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「無 煙 炭 仮 説 」に つ い て 辻 原

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(1)

「 無 煙 炭 仮 説 」に つ い て

辻 原 五ロ

1開 題 H論 争 の 経 過

、 ω チ ャ ソ ド ラ ー の 主 張 (2)ウ ィ ソ ペ ニ ー の 批 判

③ チ ャ ソ ド ラ ー の 再 批 判 IH結

1.開 題

本 稿 は 米 国 の 工 業 化(industrializatio喚)に 関 して 「無 煙 炭 仮 説 」 と 称 さ れ る 論 争 の 紹 介 を し,そ れ に つ い て 若 干 の 検 討 を 行 な う。こ の 論 争 は,現 在 ハ ー バ ー

ド大 学 経 営 大 学 院 で 経 営 史 を 担 当 す る チ ャ ソ ド ラ ー(AlfredD.Chandler,Jr.) 教 授 と エ リ ザ ベ ス タ ウ ソ ・ カ レ ッ ジ の ウ ィ ン ペ ニ ー(ThomasR.Winpenny)

教 授 の 両 者 に よ っ て 論 争 さ れ て い る 問 題 で あ る。

論 争 の 発 端 は チ ャ ソ ドラ ー がr経 営 史 評 論 』(B%s∫ πθss研s'oη1〜 θ"∫6ω)の 1972年 夏 季 号 に 「無 煙 炭 と 米 国 の 産 業 革 命 の 始 ま り(AnthraciteCoalandthe

BeginningsoftheIndustrlalRevolutionintheUnitedStates)1)」 と題 す る 論 稿 を 発 表 し て,米 国 の 産 業 革 命 の 端 緒 に と っ て 重 大 な 要 因 ほ1830年 代 に な っ て 大 規 模 の 無 煙 炭 が 採 掘 さ れ る よ う に な っ た た め で あ る と 主 張 し た こ と に 始 ま る 。 こ れ に 対 し ウ ィ ン ペ ニ ー は 同 誌 の1979年 夏 季 号 に 「無 煙 炭 に 関 す る 確 か な デ ー タ:チ ャ ン ドラ ー の 無 煙 炭 仮 説 の 反 省(HardDataonHardCoa1:Re且ecdons

原 稿 受 領 日1982年1月18日

1)AlfredD.Chandler,Jr.,"AnthraciteCoalandtheBeginningsoftheIndustrial

RevolutionintheUnitedStates,"β πs初 θss研 ε'07yRθ 擁 伽,Vol.XLVI,No.

〔23〕

(2)

onChandler'sAnthraciteThesis)2)」 と い う論 稿 を 載 せ て,チ ャ ン ド ラ ー の 無 煙 炭 説 へ の 反 対 の 論 陣 を 張 っ た 。 そ れ は 更 に 同 誌 同 号 に チ ャ ソ ド ラ ー の 「返 答 (aReply)3)」 とい う形 で 展 開 し,一 応 こ の 件 に つ い て は 結 着 が つ げ られ た か の よ うに 見 え る 。 しか し な が ら19世 紀 の ア メ リカ の 産 業 革 命 の 開 始 時 期 に つ い て の 多 くの 示 唆 に 富 む 議 論 が こ の 論 争 に お い て は 展 開 さ れ て い る の で,こ の 論 争 を フ ォ ロ ー し て み る こ と も あ な が ち 無 意 味 で は な い だ ろ う。 した が っ て 本 稿 は 主 ど し て 撫 煙 炭 仮 説 」 に つ い て 上 記3編 ¢輪 文 に 依 拠 し て 何 が 問 題 で あ り, そ れ が ど の よ うな 主 張 と 批 判 ・再 批 判 を 生 み だ し て い る の か と と い う こ と の 紹 介 と 若 干 の 吟 味 を 行 う。

II.論 争 の 経 過 (1)チ ャ ソ ドラー の 主 張

まず 最 初 に チ ャ ソ ドラ ー の 主 張 を み よ う。 彼 に よれ ば,工 場 制 度(factory) は19世 紀 の主 業 化 の 過 程 に と って重 要 で あ る こ とは ほ と ん どす べ て の 経 済 史 家 の認 め る と こ ろ で あ る の に,米 国 で は この 基 本 的 な経 済 制 度 が どの よ うに, な ぜ,そ して い つ 発 展 した の か とい うこ とに つ い て の 関 心 は 稀 薄 で あ った とす る4)。

こ こか らチ ャ ン ドラー の疑 問 とす る い くつ か の問 題 点 が 浮 か び あ が る 。 そ の 問 題 点 とは

① 英 国 の 製造 業 で は18世 紀 の 末 まで に重 要 とな って いた 工 場 制 度 が,米 国 で は 繊 維 産 業 は 別 と して1840年 代 ま で主 要 な 生産 形 態 に な らなか っ た の は 何 故 か?

② 初 期 の 繊 維 工 場 は1840年 代 及 び そ の後 に建 設 され た 工 場 と なぜ い ろ い

2,Summer1972=以 下 文 献 ① と 略 称 。

2)ThomasRWinpenny,"HardDataonHardCoal:Re且ectionso阜Chandler's 'A

nthraciteThesis,"Bπ3伽 召s31万5'α ッRθ 加 伽,Vo1.LIII,No.2Summer1979.

以 下 文 献 ② と 略 称 。, 噛3)AlfredD

.Chandler,Jr.,"AReply,',β%s勿 θ3sHfs'o竃yR9麗 θω,Vol,LIII,No.

2,Summer1979.以 下 文 献 ③ と 略 称 。

4)文 献 ①,PP.141‑142,

5)文 南犬(D,p.142.

(3)

「無 煙 炭 仮説 」 に つ い て 25

う な 点 で 異 な って い る の か?

③1840年 代 以 前 に於 て 米 国 では なぜ 蒸 気 力 が あ ま り使 用 され な か っ た の か?

④1840年 代 ま で は な に ゆ え ほ とん どす べ て の金 属 製 品(鋤,釘,ポ ッ ト, なべ 等)が 工 場 で大 量 に 生 産 され な い で,小 さ な作 業 場,鋳 物 場,製 造 所 で つ く られ て い た の か?

⑤ 互 換 性 部 品 の製 造 と組 立 に よる財 貨 生 産 の技 術 は19世 紀 初 蜘 こは 既 に 知 られ て い た の に,米 国 の鉄 生 産 者 の 生 産 量 は1840年 代 まで は な ぜ 小 さ か った の か?,ま た 石 炭 を燃 料 と して 使 用 せ ず,木 炭 や 木 材 を使 用 して鉄 を生 産 す る旧 来 の方 法 に 執 着 した の は な ぜ か?

以 上 の よ うな 疑 問 点 を 提 示 してそ れ らの 問 題 点 に 解 答 を 与 え よ う と した の で あ る。

そ こ で これ らの問 題 点 に 答 を 出す 前 に1840年 代 以 前 の 米 国 の製 造 業 の 様 態 を 概 観 的 に 見 て お こ う。 そ れ を知 る上 で 最 も有 益 な資 料 が1832年,時 の 財 務 長 官 ル イ ス ・マ ッ ク レー ソ(LouisMcLane)に よ って 実 施 され た 米 国 製 造 工 業 の 調 査 報 告 書 で あ る 「マ ッ ク レー ン報 告 書6)」 で あ る。これ に よれ ば1830年 代 初 頭 の 米 国 の 製 造 業 の状 態 が 明瞭 に な るo

い ま表1,表2か ら明 らか に な る こ とは,1830年 代 初 頭 の 米 国 の 製 造 業 の な 表1資 産10万 ドル以 上 の企 業

業 業 他

企 企 の 維 鋼

繊 鉄 そ

88社 12社 6社

合 計 「 ・ ・6社

出 所:文 献 ①,p.143よ り作 成 。

表2250人 以 上 の労 働 者 を 雇 って い る企 業

繊 維 企 業

そ の 他

3i社 5社

合 計 36社

出 所:交 ①,p.143よ り作 成 。

6)マ ッ ク レー ソ報 告 書 は 米 国 の 北 東 部10州 の 地 域 の 製 造 業 に つ い て カ パ ー し て い る に

す ぎ な い が,こ の 地 域 は'185q年 に な っ て も全 米 の 製 造 業 の75%が 集 中 し て い る た め,

当 時 の 様 子 を 知 る に は 十 分 で あ ろ う。(文 献 ①,p.144.)な お マ ヅ ク レー ン 報 告 に つ

い て はChandler,丁 加y,舘 ∂ZθE伽4」7,加 ルZσπσ8i召7,αZRθ"o,魏 勿%ゴ%、4御 θ 擁cσπ

β%3伽6∬,HarvardUniv.Pr.,1977,p.60貰.鳥 羽 欽 一 郎 ・小 林 袈 裟 治 訳 『経 営 者

の 時 代(上)』 東 洋 経 済 新 報 社,昭 和54年,109頁 以 下 参 照 。

(4)

