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一、   契約に適合しないものの給付

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四一担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二)

担保責任の契約不履行への統合 ―

法制審議会の議論および中間試案の検討

石   崎   泰   雄

一、契約に適合しないものの給付

 

 1売買契約の趣旨に適合するもの

 

 2代金減額請求権

 

 3追完請求権とその他の救済手段

 

 4短期期間制限

二、権利の移転に関する売主の責任

三、中間試案の検討

 

 1契約の趣旨に適合するもの

 

 2目的物が契約の趣旨に適合しない場合

 

 3買主が事業者の場合の通知義務

(2)

四二

 

 4権利の移転義務の不履行

 

 5短期期間制限

―資料  中間試案(抜粋)

序今般の民法(債権関係)改正の最重要テーマは、債務(契約)不履行の再編である。その一環として、売買にお

ける担保責任も大きくその内容の変容を受けることが不可避となる。旧

稿において、担保責任の契約不履行への統

合(一元化)の方向性をみたが、いよいよその方向性自体は固まったとみることができる。

その根底にある考え方として、たとえば、売買契約が締結され、売主がその目的物を買主に給付することがその

契約内容となった場合、売主が目的物を買主に引き渡すときに、その目的物は契約の趣旨に適ったものでなければ

ならないということがある。したがって、目的物を引き渡す際に、契約の趣旨に適合しないものを給付した場合に

は、それが特定物であろうと種類物であろうと、売主は契約不履行となり、一定の要件の下で責任を負うというこ

とになる。これが、売買における担保責任が契約不履行へと統

合(一元化)されるということの根幹にある考え方

である。

(3)

四三担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二)

一、   契約に適合しないものの給付

1  売買契約の趣旨に適合するもの

現行民法五七〇条は、売買の目的物に瑕疵があったときに、売主の瑕疵担保責任が生ずることを規定する(民法

五六六条の準用)。そして、その「瑕疵」には、主観的瑕疵概念と客観的瑕疵概念の双方が含まれるとされている。

主観的瑕疵概念とは、契約において予定された品質・性能を欠いていることであり、客観的瑕疵概念とは、その種

類のものとして通常有すべき品質・性能を欠いていることであ

る。

ただ、瑕疵という言葉は、日常あまりなじみのある言葉ではないこともあり、規定の透明性という観点からは、

一般市民にとってもよりわかりやすい表現にすることが考えられる。そこで、「序」においてみた考え方からする

と、「契約不適合」という言葉によって置き換える方法があるが、むしろ肯定的表現で、「契約の趣旨に適合したも

の」を給付しなければならないというような表現にすることも考えられる。当初は使い慣れた「瑕疵」概念を用い

ることを支持していた弁護士会でも、契約の趣旨に適合するという表現に反発は大分少なくなってき

ているとされ、

また、経済界でも、「瑕疵という言葉を維持しなければ困るというような当初の強い意見は大分減ってき

ている」

といった状況にある。

このような「契約の趣旨に適合したもの」という「主観的瑕疵概念」に反対し、「目的物として通常有すべき性

質を欠いていること」を基本とした表現にすべきだと主張する意

見もあるが、基本的には「主観的適合概念」を基

(4)

四四

本に据えることに多くの支持がみられる。そして、「主観的適合概念」に「通常有すべき性質」という「客観的適

合概念」を加えた形での表現を支持する意見が出される。すなわち、「契約、合意を尊重していくことによって、

不適切な合意なりがある場合もある。若しくは合意のないときにどう考えるかといったときに、弁護士会としては

行き過ぎたものを制約する、若しくはないものについて適正な効果を与えるためには、社会通念より取引通念、そ

ういうものによる制約が常にあるのではな

いか」とされ、「当事者間が合意したかどうかわからない場面、若しく

は当事者間で特段の合意をしない場面もたくさんあるので、そのときには、本来、そのものが通常有している品質、

性能を備えたものを引き渡

すべき」だとの主張がなされる。

また、消費者契約の場合には、「通常有すべき性状を前に持ってくる案」を推す意見があ

るとの意見に対しては、

「消費者契約の場合には個別交渉がないところでの大量取引だということを念頭に置くと、消費者はこういう契約

だったら、通常、こういう性質の物を期待しているという、それが出発点にならざるを得 1(

ない」と指摘される。

この「客観的適合概念」をも導入することに対しては、通常有すべき性質が瑕疵の基準として書かれていますと、

実はうまくいかない場合が多いとされ、主観的適合概念のみで規律す 11

べきだと主張される。また、「当事者が例え

ば何かを売るというときには、それこそ社会通念上・取引通念上、通常、こういうものはこういう性質を有してい

るよね、そういう性質の物を引き渡すのだよね、という合意がなされていると見ることによって、契約適合性の判

断がされるのではな 12

いか」とされ、主観的適合概念の中に包摂されるのだから、客観的適合概念を加える必要はな

いと反論される。

「契約の趣旨に適合したもの」との判断は、当然その解釈が必要となる際には、当該契約の趣旨に照らした客観

的な判断も介入してくるので、あえて入れる必要はないといえるかもしれない。しかし、そのような規律が書かれ

(5)

四五担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) ていないところで、はたして一般市民にとってわかりやすく、使いやすいのかという視点からは疑問もある。そこで、「契約に明確に書いていない場合にどうなるのかにつき疑問が持たれることがあるのかもしれません。そこで、

契約の趣旨を導くための解釈指針を、条文に少し書き込むというようなことも、考えてよいのではな 13

いか」、ある

いは「契約の趣旨の中に…解釈の過程で取引の実情であるとか、取引の慣行が考慮されるのだということ」を配慮

した表現を入れるべきではな 14

いかとの意見が出される。

これに対しては、「一般の契約の解釈において、取引慣行その他が考慮されることは以前から言われてきた事柄

であって、そのことを契約の解釈のところに書くのか、それとも、特に取り上げて、ここに書くのかというのは、

若干、考える余地があるのではな 15

いか」、さらには、「ここで問題になっているのは、正に契約の内容の確定、ルー

ルが広くは契約の解釈のルールであって、その部分で基本的にまず合意を捉え、合意が尽きたところで、補充的な

解釈などをやり、さらにそれで駄目なら客観的な何らかの法規によって処理をするような考え方を基本として捉え

ているのであれば、それとは少しスタイルが違うような形の契約適合あるいは瑕疵のルールというものをここで設

けるというのは、私は賛成ができま 1(

せん。」と反対される。

ここは、契約の解釈の一般ルールの適用そのものともいえる問題であり、当該箇所で一般市民にもわかるように

明示して規律されるべきであろう。その後の部会、分科会では、この問題が議論の俎上に上ることはなく、これで

確定をみたものといえよう。中 1(

間試案でもそのような結果が示されており、主観的適合概念が採用されている。

(6)

