会 計 情 報 と 公 益 事 業 規 制
‑ NTTの組織再編成問題を例 に して ‑
山 本 清
1.公益事業規則における会計情報の位置づけ (1)公益事業の規制をめ ぐる最近の動向
公益事業 の規制 に関 して近年議論が盛んなの は,1980年代 に英国,米国, そ して我が国で行われた規制緩和 のイ ンパ ク トを評価 しよ うとす る ものであ る。わが国における規制緩和の代表例 は,旧3公社 (国鉄,電竃,専売)の組 織を政府保有か ら株式会社組織の特殊会社 にかえた民営化である。 この民営化 を支え る理論 は,新保守主義の経済学であ り,公正 よ りも効率を重視 し,また, 政府の介入 よ りも市場に優位性をお くものである。具体的には,事業運営の非 効率性,経営 内容の悪化の改善対策 と して生産性の向上 (特 に国鉄 の場合), 独 占市場 の開放 を求 め る外国政府への対応を含めた競争環境 の構築 (特 に電 電),株式売却 による政府財政収入の確保 とい った民営化検討時の社会経済悼 勢 も大 いに影響 している。
(2)公益事業規制 と会計情報 との関わ り
公益事業 について は,一般 に巨大な設備,装置がその事業を行 うのに必要 と され ることか ら,規模の経済性が発生 し, この特性 に伴 う独 占の弊害を防止す るため,各種の規制が課 されている。 この規制 は,公益事業が規制緩和の一環 として民営化 されて も基本的には存続す る。本稿で検討す る会計情報 と関連す る経済的規制の主な ものには,料金規制,参入規制,及び兼業規制がある。料 金規制 とは事業者の提供す るサー ビスの料金 に関す るもので,わが国で は認可
〔201〕
制 とな っているが,総括原価主義であれ価格上限主義 (プライスキ ャップ)1) であれ会計情報が規制の重要な要素 とな っている。すなわち,前者の場合で は 当該事業 にかかる営業費,償却費,諸税 などの経費のほか事業用資産価額の一 定比率が認可 にかか る総括原価を構成す るし,後者の場合で も設定 された上限 価格以下で過剰な利益 (または損失)をあげていないかを監視す る必要か ら事 業部門の収支情報が必須 となっている。また,参入規制 とは当該事業の市場‑
新規 に参入す る場合の規制で,免許,許可制が一般的であるが,公益事業の性 格か ら参入事業者の経営の安定性を審査す るには財務状況のデータが必要であ る。 さ らに,兼業規制 とは規制 にかか る事業以外の事業を事業者が行 う場合の 規制であ り,本業の経営を圧迫 しないよ うにす るとともに本業の利益を兼業部 門に流用す ることによ り兼業市場の競争 を阻害 しないよ うにす るのが 目的であ
る。 このためには,本業 と兼業部門 との適切 な区分経理が前提条件 となる。
(3)NTTの組織再編成問題 と会計情報
このよ うに会計情報 は公益事業の規制 に密接 に関連 しているのであるが,従 来の研究 は,経済学か らは料金規制のあ り方,競争環境のモデル分析が,また, 会計学か らは料金決定問題が中心 になされて きた。経済学で は最近にな り代理 人理論 を適用 して組織形態の変更が組織業績 に与えた影響 を分析 した もの2)
が現れて きたが,会計学で は料金決定問題 を会計政策 との関連で と らえた り
3),民営化 に伴 う会計処理の経済的帰結を扱 った もの4)が散見 され るだけで, いずれ も総括原価主義を所与 とした理論であ り,料金規制その もの と会計情報 の関係を分析 した ものは見受 け られない。経済分析のブーム ともいえ るプライ 1)規制者 と被規制企業 の間で価格契約 を締結 し, この価格 を上 限 と して これ以下 の料 金で あれ ば 自由に料金 の改定 がで きる ものであ る。1984年英 国で電気通信公社B
Tの民営化 の際,最初 に導入 され た もので あ る。 この経緯 につ いて はLittlechil° (1983)参照
2)国鉄 の民営化 を国会 と行政府,行政府 と国鉄 にPrincipa1‑Agent関係 が成立す ると して分析 した岡野 (1989)の考察 が あ る。 ただ, この分析 はや や観 念的す ぎ ると思われる。
3)熊野 (1990)参照 4)醍醐 (1990)参照
会計情報 と公益事業規制一NTTの組織再編成問題を例に して‑ 203
スキ ャップによるイ ンセ ンティブ規制が総括原価による公正幸細 目率規制に対 し て優れているとす る議論 5)も,実績 となる会計情報 による十分 な検証を受 け た ものではない。 したが って,我々の現在の課題 は,経済的分析の結果を会計 情報 と関連 させ,同時に会計情報が規制の過程で果た している機能を明 らかに することにあると思われ るのである。 そ してその ことが 「現代の経済社会の中 で会計が果た している多面的な役割を実証的に明 らかに」 6)し,よ り上位の 政策過程における会計の役割 (政治性)を考察す ることになる。 日本電信電話 株式会社 (NTT)の組織再編成問題 は,組織のあ り方をめ ぐって会計情報が キー ・ファクタとなった ものである。 これまで組織 と会計情報の関連 について は,その具体的データに制約があったため,実証的な分析が ほとんど行われて いなか ったが,民営化に伴 う情報公開の進展及びマスコ ミによる報道 により概 括的検討を可能に したという対象の適格性 により取 り上げるものである。
2.電気通信事業者の網構成 と料金体系
NTTの組織再編成問題 とは,現在の単一組織による全国的サービスを綱単 位で分割 しようとす るものであるため,まず,現行の電気通信事業者 (特 に電 請)の網が どのようになっているかを概観 してみよう。
(1)網構成
