• 検索結果がありません。

山形県に住む母親の母親役割の受容と性役割感に対する意識

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "山形県に住む母親の母親役割の受容と性役割感に対する意識"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

 山形県の女性の 25 〜 29 歳,30 〜 34 歳におけ る年齢階級別有業率は全国を大きく上回り

1)

,山形 県の多くの女性が育児と仕事や家事などの多くの 役割を果たしていることを示している。子どもを

持つ母親が,満足感をもちながら母親としての役 割を果たせるような支援が必要とされている。

 母親役割の獲得には,母親の年齢,出産体験の 受けとめをはじめ,社会的ストレスや女性の自己 概念,ソーシャルサポート,女性が家族や社会と かかわる姿勢など多くの影響因子が考えられてい

2)3)4)

。日本では伝統的に,女性が家庭を守り子

育てするという考えが根強かった。近年,女性の 高学歴化や有業率の増加に伴い,育児と仕事を両 立する女性が増え,家庭や社会における男女の役 割に対する意識や行動が変化している

5)

。海外で は,働く母親は,役割葛藤

6)

や,母親役割の遂行 に対する不安

7)

をもつことが以前から明らかにさ

― 17 ―

山形県に住む母親の母親役割の 受容と性役割感に対する意識

遠 藤 恵 子

1)

・佐 藤 幸 子

1)

・三 澤 寿 美

1)

小 松 良 子

2)

・片 桐 千 鶴

2)

Perception of maternal and gender roles of mothers in Yamagata Prefecture

Keiko ENDO

1)

, Yukiko SATO

1)

, Sumi MISAWA

1)

Ryoko KOMATSU

2)

, Chizu KATAGIRI

2)

Abstract :

 This study is intended to explicate how maternal and gender roles were recognized by the mothers with children in Yamagata Pref. and what differences there were between the recognition of working mothers and non-working mothers, or between that of them and their mothers (-in-law) . The data was collected by questionnaires through the preschools in Yamagata Prefecture.

 314 mothers perceived their maternal role positively and negatively at one time. Non- working mothers considered the maternal role more negatively than working mothers.

Working mothers agreed less with the Japanese traditional concept on gender that a man works and a wife manages a home, and agreed more with the concept that women should work after their marriage and childbirth. On the other hand, perceptions of mothers' maternal and gender roles were significantly different from those of their mothers (-in-law) .  These findings suggest that it is important to respect what perceptions about their maternal and gender roles mothers have in order to support child care.

Key words :  maternal role, gender role, support for child care

1)

山形県立保健医療大学 看護学科  〒

990-2212

山形市上柳

260

Department of Nursing, Yamagata Prefectural University of Health Science

 260 Kamiyanagi, Yamagata 990-2212, Japan

2)

山形県立中央病院

 〒

990-2292

山形市青柳

1800 Yamagata Prefectural Central Hospital 1800 Aoyagi, Yamagata 990-2292, Japan

〔原著〕

(2)

れている。国内では,三橋

8)

が,働く母親の身体 的疲労が強いことや,労働時間が長いほど役割葛 藤が大きいことを明らかにした。一方,無職の女 性は有職者に比べ,育児に対し精神的疲労が強い という研究結果

9)

や,職業の有無では母性性の意 識や行動には差がない

10)

とする研究結果もあり,

母親の就労が,育児に関する行動に与える影響に ついては,意見が分かれている。女性が,満足感 をもちながら母親としての役割を果たす援助の検 討には,単に女性の就業状況だけでなく,女性の 性役割感や社会参画に対する意識をも考慮する必 要があると考える。

 そこで,本研究は,女性の就業率が高く,三世 代同居が多い山形県における母親の育児支援を検 討する基礎資料として,母親の,母親役割に対す る意識と性役割に関する意識の実態,それらと就 業状況の関連を明らかにした。さらに性役割感が 異なる時代に育児をしていたその実母・義母の母 親役割に対する意識や性役割に関する意識と比較 した。

