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ドイツ統一 と労働市場

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(1)

研 究 ノー ト

ドイツ統一 と労働市場

布 川 日 佐 史

は じら01こ

統一 ドイツの抱 える最大 の課題 は失業問題 の解決 にある。 旧東独地域が資本 主義的市場経済体制 に適応する転換過程 を くぐり抜 けた後 には、新たな需要 と 市場 の拡大が待 ちか まえているであろうが、 この適応過程 を大量の失業者の発 生 な しに抜 けで ることがで きるであろうか、 また、 その過程で旧東独地域 の労 働者 の生活 と労働 は どのように変化 してい くのであろうか。

1990年2月 か ら東独は公式失業統計 を発表 し始 めた。 それによると通貨・経 済・ 社会同盟締結前 (4月)の失業者 は6.5万人 で、前月 より2.6万人増 えて いた。今後 の労働市場 については、政府与党CDUの E.ピロー トは90年3月

に今後2年間に400万人の新規雇用が発生 し、労働力不足になる と予測 してみ せたが、統一 ドイツの政策担当者や労働市場研究者の間では当面の推移 を悲観 的 に分析す るものが多 くなつている。

本稿 は、 これ らの問いに答 えるために、以下の作業 を行 う。

まず一章で、東西 ドイツの賃金・ 労働時間の格差 をあきらかにする。それは 労働力が東か ら西 に移動する大 きな条件であ り、 また西傾1資本が東への投資 を 決定する際の条件で もある。

次 に二章で、 旧東独地域の労働市場 の特徴 を整理 し、資本主義的市場経済へ の適応過程 にある旧東独労働市場の現状 と、 ここ数年 に予測 される動向 を検討 す る。

(150)″

(2)

法経研究39巻4号 (1991年

)

三章では東か ら西への労働力移動 を検討する。失業 に悩む旧東独の人々が旧 西独へ移 り住 む ことによって仕事 を確保することがで きるであ ろうか、 その可 '性をさぐる。

賃金・ 労働時間の東西格差

(1)賃

統一以前の東独 と西独の賃金 には大 きな格差があった。 それを示 したのが、

1である。1対1の 通貨交換 を前提 して1988年の雇用者一人 あた り賃金支給 額 をみると、東独 は西独 の3分1であった (東=1,038ドイツマル ク、西 =3,087ドイツマル ク

)。

ただ し、そ こか ら社会保障費 と賃金税 を引いた残 り の手取 り賃金 をみると、西独雇用者 は支給総額 中約3分の 1を 源泉徴収 されて しまい、 その結果東西格差 は若干縮 まる。東独 の雇用者 は西独の約4割の手取

東独 と西独の所得比較(1988年ベース)単=ドイツマルク     西 独 東独/西 雇用者一人あたり賃金支給額

  1,038  3,087

349イ

社会保障負担

賃金総額 に占める割合 賃金税

賃金総額 に占める割合 雇用者一人あた り手取 り賃金

57       499

5。

5%  16。

2%

125       503

12.0%  16.3%

854     2,085      41°

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1,420      499イ 854      649イ 751      6196 904      5796

(787) (53%) 2,120   48%

2,926   58%

家族一人あた りの手取 り所得 総額       696

両親 と―子供2人の家族    546

子供3人の家族    459

片親 と一子供2人の家族    515

子供1人の家族    415

単身者      1,o24

‑家族 あた り勤労所得     1,695

Arbeit und Sozialpolitik, 6′/1990,S.202.

52  (149)

(3)

り賃金を得ていた というところが実態であろう。

ただし、家計単位の所得 をみると、東西 ドイツの格差が言われていたより小 さかったことがわかる。家族一人当た りの手取 り所得は平均で、東独が696ド イツマルク、西独が1,420ドイツマルクであり、ほぼ5割弱 となる。さらに、

両親 と子供2人4人家族をみると、家族一人当た りの手取 り所得が西独で大 きく下が り、東独は西独の64%という値になってぃる。一家族あた りの勤労所 得を比較 しても、東独が1,695ドイツマルク、西独が2,926ド イツマルクで、

