酸化系セラミックス粉末を添加した粘土焼成体の強度特性について

全文

(1)

長野工業高等専門学校紀要第

3 6

( 2 0 0 2 ) 5 5

酸化系セ ラミックス粉末を添加 した粘土焼成体の強度特性 について

芳 賀 武   青 木 博 夫   宮 尾 芳 一

M e c h a n i c a l   P r o p e r t i e s   o f   S i n t e r e d   C l a y   C o n t a i n i n g   O x i d i z e   C e r a m i c   P o y d e r s

Takeshi HAGA,Hiroo AOKI and Yoshikazu MIYAO

Thi ss t ud yr e s e ar c he dt hebe nd i ngS t r e ng t ho fne x t2 s t e ps t ag eShi g ar a kic l a yS ,t het e mpo r a r y s i nt e r e dc l a ya ndt hes i nt e r e dc l a yb fwhi c hwe r ec o nt a i ne do x i d i z ec e r a m i cpo wde r sa taf ixe dr at e.

I nt hepr e v io uss t ud y ,weus e dA l2 03C e r a m i cpo wde r s .Buti n t hi SS t ud y ,wel l S e dZr 02C e r am i c po wde r s . A s t her e s u lt ,t het e mpo r a r y8 i nt e r e d● c l a yde c l i ne dt hebe nd i ngS t r e ng t ha8Wei nc r e as e d c o nt e nto fZr O2 .Ont hec o nt r a

r

y ,whe nt hec l a ywasS i nt e r e dat1 23 0

c

c.t headd i t i o nr a t eo fZr O2 c e r am i cpo wde r sat25 wt % S ho we dma x i ml l m t hebe nd i ngS t r e ng t h o=66. 5【 MPaHo we ve r ,t he i nc r e a s eO ft hebub bl eac c o mpani e dbyt headd i t i o nr a t ei nc r e as ewa so bs e r ve d.

キーワー ド:粘土焼成体,ジルコニア,アル ミナ,強度

1

.まえがき

構造用セラミックスは酸化物系と非酸化物系に分類 されている.一般に,酸化物系セラミックスの構成原 子は,イオン性にとんだ結合をしているため,原子の 拡散が容易 とな り焼結 し易い.一方非酸化物系セラミ ックスは,その構成原子が共有結合になるため焼結 し にくいが,機械的性質の優れたものが得 られると,言 われている1)・3)

代表的な酸化物系セラミックスであるアル ミナは高 強度 (曲げ強度

‑400 MPa)

.高硬度 (☆モース硬度

‑9)

,耐熱性 (融点

‑205 0

℃)耐食性,耐磨耗性, 光学的透明性,科学的安定性,電気絶縁性 (抵抗率‑

1 01 4t 2 c m

,禁制帯幅

‑9. 5e V)

,生体適合性等に優れ, 古くから工業用材料 として使用 されてきている4).特 に,自動車用には耐熱性,絶縁性を利用 したスパーク プラグに広 く使われている.

本研究において粘土‑添加する,酸化系セラ ミック スジル コニアは,高強度 (曲げ強度

‑1 2 00M Pa)

, 硬度 (モース硬度

6. 5 )

,耐熱性 (融点

26

77℃)で, 常温での機械的強度 と破壊靭性が大きく,耐磨耗性 に優れている.また,熱膨張が金属に近いとい う特徴

*電子制御工学科教授

**電気工学科教授

***扱横工学科教授

原稿受付

2 0 0 2

5

1 7日

がある.しかし,高温強度が期待できないことか ら室 温付近での高強度,高靭性,高耐磨耗性,高耐食性等 を利用 した用途に限 られ,例えばセラミックス製ハサ

ミが実用化 されている.

本研究では安価で豊富な資源である粘土に各種セラ ミックス粉末を添加することにより,環境的にも経済 的にも良い粘土を主体 としたセ ラ ミックス材料 を作

り,その強度特性を調査することを目的 とした.

2. 試験片の作製方法 と実験方法

試験片の作製方法 と実験方法はつぎの手順で行った.

①信楽粘土の粉末を乳鉢です り潰 し,細か くなった 粉末をガーゼに通 して粒子の大きさを均一にする.

②その粉末に一定の割合 ごとのジル コニア粉末を添 加 し,水 とともに良く混ぜ合わせてポ ッ トミル‑

入れる.添加率(wt%)を次に示す.

0

,

3

,

5

,

8, 1 0, 1 3, 1 5, 1 8, 20, 23, 25, 3 0, 50

③ポッ トミルを約

24

時間回 し,その後中身を平 らな 容器‑流 し込んで

1 60

時間か ら

24 0

時間乾燥 させ

る.

④乾燥 した材料を(1)と同様の手順で細かくし,少量 の水を加 え良く手で混ぜ合わせる.その後,添加 率ごとに粘土をビニル袋に入れ,濡 らした新聞紙 とともに密封 し

,1 60

時間ほど材料を保持する.

(9保持 しておいた材料を再び軽 く挟み直 し,材料の 中の空気を抜 くとともにより粘土を均一化する.

