製造企業による経路支配と再販売価格維持 95
製造企業による経路支配と
再販売価格維持
梶原禎夫
十九世紀前半までは,小売市場での競争は弱く,製造企業は特別の販売努 力を必要としないか,またはある程度必要であっても,小規模でその能力を もたず,または生産能力の整備に努力を集中し,その余力をもたなかった。
一方小売商は多数の極く小規模の,しかし品揃えは幅広いものが広い地域に 分散していた。このような事情の下で卸売商は多数の製造企業から多様な製 品を調達し,これらの製品を多数の小売商にそれぞれの必要な品揃えに応じ て分配した。卸売商は流通過程における製品の供給源からの収集と需要源へ の分散の中枢として支配的地位にあった。
しかし,このような卸売商の支配的地位は,産業の発達と共に卸売機能を 吸収しようとする製造企業と,都市の発達により規模を拡大し,製造企業と 直接取引しようとする小売商により双方から切り崩されていった。
十九世紀末になると供給能力を拡大した製造企業は,製品差別化と広告に よる,独占的市場低域の開発に関心をもつようになるが,このような企業は マーケテイング過程を卸売商が支配する経路に依存することによる流通の狭 屋,非効率,更に利潤の圧縮を認識するようになった。卸売商はただ小売商 の要求に従って配給するだけで特定商標の販売に努力を集中することはな く,また必要な在庫を維持しようとせず,製造企業は卸売商が支配する経路 では,生産能力に対応する充分な市場創造を期待できなかった。製造企業 は,まず′付こ商に販亮員を巡回させ,卸売商の販売力を補ったが,一方卸売 商が要求する高い利幅に不満をもった。また卸売商がそれ自身の商標を促進 することや再販売価格の切下げにも不満をもった。当然,製造企業側から卸
(1)
売商を排除し,直接小売商と取引しようとする傾向が生れた。卸売商を利用
96 経 営 と 経 済
する場合より,より多くの流通貨用を宗むる場合でさえ小売商と直接取引が 行われることがあった。また,製造企業は,小売商と直技取引することによ り,製品の供給を迅速に行なうことが可能になり,市場の動向や反応を知る ことも容易になった。
他方,小売商の専門化や規枚の拡大も進行し,小売商の側からも,製造企 業と直接取引しようとする傾向が生れた。十九世紀初期までの代表的な小売 商は幅広い品揃えをもっ小規枚目的で,調達は卸売商に依存しなければなら なかったが,その後は都市の発展と共に小売市場が大規松化し,しだいに取 扱い品目を限定し,専門化が進み,また多品目の品揃えをもっ大規校小売商 も現れ,有利な供給源を求めて製造企業と直接取引する傾向が生れた。専門 化または大規校化した小売商は顧客動員力を高め,特に百貨庖や連鎖居では 独自の商標も開発し,製造企業に対する地位も高めた。しかし,卸売商の排 除は主として製造企業の側から進められたのであり,小売業の発達がそれを 促進したに過ぎない。また,小売商の顧客動員力が高められでも,需要創造 の主要部分は製造企業に依存しており,小売商の取引力は製造企業に劣って い7こ。
しかし,消費者が地域的に広く分散し, nWfUこ当って便宜性を比較的重視 する製品分野では,製造企業が直接需要創造を行うようになっても,取引呈 の少ない多数の小売商を利用するため卸売商を排除するより,むしろその流
(2) 通能力を補強し,小売商を含めて支配を強化する政策がとられた。
また,製造企業による卸売商排除の傾向はそのまま小売商の排除につなが るものではなかった。一般に製造企業は,最終市場への販売については効蔀 的取扱いを可能にするだけの数量の不足,小売目的への投資能力の欠如,小 売庖舗群の管理能力の欠如,販売技術や市場知識の欠如等のために,殆どの 場合,小売商に対しては,排除するより,むしろ影響力や支配力を強化する
(3)