東独は西独の約6割の所得を得ていたことになる。 これに東独で行われていた 生活必需品等への国家からの補助を考慮にいれるなら、平均的家計を単位 にみ

ると実質賃金における格差が意外に小さかったといえよう。

雇用者一人あた りの賃金格差が大 きいのに、家計単位でみると格差が縮小す るのは、女子の就労スタイルが東西間で大 きく異なっていたことに起因する。

女子雇用者の勤労所得を較べてみよう(表2)。 男子フルタイム労働者の勤労 所得は東独では1,009マルクであり、西独2,575マ ルクの4割弱の水準である のに、女子を較べるとフルタイマーで5%、 全体では10%ほ ど比率が上昇する (女子全体で西独の50.1%)。 これは東独において女子の労働力率が高 く、かつ フルタイマー として就労 している女子が多いことの反映である。 この点を裏付 けるのが、表3である。

女子雇 用者勤 労所得 単位=ドイツマル ク

フル タイマー

パ ー トマイマー (タイプ 1) パ ー トタイマー (タイプ 2) パ ー トタイマー (タイプ 3) (参)男子 フル タイマー

西独  東独/西

1,415  50.1%

1,745  43.6%

1,694  41.9%

1,098  50。 1%

704    69,6°

/。

2,575  39。

2%

東 独 709 762 710 550 490 1,009 )パー トタイマーの区分

タイプ1=DDR週 35‑39時間、

タイプ2=   25‑34時間、

タイプ3=   24時間以下、

Arbeit und Sozialpolitik,6/1990,S。 205

BRD週31‑35時

 22‑30時

 21時間以下

(148)  5θ

(4)

法経研究39巻4号 (1991年

)

女子の労働.力率および労働1時1間構成(%)

労働力率 (全)

労働力率 (女)

うちパー ト雇用 パー ト雇用の構成

タイプ1

タイプ2 タイプ 3

東独 82.8 83.2 26.9

4.8

16.12

5。

9

西 独

64。1

50。

01

40,7

3.4 14.1 23.2 Arbeit,und S6zialpolidk,6/1990,S.204.

女子の労働力率は東独の方が圧倒的に高く、西独で50.0%な のに対し、東独 の女子労働力率は83.2%に のぼっている。しかも、労働時1間が短い者は東独で は少な く、女子雇用者の 4分の 3が フルタイムの就業形態にある(女子フルタ イマー、東独で73.1%)。 西独において女子の雇用者申、週 35誌櫛時1間1以下の パー トタイマーが4割、しかもその半分以上が週 21時間以下の短1時1間帯で働い ている。それと較べると、東独では週 35時1間1以上働く女性、すなわちフルタイ マーとパー ト・ タイプ1を合わせた枷率が、女子雇用者申約 8割 となる。

こうした東独女子雇用者の就業スタイルに支えられ、家計単位でとる東西賃 金格差をある程度小さくさせてきたのである。西 ドイツと大きく異なってきた 東独女性の就労スタイル (高い労働力率とフルタイマー申心の就労形態

)が

後とも社会1的に保1障されるのか、または西 ドイツ型のスタイルに転換し、労働 力率儡下とパー トタイマー申心の就労形態が広がるのか、それが東独勤労者の 家計に及ぼす影響は大きい。同1時に、それは東独の失業問題の解決策にも多大 な影響を及ぼすに違いない。

1990年 7月の経済・通貨 。社会同盟の発効以1降lEI東独にも西独の税詰

J、

会保1障tlj度が移植された。 1対1の交換レー トによって旧東独の雇用者は表1

に示したのとほぼ等しい賃金をドイツヤルクで得ることにならたが、同時に社 会保1障負担費のアップ

│に

も直面することになった。西独並の1比率で源泉徴収さ れると、実質賃金が約 2割 は低下してしまうということになる。賃金の弓│き げなしにこれが行われるならば

t旧

東独雇用者 と西独雇用者 との賃金格差はか えって拡大することになる。

こうした もとで、経済・ 通貨・ 社会同盟発効の前後から旧東独地域 において

jイ  (147)

(5)