四六 2  代金減額請求権

現行民法典では、権利の一部の他人物売買や数量指示売買における数量不足および一部滅失の売買において代金

減額請求権が認められている(民法五六三条一項・五六五条)が、物の瑕疵担保責任においては、代金減額分の算

定が困難であるとの理由で、規定上は認められていない(民法五六六・五七〇条)。

実際には、損害賠償請求で満足できるケースがほとんどであろうが、売主に帰責事由がないため免責される場合

には、給付の等価的な均衡を維持する最低限の手段として独自の意義を有する。したがって代金減額請求権の導入

自体に対してはこぞって賛成さ 1(

れる。

問題となるのは、代金減額請求権の行使のあり方、特に他の救済手段の行使との関係についてである。たとえば、

「損害賠償として、従来でいう履行利益や逸失利益、あるいは瑕疵のない状態にするための修補費用のようなもの

と、この代金減額は相容れ 1(

ない」ものであり、解除権の行使との関係においても同様のことがいえる。そこで、こ

の理を単純化して規律しようとすると、「代金減額請求権を行使した場合には、損害賠償請求権や解除権の行使が

できない」というように規定することになる。

ただ、そうした場合、実務的に次のような問題があるのではないかということが主張される。すなわち、「代金

減額請求権ないし代金減額権なるものを形成権的に考えて、一旦、意思表示をすれば、もはや権利行使ができない

という趣旨だとすれば、それは実務的に使いにくいものになるのではないか。…代金減額してくださいよという話

をして交渉してみる。しかし、代金減額について割合若しくは絶対額について満足がいかなかったら、それだった

(7)

四七担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) ら、解除しますよ、損害賠償しますよと交渉が変わっていく可能性は十分にある。…免責事由があるかどうかよく分からない事案において、まずは等価部分だけの回復はしたいということで、代金減額請求権を行使する。他方で帰責事由が仮にあるのなら損害賠償だって取れるわけですから、そこの部分も併せて、別途、請求をす 2(

る。」、「一

〇〇で売買をした、受け取ったものに瑕疵がある、瑕疵があるほうは三〇の減額が相当だと思って、三〇の代金減

額を予定して減額請求した。しかし、相手方からは一〇の減額だったら応じるよと言ってきたときに、それなら修

補してくださいという請求権の行使、これが否定されるのは困ります。…減額の意思表示があったとして、この規

律を入れて、もはや追完請求権もできません、解除もできません。後は、三〇が本当に一〇なのか、一五なのかは、

裁判所の判断に委ねて、それ以上のことは手足が縛られる。それはおかしいで 21

すね」との指摘である。

また、代金減額請求権を行使した場合に「それ以外の損害があっても認められないということを意味していると

するならば、それを理解して消費者が代金減額を選んだのかというと、そう簡単にそうであるとは言 22

えない」。あ

るいは、代金減額請求権と追完との関連で異論が呈される。「製品安全の見地から…メーカー側としては瑕疵ある

製品は極力回収して修理したり、あるいは新しいものへ交換したりとか、要するに、製品安全の見地から、瑕疵の

根絶を最優先に対策を講じたいという方針でいるのに、相手方が一方的に代金減額等をしてしまって、それで満足

してしまうという状態を容認しなければならないのは、大変困 23

る」と、売主の追完の優先への配慮が必要であるこ

とを示唆する意見もみられる。

さらに、「代金減額請求権を規定するときの要件が今一つストレートに語られないまま議論されていることに違

和感があります。また、他の救済手段との関係でいえば、効果もそういう意味ではもう少し意識した議論がされて

しかるべきなのではな 24

いか」との懸念に対しては、「代金減額請求については…要件を加重するだの、何だのとい

(8)

四八 うことは要 25

らない」、とか「代金減額請求権の要件は、売買目的物に瑕疵があるということだけで尽きていて、形

成権だからという性格付けによって、要件を更に加重すべきものだとは考えられてい 2(

ない」と反論される。

逆に、「代金減額請求権を行使した場合に追完請求権や、あるいはそれに代わる損害賠償請求権、解除権を行使

することができないというのは、…こういう規定を置くことには非常に消極的に考えてお 2(

ります。」、「代金減額と

いうのは、損害賠償が発動しないような場合にできるということであって、逆に損害賠償ができるような要件の下

でやるのであれば、それは損害賠償プラス相殺でもできることなのだから、ほかの救済手段は封じられませんとい

うようなことさえも考えられるのではな 2(

いか」と他の救済手段との関係への配慮を求める意見がある。

この問題に関しては、理論的には、代金減額という救済手段を行使することと、追完、解除、履行利益の損害賠

償といった救済手段を行使することとは両立しえないのであるが、実務的には、買主が他の法的救済手段を行使し

ないとの明確な意思をもって、代金減額請求権を行使した場合のように、確定的に代金減額のみしか行使しない場

合に限定しないと、買主の他の権利行使が不当に制約されてしまうケースが生じてしまうという懸念がある。そこ

で、この実務的懸念を払拭するような規律の整備が求められることになり、それは中間試案に反映される。

3  追完請求権とその他の救済手段

一般的に契約が成立すると、債権者には、当該契約内容の「本来的履行請求権」が認められる。その「不履行」

があった場合には、債権者には、その法的救済としての不履行に基づく「履行請求権」が生ずる。この不履行に基

づく履行請求権は、債務者に帰責事由がなくても行使できるものであるが、履行請求権の限界事由(履行が不可能

(9)

四九担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) であること、過分の費用を要すること、その他、契約の趣旨に照らして履行請求が相当でないこと)があれば、これは認められない。

