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ABMによるマクロ経済基本挙動再現の為のモデル構造に関する研究

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Academic year: 2021

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氏 名 ( 本 籍 ) 位 の 種 類 位 記 番 号 学 位 授 与 の 日 付 学 位 授 与 の 要 件 学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員

高島 幸 成 (東京都) 博士 (工学)

甲第 182号

平成 26年 3月 22日 学位規則第 4条 第 1項 該 当

ABMに よるマ クロ経済基本挙動再現の為のモデル構 造 に関す る研究 (主査)教  授

(副査)教  授 教 授 准教授 防衛 大学校

荻林   成 章 山 口 佳 和 五 百井   俊 宏 白井   裕

教  授     生 天 目  章

学 位 論 文 の 要 旨

A B M に よ る マ ク ロ経 済 基 本 挙 動 再 現 の 為 の モ デ ル 構 造 に 関 す る研 究

近年, エ ー ジェン トベー スモデ リング仏 g e n t ‐B a s e d   M o d e l i n g 以下 A B M ) に よるアプ ローチが 社会科学の分野 において進展 し注 目を集 めている。このアプ ローチの特徴は, 社 会を構成 してい る意思決定主体をエー ジェン トとしてモデル化 し, そ れ らエー ジェン トの行動ルール とその相 由1 作用 に よって構成 され る実 システム と1 司じ原理 で動 作す る人工社会モデル を コン ピュー タ │ と 再現 し, ボ トムア ップに社会のマ クロな創発現象を説明 しよ うとす る点にある。

A B M に よる社会研究において, 問 題 とす る社会現象に とつて最 も本質的なメカニズムを明 ら かにす るためには, モ デル は 「K I S S 原 理」に基づ きで きるだけシンプルであることが必要 とさ れてい る。一方, モ デル には, 問 題 とす るマ クロ現象が再現 され るためにZ 、要な全ての要因が 考 慮 され ていなければな らない。す なわ ち, A B M ア プ ローチでは, 対 象 とす るマ クロF y L 象に関わ る意思決定主体の行動ルールのみ を仮定 した人工社会モデル をコンピュー タ上に構築す るが, こ の人工社 会が実 システ ム と同 じ原理 で動作 して着 日す るマ クロ現象が創発 され るよ うにす るた めには, 人 工社会モデルを構成す る意思決定主体の種類やその行動ルール, す なわちモデル構造 が実 システムを模擬 した ものであることが極 めて重要であ り, モ デル構造が実システム と類似 で あれ ば実 システム と類似のマ クロ現象が人工社会において創 発 され ると考え られ る。着 目す るマ クロ現象が創発 され るよ うにす るための〕芝、要十分なモデル構造 を明 らかにす ることは,   ・つの 要因のみ を変更す るコン トロール され た計算機 実験 を繰 り返す ことに よ り実現す ることが可能 であ り, そ の結果 と して着 日す るマ クロ現象が実 システムにお いて点」発 され るメカニズムを明 ら かにす ることが可能 と考え られ る.

多 くの社会現象は経済 と密接 に関係 してい るため, A B M の マ クロ経済システムヘの応用は極 めて重要な研 究分野 と考え られ , 我 が国内での研究例は限 られているせ) のと, 世 界的には, 経 済

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成 長 , 景 気 循環 ) 銀 行 の役割 , 金 融政 策 の効 果 , 貧 富 の差 , な どマ ク ロ経 済 に関わ る多 くの研 究 が な され て い る. こ れ らの研 究 の多 くではマ ク ロ経 済現 象 の創 発挙動 な どが解 析 され て い るが , モデル の構 造 はそれ ぞれ 異 な ってお り, 問 題 とす るマ ク ロ現 象 を再現す るた めに必要 十分 なモ デ ル構 造 に関 わ る仮 定が何 で あ るか につ い ては, 殆 ど述 べ られ てい ない。す なわ ち, マ ク ロ経 済 シ ステ ムに関 わ る A B M ア プ ロー チにお い て, マ ク ロな現 象 を再現す るモデル の構 造 につ い て老、 十分 な条件 を明 らか に しよ うとす る視点 か らの研 究 は殆 ど見 られ ない.