賃金引 き上 げ交渉が労使間で行われ、

30%台

の賃上 げが合意 されて もいる。

以上でみた東西賃金格差 と女子労働者 の就業形態 の違 いを念頭 にお きな ら、次 に労働時間の東西格差 を確認 してお こう。

(2)労働時間

1989年の東独雇用者の年平均労働時間は1,749時間で、西独 と較べて146時 間、約1割近 く長い。歴史的 にはかつて1970年の ように年労働時間において東 独の方が短か つた こともあつた。 しか しそれ以降、西独 の時短 の進展はめざま

しく、格差が広が つて きた(表4、 参照

)。

これは西独 において協約労働時間の 短縮が進 んだ ことと、超過労働時間が減少 した ことに起因する。

西独 においてはフルタイマーの協約上の週労働 時間 は、70年の約42時間か 90年には38時間台へ と短縮が進 んで来た。 それ に較べ、東独 における協約 上の週労働時間は43時間前後で推移 してきた (表4、 3項

)。

東独労働者の方 が、週単位では4時間は多 く働 くことになってお り、一 日の労働時間 をみて も、

一 日8時間半で、西独労働者 よ り1時間ほ ど長 く働 いて きた。

協約上 の体暇 日数 において も東西 の格差が広が つて きた(5項

)。

89、 90年 点で、西独で は協約上、年30。7日 の体暇が保障 されていたのに較べ、東独では 22日 しか保障 されなかつた。

西独では超過労働時間が大幅 に短縮 されて きた。景気変動の影響 もあるが、

7o年には年157時間あつた超過労働が、半分以下 の73時間 にまで削減 された のである(15項

)。

とはいえ東独では89年29時間 と超過労働時間は短い。東 独 における超過労働 は、構造的な要因 にもとづ くものだけであ り、短 く安定 ている。

病気療養休暇 は東独 の方が長い。昨年度でみる と東独 が 122日 、西独が 91日 である。 

パー トタイムの増加 は雇用者全体 の平均的労働時間の減少 をもた らすが、 こ うした効果 は60(70年代 には東独の方が大 きか つた。 しか し80年代 になって か らは西独 において もパー トタイマーが急増 し、 それが時短 に果たす効果 も著

しい。

1990年になって東独の年労働時間の短縮が 目だつ。その最大 の要因は急速 な 産業構造、企業構造 の転換が進 め られ、その もとで操業短縮労働が大規模に導 入 された結果である。解雇 されない まで も、70万か ら100万人 の雇用者が操業 (146) 55

(6)

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39巻4号(1991年

)

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  (145)

(7)

短縮の対象 とな り、実際 には就労 しないでいる。それが平均労働時間を78時間、

4%以上押 し下 げている。

操業短縮 という移行期の困難 さを反映 した労働時間の短縮 だ けでな く、昨年 来 旧東独 の労働組合が再編 され、協約上 の週労働時間の短縮が労使で合意 され て きた。 旧来の長時間労働 を改 め、 ワークシェア リングによって大量失業の解 決 をはか ろうとする労働組合の運動が強 まって きている。東独地域の労働組合 が賃上 げ と労働時間の短縮 をどのように組 み合わせて要求 し、実現 して行 くの か注 目を要する ところである。

旧東独労働市場の特徴 お よび90年代初期の予測

(1)旧東独労働市場の特徴

経済・ 通貨・ 社会同盟発効直前の東独の就業構造 を1年前 と較べたのが、下 の表である(表 5)。 先 に述べた通 り東独の就業構造 の特徴 として女子のフルタ イム雇用が多い ことが確認で きる。

この調査の限 りではまだ失業問題 の発生 は深刻ではない。失業者が

1%ほ

生 じた にとどまつている。操業短縮措置 の対象 となっている雇用者 もまだ失業 者 とは分類 されずにいるか らであろう。 この調査結果か ら、構造転換の影響 を フルタイム雇用の減少 と年金生活者の増加 にみることがで きる。 フルタイム雇 用比率の低下 は、中高年 において 4%、 また16歳以上の女子 において

3%と

だ っている。失業者が増加 し始 める前段階 として、 フルタイム雇用が まず減 り だ した とい う状況がわかる。のみな らず中高年女子 については、パー ト雇用の 機会 も減少 している点 もみお とす ことがで きない。他方で、雇用機会 の減少 に

