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(1)

財務諸表監査と貸借対照表監査 : ブロードの監査 理論とB/S監査の特質について

その他のタイトル Financial Statement Audit and Balance Sheet Audit

著者 高尾 忠男

雑誌名 關西大學商學論集

巻 10

号 3‑5

ページ 223‑237

発行年 1965‑11‑04

URL http://hdl.handle.net/10112/00021558

(2)

近代監査が目的とするところは︑公正不偏の立場から︑主として財務諸表上における各勘定を分析して︑各種の 立証手段により︑会計諸記録の正当性を判断し︑財務諸表がその企業の財政状態および経営成績を適正に明示して いるかどうかについて検証するにある︒別言すれば︑財務諸表に表示されたところの経営者の判断の健全性や︑一 般に公正妥当と認められた会計原則および慣習との継続的一致にかんして︑監査人が客観的な判断を下し︑もって 公正な意見を表明するにある︒すなわち︑企業の判断が適正であるかどうかを判定し︑その旨の意見を表明するこ とによって企業の公表する財務諸表における真実性と信頼性を高揚せしめることにより︑企業のすべての利害関係 者ばかりでなく︑あらたに利害関係をもつにいたるべきひとびとの利益を保護することにある︒ところで近代会計 理論の流れとともに︑近代監査にありても︑財務諸表監査自体もそのウエートに転移をきたしたことは当然の帰結

であると考えられる︒

いわゆる﹁山陽特殊製鋼﹂の悪質きわまりなき粉飾決算による不正事件を契機として︑企業における監査制度の 確立実施がこんにち問題として論議され︑強く指摘せられている︒監査会計の重要性が企業をめぐる利害関係者の

Iブロードの監査理論とB/s監査の特質についてーー

財務諸表監査と貸借対照表監査

(3)

関心を大きく喚起せしめるにいたった︒小稿はまず︑

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あったが︑それは如何ようなことが理由であったのか︑

もしくは﹁企業 せられているものの意味目的が︑アメリカ等では如何ように解されているやについて論じ︑つぎに貸借対照表監査( b a l a n c e

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00

年代の初期のころアメリカに流行したもので

つまり貸借対照表監査の特質ともいわれることについて若

干の考察を試みたものである︒

いわゆる監査は通常なにびとかによって達成せられた会計処理の一部もしくは全部について︑それにタッチして

おらないところの第三者の手によって組織的に批判吟味されることを意味し︑その目的とするところのものは︑誤

謬︑脱漏を検出し︑不正虚偽を発見し︑進んでこれらの発生を防止︑絶滅することであるともいえる︒しかしなが

を明らかに表示するために︑ ら︑監査の目的はこのように広い一般的な意味に解するものではなく︑それはその対象によって︑さらに一段と狭く限定して意味づけているのである︒すなわち監査の対象を企業会計の範囲に限定するならば︑それの意味の監査

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g  auditsと呼称されるべきである︒しかし従来より︑かかる監査における目的に

これまたいろいろになされてきているのである︒ここに監査論学者としての代表的といわれているディ

(Dicksses)

つであるといっている︒このような三つの主要目的のうちで︑ディクシーは本質的にもっとも重要な目的は詐欺の発

見であるとしている︒しかしながら︑その詐欺は常に技術的誤謬︑もしくは原理上の誤謬によって擬装されている

2 2 4  

(4)

わなければならないと指摘しているのであって︑ ものであるので︑詐欺の発見は同時に︑また技術上の誤謬および原則上の誤謬発見にまでさかのぽって︑深く行な

この点についてわれわれは大いに考えさせられるところである︒

さらにモントゴメリー

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にしたがえば︑監査の主要目的は以前においては︑たしかに詐欺もしく