政策をとることが多かった。製品差別化と全国広告により直抜最終市場ーを創 造する製造企業は,小売商に比較的確実で安定的な販売機会を保証すること により,独自の計画に従って必要な小売商を経路枯成旦として組込み,統制 可能で効率的な統一的経路システムを杭成し,維持する乙とができた。
製造企業による経路支配と再販売価格維持 97 本米経路は,製品の種目別や商標別に構成されるものであり,製造企業が 新製品を導入する場合は新しい経路構成の契機となりうるo1920‑‑‑‑‑30年代に なってから,多額の開発投資を伴っている新製品の競争市場への導入は,競 争力強化と安定した売上確保のために調整された統一性のある経路を必要と し,また製品の特異性と大量広告によりそのような経路の構成が可能であっ たため,新製品導入のたびに製造企業支配の益々強い経路が出現することと なった。また製造企業は1930年代,特に1950年代後半以降最終市場に対し,
マーケティング努力を調整し統合することにより,競争力の強化と利潤拡大 を追求するようになり,このため経路については自己システムの延長として 支配力を及ぼすことを可能にする機構の確立に特別の努力を払ってきた。特 定の中間商だけを利用する選択的経路政策,更に完上機会の保証と引投えに 中間商に自由なrW:!易行動を認めないフランチャイズ・システムまたはディー ラー・システムによって製造企業は中間尚に対するjJJfJ!JI的支出を述成しよう とした。
ところが, 1920年代ωチェンストアω発反,特に1930年以降ωスーパーマ ーケットの発達や1950年以降のディスカウントハウスの発注は,製造企業が 支配する経路システムに干渉するようになったO 本米,小売rfH は m1~者 ω(足 立性に応じた立地や消費者ω要求 lこ応じた品川えにより独¥lのTlf場創造能力 をもつことができるυ また小う!6i'iHは常にがj究者と抜触しており充分なirj:!片山 報をうる地位にあるO 小売i白の最終11丁場の創造能力や伯報収集能力 lこ製造企 業が依存する程度に従って,小山TI~q は製造企業の支配に対抗するさMZ をもつ ことになるoìì1jn;首 ω 析しい N~JS 行到 l こ沿った小先販売方法の 12新は,大組
;伎なrh:!見創造能力を小先的iに与・え,経路における小ぅUfHω地位をI,‑.JめたO 製 造企業は, :.II~新的小売 riH であるチェンストア,スーパーマーケット,ディス カウント・ハウスω行動を統制することは凶川ーであった。また,製造企業ω
支配ドにある一般の小売尚もこれらの草新的小完向 lこ白山な市場行動を容認 することに対する不満により,製造企業の支配に抵抗するようになった。史 に, 1fi新的小売i自i をボイコットしようとする製造企栄に対する政府 ω 反 3~\tILi 政策も製造企業による任路支出の昨');:となったJ
98 経 営 と 経 済 本 稿 の 目 的 は , 米 国 の 場 合 に つ い て , 製 造 企 業 に よ る 経 路 支 配 の 進 行 が 革 新 的 小 売 商 と 政 府 の 反 独 占 政 策 に よ っ て 阻 止 さ れ る 過 程 を , 再 販 売 価 格 維 持 問 題 を 中 心 に 追 跡 し , 製 造 企 業 の 専 制 的 支 配 に よ ら な い 新 し い 統 一 的 経 路 シ ス テ ム 構 成 へ の 方 向 を 探 る こ と に あ るD
} ••
一 ユ 一 ゴ 今 パ H μ
μ
(1) J. George Frederick,Why Selling Direct to Retailer is becoming Popular", Printers' lnk (February l3, 1913) in F. E. Clark, Readings in Mαrketing, 1924.