そして、売買契約において、契約の趣旨に適合したものの給付がなされなかった場合には、買主には履行請求権

の一種である追完請求権(修補、代替物給付、追加給付)が認められる。したがって、売買契約においても契約の

一般規定と同様に追完請求権の限界事由が考えられ、追完請求権の限界事由が存する場合には追完請求は認められ

ない。契約の一般規定においては、基本的には不履行の場合の履行請求権の優位性が認められるが、これと対応して売

買契約の不履行においても、追完請求権の優位性が認められるべきであり、売買契約の目的を達成できないような

場合を除き、基本的には相当期間を定めた追完請求をし、期間が徒過することによりはじめて代金減額請求権や解

除権の行使が可能となるべきである。

こうした追完の催告制度を採用することにより、売主に「追完権」なるものを付与することなく、売主に追完の

機会を付与することができ、売主の追完の利益も確保できる途が開かれる。

審議会の議論では、「代金減額請求を行使する場合に、催告を要しないという乙案が、本来的な追完請求権があ

ることに照らして、果たしてい 2(

いのか」とされ、追完請求権の優位性への意識がみられる。ただ、これは買主の追

完請求の優先という趣旨であって、「債務不履行した売主が追完権的な形で強くいえるような構成については、危

惧感を表明する方々が多くおります。…少なくとも売主側のそういう代案を採用するには、買主側に不利益がない

こと、買主側の選択に合理性が欠けている、若しくは必要性に乏しいこと、かつ売主側の提案が合理的であること、

…そういう要件が充足される必要があるのではな 3(

いか」と、売主の追完の機会の付与には消極的な意見もあるが、

(10)

五〇

「経済界のメーカーの方々からすると、…自分たちで修補するほうがはるかに安く上がるし、適切な修補ができる

と言われるのではないか…それなりに経済的に合理的な要請もありますので、そこにも配慮したルールにする必要

があるのではな 31

いか」とされ、これはまさに売主への追完の機会の付与と符合する見解である。

そこで、第一次的には、不履行に遭った被害者である買主の追完請求権が優先し、不履行をした当の売主には、

買主の利益を損なわないような限定的な形での追完の機会の付与を認めるのが適当だということになろう。

このような議論の方向性を受けて、中間試案のたたき台 32

案が示され、第六七回会議(平成二五年一月二二日)に

おいて審議される。その内容は、買主の追完請求に対して、売主がそれと異なる方法による追完の提供をしたとき

に、それが買主に不相当な負担を課するものとならないときに限って、これを認めようというものである。

これに否定的な見解として、「消費者契約で…事業者のほうから…こうしますと言われたときに、消費者のほう

がいやいや違うんですという話をどこまで言えるの 33

か」という意見が唯一出されるが、基本的には売主への追完の

機会の付与に肯定的な見解がほとんどである。すなわち、「権利という言葉を使わずに、一定の追完の請求に対し

て相手に不相当な負担を課さない別の履行の提供をして、それが合理的であれば債務不履行にならないということ

だけを規律している…それは特別な権利を認めるとかいうことではなくて、取引の合理的な判断基準が書かれてい

るだけではな 34

いか」、あるいは「双方の提案の出し合いのプロセスの中で、あるべきところへたどり着いていこう

という、その発想方法が古典的な伝統的民法の権利構成からいくと、違和感を感ずるということなのかもしれない

んですけれども、実際の紛争解決プロセスにはより適 35

合的だ」と評価され、さらに「売主がそれと異なる方法によ

る追完の提供をしたと言えるのは、飽くまでも当初の契約の趣旨に照らして、それが契約の趣旨に適合した追完方

法であると言える場合であって、そう言えなければ、それは追完の提供をしたことにならない…『不相当』の判断

(11)

五一担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) 基準は、…例えばこの代金でこのような性質をもった目的物を買うという契約をした場合に、その目的がこの追完の方法では実質的には達成できない。それよりも低いもので我慢せよということになってしまうときには、買主に不相当な負担を課すことにな 3(

る」と、売主に対する追完の機会の付与が合理性のあることだと説明される。

これに対して、「異なる方法による契約の趣旨に適合した追完の提供をしたときはとでも入れてくれると、安心

感は広 3(

がる」との修正意見が出され、これは、中間試案に反映されることになる。

 4短期期間制限

現行瑕疵担保責任においては、買主は事実を知った時から一年以内に権利行使をしなければならない(民法五七

〇条・五六六条三項)とされ、これは紛争を速やかに解決し公平を確保するために設けられたものであ 3(

るとされる。

今般の改正では、消滅時効一般に関しても改正の対象とされており、もし一〇年間という消滅時効の期間を維持

した上で、「債権者が債権の発生原因及び債務者を知った時」から三年ないし五年という消滅時効期間を新たに設

けた場合には、瑕疵担保責任における一年の除斥期間を消滅時効の一般原則に服させるということも考えられる。

審議会においても、瑕疵担保の期間制限を削除して、消滅時効の一般規定に服させることを支持する意 3(

見もある。

これに対して、実務家委員・幹事からは、消滅時効の一般原則に加えて、瑕疵を知った日から一年ないし二年以内

の期間制限を支持する意 4(

見が出される。その場合、短期の期間制限内の権利行使をしないことによって失権すると

いう規律に対しては、異論が出され、瑕疵の存在の「通知」でよいとすべきだとする意 41

見が出される。

また、短期期間制限を一年とか限るのではなく、瑕疵を知った日から「相当期間内」に通知する…といった規定

(12)