は誤謬の発見または予防にあるとされていたのであるが︑こんにちでは︑もはやこれらのことはむしろ第二義的な

ものであって︑目的の中でもあまり重要視されるものではなく︑その重要な目的には︑正確な財政状態および企業

所得の確認にあるとしている︒すなわち︑監査は正確な会計報告が行なわれているや否やを決定するためになされ

るのであるけれども︑その監査過程内にあって︑不正や詐欺が発見された場合にはいうまでもなく︑その不正︑詐

欺を摘発することにおいては躊躇すべきでないといっている︒すくなくとも従来は一般において`監査は不正を摘発

することが主目的であるごとく解されていたのであった︒しかしまたこのように宣伝し︑不正行為を防止しようと

したことは実際であった︒このような目的がいわゆる監査の主目的であるとされていたのは︑監査が現金監査を中

心として行なわれていた古い時のことであった︒さいきんのごとく︑監査がバランスシートをもって主としてなさ

れている時にあっては︑かかる目的もまた異なったものである︒したがって︑財務監査が如何なるために行なわれ

るかに関しては自ら明らかに知ることができる︒すなわち︑その基本目的とするところのものは︑公正不偏な立場

にある職業的専門家によって︑企業が提供した財務書類について︑十分なる信頼性を付与するものであることはい

うまでもない︒要するに財務監査のほんらいの目的は︑いつに第三者︵関係者以外︶の手によって検査された結果︑

正確なものであることを立証する点にあるのであり︑それがはたして正しいものであることを実証するための手段

いわゆる関係帳簿︑証憑その他いっさいの関連書類が検査︑調査されてはじめてその誤謬︑虚偽︑脱漏の

有無が詮索される事態となるのである︒それでこのような詮索はいわば監査の目的というよりは︑監査の手段︑方

2 2 5  

(5)

法として行なわれるものであって︑誤謬︑脱漏の発見や︑虚偽不正の摘発それ自体はいわば監査ほんらいの目的で

財務監査は企業会計が経営活動の全部門にわたって︑大きく︑しかも広く︑こんにち展開されている現状におい

て︑つねにその企業の経営管理と密接なる有機的︑関連的なる接触をもって結合され︑それは企業会計と財務監査

が表裏の関係にあることを如実に示すものである︒かかる財務監査であるがゆえにこそ︑わが国における監査制度

をして法的に確立せしめた証券取引法を背景とするところの監査人︵公認会計士︶に課せられた業務のうちもっと

も主要なボストをもつものであることはいうまでもない︒その責任は実に重大で︑ただたんにその企業に対する利

一般社会におよぼす影響は非常に大きいのである︒近代経営経済害関係者はもちろんのことであるが︑また国家︑

組織の特徴としてみられるものに︑しいて指摘することとすれば証券経済社会が考えられるであろう︒いうまでも

なくこれは︑証券資本主義経済機構を前提として一般に認識されている株式の大衆化︑証券の民主化がその第一歩

であり︑それは資本と経営の分離化︑拡大化となってますます高度に止揚されつつ︑その上︑現在のごとく大規模

で複雑化せる経済関係にあっては︑企業自体の規模︑組織︑内容の如何を問わず︑すぺてその経営経済的価値現象

および︑その経済過程を記録することは必須的な要件である︒ところがそれらの記録が︑すべて絶対的に信頼性を

もつことができるかどうかは︑これまたきわめて疑問であるといわざるを得ないであろう︒企業における財務監査

は︑上述のごとく︑これらのその会計手続の全範囲についての信頼性を明確ならしめると同時に︑またそれを基礎

として作成された報告書の信頼性をも併せて確立する目標として行なわれるものなのである︒ はないのである︒

2 2 6  

(6)

すなわち一九三六年に公表したところの ったい如何ようなものであったであろうか︒ これまでによって明らかなるごとく財務監査は︑資本主義経済社会を前提として展開される︒企業の経営経済的