方  法

1.対  象

 対象は幼児をもつ母親とし,便宜的に山形県 A 市内の幼稚園や保育所に通う年中児(5 歳児) 360 人の母親 360 人とした。親の就労状況を考慮し,

2 つの幼稚園から 165 人,7 つの保育所から 195 人 の母親を抽出した。またその母親の実母・義母 720 人を対象とした。

2.調査方法

 調査は自記式質問紙法とした。

 調査内容は,母親役割の受容の意識と性役割に 関する意識であった。

 母親役割の受容の意識は,大日向の母性意識尺 度

4)

を用いた。この尺度は,自分自身が母親であ ることを積極的・肯定的に捉える意識(以下 MP)

と消極的・否定的に捉える意識(以下 MN)の 2 側面から,母親役割の受容に対する意識を測定す るものである。MP, MN それぞれ, 「そのとおり」

4 点から「違う」 1 点までの 4 段階 6 項目からなる。

MP,MN それぞれの得点を合計し,平均して MP

得点,MN 得点とする。MP 得点が高いほど,子 どもへの献身的態度が高く子どもの成長への喜び も大きいことを意味する。一方,MN 得点が高い

ことは,単に母親であることそれ自体への嫌悪や 子どもの否定ではなく,母親であることが自分の すべてではないという意識を表す。

 性役割に関する意識

11)

は,世論調査や政府によ る調査でよく用いられる「『男は仕事,女は家庭』

という考え方」に対する意識, 「女性が職業をもつ こと」に対する意識とした。

3.調査手順

 2001 年 2 月,幼稚園と保育所を通じて母親に母 親用の研究依頼書,調査用紙と回収用封筒を配布 した。また母親には,それと合わせて,実母と義 母あての研究依頼書,調査用紙と切手を貼り返送 先のあて先を書いた回収用の封筒を同封し,実母 と義母への配布を依頼した。調査用紙には配布前 に母親と実母・義母に同じ番号をつけた。回収は,

母親は幼稚園や保育所を通じて,実母・義母は郵 送または幼稚園や保育所を通じて行った。

4.倫理的配慮

 研究依頼書には,調査目的と回答拒否が可能な ことを明記した。プライバシーの保護のため,回 収用として母親,実母・義母それぞれの回収用の 封筒を調査用紙と共に渡し,無記名とした。

5.分  析

 SPSS11.0J for Windows を用い統計学的に分析し た。群間の差の検定に Mann-Whitney 検定,比率 の差を求める検定には,カイ二乗検定を行った。

相関は, Spearman の順位相関係数を求めた。有意

水準を 5% とした。

結  果

1.対象の属性(表1)

 母親 360 人に配布し 314 回収(回収率 87.2%)

し,回収されたものすべてを分析対象とした。実 母・義母 720 人に調査用紙を配布し, 504 回収(回

収率 70.0%)し,回答が有効であった 465(有効

回答率 92.3%)を分析対象とした。

 母親の平均年齢は 33.9 ± 4.7 歳(23 〜 47),職 業は,有職 236 人(75.2%),無職 71 人(22.6%),

平均子どもの人数 2.1 ± 0.7 人(1 〜 5),年中児の 同胞の年齢は 0 〜 22 歳であった。有職者の 1 日の 家事以外の平均労働時間は7.0 ±1.9 時間であった。

 実母・義母の平均年齢は 61.7 ± 6.3 歳(42 〜 80),職 業 は 有 職 190 人(40.9%),無 職 267 人

(57.4%),平均子どもの人数 2.3 ± 0.7 人(1 〜 6)

― 18 ―

(3)

であった。平均孫の人数は 3.7 ± 1.9 人(1 〜 12)

