穀類の國際取引とその貿易契約
品質條件を中心としてー‑ー
序ー國際貿易に於ける穀類取引の地位 大谷敏治
ある國の総輸出に於いて︑完製品が食料品または原料品よりも優位の割合を占め︑しかもその完製品牧支が
め受取超過である國を︑工業國と呼ぴ︑然からざる國を農業國と名づけ︑この匠域的観黙から︑世界に於ける商
わ品交通の態檬を分析すると︑次頂の如くである︒
すなはち︑一九二七‑二九年に於いて﹂世界の商品貿易の過牛を占めるものは︑工業國と農業國との間の貿
易であつて︑世界貿易全盟の六二・六%にあたり︑漱洲大職前一九一一ー=二年のそれに較べて︑比率に於い
て三・八%︑債額に於いて八四%の増加であるηいま一九二七‑二九年の年平均の貿易惰勢を基準とすると︑
この意味における工業國に属するものは︑イギリス︒ドイツ・フランス・ベルギー・オーストリア・チェッコ
毅類の國際取引とその貿易契約(大谷)三三
1) 2)
油 本 豊 吉 ・ 外 國 貿 易 政 策 第 一一ts昭 和 十 二 年 刊p.199.
DerdeutscheAussenhandelunterderEinwirkungweltwirtschaftllcherStr‑
Ukturwandlungen,bearb.u.hrsg.vom .InstitutflirWelwirtschaftundSe‑
everkeranderUniversit義tKie1(Engnete‑Ausschuss,1.Unter‑ausschussp5.
AfbeitgrupPe,20.Bd.,2.Halbbd・),BerlinIg32iこ ぷ るo
・9・・/・31・g・3レ9・51・g・2/・gl'・9・t
上欄 は偵額(夏o億M/MR)下 欄 は比率%
66.5 24・0%
173.4 62.6%
33・7
×2・2%
276.9 100・O%
66.7 25・o%
165.4 62.2・/e 3α5
u.5%
265.7 1◎0.0%
49.7 29・2%
99.9 58.8%
18.2 10・7%
170.0 1OO・O%
47・0 29・3%
94・3 58.8%
17・2 10・7%
160.3 100・0%
工業國相互間 工 業 國 と 農 業 國 問 農業國相互間
計
三四
スにヴアキア・スイス及びイタリアの欧洲諸國蛇びに日本と北米合衆國と
であるが︑この世界の三大工業中心地︑欧洲工業國︑日本及び北米合衆國
について︑夫れそれの國の輸出入のなかに農業國との貿易が占める比率を
む見ると︑一九二九年に於いては︑上表のように︑その全貿易の五〇%乃至
1
北 来
合衆國 日 本 歓 洲 工業國
轍 騨 轍脚 轍睡
農業地域貿 易の峯加割 合(%)
66 60 53 51 窮 53
六〇%にあたつてゐる︒
欧洲大職を契機として︑農業國の工業國化,奮工業國
内の農業の保護復活などによつて︑世界貿易は一つの構
り造鍵動の過程に入つたといはれ︑﹁世界経濟の崩壌﹂さへ
呼ばれたにもが︑はらす︑以上の事實は︑國際貿易の核
心をなすものが︑現在に於いても依然として工業國と農
業國との聞の商品交通であることを示す︒た壁然かしそ
の封農業國との貿易がその國の全貿易に占める割合に於
いては︑米國が輸入六六%輸掛六〇%を占めで欧洲工業國に優抄︑日本が輸入五三%輸出五一%を示して︑欧
洲工業國の輸入五七%隷出五三%といふ数字に迫つてゐる︒このことは︑欧洲大職以後に顯著なる日.米爾咽
の世界貿易へσ躍進を語るもの守あつて︑この意味に於いては世界貿易は︑﹁欧洲申心離脱傾向﹂を示九といっ̀
3)DerdeutscheAussenhande1,らa.O.1:Sる0
