堀 内 ちとせ
1.はじめに
英語が専門でなく、それほど得意でもない学生が、少しでも頻繁に英語に触れられるような授 業形態を、藤田保健衛生大学、衛生学部、衛生技術学科1年の130名(2001年度)の「読解の授 業」を対象に検討する。
2.方 法
以下の要領で授業を進め、③〜⑥を2週間ごとに繰り返す。
①専門が「医療関係」であるため、できるだけ学生の興味を引きそうな、「健康科学系の教科書」
を使用する。また、長めの文章ばかりが載っているものを避け、「短めの文章」がいくっか載っ ているタイプのものを選ぶ。
②授業の第1回目に、学生自身が読みたいと思う文章を教科書から3っ選ばせ、その「学生の希 望」の集計に基づいて授業を進める。
③普通は自宅で自主的に行ってくるべき予習を「予習レポート」という形にして、「評価」の一 環とする。「予習レポート」は主に知らない「単語・熟語調べ」を中心にしたものとし、最終 的な課題である「復習レポート(必須)」の内容に自信のない学生のみ提出するものとする。
④「解説」を行う前の週に、付属のテープ(本文を読んだもの)を聞かせ、その単元に出てくる 「単語を医療関係のものを中心に解説」する。また、1回ずつではあるが、その「単語の発音 練習」をも併せて行う。その後、授業内の10分から15分程度の時間を取って、教科書に掲載さ れている簡単な「True/False問題(以後T/F問題とする)」に取り組ませる。教員からの 「解説」を受ける前に各自で「文章全体に目を通させる」ためである。「単語解説」のこの授業 までに、希望者のみ「予習レポート」を提出させる。
⑤教員が全体的に「解説」を行う。解説は「全体的な解釈」を中心に、構造的に難しい点、解釈 する上で難しい点などの説明を踏まえながら行う。次の授業時に提出すべき「復習レポート (必須)」を意識して、「ポイント説明」は力説する。また学生の眠気覚ましのために、前の授 業に解説し発音練習させた「単語の意味確認」を、随時行いながら進めていく。
⑥「解説」があった次の授業までに、解説で重要だと説明された部分、解釈を間違えてしまった
部分などを、少なくとも「3っ」選んでレポートさせる。「レポート形式」は、解説で「ポイ
ント説明」された部分をもとに学生自身で「問題」を作り、その問題の「解答」も付けるとい
う形を取らせる。解説終了後、レポート作成に入る直前までは、分からないところを「学生同
士で相談」し合っても良いこととする。
3.今回の試みに対する反省(学生へのアンケートをもとに)
3.1 「予習」および「予習レポート」について
「予習レポート」は先述したように、必須の「復習レポート」に自信がない学生のみの提出 だったのだが、時々提出するという学生も含めれば、80%以上もの学生からの提出が見られた。
「かなりの提出率」を見ることができたのは、やはり「評価」が絡んでいたためかもしれない。
ただ、「予習内容」を見てみると、やはり機械的な作業ですむ「単語調べ」のみを行ってい る学生が圧倒的に多い(62%)。また「授業内の予習」、つまり授業時間内に「T/F問題」を 行う時間を取ったことに関しては、「必要」とする学生は過半数以下にとどまり(44%)、「不 必要」とする学生が3分の1ほど(32%)も見られた。
ちなみに、「T/F問題」の前に行う「単語の解説&発音練習」に関しては、ほとんど全ての 学生が「必要」と答えている(98%)。「単語のみでなく文章の流れの中で音のっながりも確認 したい」というような意欲的な意見もある一方で、「(聞くのが)疲れるので簡単な単語の解説 は省いてほしい」というコメントも見られ、わざわざ「(単語の解説と発音練習は)要らない」
というコメントさえも見られた。
以上のことから言えそうなのは、自分の手を煩わせて「予習する」のは、自宅であろうと授 業時間内であろうと面倒臭いので「やあたい」が、やはり「解説だけはしてほしい」というこ
とであろうか。
下の表で「問題」というのは、「教科書付属の問題」のことである。授業内に行わせる「T/F 問題」もその中に含まれている。時間の関係で授業内にはその問題の解説までは行わないのだ が、意欲的な学生の中には、その教科書付属の「問題」のみならず「全訳」まで試みている者
も、わずかながら見られた(9%)。
以上の結果とは裏腹に、「予習」自体が必要なものなのかどうかを判断しかねている学生が、
3分の1(31%)も見られた。恐らくこれらの学生は、先にも少し述べたように、「評価」が 絡んでいるというだけの理由のために、とりあえず「機械的に単語調べ」だけはして来たとい
う学生なのではないだろうか。文章の流れに照らし合わせて単語を調べて来ない限り、せっか くの「単語調べ」もただの「時間の無駄」と終わってしまう。これでは「予習はいらない」と いうことにもなりかねないだろう。