そ こで, 本 研 究 はマ クロ現 象再現 の 為 にモ デル が具備す べ きエ ー ジェン トや 行動等 のモ デ ル構 造 を明 らか にす る とい う着眼 点 か ら, エ ビデ ン スペ ー ス ・分 析的 アプ ロー チ に よる政 策 検討 を行 うこ との 何r 能な 人工経 済 モデル の構築 を念頭 に, マ ク ロ経 済現 象 の基本 挙動 を再現 で き るベー ス モ デル の開 発 を行 った。

また, モ デル 開発 に あた つては, 実 体経 済 システ ムの基 本的 な経済活動 と して製 品財 市場 を中 心 と した経 済 の基本 挙動 , 政 府 の徴税 ・支出 と製 品財 市場 の相 互作用, 及 び製 品財 市場 と株 式 市 場 の相 互作用 に着 日 し, こ れ らのマ ク ロ経 済 の基本 挙動 再現 の た めのモ デル 条件 の実験 的解 明及 び, 個 々のマ クロ現 象 の創発 に関 わ るメカニ ズム解 明 を並行 して実施 した。

そ の結 果 , 消 費者 , 生 産 者 , 銀 行 , 政 府 , 製 r 『l 財市場 ゃ及 び株 式市場 か らな るマ ク ロ経 済の基 本 挙動 を再現 で きるベ ー スモ デル を構築 し, マ クロ現 象 再現 の 為 のモデ ル条件 とマ ク ロ現 象創発 の メカニズ ムにつ いて明 らか に した .

製 品財市場 を中心 とした経 済の基本 挙弱J では, 1 ‖i 格均役F の内生的な再現, サ プライチ ェー ン, 資金循環, 設 備投資による長期的な生産 丑の調イ杵のマ ク十」現 象がベースモデルによつて再現で きること, 及 びそのモデル構 造 を明 らかに した. ま た, 設 備投資に起│ ス│ して, 銀 行借 入による市 場への資金流人 と設備投資の 一巡に よる倍人i 区済による市場か らの資金流H l によつて G D P が 周 期的 に変動す る拳動が創発 され ることを示 し, 景 気循環 > 卜動の 重要な要因の 一つであることがわ かった,

政府 の徴税 ・支出機能 と製品財 市場 の相互作用では, 政 府 の支出に限 つた効率度 に着 日 し, G D P に 及 ぼす所得税 , 及 び法人税 の減税乗数 の傾向 を本モデル によつて再現できる ことを示 し た。また, 減 税の乗数効果 を再現す るためには, 政 府 支出の非効率性 , 及 び企業の利益剰余 を設 備投資や労働 分配 に よつて市場 に還元す るモデル構造 が必要不可欠であ ることを明 らかに した。

この G D P に 及 ぼす減税の メカニズム解明の 一環 と して, 経 済連開表 を モ) とに減税の乗数式 を導 出 し, 乗 数式の傾向が シ ミュ レー シ ョンの結果 と一致す ることを示す と共に, 財 政均衡 条件の下 で減税乗数は民間の消費性 向 と政府 支出の効率度 の差 によつて表わす ことができ, 政 府 よ り民間 効率性が高い場合に減税 は G D P を 増加 させ ることがわかった。

製 品財 市場 と株式市場 の相互作用では, 設 備投資の為の資金調達手段 を株式 市場か らの調達の みで行 うと G D P の 同期的変動が生 じな くなることを示 し, 銀 行か ら市場への資金の流出入が循 環挙動の重要な要因であることを裏付 けることを明 らかに した。また, 製 品財市場の需要 に応 じ て生産者が設備投資を行 う際 に株式市場か ら資金調達 をす ることで, 一 時的 に株式の供給過廉1 が 生 じ, G D P と 物価が連動す る一方で G D P ・ 物価 と株価が連動 しない現象を再現 した.

