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パ ーキンソン病 に対 す る リハ ビリテーシ ョン

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Academic year: 2021

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(1)

8 パ ーキンソン病 に対 す る リハ ビリテーシ ョン

( 1 ) パ ーキ ンソ ン病 とは

東 登志夫,吉村 俊朗

1 8 1 7 年にイギ リスの J ame sPar ki ns o n が初めて報告 したパー キンソン病 は,黒質徽密層 ドーパ ミン性神経細胞の変性 と線条体 ドーパ ミン低下 を主病変 とす る変性疾患である1 ) 。神経難病 として厚生省特定疾患に も指定 されている。典型的 徴候 は,安静時振戦,固縮,寡動,姿勢保持障害で,これ らは 4 大症候 として知 られている。その病 因は,ウイルス説, 遺伝説,神経毒説などが提唱 されて きたが,解明 までにはいたっていない。我が国におけ る発症率 は, 1 0 万人あた り 5 0 人, 6 5 歳以上では 2 0 0 人の有病率 と推定 されている

2)

。 したが って高齢化が急激に進んでいる現状 を考 えると今後, ます ます患者数の増加が予想 され,その援助が重要 になって くるもの と思われ る。また本疾患は神経難病 のなかで も トdopa や抗 コリン剤 といった有効 な薬物治療が存在す る数少 ない疾患のひ とつで もある。医師によ り症状 を最小 にお さえ 日常 生活動作や生活の質 を最大 にす る様,投薬処方がなされている。 しか しこれ らの薬物治療や一部の外科的治療 は根治的 治療法ではな く疾患の病理学的進行 を停止 させ るものではない

3)

。病期 に関 しては患者によって進行程度は異なるが,慢 性進行性の経過 をた どり, 1 0 年程度は独立 した 日常生活が可能であるがそれ以上になると家族の介護が必要 となること が多い。薬物治療において も曜病期 間の延長に伴 い we ar i ng‑ of f現象や効果の減弱 ,トdopa の長期投与による副作用が 出現す る場合がある4 ) 。しか しパー キンソン病 は難治性の ものではあるが,種々の薬物治療や リ‑ ビ リテ‑ シ ョンなどに よ り,天寿 を全 うで きるもの となって きている。 したが って病気に対す る正 しい理解 と周囲の援助 によ り長 い経過の中 で可能 な限 り機能 を維持す ると同時に残存機能 を活用 してい くことが重要 となる。そのためには広 く保健,医療,福祉 を含む総合的なチームアプローチが必要 である。

本稿 では,パー キンソン病 に対す る リ‑ ビ リテ‑ ションのあ り方及び地域におけ るパー キンソン患者の援助の実際に ついて述べ る。

( 2 ) パ ーキ ンソ ン病 患者 に対 す る リハ ビ リテ ー シ ョン

パー キンソン病 は表 1

5)

に示す ような症状 を呈す るが,これ らの症状 には廃用性 を招 く因子が多数存在す る。た とえば 寡動は,必然的に運動量の低下 を招 き起 こす し,精神的抑轡状態は活動性の低下 をさらに助長す る. また本人に体 を動 かす意志があった として も歩行障害や平衡機能障害によ り転倒 した り,歩行 は可能 であって も寝返 りや起 きあが り動作 が困難なため臥床傾 向を余儀 な くされ る場合 もある。 さらに筋固縮 は無動 とあいまって筋 を短縮 させ関節可動域制限 を 引 き起 こす。

したが ってパー キンソン病 患者に対 しては,障害の進行 によ り予想 され る廃用性症候群や二次的合併症 をで きる限 り 予防 し,可能 な限 り機能 を維持 してい くことが リ‑ ビ リテ‑ ション目標 となる。 さらに慢性進行性 の疾患であるため, 障害の進行 を適切 に評価 し,障害段階に応 じた指導援助が不可欠である。パー キンソン病の障害進行 の 目安 としては, Hoe hn と Yahr の重症度分類

6)

( 表 2 )が広 く用い られている。 したが って以下パー キンソン病 の障害の進行段階別 に リ ハ ビ リテー ションのポイン トについて述べ る。

‑ 1 7 7‑

(2)

③ 寡 動

安静時振戦(

4‑ 6Hz )