1930年における Bureauof the Censusの調査によると,製造品の26.996だけ を卸売l羽が放っているO また, LivesayとPorterによると, 1948年には,剖 査153製造企業中7996は卸売業務を行い, 87%は卸売または小売のいずれかの業 務を行なっているo (Glenn Porter and Harold C. Livesay, Merchm山
and j'vfanufacturers, PP.228'"'‑'229)
(2) 製造企業が経路に組み込んだ卸売i布の多くは,少数品目について幅広い品耐えを もつ, rh:'ljl化された卸売商であった。二十世紀初期 l乙都市における専門庖への 供給により適合したものとして,専門化された卸売商が発注した乙とについて は, Theodre N 0 Beckman, Wlwlesaling, 1926, pp. 32'"'‑'35を参照するこ と。また,卸売!??jが取扱い品目を限定する乙とによって製造企業と粘合でき,存 続の基盤をえたことについては, Edwin H. Lewis,Channel Management by Wholesalers" in R. King, Marketi1lg and the New Science of Planning, 1968, pp. 140'"'‑'141を参照すること。
(3) 二十I1t紀初期に,小ン'GrfHを排除しようとする努JJがりわれ,失敗に終ることが多 カ〉った。(J. 恥1. Barnes, The Retailer as a N ecessary Factor in Distribution, in F. E. Clark,Readings in MarJ:eting (1924) pp. 351'"'‑'357) 例えば, Singer Sewing Machineは,価格政策の主導権を握り,充分なサー ヒ。スをユーザーに提供するために直接販売を採用したが,販売支居細の維持費JjJ が巨大化したため, 1863年にそれを改め,強い支配下においたディーラー・シス テムを確立したo (中)11敬一郎,米国における巨大企業の成立とマス・マーケテ
イングの発注, r経済学論集J1965年10月)
製造企業による経路支配と再販売価格維持 99
(ー)
製造企業が卸売商や小売商に対し影響力や支配力を維持している経路で は,製造企業がこれらの中間商の市場行動に干渉するため,中間商には常に 不満が存在するO 製造企業が小売商の市場創造力lこ依存する程度が高まる と,当然製造企業と小売商の聞にマーケティング政策や取引価格をめぐって 闘争が起り,製造企業が小売商に対し譲歩を余儀なくされる部分が生じてく
る。
まず,単なる地域独占で販売していたゼネラノレ・ストアに代って都市市場 で,特別の顧客動員力をもっ専門庖と百貨庖が発達してくるO 十九世紀後半 に入ると専門庖が,二十世紀初めからは百貨庖が,都it)の発達と共に小売業 での地位を高めてきた。専門庖は,独自の商標をもつこともなく,製造企業 の全国商標を促進することによって売上を拡大できたので,製造企業と専門 居との聞には政策をめぐっての闘争はなく流通について充分な協力関係が維 持された。一方,百貨j苫については,製造企業は安定した市場の確保と経路 の流通能力を高めるために利用しなければならなかったが,百貨庖は独自の i勾擦をもち,それが製造企業のi羽根と競争関係にあるため,製造企業の商椋 の促進にはあまり努力しなかったこと,特にj張先に当ってサービスが必要な 製品については製造企栄の商棋より百貨屈の商標が促進されたことにより,
(1)
製造企業と百貨日の問lこはかなりの利害の対立があった。しかし,百貨応は 幅広い品川えとフノレサービスで胤容の動員を行い,低価格政策はとらなかっ たため,製造企業の経路の主要な椛成只である小規悦小先向の‑I/j坊を急辿に 侵すこともなく,また製造企業問の価絡競争も特別刺激せず,製造企業はか なりスムーズに百貨屈を経路に組込むことができた。後に百貨屈は製造企業 ω販売員を導入したため,百貨庖が充分な販売促進を行わないという製造企