電話サー ビスの網構成は,図 1に示す通 り電話交換機の種類 に対応 して加入 者網,市内網及び市外 (中継)網に区分 される。加入者網 は,電話機などの端 末 (TE)か ら市内交換機 (LS)までの,市内網 は,市内交換機か ら市内外中 継交換機 (TS)までの,また,市外網 は,市内外中継交換機か ら市外 中継交換 機(TTS)を経 由 して再び市内外中継交換機にいたるまでの区間にかかる綱を 指す。そ して,各交換機に対応 して設備の階梯 (層)は,それぞれ端局 (EO), 5)HayesandSeigel(1986),HaringandXwerel(1987)参照。 これに対 して,
規制者の効用,不確実性の程度 と形態により必ず しも優位でないとするRichard Schmalensee(1989)等の見解 もある。
6)醍醐 ・田中 (1990)p.1
集中局 (TC),中心局 (DC)及び総括局 (RC)か らなっている7) 0
図 1 網構成 と料金の関係 市外通話料
(NTT) 基本料 市内通話料
] 」̲̲̲」
TE‑ LS ‑ TS ‑ TTS TTS ‑ TS ‑ LS ‑ TE
加入者網‑卜市内網‑1‑ 市外 (中継 )網 ‑ 卜市内網‑卜加入者網 TE‑ LS ‑ TS‑ TTS TTS‑ TS ‑ LS ‑ TE
l I
IGS IGS
NCC通話料
‑ :NCC中継網
(2)料金体系
電話サー ビスの料金 は,前述 した料金規制により郵政大臣が電気通信事業者 か らの申請を認可 した ものである。NTTについては,電話サー ビス契約約款 により電話料金 (通話にかか る)は基本料 と通話料か ら構成 されている。網 と の対応関係でい うと,基本料 は加入者網にかかる料金で利用度合いによ らず一 定8)であ り,通話料 は市 内網 と市外網 にかか る料金である。ただ し,通話料 と市内 ・市外網 との関係 は,市内通話 と市内網 とは完全な対応関係 にあるのに 対 し,市外通話 については市内網 と市外網の両方 を利用す るため 1対 1とは
7)ディジタル化が完了す ると郡局 (GC)と中継局 (ZC)の 2階梯になる。詳 しく は電気通信審議会 (1989)0
8)正確 には,契約者 の用途 (事務用か住宅用か)及 び単位料金 区域 (lo門/ 3分)の 加入者数 に応 じて異なる。
会計情報 と公益事業規制‑NTTの組織再編成問題 を例 に して‑ 205 な っていない。 この点が後述す る市 内 ・外収支の問題を複雑 に しているのであ るが, ここでは通話 目的 (市内通話か市外通話か) と通話時間,時間帯及 び距 離段階に応 じて定め られていることを述べ るにとどめる (図 1,表 1参照)0
表 1 距離段階別料金表 (3分間通話の料金) 単位 :円
昼 間 夜 間 深 夜
区壊 内(市 内) 10
隣 接 20
20kmまで 20
30 50 40
40 60 50
60 90 70
80 120 90 80
100 140 90 80
160 180 100 90
320 260 (240) 150(140) 140(130)
括弧 内 は1991年3月19日の料金 改定 分
(3)電話サー ビスにおける競争状態
電気通信事業, とりわけ電話サー ビスについては,電気通信事業法及 び 日本 電信電話株式会社法 の施行 によ り,1985(昭和60)年 4月 1日か ら日本電信 電話公社 はNTT‑民営化 され,従来の独 占状態か ら新規参入 に伴 う競争原理 の導入が図 られた。 この結果, 日本テ レコム,第二電電, 日本高速通信の3社 (いわゆる中継系NCC)はNTTの市外網 に対応す る中継網を自ら設置所有 して (第 1種電気通信事業者 として)1987(昭和62)年 9月か ら長距離電話 サー ビスを開始 し,部分的にせよ競争状態に突入 したのである。すなわち,中 継系NCCにかか る電話サー ビスは,加入者網及び市内網 についてはNTTの
設備を利用 し,市外網部分 については自社の設備である中継網を利用す る。 こ
のため,NTTの網 とNCCの網の接続が必要 にな り,相互接続用関門交換機 (IGS)を設置 し,相互接続点 (Poュ)を通 じた相互接続サー ビスをNTTか ら受 けることになる (図1参照)。また,NCCサー ビスの料金 は, 自社の中 継網にかかる市外通話料金 にNTTの設備利用にかかる対価 として相互接続料 相当額 (10円/ 3分)を加算 した ものである。周知の通 り,NCC料金 は政策 的配慮 もあ りNTT料金の約2割安 となっているため,東京 一大阪間での通話 量の30‑40%をNCCが 占めているといわれているが,全体では3%台にとど まっている。 この点が一層の競争市場を確立す るべ く 「巨大」なNTT組織を 再編成 しようとす る規制当局の動 きにつなが るのである。
3. NTTの組織再編成 と市 内 ・市外通話収支 との関連 (1)組織再編成論議の背景
そ もそ もNTTの組織見直 しは,第 2次臨時行政調査会の第 3次答 申で当時 の電電公社の組織再編成を行 うべ きことが指摘 されたのを受 け, 日本電信電話 株式会社法付則第 2条 に 「政府 は,会社 の成立の 日 (1985年 4月 1日)か ら 五年以内に, この法律の施行状況及びこの法律の施行後の諸事情の変化等を勘 案 して会社のあ り方 について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講 ず るもの とす る。」 と規定 されていた ことによる。つま り,1990年 3月末がそ の期限 とされていたため,電気通信審議会 にその検討が諮問され,その中問答 申の審議過程か ら当事者のNTT,NCC,郵政省をは じめ大蔵省,通産省, 経済企画庁及び公正取引委員会の各官庁,産業界を巻 き込んだ論争 となった。
