoS
2( 二硫化モ リブデン)と PTFE ( 四ふっ化エチ レン)を潤滑剤として作成 した固体潤滑被膜の摩擦特性を調べた・
2. 固体潤滑剤の特徴
潤滑油が使えないか. もしくは使うのが極めて困難な場合には固体潤滑剤の使用を考える ことが必要である.例えば,真空中,腐食性があるなどの特殊雰囲気中や超高温,超低温.
放射線場,電磁場などのような保守困難な場合に使用される.このような固体潤滑剤が要望 されるケースは宇宙開発や原子力利用などで多 く見 られ,す ぐれた技術開発が数多 く行われ てきた.昨今,その成果は表 1 に示すように家電機器や音響機器をはじめ自動亀 車軸概観 産業機械などの一般機器にも応用されている,今や固体潤滑剤は潤滑の中で重要な地位を確 保 している1 ).
個体潤滑剤被膜はバインダと混合されているため,固体潤滑剤が飛散 しないで下地材料に 付着 している利点がある. しか し.乾燥潤滑として使用されるので.環境に敏感であるなど の特徴がある 2 ) .
表 1.潤滑特性の相違点
分 類 機 . 罪.装 置 使 用 部 位 効
果家電級器 オ丁プン,洗液嵐 冷蔵風 エ アコン ヒンジ,リンク較捕 .ホップア 耐摩耗性 ,耐熱性 ,耐食性 ツプ楼梢など
音響機器 テープ レコーダ,プ レーヤ,チ ツキ,ビデオなど レI リール台.解除枚梢など )‑ジレバー.リンク横柄. 耐摩耗性 ,安定摩擦係数.永久 潤滑
事務践器 コンピュータ,複写扱.タイプ ライタなど スライ ドレール.カム,ヒンジ 耐摩耗姓,永久潤滑 すべ り軸など
精密践器 カメラ,望遠銃など など シャッター.絞り,ズーム鏡筒 耐摩耗性 .永久潤滑
家庭用品 ガス湯沸器,錠.ラジコンなど 閉子,すべ り部分,ヒンジビン など 耐摩耗性 ,永久潤滑
車
̲ 丙自動車 ,オー トバ車など ピス トン,スプライン軸,ヒン 初期な じみ,耐摩耗性,安定樫 ジ,ガスケッ トパ ッキン,ボル ト.ユニバーサルジョイン ト等 捗係数
産業機械 油圧 .空圧硯器.弄空機器,エ ベーン,ロータ,シリンダ,ギ 初期な じみ,耐摩耗性.耐食性 作機械.ロボッ ト,医療機器, ヤ,チェーン.すべ り部分,カ 低摩擦性 ,離型性 ,耐熱性 原子炉 ,試験器 .制御随城など ム,リンクなど
そ の 他 鉄筋継ぎ手,橋梁,塑性加工 ボル ト,ナ ット,ダイス.金 焼付き防止.か じり防止,安定
表 2 は固体潤滑剤被膜 と潤滑油の 潤滑特性の相違点をまとめたもので ある.このように固体潤滑剤被膜に は利点が多 く見 られる. しか し、冷 却作用がないこと,潤滑剤の補給が できないこと,軽荷重以外の使用条 件では寿命が大きく異なって くるこ
とが難点である.
3. 試 料 作 成
固体潤滑剤被膜の組成は .Mo S2 , PTFE ,黒鉛などの固体潤滑剤の 粉末 と有機 レジン系などのバイ ンダ.
添加剤,溶剤等からなる.まず,こ れ らを調合 した溶液内で固体潤滑剤 粉末が均一分散するよう混合機をよ く撹搾する.塗料状になった溶液を スプレー法や浸漬法などで機械部品 の表面に一定量塗布 し,乾燥または 焼成 して硬化させ被膜を作成する・
今回の試料作成方法の手順を図 1 に示す.固体潤滑剤 として PTFE , Mo S2 の 2 種類の粉末を,バイ ン ダとして耐熱性の優れた PAI( ポ リア ミドイ ミド)樹月 旨を用いた・試 料の下地材料は S4 5C を用い.試料 面は研削仕上げを した.表面粗さは およそ Ra‑0 . 6〝m であった・この 下地材料を洗浄 し抽月 旨分等を除去 し た後,固体潤滑剤被膜となる溶液を スプレーで吹き付けコーティングし, 一定温度で焼付を した.なお試料の 膜厚は 2 5/ 上m 前後になるようにした・
4. 実験装置製作
図 2 は製作 した実験装置の概略図 である.モータを駆動させ試料に定 速回転を与える.一定荷重のかかっ
表 2. 一般機器での使用例
項 E l 固体潤滑被膜 オイ ル ダリ‑ス すべ り速度 低〜中退 . 中〜高速 低〜中
速耐荷重性能 中 大 大
ころが り潤滑 可 良 良
冷却効果 恋い 良い やや恋い
潤滑剤の補給 できない 容易 煩雑
潤滑剤の密封装置 不要
爪容易
漏 洩
な し 多い 少ない
細部への潤滑 容易 容易 国難
水 との接触 良 不可 不可
図 1.試料作成のプロセス
宮尾芳一 ・中川多津夫 ・田中久一郎
た硬球が試料に連続繰 り返 し接触をする。この装置は,接触時の摩擦力,摩耗量,被膜の有 無を測定 し記録できる機能を有する.なお荷重.回転速度は自由に設定でき.回転数は非接 触の回転計で測定される.以下に各々の測定について述べる.