(2)
業の不満も解消の方向へ向った。、また百貨屈は基本的lこは製造企業商肢に好
(3)
志的であり,必要に応じて仕入を行うため注文取消も少なく,しかもJUIS口泣
(4)
は大きし製造企業にとって有利な販路であったq
ゼネラル・ストアに比佼し特別の販売力をもっ専門庖や広泊四の砿i芥の到
100 経 営 と 経 済 員力をもっ百貨j苫の発達は,製造企業の経路支配を困難にすることには追い なかったが,しかしこれらの小売商はゼネラル・ストアと異質の販売政策を とることがなかったため,製造企業に対しその文配的地位を脅かすような特 別の経路問題をもたらすことはなかったG しかし, 1920年代におけるチエン ストアの発達, 1930年代からのスーパーマーケットの発述,および1950年代 以降のディスカウント・ハウスの発注は,製造企業が文配する経路システム に干渉し,その経路政策に法本的な転換を迫るものであった。
チェンストア (chainstore)はlJ!JI民主1度の高い,椋準化された製品を中心 に,類似の品Jiluえをもっ複数の小売目舗を統合した大規机小売向で,製造企 業との直接取引,大:fD':l[持民,配送ω効率化,販売サービスの限定,等を基礎
(5) に低価格販売と広告を主な競争干段とする平新的小売業であった。第一時世 界大戦後の物価仁昇と不況により低価絡と限定サービスに対する泊
m
者の反応が大きかったことと,総営が都Hir!JJ‑:TJ!こ迅jし,都市の発注!こより活動基盤 が拡大したことにより,独立小売商のr!i坊を侵蝕しながら, 1920年代l乙急述
(6) な発展をとげ, 1929年には小完総売上の約3096を占めるまでになった。チエ ンストアは,独立小規悦小先l前と兵なり,価格アピーノレと広告により特別の 顧客動員力をもっ小売商であり,その成長と共に,製造企業に刻し安定した 大量販路を保証したが,他方これを悲礎 lこ取引力をもつようになり,大草J!tJI
買による費用節約分を越えて,一般の卸売自との取引価格からの剖引を製造 企業に要求した。!Jiに食料品チエンストアでは,版元促進や広告を行うこと
(7)
を理由に,特別割引を受けることもあったり当初,製造企業はチエンストア との取引に:ま継続性が危ぶまれたため,卸売I自による取引中止の白成lこより チエンストアとの白抜取引をためらった。付':!こ全国市相をもっ製造企業にこ の傾向が強かったが,チエンストアが低価格で独自の尚棋を促進し,全国向 肢の経路を任追し始めるとj{叫11をもっ製造企業もチエンストアと取引せざる
(8)
をえなくなった。 到に製造企業は,チエンストアを辺じて販先するために向 (91
肢に対するけi坊要求を高めなければならなかった。
チエンストアと正規ω取引経路を閉し、た製造企業は,割引価格と限定サー ビスという呉11ω版元政策をもっチエンストアを独立小売向と共に経路にも
製造企業による符路支配と円販売柿干名純持 101 (10)
つことになり,両者の調常にー苦悩したつまた,チエンストアの割引価格政策 (11)
ば,商標価値を低下させ,品質と価格の連合を破壊し,更に製造企業問価格 競争まで誘発し,高価格政策による利潤の確保を危くするものであった。チ
エンストアとの取引を始めると同時に,製造企業は;最終市要の創造努力を強 化することによって先に述べたように,チエンストアによる取扱を促進する
( 12)
と同時に,これらの経路問題を緩和しようとしたが,やがて刊以売価格維持 により,問題の丙接的解決を図ろうとしたo
.差別化された製品を大量生産し,全国広告により需要を創造しながら,多 数の中間商を利用する高密度経路政策をとっている企業は主としてチエンス トアによって起乙される商標内価格競争をj白けるために,再販売価格を契約
(13)