価値把握の過程において計算される企業会計︵財務報告︶に信頼性を付与することである︒そしてこの企業の財務

報告への信頼性付与のために行なわれる財務監査は︑併せて近時急激に高度化した証券経済社会における証券流通

の円滑化を一層推進せしめて︑その企業関係投資者たる株主の利益保護を目的とし︑この対策としての産物である

といえる︒またこの財務監査は﹁企業の会計記録の正否を確かめるばかりでなく︑さらに企業会計原則に照らし︑

公正不偏の立場から経営者の判断の当否を批判するものとし︑職業的監査人が︑企業の外部から意見を述べるわけ

であるから1財務監査の目的には︑沿革的に観念づけられている特殊の意義が付与されており︑かつ︑職業的監

査人が︑企業の側の私法上の自由な契約にもとづく依頼により︑社会的に容認された関係者の合意の範囲内におい

て集取することができた資料にもとづいて︑その意見を確立するわけであるから︑

の結果とを決定ずけるもの﹂ともなる︒

るであろう︒しからば︑プロード

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案の監査理論の内容として︑

問題とされているプロードの私案は︑

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i容

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一九三六年の﹁財務諸表の検査﹂とはい このことが財務監査の性格とそ

かくのごとくに財務監査が解され︑重要視され︑要請され得る要素が存在し︑財務監査がこのような趣旨によく

適応することは当然であって︑企業の利害関係人の保護に奉仕する基因を有するものであると断定することができ

2 2 7  

(7)

州︑株主︑取締役その他の正式な承認を必要とする行為または取引にかんしては︑証拠書類その他の許可書を

, 1 ,

 

監査人は監査実施の期間を通じて︑証憑を検査または試査する場合たると︑これに関して質問する場合である

つねにその企業の事情に照して︑内部牽制組織の合理的な妥当性と有効性を確かめることにつとめ

なければならない︒すなわち︑この内部牽制組織は原則として信頼できるところの成果をあげているかどうか︑そ

れは計画通り申分なくその機能をはたしているかどうか︑試査によって明らかにされた通りの信頼できる成果をあ

げているかどうかを確かめ︑さらに会計帳簿の記帳資料を報告する者に対して与えられる職責︑その職責の範囲︑

その権限の範囲の調査にも当然およぶものとしている︒そして欠陥を発見した場合においては監査人は特定種類に

ついての取引の試査︑または抽出法を拡大するのかどうかを決定しなければならないということ︒

伺依頼人の内部組織において内部監査制度が設定されている場合には︑これに注意を払わなければならない︒こ

れらの監査を依頼しうる程度は内部監査人の独立性と技能によって定まるからである︒それらの目的は二つの監査

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検閲しなければならないということ︒ ならないということ︒ 企業の会計処理が一般に認められたところの会計原則に準拠しているかどうか︑そしてこの原則が前年度と同

一の基準で適用されているかどうかを明らかにするために︑監査実施の期間を通じて常にその会計処理に考慮を払

確認された証憑︑書類その他記録を立証する資料を監査人が試査する場合︑記録された取引が真実に発生して

おり︑かつそれの取引による値うちが適当に記載されている旨を確認するにたるところの範囲で試査をしなければ

( 2 )  

わねばならないということ︒ 協会の年次大会において公表せられている︒それは

2 2 8  

(8)

検閲しなければならないということ︒ 立証するところの資料の検査を基礎として決定し︑

( l l )  

実施可能にして合理的であるかぎりにおいて︑債務者に直接照合して債権の確認を求めなければならない︒そ

れの方法および範囲はそのときの事情によってこれを決定するものであるということ︒

棚卸資産に関する監査人の意見は︑当該勘定についてもしあるとすれば︑在庫品の記録︑その他︑棚卸資産を

( 1 0 )   ( 9 )  

なければならないということ︒ ばならないということ︒

( 7 )  

を適当に計画し︑協力させしめることによって︑手間を節約して︑財務上の資料の信頼性を昂揚せしめることにあ

資産が全く自由であるのか︑

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なっているのかを確認するため質問を行なわねばならないということ︒ それとも担保になっているのか︑またその他のいろいろの法的権限が如何ように