4)拙 稿 ・「概 観 日 濠 問 題 」 小 樽 高 等 商 業 學 校 創 立 二 十 五 周 年 記 念 論 交 集 所 載 P.623。
5)生 島廣治耶 ・世 界経濟論 昭和 九年刊P・65・
てよい︒
ところで農業國が工業國に供給する貿易商品は︑食料嶺と原料品とに分たれるが︑いま食料品の貿易につい
のてのみ見れば︑食料晶の中心たる穀類の世界輸出の大部分は︑攻表に示すように馬申部及び欧洲の諸國へ輸入
のせられ︑之れに世界の畜産輸出の大部分がイギリスに向けらる玉事實を併せ考へるならば︑現在といへども︑ト
少くも食料品の貿易については︑西漱諸國が依然としてその申心をなしてゐることを否みえない︒:
申部及西部激洲の穀類輸入と世界穀類輸出高(軍位百萬ドツペルチエントナー)
L‑■ ● 一̲」rL■̲亀9‑‑r亀 ●一■一亀
九 九 九 九 九 年
二 二 〇 〇 入
七 〇 九 ・一 一 亭
11111
ニ ニニ 」一 〇 九
九 四 三 五 五 均
世 量 充 宅 茜 三
七 二'六 八 二
● ■ ● ● ●
界 輸
小 ・
一 八 九 五 一 出
一
漱 申
垂 塁難
洲音i の及 輸両 入部
饗 世 界 襯
一 一● ●■凶」 ■繭一● ■■■鼻
ブLご 七 五 二 輸
圭 毛 三 九6 出
一
欧 申 洲部
蕪 薫 三輸西入部の及 饗 世 界 大
矛 牽 寒 享 孝
八 四 四 八 入
輸 出 歓 中 洲部
三 一 五 三 二二
只 盈 又 藍 翼
の及 輸西入部
1
多 世
・ 八1五 五 五 三
二二 九 九 四 〇
界 輸
玉
意6夫 夫 圭 出
一 一
敵 中 蜀 洲部
八 ヨ遣 五 ヨ遣 三
五 七 八 五 三
● ● ● ● ●
八 九 二二 四 〇
の及 輸西入部
黍
英國の畜産輸入と世界の畜産輸出(軍位百萬ドツペルチエントナー)
穀類の國際取引とその貿易契約(大谷) '三五
6)前 掲 書 、P.59.
三六
ト
豚肉牛肉バタ琶チーズ年世界輸1 蕎輸入世界輸出英國輸入世界輸鵠英國輸入 ・世界輸旦 英國輸入
一汎九四 i九入
六 ︑
吾八
四 .二
八 九
三 ︑三〇九二 ︑四一七一 ︑五ご八一 ︑五一〇一 ︑八八三一 ︑一七七
一八九九1一九〇三
七 ︑
七冗五 ︑〇七四
山釜三囚 ︑
八八二一山念三 ︑三三≒〇六一一〇○ ︑︑ .
一 ︑三三
一九〇四ー○入七 ︑二〇〇
八§鞍四茜四 ︑O
四 ︑
ご三二 ︑五六三モ西八ニ ー二〇四一 ︑二亜
一九〇九 1桶三五 ︑五四三
圭四 ︑O
六 ︑六益
五 ︑
八元二 ︑八四八ご ︑一;二 ︑三三一 ︑充九
一九二〇 i二四
八 ︑
八六三
菰 ︑五六〇
七九 ︑OO
天八 ︑三四六二五五五二二〇ご二〇〇一四〇 ︑︑︑︑ ﹁
一九二五 ‑二九
宍七 ︑七
六 ︑五巴
六五四九 ︑
八 ︑六垂四二七〇
三 ︑
〇四八二 ︑八九六蓋三〇
=穀類取引の特殊性
1929『33 .
亭 均
プ ツ シ エ ル Ig33
プ ツ シ エ ル
44.,227,873
46更606,225
58,143,835 231,980,517
4g,817,7三5
3】【,346,5'26
33831,485
54(198,828 24166,224
7・250・83̀{
3・・。3・46平
224,358,58 8̀)9,432,II 28,466,425
42,474,389 32,275,295 234,263,567
】[7,953,567
29,25㍉lo8
33,615,404
73,725,587 i9,538,407
271,45gI
80,024
186,409,810
698・3・5・・4?