によって維持しようとしたのしかし,契約による再販売価格の維持は,貝手の 取引白rhの権利を制限するため, 1890年のシヤーマン法 (ShermanAct), 1914年の連邦取引委民会法 (FederalTrade Commission Act), 1914年のク
(14)
レトン法 (ClytonAct)に違反じた。製造企業は,問符!J11J日のために特別の 低価格で販売されるロスリーグとしてその製品が用いられることにより経路 維持が悶難になることや,低価格販売によって向探佃i{n'( (good wil1)が加 われる乙とを根拠に,再販売価格維持契約の合法化を述邦議会や州議会に~
( 15)
求したが, ・般的なアピーノレ力をもたず,成功しなかった。やむをえず,契 約以外の方法で再!坂長引而栴を維持する努力がなされ,ある程度の効果をあげ ることができた。
契約によらない再販売価格統持計D1I1としては,委託販売や価格切下げ者へ の販売拒絶等があった。委託販売 (consignment se1ling)によって製造企 業が小売価格を規制することは,その製品の所有権が製造企業に留保されて いるためシャーマン法に違反しないζとが, 1926年に述邦最高裁によって認
(16)
められていたっ苓託販売による価格維持はDIJ完水準でも利用されたが,この 場合では製造企業は,代理i市として卸売商を選択し,この卸売商との契約で 販売先の小売商や販売条件を規制することができた。(l~
価格切下げ者への販売m泊による再販売何格の維持は,特定の小売商を利 用する選択 (I~~:t. b'存政策 (selective distribution)のもとで,製造企業が小
102 経 営 と 経 済 売商l乙対する取引拒絶の条件,つまり,指示販売価格を守らないjZ‑合には取 引を拒絶することを宣言しておくことによって行われる。売手は任L\~ζ 取引 相手を選択でき,いかなる理由でも,また理由なしでも単独で取引を拒絶す ることは,シャーマン法に違反しないことが1919年に辿邦最高裁によって認
(1 8)
められていた。ただし再販売価格を維持しているディーラーに,価格切下げ 者を報告させ,その価格切下げ者へ販売を停止することは,不公正な競争方
日 法としてシャーマン法に違反した。目
しかし,乙れらの再販売価格維持機構には,利用に限界があった。委託販 売については,代理商の売上報告と製品補給の聞に経過する時間のために,
卸売と小売の段階で全体として巨大な在庫の維持が必要で,そのための在庫 投資能力をもっ大企業しか利用できなかった。価格切下げ者への販売拒絶 は,製品の性格t多数の中間商を利用する高密度経路政策が必要で,再販売 価格維持が最も強く要求される場合には利用が困難であり,また利用する中 間商を限定すれば,製品の市場へのエクスポウザーが低下して売上機会の削 減につながった。更に,小売商が指示再販売価格を守っているかどうかにつ いての,経路を通じての情報収集が禁止されていたため監視にも限界があっ た。また別に,チエンストアへは異なる商標を供給する乙とによって価格切 下げの街撃を緩和することもでき,製品差別化と広告を強化し,強力な消費 者選好を創造することによって,小売水準での価格競争の結果,手iJ幅が圧縮 されても小売商が取扱いを継続する乙とを強制する乙ともできた。これらの 場合についても,前者では,ディスカウント系とフjレサービス系の経路の区 別に限界があったし,製品差別化の強化によって,低利幅でも小売商に取扱 いを強制することは,製品差別化と全国広告の能力の問題があった。
と乙ろが, 1920年代を通じてチエンストアが急速に成長し,独立小売商を 圧迫し,更に1929年に大恐慌が訪れると,新たに小売商から再販売価格維持
位
。
契約合法化の組織的運動が展開され始めた。との運動には製造企業も参加し たが,先に述べたように彼等の要求の根拠が一般的アピーノレ力をもたなかっ
(21)
たためその主力となりえなかった。当時カリフオルニア州では失業者が流入 し,激しい価格競争が行われたため,再販売価格維持要求運動も最も強力に