五二 案に対しては、裁判所としての判断が難 42

しいとか、「瑕疵を知った日というのは、…実際の裁判では基本的には証

拠との関係である程度は決まってくる…相当期間というのは全くそういうものがな 43

い」、あるいは「買主の側にと

っても、この明確性ということは重要なのではないか…法律で相当期間と書かれているとしても、相当期間という

のがどれくらいの期間を指すのか、しばらく期間が経過したから自分はもはや権利行使はできないのかということ

が、買主にはよくわからず、対応に困ってしまいま 44

す。」、「この規定を使う当事者の立場になってみると、売主に

とっても買主にとっても相当期間という概念が不明確なために使いにくく、それゆえ不安定な立場に置かれること

になるのではない 45

か」と批判される。

このような批判に対する反論として、「取引の実情に応じて常識的な期間内に、そして、買主にとって困難では

ないタイミングで欠陥がありますよと、あるいは不都合があるということを言えば、あとは普通の時効期間内は権

利行使ができるというルールにしてはどうか…取引の常識という点からいうと、一年とかちっと切ってしまうとい

うことはどうも硬直的すぎる。瑕疵を知った日から一年ですので、いつから始まるか自体が事案によって様々で、

売主には分からないわけですが、本当にこれが常識にかなっているのかというところに疑問があ 4(

る」とされる。

この問題については、「『相当な期間』を画するときの判断基準というのは、…『目的物の性質』というのを例と

して挙げていて、…取引の常識内でできるだけ早くというくらいの考え方ということをここで『相当な期間』とい

う形で表現して、具体的な適用場面については、個別の取引状況などに応じて画してい 4(

く」と説明されるように、

「契約の趣旨等」における判断と同質のものだと思われる。ただ、規定を用いる当事者としては、より明確な具体

的基準等が示されていたほうが、便宜であることは確かであり、これまでの規定よりあいまいにするべきではなか

ろう。

(13)

五三担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) この問題と関連して、買主が事業者の場合の通知義務に関して、いくつか意見が出される。すなわち、「事業者

が買主であるということだけではなくて、その事業の範囲で買主となった場合という限定を加えた場合はどうで

4(

ょうか。」、あるいは「期間制限するときには悪意では足りないのではないかと、狭すぎるのではない 4(

か」、また

「商法五二六条…買主側の義務を重くしていて、やや厳しい規定ではないか…乙―三案というのはこういう系譜を

引いていて、…やや問題がある…失権というのはいかにも強 5(

すぎる」といった指摘である。これらの指摘も、中間

試案において配慮されることになる。

二、   権利の移転に関する売主の責任

現行の権利の移転に関する担保責任(民法五六一~五六七条)に関しては、債務不履行の一般原則とは異なる規

律がなされているが、ここでも、債務不履行責任へと統合(一元化)することが、規律の簡明化に資する。

審議会の議論では、代金減額の問題に議論は集中する。特に抵当権等の担保の負担のついた権利について、代金

減額請求を認めることへの疑問である。すなわち、「抵当権が付いている不動産を購入するときに代金減額という

考え方がそもそも当てはまるの 51

か。」、「デフォルトリスクをどう評価するかによって、当該抵当権の負担付不動産

の客観的市場価値というのが決まってくるかもしれな 52

い」、「抵当権の負担のない状態にするためにかかる費用は、

一種の修補ないしは追完にかかる費用と質的には同じものですので、損害賠償として請求していくことになるので

はない 53

か」などと批判される。さらには、抵当権の問題に限らず、より一般的に「権利の瑕疵全ての場合に妥当す

る一般的なルールとして、代金減額請求権の規定を置くのが適切なのかという問題が、ここにあるのではない 54

か」、

(14)

五四

「権利移転義務のところで他人物の全部、一部の場合のほか、地上権、用益権付きであるとか、担保権関連である

とか、そういうものを一切含んでくるということで、それがその後の規律の全部にまたがるものとして示されてい

るのですが、必ずしもそうではない想定で規律が考えられているところがあるのではない 55

か」と疑問を提起される。

分科会においても、「抵当権であるならば、何もできずに競売されてしまったら損害賠償がありうる…被担保債

権を払えば、それの代位弁済による求償による解決もある…他の類型のようにあるべき姿と比較して減額分を出す

ことは困難ではない 5(

か。」、「将来、担保権が実行されるかもしれないという瑕疵をどうやって見積もるかというの

は簡単ではないというか、…およそ無理ではない 5(

か」と批判される。

このように権利の移転義務の不履行の中で、抵当権等の金銭債務の担保を内容とする権利の負担がある場合につ

いては、代金減額には否定的な意見が多く出されたが、中間試案では、こうした批判は採用されず、(注)に掲げ

られただけである。その理由として、「買主が自らのイニシアティブで担保権の負担を消除することを前提に、売

主との法律関係については代金減額請求権の行使により終局的に処理されることを考えると、あえて金銭債務の担

保を内容とする権利の負担がある場合について、代金減額請求権を適用除外とするまでの必要はないと考えら

5(

る。」からだとされる。

また、権利移転義務における代金減額の定め方に対しても否定的意 5(

見が出され、他の救済手段との関係において

は、「買主が代金減額を請求するという言い方を仮にしたとしても、買主の本来の認識ないし意図は、損害賠償請

求権を行使し、それと代金債務とを対当額で相殺するということにあり、そのようなつもりで代金の減額という場

合も多いのではないか…当事者の意図ないし認識と離れたところで、他の権利行使が封じられるということがない

ような工夫が必 ((

要だ」と、ここでも契約の趣旨に適合しないものの給付の場合と同様の主張がなされる。

(15)

五五担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) 一方、弁護士会では、「催告を要するという考え方に賛成する意見が、物の瑕疵の場合よりも多 (1

い」とされ、そ

の理由として「ここはきちんとした権利を移転しなかった場合に、その移転を求めたりするわけで、代わりがあり

ませんから、本来的請求をまずするのが筋であって、それに応えてくれないときに初めて減額請求ができるという

考え方は十分あり得 (2

る」からだとされる。

権利の移転義務の場合の短期期間制限に関しては、物の瑕疵とは異なり、消滅時効一般の原則を支持する意 (3

見が

多いが、その根拠として、「権利の瑕疵について、他人のものである、地上権があるやなしや、用益権があるやな

しや、地役権があるやなしや、それは売主サイドとして普通は分かっているはずですから、基本的には原則どおり

でいいのではな (4

いか。」とされ、物の瑕疵のケースとは異なり、消滅時効の一般原則によることが支持され、これ

は中間試案に反映されることになる。

三、   中間試案の検討

これまで、売買における瑕疵担保責任の規定は、民法学上最も理解の困難なものの一つとして、学説上の争いも

喧しく、様々な解釈の工夫が示されてきた。そして、現代の社会が、特定物の売買を中心とした取引から、大量生

産品の種類物売買を中心としたものへと推移したことを反映させた、民法典の「現代化」の要請がある。同時に、

世界的法状況において、このような現代社会の取引状況に対応した取引法の現代化が達成されつつあるという比較

法的観点からも、こうした立法・法改正の方向は必然的なものといえるであろう。そして、その具体的な方向とは、

瑕疵担保責任の契約不履行への統合(一元化)である。

(16)