、丸薬丸 め運 動

鉛管現象 歯車現象

仮面顔貌、す くみ足 、小刻み歩行 歩行時の腕 の振 り少ない、 小字症、

巧轍障害、構 音障害 (小声、単調 ) 噴下障害、眼球運 動障害

④姿勢保持 障害 前傾、前屈、四肢屈 曲肢位、

MP関節屈 曲、突進現 象、加速歩行

立 ち直 り反射障害

⑤ 自律 神経症状 便秘 、流起、脂顔 、起 立性低血圧 、 多汗、消化管 の蟻 動障害、排尿障害、

四肢循環 障害

⑥精神症状 抑 うつ、心気的、知的機能 障害、

思考の転換遅 い

※病 前性格 生真面 目、頑 固で融通 きかない、

無趣 味、禁酒禁煙

表 2 Hoen & Yahr による重症度分類

St a ge Ⅰ

症 状 は 一 側 性 で 、 機 能 的 障 害 は な い か あ つ て も 軽 微 o

St a geI I

両 側 性 の 障 害 が あ る が 、 姿 勢 保 持 の 障 害 は な い ○ 日 常 生 活 、 職 業 は 多 少 の 障 害 は あ る が 行 い 得 る o

St a gel H

立 ち 直 り反 射

r i g ht i n gr e f l e xに 障 害 が み ら れ

る O 活 動 は あ る 程 度 制 限 さ れ る が 職 種 に よ っ て は 仕 事 が 可 能 で あ り、 機 能 的 障 害 は 軽 度 な い し 中 等 度 だ が 、 ま だ 日 常 生 活 に は 介 助 を 必 要 と し な い o

St a ge Ⅳ

重 篤 な 機 能 障 害 を 呈 し、 重 症 な 機 能 障 害 を 呈 す る o 歩 行 と 起 立 保 持 に は 介 助 を 必 要 と しな い が

、A DL

の 障 害 は 高 度 で あ る o

①初期 ( Yahrs t age I〜Ⅰ Ⅰ)

日常生活や通 院 には まだ介助 を要 しない時期 であ るが,この時期 に病気 に対 す る正 しい理解 を持 つ こ とが重要 であ る。

リ‑ ビ リテ‑ シ ョンプ ログラム としては体 操や散 歩 な どの 自主 トレー ニ ングを行 い,異常姿勢や廃用性 を予 防 して い く。

また歩行 をで きる限 り維持 してい くため に歩行 や 立位 バ ランス訓練 を中心 とした動作訓練 を行 う。 さらに趣味活動や レ

ク リェ‑ シ ョンに よ り活動 量 を確保 す るこ とも重要 であ り,規 則正 しい 日常生活 を心 がけ る。

(3)

Ⅰ Ⅴ リ‑ ビ リテ‑ シ ョン

② 中期 ( Ya h rs t a g eI I ト Ⅳ)

平衡機能障害が強 くな り歩行や立位が不安定 となって くる時期 であ り, よ り一層廃用性症候群 の予防のための活動量 の確保が必要 である。 そ して この時期 には可能 な限 り残存機能 を活用 し介護負担 を軽減す る事が 目標 となる。具体 的 な プログラム としては,屈 曲傾 向 を示す筋に対す るス トレッチングや筋力増強訓練,起居動作訓練,歩行 訓練,座位 立位 バ ランス訓練等 を行 う。活動 を行 う際には,号令 の様 な聴覚的 な刺激や視覚的な指標 によ り動 きが出やす くなるこ とが あ り,積極 的に外的な刺激 を利用 してい く。また必要 に応 じて,福祉機器の利用や手す りの設置 な どの家屋改造 を行 う。

セラピス トに よる家族や本人に対す る動作方法や介助方法 の指導 も重要 である。 さらにこの頃 よ り適所 ・訪 問サー ビス の利用に関す る検討 を行 う。

③後期 ( Ya h rs t a g e V)

日常生活全般 に全面的に介助 を要す る時期 であ り,可能 な限 り雇 た き りを避け るために座位 の耐久性 を高め る。具体 的には,座位保持訓練や関節拘縮や裾唐 を予防す るための関節可動域訓練や体位交換,良肢位保持 を行 う。 また胸部 の 運動制限による肺機能障害 を予防す るため呼吸訓練 も重要 である。 さらにこの時期 においては,家族 の介護負担 を軽減 す るためにホーム‑ルパー,入浴サー ビスな ど社会 資源の積極 的利用 も望 ましい。

( 3) 県 内 に お け るパ ー キ ンソ ン病 に対 す る リハ ビ リテ ‑ シ ョンの現状

イギ リスの Mu t c h ら

7)

は ,2 6 7 名のパー キンソン患者 を対象 として調査 を行 い,定期 的に診察 を受 けてい るものは 3 9. 6

%に しかす ぎず,また作業療法 は 2 5. 1 % ,理学療法 7. 0 % ,言語療法は 4. 4 % の例 しか受 けていなか った と報告 してい る。

しか しなが ら我が国におけ るパー キンソン病 患者の リ‑ ビ リテ‑ シ ョンの現状 に対す る詳細 なデー タは出 され て いな い。 そこで,我々は長崎県のパー キンソン病患者 に対す る り‑ ビ リテ‑ ションの現状 を把握す る目的で, 1 9 9 6 年度 に長 崎県大村保健所 ( 現長崎県県央保健所) と共 同でアンケー ト調査 を行 った. その結果 の一部 を紹介す る.