現金預金の検査は有価証券︑銀行預金等を実査しまたは管理し︑或いは確認を求めると同時にこれを行なわね

ばならない︒そして確認された残高と帳癖に表示されている残高とのすべての差額を調整して合致することを確か 実査することまたは︑独立の保管人に直接照合することはすべての重要な勘定残高についてこれをなさなけれ

めるとともに銀行預金は間違いなく銀行に預け入れられていること︑さらに引出しの制限がないかどうかを確かめ

個々の人名勘定を検査または分析しなければならない︒これらの勘定が真実の債権を示すことをたしかめると

ともに︑おおよそ回収できる見込額を推定するに必要な程度においてこれらの勘定を記帳する組織を検閲しなけれ

ばならないということ︒ るということ︒

これを補充するために︑あわせて棚卸資産評価の方法と基準を

(9)

固定資産を勘定において繰越す基準を確かめなければならない︒それは︑減価︑改良︑追加︑廃棄︑修繕︑取

替の会計的取扱に関する方針︑およびこれが一般に認められた会計原則にしたがって処理されているかどうかを確

かめなければならない︒企業が準拠する基準および採用する手続が継続的に適用されているのかどうかを確かめる

( 1 ' l )  

と ︒

( 1 6 )  

合︑評価引下を行なったという旨を確かめるということ︒

( 1 9  

実地可能にして合理的であるかぎり︑監査人は棚卸に立合い︑実施される手続を十分に観察して棚卸のために

実際に用いられた方法が細密な棚卸に適合するかどうかを確かめなければならない︒多額の棚卸資産が外部の保管

人により保管されている場合においては保管人から直接に確認書を求めねばならないということ︒

⑲監査人は棚卸資産の価格に関しては質問を行ない︑その評価基準が一般に認められた会計原則に一致している

かどうか︑および評価が細密かつ入念に行なわれたかどうか︑市価が原価以下の場合にあって市価を適当に考慮し

たのであるかどうか︑売行きの遅い品または流行遅れの在庫品についてはその評価を適当に考慮したのであるかど

うかを確かめるために必要な程度の試査を行なわねばならないということ︒

有価証券はこれを実査し︑または独立の保管人に確認を求めることによって確かめなければならないというこ

( 1 3 )  

前項の検査においては棚卸資産数量の決定に関する指示事項を質問および検閲して︑これの指示事項が数量︑

品質︑状況を合理的に注意深く決定することに差支えないかどうかについて確かめなければならない︒そして期間

的区分のために採用された方法︑例えば商品の引取発送および積送品等に関して会計帳簿を実地棚卸をすることに

よって調整する方法に対して注意を払わなければならないということ︒

( 1 3  

監査人は有価証券における評価基準が一般に認められた会計原則に一致しているかどうか︑および必要ある場

(10)

あるかどうかを確めなければならないということ︒

( 2 2 )  

なければならないということ︒ 銀行︑信託会社︑抵当権者に対する債務は債権者に直接照合して確認を行ない︑その他の者に対する債務はそ

のときの事情によって必要と認める場合においては︑まったく同様の手続を行わねばならないということ︒

闘割引手形︑訴訟︑保証︑裏書等によるところの偶発債務の有無︑コミットメント

( C o m m i t m e n t )

に関する状

況および確定︑不確定の如何を問わず損失があるのかどうかについて︑なるだけ権限をもっている責任者に質問し

監査人としては引当金勘定を分析して︑設定目的に対する合理的な正確性を調査するとともに︑その設定目的

とは異なる目的のためにまたは一般に認められた会計原則に準拠したところの方法で取崩され処理されているので

閾株式の授権および発行︑株式特権売買︑委任︑権利︑転換権などの取引を立証するところの議事録および他の

会社の書類を定款の規程を考慮して検閲すべきである︒株式の発行に関しては法務局つまり登品所または名儀書替

人に照合し︑または株式の記録を参照して確かめなければならないということ︒

( 2 0 ) 

