• 検索結果がありません。

関節リウマチ患者マスト細胞は

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "関節リウマチ患者マスト細胞は"

Copied!
67
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

関節リウマチ患者マスト細胞は

変形性関節症患者マスト細胞に比較して 有意に prostaglandin D 2 を産生する

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系整形外科学専攻

三嶋 信太郎 修了年 2017

指導教員 德橋 泰明

(2)

関節リウマチ患者マスト細胞は

変形性関節症患者マスト細胞に比較して 有意に prostaglandin D 2 を産生する

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系整形外科学専攻

三嶋 信太郎 修了年 2017

指導教員 德橋 泰明

(3)

目次

略語 ・・・・ 1 概要 ・・・・ 4 緒言

1. 関節リウマチ ・・・・ 6 2. 関節リウマチとマスト細胞 ・・・・ 6 3. 関節リウマチと prostaglandin ・・・・ 8 4. 関節リ ウマチ 患者の 関節液 中の prostaglandin ・・・ ・ 9 5. microRNA と 関 節 リ ウ マ チ ・ ・ ・ ・ 9

目的 ・・・・ 11 対象と方法

1. 使用抗体、試薬、物品 ・・・・ 12 2. ヒト滑膜マスト細胞の分離と培養 ・・・・ 12 3. 線維芽細胞の分離と培養 ・・・・ 13 4. OA マスト細胞と RA 線維芽細胞との共培養 ・・・・ 13 5. 滑膜マスト細胞の活性化 ・・・・ 13 6. total RNA 抽出、相補的 DNA (cDNA) への逆転写、定量的 RT-

PCR ・・・・ 14

7. DNA chip 解析 ・・・・ 14

8. microRNA (miRNA) の網羅的発現解析 ・・・・ 15

9. メディエーターの測定 ・・・・ 15

10. 関節液の採取 ・・・・ 16

11. 統計処理 ・・・・ 16

(4)

結果

1. DNA chip 解析による OA 、 RA マスト細胞における遺伝子発現

量の比較 ・・・・ 17

2. 定量的 RT-PCR 解析による OA 、 RA マスト細胞における脂質メ ディエーター合成酵素の発現の比較 ・・・・ 17

3. OA 、 RA マスト細胞における IgE 依存性脱顆粒 反応および脂 質代謝物産生量の比較 ・・・・ 18

4. OA 、 RA マスト細胞における IgG 依存性脱顆粒反応および脂質 代謝物産生量の比較 ・・・・ 18

5. OA 、 RA 線維芽細胞における PTGS1 、 PTGS2 、 TBXAS1 および LTC4S mRNA 発現量の比較と OA マスト細胞と RA 共培養によ る遺伝子発現量への影響 ・・・・ 18

6. O A 、 R A マ ス ト 細 胞 の m i R - 1 9 9 a - 3 p 発 現 量 の 比 較 ・ ・ ・ ・ 1 9 7. OA 、 RA マスト細胞における miR-199a-3p と PTGS2 の発現の 相関 ・・・・ 19

8. O A 、 R A 患 者 の 関 節 液 中 の P G D 2 と P G E 2 量 の 比 較 ・・・・ 20

考察 ・・・・ 21

まとめ ・・・・ 28

謝辞 ・・・・ 29

(5)

1. マ ス ト 細 胞 欠 損 マ ウ ス ご と の マ ス ト 細 胞 の 関 節 炎 へ の 関 与 ・・・・ 30 2. 関節炎モデルマウスと PGD 2 ・・・・ 31 3. OA マスト細胞において RA マスト細胞と比較して 3 倍以上発

現量が高い microRNA の発現網羅的解析結果 ・・・・ 32 4. OA 、 RA 患者の検査結果、治療情報 ・・・・ 33

1. アラキドン酸カスケード ・・・・ 35

2. DNA chip 解析を用いた OA 、 RA マスト細胞における遺伝子発

現量の比較 ( クラスター解析 ) ・・・・ 36

3. DNA chip 解析を用いた OA 、 RA マスト細胞における脂質メデ

ィエーター関連遺伝子発現量の比較 ・・・・ 37

4. 定量的 RT-PCR 解析による OA 、 RA マスト細胞における脂質メ

ディエーター合成酵素の発現の比較 ・・・・ 38 5. OA 、 RA マスト細胞における IgE 依存性脱顆粒反応および脂質

代謝物産生量の比較 ・・・・ 39 6. OA 、 RA マスト細胞における IgG 依存性脱顆粒反応および脂質

代謝物産生量の比較 ・・・・ 40

7. OA 、 RA 線維芽細胞における PTGS1 、 PTGS2 、 TBXAS1 、 LTC4S

mRNA 発現量の比較と OA マスト細胞と RA 線維芽細胞の共培

養による PTGS1 、 PTGS2 、 TBXAS1 、 LTC4S mRNA 発現量への

影響 ・・・・ 41

(6)