(2)

5 6

∩ 1 4 0 0

忌 12

0 0

p

・ 弓1 0 00 8 0 0

600 4

0 0

200

0

芳賀 武 ・青木博夫 ・宮尾芳一

一一一素焼き 本焼き

‑■t

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0

時間【h】 図1焼結ノサーン

⑥適当な硬 さになった ところで試験片の形に し,塞 温で約

1 60

時間乾燥 させる.乾燥後,素焼きと本 焼 きを行 う.焼結パターンは図

1

に示す.素焼き ではまず

1

時間かけて

6 0

0℃まで温度を上げ,そ れを

1

時間保持 し,さらに

1

時間で

8 0

0℃にして,

1

時間保持する.その後

1

時間で 0℃にす る.ま た本焼きでは, 2時間かけて

8 0

0℃まで上げ,そ のままもう2時間で

1 230

℃にし,それを

3時間

保持する.そ して

2

時間かけて

0

℃まで温度を下 げる.

⑦試験片の幅 と高 さをそれぞれ各

4

箇所 ノギスで測 定 し,平均を取って幅

W

と高さ

H

を決定する.

⑧引張(圧縮)試験機 に

3

点曲げ試験用の装置 と試験 片を取 り付け圧縮速度

0. 5 ( mm/ mi 皿)

で試験片に 荷重を加える.試験片が破断 した時の最大荷重P の値 と⑦で求めた幅

W

と高 さ

H

の平均値を次式 に代入 して,曲げ強度を算出する.

q=

」空し 【

MPa] (1)

2WH 2

P

:

最大荷重

【 NI w:

試験片の幅

【 mm】

H:試験片の高 さ

【 mml

1:支点間距離

【 mm】

⑨試験片の破断面を走査型電子頗微鏡(SEM)を用い て観察 し,倍率を

500,1 000,1 500,2000

倍に 設定 して破断面の写真を撮影す る.

・試験片の作成方法

本研究において最 も大切なことは,一つ 目に粘土の 練 り方である.これにより本焼き後の曲げ強度に大き な差が生 じて しま う.そ して,二つ 目に試験片の作成 方法である.

今回,2種類の試験片作成法を試みた.1つは,読 験片の大きさの型を作 り,その中に粘土をはめ込むと い う作成方法である.この作成方法では一つ一つの試

験片の大きさが一定になるとい うメリッ トがある.し か し,粘土を型か ら取 り出す時に,うまく取 り出せな い.また,最大の難点は時間がかか りすぎるとい うこ とである.時間がかかって しま うと,粘土がどんどん 乾燥 して しま うので,型に入れるのが難 しくなる.

そ して,もう1つの作成方法は,鉄板や平らな木片 の上に粘土をおき,‑ らで伸ばしてある程度の厚 さに なった ら,カ ッターなどで切 り,そのまま乾燥するま で待つ とい う作成方法をとった.この作成方法では, 時間が大幅に短縮できるが,粘土が含んでいる水分に 気をつけなければならない.水分が無 さ過ぎても粘土 は うま く伸びない し,逆に水分を含みすぎていると, 粘土を乾燥 しているときに試験片が割れて しま う.し か し,この方法が現時点で最 も有効な試験片作成方法 だ と思われる.

3. 結果および考察

図 2,図 3は実験方法⑧の(1)式より求めた曲げ強度

(o)をセラミックスの添加率により区別 し,それぞ

れ値は

7

個の平均を表 したものである.図

2

は,素焼 きをした後の試験片を破断 した ときのものであり,図

8 7 6 5 4

3

2 1 0 (e d M

)

g

G

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 9 CO 7 6 5 4 3 2 1 (e d M )世 瀬

◆ ◆ ◆

0 2 0 4 0 6 0

添加率(wt%) 2添加率ごとの曲げ強度(素焼き)

0 20 4 0 6 0

添加率(wt%)

3

添加率ごとの曲げ強度(本焼き)

(3)

慨化系セ ラ ミックス粉未 を添加 した粘」二焼成体 の弥度特性 につ いて

3

は,本焼 きを した後の試験片 を破断 した ときの もの

である.

3‑ 1

曲げ強度

2

の グラフか ら素焼 きの場合 ,添加率増加 に伴 い 強度 が次第に低 下 している.これ はあ くまで素焼 きと い うものが,粘土 中の水分 を十分 に抜 くために行 う焼 きであ るか らである.粘土は多少焼結 しているが,ジ ル コニアはほ とん ど焼結 していないために,このよ う な結果 に結 びついた と考 え られ る.

アル ミナの場合,図

3

か ら分か るよ うに添加 率

1 0%

前後 まで変化はあま りな く,その後

1 3%〜1 5%

あた り か ら強度 に著 しく変化 が現れ始 め,20%〜23%,25%

と曲げ強度(o)が頂点 にな り,その後は

o=85 加 Pa 】

前後 で飽和 している.このことか ら

,1 0%以下のアル

ミナの添加 ではあま り強度には変化がな く,20%付近 での アル ミナ の添加 は材料 に好形 徴 を及 ぼ し強度 は 改善 され,またそれ以上になる とあ よ りアル ミナ添加 の効果がない と考 えられ る.