と ︒

重要な債務に脱漏がないということ︒および債務の発生に対して合理的に引当金が設定されていることを確か

めるために内部牽制組織を適当に考慮して︑その時の事情に応じて必要な手続を採用しなければならないというこ

( 1 9 )  

ければならないということ︒ 繰延勘定において繰越される金額は将来の期間にこれを配賦することがはたして適当かどうか︑各項目の償却

の方針および手続が一般に認められた原則に一致するかどうかを監査人は関係書類その他の証拠によって確かめな

( 1 8 )  

に必要なる試査を行なわねばならないということ︒

2 3 1  

(11)

ものであろうということ︒ のかどうかについて十分に確かめなければならないということ︒四監査人は各種の剰余金勘定に対するすべての借方または貸方記入の妥当性︑特に損益︑利益剰余金およびその他の剰余金が適当に区別されているかどうかを考察しなければならないということ︒閲損益諸勘定における試査または照合は︑記録された取引の正当性︑合理的な正確性︑分類の妥当性を立証するに必要なる程度において︑内部牽制組織の調査と貸借対照表勘定の検証とは併合してこれを行な行なわねばならない︒帳簿組織が不十分の場合であるとか︑内部牽制組織が不完全であるかまたは有効でない場合においては﹃勘定が適正に記帳されているのかどうかを確かめることのできる程度にまで検査の範囲を拡大しなければならない︒これは︑前年度との比較または他の統計方法との比較においては︑特に注意を要する事項を明らかにするのに役立つ

さて︑以上がプロードの﹁財務諸表の検査﹂で指摘した内容であるが︑このプロード案は︑その後において公表

せられたアメリカ会計士協会

( A A A

)

の監査基準に少なからざる影響を与えているのである︒プロードの監査理論

にしたがえば︑監査基準と監査の根本原則との関係は︑まず監査基準は重要な項目について確めるべき事項を規定

するのである︒たとえば一般に資産項目についてはその実在性︑負債項目についてはその完全性のごときがこれで

ある︒そこで監査基準によって規定された事項を確認するために如何なる監査手続を選択適用すべきかが問題にな

るが︑これはすなわち如何なる性質の証拠を求めて︑指定された事項を立証すべきかである︒この場合︑求める証

拠は合理的でなければならない︒つまり必要以上に強い証拠を求めるには及ばないとともに︑必要以上に弱い証拠

で間に合せることは監査の任務を果したことにならない︒したがって必要とする証拠の強さをできるかぎり正確に

4 )

剰余金の性質︑すなわち払込剰余金かまたはその他の資本剰余金︑配当支払に関して剰余金に何か制限がある

(12)

容に変化を及ぽすことはまぬがれないことである︒ 計量することが必要である︒この測定の尺度︑すなわち証拠を必要とする強さを定める要件が︑当該項目の重要性であり︑相対的危険性であり︑経済性である︒証拠には会計組織のなかにすでに用意されているものと監査人が自ら求めるものとがある︒いうまでもなく内部証拠と外部証拠がこれである︒このように証拠の種類によってその難易が分かれ証拠の強弱に差異が存在する︒内部証拠は求めるに易いけれども︑弱く︑外部証拠は求めるに難かしいが︑強いのである︒ところで強い証拠を必要とするにかかわらず︑弱い証拠で間に合せ︑弱い証拠で十分であるにかかわらず︑あえて強い証拠を求めることは不合理である︒強い証拠を要する項目には︑求めうる監査手続を選択し︑組合せて適用しなければならない論理に結着せざるをえない︒これがブロードの財務諸表監査における監査理論の大要であると考えるのである︒