調査 は,県内の 1 2 5 の医療機 関の医師に依頼 し,担当患者へ配布す る方法 をとった。 回答 は 2 0 0 名か ら回収 で きた。 そ の結果, 2 0 0 中 1 9 7 名 とほぼ全例 が薬物治療 を行 っているのに対 し,何 らかの リ‑ ビ リテ‑ シ ョンを受 けてい ると回答 し た ものは, 1 9 1 名 中 4 5 人 と全体 の 2 3. 6 % に しかす ぎなか った。 その理 由 としては,近 くに リ‑ を受 け られ る施設が ない,

リ‑ ビ リテ‑ シ ョンを知 らない といった回答が多か った。 また現在 リ‑ ビ リテ‑ シ ョンを受けていない者において もそ の 6 5. 8 % は機会 があれば受けたい と回答 してお り需要 に応 じた リ‑ ビ リテ‑ シ ョン施設の設置や リ‑ ビ リテ‑ シ ョンの 啓蒙が必要 と考 えられた。実 際に受 けてい る リ‑ ビ リテ‑ シ ョンの内容 としては歩行 訓練が最 も多 く,続 いて物理療法 や姿勢矯正訓練,体操,マ ッサー ジ等が多か った。また 1 7 2 名 中 5 9 名 と約 3 分の 1 の者が家屋改造 を行 ってお り,その改 造箇所 につ いては トイレが最 も多 く続いて浴室,廊下の順 となっていた。 これはパー キンソン病患者の平衡機能障害や 歩行障害に起 因す るもの と考 えられ,障害の進行 に応 じて,適切 な家屋改造の指導 ・援助が必要 と思 われた。

( 4) 地域 に お け る援 助 の 実践

パー キンソン病 は,短期集 中的な リ‑ ビ リテ‑ シ ョンや服薬 コン トロール 目的の場合 を除けば,在宅療養 している場 合 が多 く,その機能維持や家族 の不安解消 な どの 目的で,地域 におけ る援助が重要視 され るようになって きた。しか し, 高齢患者の場合 は近年整備が進んでいる老人適所施設 を利用 で きるものの,老人保健法や老人福祉法の対象 とな らない

‑ 1 7 9‑

(4)

ない。唯一市町村 で実施 されている機能訓練事業がその対象 となるが, この事業 は,脳卒 中を中心 に実 に多様 な疾患 を 持つ人 を対象 としているため,パー キンソン病 の臨床症状 に効率 の よいプ ログラム を実施す るのは困難 なのが現状 であ る。 そこで,我々は長崎県県央保健所 と共 同で在宅パー キンソン患者 を対象 とした リ‑ ビ リテ‑ シ ョン教室 を開催 して いる

以下 その内容 につ いて紹介す る。

パ ‑キンソン教室

この教室 は, 1 9 9 6 年度 ( 平成 8 年度) よ り我々 と長崎県大村保健所 ( 現長崎県県央保健所)が地域保健推進特別事業 としてモデル的に行 ってい るもので,本 人,家族 を含め現在毎 回1 0 名程度が参加 している。本事業の主 な 目的は,在宅

ー キンソン病 患者の機能維持 に対す る援助 と病気 に対す る不安解消 である

実施頻度は月 2 回 とし定期 的に行 ってい る

指導には医師 1 名,作業療法士 3 名,保健婦 1 名,看護婦 2 名 であたっている

プ ログラムは,表 3 の とお りであ る

o

パー キンソン体操 ( 図 1 )や棒体操 ( 図 2 ) , レク リェ‑ シ ョンにおいては,頭部や体幹の伸展運動や長軸方向への 回旋運動,巧敵動作,発声練習,表情筋の運動, リズム運動,バ ランス保持 な どを意識 して盛 り込んでいる

また月 2 回の頻度 では効果 を得 るこ とが難 しいため,参加者が在宅 で も行 えるよう活動 を中心 とし,活動 の訓練的意義 を充分説 明 しなが ら行 ってい る。 また毎 回茶話会 を行 い, スタ ッフが訓練や福祉機器等に関す る情報 を提供 した り,参加者の質 問や悩 み を聞 くよ うに努 めてい る。