(2)再編成に関す る利害関係者の見解 一特 に郵政省対NTT
再編成の契機 はNTT法に根拠をお くものの,電気通信事業が今後の高度情 幸酎ヒ社会で重要な地位を占めることか ら,再編成に関連する利害関係 によりそ の評価は大 きく異なって くる。 実際の ところ, この再編成問題 も利害が複雑 に 絡み合 っているが,本稿の目的は規制における会計情報の機能を明 らかにす る ことであるので,規制の直接の当事者である郵政省 とNTTの両者にアクター を限定 して考察を進めることにす る。両者の再編成に対す る認識 は競争市場の
会計情報 と公益事業規制INTTの組織再編成問題を例 に して1 207
確保 とい う理念で は一致す るが,郵政省 は長距離 (市外)サー ビスを行 う市外 会社 と市内サー ビスを行 う複数 (または単一 の)市 内会社 に分離すべ きとす る
のに対 して,NTTは従来通 り全国単一組織を維持すべ きとその方策 について は明確 に異 な る。その論理を整理 したのが表 2である。 この表か ら明 らかなよ うに料金 の要素, とりわ け分割後 の市 内会社 の経営が主要 な論点 とな って い る。すなわち,組織 を分割 してその後 の市 内会社 の経営が赤字 となって特別の 措置を講 じなければな らないのか否か, また,市 内通話の利用者負担が大 き く 変動す ることによ り国民生活 に影響 を与えないのか否か, さ らに,規制緩和 に よ り市外 サー ビスの料金体系が変動 LNTTの長距離部門の優位性が高 まる (後述す る市外部門か ら市 内部門‑の内部補助の解消)のか否かを判断す る材 料 とな るか らであ る。
表 2 郵政省 と N TTの見解
項 目 郵 政 省 N T T
料 金 NCCとの競争及 び地域会社 現在 の費用構造 か ら市 内は値 間での競争 によ り,市外,市 上 げ,市外 は値下 げ とな るo
内 とも料金 は低廉化す るo 会社 間で料金格差 を生 ず るこの対策 にはア クセ スチ ャージの導入が必要 o また,地域o
サ ー ビス 競争推進でデ ジタル化が進 全国的 なサ ー ビスに支 障を き むo多彩な新サ‑ビスが期待 たす恐 れが あ るo 故 障時の対
可能 ○ 応が混乱す る可能性○公平 なサ ー ビス提供 に支障○
株式対策 ATT分割の例か らみて株価 分割 を前提 に した株式放 出で は上昇す る○ 利用者利益 の方 はなか つたため,株主保護 の
4.市内 ・外収支の会計処理をめ ぐる論点
組織再編成の議論で市 内 ・外収支 とい う会計情報が大 きな役割を担 うことに な り,会計処理論争 は,必然的にネ ッ トワー ク ・サー ビス組織のあるべ き姿 (級 織変更の是非) とい う高度の政策論争 を背後 に有す ること (あるいはその代理 論争) とな ったのであ る。NTTは見直 し期 限の 1年 3ケ月前 の1988年12月 に 「サー ビス別原価計算研究会」を設置 して,市内 ・外サー ビスの区分計算の 検討 に着手 していたが, これは多分 この点を十分認識 していたのであろ う。 そ して,論争 はまさにこの研究会中間答 申公表を契機 としたのである。 具体的な 論争点 につ き,NTT,郵政省等の見解を当時の新聞,雑誌か ら整理 して検討
してみよ う。
(1)「市内 ・外」の概念
NTTが研究会 の中間答 申を受 けて1989年 4月19日に発表 した市 内 ・外収 支 は, 「電話役務収支状況」と して1987(昭和62)年度 の電話 サー ビスにつ いて,その種類別の収支を示 した ものである。その結果 は,表 3に示す通 り基 本料 は約1,800億 円の赤字,市 内通話 は約750億 円の赤字 に対 し,市外通話 は 約10,600億 円の黒字 とな って いて 「市 内などの赤字 を市外の黒字で埋 めてい る」(読売新聞,1989.4.20)状況 と して いる。 ここで 「市 内」, 「市外」収 益 は,現行の料金体系が通話 目的別 に定め られていることか ら市 内通話料及び 市外通話料を基準に して,また, 「市 内」, 「市外」費用 は, これ ら料金 に対 応す る費用を市 内通話 と市外通話の設備使用量 (通話時間,通話回数)によ り 配賦 して算定 している。 例えば,市内通話及 び市外通話の双方 とも市内交換機 を経 由 してサー ビスが提供 されるため,実際に市内交換機が市内通話 と市外通 話 に使用 された量 に応 じてその費用が配賦 され ることにな る。 すなわち,NT
Tの区分概念 は,通話が発信か ら受信で完結 し,通話料 もどこに (いっ)電話 をす るかで定め られているのに着 目す るもの といえる。
会計情報 と公益事業規制‑NTTの組織再編成問題を例にして1 209 表 3 昭和62年度の電話収支状況(NTT) 単位 :億 円
役務 の細 目 営 業 収 入 営 業 費 用 営 業 利 益 恥基入 本電 話料 9,244 ll,056
▼
1,812市 内 通 話 7,958 8,711
▼
752市 外 通 話 ̲ 21,834 ll,262 10,571
そ の 他 3,263 2,655
▼
209公 衆 電 話 2,107 2,655
▼
548自 動 車 電 話 531 411 119
そ の 他 の
移 動 体 電 話 129 143
▼
14ここで,▼は赤字を示す。 出典 :読売新 聞 (1989.4.20)
このNTTの考えに対 して,郵政省,NCCの批判 は 「市内通話収入に市外 通話 の足回 り部分が導入 されていない」 (日経 コ ミュニ ュケ‑ シ ョン,1989.