で,内孫の平均人数 1.0 ± 1.2 人(0 〜 4),外孫の 平均人数 2.7 ± 1.8 人(0 〜 9)であった。

2.母親の母性意識尺度得点

 母性意識尺度の平均得点は, MP 得点 3.02 ±0.52,

MN 得点 2.13 ± 0.49 であった。また各項目の得点 は表 2 のとおりであった。

3.母親の性役割に関する意識

 「『男は仕事,女は家庭』という考え方」に対し ては, 「同感」が 19 人, 「どちらともいえない」 91 人,「同感しない」193 人であった(表 3)。

 「女性が職業をもつこと」に対しては,「結婚や 出産後も仕事を続ける方がよい」 103 人, 「結婚や 出産などで一時家庭に入り,育児が終わると再び 職業をもつ方がよい」 153 人, 「結婚を契機に家庭 に入るのがよい」 1 人, 「出産を契機に家庭に入る のがよい」 13 人, 「職業を持たない方がよい」 2 人 であった(表 4)。

4.母親の就業の有無と,母性意識尺度得点や性 役割に関する意識との関連

1)就業の有無による母性意識尺度得点の比較  職業の有無で母性意識尺度平均得点を比較する と,MP 得点では有職者 3.03 ± 0.53,無職者 3.00

± 0.52 で,両群に有意な差はみられなかった。

MN 得点では,有職者 2.09 ± 0.47,無職者 2.25 ± 0.52 で,統計的に有意な差が見られ,無職者の MN 得点が高かった(表 5)。有職者の 1 日の家事 以外の労働時間と MP 得点,MN 得点の相関をみ たところ,MP 得点では相関関係はみられなかっ たが, MN 得点とは r = 0.16(p< .01)のかすかな 正の相関関係がみられた。

2)就業の有無による性役割に関する意識  「『男は仕事,女は家庭』という考え方」に対し ては,有職では「同感」が 9 人(3.8%), 「どちら ともいえない」64 人(27.1%), 「同感しない」157 人(66.6%),無職では「同感」が 9 人(12.7%),

― 19 ― 表1 母親と祖母の属性

祖母 n = 465 母親 n = 314

61.7

±

6.3 33.9

±

4.7

年齢 (平均±標準偏差)

267

(57.4%)

71

(22.6%)

職業 無 職

190

(40.9%)

236

(75.2%)

   有 職

8

( 1.7%)

7

( 2.2%)

   無回答

2.3

±

0.7 2.1

±

0.7

子どもの数 (平均±標準偏差)

表2 母親の MP 項目と MN 項目の評定値 n = 307 M

±

SD

項    目

3.40

±

0.67

母親であることが好きである

MP

項目

3.51

±

0.58

母親になったことで人間的に成

長できた

2.44

±

0.79

母親としてふるまっているとき

が一番自分らしいと思う

2.89

±

0.77

母親であることに生きがいを感

じている

2.71

±

0.82

母親になったことで気持ちが安

定して落ち着いた

3.06

±

0.82

母親であることに充実感を感じる

2.03

±

0.87

子どもを育てることが負担に感

じられる

MN

項目

1.91

±

0.94

育児に携わっているあいだに,世

の中から取り残されていくよう に思う

2.14

±

0.85

自分の関心が子どもにばかり向

いて視野が狭くなる

2.37

±

0.84

自分は母親として不適格なので

はないだろうか

1.22

±

0.50

子どもを産まない方がよかった

3.03

±

0.83

母親であるために自分の行動が

かなり制限される

表3 母親の,「男は仕事,女は家庭」という考え方

について  n = 314

人 数(%)

19( 6.1%)

同感する

91(28.9%)

どちらともいえない

193(61.5%)

同感しない

11( 3.5%)

わからない

表4 母親の,女性が職業をもつことについて n = 314

人 数(%)

103(32.8%)

結婚や出産後も仕事を続ける方がよい

153(48.8%)

育児が終わると再び職業をもつほうがよい

1( 0.3%)

結婚したら家庭に入るほうがよい

13( 4.1%)

出産したら家庭に入るほうがよい

2( 0.6%)

職業をもたないほうがよい

38(12.1%)

わからない

4( 1.3%)

無回答

表5 母親の就業有無別で比較した母性意識尺度得点

MN

得点

MP

得点

M

±

SD M

±

SD

2.09

±

0.47 3.03

±

0.53

有職  n=

231

2.25

±

0.52 3.00

±

0.52

無職  n=

69

Mann-Whitney

検定     *P< .05

*

(4)