か で 大 規 模 で 非 個 人 的(impersona1)な 工 場 は ほ とん ど繊維 産 業 に 集 中 し て い る とい うこ とで あ る。この 傾 向 は仮 りに 資 産 規 模 を5万 ドル 以 上10万 ドル 未 満 の 企 業,お よび 労 働 者 雇 用 数50人 以 上250人 未 満 の 企 業 に つ い て 調 べ て み て も 同様 で あ る7)。した が って 当 時 の 大規 模 で 非 個 人 的 な 工 場 が 支 配 的 な 生 産 形 態 で あ った 産 業 は 繊 維 産 業 だ け で あ った 。更 に重 要 な こ とは,当 時 の 工 場 は 動 力 と して も っぱ ら水 力 に依 存 して い た とい うこ とで あ る。 これ に つ い て は5万 ド ル 以 上 の資 本 総 額 を もつ249社 の うちわ ず か に4社 だ け が 蒸 気 力 を 動 力 と して 使 用 して い るに す ぎ な い と報 告 して い る8)。繊 維 産 業 以 外 の製 造 業 に つ い て み て み て も1830年 代 初 頭 の 米 国 の製 造 業 の 特 徴 は,第 一 に 米 国産 の鉄 は 木 炭 に よ っ て生 産 され,ニ ュ ー ・イ ン グ ラ ン ド地 域 の 当 時 の 工 業 地 帯 は鉄 の 供 給 を ヨー ロ ッパ に 依 存 して い た こ と。 この こ ど は ア メ リカ製 鉄 業 の技 術 の 後進 性 を反 映 す る もの で あ った(多 くはironplantation)。 第 二 に 金 属 製 の機 械 を使 用 せ ず, 動 力 源 と して の蒸 気 力 も使 用 しな か っ た9)。 か く して 国 内 の鉄 生 産 と蒸 気 力 の 使 用 が 英 国 に比 して 遅 れ た こ とか ら マ ッ ク レ ー ン報 告 書 に あ る よ うに 繊 維 を除

くあ らゆ る産 業 に お い て工 場 制度 に よ る生 産 形 態 の 普 及 が 遅 れ た の で あ るo そ れ で は, ,蒸気 力 発 生 の技 術 並 び に 繊 維 以 外 の 他 の産 業 で の 工 場 生 産 お よび 近 代 的 な鉄 製 造 方 法 の遅 れ とい った 基 本 的 な 技 術 の 採 用 が 米 国 に お い て は なぜ これ ほ どま で に 遅 れ,そ してそ の 後1830年 代 末 か ら40年 代 に か け て な ぜ 急 速 に 普 及 した の だ ろ うか 。

事 実,英 国 で は す で に 工 場 生 産 形 態 は普 及 して い た し,米 国 人 もそ れ を賞 讃 して いた 。 しか も工 場生 産 に 見 合 う米 国 で の 需 要 は 既 に存 在 して い た し,英 国 の 工 場 で 生 産 さ れ た 製 品 が そ の需 要 を み た して い た 。 更 に は人 口の 増 大 及 び 西 7)作 業 場 と設 備 に5万 ドル 以 上 投 資 し,50人 以 上 の労 働 老を 有 す る企 業 は,こ れ を近 代

的 な 工 場(modernfactory)と み な し て 差 し 支 え な い と チ ャ ソ ド ラ ー は い う。(文 献

①,P.144.)

8)但 し 石 炭 の 産 地 で あ る ピ ヅ ツ バ ー グ 地 域 に つ い て は,5万 ドル 以 上 の 資 産 を 有 す る 企 業 は 全 て 動 力 源 と し て 蒸 気 を 利 用 し て い た 。 そ の 内 訳 は 右 の 表 の 如 くで あ る 。

9)文 献 ①,PP.147‑148.

5万 ドル 以 上 の資 産 を有 す る企 業 (ピ ヅツ バ ー グ1830年)

繊 維4社

鉄 ・ 鋼5社

蒸 気 機 関 製作 所1社

ガ ラ ス エ 場1社 ̲

出所:文 献①,p.145よ り作 成 。

(5)

「無 煙 炭仮 説 」 に つ い て 27

部 へ の 移 動 拡 大 す る国 土 に 合 わ せ て1815年 以 降 商 人 な らび に 輸 送 業 者 に よ る 輸 送,流 通 ネ ヅ トワ ー ク もつ く りあ げ られ て い た10)ので あ るか ら繊 維 製 品 を 除

い て,な ぜ 米 国 人 は1840年 代 まで 大 規 模 な工 場生 産 に よ っ て,こ の需 要 を み た そ う と しな か った の で あ ろ うか 。

そ の理 由 と しては ① 技術,② 資 本 調 達 可 能 性,③ 政 府 の 活 動 と い った3つ の 要 因 が 考 え られ る。 しか しこれ らの各 要 因 に は1830年 代 中 頃 に 於 い て は っ き りと した変 化 は 生 じて い ず,そ の た め いず れ も1840年 代 に お け る 米 国 で の 鉄 製 造 の 革 命,蒸 気 力 の急 速 な 利 用 及 び 多 くの産 業 に おけ る工 場 の 急 速 な普 及 を 説

明 す る要 因 と して は 不 十 分 だ と して チ ャ ン ドラ ーは 斥 け たn)。

た とえ ぽ技 術上 で は1828年 に 銑 鉄 生 産 の た め に 無 煙 炭 を 利 用 す る 熱 風 炉12) の 技 術 や 当時 の 最 大 の 技術 革 新 の担 い手 と して の鉄 道 の イ ソパ ク トは 遠 く1850 年 代 に な って 明 確 に な る とい う具 合 で,こ の こ とだ け で は 製 鉄 業 に お け る 工 場 の 台 頭 さ え説 明 不 可 能 で あ る。 ま た,資 本 の 調 達 可 能 性 に つ い て み る と,英 国 か らの投 資 は1830年 代 初 頭 に 増 加 した が こ の投 資 の 多 くは 運 河 や 鉄 道 に まわ り,1837年 の 鉄 や 蒸 気 力 を 基 盤 に して 始 ま る工 場 製 度 の 拡 大 直 前 に は す で に 英 国 か らの投 資 は停 止 して い た 。 した が って資 金 調 達 の可 能性 が な か っ た こ とが 米 国 で の製 造 業 の 発 展 の 制 約 に な った と理 解 す る こ とは で き な い。 更 に 政 府 の 対 外 貿 易 政 策 と して の 国 内産 業 保 護 の た め の関 税 政 策 は1842年 〜1846年 の4 年 間 有 効 に機 能 した だ け で,米 国 経済 に 於 て工 場 が 普 及 し,製 造 部 門 が 急 速 に 拡

大 した のは 低 関 税 の時 代 で あ っ た。 した が って 政 府 の活 動 の 国 内産 業 保 護 育 成 策 の 諸 施 策 が 工 場 制 度 の普 及 を もた ら した要 因 だ と解 す る こ とは で き な い13)。

以 上 の 要 因 に か わ っ て チ ャ ン ドラ ーが 提 出 した 要 因が 石 炭 で あ り,そ れ は 1830年 初 頭 のPittsburgh地 域 を見 て み る こ とに よ っ て 明確 に な る とす る14)。

10)文 献 ①,P.149..

11)文 献 ①,P.150.

12)熱 風 炉 は ジ エ ー ム ズ ・ネ イ ル ソ ン に よ っ て 発 明 さ れ た 。(北 川 勝 彦 稿 「 産 業 革 命 一 工 業 化 の 開 始 」 荒 井 政 治 ・内 田 星 美 ・鳥 羽 欽 一 郎 編 『産 業 革 命 の 展 開 』 有 斐 閣,昭 和56 年 所 収,12頁 。)

13)文 南尽ユ),p.150.

