厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)
分担研究報告書
健康成人におけるインフルエンザワクチンの免疫原性の検討
研究分担者 織田 慶子 保健医療経営大学 研究協力者 樋口 恵美 ほほえみクリニック
研究要旨
2017 年から保健医療経営大学の教職員を対象に、健康成人におけるインフルエンザワクチンの免 疫 原 性 を 検 討 し て き た が、 今 回 は 学 生 で の イ ン フ ル エ ン ザ 型 seroreponse protion ( SR ) , seroprotection proportion ( SP ) を前年度流行シーズンと比較した( 2018 / 2019 シーズン、前向きコ ホート研究) 。対象は 19-22 歳の本大学生 13 名、男性 3 名、女性 2 名、平均年齢は 21 歳である。自 記式質問票を用いて、基礎疾患、ワクチン接種歴、インフルエンザ罹患状況を調査した。アウトカ ムはインフルエンザ HI 抗体の有意の上昇とそれに影響を与える因子である。
多変量解析の結果、抗体価の上昇に影響を与える因子はワクチン接種歴の有無であった。
また、 2017 / 2018 年のシーズンと比較すると 2018 / 2019 年シーズンでは、 B victoria 系統の SR, SP がほかの 3 株と比べ、明らかに低く、また B yamagata 系統ではほとんど上昇がみられない結果 となった。
A. 研究目的
インフルエンザワクチンの免疫原性に関しては、
様々な検討がなされているが、 20 - 40 歳代の若年 成人での検討はあまりみかけられない。そのため今 回はさらに 20 歳代の対象を増やし、インフルエン ザ既往、インフルエンザワクチンの接種歴と免疫原 性について検討する。
B. 研究方法 対象
2018 / 2019 シ ー ズンに研究の同意を得られた学 生 13 名とする。
ワクチン接種
研究協力施設のほほえみクリニックで実施する。
ワクチンの購入はほほえみクリニックを介して行う。
抗体価測定
接種前、接種後 4週、流行終了時の 3回採血する。
赤 血 球 凝 集 抑 制( hemagglutinin inhibition, HI ) 抗体価を KM バイオロジクス社で測定する。
免疫原性評価尺度
幾何平均抗体価、 平均上昇倍数、 Seroresponse proroiton ( HI 抗体価が 4倍以上上昇した者の割合 , sR ) , Seroprotection propotion ( HI 抗 体 価 1:40 以上に達したものの割合、 sP ) を算出する。
ベースライン調査
年齢、性別、インフルエンザワクチン接種歴、イ ンフルエンザ罹患歴、基礎疾患について、予診票並 びに自記式質問票で調査する。
副反応調査
48時間以内の副反応について、自記式質問票に より調査する。
発病調査
流行期間中の上気道症状、発熱状況、医療機関受 診状況などを自記式質問票で確認する。
統計解析
ワクチン接種歴、インフルエンザ罹患歴と免疫原 性 の 関 連 に つ い て、 前 年 度 の 年 齢 対 象 と と も に logistic 回帰モデルで検討する。
(倫理面への配慮)
データの連結匿名化を行い、パスワードを設定し た研究代表者の PC に保管する。
C. 研究結果
対象特性は表 1 のとおりであった。抗体上昇に 影響を与える因子については対象数が少なかったが、
インフルエンザ A 型 H1N1 では、 SR 、 SP に対し、
ワクチン投与歴のないものがあるものに比べ有意に
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高く ( OR = 1.4, 信頼区間、 1.1-2.9, OR = 1.2, 信頼区 間 1.0-3.1 ) , インフルエンザ B 型では yamagata 系 統で SR では同様にワクチン投与歴のないものがあ るものに比べ高い傾向を示した ( OR = 2.3, 信頼区間 0.9-22 ) (表 2 ) 。
次に前年度のデータとの比較を示す。インフルエ ンザ型別でみると、 HI 抗体価の推移では、ともに B 型に対する抗体上昇が A 型と比較して低かった(図
1 ) 。
また 2017 / 2018 年シ ー ズンに比べ、 2018 / 2019 年シーズンでは(表 3 ) B victoria 系統の SR,SP が ほ か の 3 株 と 比 べ、 明 ら か に 低 く、 ま た B
yamagata 系統ではほとんど上昇がみられない結果
であった。
D. 考察
本学の学生の特徴として、ワクチンを全く打った ことのない例が 40 %程度存在することで、その影 響がワクチン投与後の抗体価の変化に影響を及ぼし ていた。 2017 / 2018 シ ー ズンと比べ、 2018 / 2019 シーズンではとくに B 型 yamagata 系統でほと んど抗体上昇がみられなかった。 B victoria 系統の 結果に関しては前年度の接種前抗体価が高く、これ は過去の流行の影響と思われるが、 2018-2019 年度 の SP の低下は、流行株の抗原変異が一因と思われ る。 B yamagata 系統に関しては、今のところ抗原 変異の報告はなくこの理由については今後の検討課 題である。
E. 結論
今回の学生の検討では、ワクチン接種歴の全くな い例での SR の上昇が示された。 2018-2019 年度の B 型に対する抗体反応の低下に関しては、今後の検 討が必要である。
F. 健康危険情報 なし
G. 研究発表 1. 論文発表
なし 2. 学会発表
なし
H. 知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得
なし
2. 実用新案登録 なし
3. その他
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3 ) インフルエンザ分科会
表 1 対象特性
2017/2018 2018/2019
n 11 13
性 男性 4 2
年齢 19-25 ( 平均 22) 19-22 ( 平均 21) 基礎疾患
アレルギー関連 4 3
その他 0 2
ワクチン接種歴
なし 4 4
あり 7 9
インフルエンザ罹患歴
なし 5 3
あり 6 10
表 2 抗体上昇に影響を与える因子
type SR OR SP OR
A H1 N1 ワクチン接種歴 1.4 (1.1-2.9) ワクチン接種歴 1.2 (1.0-3.1)
A H3 N2 ND ND
B yamagata ワクチン接種歴 2.3 (0.9-22) ND
B victoria ND ND
ND : not detected
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図1 ワクチン接種前後の各年齢層別のインフルエンザ型別抗体価推移 0100200300400500600700 age <20 pre< 20 post20-34 pre20-34 post35-55 pre35-55 post> 55 pre> 55 post
AH 3N 2
HI抗体価 050100150200250300350 <20 pre< 20 post 20-34 pre 20-34 post 35-55 pre 35-55 post >55 pre >55 postAH 1 N 1
HI抗体価 age 050100150200 age <20 pre<20 post20-34 pre20-34 post35-55 pre35-55 post> 55 pre>55 postB vi c
HI抗体価 0100200300400500600700 <20 pre< 20 post20-34 pre20-34 post35-55 pre35-55 post>55 pre> 55 postB ya m ag at a
HI抗体価 age表 3 大学 生の各 年度別 型別の抗 体価の推移 201 7- 201 8 201 8- 201 9
抗原平均平均上昇倍数SR (% ) SP (%)
平均平均上昇倍数
SR (% ) SP (% ) pre po st po st po st pre p os t pre po st po st po st pre po st A H 1N 1 25. 5 62. 5 2. 5 40 20 40 51. 2 128. 2 2. 5 50 55 91 A H 3N 2 10. 5 33. 5 3. 2 50 0 20 63. 2 309. 1 4. 9 50 67 100 B v ic to ri a 152 2 40 1. 6 30 100 100 14 42. 3 2. 8 40 9 54 B y am ag at a 46 84 1. 8 40 40 80 66. 8 69. 9 1 30 46 91
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3 ) インフルエンザ分科会