五六  1契約の趣旨に適合するもの

中間試案(第三五の三  売主の義務)において、物の瑕疵の契約不履行への統合(一元化)という基本的方向性

が示されている。ここでは、物の瑕疵(

3( 2))に加え、権利の瑕疵(

3( 3))、他人物売買(

3( 4))もすべ

て、契約不履行に統合(一元化)された徹底したものとなっている。特に(

3( 2))において、「引き渡すべき目

的物は、種類、品質及び数量に関して、当該売買契約の趣旨に適合するものでなければならない」とされ、これま

での「瑕疵」概念を廃し、「契約の趣旨に適合するもの」という新たな概念を導入する。ここに、特定物売買と種

類物売買、さらに数量不足及び一部滅失の場合が統合されて扱われることになる。これは、規定の統一性・簡明性

という点で、一般市民にとっての民法典のわかりやすさ、使いさすさ、透明性、簡便性といった点からも望ましい

規定のあり方だと評価できる。

また、当該「契約の趣旨に適合するもの」という「契約適合性」概念は、基本的には、当該契約で予定されてい

た品質、性状等を備えているという「主観的適合性」を意味する。そうした主観的適合性であっても、合意内容が

判然としない場合には、当該契約の諸状況から契約の趣旨に照らして判断されるのであり、その際、社会通念・取

引通念等の客観的要素も含まれうるのであるから、目的物が「通常有すべき品質等」の「客観的適合性」概念は、

規律として入れる必要がな (5

いとの理解である。もちろん、理論的にはその通りなのであるが、民法典の規定のあり

方として、それで一般市民にとって透明性があり、わかりやすい規定といえるかということにおいては疑問もある。

ここは、明示的に「通常有すべき性質等」の客観的適合性概念を規定として掲げておいたほうが、市民にとって使

(17)

五七担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) いやすい民法典といえるのではなかろうか。

 2目的物が契約の趣旨に適合しない場合

契約の締結によって債権が生じると、債権者にはその最も根源的・中心的な権利である「本来的履行請求権」が

認められる。そして、その契約「不履行」があったときには、債権者には法的救済権の一つとしての不履行に基づ

く「履行請求権」が認められる。これは厳密にいうと、「本来的履行請求権」と完全には同一のものではない。た

とえば、履行期が徒過したという場合、それは不履行であり「履行請求権」を行使できるが、それは、当初予定さ

れていた履行期における「本来的履行」ではなく、「履行」+「遅延賠償」という内容へと変容したものとなって

いる。したがって、まだ不履行に遭遇していない段階で認められる「本来的履行請求権」と不履行に基づく「履行

請求権」とは正確にいうと同一のものではない。

そして、売買契約において、目的物が契約の趣旨に適合しないものであった場合には、契約不履行に統合(一元

化)されるため、これも「不履行」の一類型だといえる。したがって、法的救済としての「履行請求権」が最も根

源的な救済手段として認められるが、契約の趣旨に適合しないものの給付であるため、ここ売買契約においては、

「履行請求権」の一種としての独自の「追完請求権」が認められる。そして、その内容は、数量不足の場合も含ま

れるので、目的物の「修補、不足分の引き渡し、または代替物の引き渡し」(

4( 1))ということになる。

一般規定における法的救済としての「履行請求権」が、債権者にとっての最も根源的な権利であることに対応し、

売買契約における法的救済としての「追完請求権」も買主にとっては最も本質的な権利である。必然的に履行請求

(18)

五八

権の優位性は追完請求権の優位性を意味する。ただ、今見たように追完内容が特に修補、代替物の引き渡しという

独自性のあるものなので、格別の配慮が必要となる。不履行を被ったのは買主であるから、買主に第一次的に追完

請求権が認められる(

4( 1))のは、当然であるが、契約に適合しないものの「不履行」の場合には、数量不足

の場合の追加給付を除くと、修補と代替物の引き渡しという二種類の方法がある。このように追完請求は、独自性

の強いものであるため、一般的規定における履行請求権の限界事由の適用においては、特有の状況の勘案も必要と

なってこよう。そしてさらに、ここに不履行当事者である売主にも、一定の追完の機会という利益を認めるべき余

地がある。買主・売主間の利害の調整が難しいところであるが、「売主の提供する方法が契約の趣旨に適合し、か

つ、買主に不相当な負担を課すものでないときに限り」というようにかなり限定した要件の下で、売主にも第二次

的に追完の機会を付与するものとなっており、基本的にはこのような規律の方向でよいであろう。ただ、買主の

「不相当な負担」というのがわかりにくいので、ここはより直截的に「不相当な不利益」と明示したほうがよかろ

う。このように契約の趣旨に適合するものの給付がなされない場合には、追完請求権の優位性が認められるが、これ

は買主が代金減額請求権を行使する場合も同様である。原則として、相当期間を定めた追完の催告をし、売主がそ

の期間内に追完をしないときに、買主は代金減額請求をすることができる(

5( 1))。したがって、売主には相当

の期間内に追完をする機会が付与されたことになり、これによりここでも追完の優位性が担保される。そして、代

金減額という法的救済は、履行請求権の限界事由があるときにも、売主に帰責事由がない場合にも認められる救済

手段であることから、売主と買主との債権債務の等価的均衡を回復するための買主にとっての最後の拠り所となる

法的救済手段だといえる。つまり、買主にとっては、最低限代金減額請求権という手段が常に手中に存するのであ

(19)

五九担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) り、実際これを行使するのは、他の法的救済手段の行使が不可能か、それではうまくいかない場合であろう。そこで、他の法的救済手段が行使可能であり、その行使の意思も放棄したわけではない場合に、代金減額請求権の行使をしたと評価されて、他の救済の途が閉ざされてしまうことは回避されるべきであろう。