14)文 献 ①,p.15α

(6)

こ の 地 域 は1830年 に は 大 量 の涯 青 炭 を 有 しそ れ が工 業 用,家 庭 用 に 十 分 に 供 給 さ れ て い た 唯 一 の 場 所 で あ る 。 しか し,こ の歴 青 炭 もア レゲ ニ ー山 脈 を 越 え て 東 部 地 域 へ 出荷 され るに は輸 送 コス トが 高 く,本 格 的 に 輸 送 が 開 始 され る のは 1853年 の ペ ン ジル バ ニ ア鉄 道 が 完 成 した 後 で あ る粉 。

この た め 米 国製 造 業 の 集 中 地 域 で あ る ブ イ ラデ ル フ ィア及 び そ の他 の海 岸 諸 都 市 は1820年 代 末 ま で リ ッチ モ γ ド近 くのJamesRiver沿 い の涯 青 炭 か 英 国 及 び ノバ ス コシ ア炭 に 依 存 して いた 。

と こ ろ が1820年 代 末 か ら30年 代 初 頭 に か け て 米 国 の 東 部 地 域 は 国 内炭 の 供 給 源 を獲 得 した 。 これ が東 部 ペ ソ ジル バ ニ アの 大 無 煙 炭 田 で あ った16)。無 煙 炭

図1米 国の石炭消費に しめるバージニア炭,輸 入炭及び 無煙炭の割合(1821年 一1842年)マ

%60

一 一一 バ ー ジ ニ ア 炭

一 輸 入 炭

噛一 一一 無 煙 炭

\!ノ 、!

,へ

18212223242526272829303132333435.3637383ヨ40411842 (年) 出 所:文 献 ①,p.154..

15)文 献 ①,PP,150‑151.

16)文 献 ①,p,151.こ の 時 期 ま で 無 煙 炭 の 開 発 が 遅 れ た 理 由 は チ ャ ソ ドラ ー に よ る と二 つ あ る 。 一 つ は,ピ ヅ ツパ ー グ 炭 や バ ー ジ ニ ア炭 の よ うに 河 川 沿 い に は な く比 較 的 接 近 の 困 難 な 山 岳 地 帯 に あ っ た こ と 。 第 二 に,無 煙 炭 は 新 タ イ プ の 石 炭 で あ り,ア メ リ

カ 人 に も ヨ ー μ ッ パ 人 に も 未 知 の 構 造 と 燃 焼 特 性 を も ち,点 火 しに く い と い う特 徴 を

も っ て い た た め,無 煙 炭 へ の 関 心 が 薄 か っ た 。(文 献 ①,pp.151‑152.)

(7)

「無 煙 炭 仮説 」 に つ い て 29

表3ペ ン シル バ ニ ア無 煙 炭 生 産 量(単 位:10⑪0ト ソ) 年 度

1819年

以 前

溜 講 器 欝 穰 溜 懸 器 欝 畿 ㎜ 綴 儲 盤 瓢 醐

合 計

海岸への輸送1警蹉 の消費 陣 生齢

増 減

i

%

,4 1.0 2.2.

5,8 9.5 33.7 48.1 61,6 77.4 110.4 173.7 176.8 368.8 485.5 376.6 56α8 684。1 862.4 725.7 797.9 841.6 942.3 1,076.6 1.240.7 1596.4

975。11 284.72 814.92 3027.7

164.73

﹄ 渇 2 9 7 ' 2 ユ 潟 ' 7 ︒ 6 あ 3 ︒ 9 渇 4 8 2 8 6 8 3 6 6 7 9 2 3 3 7 3 0 1 蝿 1 2 2 3 4 4 6 9 憂 35 53 器 盤 撚 溝 畿 農 講 颯 鍛 欝

18.0 2.0 3.3 4.9 9.0 13.6 38.5 54.8 71.2 91.9 133.2 209.6 230.3 448.2 592.2 456.9 678.5 825.7 1,0392

873.0 957.4 1008.2

12ZO1 286.61 478.91 899.71 344.42 707.32 32723 572.73 724.83

1

3 7 1 6 9 3 4 7 3 4 7 9 0 4 7 2 5 2 4 8 8 6 3 8 7 9 8 5 1

LL44 79622482949619579073829545993

鎗 豊 望 窒 盤 9%鑑 盆 藷 9臥猛 詮 錐 塗 7 4

出所:文 献①,P,155.

地 域 接 近 の輸 送 方 法 の改 善 と市 場 の 開 拓 に よ って 無 煙 炭 の 利 用 が す す め られ た

が,こ の こ とに 貢献 した のは 無 煙 炭 田 の所 有者 で あ り,彼 らは 積 極 的 に 技 術 的 ・

(8)

企 業 家 的 精 力 と技 能 を 傾 注 した17)。 この 結 果 や が て 無 煙 炭 は コス ト面 で,木 炭 や 涯 青 炭 よ り も安 い し,手 が か か らな い とい うこ とが 明 らか に な るに つ れ て18), そ の 有 効 性 は 大 い に 増 大 した 。

た だ 無 煙 炭 が 広 範 に 使 用 され る に は,輸 送 コ ス トの点 で 問 題 が あ っ た。 そ の た め1820年 代 の 後 半 に は 無 煙 炭 地 域 と海 岸 諸 都 市 とを 結 ぶ3つ の 運 河 が 完 成 し19),1830年 代 のは じめ に は 無 煙 炭 が 大 規 模 に 出 荷 され る よ うに な った 。

今,図1を み る と,1825年 に 無 煙 炭 消 費 量 が 輸 入 炭 を は じ め て 上 回 っ た こ と が 判 る し,1829年 に はJamesRiver沿 い の バ ー ジ ニ ア 炭 を も上 回 っ た こ とが 判 る 。 ま た 表3よ り1832年 に はLeh量ghValley運 河 の 大 規 模 拡 張 工 事 と DelawareandHudson運 河 の 完 全 利 用 に よ り,前 年 度17万7千 トン の 海 岸 地 方 へ の 出 荷 額 を2倍 以 上 凌 駕 し,36万9千 トソに 達 した こ と も判 る。

5年 後 の1837年 に は86万2千 トソに達 し20),ア レゲ ニ ー 山脈 以東 の 諸 州 で の 消 費 量 の 大 部 分 を無 煙 炭 が 占 め て い る こ とが 図1よ り判 る。

因 み に,無 煙 炭 地 域 か ら海 岸 諸 都 市 へ の無 煙 炭 の 出 荷 額 は 年 を 追 うご とに 着 実 に 増 加 し,表4よ り明 らか な よ う に 無 煙 炭 消 費 の 割 合 が1830年 代 初 頭 に 著 し く伸 張 して い る こ とが 判 る。

表4全 石炭に占める無煙炭消費の割合

1822年 1826 1833 1839 1842

2,5%

29.5 65.2 75.5 86.5

出 所:文 献 ①,p,154.よ り作 成 。

17)文 献 ①,ppl151‑152.

18)た と え ば 無 煙 炭 は1ト ン が7.50ド ル か ら8.00ド ル で,お よ そ200ブ ッシ ェ ル の 木 炭 (1ブ ッ シ エ ル6セ ソ トか ら8セ ソ ト)の 仕 事 量 と 同 じ仕 事 を した し,バ ー ジ ニ ア 炭

よ り も50%の 節 約 が で き る と す る 圧 延 工 場 主 も い た 。(丈 献 ①,pp.152‑153.) 19)1825年theLehighValley運 河(MauchChunkE"ston間)及 研theSchuylkill

運 河(Reading‑Ph1ladelphia問)。

1829年Lehigh運 河 の 完 成

theDelawareandHudson運 河

1832年theLehighValley運 河 の 大 規 模 改 良 工 事 と DelawareandHudson運 河 の 完 成 利 用 (文 献 ①,PP.153‑154.)