学生の「予習レポート」に対する受け止め方はさておき、教員側の意見としては、やはり授 業を受ける前の「予習は必須」のものだと考える。あまり意味をなさないような「機械的な単 語調べ」という形は改め、「新たな形」で「予習レポート」を課していく必要がありそうであ
る。
〈予習レポート〉(%)
ほぼ提出 時々提出
ほぼ未提出 忘れた
071り4 8
1
〈予習内容〉(%)
単語
単語&全訳&問題 単語&問題 単語&全訳
その他
62
9 9 7
12
〈単語の解説&発音〉(%)
必要 98
不必要 2
〈授業内の予習(T/F問題)〉(%)
必要 44 不必要 32 分からない 24
〈予習の意義〉(%)
必要 62 不必要 7 分からない 31
3.2 単元ごとの「解説」にっいて
先にも述べたように、単元ごとの「解説」は「全体的な解釈」をもとに、構造的に難しい点、
解釈する上で難しい点などを踏まえながら行った。ただ、「文法嫌い」の学生のことを考えて、
できるだけ「文法用語」は使わないように配慮した。また次の授業で提出させる「復習レポー ト(必須)」を意識して、「ポイント説明」には力を入れた。さらに学生の眠気覚ましのために、
前の授業で解説し発音練習させた単語を中心に、随時学生に「単語の意味を確認」しながら進 めていった。
その結果、「今回のような感じで良い」と答えている学生が91%にも及んだ。ただ、わずか ではあっても「解説」自体「必要ない」と不評を訴える学生も見られた。そのような学生が少 しではあっても存在している以上、やはり「解説の仕方」を「考え直す必要」はありそうだ。
英語の構造は日本語とかなり違っているため、「文の構造の説明」には力を入れたっもりだっ たのだが、「もっと文法の説明がほしい」というコメントが見られた。「文法嫌い」の学生のこ とを念頭に置いて、「文法用語」をほとんど使わなかったということも、このことの原因の1 つになっているのかもしれない。
また、「本当に大事なポイント説明だけ行って、後はサラッと流してほしい」というコメン トも見られた。いろいろ説明し過ぎてポイントが見えにくくなってしまっていた可能性も考え られるので、一度に盛りだくさんにならないよう、1回1回「ポイントを搾って解説する必要」
がありそうである。
さらに、「T/F問題の解説」を求めている学生も見られた。授業時間内に行わせる「T/F 問題」は、文章を全体的に見てもらうための「手段」として使っており、また授業時間は限ら れているので、やはり問題解説の時間を取るのは難しいのが現状である。でも、せめて「解答」
ぐらいは知らせてやるべきだったかもしれない。
〈単元ごとの解説〉(%)
今回のような感じで良い 91 コメントあり 6 分からない 3
3.3 「復習レポート」について
全員が提出すべき「復習レポート」の提出期限は、原則として「解説」のあった次の授業の 始まる前までとなっていたのだが、学生たちが「復習レポート」に取り組むパターンは次の3 っに分かれた。「解説のあった日」のうちにすませてしまう学生(22%)、「解説のあった週末」
にすませる学生(22%)、「提出直前」まで行わない学生(21%+12%)の3っである。しかも、
「提出直前」の学生は前日と当日を合わせると全体の3分の1にも及んでいる。このようなと
ころからも、出さないと「単位」がもらえないからと、「嫌々課題に取り組んでいる学生が多
い」ことがうかがえる。
レポートにかける時間は、ほとんどの学生が「2時間」までに収まっている(49%+50%)
ようだ。いくら長くても「3時間以内」で、しかもそれはたったの1人だけ(1%)である。
レポートに割く時間からしても、意欲的な学生はあまり多くはないようである。ただ、「医療 が専門」である彼らには、専門のレポートもかなり多く課せられていると思われる。そんな中 で、英語ごときのレポートに「3時間」も割く学生がわずかでも見られるのは、逆に「驚くべ きこと」だと見てやる必要があるのかもしれない。
〈レポート作成の時期〉(%)
解説当日
解説のあった週末 提出前日
提出当日 その他
22 22 21 12 23
〈レポートの作成時間〉(%)
1時間以内 49 1〜2時間 50 2〜3時間 1
今回学生に課した「レポート」は、「解説」を聞いて重要だと説明された部分、解釈を間違 えてしまった部分などから学生なりに「問題」を作り、「その問題の答え」も付けるという形 のものであった。一応、「レポート形式」は「今回のようなもので良い」としている学生がほ とんど(93%)で、具体的に要望を書いている学生も2人にとどまっている。それは「文法の 穴埋め問題を課題に出す」というものと、「パラグラフごとの要約をさせる」というものであっ
た。