表 3 プログラム

1 4: 00〜 1 4: 3 0

バイタルチ ェック 問診

1 4: 3 0〜 1 5: 0 0

パー キ ンソン体操 .棒体操 、床上動作 訓練

1 5: 0 0〜 1 5: 40

レク リエー ション

卓球、風船バ レー、ボールパス 治療的ゲーム等

1 5: 40〜 1 6: 0 0

茶話会

訓練や福祉機器な どに関す る情報提供 病 気や生活の仕方等 に対 す る質問

本教室は開催 か ら約 1 年 を経過 したが, その結果 として,重症度分類や 日常生活動作 テス ト,体力 テス トには変化 は 認め られなか ったが,生活満 足度の評価 において向上 が認め られた。また個 々の参加者で見て も,「くよ くよせ ずに頑張 るか 」 とい う姿勢 になった ものや家族‑ の依存心が減少 し精神 的に 自立 して きた もの,他者 と積極的につ きあえるよう になった者 な ど変化 が認め られて きてい る。 この ような効果 を得 た理 由 として,本事業 は他 の適所事業 と異な り対象 を 単一疾患に絞 ったこ とに よ り,パー キンソン病 の症状 に対 して直接 的なアプ ローチが可能 であったこ とが挙 げ られ る

さらに同 じ病気 を持つ仲 間 と集 うこ とに よる連帯感が よい結果につ なが った もの と考 える。千

田 8)

はパー キンソン病 患 者に対す る リ‑ ビ リテ‑ シ ョンの効果 につ いて評価 を十分 に行 って検討 した報告が少 ないこ とを指摘 している

したが って今後 は,よ り一層対象 を拡大 しなが らこの教室 を継続 してい くとともに,客観 的な評価 に よる検討が必要 と考 える

さらにかか りつけ医や他 の適所 ・訪問サー ビス との情報交換 を密に し,総合 的な支援体制 の構築 につ いて も検討 してい

きたい。

(5)

Ⅰ Ⅴ リ‑ ビリテ‑ション

図 1 パーキンソン体操

図 2 棒体操

( 5) おわ りに

パー キンソン病 を有す る人は慢性進行性疾患であるか らと悲観的になるこ とな く,病気 を正 し く理解 し,「 パー キンソ ン病 とともに生 きる姿勢」を持 ち続け るこ とが大切 である

8)

。 またパー キンソン病 を有す る人が生活の質 を少 しで も高め

‑ 1

8

1‑

(6)

る。

引用文献 1) 水野美邦 : Pd r ki ns o n 病. 日本臨床 5 0:1 0 9‑ 1 1 7 , 1 9 9 2

2) 柳滞信夫 : Ⅰ Ⅰ. 病態 と診断の進歩 1.パー キンソン病の初期症状 と診断. 日本内科学雑誌 8 3( 4 )I .1 9‑ 2 3 , 1 9 9 4

3) 樽林博太郎 :パー キンソン病 におけ る aki ne s i a の発現機序‑ L‑ t hr e o‑DOPS 治療 を含めて‑.脳神経 3 5:1 05 7 ‑ 1 0 6 3 , 1 9 8 3

4) 増本正太郎,望 月久,笠原良雄 :神経難病の理学療法プログラム. PT ジャーナル 2 4( 6 ):3 9 3 ‑ 4 0 0 ,1 9 9 0 5) 山永裕 明, 中西亮二,野尻晋‑ :パー キンソン病.臨床 リ‑別冊 : 8 9‑ 9 7 , 1 9 9 2

6) 神先美紀,赤松智子 :パー キンソン病 に対す る作業療法. OT ジャーナ ル2 4:63 2 ‑ 6 3 7 ,1 9 9 0

7) Mut c hWJ,St r udwi c hA,RoySK e tal:Pa r ki ns o n' sdi s e a s e:Di s a bi l i t y,r e vi e w,a ndma na ge me nt .BrMe dJ293 , 67 5 ‑ 6 7 7 ,1 9 8 6

8) 千 田富義 二パー キシソン病患者への リ‑ ビ リテ‑ ション医療の効果. リ‑ ど ) )チ‑ ション医学 3 3( 1 0 ) , 71 9‑ 7 2 4 , 1 9 9 6

9) 早原敏之 :パー キンソン病の臨床,新興医学出版社 ,1 2 6 ‑1 3 0 ,1 9 8 8

表 2 Hoen & Yahr による重症度分類

参照

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