7.24),つ ま り,「市外通話の うち発信,着信両側で使 う市 内回線,いわゆ る
「足回 り部分」の収入 と支 出を市内通話 に繰 り入れていない」 (読売新 聞,1989. 4.20)とす るものである。 市外通話 も市 内網 を使用 しているのであるか ら, この市内網使用対価 は市内通話収入 に算入す る必要があるとい う見解である。
したが って, この見解 を とる場合 には,収入 については,市外通話収入か ら市 内網の使用対価 たる 「足回 り」収入 は除かれ,反対 に市 内通話の収入 に加算 さ れるが,一方で費用 については,市外通話で も負担 していた市 内網の使用費用 が 「足回 り」費用 として市外通話の費用か ら除かれ,反対 に市内通話 の費用 に 加算 され ることにな る (郵政省の区分概念 は,網単位)0
両者の見解を対比す ると,市内通話 と市外通話をどのよ うに分 けるか とい う 点での差であ って, この結果が収支 に大 き く影響す るとは考え られないと思わ れ るか も知れない。 しか し,いずれの方法 とも費用,収益の配賦計算を伴 うこ
とか らこの配賦方法 にによ り結果 は大 きく変わ って くるのである。
すなわち,R :収益,C :固有 (直接)費用,F :市 内 ・市外共通費用, yl:市 内通話量,y2:市外通話量,h :市 内網の市 内通話 に対す
る配賦係数, L :市 内通話, D :市外通話
f:共通費用の市内通話 に対す る配賦係数 とす ると, NTT方式で は
<市 内通話 > 収益 RL‑RL(yl)
費用 CL‑ h (yl+y2,y2) C1(yl+y2)
+f(yl+y2,y2)・F
<市外通話 > 収益 RD‑RD(y2)
費用 CD‑C2 (y2)+(1‑f(yl+y2,y2))F
(1)
+(1‑h(yl+y2,y2)) C1(yl+y2) (4) 一方,郵政省方式で は
<市 内通話 > 収益 RL‑RL(yl)+k・y2
費用 CL‑C1(yl+y2)+f(yl+y2,y2) F
<市外通話 > 収益 RD‑RD(y2)‑k・y2
費用 CD‑C 2(y 2)+(1‑f(yl+y2,y2))F
uI3㈲Lm㈱
ここでk:「足回 り」の単位収入 (料金)
上記 の各式か らわか るよ うに,いずれ も配賦 によるバイアス (仮定)の要素 は2個 (NTTでは fとh,郵政ではkと f)であ り,会計情報 としては理論 的に同程度 の信頼性 を与 え ると いえ るO しか し, f, hとい う配賦係数 は費用 構造 に密接 に関連す るものであ り,直接サー ビスを提供 している事業者 た るN TT側 に情報が偏在 していて (いわゆ る情報 の非対称性)ため,郵政省側 とし てその検証を行 うの は困難である。 この点で郵政省 は費用の配賦係数が fのみ であ り,市 内網部分 にかか る 「足回 り」̲料金kは市外通話料金 の内訳 と して定 め られていない ことか ら,その計算環境 はNTTと同一条件 とな る (NTTが 情報優位 にな るのは 1個)方法を選択 しよ うとした と考え られ るのであ る。
(2)番号案内サー ビス
もう一つの見解 の差 は番号案 内 (104)サー ビスに関 してで あ る。番号案 内
会計情報 と公益事業規制‑ NTTの組織再編成問題を例 に して‑ 211 は当時無料で提供 されていたサー ビスであ ったため,問題 は費用をいかに配賦 すべ きか とい うことである。前 出の読売新 聞によれば,NTTは 「電話番号案 内の‑‑赤字二千 四百億 円は,郵政省が求 めてい る市 内,市外通話 の収入比率 に応 じた配分ではな く,市内 と市外の通話量 (時間)の比率 に応 じて,千 四百 億 円を市 内,八百億 円を市外,二百億 円を公衆電話 の各通話分 に割 り振 った」
のである。両者 の論理 は同 じく前 出の 日経 コ ミュニ ュケ‑ シ ョンによれば,N
TTが 「104で市 内番号 を聞いた利用者 はその後で電話 をか け,市外番号 を聞 いた利用者 は市外 に電話 をす る」か ら 「市 内外 の通信量比がその まま104関連 コス トの比 とな る」 とい うもので あ るの に対 し,郵政省 は 「104は通話収入 の 販売促進費 とい う位置づ けであ り, ‑‑‑その結果である収入比で配分す る方が 的確 だ とい う」。 もちろん, この算定方法選択の背景 には104の費用が 巨額であ ることか ら市 内収支 に大 き く影響す る事が あげ られ る。 郵政方式で104費用 を 市内 ・市外通話 に配分す ると,NTTの通話 目的別 の収支計算を前提 に して も 市 内通話 の費用 と して配賦 されていた千 四百億 円は六百億 円9)に低下 し,八 百億 円の費用低減 とな って七百五十億 円の赤字を埋 めて黒字 に転換す るか らで あ る。 この対立点 は会計論理か らいえば,(1)で述べた共通費用の配賦係数 fと