製造企業による経路支配と再販売価格維持 103 展開され,先ず1931年に同州で製造令業(または卸売商)が契約によって再 販売価格を間定することを認める公正取引法(FairTrade Law)が制定され た。同法は,再販売価格維持を望まない非契約者を拘束しなかったため,非 契約者に対し販売拒絶の方法をもっ製造企業はある程度の効果が期待できて も,再販売価格維持の要求を貫く直接的方法をもたない小売商にとっては実 効は殆どなかった。そのため1933年に,ある小売商が契約に署名すれば同じ 州のすべての小売商を拘束する非契約者条項(non ‑signer' s c1ause)が導 入された。同様の公正取引法がアイオア,フロリダ等その仙の州でも制定さ れたが, 1936年に連邦最高裁で,カリフオルニアおよびフロリダの,非契約
(22)
者条項を含む公正取引法の合憲J性が認められると,殆どの州が追従し, 1938 年までに四十二州が公iE取引法を制定したっとれらの公正取引法によって,
再販売価格協定が存在する乙とを知りながら故意に協定で認められていない 価格で広告または収売することは不公正な競争として法判所の禁止命令によ って中止が要求された円しかし,各州の公正取引法は川内の取引にしか辿‑用 されず,州問の取引についての再販売価格紙持契約はシャーマン法に述反す る疑いがあったため, 1937年に公正取引法をそれぞれもつ州問の取引につ いての再販売価格維持契約を合法化したミラータイデングズ法 ( Miller‑ Tydings Act)が制定された。更に,州公正取引法も1941年までにミゾリー テキサス,パーモン卜,コロンピア地区を除く四十五州で制定された。
これらの法律に某づく契約による再販売価格の実施は,チエンストアの,
割引による顧客動日を困難にし,独立小売商のlii1:Di地位をかなり改善すると (231
とができた口しかし,独立小売商保護の効果は,医薬品や化粧品の場合にみ
凶)
られたように,独立小売商聞に再販売価格維持要求のための組織的結合があ り,同種製品を供給するすべての企業が再販売価格純持契約を実施する坊合 に限られていた。むしろ,契約による再販売価格の維持は,その実施が製造 企業に委ねられていたため,商標内競争の制限が売上や利益の維持・拡大l乙 役立つ場合に限って実施される傾向があった。この場合も,タイヤ産業でみ
(お)
られたように,多数の競争肉椋の巾で,各企業がそれぞれの商棋に対する充 分な消費者選好を確立していないにもかかわらず,一部の企業が契約によっ
104 終 ? ヰ と 経 済
て再販売価格維持を強行する乙とは,それを採用しない競争企業に願存を得 われる結果になり,結局再販売価格維持契約は廃止を余儀なくされる口この ため,再販売価格維持契約はj主業が少数者から成り製造企業間で一致した行 動がとり易い場合や製造企業が商標に対する強力な消費者選好を砿立してい る場合に採用され成功する傾向が強く,独立小規校小売商の保設というよ り,~~J 占企業や独占的企業による経路支配の手段としての性格をしだいに強 めていったD
さて,大不況の下でチエンストアにより生存を符かされるようになった食 料品の独立小売商と卸売商は,再販売価格維持要求とは別にチエンストアの 割引販売の基礎となっている取引力を抑制するための立法を議会に要求し
︒た
連邦取引委員会 (FederalTrade Commission)はチエンストアの実J情調 査を行い,大目:流通業者が供給者から取引に当って各程の剖引を受け,競 争上有利な状態にある乙とを明らかにし,競争維持のためにはクレトン法 (Clayton Act)では不充分で,その修正が必要なことを示した。クレトン法間)
は,地理的価格差別や,特定地域における侵略的価格切下げを禁止している に過ぎなかった。このため, 1936年に買手の程類や取引の形態の問での価 格差別を,禁止することを目的にロビンソン・パートマン法 ( Robinson‑ Patman Act)が制定された。同法lとより,類似の品質または類似の等級の 製品についての買手の程類や取引の形態の間での価格差別は,もしそれが実 質的に競争を制限するか,もしくは独占を生む傾向にある場合には禁止され た。また,同法では売手が買手lこ提供するサービスや売手が買手からのサー ビスに対し認める割引を差別する間接的価格差別も,もし類似のサービスや 割引が,比例的平等条件の下ですべての買手に適用されるものでない限り違 法とされた。