世界貿易に於いて︑以上にのべたような地
・位を占める食料品貿易︑分けてもその中心た
・る穀類の貿易は︑貿易維螢の立場からみて︑"
種々な特異性をもち︑從つてその貿易契約の
内容に於いても︑おのつから他と異る取り極
めをもつものである︒本稿は︑その貿易契約
の條項について.若干の分析を試みようとする
のであるが︑夫れに入るに先立つて︑此の特殊
な契約條項を生みだすところの母胎たる穀類
取引の特異性に一瞥を與へること︑しょう︒
先づ第一に︑穀類貿易は︑需要國と供給國
とがおのおの年々動かぬ群をなして相樹立し
てゐる︒すなはち︑その國内生産から國内浩
費を差引いて絵剰を世界市場に輸出しうる國
と︑食料貞給自足主義に基く各種の施設方策
にもか﹂はらす︑國内生産を以つてしては到
底國内消費を充たすに足りず︑︑年々相當の数
量を輸入することを飴儀なくぜらる︑國との
一︑一つの群に裁然と分たれる︒
13例へばいま小萎のみを例にとれば︑世界に於ける小萎の主要輸入國及びその年々の純輸入は前表の如くである︒
穀類の國際取引とその貿易契約(大谷)三七
1go9‑13
亭 均 1929 Ig30 1931 193を
輸 入 國
プ ツ シ エ ル プ ツ シ エ ル プ ツ シrエ ル プ ツ シ エ ル プ ツ シ エ ル
ド イ ツ 89,731,507 }
79,779,402 45,076,竃68 29,833,110 37,934,262 ベ ル ギ ー 73,962,974 44,654,975 44,876,382 54,Ioo,075 46,925,317
フ ラ ン ス 38,68互,717 52,592,676 39,317,竃37 87,744,709 78,789,358 イ ギ リ ス 21gβ65,265 232,781,569 224,768,u3 249,672,560 2夏8,416,Z77
イ タ リ ー 57,156,174 65ρ30,081 71,429,187 55,225,ggo 39,449,749 オ ラyダ 76,340,387 30,187,874 33,835,929 34,050,398 29,407,321 プ ラ ミツ ル 20,774,307 35,397,705 39,27ら1互1 32,247,55G 28,625,653
中 華 民 國 5,525,863 47,929,460 宅1・50竃・395 65,067,2累7 65,270,480 日 本 窃173,840 27,530,853 18,756,go6 26,846,094 28,158,858 エ ヂ プ ト 7.914}626 12,656,077 Io,228,0go 8,867,699 4,230,857
㌻
南 阿 聯 邦 6,5竃9,097 7,634,672 2,798,084 3,408,764 1,095,763 そ の他 諸 國 互21,409,356 280,693,876 215,629,206230,650,965 208,459,058
合 計 721,095,1■3 916,869,220 767,48ア,708 877,715,134 786,763,453
1)0伍cialYearBookoftheCommonwealthofAustralia,No.28‑6幽Ig35,
Canberra,P・P・713・ 一・71馬 ぷ り 作 成o
19Q9‑13
亭 均 19291930 xg31 Ig32 Ig33ZF均 Ig29‑33、
ブ ツ シ エ ル 1
,プ ツ シ エ ル1プ ツ シ エ ル プ ツ シ エ ル{プ ツ シ エ ル プ ツ ミ/エ ル プ ツ シ エ づレ
轟::1綴隷:1:!。畿;1臨;:1
18,480,189
14g,22夏,042
93,4i4,5, r42,859,II
I,175,39 Io9,34S,836174,044,725
91,014,「45 1,500,g2.1
151,065,123i蒐42,424ヲ357
97,6、2,6。611,16。6,935 682,584,775603,162,974
124,812,3
79,726,董
723,866,8
i37,917,662
156,3◎6,844
102,583,269
i818・831・517 88
93・500・338j 240,c76,9831
正27,484,281
86,4.34♪936
4,376,075
75,II5,330
79,082,266
1706・070・20g 157,】 【09,000
89,91g,ooo
IOO,864,000
95,041,COO
50,886,000
49,417,000 119,3SI,eoo
662,587,000
250,485,7go
】【37,914,g28
249,70S,054
99,{5ρ,1
7冗,425,64!
808,684,901
三八
之れに封して︑國内の消費に充當して爾ほ飴剰があり凶之れを
ゴわ年々世界に輸出しろる國及びその輸出量は上表の如くである︒
以上の数字が︑我々に⁝教へるところはi小萎の輸入に於い
て︑イギリスは噺然第一位を占めフランス・イ汐サア・ベルギ
ー・ドイツの諸國が之れに次ぎ︑.欧洲諸國のみで全輸入の牛ば
以上を占めること㌦輸出に於いては︑カナダが全輸出の三分の
﹂を以つて第一位にあ篁︑.之れに次ぐアルゼンチン・濠洲・北
来合衆國の四ケ國を以つて全輸出の八割彊を占めてゐる﹂工と
いふことである︒いま輸入・輸出に於いて各國の占める割合を
一九〇九i一三年の卒埼及び一九二九ー三三年の季均として示蹴
すと次の如し︒,・一.,,︑L
つぞ だり ヨしリノ ケゆ 騒即"獅伽蝿赫助ηα㎎卿聯
1909‑】 【31929‑3
「p均(%)1亭 均(%
12.44 1 10.261
5.361
3042
7.93
10.59
2.88
0..77
0。52
1.1【0
0.90 1683
IOO.00
2)Ibid.,』P、P.7iO‑一 ア!1.