20)チ ャ シ ド ラ ー は1837年 に3つ の 運 河 を 利 用 し て 海 岸 地 方 に 出 荷 さ れ た 量 は88万1千

トソ と し て い る が 表3か ら は そ れ が よ み とれ な い の で,チ ャ ソ ドラ ー 自 身 が 提 供 し た

表3か ら の 数 字 を あ げ る 。 な お 文 献 ① のp.154の 本 文 中 に 引 用 さ れ て い る 数 値 は 彼

自 身 の 提 供 した デ ー タ と か な り異 な っ て い る が,こ こ で は そ れ を 逐 一 指 摘 し な い 。

(9)

「無 煙 炭仮 説 」 に つ い て 3ヱ

表5フ ィ'ラデ ル フ ィア に お け る 無 煙 炭1ト ン 当 り の 価 格(1829年 一1852年) (一 単位:ド ル)

剰 ・月1・ 耳1・ 月1・ 月i・ 月1・ 月1・ 月1・ 月1・ 月i・・ 月1・・帥2月1平 均

0884η00917918%2090805062

764466554543333333333

2505oooo635625%oo3650oo50

7 4 4 α 8 , a 5 5 5 5 ︑ a a a 3 4 3 3︒ a 4 3 ︒ 3 ︒

057 03Booooo66356oo2956

4 4, ε 7 . a 5. 5. 5 a a a & a 4 a a a 4 a a

50=90500900009563%%888869%20567544466554533333333433

75ー88800︑00066565625265996954625︑756554466554533333333433

売 = 肪 併 68 P oo 娼 oo 63 四 60 ゐ 盟 必 % お 56 組 蛎 05 50

5 5 4 . 4 6. 6 , 5 5 4 5 a a a a a a 3 ︑ 3, a 3 a

575 2587635010130013%︑3006988%00

54456554533334333333

2587635038︑30063︑788250363298600

554456554533333333333

75=2587603850160000690325008760376210

5 ︒ 5 4 4 5 6 5 5 5 5 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3

売 = 50 訂 56 闘 鴨 肪 oo oo 跳 銘 25 02 訂 融 組 翼 62 級 訂 興

554466555543333343333

﹁ 00 = 00 87 56 別 04 羽 00 00 岨 06 石 卿 η a 腸 妬 ω 56 如

a6447855565333333333

=0056910000005633%81903650B6447855575333333343

}5670%β0000406350%81903650B

7447865565333333343

901234567890123456789,012233333333334444444444555888888888888888888888888111111111111111111111111

出所:文 献 ①,p.157,

フ ィ ラ デ ル フ ィ ア で の 無 煙 炭1ト ン 当 り の 価 格 も表5か ら,1836年 か ら1837 年 の イ ン フ レ時 期 を 除 い て トン 当 り1829の 年7.50ド ル か ら1850年 の3,00ド

ル 近 くに ま で 低 下 して い っ て い る の が 判 る 。

か く して チ ャ ソ ドラ ー は1830年 か ら50年 に い た る 時 期 に 於 て は 無 煙 炭 は ど の 代 替 燃 料 よ り も 安 く入 手 す る こ と が 可 能 と な り,こ の こ と は 無 煙 炭 の 生 産 量 の 増 加 と相 ま っ て 米 国 北 東 部 へ の 一 貫 し た 供 給 源 と し て 機 能 す る よ うに な っ た と主 張 し た21)。

21)文 献 ①,p.156.

(10)

ア レゲ ニ ー 山脈 以東 の当 時 の工 業 中心 地 域 に 大 量 の無 煙 炭 が 供 給 可 能 とな っ た こ とで最 も直 接 的 な 影響 を 受 け た のが 鉄 加 工業 で あ る。 そ こで は 錬 鉄 を 再 加 熱 して 針 金 や 釘 を つ く る加 工業 者 に い ち早 く使 用 され るや,そ れ は 銑 鉄 か ら錬 鉄 へ の 加 工 プ ロセ スや 鉄 鉱 石 か ら銑 鉄 を 生 産 す る プ ロセ ス に も無煙 炭 が 大 量 に 利 用 され る よ うに な り22),北 東 部 の 工 業 地 帯 に高 級 な 国 産 鉄 を,大 量 で しか も 低 価 格 で 供 給 す る こ とが 可 能 とな った23)6

そ の た め まず 鉄 加 工,鉄 製 造 の分 野 に 工 場 が 出現 し,紙 ガ ラ ス,製 パ ン, 製 糖,ビ ール 醸 造 業 とい った 製 造 プ ロセ ス で 無 煙 炭 が 燃 料 と して 利 用 さ れ る産 業 に も工 場 が 出現 した 。 また 熱 を あ ま り使 わ ない が,水 力 源 を 立 地 条 件 と して い た 繊 維 産 業 に も無 煙 炭 で 蒸 気 力 を 発 生 させ る こ とに よ って,産 出 高 の増 大 や 新 しい 立 地 に於 て 工 場 制 度 が 普 及 した の で あ る。 こ う して製 鉄,鉄 加 工,繊 維, ガ ラス,製 糸,精 製,蒸 留 工 程 を含 む 工 業 化 過 程 に最 も中 心 的 な 産 業 に お い て, 無 煙 炭 の 利 用 が 可 能 に な る に つ れ,工 場 制 度 が 出 現 し しか もこれ らの 工 場 が 米 国 の最 も工 業 化 の進 ん だ 地 域 の大 き な 都 市 や 町 に 立 地 す る こ とが 可 能 とな った の で あ る24)。

更 に 無 煙 炭 の 利 用 可 能 性,国 産 鉄 の大 量 供給 な らび に蒸 気 力 の利 用 とい った こ とは 米 国経 済 全 体 に も大 な る影 響 を もた ら した 。 経 済 学 者 の 主 張 す る と ころ に よれ ば1839年 〜1849年 の10年 間 は 国 民総 生 産 に 占 め る製 造 部 門 の 割 合 は 17%か ら30%に 上 昇 し,19世 紀 で は最 大 の 伸 び を 示 した と述 べ て い る25)。

最 後 に チ ャ ソ ドラ ー の無 煙 炭 仮 説 を 要 約 的 に示 す と以 下 の如 くで あ る。

多 くの 産 業 に お け る工 場 の急 速 な 拡 大 が 米 国 に お け る産 業 社 会 の 到 来 を 告 げ

22)文 献 ①,pp.159‑161.こ う し た プ ロ セ ス へ の 無 煙 炭 利 用 に 積 極 的 な 貢 献 を な し た 人 々 は 製 鉄 業 者 で な く,炭 鉱 経 営 者 で あ っ た こ と は 注 目に 値 す る 。(文 献 ①,p.162.)

な お,鉄 の 製 法 に つ い て の 概 観 は 山 地 八 郎 『 世 界 の 鉄 』 全 国 出 版,昭 和55年,第1 章 参 照 の こ と 。'

23)文 献 ① 交 献,P,164.

24)文 献 ①,PP.165‑173.

25)文 献 ①,p.175.ピ ー タ ー ・テ ミ ソ に よ れ ば 実 質 年 率 総 生 産 の 伸 び は1800年 か ら1855

年 に か け て は4.2%,1855‑1905年 は3.9%1905‑1927年 は3.3%,そ し て1927‑1967

年 は3,2%で あ る と 述 べ て い る 。(cf,PeterTemin,C砺sσJEαo'073伽.4〃zθ ノゴ6催

Eooπo煽oG70痂 ん 勿 漉81V吻'6θ 〃漉0θ 窺%ノ ッ,MacmillanPr.,1975,p.17.)

(11)

「無煙 炭 仮 説 」 に つ いて 33

る もの とす れ ぽ,そ の初 期 の成 長 は1820年 代 末 か ら1830年 代 初 頭 に か け て ペ ソ シル バ ニ ア炭 田 が 開 発 され た こ とに よ っ て促 進 され た の で あ る。1815年 以 降 の西 部 へ の急 速 な 人 口の 移動26),農 業 経 済 に サ ー ビ スを 提 供 す る商 業 中 心 地 の 成 長,な らび に効 果 的 な販 売 ・輸 送 ネ ッ トワー クの 建設 とい った 大 規 模 な 需 要 に 対 して,米 国 の 製 造 業 老 の側 が工 場 制 度 で も って そ の需 要 に対 応 す る こ とが で き なか った の は,1830年 代 の初 頭 まで 無 煙 炭 の 市 場 性 に 着 目 し,大 量 に 提 供 す るた め に 必 要 な輸 送 ル ー トを 建 設 し,新 しい 利 用 技 術 を 開 発 す る こ とが 欠 如 して い た こ と,そ の た め に 輸 入 品に 比 して コ ス ト高 に 陥 って い た た め で あ る。