ょらてその分だけ年金生活者の比率が高 まっている。

東独 の就業構造 の特徴 として、ホフイ トカラー に対 し労働者層の比率が高い こと、農業従事者の比率が高い ことが従来指摘 されてきた。 こうした特徴づ け の当否 もまた、今後の雇用0失業政策 に大 きく影響す る。

西独 においてホフイ トカラーの占める割合が高いのに較べ、東独では従来の 職 業分類 によると、ホフイ トカラーが36%、 労働者が54%で、ホワイ トカラー の割合が小 さかつた。実は この背景 には税制上の労働者優遇措置がある。 ホワ イ トカラー と分類 され るよ り労働者 と分類 されていた方が有利であった。 ドイ ツ経済研究所 (DIW)が独 自に行 つた職務 内容 に忠実な調査 によれば、47%が

(144) 57

(8)

法経研究39巻4号 (1991年

)

旧東独地域における就業状況 (%)

1989年 7月 1990年 6月 1989年 7月 1990年 6月

フルタイム雇用 パー ト雇用 事業所内職業訓練 育児休暇・ 休業 失業 (届出数) 年金生活

フルタイム雇用 パー ト雇用 事業所内職業訓練 育児体暇・ 休業 失業 (届出数

)

年金生活

フルタイム雇用 パー ト雇用 事業所内職業訓練 育児休暇0休 失業 (届出数) 年金生活

16歳以上の者

16‑64歳まで

45‑64歳まで

の 中で の割 合 47        45 14         14 2      2 4         4

‑‑       1

28        29 の 中 で の割 合

60        57 17         17

2      3 5         5

‑‑       1

8         10 の中で の割 合

52         49 25        21 0      0 0      0

‑‑      1 21         24 DIW WOchenbericht 37/90,13。September 1990 S.518.

ホフイ トカラー に分類 されるのであつて、東独で も西独 とほ とん ど同程度 ホワ イ トカラー化が進 んでいることが示 された (表6、 参照

)。

この表か らも明 らかなように、東独 においては農業従事者が全体の1割を越 える高 さにある。ただ しそれ も分類が東西で異 なっていることか ら生 じた現象 である。東独で農業従事者 と分類 される人々の内訳 をみるな ら、大規模農業経 営の中で建築業や手工業 さらに流通・ サー ビスに従事 している者 もこの申に含

θ  (143)

(9)

職業資格の構造 (東独、1990年 6月 、西独、1989年

)(%)

東独      西独

労働者 単純労働者 専門労働者 マイスター、職長 ホワイ トカラー

単純事務職員 専門職員 高度専門職員 幹部職員 農業従事者

専門労働者

マイスター、作業長及び中0上級職 自営業

うち、 自由業 官吏

39 8 27 3 47 9 21 15 2 11 7 2 4 0.5

35 18 14 3 44 9 24 9 1 2

9 2 9 DIW,Wochenbericht 37/90,13.September 1990 S.520。

まれているのである。 これを西独同様 の分類 に直す と農業従事者 は約2%と り、西独 の農業従事者が占める比率 とほ とん ど変わ らない。

ホフイ トカラー化 の進展 と、農業就業者の縮小傾 向な ど東西で大幅 に異なる ものではない ことが ここに確認で きる。今後大 きな変化が予想 されるのは、次 にみるように、部門 。業種毎 の雇用者数であ り、異なる業種間での労働力移動 をどう円滑 に進 めるかが重要な政策課題 なのである。

12)東西統一後、移行初期の雇用展望

ドイツ経済研究所 の予測 によれば、統一後移行初期の部門別雇用者数 は表7 の通 りである。

製造業では大幅な雇用者数の減少が見込 まれている。製造業全体の雇用者は、

317万 人から235万 人へ と4分1、 82万人少な くな り、全雇用者に占める比 率は、

30%を

割る。 とりわけ、繊維、化学など競争力がないといわれている (142)″

(10)

法経研究39巻4号 (1991年

)