ところが、代金減額は他の救済手段、特に追完や解除、履行利益の損害賠償とは両立しないものであるため、格

別の配慮が必要となる。そこで、代金減額請求権の意思表示は、「履行の追完を請求する権利(履行の追完に代わ

る損害の賠償を請求する権利を含む。)及び契約の解除をする権利を放棄する旨の意思表示と同時にしなければ、

その効力を生じないものとする。」と配慮がなされる。代金減額請求権の行使と同時にこれらの権利を放棄する旨

の意思表示が必要だということになり、少し煩瑣ではあるが、こうした規定を入れることにより、代金減額請求権

の行使を選択すれば、他のこのような権利をもはや行使できないということが、買主には明確となるというメリッ

トがある。

 3買主が事業者の場合の通知義務

商法五二六条においては、商人間の売買において買主の目的物検査義務が規定されている。この適用範囲を、

「買主が事業者であり、その事業の範囲内で売買契約をした場合」に拡大しようという規定がおかれる(

(( 1))。

これまでの商人間というきわめて限定されたものから買主が事業者の場合に拡大されるので、より有用な規定にな

るとはいえよう。また、買主は、契約の趣旨に適合しないものであることを知ったが、検査をすれば知ることがで

きたときは、相当な期間内の売主への通知が必要となる(

(( 2)(

3))。審議会で、一般買主の場合に不明確で

(20)

六〇

あるとして批判を受けた「相当な期間内」という文言であるが、ここは、検査する買主が事業者であり、その事業

での売買契約であるため、専門家としての判断力は十分にあるということで「相当な期間内」として問題はないで

あろう。この通知義務の懈怠の効果として、追完請求権、損害賠償請求権、契約の解除権、代金減額請求権の行使ができ

なくなるとされる(

(( 3))。この効果が強すぎるとして、たとえば損害賠償債務との相殺による処理に委ねるべ

きかどうかという問題に関しても、ここもやはり買主が当該事業の事業者であるということから、失権を認めても

問題ないであろう。

 4権利の移転義務の不履行

現行民法五六一~五六七条では、債務不履行の一般原則とは異質の内容を有する規定も含まれている。数量不足

又は一部滅失の場合の売主の担保責任の規定である民法五六五条は、従来の物の瑕疵、つまり「契約の趣旨に適合

するもの」へと移行・統合され、そして残った規定は、権利移転義務の不履行に関する売主の責任として、ここで

も、不履行の一般原則に統合されたものとなる。買主の善意・悪意といった主観的要件が廃されていること、売主

が善意の場合の解除権の規律の廃止等、不履行への統合という簡明化がなされており、妥当なものだと思われる。

(21)

六一担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二)

 5短期期間制限

現行民法典の物の瑕疵担保責任では、「事実を知った時から一年以内」という短期期間制限が設けられており

(民法五七〇・五六六条三項)、数量不足又は物の一部滅失の場合も同様である(民法五六五・五六四条)。消滅時

効一般の規定とは区別されたこのよう短期期間制限が設けられた根拠としては、次のような点が挙げられている。

すなわち、「①  目的物の引き渡し後は履行が終了したとの期待が売主に生ずること、②  物の瑕疵の有無は目的

物の使用や時間経過による劣化等により比較的短期間で判断が困難になるから、短期の期間制限を設けることによ

り法律関係を早期に安定化する必要があること」である。

しかし、これらの根拠も決定的なものとはいえないものであるところから、短期期間制限を廃止することも議論

の俎上に載せられている。

もっとも、消滅時効一般についても改正の議論が進められており、この結果次第によっては、ここに大きな影響

を及ぼすことが考えられる。消滅時効一般についての改正の議論で、注目すべき方向性がある。それは比較法的動

向として、ドイツ法、フランス法において、いずれも起算点を異にする長短二種類の時効期間を組み合わせたもの

が採用されてい ((

るところである。現行民法典でも、不法行為による損害賠償において長短二種類の期間制限が採用

されており、そこでは短期のものとして「…損害および加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によ

って消滅する」(民法七二四条)とされている。

この不法行為の規定の趣旨は、まさに売買契約における「契約の趣旨に適合しないものの引き渡し」の場合にも

(22)

六二

妥当するのではなかろうか。これは、契約の趣旨に適合しないものであることを買主が知った時から「一年以内」

に通知しなければ権利行使できな ((

いとする乙案に対応するものであり、ここに一年とあるのは短すぎるとされるの

で、ここを三年とすることも考えられよう。そして、消滅時効の一般規定の改正案でも、長期の時効期間に加え、

「債権者が債権発生の原因及び債務者を知った時」という起算点から「三年間/四年間/五年間」という短期の時 効期間を設けるとするも ((

のが示されている。

消滅時効一般について、その本質的な理解に基づく改正案が提示されれば、それは「契約の趣旨に適合しないも

のの引き渡し」の場合の短期期間制限をも包摂することが可能となるはずであり、ここでも消滅時効一般規定への

統合が可能であると考える。

一方、権利移転義務の不履行に関しては、短期間でその不履行の判断が困難になるとは考え難 ((

いとされ、消滅時

効の一般原則に委ねられている。

そこで、契約の趣旨に適合しないものの引き渡しも、権利移転義務の不履行とともに消滅時効の一般規定へと統

合されれば、きわめて簡明性のある時効規定となるであろう。もちろんそのためには、一般的消滅時効の理解を十

分深めたうえでの改正をなすことが前提となる。

(23)

六三担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二)

―資料   中間試案(抜粋)

35  売買  3売主の義務

⑴  売主は、財産権を買主に移転する義務を負うほか、売買の内容に従い、次に掲げる義務を負うものとする。

ア  買主に売買の目的物を引き渡す義務 イ  買主に、登記、登録その他の売買の内容である権利の移転を第三者に対抗するための要件を具備させる義務

⑵  売主が買主に引き渡すべき目的物は、種類、品質及び数量に関して、当該売買契約の趣旨に適合するものでなければ

ならないものとする。

⑶  売主が買主に移転すべき権利は、当該売買契約の趣旨に適合しない他人の地上権、抵当権その他の権利による負担又

は当該売買契約の趣旨に適合しない法令の制限がないものでなければならないものとする。

⑷  他人の権利を売買の内容としたとき(権利の一部が他人に属するときを含む。)は、売主は、その権利を取得して買

主に移転する義務を負うものとする。

(注)上記⑵については、民法第五七〇条の「瑕疵」という文言を維持して表現するという考え方がある。

 4目的物が契約の趣旨に適合しない場合の売主の責任

(24)