しか しな が らひ とた び 無煙 炭 を 利 用 して蒸 気 力 を 発 生 さ せ,国 産 鉄 の製 造 の た め の 熱 風 炉 法 の技 術 を 利用 し安 価 な鉄 を 大 量 に 供 給 す る こ とが 可 能 に な る や 輸 入 品 に 対 抗 す る こ とが で き る よ うに な った 。

(2)ウ ィ ンペ ニ ー の批 判

以 上 の よ うな チ ャ ソ ドラ ーの 主 張 に 対 しエ リザ ベ ス タ ウ ン ・カ レ ッジ の ウ ィ ソペ ニー教 授 が 批 判 を こ こ ろみ た。 そ の 批 判 は,チ ャ ソ ドラー の仮 説 は 米 国に お け る工 場 制 度 の 普 及 の遅 れ た原 因 が 無 煙 炭 の コス ト高 に あ った と理 解 して い るが,こ の 議 論 は 次 の 二 点 に お い て十 分 で は な い と主 張 す る。 す なわ ち 当 時 の 無 煙 炭 の代 替 燃 料 と して の 涯 青 炭 の役 割 が 十 分 に 議 論 され て い な い と い う こ と,第 二 に 仮 りに 燃 料 コス トが 産 業 の成 長 を 促 進 す る ボ トル ・ネ ッ クで あ った 26)人 口の 西 部 へ の移 動 に つ い ては,ニ エ ミの デ ー タに よれ ぽ 次 の通 りで あ る。

1800年 〜1860年 の西 部 へ の人 口 の移 動(全 人 口比)

地 域 1800 1830 1860

NewEngland MiddleAtlantic EastNorthCentral WestNorthCentrai SouthAtlantic

EastSouthCentral WestSouthCentral Mountain Pac三 丘c

23.2%

26,4 1.0 43.1 6.3

ユ5.2%

27,9 11.4 1.1 28.4

14.1 1,9

10.0%

23.6 22.0 6.9 17.1 12.8 5.6 0.6 1.4

'出 所:AblertW

,Niemi,Jr.,ひSEco初 漉c研3'07y,2

nded.,RandMcNallyPublishingCo.,1980,p.98.

(12)

と す る な ら ば,ど の 程 度 そ うで あ っ た の か を 明 らか に す る 必 要 が あ る と い う も の で あ っ た 。

こ の た め ウ ィ ン ペ ニ ー は 特 定 地 域 の 個 別 企 業 の コ ス トと の 関 連 で 燃 料 コ ス ト の 程 度(割 合)を 考 察 し よ う と し た 。 彼 が 選 択 し た 場 所 は フ ィ ラ デ ル フ ィ ア か

ら お よ そ60マ イ ル 西 方 に 位 置 す る ラ ン カ ス タ ー(Lancaster)と い う,は や く か ら高 度 の 産 業 伝 統 を 有 し て い た 町 で あ る 。 しか も こ の 町 へ の 出 入 の 輸 送 手 段

表6ラ ン カ ス タ ー 製 造 業 の 燃 料 消 費(1850年)

無 煙 炭(3.57ド ル/ト ソ)澄 青 炭(4.34ド ル/ト ソ)

姦社 産 業 消費 量(ト ン)

1(2mills)CottonGoods 4Founders&Machin.

1Forge&Furnace 3Brewers 2Printers&Pubiish.

1Ri且eManufacturer lSawMill 2Distillers 5Confectioners lBaker 2Tinsmiths lBlacksm三th lHatter 垢

2,600 309.5 300

65 64 50 50 46 35 17 14 11 4 3,565,5

木 炭(L96ド ル/ト ソ)

姦社 産 業 消 費 量(ト ン)

1GasCompany124苦 8Blacksmiths65 '1L

astTurner40 3CoachMakers33.94 1EdgeToolMan.32.14 1CombMfg.28.57 1Tinsmithl4.29 1Coppersmith10.71 1JackScrewMn.5.36 1SaddleTre3Man.3.57 1Gunsmith1,79 頭

会社 産 業

(459)

359・37(694・ 篁 ≧ 1

消 費量(ト ン)

1Forge&Furnace lBrassFounder 万

2,857.14 14.29 2,871.43

木 材(3136ド ル/コ ー ド)

会社 産 業

消 費 量(コ ー ド)

5Brickmakers 3Potters 10Bakers

2Chandlers lPretzelMaker gButchers 2Cistillers lBrewer lHatter 2Saddlers 2Confectioners 盈

2,010 206 172 53 50 45 33 25 24 20 一 2,647 柴 ガ ス会 社 は14週 間 しか 操 業 して いな い の で124ト ソ しか 消 費 してい な い が ,仮 りに

1年 間操 業 した とす れ ば459ト ンに な る こ とを 示 す 。 文献 ②,p.250.

(13)

「無煙 炭 仮 説 」に つ い て 35

も は や くか ら整 備 さ れ て い た27)。

1840年 に は 人 ロ8,400人 で あ っ た が,既 に1816年 に は 最 初 の 無 煙 炭 が こ の 地 域 に 到 達 し て い る し,1829年 に はConestogaNavigationSystelnを 経 由 レ て ラ ソ カ ス タ ー に 無 煙 炭 が 到 着 し て い る 。 ま た ニ ュ ー ・イ ン グ ラ.ン ド地 域 の 工 場 の 規 模 に 匹 敵 す る ほ ど の3つ の 紡 績 工 場 が 存 在 し て い た28)。

そ れ で は ま ず ラ ン カ ス タ ー の 製 造 業 の 燃 料 消 費 の 状 況 を み て み よ う。 表6は 1850年 の こ の 町 の 燃 料 消 費 を 示 す も の だ が,こ こ か らい く つ か の 点 が 明 らか に な る が 当 面 重 要 な 点 だ け の 指 摘 に と ど め る 。

① 無 煙 炭 が 消 費 量 で は 代 表 的 な 燃 料 で あ り,涯 青 炭 は 木 材,木 炭 に 次 ぐ第 4位 の 燃 料 で しか な いo

② 無 煙 炭 に つ い て は 紡 績 工 場 と鉄 鋼 メ ー カ ー が そ の92%を 使 用 し て い る 。 次 に1850年 の 無 煙 炭 と 涯 青 炭 の 比 較 を す る と,① トソ 当 り のBTUs29)(英 国 式 熱 単 位)は 涯 青 炭 の 方 が 無 煙 炭 よ り多 い 。 ② し か し価 格 も澄 青 炭 の 方 が 無 煙 炭 よ り も 高 い 。

こ の た め ドル 当 りBTUsを 比 べ て み る と,無 煙 炭 が7,116,010BTUs1ド ル に 対 し,涯 青 炭 は6,060,537BTUs/ド ル と な り,無 煙 炭 の 方 が1ド ル 当 り約17

%有 利 で あ る こ と が 判 る30)。 こ の こ と は 工 場 制 度 普 及 の ボ トル ネ ッ ク を 除 去 可 能 で あ る よ う に み え る 。 こ の コ ス トの 有 利 性 の 考 え 方 を 具 体 的 な 工 場 の 分 析 に 適 用 す べ くConestogaSteamMllls(紡 績 エ 場3D)の デ ー タ が ウ ィ ン ペ ニ ー に

よ っ て 提 供 さ れ た 。 そ れ が 表7で あ る 。

こ の 表 に よ れ ば,こ の 工 場 で の 無 煙 炭 の 使 用 量 は2,600ト ン で 平 均 トン 当 り 3.40ド ル で あ る の で8,840ド ル 必 要 で あ り,素 価 に 占 め る 割 合 は3.42%で あ る 。 こ れ に 対 し て 無 煙 炭 の 代 替 燃 料 と して の 涯 青 炭 を 使 用 す る と す れ ぽ,無 煙 炭2,600ト ンに 匹 敵 す る 熱 量(BTUs)を 発 生 さ せ る に は2,521ト ン で す む が,

27)文 献 ②,PP。247‑248.

28)文 献②,P.248,

29)1ポ ソ ドの水 を華 氏1度 だ け 暖 め る のに 必 要 な熱 量 の こ とを い う。

30)文 献②,PP.250‑251.

31)こ の 工場 は,無 煙 炭 利 用 の蒸 気 力 を 使 用す る紡 績 工 場 で ラ ソ カス タ ー製 造業 の付 加価

値 の18%を 生 産 し,労 働 力 の23%を 雇 用 す る大 規模 工 場 で あ る。(文 献 ②,p.251.)