して何 を採用すべ きか とい うことにな る。配賦係数 と して一般 に考 え られ るの は,配賦先の各部門の固有費用,共通費用 にかか る設備 ・サー ビスの使用量,醍 賦先の各部門の収益などであるが,NTT方式 は2番 目の使用量基準,郵政省方 式は最後の収益基準を採用 しているとみな してよい。 このよ うにどの配賦基準を とるかで評価が大 きく異なって くるため,会計情報に窓意性が介入す る誘因は避 け られないのであ り,市内外収支の区分 において郵政省方式が費用の配賦係数を 少な くす る選択を していることは情報評価の理論か らは評価 して良い (もっとも 足回 り料金の推計計算 とい う不確実性 も同時に発生するが) ものであろ う。
(3)「対立」か ら 「調整」へ
しか し,両者の対立 は郵政省,NCCの対応を受 け,当時のNTT社長が 「今 9)2,200億×7,958/(7,958+21,834)‑587‑ 約600
回は中間報告的な もので絶対 というものではない。郵政省 と調整 して六月にも (足回 りな どを計上 して) 出 し直す」 (前 出読売新 聞) と報 じられたよ うに
「調整」段階に移行す るのである。最初の市内外収支の区分については,郵政 省方式が中継サー ビス市場におけるNCCとの公正競争条件確保の点で有用で あることを認めたのである。 そ して,その後 は網別区分計算を所与 とした枠内 で,NCCとの比較を合理的に行 うため足回 り料金の算定 はどうすべ きか とい
う 「調整」的な議論 になる。
すなわち,足回 りの単位収入kの算定方法であり,NTTがNCCに対す る 相互接続料金 に基づ くべ きだ とす るのに対 し,郵政省 はNTTの市内料金相当 の10円/ 3分を使用すべ きとす るものである。 NTT方式 は相互接続料金がN TT市内網のほかNTT市外網の一部 (TS‑TTS‑IGS‑POI)を使用す る対 価であることか ら,NTTの市外通話にかかる市内網使用対価の足回 り料金 と
しては相互接続料金の市内網部分であるとす る。 一方,郵政省方式は市内網の みを使用する市内通話料金が10円/ 3分であるのであるか ら,市外通話の市内 網使用対価 も同額 とす るべ きとす る。 ここには 「公正競争」に対す る認識の差 が現れているが, この点 は後述す るとして も,kとしてNTT方式は明 らかに 郵政方式よりも低額 となることか ら,前節の式(5)で求め られる市内収益 は郵政 方式よりも少な くなる (市内収支にマイナスの影響)点に留意が必要である。
もう一つの対立点であった104サー ビスについては従来の両者の考え方 と全 く異なった方向,つま り,市内外収支 に配賦す るのではな く独立のサー ビスと す る方法で調整が図 られることとなった。配賦 に伴 うバイアスを回避す る点で は会計処理 として 「前進」か もしれない。 しか し,実態 は当時104サー ビスが 無料であったため,独立項 目にす ると有料化を目標 としていると言われる恐れ が あった情勢が有料化の方針をその後公表 した10)ことか ら変化 し,両者の思 惑が一致す るようになったのも影響 している (有料化の妥当性の証明になる)
と思われ る。
10)1990年12月か ら視覚障害者等を除 き1番号案 内につ き30円 とな った。
会計情報と公益事業規制‑ NTTの組織再編成問題を例にして‑ 213 以上のよ うに,両者 は結果 において 「調整」が順調 になされた ことにな って いるが, これは決 して会計理論 における 「合意」の結果で はない と思われ るの である。む しろ,会計情報 自身が会計理論を越えて調整を可能 とす る機能を果 た した と考え るべ きなのである。 すなわち,NTTは配賦基準,通話状況など について郵政省 よりも豊富な情報を有 しているため,郵政省方式によった場合 の市内外収支等の会計情報を正確 に測定,評価で きる位置 にある。 このため, 組織再編成問題 につ き重要な要素になる市 内収支が赤字 とい う結果が得 られ る のであれば,組織の維持 とい う大 きな目的のため 「戦略的譲歩」をす るのでは ないか と考え られ るのである。実際の ところ,NTTが郵政省方式で算定 し, 発表 した1988(昭和63)年度及 び1989(平成元)年度 の市 内外収支の結果 (表 4 参照)か ら先 の1987(昭和62)年度 の市 内外収支 を郵政省方式 によ った もの
として推計計算す る11)と,表 5に示す通 り市内通話及 び市外通話 とも 「黒字」
(但 し市内通話 に基本料及び番号案内が含 まれていない) とい う結果 になるの であ る。1989(平成元)年 4月の時点で は決算数値が確定 してお らず,1988 年度 の決算数値,通話状況 の詳細 なデータに基づ く計算 は不可能で あ ったた
め,NTT側 と して,分割 につなが る1987年度市 内収支が 「黒字」 とな る郵 政省方式を承認 した くなか った ことは想像 に難 くないであろう。 しか し,88年 度の決算数値 な どを利用で きるよ うにな った時点(89年 7月以降)において は,