統一後移行初期の雇用予測 6    1 雇用者 (1989年) 統一後移行初期

1,000人 百分比(% 雇用者 百分比(% Ю89年との差 変 化 率 農林 漁業

エネルギー/鉱 製造業

化学 金属 機械 電機 家電 衣服/皮 繊維 食料 品 建設業 商業

大規模店 専 門店 運輸/交 サー ビス

信用/保 接客

コンサルタント 教育・科学 公務 小計 他の国家部門 総計

920    10。 3 295     3.3 3,168    35.6 152     1.6 183     2.1 548     6.2 398     4.5 115     1.3 197     2.2 217     2.4 336     3.8 1,022    11.5 563     6.3 721     8.1 258     2.9 463     5。 2 628     7.0 2,615    29.3 63     0.7 180     2.0 133     1.5 629     7.1 473     5。 3 1,137    12.8 8,910

390 9,300

670     8.3 195     264 2,348    29.1 72     0。 9 143     1.8 418     5。 2 248     3.1

90     1.1 117     1.4 97     1.2 236     2.9 927    11.5 663     8.2 951    11.8 348     4.3 603     7.5 598     7.4 2.655    32.9 183     2.3 230     2.8 213     2.6 559     6。 9

423     5。 2

1,047    13.0 8,080

220

8,300 ‑10.8

‑250 ‑27.2

‑100 ‑33.9

‑820 ‑25。9

‑80 ‑52.6

‑40 ‑21.9

‑130 ‑23.7

‑150 ‑37.7

‑25  ‑21.7

‑80 ‑40。6

‑120 ‑55.3

‑100 ‑29.8

‑95 ‑9。3 100    17.8 230    31.9 90    34.9 140    30.2

‑30  ‑4.8

,   40     1.5 120   190.5 50    27.8

80    60。2

‑‑70  ‑11.1

‑50 ‑10.6

‑90 ‑7。9

‑830  ‑9。3

‑170 ‑43.6

‑‑1000 DIWo WOchenbericht 17/90,26。 April S.243

δθ  (141)

(11)

業種 では、雇用者数 は半減 して しまう。衣料、電機、食料品業 において も雇用 者の減少 は著 しぃ。旧東独の中で国際競争力があるといわれている機械業 にお いて も、業界 の将来性 と雇用者数 は比例せず、雇用者 は4分3に減 って しま う。

国家部門の雇用者 の減少率 も高い。 この推計 によれば、公務及 び他 の国家部 門 に属する雇用者 は、現在の計87万人か ら64万人 になる。

逆 に、雇用者の もっとも急激 な増加が見込 まれるのは、金融関係、信用,保 険業であ り、 そ この雇用者 は倍増す る。企業活動 をサポー トする法律、会計関 係等のコンサルタン ト業の雇用者 も増加 する。商業部門において も3割以上雇 用者が増カロする。サー ビス業 と商業 を合わせた雇用者数 は、330万人か ら360万 人 に増加 し、全雇用者中の比率 は44%へと上昇する。旧東独地域 において、雇 用 のサー ビス化が、従来の社会主義体制 を支 えて きた教育・ 科学の分野や、公 務 の分野 では雇用者 を減 らし、 その性格 を資本主義的市場経済体制 に基づ くも のに転換 しつつ、急速 に進む ことが予測 され る。

サー ビス化 に関わ らない業種で、雇用者の増加が唯一見込 まれているのが建 設業であるぎインフラス トラクチュアや住宅 の建築需要 を反映 した ものである。

か くして、雇用者の増加 は58万人、減少が158万人 とな りのべ200万人以上 の雇用者が業種 を変 えなければな らない。 この業種間移動 をいかにスムーズに 行 うかが最大の課題であ り、 それ を促進 するための職業紹介 システムの整備 は もとより、雇用者が新たな業種で就労で きるように新たな資格・ 能力 を得 るこ とので きる職業訓練制度の再編、充実が緊急課題 となっている。ただ しこうし た業種間の移動 を円滑 にするシステムがで きた として も、雇用者総数 は930万 人か ら830万人へ と100万人減少 して しまうと推計 されてお り、現在 の賃金・

労働時間 と女性 の就業スタイル を前提 にす ると、業種転換 に伴 う失業だけでな く、解決不可能な大量失業が生 じて しまう。雇用創出策 として国家支出を増や し、建設業等での雇用 を増やすのか、 また、短時間就労 を促進 した り、女子の 労働力率 を西独並 に下げ一定の女性 を非労働力化 させ るのか、 ここへ どのよう な答 えを出す ことになるのか、注 目を要する点である。