(14)

表7ConestogaSteamMi118の 素 価 情 報(1850年)

綿 花 労務費 無煙炭 その他の材料

1,621,500ポ ン ド(平 均1ポ ソ ド10,5セ ソ ト)

2,600ト ソ (平 均1ト ン3.40ド ル)

素 価

素 価 に 占 め る無煙 炭 費用 の割 合(%)

(歴 青 炭に 代 替 す る と2,521ト ソ必 要,燃 料 コス トは10,343ド ル に な り,素 価 は260,253ド ル とな る。)

素価 に 占 め る歴 青炭 費用 の割 合(%)

170,244ド ノレ

76,440 8,840 3,226 258,750 3.42

3.97 出 所;文 献 ②,p.251.よ り作 成 。 必 要 で な い と 思 わ れ る 部 分 は 一 部 省 略 した 。

ト ン 当 り4.10ド ル な の で 燃 料 が10,343ド ル と な り,素 価 に 占 め る 割 合 は3,97

%と な る 。 但 し,涯 青 炭 の 需 要 量 が 増 大 す る と,ト ソ 当 り価 格 が 上 昇 す る と 考 え られ る の で32),5.00ド ル/ト ン と し て 計 算 を す る.と燃 料 費 は12,605ド ル(5×

2521)と な り,素 価 は262,515ド ル で,燃 料 費 の 素 価 に 対 す る 割 合 は4.80%と な る 。

涯 青 炭 の 価 格 を4.10ド ル/ト ン で 計 算 して も5.00ド ル/ト ン で 計 算 を し た と し て も,せ い ぜ い 素 価 に 占 め る 上 昇 分 は0.55%か ら1。38%の 間 で し か な い 。 こ の こ と は 無 煙 炭 を 工 場 レ ベ ル で 使 用 す る こ と に よ っ て 得 ら れ る コ ス ト節 約 分 は そ れ ほ ど大 き な もの で は な い と い う こ と を 示 し て お り,無 煙 炭 の 利 用 可 能 性 が1840年 代 の 米 国 で の 工 場 制 度 の 台 頭 を 促 す 重 大 な 要 因 で あ っ た と 考 え る こ

と は で き な い と ウ ィ ン ペ ニ ー は 主 張 した33)。

次 に 今1850年 で 行 っ た 同 じ 手 続 き で1860年 に つ い て も み て み よ う。 声8は 1860年 の ラ ン カ ス タ ー の 製 造 業 の 燃 料 消 費 の 状 態 を 示 して い る 。

こ の 表 か ら 次 の よ う な こ と が 明 ら か に な る 。

①1850年 よ り1860年 の 方 が ラ ソ カ ス タ ー の 産 業 に お い て は 無 煙 炭 が 決 定 32)こ の ウ ィソペ ニ ーの 考 え方 に は 問 題 が あ る。 む しろ 個 別企 業 が大 量 購 入 す るこ とに よ

って 価 格 が下 が る とみ る方 が 妥 当 では な い だ ろ うか 。 なぜ な らConestogaSteam Millsは 当時 の ラ ンカ ス ター の 無 煙 炭平 均 価 格 よ りも安 く購 入 して い る の で あ る か

ら。 こ の点 に つ い ては 次 節 の 結 で 検討 す る。

33)文 献 ②,PP.251‑252.

(15)

「無 煙 炭 仮説 」 に つ い て 37

表8ラ ン カ ス タ ー 製 造 業 の 燃 料 消 費(1860年)

無 煙 炭(3.45ド ル/ト ソ)歴 青 炭(4.66ド ル/ト ソ)

蕪 産 業

消 費 量(ト ン)

3CottonGoods 6Brickmakers 4Founders&Mach, 1FlourMan, 1CombManufact.

3'Printers&Pub, 1Brewery 3Confectioners ユTanner 23

6,916 830 290 220 120 82 60 54 ユ5

癩 師1

会社 産 業

消 費量(ト ソ)

1GasCompany 4Founders&Mach.

1Miller lSash&DoorMan.

5Blacksmiths ユCoachsmith 13

疑 木 炭

'1 ,000 388.57 100

50 35.35

5.38 1,579,38

消費 量(・ ・)1

木 材(3.28ド ル/コ ー ド)

鍵 産 業 (コ ー ド)

5Brickmakers lPotteセ 1Bakers lConfectioner .ユCoachsmith

9

142 50 25 12 10 239 (注)1860年 の 木 炭 消 費 に つ い ては 明 らか では な い 。また 工 場 の 一 時停 止 か資 料 収 集 者 の

見過 ご しに よ ってGeiger工 場 の無 煙 炭 使用 量 が 欠如 して い るが 年7,000ト ソは 使 用 した もの と思わ れ る。

出所:文 献 ②,・p.252よ り一 部 省 略 して掲 載 。 的 な 役 割 を は た し て い る 。

② 紡 績 業,鉄 鋼 メ ー カ ー が94%の 無 煙 炭 を 使 用 し て い る3の。

1860年 の ラ ソ カ ス タ ー価 格 に 基 づ い て1ド ル 当 りBTUsを 計 算 し て み る と,無 煙 炭=7,351,779BTUs/ド ル に 対 し,濯i青 炭=5,613,506BTUs!ド ル と な り,こ ん ど は 無 煙 炭 は31%の 得 に な る こ とが 判 る35)。 こ の 考 え 方 を 具 体 的 にConestogaSteamMi】1s36)に 適 用 す る と表9が 得 られ る 。

こ の 表 に よれ ば,1860年 に こ の 工 場 は1ト ン 当 り3.34ド ル の 無 煙 炭 を6,916 トソ 使 用 し,燃 料 費 総 額 は23,099ド ル で あ り,素 価 に 占 め る 割 合 は4.13%に な る 。 今,こ の 無 煙 炭 を 澄 青 炭 で 代 替 す る と6,749ト ソ で す む が,ト ン 当 り

34)文 献 ②,P.252.

35)文 献 ②,P,253.

36)1860年 の こ の 工 場 は,3つ の 工 場 か らな り,ラ ソ・ カ ス タ ー 製 造 業 の 付 加 価 値 の34%,

労 働 力 の39%を 雇 用 し て い た 。(文 献 ②,p.253.)

(16)

表9ConestogaSteamMillsの 素 価 情 報(1860年)

綿 花 労 務費 無煙炭 その他 の材料

2,707,381ポ ソ ド(平 均1ポ ソ ド13,2セ ン ト)

6,916ト ソ (平 均1ト ソ3.34ド ル)

素 価 陶

素 価 に 占め る無 煙 炭 費用 の割 合(%)

(歴青 炭 に 代 替 す る と,6,749ト ソ必 要,燃 料 コス トは30,260ド ル に な り,素 価 は566,299ド ル とな る。)

素 価 に 占め る涯 青炭 費 用 の 割 合(%)

357,290ド ノレ

138,984 23,099 39,764

559,173ド ノレ

4.13

5.34 出所:文 献②,p.253.よ り作 成 。 必 要 で な い と思 わ れ る部分 は 一 部 省 略 した 。 4.48ド ル と な っ て30,260ド ル の 燃 料 費 が 必 要 で あ る 。 こ の 額 は 素 価 に 対 し て 5.34%を 占 め る 。 先 述 の 手 続 き 同 様,歴 青 炭 の 需 要 が 増 大 した た め に 価 格 が ト

ソ 当 り5.00ド ル に 上 昇 す る と 考 え る と,33,745ド ル(5×6749)と な っ て 素 価 569,783ド ル に 対 し て5.92%を 占 め る こ と に な る 。

歴 青 炭 に 代 替 す る こ と に よ っ て も,素 価 に 対 す る 上 昇 分 は1.21%か ら1.79

%に す ぎ な い6こ の こ と は 無 煙 炭 を 工 場 レ ベ ル で 使 用 す る こ と に よ っ て 得 られ る コ ス ト節 約 分 は1850年 よ り若 干 改 善 さ れ る と は い え,た い し た 比 率 で は な い と い う こ と を 示 し て い る 。 した が っ て 安 価 な 石 炭(無 煙 炭)が 大 量 に 利 用 可 能 に な っ た か ら と い っ て,工 場 制 度 台 頭 の ボ トル ネ ッ ク を 除 去 す る 上 で 大 い に 寄 与 した と考 え る チ ャ ソ ド ラ ー の 仮 説 は 説 得 的 で は な い と ウ ィ ン ペ ニ ー は 主 張 す る37)。