当然郵政省方式を採用 した場合の市 内外収支の結果を試算 し,88年度の市内収 支が 「赤字」 となることを確認で きた と考え られ るか ら,NTTが郵政省方式 に従 って 「協調」す ることはある意味で 自然な過程であるとみなせ るのである
(電気通信事業会計規則の改正 までの経緯を示 した表 6参照)0
ll)市内及び市外の網コス トの比を1988及び1989年度役務別損益計算か ら求めると両 年度とも市内75:市外25となることか ら,この比率でNTT公表の1987年度の市 内及び市外通話収益から104費用配分額2,200億円を控除した額を配付 して費用を, また,収益は電気通信役務通信量等報告 (開示情報の一種で日経コミュニケーショ
ンにも掲載されているもの)に基づき推計 した。なお,日経コミュニケーションの 市内通話と市外通話の収益推計値は,それぞれ14,174億円,15,618億円である。
表4 1988及び1989年度の加入電話の役務別収支 (単位 :億 円)
1988 1989
営業収益 営業費用 営業利益 営業収益 営業費用 営業利益 基 本 料 9,600 ll,700 ▼ 2,100 10,100 ll,700 ▼ 1,600 市内通話 13,700 14,100
▼
400 14,500 14,600▼
100市外通話 16,300 4,700 ll,600 15,300 4,800 10,500
荏 :百億 単位 で数字 が丸 めて あ る。▼ は赤字 を示 す。
出典 :NEWSRELEASE (NTT広報部)
表5 1987年度の郵政省方式 による加入電話の役務別収支推計 営 業 収 益 営 業 費 用 営 業 利 益 基 本 料 9,200 ll,000 ▼ 1,800 市内通話 14,200‑14,700 13,350 850‑ 1,350 市外通話 15,100‑15,600 4,450 10,650‑ll,150
表6 市内外収支をめ ぐる経緯 1988.12. NTT「サー ビス別原価計算研究会」設置
89.4.19 NTT上記研究会中間答 申に基づ く1987年度電話役務別損益公表 (通話 目的によるセグメン ト会計)
4.20 経済企画庁「規制緩和の経済理論研究会」提言 (情報開示の拡充, 事業別料金制の導入など)
10.2 電気通信審議会中間答申 (NTTの組織非効率を電力会社等 と比 較 して分析)
11.10 NTT上記研究会第2回中間答申 (足回り収支の算定方法の検討) 90.1 NTT公正市場対策室設置
1.20 郵政省網基準による市内外収支算定方法の提示
会計情報 と公益事業規制‑ NTTの組織再編成問題を例 に して‑ 215
3.2 電気通信審議会答 申 (NTTの長距離 (市外)部門 と市内部門に分 離等を提言)
3.8 NTT郵政省基準 に基づ く1988年度 の電話役務別収支を発表 (市 内部門400億 円の赤字)
3.9 電気通信事業会計規則の一部改正公布 (郵政省基準 による電話役 務損益明細表の作成義務づ け)
3.30 郵政省NTT法付則第2条 に基づ き講ず る措置発表 (5年後 に再 検討す ることに し,組織再編成 は見送 る。事業部制の徹底等)
(4)対立点をめ ぐる考察
市内外通話の区分及 び番号案内サー ビスの費用配賦のいずれ も,会計理論 と してはセグメ ン ト会計 にかか る問題である。NTTの電話役務損益計算 はまさ にこのセ グメ ン ト会計か らのアプローチであった。 この ことは,NTTが設置 した研究会 に 「サー ビス別」 とい う表現が用い られていることか ら明 らかであ る。そ して,サー ビス別 に収支を明 らかにす る (開示す る) と考えれば,当時 既 に定め られていた国際会計基準委員会 (IASC)の 「セ グメ ン ト別財務情報 の報告」 12)で述べ られてい るよ うに 「セ グメ ン ト情報 は, これ らのセ グメ ン
トが独立 した事業体 と考え られた り,異な る企業の類似の名称 によるセグメ ン ト間の比較が当然 に有意義になるとい う印象を与えることを意図 しているもの ではない」 。 したが って,セ グメ ン トは通話 目的に対応 した市 内 ・市外通話の 区分 とな り,中継サー ビス とい う同一のサー ビスを提供 しているNCCとの比 較を 目的 とした網区分が採用 されなか ったのは当然 といえ る。セグメ ン ト会計 は,多角化に伴 う企業活動の全貌を投資家が評価す るのに資す る会計情報開示
として生 まれた経緯があるか らである13)0
しか しなが ら,NTTは1企業であると同時に公益事業である電気通信市場 の巨大企業であ り,特 に市 内網,加入者網 については事実上独 占 している。郵 政省の論理 とは,NTTの この独 占性及び競争状態 となった中継サー ビスにお 12)IASC (1981)。同様の主 旨のものとしてFASB (1976)0
13)情報開示側の企業実務者の見解 も企業間比較 に否定的である。石 田 (1990)参照。