ロビンソン・パトマン法には,大規校小売商の取引力の行伎を阻止し,小 規模小売商や卸売商を保護する効果が期待された。しかし同法は,類似の品 質‑についての差別価格を禁止しただけで,製品差別化を伴った価格差別や商 原が具る製品についての価格差別にほ適用されなかった。また,製造,販売
製造企業による経時支配と再販売価格維持 105 配送等の費用差に某づく価格差別ば違法ではなかったが,違法性を証明する ためのJE確な費用分析が困難であり,価格差を費用差で正当化できる場合が 多かった。競争者の低価格に対抗するための価格差別も,防禦のために必要 なものとされ違法でなかった乙とも価格差別の機会を多くした。更に,多く の場合製造企業ば卸売商を通ずる経路と,大規模小売商と直接取引する経路 を併用していたが,同法は経路構成Rの門的に対して与えられる機能割引に 触れていないため,直接の競争関係にない取引水準の,具なる中間商l乙対す
る価格差別の程度を規制できなかったれ
以上のようにロビンソン・パトマン法は価格差別の機会を多く認める結果 になり,このため製造企業ば,大量販路の維持に必要な価格差別政策を事実
~liJ
t任意に実施することができた。一方,この法律によって製造企業が大規模 小売商の特別の割引要求を拒絶できたのも事実であったが,これに対し巨大 チエンストアは比較的小規模な製造企業を支配または統合することによって 自己商標を開発し,対抗した。しかし,産業が少数の巨大な製造企業から成 り,競争的周辺企業がない場合には強力な流通能力をもっ大規校小売商も対 抗できず,価格差別の禁止はむしろこのような売手による,すべての買手に 対する同一価格決定方式の適用を促し,売手間での独占的価格共謀を生む危 険があったっ乙のような製造企業聞の力の結束を防ぐ有効な方法ーが別にない 限り,価格尭別の厳格な禁止を避け,大規校小売商の購買力の行伎を認める
(2~)
ことは,必要な場合もあった。結局,ロビンソン・パトマン法は,小規1~!小 売商を保設する効果は発押できず,大規枚小売商による独自の向原の利用の 拡大と主目的統合を促進する結果となった。
註
(1) R. W. Johnson, "The Big Store and Advertisdd Goods" Printers' lnk (October 31. 1912) in L. C. Marschall, Business Administration (1921) (2) Ibid.
(3)(引'í ~s の 60---8096 は製造企業 1m肢に好立的であったという調査結果がある。
(Ibid. )
(4) J. Russell Doubman and John R. Whitaker, The Organization and
106 経 営 と 経 済 Operation 01 Deρartment Store (1927) p. 118.
(5) Wa1ter S. Hayward and Percival White, Chain Stores, Theケ Manage‑
ment and 0ρeration (1922) p.3 ,pp.3‑‑‑...‑15.
(6) 1921年以降におけるチエンストアの発展と物価,所得,消費者の購買行動の関係 については, William J. Baxter, Chain Store Distribution and M anagment (1928) pp.1‑‑‑...‑3を参照すること。
(7) Wa1ter S. Hayward and Percival White, op. cit., p.6. (8) Ibid., p.122.