こ う し て ウ ィ ン ペ ニ ー は チ ャ ン ドラ ー の 無 煙 炭 仮 説 に か わ る 新 し い 説 明 要 因 を 提 供 し た 。そ れ に よ れ ば,ラ ン カ ス タ ー に お い てConestogaSteamMillsと'

い う 大 規 模 な 工 場 が 栄 え た 理 由 は,① 町 の 成 長 と 繁 栄 は 第 一 級 の 紡 績 工 場 を

建 設 す る こ と に よ っ て も た ら さ れ る と 説 い たCharlesTilinghastJamesの お

か げ で あ る こ と,②JohnSteinman,Alexanden}工ayesと い っ た ロ ー カ ル な

企 業 家 の 積 極 的 な 会 社 設 立 の た め の は た ら き か け,③ 労 働 力 と し て 利 用 可 能

37)更 に,素 価 以 外 の そ の他 の コ ス ト要 因 が 明 らか に なれ ば,無 煙炭 を利 用 す る ことに よ

って得 られ る コ ス ト面 で の節 約 は 更 に減 少 す る と考 え られ るか ら,無 煙 炭 の利 用 を重

要 な要 因 と考 え る ことは で きな い と もい う。(文 献 ②,p.254.)

(17)

「無 煙炭 仮 説 」 に つい て 39

な女 性 が た くさ ん い た こ と,④ 輸 送 設 備 も十 分 に 整 って い た こ と,⑤ こ の 町 のす べ て の人 が 無 煙 炭 を利 用 す る蒸 気 パ ワー 一の潜 在 的 可 能 性 に 感 銘 して い た こ と,⑥1842年 の 保 護 関税 が 実 行 中 で あ る 問 に この 工 場 の設 立 が 企 画 さ れ た こ と,そ し て最 後 にConestogaSteamMillsは 急 激 に 拡 大 す る 国 家 の綿 花 需 要 の増 大 に 対 す る一 つ の 反 応 で もあ った とい う,こ れ ら7つ の理 由 を か か げ た38)0

最 後 に ウ ィソペ ニ ー の 結 論 的 主 張 を そ の ま ま 引用 し よ う。 「チ ャ ソ ドラ ー の 無 煙 炭 仮 説 は デ ソヵ ス タ ーに おけ る近 代 的 な 工 場 制 度 の 台 頭 を 説 明 しな い 。 無 煙 炭 の 開 発 が 工 場 制 度 普 及 の 直 前 に生 じた こ とは 事 実 だ が,両 者 の原 因 ・結 果 関 係 とい う と別 問 題 で あ る 。 とい うの は後 者(工 場 制 度 の普 及 … … 辻 原)は 無 煙 炭 が燃 料 コス トで ものす ごい 節 約 を生 み だ した の で,工 場 は こ の突 破 口に 反 応 して成 長 した とい うこ とを示 す 必 要 が あ るか らだ39)。 」 と。

(3)チ ャ ン ドラー の再 批 判

チ ャ ン ドラ ー の 主 張 を 批 判 した ウ ィ ソペ ニ ーに 対 して,更 に チ ャ ン ドラ ーに よ る再 批 判 が な され た 。 そ の要 点 は 次 の 如 くで あ る4の。

① 無 煙 炭 仮 説 は あ る特 定 の 町 の 製 造 業 の変 化 を 説 明 し よ う と した もの で は な く,大 規 模 産 業 企 業(従 業 員100人 程 度)4Dの 到 来 を 説 明 し よ うと した もの で あ る。 例 え ば ウ ィ ソペ ニ ーの 問 題 と した 紡 績 工 場 の 例 で も,ト ー タ ル ・コス トの うち で 燃 料 費 が どの 位 で あれ,石 炭 が 大 量 に利 用 可 能 に な る まで は ラ ンカ ス タ ーに も米 国 の ど の地 域 に も蒸 気 力 利 用 の 繊 維 工 場 は 建設 され な か った し,ア レゲ ニ ー 山 脈 を 往 来 す る鉄 道 が 建 設 さ れ る ま で は,そ の石 炭 とは 圧 倒 的 に 無 煙 尿 で あ った 。

② 動 力 と して の石 炭 の 利 用 よ りも重 要 な の は熱 を 使 用 す る産 業 で 燃 料 と し て 利 用 す る こ とで あ り,金 属 製 造,金 属 加 工,醸 造 ・精 製 業 へ の 影 響 が と

コ      

りわ け大 で あ った 。 そ して これ らの 産 業 の場 合 の代 替 燃 料 と して は1木 炭

38)文 献 ②,PP,254‑255.

39)文 献 ②,P.255.

40)文 献 ③,PP.255‑257.

41)文 献 ① の 定 義 と 文 献 ③ で の 定 義 は 異 な っ て い る こ と だ け 指 摘 し て お き た い 。 本 稿 注

7)の 定 義 と 比 較 参 照 の こ と 。

(18)

で あ り,木 炭 と無 煙 炭 とを 比 較 す る と コス ト上 の 便 益 は ものす ごい も ので あ っ た 。 こ の た め1854年 以 後 の 合 衆 国 の 鉄 生 産 の ほ とん どが 無 煙 炭 に よ

りつ く られ た ので あ る。

③ 石 炭,蒸 気 鉄 生 産 の 新 しい可 能 性 が 開 け た こ とに よ り,合 衆 国 の 最 も 重 要 な産 業 に 於 て 大 規 模 な 企 業 の拡 ま りを 可 能 に した とす る チ ャ ン ドラ ー の 主 張 は,ウ ィンペ ニ ー 自身 に よ っ て提 供 され た デ ー タか ら も明 らか で あ る とす る 。 例 えば1850年 の ラ ソ カス タ ー に は2つ の大 規 模 な 企 業 が 存 在 して い る が,そ れ がConestogaSteamMillsとGeigerFurnaceで あ り,い ず れ も無 煙 炭 を 利 用 して い る こ ≧が 判 る。

④ ・ ウ ィ ンペ ニ ーの 提 供 した デ 乱 タか ら澄 青 炭 が 無 煙 炭 の 代 替 物 で なか った こ とが 示 され る。 例 えぽ1850年 に は 無煙 炭 は涯 青 炭 の10倍 も多 く消 費 さ れ て い る し,1860年 に い た っ て は,ガ ス 会 社 を 除 きGeiger工 場 の 消 費量 を 加 え る と実 に30倍 もの 消 費 量 に 達 す る。

⑤ 仮 りに 涯 青 炭 が 無煙 炭 の代 替 燃 料 で あ る と主 張 す る の で あ れ ば,1850 年 に ラ ン カ ス ター は ど こか ら渥 青 炭 を確 保 して い た の か を 明 らか に す べ き で あ る 。 まだ ア レゲ ニ ー 山脈 を 越 え る鉄 道 が 完 成 して い な い ので,西 部 ペ ン シ ル バ ニ ァ炭 で は な い し,輸 入炭 で も な い こ とは 明 らか で あ る6考 え ら れ る の はMaryland炭 で あ るが1850年,1860年 の セ ソサ ス ・デ ー タが 明 らか に して い る よ うに そ の 利 用 可 能 性 は ラ ソ カス タ ー の 製 造 業 者 には あ ま り大 きな 意 義 をみ い だ せ な い。

以 上 が チ ャ ン ドラー の ウ ィ ソペ ニ ーの 反 論 に対 す る再 批 判 の要 点 で あ り,こ の こ とか ら ウ ィ ンペ ニ ー の提 出 した デ ー タで 自分 自身 の 仮 説 を 変 更す る必要 は な い と して 斥 け た 。

III.結

チ ャ ン ドラ ー に よ って 提 出 され た 「無 煙 炭 仮 説 」 は ウ ィ ンペ ニ ーの 批 判,更

に チ ャ ソ ドラ ー の再 批 判 を 生 み だ して 現 在 に 至 って い るが,本 節 で は 以 上 の議

論 を ふ ま え て 若 干 の吟 味 検 討 を 行 うこ と とす る。

(19)