ける圧倒的な シェアに着 目した規制の論理である。規制 は,市場における競争 状況 に応 じてなされ るものであるか ら,競争が実際に行われている中継網部分 とそれ以下の市 内網,加入者網の部分 に区分す ることは妥当な ことである。独 占と寡 占では規制政策 も異なるものであるか らである。郵政省側が市 内外収支 (電話役務損益)の基本 目的をNCCとの比較可能性 においたのは,中継サー ビスが公正競争市場 になっているかを監視す るためである。 この点で,NTT は電気通信市場の 自由化を受 け企業性を第一 に考え,市内外収支 も開示情報の 拡大 とみな したことは企業の論理 としては究めて 自然であるが, 自らの独 占性 の認識 まで十分気が回 らなか ったきらいがある (は じめて経験す るNCCとの 競争環境 とい う同情 され る側面 はあるものの)。
したが って,両者の対立 は,市内外収支をNTTが企業 (エ ンティティ)の 観点か らの情報開示 と考えたのに対 し,郵政省 は規制の観点か ら被規制企業か ら規制当局‑の報告 と考えた点 にある。 組織再編成 との関連で は,エ ンティテ ィの観点には一つの報告主体の,規制の観点 には競争環境の差 による主体の分 離が認め られ るが,形式 として はNTTが会計理論か ら政策の合理性 (分離 は 市内料金の値上 げにつなが る恐れか ら困難で,統一組織を維持す る)を導 こう とした 14)のに対 し,郵政省 は政策 (規制)か ら会計処理,理論 の方 向を兄 い だそ うとした と言え る。
その結果 は,網単位の区分計算が省令の会計規則 とされ る事で,企業の会計 理論が規制の論理 に挫折 した と言え るが,NTTは市内網部分の赤字を示 した ことにより株式の暴落 とい うアクシデ ン トに も助 け られ,組織再編成を5年後 に再検討す る事で分割を回避 した ともいえ るのである。 もっとも,現状の規制 政策下では網単位で区分す る方法で も市内収支が赤字 となることは,次に示す 簡単な経済分析で示 され るように避 け られないことであ り,その ことが今後の 組織再編成及び料金政策の検討課題 なのである。
すなわち,現行の中継サー ビスは競争状態 とい うものの,料金 は自由に設定 14)この ことは,原価計算研究会の構成が会計学関係7名,経済学関係2名 とい う点 に
如実 に現れている。
会計情報 と公益事業規制一NTTの組織再編成問題 を例 に して1 217 で きる状況で はな く,古城誠氏が述べ るよ うに 「NCCの対NTT 2割安の料 金 もコス トを反映 した もの とはいえない」(前 出 日経 コ ミュニ ュケー シ ョン) 状況 にある。 したが って,NTTは加入者網及び市 内網 については総括原価主 義に基づ く料金規制を受 けるが,市外網については,ある通話区間にかか るN CCの市外通話料金 (中継区分)をPeとす ると,PN‑Pe+A (A> 0)と 設定す ると考え られ るか ら,以下の制約条件下で企業の論理 に従 って利益 口を 最大化す るとみな して良 い。すなわち,具体的には前 出の式をN CCとの中継 サー ビスにおける競争状態を考慮 し,(1)市外通話量y2をNTT分y3とNCC 分yeに分離 し修正 し,また,(2)加入者網 にかか る収益R O及 びC Oは,いず れ も電話サー ビスの基底 とな るもので,通話量の多寡によ らず (現行サー ビス 約款参照)加入契約者数の関数 とみな してよいか ら,その収支 (R O‑C0) は以下の限界分析か ら除外 し, さ らに,(3)計算の簡略化のため市内 ・外通話料 金を通話量 によ ってのみ規定 され る(距離,時間帯 によ らない)と仮定す る (市 内単位料金‑ PL,市外単位料金‑ PN,Pe)と
n‑Rl(yl)+R2(y2ト Pe(y2‑y3ト tF+C1(yl+y2)+C2(y3))⇒ max Rl(yl)+R2(y2)‑tPe(y2‑y3)+(Pe+A)y3)≦f(yl+y2,y3)F+C1(yl十y2) ここで,fl‑∂f/∂yl>0,f3‑∂f/∂y3<0と仮定 してよいか ら
H‑Rl(yl)+R2(y2ト Pe(y2‑y3ト tF+C1(yl+y2)+C2(y3))十人(ど(yl+y2,y3)F 十C1(yl+y2)‑Rl(yl)‑R2(y2)十Pe・y2+A ・y3) (A :ラ グ ラ ン ジ ェ係 数) とす ると,極大化条件 よ り
∂H/∂yl‑RlL Cll+吊 fl・F+Cll‑Rll)‑0
∴ Rl1‑Cllニース/(ト ス)・rl・F<0
∴ Rll‑PL<CllU.・rl>0,0<1<1)15' (1)
aH/ays‑Pe‑C23+A(f3・F+A)‑0
・‑・ Pe‑C2311tf3・F+A)
∴ PN‑Pe十A‑C23+A一入(r3・F十A)
‑C23‑A・f3・F+(1‑A)A>C23 (2) (●.■f3<0,0<A<1,A,F>0)
