審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 白石 沙眞 審査論文
題 名:Significance of the number of brain metastases for identifying patients who don’t need whole brain radiotherapy: implication as oligometastases of the brain(脳転移の個数か らみた全脳照射の必要性の検討―脳における少数個転移に対する治療戦略―)
著 者:Sachika Nogi, Hidetsugu Nakayama, Yu Tajima, Mitsuru Okubo, Ryuji Mikami, Naoto Kanesaka, Shinji Sugahara, Koichi Tokuuye
掲載誌:Journal of Radiosurgery and SBRT 2:119-126 (2013)
【背景と目的】
定位放射線治療は脳における単発転移に対する標準的治療であり、全脳照射の追加は脳内 の再発率が低下するものの生存期間の延長には寄与しないとされる。複数個の脳転移におけ る標準的治療法は全脳照射であるが、全脳照射に伴う認知機能の低下が指摘されている。そ こで、複数個の脳転移において全脳照射を省略できる患者を選別するために、後ろ向きに症 例検討を行った。
【対象および方法】
2003年2月~2010年10月に、脳転移に対して定位放射線治療を行った226人を対象とし た。その中の8人は全身状態の悪化に伴い治療中断されたため、今回の検討からは除外をし、
年齢中央値64.2歳(33-87歳)の218人で、生存率、再発率への影響因子を分析した。さら に、定位放射線治療のみを受けた131人、また、その中で脳内再発を生じた55人の患者に対 して再発個数を分析した。
【結果】
全生存期間、頭蓋内無再発生存期間の中央値は、それぞれ7.2ヶ月と4.3ヶ月であった。全 単変量解析における生存期間の予後因子は、良好なPS (p < 0.01)、脳転移の個数3個以下(p <
0.01)、良好なGPA (p < 0.01)であり、多変量解析においては、PS (hazard ratio [HR] = 1.71, 95%
confidence interval [CI] of 1.13–2.57, p = 0.01)と脳転移の個数 (HR = 1.75, 95% CI 1.08–2.83, p = 0.02)であった。年齢、頭蓋外病変の制御、定位放射線治療への全脳照射の追加は、単変量・
多変量解析ともに全生存期間に影響を与えない結果を示した。頭蓋内無再発生存期間につい ては、脳転移の個数3個以下のみが、単変量解析 (p < 0.01)、多変量解析 (HR = 3.37, 95% CI
2.02–5.62, p < 0.01)ともに予後因子であった。単変量解析では全脳照射の追加、年齢は予後因
子に影響を与えなかった。定位放射線治療のみ実施して脳内再発した55人については、ロジ スティック回帰分析において、再発時の脳転移 3 個以下については、初回の定位放射線治療 前の転移個数と関係した (HR = 2.93, 95% CI 1.00–08.59, p=0.05)。また、定位放射線治療への 全 脳 照 射 の 追 加 は 、 全 生 存 期 間 と 頭 蓋 内 無 再 発 生 存 期 間 に 関 与 を 示 さ な か っ た (95%
confidence interval [CI] 7.95-13.65, p = 0.20, 95% CI, 6.88-9.92, p = 0.33)。定位放射線治療のみを 行った 131 人についての検討では、初回定位放射線治療前の脳転移の個数3 個以下は再発時 の脳転移個数も3個以下を呈した (p = 0.045)。
【結論・考察】
脳転移が 3 個以下の患者は、頭蓋内無再発生存期間に関与し、再発時の脳転移個数も 3 個 以下を呈しやすかった。そのため、全脳照射を省略した複数回の定位放射線治療が有効な可 能性を示唆した。
東 京 医 科 大 学