「無 煙 炭 仮 説 」に つ い て 41

第 一 に,チ ャ ン ドラ ー の 仮 説 は 無 煙 炭 の 利 用 に よ っ て 最 も重 大 な 影 響 を こ う .む っ た 産 業 を 鉄 鋼 ・精 製 ・醸 造 の 各 産 業 と い っ た 工 業 化 の 基 礎 過 程 を な す 産 業 に 向 け て い る の で あ る か ら,ウ ィ ソペ ニ ー の 提 出 した 紡 績 工 場 の 例 は チ ャ ソ ド

ラ ー 仮 説 の 批 判 を す る 際 の 十 分 な 反 証 例 示 で あ る と い う こ と は で ぎ な い の で は な か ろ うか 。

第 二 に,論 争 の 経 過 を ふ り返 っ て み る と ウ ィ ン ペ ニ ー の 批 判 は 個 別 企 業 の レ ベ ル ま で そ の 分 析 を ほ り下 げ て 問 題 に は し て い る け れ ど も ,チ ャ ソ ド ラ ー の 再 批 判 に も あ っ た よ うに,無 煙 炭 の 論 理 的 な 代 替 燃 料 と し て の 涯 青 炭 の 利 用 と い

う 点 で の 議 論 は 説 得 的 で は な い よ うに 思 わ れ る 。

第 三 に,以 上 の 点 を ふ ま え て ウ ィ ン ペ ニ ー が 十 分 検 討 を しな か っ た 繊 維 産 業 以 外 の 例 を と り あ げ て み る と,幸 い な こ と に 文 献 ② の 注16にHenryLeman

の ラ イ フ ル 工 場 の コ ス トデ ー タ が 載 せ て あ る の で そ れ を 使 お う。

こ の 工 場 は1860年 に は 従 業 員62人 を 有 す る 大 規 模 な 工 場 で あ る 。 そ の コ ス トに 関 す る デ ー タ は1850年 に つ い て し か 提 供 さ れ て い な い が,そ れ は 表10の よ うに な る 。

こ の 表 よ り無 煙 炭 の 素 価 に 占 め る 割 合 はL43%で あ り,こ の 工 場 は ト ン 当 り 4.50ド ル で,す な わ ち1850年 の ラ ン カ ス タ ー の 製 造 業 の トン 当 り 無 煙 炭 平 均 購 入 価 格 の3.57ド ル を お よ そ1ド ル あ ま り高 い 価 格 で 購 入 し て い る こ と が 判 る 。こ の 意 味 は 表7よ りConestogaSteamMillsカ ミト ン 当 り3.40ド ル で2,600

トソ 使 用 し て い る こ とか ら み て,他 の 無 煙 炭 購 入 の 製 造 業 者 は 平 均 よ り高 い 価 格 で 購 入 し て い る こ と は 明 ら か で あ る 。 そ の た めHenryLemanの ラ イ フ ル

表10HenryL・emanラ イ フル 工場 の素 価 情 報(1850年)

ン ア イ う ア ゆ 噛 床 ち 金 炭 ︻ ん 煙 バ 銃 し 賃 無

50ト ソ

素 価

素価に しめる無煙炭費用 の割合(%)

4,500ド ノレ

500 750 9,792

225

15,767ド ノレ 1.43%

出 所:文 献 ②,p.253,注16よ り作 成 。 但 し 必 要 で な い と 思 わ れ る も の は 省 略 し た 。

(20)

表11代 替 燃料 を使 用 した ラ イ フ ル工 場 の 計 算 例

・ … 嚥 鰍 一・・ … の鷹 炭 で 代替 ・ ト・当 り・34ド ・ レ1… ド・ レ 素 価

素価 に しめ る歴青炭費用の割合(%)

15,752ド ノレ

1.33%

工 場 も トン当 り4。50ド ル で 購 入 す る こ とに な らざ るを 得 なか った もの と 思 わ れ る 。 小 消 費 者 が 大 量 消 費 者 よ りも割 高 な値 段 で 購 入 せ ざ るを 得 ない とい う こ

とは論 理 的 に 首 肯 し うる こ とで あ る。

そ れ で は 今 か りに,こ の ライ フル 工 場 が 無 煙 炭 に か え て,涯 青 炭 で 同等 の仕 事 をす る とす れ ば ど の よ うに な るで あ ろ うか,そ れ を示 した ものが 表11で あ

る。

こ の仮 計 算 例 に よ る と50ト ンの 無 煙 炭 の熱 量 と 同等 の 熱 量 を 涯 青 炭 で 確 保

す る に は48.5ト ン で 可 能 で あ る 。 ま た1850年 の ラ ソ カ ス タ ー 製 造 業 に 於 て 涯 青 炭 を 使 用 し て い る 企 業 は ガ ス 会 社 を 除 い て,他 の 製 造 業 で は 大 量 に 使 用 して い る メ ー カ ー は 存 在 し な い の で,お お む ね ト ン 当 り4,34ド ル で 涯 青 炭 を 調 達 す

る こ と が 可 能 とみ て 差 し支 え な か ろ う。

計 算 の 結 果 は,素 価 に 占 め る 涯 青 炭 の 割 合 は1.33%と な っ て1.43%か ら 逆 に0.1%低 下 す る こ とが 判 る 。

こ の 意 味 は 無 煙 炭 を 使 う こ と に よ っ て 得 られ る コ ス ト上 の 節 約 は 減 少 す る ど こ ろ か,逆 に1.33%か ら1.43%に 上 昇 し コ ス ト負 担 が 増 大 す る こ と を 意 味 す る 。 こ れ で は ま す ま す 無 煙 炭 を 利 用 す る 意 義 が 見 出 せ な い こ とに な ろ う。 こ の 論 理 的 矛 盾 を 解 決 す る 鍵 は,チ ャ ン ド ラ ー の い う よ うに,燃 料 や 動 力 源 と し て の 利 用 可 能 な 代 替 物 は 涯 青 炭 で は な く,水 力 や 木 材 と い っ た 旧 エ ネ ル ギ ー で あ っ た の で あ り,こ れ ら の 伝 統 的 エ ネ ル ギ ー と の 比 較 上 に お い て 無 煙 炭 の コ ス ト 上 の 節 約 を 考 え る べ ぎ で あ る と い う こ と を 意 味 し て い る42)。

事 実,ニ エ ミ(AlbertW.Niemi,Jr.)に よ っ て 表12の よ うな デ ー タ が 与 え 42)無 煙 炭 と代 替燃 料 で あ る木炭 との コ ス ト上 の比 較 に つ い て は1845年 の ス エ ー デ ソ の

専 門 家 の調 査 が あ り,東 部 ペ ン シル バ ニアで は 鉄1ト ソを 製 造 す る コス トは 木 炭 が 7,50ド ル に 対 して無 煙 炭 は3。00ド ル で すむ と述 べ て い る。(文 献 ③,p.256.)

9

(21)

「無 煙 炭仮 説 」 に つ い て 43

表12種 々 の燃 料 に よる銑 鉄 の 生 産 割 合(1855年 一1910年)

年 歴 青 炭 羅 炭1木 炭

1855 1860 1865 1870 1875 1880 1885 1890 1895 1900 1905 1910

8%

13 20 31 42 45 59 69 84 85 91 96

46%

57 52 50 40 42 32 24 14 12 7 2

47%

30 23 20 18 13 9 7 2 3 2 1 出所:AlbertW.Niemi,Jr.,oρ.cゼ'.,'p.156.

ら れ て い る 。 こ の 表 か ら は 銑 鉄 生 産 に お い て は 涯 青 炭 は む し ろ 南 北 戦 争 以 後 に お い て 増 力日し て い く こ と が 判 る し,ま た 南 北 戦 争 以 前 は,英 国 で は 燃 料 と し て 涯 青 炭 を 使 用 し て い た が,米 国 で は 木 炭 を 使 用 し て い た と ニ エ ミは 述 べ て い

る43)。

以 上 の 若 干 の 検 討 か ら,チ ャ ソ ドラ ー と ウ ィ ン ペ ニ ー の 両 者 の 間 で 論 争 さ れ て い る 問 題 に つ い て は 早 急 に 結 論 を 出 す こ と は 困 難 で あ る が,少 く と も ウ ィ ソ ペ ニ ー の 提 出 し た デ ー タ で は チ ャ ソ ド ラ ー の 無 煙 炭 仮 説 を くつ が え す 証 拠 と し て は 十 分 で は な い よ うに 思 わ れ る 。

43)AlbertW.Niemi,Jr.,ψ.cぎ'.,p.154.

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