この ことは,現状の規制環境下で はNTTが利潤最大化行動を とる限 り,市 内料金水準 は市 内網の限界費用 よ り低 く, また,市外料金 (中継網対応)水準 は市外網の限界費用 よりも高 くす る,すなわち,市外網部門の黒字で市内網及 び加入者網部門通話の赤字を埋 める (市外か ら市内,基本料への内部補助) と い う構造 は続 くことを示 してお り,先の郵政省方式の市 内外収支の結果 (表4 参照) とも一致す る。
5.今後の課題
市内外収支の会計情報がNTTの組織再編成問題 にどのよ うな役割を果た し たかについて考察 して きたが,会計情報の政策イ ンパ ク トを分析す るな らば説 明理論の視点 に留 ま らず, 自らの政策的立場を明確 にす るべ きではないか と言 う批判を受 けるか もしれない。 しか し,電気通信技術の急速な進展を勘案す る と, この問題 につ き具体的な政策提言を行 うことよ りも,その動向を見 きわめ ることの方が重要のように思われ るのである。すなわち,加入者網の光 ファイ バー化が21世紀の初頭 までに進め られ ることにな ってお り, この場合 には現在 電話サー ビスコス トの約 %である加入者網の コス トが約 %に もな り,市 内料金 と市外料金の格差 は事実上解消 して市内,市外の区分 は余 り意味を持たな くな るか らである。 したが って,現在の技術水準を前提 に した規制の論理で市 内 と 市外に分割することの是非は, こうした長期的観点か ら検討される必要があろう。
最後 に現行の制度 に限定 した問題点を示 してお こう。 第一 は,電気通信事業 会計規則の電話役務損益明細表 における市内通話収益 に加算 されている足回 り 収入の計算方法である。すなわち,隣接区間及 び20kmまでの通話距離区間で は 15) NTTの市内網サー ビス,市外綱サー ビス及び共通部分 における非効率な資源使用 をそれぞれu1,u 2及びuFとお くと,n ‑Rl(yl)+R2(y2)‑Pe(y2‑y3)‑(F+
C1(yl+y2)+C2(y3)+ul+u2+uF),制約条件 はRl(yl)+R2(y2)‑(Pe(y2‑y3) +Pe+a)y3)≦f(+y2,y3)(F+uF)+C1(yl十y2)+ul.いま,H‑(yl)+R2(y2)‑
Pe(y2‑y3)‑tF+C1(yl+y2,y3)+C2(y3)+ul+u2+uF)+A(f(yl+y2,y3)・
(F+uF)+C1(yl+y2)+u1‑Rl(yl)‑R2(y2)+Pe(y2‑y3)+(Pe+A)y3)と して,Hの極大化条件により求められる。なお,この証明にはRonaldR.Braeutigam andJohnC.Panzer(1989)を参照 した。
会計情報 と公益事業規制I NTTの組織再編成問題を例 に して‑ 219 通話料金が20円/ 3分であるため,市外通話であるにもかかわ らずその収入 は すべて市内網利用対価 (lo門/ 3分 *2)とみなされる (市外網 コス トを負担 しない) と言 う難点がある。第二 は,今回の論議で余 り取 り上げ られなか った 基本料収支の赤字問題である。中継サー ビスの公正競争の観点か ら綱 とサー ビ
スとの関係を整理す ると表7のよ うにな り,現行の赤字 はNTTの市内収支の 赤字を含め七NTTの市外利用者の負担 となっているのである。 この ことは, NCCの中継サー ビスとNTTの中継 (市外)サー ビスが基本料に関 しては同 等の条件 となっていないことを示 している。 したが って,NCCに対す るNT T側の ID化,P0I設置の遅滞解消 と言 った事業運営面での公正競争整備の 他,NTT市内部門の加入者網,市内網 とNTT市外部門及びNCC中継網 と の相互接続について適正な 「足回 り」料金 (アクセスチャージ)を課す ことが 事業部制の徹底 と同時に望まれ るのである。すなわち,適正な区分計算には料 金制度の見直 し16),接続条件の公開が必要 といえる。第三 は,電話役務損益 というセグメン ト会計情報 はだれに対す る情報か とい うことの再検討である。
規制の論理か らは今回の郵政省令方式による開示 は意味があるが,NTTは民 営化 された株式公開企業で もある。利害関係者には規制当局のはか,利用者, 株主及び投資家がいるのであるか ら,それぞれのニーズに適合 したものは何か (例えば利用者の観点か らは,基本料,市内,市外の3区分よりも市内通話 と 市外通話の 目的別区分 に して コス トと収益を対応づ けた ものが考え られ る) を,会計の もう一つの機能であるアカウンタ ビリティの観点 と合わせて考える 必要があろう。 なお,最近 にな り,郵政省 は近距離料金制度の改革 (値下げ) 案を,また,NTTは県内一律料金制度の検討をそれぞれ開始 したと伝え られ ている (日本経済新聞1991.4.15)が,その背後にはNTTの組織再編成が絡 んでいると思われ,今後 とも会計情報 と規制政策の関連について関心を持 って 取 り組んでい く必要がある。最後 に,本稿で取 り上げた資料は全て公開されて いるものか,マスコミ発表の ものに限定 している。現在では 「NTTステーショ 16)料金制度の見直 しには,市内と市外 に区分 した料金体系が望 まれ る。