つぎに︑貸借対照表監査は一九

00

年代の初期においてアメリカに流行したものであったが︑

ことが理由であったであろうか︒

われわれのことばにはそれぞれ歴史的な存在があり︑

れ︑それはそののち︑

できるがぎり強い証拠を

それは如何ような

その時代的背景とともにある程度の推移はその内

一八世紀の頃︑イタリアの公会計その他に端を発したといわ

イギリスにおいて発達してきたところの精密監査

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0

年代のころアメリカに貸借対照表監査として流行したものであった︒このように貸借対照表監査と呼

といいうる︒ところが︑ その生成•前身はいうまでもなく精密監査であるわけで、いわゆる時代的な推移によるものである

この精密監査と貸借対照表監査とを熱視するとき︑精密監査はつまりその監査方法に関し

0

年代もし

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(13)

てのものであり︑貸借対照表監査はつまり︑その監査対象にかんしての言葉であるがゆえに︑どちらかというと形

いわば対照的な用語をなさないのである︒しかしよく熟考するとき実際上では︑この両者間においては

まったくその監査対象には差異が存するのであって︑したがって両者の監査方法はおよそ対蹄的であるものと考え

られるのである︒具体的にいえば︑精密監査としては企業においての関係帳簿およびそれらの証憑書類︑その他す

べての面にわたる全部監査を対象とするに対し︑貸借対照表監査ではたんに貸借対照表での記録に限定される部分

監査あるにすぎないとされる︒またその方法としても︑前者がいわゆる常規手続︵帳簿・計算・証憑など突合︶を

行なうにかかわらず︑後者は直接検証︵実査・立会・確認・質問など︶であって︑いうところの記録と事実との照

これによって明らかなるごとく︑イギリスにおいて大いに発展拡大したところの精密監査は全部︵完全︶監査と

も呼ばれるように︑その監査範囲にしても会計記録のすべて全般におよぶものにして︑その方法といえども微にい

り︑細にわたるものであるはいうまでもない︒すなわち︑精密なる用語の示すごとく︑会計期のはじめにおける財

産状態を起点とし︑当該期間中に発生した取引による変動をいちいち詳細に検査し︑会計期末における財務諸表の

正否適否を検証するものである︒したがって︑精密監査の性質は︑どこまでも個別的であって︑遡及的であるとと

もに︑建設的であるといい得るのであって︑その目的の主とするところは︑結局一般的な監査の定義とされている

会計記録の正当性を検証するのであり︑誤謬や脱漏を発見したり︑詐欺不正を摘発するといったところである︒

このように精密監査は︑きわめて詳細な照査がとられる手続とされているのであるが︑それによってもたらされ 合を建前としている︒

(14)