六四

民法第五六五条及び第五七〇条本文の規律(代金減額請求・期間制限に関するものを除く。)を次のように改めるもの

とする。

⑴  引き渡された目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないものであるときは、買主は、その内容に応じて、

売主に対し、目的物の修補、不足分の引渡し又は代替物の引渡しによる履行の追完を請求することができるものとする。

ただし、その権利につき履行請求権の限界事由があるときは、この限りでないものとする。

⑵  引き渡された目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、債務不

履行の一般原則に従って、その不履行による損害の賠償を請求し、又はその不履行による契約の解除をすることができ

るものとする。

⑶  売主の提供する履行の追完の方法が買主の請求する方法と異なる場合には、売主の提供する方法が契約の趣旨に適合

し、かつ、買主に不相当な負担を課するものでないときに限り、履行の追完は、売主が提供する方法によるものとする。

 5目的物が契約の趣旨に適合しない場合における買主の代金減額請求権

前記

4(民法第五六五条・第五七〇条関係)に、次のような規律を付け加えるものとする。

⑴  引き渡された目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないものである場合において、買主が相当の期間を定

めて履行の追完の催告をし、売主がその期間内に履行の追完をしないときは、買主は、意思表示により、その不適合の

程度に応じて代金の減額を請求することができるものとする。

⑵  次に掲げる場合には、上記⑴の催告を要しないものとする。

ア  履行の追完を請求する権利につき、履行請求権の限界事由があるとき。

(25)

六五担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) イ  売主が履行の追完をする意思がない旨を表示したことその他の事由により、売主が履行の追完をする見込みがないこ

とが明白であるとき。

⑶  上記⑴の意思表示は、履行の追完を請求する権利(履行の追完に代わる損害の賠償を請求する権利を含む。)及び契

約の解除をする権利を放棄する旨の意思表示と同時にしなければ、その効力を生じないものとする。

 (目的物が契約の趣旨に適合しない場合における買主の権利の期間制限

民法第五六五条及び第五七〇条本文の規律のうち期間制限に関するものは、次のいずれかの案のように改めるものとす

る。【甲案】  引き渡された目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないものである場合の買主の権利につき、消滅時

効の一般原則とは別の期間制限(民法第五六四条、第五六六条第三項参照)を廃止するものとする。

【乙案】  消滅時効の一般原則に加え、引き渡された目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないものであること

を買主が知った時から[一年以内]にそれを売主に通知しないときは、買主は、前記

4又は

5による権利を行使す

ることができないものとする。ただし、売主が引渡しの時に目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しない

ものであることを知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでないものとする。

 (買主が事業者の場合における目的物検査義務及び適時通知義務

⑴  買主が事業者であり、その事業の範囲内で売買契約をした場合において、買主は、その売買契約に基づき目的物を受

け取ったときは、遅滞なくその目的物の検査をしなければならないものとする。

(26)

六六

⑵  上記⑴の場合において、買主は、受け取った目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないものであることを

知ったときは、相当な期間内にそれを売主に通知しなければならないものとする。

⑶  買主は、上記⑵の期間内に通知をしなかったときは、前記

4又は

5による権利を行使することができないものとする。

上記⑴の検査をしなかった場合において、検査をすれば目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないことを知

ることができた時から相当な期間内にそれを売主に通知しなかったときも、同様とするものとする。

⑷  上記⑶は、売主が引渡しの時に目的物が前記

3⑵に違反して契約の趣旨に適合しないものであることを知り、又は重

大な過失によって知らなかったときは、適用しないものとする。

(注

1)これらのような規定を設けないという考え方がある。また、上記⑶についてのみ、規定を設けないという考え方

がある。

(注

2)事業者の定義について、引き続き検討する必要がある。

 (権利移転義務の不履行に関する売主の責任等

民法第五六一条から第五六七条まで(第五六五条を除く。)の規律を次のように改めるものとする。

⑴  売主が買主に売買の内容である権利の全部又は一部を移転せず、又は売主が移転した権利に前記

3⑶に違反する他人

の権利による負担若しくは法令の制限があるときは、買主は、売主に対し、一般原則に従って、その履行を請求し、そ

の不履行による損害の賠償を請求し、又はその不履行による契約の解除をすることができるものとする。

⑵  上記⑴の債務不履行がある場合(移転すべき権利の全部を移転しない場合を除く。)において、買主が相当の期間を

定めてその履行の催告をし、売主がその期間内に履行をしないときは、買主は、意思表示により、不履行の程度に応じ

(27)

六七担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) て代金の減額を請求することができるものとする。⑶  次に掲げる場合には、上記⑵の催告を要しないものとする。

ア  履行を請求する権利につき、履行請求権の限界事由があるとき。

イ  売主が履行をする意思がない旨を表示したことその他の事由により、売主が履行をする見込みがないことが明白であ

るとき。

⑷  上記⑵の意思表示は、履行を請求する権利(履行に代わる損害の賠償を請求する権利を含む。)及び契約の解除をす

る権利を放棄する旨の意思表示と同時にしなければ、その効力を生じないものとする。

(注)上記⑵の規律は、抵当権等の金銭債務の担保を内容とする権利による負担がある場合については、適用しないものと

するという考え方がある。

( 一頁以下。 1) 石崎泰雄「瑕疵担保責任の『不履行』への統合―法制審議会の議論をめぐって―」法学会雑誌五二巻一号(二〇一一年)

( 年)三七頁以下に所収されている。   年)二七三頁以下。なお、これは同『契約不履行の基本構造―民法典の制定とその改正への道―』(成文堂、二〇〇九 2) 「統合理論」の提唱として、石崎泰雄「瑕疵担保責任と債務不履行責任との統合理論」早稲田法学七〇巻三号(一九九五 Web3) 資料として、民法(債権関係)部会資料一五