「どちらともいえない」 25 人(35.2%), 「同感しな い」33 人(46.5%)と,両群の比率に有意な差が 見られた(図 1)。

 「女性が職業をもつこと」に対しては,有職では

「結婚や出産後も仕事を続ける方がよい」85 人

(36.5%), 「結婚や出産などで一時家庭に入り,育 児が終わると再び職業をもつ方がよい」108 人

(46.4%)に対し,無職ではそれぞれ 16 人(22.8%),

42 人(60.0%)と両群の比率に有意な差が見られ た(図 2)。

5.母親と,実母・義母の母性意識尺度得点と性 役割に関する意識の比較

1)母性意識尺度得点

 実母・義母の母性意識尺度の平均得点は,MP 得点 3.39 ± 0.51,MN 得点 1.94 ± 0.53 であった。

これを母親の母性意識尺度得点と比較すると, MP 得点,MN 得点ともに有意な差がみられ,母親の ほうが, MP 得点は低く, MN 得点は高かった(表 6)。

 母親と実母の両方から有効回答のあったペア 214 組について母親と実母の母性意識尺度得点を 比較したところ,母性意識尺度得点の MP 得点,

MN 得点ともに有意な差が見られた(表 7)。母親 と実母間の MP 得点で r

S

= 0.14(p< .05)とかす

かな相関関係が, MN 得点では r

S

= 0.35 (p< .001)

のよわい相関関係がみられた。

2)性役割に関する意識

 母親と実母・義母の性役割に関する意識を比較 すると,「『男は仕事,女は家庭』という考え方」

では,母親の「同感」19 人(6.1%),「同感しな い」193 人(61.4%)に対し,実母・義母ではそれ ぞれ 62 人(13.5%),115 人(25.1%)で,比率に 有意な差がみられた(図 3)。

 「女性が職業をもつこと」に対しては,母親で,

「結婚や出産後も仕事を続ける方がよい」103 人

(33.2%), 「結婚や出産などで一時家庭に入り,育 児が終わると再び職業をもつ方がよい」153 人

(49.4%),「結婚を契機に家庭に入るのがよい」1 人(0.3%),「出産を契機に家庭に入るのがよい」

13 人(4.2%),「職業を持たない方がよい」2 人

(0.6%),実母・義母では,「結婚や出産後も仕事 を続ける方がよい」 125 人(28.3%), 「結婚や出産 などで一時家庭に入り,育児が終わると再び職業 をもつ方がよい」 228 人(51.5%), 「結婚を契機に 家庭に入るのがよい」 20 人(4.5%), 「出産を契機

― 20 ― 図1 母親の就業有無別で比較した「男は仕事,女

は家庭」という考え方について

図2 母親の就業有無別で比較した,女性が仕事を もつことについて

図3 母親と実母・義母で比較した「男は仕事,女 は家庭」という考え方について

表7 母親と実母の母性意識尺度得点の比較

MN

得点

MP

得点

M

±

SD M

±

SD

2.10

±

0.50 3.04

±

0.53

母親  n=

204

1.90

±

0.58 3.37

±

0.58

実母  n=

204

Mann-Whitney

検定   **P< .01  ***P< .001

***

**

表6 母親と実母・義母の母性意識尺度得点の比較

MN

得点

MP

得点

M

±

SD M

±

SD

2.13

±

0.49 3.03

±

0.53

母親   n=

300

1.94

±

0.53 3.39

±

0.51

実母・義母

n

420

Mann-Whitney

検定     ***P< .001

***

***

(5)

に家庭に入るのがよい」 34 人(7.7%), 「職業を持 たない方がよい」2 人(0.5%)で,比率に有意な 差がみられた(図 4)。

 母親と実母の両方から有効回答のあったペア 214 組について,「『男は仕事,女は家庭』という 考え方」の意見が一致したペアは,「同感」5 組,

「どちらでもよい」 38 組, 「同感でない」 51 組であっ

た(表 8)。「女性が職業をもつこと」について母

親と実母の意見が一致したペアは,「結婚や出産 後も仕事を続ける方がよい」29 組,「結婚や出産 などで一時家庭に入り,育児が終わると再び職業 をもつ方がよい」47 組,「出産を契機に家庭に入