3)lbid.,P.P.710‑714の 諸 表 よ り 作 成o
輸 出 國
ソ ベ ツ ト 聯 邦
ダ
ナ
カ
北 来 合 衆 國
ア ル ゼ"ン チy、
英 領 印 度
ナ ー ス ト ラ ザヤ そ の 他 諸 國
計
合
輸 入 國
ツイ
ド
べ 〃 ギ ー
フ ラyス
イ ギ ザ ス
イ タ リ ー
ナ ・ラ ン ダ
プ ラ ミツ ル
中 華 民 國
本
日
エ ヂ プ ト
南 阿 聯 邦 そ の 他 諸 國
計
〆〜
合
Ig29‑33 亭 均(%) 豆go9‑13
挙 均(%)
輸 出 國
6.421
32・52
12.9夏
王9・74
0.16
17・24
11.0互
100.00 33・71
13・57
15・22
14・34
7.68
7.46 18.02
100.00
ソヴエ ト聯邦
カ ナ ダ
北 来 合 衆 國 アルゼ ンチン 英 領 印 度
濠 洲
そ の 他 諸 國
計
合 以上は小萎についての國際貿易の趨勢であるが︑之れに大萎
切陣二2裸変男饗燕萎○舞拉ぴに玉蜀黍寓巴器を加へて謂ゆる
.穀類取引σq峠鉱昌窪巴・全膿脳をみても︑既に表を以つて示したよう
ラロるに︑大西洋を中心に︑カナダ・アルゼンチン・濠洲・北米合衆國
を四大供給國とし︑英國及び中部蚊びに西部欧洲の諸國を主要輸
入國とする商品の移動に攣りはない︒そしてこの事實こそは︑英
國殊にその首都倫敦をして穀類取引に於ける世界の申心たらしむ
める第一の要件である︒︑,
第二に︑穀類は食糧及び家畜の飼料として︑一年を通じてE々に浩費せられるものであるに封して︑その源
泉たる穀類の積出は︑他の工業生産品のように︑決して一つの供給地に於いて四季を通じて糧績的になされる
の竜のではなく︑・季節を異にして︑各地から︑湘縫いで積出されるといふ事實である︒すな菰ち﹂再び例を小萎
穀類の國際取引とその貿易契約(大谷)三九
4) 5) 6)
本 稿P.35.所 載 の 表 往 見o C.Manghan,MarketofLondon,London,Ig31,P・29・
F.E.Clark&L.D.H.Weld,MarketingAgriculturalProductsinthe UnitedStates,NewYork,Ig33,P・P.2‑‑3.
四〇
にとれば︑世界の小変の牧穫從つて積出しは︑決して同一の時期にはなされない︑先づ十二月・一月の交に濠
洲.アルゼンチンに始まり︑四月英領印度︑六月テキサス州に始まつて八月に及ぶ北米合衆國の牧穫︑しかし
てその申頃七月から八月へかけてカナダの牧穫が始まる︒そして81きつ讐き欧洲各地の牧穫季︑十一月英國の
牧穫を以つて一年を絡へ︑やがて再び濠洲の牧穫に戻るのである︒臼︑●U・缶99目彗昏が作成した圖表によつて
わ小萎の國際的牧穫季を示すと次頁の如くである︒
從つて世界市場への小萎の積出しは︑主要供給地たるカナダ・アルゼンチン・濠洲・北米合衆國から︑時を
リレロ異にして織走されねばならぬ事情にあるばかりでなく︑これに印度︒ソヴェット聯邦及び浩費地たる欧洲各國
の國内生産を加へて︑生産地と消費地とに於ける貯藏量︑債格︑費買出來高その他激多き因子の函激關係に於
いて小萎が︑イギリスを申心とする消費地欧洲に︑不断に流入することが必要なのである︒・
然かもその浩費地に於ける穀類の貯藏量はある一定の時をとつてみるとき決して大量のものではありえな
い︑一九三六年六月に︑當時の国﹃9ピ︒a︒h︾戯8剛霊ξたるoゆぢ︒︒"ヨ=亀缶o碧︒は︑英國の小萎の貯⁝藏量を
.推算して英國全人口を六週聞支へるにすぎないとなし︑同じ年の七月英國政府は下院に於いて小変の亭均供給
のは英國全人ロの食糧三月を充たしえようと磯表した︒以つて小萎の供給が不断にかつ圓滑になされねばならぬ
事實を看取しうるであらうし︑從つてその貿易取引も他の原料品叉たは工業生産物たる完製品の取引とは︑自
から異なるものたることを想像しえよう︒
7)T.D.Hammatt,SellingAmericanWheatAbmad,rg25,NewYork,p.123.
8)TheEconomist,Vol.CXXIX,No.49lo,Oct.2,Ig3ア,FoodStorefor Deffenceに 櫨 ろ 。