以 上の結果か ら, 本 研究では, 膨 大かつ複雑 なマ クロ経済 システム全体か ら, 実 体経 済の基本 となる製品財市場の取引, 政 府機能 に関わ る取引, 英 体経済 と株式 市場の相 互作用等の 部分に 限定 され た範囲において, マ クロ経済の基本的挙動 を再現 できるべf ス モデルを構築 し, か つマ クロ現象を再現す るためのモデル条件及びマ クロ現象創発 に関わ るメカニ ズムを明 らかに した,

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審 査 結 果 の 要 旨

エー ジェン トベースモデ ジング (以下 ABM)は 実システムと類似の原理で動作す るボ トムア ップ型の人工社会システムモデルであ り複雑系システムを取 り扱 うこ とが可能なアプローチ として注 目を集 めている。しか しなが らこれまでの研究では 複雑 系 としてのシステム挙動に焦点 を当てた研究が多 く、創発 され るマ クロ現象 ご とに、それ を再現す るための必要十分なモデル構造は殆 ど明 らかに されていなかつ た。また我が国に限れば ABMの マクロ経済システムのへ応用研究 自体殆 ど見 られ ない。本研究はマクロ経済の基本挙動を再現す るためのモデル条件 を、再現すべ き 主要 なマ クロ現象 ごとに明 らかに した もので、極 めて新規性が高 く、かつ ABMに

よる社会問題解決の方法の道筋をつけた意義深い研究 といえる。

第 1章 は序論であ り、本研究の背景 として、既存アプローチの限界及び ABMの 妥 当性 と意義、先行研究、本研究の 目的について述べている。ABMの 妥 当性 に関

しては、定性的にマクロ現象が再現 され るために必要十分な条件はモデル構造が実 システ ムを模擬 していることを指摘 し、本研究の新規性 と意義について述べてい る。

第 2章 では、第 3章 か ら第 5章 で明 らかに している主要なマクロ現象 ごとに、そ の再現のために具備すべ き必要十分はモデル条件 をま とめて示す とともに、消費 者 、生産者、銀行、及び政府 か らなる人工経済システムモデルの詳細 を、ODDプ

ロ トコルを含 めて、示 している。

第 3章 では、製品財市場における、価格均衡、サプ ライチェー ン、資金循環 、景 気循環等のマ クロ現象が、第 2章 で示 したモデル条件 によって、定性的に再現でき るこ とを示 している。また GDPと 資金循環に及ぼす設備投資 と銀行借入の影響に ついて解析 し、景気循環の基本メカニズムを明 らかに している。

第 4章 では、政府 の徴税機能、及び製品財市場における支出機能 に焦点 を当て、

政府 による所得再分配機能がモデルで再現 され ることを示す と共に、所得税減税お よび法人税減税の乗数 を再現す るために必要不 可欠なモデル構造 を明 らかに して いる。更に、政府支出の効率性 を全支出額に対する市場価格での購買額の比で定義 した上で、資金の流れの均衡条件か ら減税乗数 を表す理論式を導出 し、減税乗数に 及 ぼす諸条件の影響がモデル解析結果 と一致す ることを示す と共に、減税乗数は民 間支出 と政府支出の効率性の差に集約 され ることを明 らかに している。

第 5章 では、製品財市場 と株式市場が存在す る人工経済システムにおいて、両市 場間の相互作用に及ぼす資金調達手段の影響について解析 し、新株発行による資金 調達条件 下でも、両市場及びエージェン ト間を資金が正常に循環す ることを示す と 共に、GDP、 物価 、株価 に及ぼす資金調達手段の影響お よびそのメカニズムを明

らかに している。

第 6章 では本研究の成果を総括 し、今後の課題 を述べている。本研究では、製品 財市場 を中心 としたマクロ経済の極 めて基本的 と考えられ る機能を内包 したモデ ル を構築 し、それ らのマクロ経済現象 を再現す るための必要不可欠なモデル条件を

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明 らかに している。また今後の課題 として、政府 ・中央銀行 による金融政策、国際 取引、製 品財市場お よび金融市場の機能の多様化 を内包 したモデルヘの拡張の必要 性 を指摘 している。

以上の よ うに、本論文はマクロ経済の基本挙動を再現す るための必要不可欠なモ デル条件 を明 らかにす ると共に、それ らの機能を実装 したモデルを構築 し、更にそ れ らのマ クロ経済現象の創発メカニズムを明 らかに している独創性の高い論文で

あ り、かつその実用的価値は極めて高い。本研究を今後更に発展 させ ることによ り、

一国の経済政策や企業の経営戦略の有効性な どの検討にも適用可能なABMモ デル の実現 も近い将来可能 となることが期待 され、本研究はその先駆的な研究 と位置づ け られ る。

以上 の ことか ら、学位 申請者の高島幸成は、博士 (工学)の 学位 を得る資格があ ると認 め る。

以下余 白

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