る効果に較べて︑そのためにあまりにも多くの日時を要することとなり︑その結果として︑不当に巨額の監査費用

を招来するものとなったのである︒これは当然︑企業の監査依頼人にとって相当な経済的負担であるのはむろんの

こと︑他方の監査人といえども︑それはあまり望ましいものではなかったといえよう︒それゆえに︑できるだけ監

査事務の手数︑分量をはぶくことにつとめて︑これに要する時間と労費を節約して必然的に低減せしめようとする

要求がさかんとなり︑はじめていろいろなそのような提案がおこった︒その結果として︑精密監査の効果をどこま

でも保持しつつ︑しかもその手続の簡素化を徹底していくべきであるとする監査の仕方を工夫するという試みであ

る︒すなわち︑監査を実施する対象期間中に行われたすべての取引をいちいち照査して検証する方法をして︑期間中

における適宜のある月を抽出し︑その月間の記録については︑そのすべてにわたって詳細に徹底して吟味してゆく

つまり試査的な方法であった︒かくて︑おこなわれた部分での記録が妥当であるとして見い出すことがで

それ以外の残余の月間での記録も妥当であろうと推定して差支えがないというのが︑それの根拠であ

るとするのである︒これによって︑精密監査の労費と時間とはいちじるしく低減せられることとなり︑そしてこれ

がついにイギリスの精密監査の時代より︑アメリカにおける貸借対照表監査への方法の流行をもたらしたものとな

った原因である︒たしかに貸借対照表監査の方法的特質の︱つは︑関係帳簿記録に表示されているそれらの内容の

すべてにわたって︑個々のひとつひとつの全取引を吟味することなく︑十分に実質的な検証をすることができると

いう理念に立脚したところの監査方法である︒この監査方法は︑高度にして大規模化した企業のきわめて多い︑証

券資本の発行や証券投資の大衆化のさかんな︑アメリカの経済事情にもっともよく適合することから︑たちまちに

してアメリカに広くとりいれられ︑その発展拡大はめざましいものがあったとされている︒

(15)

モントゴメリー

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の所説﹁

0

貸借対照表に示されているすべての資産は︑貸借対照表において被

監査企業の所有に属するものであること︑そして一般に公正妥当と認められた会計原則にしたがって記載された金

額であること︒③貸借対照表に示されるべき重要な価額の資産であって︑記載されなかったものがないことのない

ようにすること︒③貸借対照表に示されている負債は︑現実においての債務かまたは偶発債務であるこ︒

0

重要

である金額の負債は︑すべて貸借対照表に明示されてあること︒伺剰余金の性質が適当に明示されてあること︒①

損益計算書および剰余金計算書は︑経営活動の成績を適正に明示しなければならないこと︒り株式資本は正当に分

類されて掲記されてあるべきこと︒そして授権資本以上に発行された株式はないということ︒⑱財務諸表について

は︑その脚注をも含めて︑全体としての重要な事実にかんして︑真実ではないところの表示をしないこと︒また理

解に必要である重要な事実での表示を省略しないこと﹂によっても明らかなごとく貸借対照表監査は︑その監査の

いうまでもなく貸借対照表記載の財産および資本においての項目にかんして︑その結果についての正当性

の検証に限定されるのであって︑当該期間における会計諸記録を全面的に徹底して検証吟味するものではない︒そ

れはどこまでも︑貸借対照表記載の資産・負債および資本の諸項目が︑はたして貸借対照表作成当日に︑それに記

載されているとおりに︑それぞれ実存しているかどうか︑そしてそれぞれの評価は正しく適正になされているかど

うかを照査するにとどめて︑それらの諸項目についてその期間に発生した個々の取引記録の照査まではしないとす

るのである︒端的に表現すると︑貸借対照表監査は︑貸借対照表勘定にかんするいわゆる検証手続であって︑その

範囲とするところは︑それに記載されている財産および資本にかかわる諸項目の正当性の検証に限定され︑それ以

(16)

このように︑本表作成当日においての財産・資本の実在性の有無とその評価の適正性の吟味を行なうのであっ

て︑もちろんその期間に発生した各取引の諸記録までの正否の検証を行わないとするのであるが︑これをもって貸

借対照表監査︑とくにアメリカにおいての大きな特質とされるのである︒

査の歴史的存在過程とその性格とによって︑ある程度の貸借対照表監査の特質を探ねることができたものと考え

G e r s t n e r

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;   A u d i t i n g .   T h e o r y   a n d   P r a c t i c e .   B r o a d ; i   F n a n c i a l   S t a t e m e n t s   o f   I n d e p e n d e n t u   P b l i c   A c c o u n t a n t s ,  

1 93 6.  

B r o a d ; h   T e   N e e d   f o r   a  S t a t e m e n t   o f   A u d i t i n g   S t a n d a r d s .   J o u r n a l   o f   A c c o u n t a n c y ,   J u l y

1

 

94 2.  

⑩  ⑨  ⑧  ⑦  ⑥  ⑥  ④  ⑧  R  ① 

る ︒ 上におよばないものであるということができる︒

いちおう貸借対照表監

お7

参照

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