本研究のジル コニアの場合,添加

率 3%

lu目す強度 o

≒1 0[ MPa

】も上が りその後

1 8%l

TT後 よでは飽和 状憶 とな り,そ して

20%‑25%

で強度 に変化が現れ,

c rmax=66. 5[ MPa

を示 し,その後 は低 Fしてい る.

また,アル ミナ と同様 に

20%イ

寸近での ジル コニアの 添加 は材料 に好影響 を及 ぼ し強度 は改善 され,またそ れ 以上 にな る とあま りアル ミナ添加 の効果 がない と 考 え られ る.

また,図

2

の素焼 き後の曲げ強度 は,添加 率増加 に ともない少 しずつではあ るが低下 している.これはア ル ミナか らt)いえることだが,素焼 きの場合焼結パ タ ー ンの放

氾度 は

800

℃ であるため,セ ラ ミックスが

卜分に焼鮎 しなかったため と考え られ る,

( a) 25wt % ( e) 5wt %

写真1 ジル コニアの添加率

( a ) 25wt %( b ) 20wt %( C ) 1 5wt %( d) 1 0wt %(

)

5

wt %

57

(4)

58 芳賀 武 ・青木博夫 ・宮尾芳一

3‑2 SEu写真

写真1はそれぞれ添加率25%,20%,15%,10%, 5%の もので,走査型電子顕微鏡 を用いて,強度試験 後のジル コニアの破断面を倍率 500倍で撮影 したも また図

2

の素焼 きの曲げ強度は,添加率増加にともな い少 しずつではあるが低下 している.これはアル ミナ か らもいえることだが,素焼 きの場合焼結パターンの 最高温度は800℃であるため,セラミックスが十分に 焼結 しなかったためと考えられ る.

4. 結論

以上の結果か ら次のような結論を得た.

(1)図3においてジル コニアは,添加率0%と最大 25%の値を比較 した結果,曲げ強度(α)は約 1.84 倍にな り,ジル コニアによる添加率増加 にともない, 強度改善は認め られた と考えられ る.

(2)アル ミナ とジル コニアの曲げ強度(o)の結果 を 比較すると,ジル コニアの場合,低い添加率10%まで は値が大きくなっていた.また,高い添加率において はアル ミナほど値が増加 していない.逆にアル ミナの 場合,低い添加率ではあま り大きな値 を示 していない ,10%以降か ら急激に値が増加 している.しか しな が ら,ジル コニアは低い添加率,アル ミナは高い添加 率においてその強度 に変化をもた らしていることが 分かった.

(3)破断面観察の結果,添加率が多 くなるに したが って気泡は小 さくなっているのが確認できた.このこ とか ら,気泡は曲げ強度(

q)

に大きな影響 を及ぼす と 考えられ る.また,材料を良く混ぜ合わせ ることによ って,材料 中の空気 をまった く抜 くことは,莫臣しい と 思われ る.また,注意点 として,材料 を混ぜ合わせた らただちに試験片を作成せずに室温に 160時間ほど 保持 してお くことが重要である.その結果,材料に水 分がよく馴染み,さらに混ぜ合わせ ることでよ り良く

材料の中の空気を抜 く事ができ,試験の結果も正確に なると思われ る.

5. 今後の課長 と展望

今回の研究は曲げ強度特性か らの考察であるので, 今後の課題 としては,硬度引張強度,耐熱性,電克絶 縁性,化学的安定性の面か ら検討,考察す ることが必 要である.酸化系セラミックス粉末 として,前研究5)

ではアル ミナ,本研究ではジル コニアを粘土焼成体‑

添加 したが,この

2

つ とは異なった酸化系セラミック ス粉末を添加することは,あま り現実的ではない と思 われる.

本研 究 で粘 土‑ 添加 した ジル コニ アの耐熱 性 は 2677℃であ り,前研究のアル ミナは,耐熱性2050 である.このことか ら今後,焼結パターンの最高温度 1230℃か らさらに温度 を上げることによ り曲げ強度 が上がるとい うことも考えられ る.数パターンの焼結 方法による粘 土焼成体の機械 的特性の相違か ら最適 な焼結方法を検討 したい.

上記のような課題か ら,更なる機械的特性の向上を 期待 したい.

串考文献

1)浮岡昭,酉永項 :未来をひ らくニューマテ リアル, p.185(1991年)

2)水 田進,河本邦仁 :セ ラ ミック材料,p.14,p28 (1986年)

3)一ノ瀬昇 :ニューセラミックス,p.3(1989年) 4)境野照雄 :ニューセ ラミックスの世界,p.28(1985

年)

5)

高杉優貴

: r A l2 03

セラミックス粉末を添加 した粘 土焼成体の機械的特性について」,平成

1

1年度卒 業研究論文

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参照

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