こうした もとで、職場の将来 に対する不安 は非常 に大 きい (表8)。

雇用情勢が悪化す るもとで、新たな対応 としてでて きているのが、副業の増 加である。90年6月 時点で東西の副業の状況 を調査 したのが、表9である。旧 東独では年金の水準が低 く、高齢者の副業が従来か ら多かった。新たな傾向は、

(140)‐ ″

(12)

法経研究39巻4号 (1991年

)

解雇、職場喪失に関するアンケー ト調査(東 1990年 6月

)

解 雇 が 生じ た

  

晶 雀 冒 え ダ

 

禦 雑辱 胃 切場 を

全体 男性 女性

16ハV29荷

30ハψ44病

45ハV64備

労働者・ 職 員 農業従事者

自営業者 雇用者 のみ

企業規模 別 従業員19人以下 20‑199ノ て 200〜 1,999人 2,000人 以上

459イ 49 40 52 46 42 47 51

23 40 54 55

6%

5 6

5'

5 6 6 7

3 5 7 6

44%

40 48 42 41 48 45 56

6

30 43 49 45  , DIW,Wochenbericht 37/90,13.September 1990,S.522

副業の状況 (東独、1990年 6月、西独、1989年)

  西  

している隊計の支え定期的に臨時に している家計の支え定期的に 臨時に 全体(16歳以上)

男性 女性

16‑‑29蔵

30‑‑44病

45‑‑64病

65歳 以上 労働者・職員 自営業 育 児期 間 官吏

19 28 11 27 20 13 38 18 32 4

4     4     11 7     6     15 4     2     5 5     4     18 5     5     10 5     5     3 3     1    34 3     5     10 15    5     12

3     1     0 7 9 6 11 7 8 3 8 5

12

2     2     3 2     2     4 2     1     2 3     2     6 1     2     3 1     2     3 1      0      1 2     2     3 1     1     3

DIW,Wochenbericht 37ノ/90,13.September 1990,S.523 δ′  (139)

(13)

若年者の ところでの副業である。彼 らの副業は、購買力 と需要の増加 に大 きな 意味を持ち、かつ、彼 らが企業を起 こし、独 自の経済活動を始めるための準備 であるとして、 この意義を強調する見解 もある。資本主義市場への転換は、あ たかも終戦直後の日本のように、さらまざまな混乱を引き起 こしつつ、同時に そこに多 くのビジネスチャンスを生み出しているのである。適応力の高い若者 や目はしのきく者は、新たな仕事を見つけた り、自立 した自営業を営む可能性 を生かすことができる。 こうした形の中小企業の持つ雇用創出力にも、注目し ておかなければならない。

西独労働市場への参入可能性

(1)西独への移住者の急増

1989年秋以来東独から西独への人口流入が著 しい。これが東独の民主化、さ らに西独への編入を引き起 こす引き金であつたが、西独労働市場にはどのよう な影響を及ぼしたのであろうか、また今後 ともそれが続 くのであろうか。 ここ では西独に流れ込んだ人々の構成を整理 し、その特徴 を明 らかにしてみよう。

なお西独への移住者の流入を問題にする場合

t東

独からの「移住者」鱒berⅢ siedler)のみならず、いわゆる「帰住者」と呼ばれている人々(Aussiedler)を

も取 り上げなければならない。彼 らは

1日

ドイツ東部地域」(現在のソ連、東欧

)

からの ドイツ系移住者であり、現在 この「旧ドイツ東部地域」には旧 ドイツ系 住民が 300万 か ら400万 人住んでいるといわれている。本稿では区別を明確に するため便宜上、移住者のうち東独からの者 鱒bersiedler)を「移住者」、東独 外の東欧諸国か らの移住者 (Aussiedler)を 「帰住者」 ともぶことにする。

移住者の急増は、表10に示した通 りである。89年来東独か らの「移住者」が 急増 したことがわかる。東独人口 1,600万人中、89年に34.3万 人、90年 上半 期に23.7万 人の計 58万 人、約4%が一気に西独に流れ込んだことになる。の みならず東欧・ ソ連の政治改革 と経済政策の転換 を背景に、膨大な「帰住者」