- 二

「民法(債権関係)の改正に関する検討事項(一〇)詳細版」一七頁。(

(   以下、審議会「「第五二回議事録」として引用する。   Web4) 資料、法制審議会「民法(債権関係)部会第五二回会議議事録」(平成二四年七月一七日)(岡正晶委員)八頁。

(  5) 審議会「第五二回議事録」(佐成実委員)九頁。  6) 審議会「第五二回議事録」(大島博委員)八頁。

(28)

六八

(  7) 審議会「第五二回議事録」(中井康之委員)一〇頁。

(  8) 審議会「第五二回議事録」(中井委員)九頁。

(  9) 審議会「第五二回議事録」(岡正晶委員)一二頁。

( 10  ) 審議会「第五二回議事録」(鎌田薫部会長)一三頁。 11  ) 審議会「第五二回議事録」(山本敬三幹事)九

( 〇頁。 - 一

12  ) 審議会「第五二回議事録」(道垣内弘人幹事)一〇

( 一頁。 - 一

( 13  ) 審議会「第五二回議事録」(鹿野菜穂子幹事)一一頁。 14  ) 審議会「第五二回議事録」((中井委員)一一

- 一

二頁。(

( 15  ) 審議会「第五二回議事録」(道垣内幹事)一二頁。

( 16  ) 審議会「第五二回議事録」(潮見佳男幹事)一三頁。

( 17Web) 資料、民法(債権関係)の改正に関する中間試案(平成二五年五月二日補訂)。

( 18  ) 審議会「第五二回議事録」(大島委員)一六頁、(中井委員)一六頁、(岡田ヒロミ委員)一九頁、(佐成委員)一七頁。

( 19  ) 審議会「第五二回議事録」(山本(敬)幹事)一九頁。

( 20  ) 審議会「第五二回議事録」(中井委員)二〇頁。

( 21  ) 審議会「第五二回議事録」(中井委員)三一頁。

( 22  ) 審議会「第五二回議事録」(道垣内幹事)二一頁。

( 23  ) 審議会「第五二回議事録」(佐成委員)一七頁。

( 24  ) 審議会「第五二回議事録」(深山雅也幹事)二二頁。

( 25  ) 審議会「第五二回議事録」(潮見幹事)二三頁。

( 26  ) 審議会「第五二回議事録」(松岡久和委員)二三頁。

( 27  ) 審議会「第五二回議事録」(沖野眞已幹事)三〇頁。

( 28  ) 審議会「第五二回議事録」(沖野幹事)三〇頁。

( 29  ) 審議会「第五二回議事録」(中井委員)三五頁。

( 30  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(平成二四年一〇月九日)(中井委員)一九頁。 31  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(内田貴委員)二二

- 二

三頁。(

32Web) 資料、民法(債権関係)部会資料五六・民法(債権関係)の改正に関する中間試案のたたき台案(四)(概要付き)。

(29)

六九担保責任の契約不履行への統合(都法五十四-二) ( 33  ) 審議会「第六七回議事録」(平成二五年一月二二日)(加納克利関係官)五四

( 五頁。 - 五

( 34  ) 審議会「第六七回議事録」(内田委員)五四頁。

( 35  ) 審議会「第六七回議事録」(鎌田部会長)五五頁。

( 36  ) 審議会「第六七回議事録」(山本(敬)幹事)五五頁。

( 37  ) 審議会「第六七回議事録」(岡委員)五六頁。 38) 民法(債権関係)部会資料一五

( 「検討事項(一〇)」二七頁。 - 二

( 39  ) 審議会「第五二回議事録」(道垣内幹事)三八頁、(沖野幹事)三九頁。 40  ) 審議会「第五二回議事録」(大島委員)二六頁、(高須順一幹事)三六

( 七頁、(中井委員)三八頁。 - 三

41  ) 審議会「第五二回議事録」(中井委員)三八頁、(沖野幹事)三九

( 井委員)三一頁、(鹿野幹事)三〇頁。   〇頁、審議会「第一分科・第六回議事録」(中 - 四

( 42  ) 審議会「第五二回議事録」(村上正敏委員)三七頁。

( 43  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(高須幹事)二九頁。 44  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(鹿野幹事)二九

- 三

〇頁。(

( 45  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(鹿野幹事)三三頁。 46  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(内田委員)三二

- 三

三頁。(

( 47  ) 審議会「第五二回議事録」(新井吐夢関係官)三七頁。

( 48  ) 審議会「第五二回議事録」(内田委員)四〇頁。

( 49  ) 審議会「第五二回議事録」(道垣内幹事)四一頁。

( 50  ) 審議会「第五二回議事録」(山下友信委員)三九頁。 51  ) 審議会「第五二回議事録」(能見善久委員)四五

( 六頁。 - 四

( 52  ) 審議会「第五二回議事録」(松本恒雄委員)四五頁。

( 53  ) 審議会「第五二回議事録」(山本(敬)幹事)四四頁。

( 54  ) 審議会「第五二回議事録」(潮見幹事)四六頁。

( 55  ) 審議会「第五二回議事録」(沖野幹事)四九頁。

( 56  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(中井委員)二七頁。 57  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(高須幹事)二七頁。

(30)

七〇

( 説明」で引用する。 58Web) 資料、民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明(平成二五年五月二日補訂)四一九頁。以下、「補足

( 59  ) 審議会「第五二回議事録」(中井委員)四三頁。 60  ) 審議会「第五二回議事録」(鹿野幹事)四三

- 四

四頁。(

( 61  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(中井委員)二七頁。 62  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(中井委員)二七

- 二

八頁。(

63  ) 審議会「第五二回議事録」(中井委員)五一頁、(高須幹事)五一頁、反対(能見委員)五〇

( 一頁。 - 五

( 64  ) 審議会「第一分科・第六回議事録」(中井委員)三四頁。

( 65  ) 補足説明四〇〇頁。

( 66  ) 補足説明七三頁。

( 67  ) 補足説明四一〇頁。

( 68  ) 補足説明(第七の二)六八頁。 69  ) 補足説明四一九頁。

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