るのがよい」2 組であった(表 9)。

考  察

 対象となった母親は,平均年齢 33.9 歳で就業率

が 75.2% であった。これは,山形県の 30 〜 34 歳

女性の有業率 71.2%

1)

と大きな差はなく,この年 齢の山形県の一般的な母親と考えられる。

 母性意識尺度の MP 項目,MN 項目のそれぞれ の得点をみると,MP 項目では「母親であること が好きである」,「母親になったことで人間的に成 長できた」の得点が高くなっていた。一方 MN 項 目では「母親であるために自分の行動が制限され る」 「自分は母親として不適格なのではないだろう か」の得点が高かった。このことから,本研究の 対象は,母親であることに対し,肯定的,否定的 両方の面をもっていると考えられる。一方 MN 項 目の「子どもを産まない方がよかった」という得 点は低かったことをみると,母親であることすべ て否定しているのではないことが伺える。

 母性意識尺度の得点は母親の年齢により,差が みられるとされている

4)

。先行研究のうち,本研 究の対象との年齢が近い,対象が平均年齢 32 歳

― 21 ― 図4 母親と実母・義母で比較した女性が職業をも

つことについて

表8 「男は仕事,女は家庭」という考え方について,母親と実母の相違

実母 n=

213

合 計 わからない

同感しない どちらとも

い え な い 同 感 す る

11 0

1 5

同感する

5

母 親

n=213

62 1

10 38

どちらともいえない

13

133 4

51 70

同感しない

8

7 1

1 3

わからない

2

213 6

63 116

合 計

28

表9 「女性が職業をもつこと」について,母親と実母の相違

実母 n=

205

合 計 わからない

職 業 を も た な い 出産したら

家 庭

結婚したら

家 庭

育児後再び 結婚や出産

後も続ける

73 4

2 3

0 35

結婚や出産後も仕事を

29

続ける方がよい

母親

n=205

97 5

0 10

5 47

育児が終わると再び職

30

業をもつほうがよい

1 0

0 0

0 1

結婚したら家庭に入る

0

ほうがよい

9 0

0 2

0 5

出産したら家庭に入る

2

ほうがよい

1 0

0 0

0 1

職業をもたないほうが

0

よい

24 1

0 3

1 15

わからない

4

205 10

2 18

6 104

合 計

65

(6)

の調査

4)

では,平均 MP 得点 3.13,平均 MN 得点 1.95 点と報告されている。これと比較すると,本 研究の結果は MP 得点が低く,MN 得点が高かっ た。このことから,本研究の対象者は,母親であ ることを肯定的・否定的をより両価的に認識して いると考えられる。

 母性意識尺度の MP 得点は就業の有無で有意な 差はみられなかったが,MN 得点では,無職者は 有職者に比べ,有意に MN 得点が高かった。職業 の有無にかかわらず,母親である女性は,母親で あることを積極的・肯定的に受け止めているが,

無職者のほうが母親であることを消極的・否定的 に捉え,母親であることが自分のすべてではない という意識を表していた。

 性役割について, 「男は仕事,女は家庭」に「同 感」するものは少なく,近年の全国調査

5)

と同様,

伝統的な性役割感が薄れていることが示された。

また「結婚や出産後も仕事を続ける方がよい」 「育 児が終わると再び職業をもつほうがよい」と約 8 割が答え,女性が職業をもつことに肯定的であっ たが,少数意見ながら様々な意見があった。これ らの意識は職業の有無で異なり,小野ら

12)

の研究 結果と一致していた。多くの女性が仕事をもつこ とに肯定的であるが,少数ながらさまざまな意見 があり,多様な価値観をもっていることがうかが える。その人の価値観を受け止め,尊重すること が重要と考える。

 母親役割獲得のプロセスには,母親役割を果た すために,以前のアイデンティティを捨て,新し い母親としてのアイデンティティを取り込む悲嘆 作業を伴う

13)