(9) Wa1ter S. Hayward and Percival White, op. cit., p.74. p.120 (10) Malvin T. Copeland, Principles 01 Merchandising(l927)p.31, pp.49'""‑'50. UD 消資者が製品について不完全な知識しかもたず向際選択に当って価格水咋を一つ
の手がかりとすることは古くから知られており,向品質政策が日価格政策によっ て補強されることがしばしばあった。しかし,同程製品傾城で剖引販売が一般化 すれば,消設者が価格を品質水準の指標として評価する程度を低くし,乙の政策 はあまり効果をもたなくなる。ここでの問題は,割引販売が一般化する以前の段 階であることに注意しなければならない。
なお,品質価格連合によって高価格を維持するために再販売価格維持が要求さ れる乙とについては,次の文献を参照する乙と。 E. Raymond Corey,Fair Trade Pricing : A Reappraisal", Harvard Business Review, (September‑
Octo ber 1952).しかし Raymond では,剖引販売が一般化した後について f~j 及していないため,論理が不充分である。
U2) Wa1ter S. Hayward and Perclval White, op, cit. pp.120‑‑‑"'‑122
価格広告の減少にその意図をうかがう乙とができる。(G. W. Stocking and M. W. Watkins, 1i10noρoly and Free Enterρrise (1951) p. 326を参照) U3) 連邦取引委員会は,再販売価格維持についての調査報告(Dec. 13, 1945)で,
「初め最低再販売価格維持契約の合法化は高度に個別化され,商棋を付された 製品の製造企業によって,中間前間の無制限の価格切下げからその製品を保設 するために提唱された」ことを明らかにしている。 (CorwinD. Edwards, 1
¥虻'v1α仰int白ai句況n叩z仇 .
u
凶品述邦最高裁は, Dr. Miles Medical Co.事件について,製造企業が契約によっ て再販売価格を同定するととは,シヤーマン法によって保証されている,買手の
製造企業による経路支配と再販売価格維持 107 取引自由の権利を百すとして違法であると判決を下した。 (Dr.MilesMedical Co. V. John D. Park & Sons Co., 220 U. S. 373 (1911))この判決は,
Boston Store事件 (Boston Store 0 f Chicago V. American GramooPhone Co.. 246 U. S. 8 (1917))により再確認された。
( 1
日 ロスリーダとして用いられることを防ぐ乙とが再販売価格維持契約合法化の根拠 になりえないことについては,例えば, Q. F. Walkerがロスリーダの過度の使 用や低価格販売が競争を破壊し独占を生むことについて何のデータもないことを あげ,また後に C.D. Edwardsがテエンストアは賠貝点を基礎に低価格政策 を実行し,小規模小売lMを圧迫しているのであり, ロスリー〆の使用は直接そ れに関係していないこと,また特定品目についての例外的割引販売を防ぐ乙と を目的に,再販売価格維持契約を認めることは多品目について高利潤を生む再 販売価格をそれぞれ一殺に設定するという不合理を生むことを指摘している。
(Q. Forrest Walker,A Retail Attitude Toward Resale Price Fixingぺ
Journalοf Marketing, (Apri1 1937), Corwin D. Edwards, op. cit., pp. 68‑‑...69. )
(
16) General Electricが屯球の販売に利用した委託販売を連邦最高裁が1926年にシ ャーマン法に違反しないことを認めた。 (UnitedStates V. General Electric Co., 272 U. S.476)
(
1司 PaulC. Olsen, Marketing Drug Products (1948) • PP.30'‑"'32. (
18) United States V. ClJlgate & Co., 250 U. S. 300 (1919)
(19) Federal Trade Commission V. Beech‑Nut Paeking Co., 257 U.S.441 (1922) Beach‑Nut Packing Companyは,再販売価格維持のために次のような機椛 を用いた。 iBeach‑Nut社の製品を仕入れたデイラーは,指示された再販売価 格を維持しなければならない。もし,これに反すれば,同社の代理向か又は他の デーラーによって ~;U告され"望ましくないもの一価格切下げ者"としてリストに 掲哉され,販売m絶が行われる。」述邦品目裁は,売手の販売拒絶の粧利は支持 したが,製造企業,その代理問,ディーラーが共同して,指示された価格以下で は他の者が製品を入手するのを防ぐことには反対し, Beach‑Nut社の再販売価 絡維持機 1~1~ ば,不公If. ~r Mí.争方法としてシャーマン法に述反するとした。なお,
Beech.Nut ']f.fI:!とついてほ,次の文献に詳しい紹介がある。
Edmund Brown, Marketing (1925) pp.454,.......459.