4‑1 摩擦力測定
2 枚の りん青銅板で平行板バネを構成 し.一端は軸受で支持されているアームに固定され ており.他端には試料を摩擦するための硬球を固定 したピンをホルダーで固定 している.こ の ビンが摩擦力を受けると平行バネが変位 し,バネの表裏に貼付されているひずみゲージが 変形 し,その変形量がス トレインアンプを介 して摩擦力として測定される.
試料はモータにより回転させ られ 硬球は試料直径方向に移動 させることができ接触直径 を設定できる.
4‑2 摩耗量の測定
固体潤滑被膜が繰 り返 し滑 り接触を して徐々▲ に摩耗 してい くことにより,接触点である鋼 球の位置 も下方へ下がっていく.この 〃m オーダの変位量を変位計によって測定する.
また,固体潤滑被膜が絶縁性であることを利用 して被膜の破損の有無を調べた.初期には 硬球 と下地鋼材は被膜の存在により絶縁 しているが,被膜が摩耗 し無 くなると硬球が下地鋼 材 と接触 し導通する.この絶縁,導通の状態すなわち接触電気抵抗の変化が測定できる電気 回路を付加 した.
図 2. 摩擦摩耗測定装置
LJ
5. 実 験 結 果
5‑1 実験条件
今回は.繰 り返 し滑 り接触実験を行った・試料 と鋼球 との摩擦速度は 0 ・ 1 m / Sとし ・硬球直 径は 3 / 1 6 インチ,荷重は 州 で行った・摩擦係数が 0 ・ 3 以上で被膜の寿命 と判定 した・なお温 度 2 5 ±l o C ,湿度 6 0 % 以下の恒温槽中で行 った・
図 3. 摩擦特性 ( PTFE 固体潤滑剤の場合 )
図 4. 摩擦特性 く MoS 掴 体潤滑剤 の場合)
( ∈TT ) 蛸
だ敬 0 0 0 0 4 3 ∩ム 1 0
宮尾芳一 ・中川多津夫 ・田中久一郎
5‑2 PTFE 固休潤滑剤の場合
図 3 は試料に PTFE 固体潤滑剤被膜を用い,摩擦回数に対する摩擦係数,摩耗量および 接触電気抵抗の関係を示す.摩擦係数は 5 0 回位までは一定値を示 し,その後徐々に増加 し 4 0 0 回位で ピーク値となる.その後は再び低い値となり 9 , 0 0 0 回位から再上昇 し 5 0 , 0 0 0 回位で急 激に上昇 し寿命 となる.これを変位計のデータより推測すると ,4 0 0 回位までは鋼球が被膜 に少 しずつ食い込み,硬球前面の被膜を変形させ被膜が薄 くなるために摩擦係数が徐々に増 えるが.その後 9 , 0 0 0 回位までは薄い被膜が残 り摩擦係数が少な くなる. 5 0 , 0 0 0 回位でその 被膜 もな くなり,摩擦係数が急速に増加 し寿命となると思われる.接触電気抵抗の変化から
も 5 0 , 0 0 0 回では寿命に達 している.
5‑3 MoS2 固体潤滑剤の場合
図 4 は Mo S2 固体潤滑剤被膜について同様な実験を した結果である.初期には摩擦係数 はほぼ一定で摩耗量はほとん ど無い. 6 0 0 回位で硬球が被膜に食い込み摩耗量の増加が開始 する.摩擦係数は 1 , 0 0 0 回前後でやや減少 し.その後また上昇する.
大まかな傾向は PTFE の場合と類似 しているが ,PTFE の場合は途中か ら急激に寿命 に達 したが ,Mo S2 の場合は徐々に寿命に達 した.このように固体潤滑剤の種類により様 相が異なることが分かった.
6. お わ り に
固体潤滑剤被膜の摩耗特性を調べるため,ボールオ ンディスク式摩擦摩耗測定装置を製作 し.実験を行った. これより摩擦係数.摩耗量等から被膜の寿命に達するまでの様相が検討 できることがわかった. PTFE および Mo S2 固体潤滑剤被膜を比較 した とき摩擦係数, 摩耗量.接触電気抵抗の接触回数に対する様相が異なった.
今後,種々の条件の実験を行い,また,表面粗さ計や電子顕微鏡などの評価機器を用い摩 擦表面などを観察 し,固体潤滑剤被膜の摩擦と耐久性の検討を加えたい.
おわりに.試料作成等に閑 し多大なご協力を戴いた住鉱潤滑剤株式会社の関係各位に感謝 の意を表 します.また.本実験の 一 部は長野高専教育研究特別経費の助成を受けて遂行 した ものでここに記 して深謝いたします.
文 参 考 献
1 ) 住鉱潤滑剤株式会社カタログ 「 ス ミコ‑の ドライフイルム 」 p4 2 ) 松永正久監修 固体潤滑ハ ンドブック p2 3 7
3) 田中久一郎 摩擦のお話 日本規格協会
ト