。また現代の母親は,ステレオタイ プの母親役割モデルにとらわれ,自分は母親らし くないと考え,自信をなくしていると大平は述べ ている

14)

。本研究の対象の母親は,母親であるこ とに対して,肯定的・否定的の両面をもち,仕事 をもつことに肯定的で多様な価値観をもっている ことから,母親であることがその人にとってすべ てではなく,母親であると同時にもっと他の役割 も果たしたいと考えているのかもしれない。特に 無職の母親は,母親であることで捨ててしまった ものに対する悲嘆がうまく進んでいないのかもし れない。母親役割獲得における悲嘆作業を進める には,他の役割を持ちたいことを表現させるよう な精神的援助が必要と考えられている

15)

。今後の

育児支援には,母親であることと同時に,その人 の自分らしさが表出できるよう育児から一時的に 開放される時間をつくるような援助や,自分らし さを大切にしてよいことを支持するような精神的 援助が必要と考える。

 母親と実母・義母の母性意識尺度の得点を比較 すると,MP 得点,MN 得点ともに有意な差がみ られた。また,「『男は仕事,女は家庭』という考 え方」 「女性が職業をもつこと」に対する意識でも,

母親と実母・義母の比率に有意な差がみられた。

年齢が高いほうが,いわゆる伝統的性役割感が強 という全国調査

5)

と一致した。三世代同居率の高 い山形県では子どもの祖母が重要な育児支援者に なっている。単に母親を中心に考えるのではなく,

祖母を含め家族員の性役割意識を考慮しながら育 児支援方法を検討する必要がある。

 母親は,実母によって養育されるため,実母の 影響を受けると考えられるが,母親と実母のペア であっても,「『男は仕事,女は家庭』という考え 方」「女性が職業をもつこと」に対する意識は異 なっていた。一方,母性意識尺度得点の MN 得点 では相関関係があり,否定的・消極的の母親の娘 は,同じように母親であることを否定的・消極的 にとらえることが明らかとなった。現在の母親の 否定的感情が次代に伝播しないよう早急に育児支 援を検討する必要性が示唆された。

 今回は,山形県の 1 つの市の幼稚園・保育所に 通う年中児の母親を対象としたが,その母親はそ の年中児 1 人だけでなく,さまざまな年齢の複数 の子どもをもつ母親だった。育児に対する不安や 育児困難感は子どもの年齢によって異なる

16)

こと から,働く母親の役割葛藤も子どもの年齢や子ど もの数,母親が受けている育児支援により異なる と考えられる。今後,子どもの年齢や母親が受け ている育児支援の程度別など,さらに対象を拡大 し,関連する要因を明らかにし,個別的な育児支 援を検討していきたい。

おわりに

 母親は,母親であることに対して肯定的・否定 的両方の面をもっていた。就業の有無により,母 親を消極的・否定的に受け止める程度が異なり,

無職者は有職者に比べ,消極的・否定的な受けと めが強かった。「『男は仕事,女は家庭』という考

― 22 ―

(7)

え方」 「女性が職業をもつこと」について,母親の 就業の有無によって意見は異なり,母親の実母・

義母に比べ伝統的性役割感を支持するものが少な かった。これらのことから,母親は,母親である ことがすべてではなく,その人らしい生き方を求 めていることが示唆された。

 調査にご協力いただいた皆様に深く感謝いたし ます。

 本研究は,平成 12 〜 14 年度科学研究費補助金 の助成を受けた研究の一部である。

文  献

1 ) 総務庁平成 12 年「国勢調査」

2 ) Ramona T. Mercer : A theoretical framework for studying factors that impact on the maternal role, nursing Research, 30 : 73-77, 1981.

3 ) Ramona T. Mercer : The process of maternal role attainment over the first year, Nursing Research, 34 : 198-204, 1985.

4 ) 大日向雅美:母性の研究,東京,川島書店,

1988.

5 ) 内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」

(平成 12 年)

6 ) Janice L. Majewski : Conflict, satisfaction, and attitudes during transition to the maternal role, Nursing Research, 35 : 10-14, 1988.