たちが西独に流入し続けていることもわかる。西独にとつてみると89年 4月 ら90年 3月 までに「移住者」「帰住者」合わせて 92万 人が流入してきたのであ り、 この数はケルン市の人口に匹敵する。

89年に移住 してきた計72万人の移住者の状況を示 してみた(表11)。 東独から の「移住者」は、就業できた者、失業中の者、主婦・子供等非労働力の者が3

(138)   δθ

(14)

法経研究39巻4号 (1991年

)

10 移住者の急増 (単=万

)

11 1989年の移住後 の状況 (人

)

就業中 失業中 職業訓練中

ドイツ語研修中 主婦 。子供・ 年金 生活者など

「 移 住 者 」 125,000 114,000 2,000

103,000

344,000

「帰 住 者 」 89,000 40,000 13,000 46,000 189,000

377,000 Arbeit und SOzialpolitik, 7/1990, S.257

分 の1ずつの構成 になっている。移住後、職 を求めた者のうち半数 しか仕事 を 得 ていないのである。一方、「帰住者」のうち就業で きたのはさらに少 な く23%

にす ぎない。 そ もそ もドイツ語会話が不十分 にしかで きないため語学研修 を受 δ  (137)

1950‑1959年 1960‑1969年 1970‑‑19794F 1980‑‑1989生F 1950‑‑19891F

1987盗F

1988生F

1989年 1990年1月 1990年 2月 1990年 3月

199伊4月

199 5月

199 6月

「 移 住 者 」 220.31 61.83

14.`

87

54.74 351.75 1.88 3.99

34。38 7.37 6.39 4.62 2.46 1.92 1.01

「 帰 住 者 」 43.97 22.15 35.54 98.41 200.07 7.82 20.28 37.71 3.82 3.38 3.67 3.27 3.72 5.24

264。28

83。98 54.01 153.15 551.82 9.70 24.27 72.09

11。19 9.77 7.84

5。

73

5.64 6.25 Arbeit und Sozialpolitik,7/1990,S.254

(15)

けているA々が多いことがわかる。

また、「移住者」「帰住者」両者に本通するのは、非労働力人口が大 きいこと である。「帰住者」の5割が主婦・子供0年金生活者などの非労働力人口である。

移住者の年齢構成には大 きな特徴がある。「帰住者」「移住者」と西独全体の 年齢構成を比較 したのが図1である。45歳 以下の働 き盛 りの層が「帰住者」と

  20歳

未満  20‑25歳  25‑45歳   45‑60蔵  6υ蔵以上

□ Aussiedler国 首bersiedler i目 西独平均 Arbeit und Sozial politik, 7//1990,S.255

「移住者」の4分3を占める。 とりわけ、「帰住者」中の20歳以下人 口の多 さ と「移住者」の中の25‑45歳人 口の多 さが 目だつ。45歳以上 の中高年・高齢 人 口をみる と、西独平均 の約半分 と低 くなってい る。移住者 の中に非労働力人 口が多い ことを上で指摘 したが、その うちわ けは年金生活者な どの高齢煮では な く、子育 てさなかの主婦 と20歳以下の若年者、子供 を中心 としていることが わか る。

12)移住者の失業状況、失業構造

移住者 に対 する西独労働省機関 を通 じた職業斡旋件数 をみ る と、89年 12月 1万 8千人の「移住者」が、 また3万人 の「帰住者」が仕事 についた。 同年

1月 と比べ ると「移住者」は約30倍、「帰住者」で15倍の職業斡旋件数 となっ ている。90年上半期 にはさらに増加 し、 7月 までに「移住者」7万 4千本、「帰 住者」2万 4千人が新たな職 についた。 と嗜いえ全体か らみると十分な数字で (136)   δJ 移住者 の年齢構成

20‑25歳  25‑45歳

lL8釧  l堕

表 6  職業資格の構造 (東 独、1990年 6月 、西独、1989年 )(%) 東独       西独 労働者 単純労働者 専門労働者 マイスター、職長 ホワイ トカラー 単純事務職員 専門職員 高度専門職員 幹部職員 農業従事者 専門労働者 マイスター、 作業長及び中 0上 級職 自営業 うち、 自由業 官吏 398 2734792115211724 0.5 35 18143449249 129 29 DIW,Wochenbericht 37/90,13.September 1990 S.520。 ま

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