7 ) Linda B. Tiedje, Clare Collins : Combining employment and motherhood, MCN, 14 : 8-15, 1991.

8 ) 三橋邦江,森恵美,前原澄子:働く母親の適

応に関連する要因の分析,日本看護科学会誌,

19:1-10,1999.

9 ) 光岡摂子,小林春男,奥田昌之,池口恵観,

芳原達也:乳幼児を持つ母親の疲労と育児不安,

体力・栄養・免疫学雑誌,9:30-39,1999.

10 ) 石崎優子,織田正昭,日暮眞:幼稚園児を持 つ母親の母性性の意識と行動に関する研究(第 2 報)― 母親の年齢,就業,家族形態,子ども に関する悩みとの関連 ―,小児保健研究,56:

43-48,1997.

11 ) 堀洋通,山本真理子,松井豊編:心理尺度 ファイル 人間と社会を測る,東京,垣内出版,

pp50-51,1994.

12 ) 小野けい子,宮内清子,久保由美子:育児期 の母親の性役割意識と就労形態に関する研究,

愛媛県立医療技術短期大学紀要,6:1-8,1993.

13 ) Reva Rubin : Attainment of the maternal role Part I. Process, Nursing Research, 16 : 237-245, 1967.

14 ) 大平光子:産褥期の母親役割獲得プロセスを 促進する看護援助方法に関する研究,千葉看護 学会会誌,6(2):24-31,2000.

15 ) 大平光子:妊娠期の母親役割獲得過程のアセ スメント指標に関する試案,大阪府立看護大学 紀要,7:29-38,2001.

16 ) Yukiko Sato, Hitoshi Shiwaku : A study of difficulty in child-care during rapprochement crisis, International Journal of Nursing Studies, 39 : 51- 58, 2002.

― 2002. 11. 5. 受稿,2003. 1. 8. 受理 ―

― 23 ―

要  約

 山形県に住む母親 360 人を対象に,母親役割に対する意識と性役割や女性問題に 関する意識の実態と,就業状況の関連を明らかにし,母親の実母・義母と比較した。

幼稚園や保育所を通じて,調査用紙を配布し,郵送または幼稚園・保育所を通じて 回収し,統計学的に分析した。研究依頼書には,研究目的と回答拒否可能なことを 明記し,調査は無記名とした。360 人の母親に調査依頼し,回答のあった 314 人を 分析対象とした。

 母親は,母親であることに対して肯定的・否定的両方の面をもっていた。無職の 母親は,有職の母親より母親であることを消極的・否定的にとらえていた。「『男は 仕事,女は家庭』という考え方」に対して, 「同感」は無職者に多く, 「同感しない」

は有職者に多かった。 「女性が職業をもつこと」に対し,有職者は無職者に比べ「結

(8)

― 24 ―

婚や出産後も仕事を続ける方がよい」の割合が多く,就業の有無で母親役割に対す る意識や性役割に関する意識が異なっていた。また母親と実母・義母でも母親役割 に対する意識や性役割に関する意識が異なっていた。

 母親の就業状況や性役割感に対する意識を尊重した育児支援の検討が示唆された。

キーワード :  母性意識,母親役割,性役割,育児支援

参照

関連したドキュメント

Similarly, TCDD levels observed in breast milk from Da Nang mothers were significantly higher in those living close to the air base (Thanh Khe residents) than in those living

Information gathering from the mothers by the students was a basic learning tool for their future partaking in community health promotion activity. To be able to conduct

凧(たこ) ikanobori類 takO ikanobori類 父親の呼称 tjaN類 otottsaN 類 tjaN類 母親の呼称 kakaN類 okaN類 kakaN類

On the other hand, from physical arguments, it is expected that asymptotically in time the concentration approach certain values of the minimizers of the function f appearing in

に関連する項目として、 「老いも若きも役割があって社会に溶けこめるまち(桶川市)」 「いくつ

第1条

今回の SSLRT において、1 日目の授業を受けた受講者が日常生活でゲートキーパーの役割を実

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”