8. O A 、 R A マ ス ト 細 胞 の m i R - 1 9 9 a - 3 p 発 現 量 の 比 較

・・・・ 42 9. OA 、 RA マスト細胞における miR-199a-3p の発現量と PTGS2

の発現の相関 ・・・・ 43 10. OA 、 RA 患者の関節液中の PGD 2 と PGE 2 量 ・・・・ 44

図説

1. アラキドン酸カスケード ・・・・ 44 2. DNA chip 解 析 を 用 い た OA 、 RA マ ス ト 細 胞 に お け る 遺

伝子発現量の比較 ( クラスター解析 ) ・・・・ 45 3. DNA chip 解 析 を 用 い た OA 、 RA マ ス ト 細 胞 に お け る 脂

質メディエーター関連遺伝子発現量の比較 ・・・・ 45 4. 定 量 的 RT-PCR 解 析 に よ る OA 、 RA マ ス ト 細 胞 に お け

る脂質メディエーター合成酵素の発現の比較 ・・・・ 46 5. O A 、 R A マ ス ト 細 胞 に お け る I g E 依 存 性 脱 顆 粒 反 応 お

よび脂質代謝物産生量の比較 ・・・・ 46 6. O A 、 R A マ ス ト 細 胞 に お け る I g G 依 存 性 脱 顆 粒 反 応 お

よび脂質代謝物産生量の比較 ・・・・ 46 7. OA 、 RA 線維芽細胞における PTGS1 、 PTGS2 、 TBXAS1 、 LTC4S mRNA 発現量の比較と OA マスト細胞と RA 線維芽細胞の共培養 による PTGS1 、 PTGS2 、 TBXAS1 、 LTC4S mRNA 発現量への影 響 ・・・・ 47 8. O A 、 R A マ ス ト 細 胞 の m i R - 1 9 9 a - 3 p 発 現 量 の 比 較

・・・・ 47

(7)

9. OA 、 RA マスト細胞のおける miR-199a-3p と PTGS2 の発現の相 関 ・・・・ 47 10. OA 、 RA 患 者 の 関 節 液 中 の PGD 2 、 PGE 2 量 の 比

較 ・・・・ 48

引用文献 ・・・・ 49

研究業績 ・・・・ 55

(8)

1

略語

ALOX5: arachidonate 5-lipoxygenase

anti-CCP Ab: anti-cyclic citrullinated peptide antibody anti-TNF-α: anti tumor necrosis factor-α antibody CMA1: chymase 1

COX: cyclooxygenase CRP: C-reactive protein

CRTH2: chemoattractant receptor-homologous molecule on Th2 cells CYSLTR1: cysteinyl leukotriene receptor 1

DMARD: disease modifying antirheumatic drug DiHETE: dihydroxyeicosatrienoic acid

EETs: eicosatrienoic acids EIA: enzyme immunoassay

GPI: glucose-6-phosphate isomerase

H-PGDS: hematopoietic type-prostaglandin D synthase HDC: histidine decarboxylase

HETE: hydroxy eicosatetraenoic acid

HHT: hydroxy heptadecatrenoic acid

(9)

2 HPETE: hydroperoxyeicosatetraenoic acid IL: interleukin

IMDM: Iscove’s modified Dulbecco’s medium L-PGDS: lipocalin type-prostaglandin D synthase LSM: lymphocyte separation medium

LT: leukotriene

LTA4H: leukotriene A4 hydrolase LTC4S: leukotriene C4 synthase LX: lipoxin

MMP3: matrix metalloproteinase 3 MOX: methoxylamine

MS4A2: membrane-spanning 4A gene 2 MTX: methotrexate

n.d: not done

NSAIDs: non-steroidal anti-inflammatory drugs OA: osteoarthritis

PE: phycoerythrin PG: prostaglandin

PGDS: prostaglandin D synthase

PLA

2

: phospholipase A

2

(10)

3 PSL: prednisolone

PTGDR: prostaglandin D receptor PTGER: prostaglandin E receptor PTGES: prostaglandin E synthase PTGIS: prostaglandin I synthase PTGS: prostaglandin synthase RA: rheumatoid arthritis

RANKL: receptor activation of NF-κB ligand RF: rheumatoid factor

TBXAS1: thromboxane A synthase 1 Th: T helper

TNF: tumor necrosis factor

TPSB2: tryptase beta 2

Tx: thromboxane

WBC: white blood cells

(11)

4

概要

背景:関節リウマチ

(rheumatoid arthritis; RA)

は、複数の遺伝的要因に環境因子が加 わり自己免疫応答が惹起され、これらの結果として慢性炎症性病態が複数の関節に 対称性に生じ、進行性の破壊性関節炎に至る疾患と考えられている。

RA

患者の血清 中には抗シトルリン化蛋白抗体などの自己抗体が検出され、これらが病態発症との 関連を示す全身性の自己免疫疾患である。

RA

の病態においては関節炎マウスモデル や滑膜の組織染色を用いた研究からマスト細胞は

RA

の発症や炎症の増悪に関与す るいわゆる

悪玉

として考えられてきた。しかし、ここ

1-2

年の

RA

患者の関節滑膜 組織中のマスト細胞関連遺伝子発現や関節液中のマスト細胞由来のメディエーター が

RA

の重症度や炎症マーカーと逆相関することが報告され、

善玉

の可能性が示 唆されていたが、その機序は不明であった。

TNF- α阻害薬、 IL-6

受容体阻害薬など の生物学的製剤を使用して関節破壊を抑制し、寛解状態に持ち込める確率が向上し たが、生物学的製剤は、高価であり、生物学的製剤に反応しない患者も存在し、よ り効果的で安価な治療法が望まれる。

目的:

RA

患者由来培養マスト細胞

(

以下

RA

マスト細胞と呼ぶ

)

がどのようにし て、

RA

の炎症を抑制するかその機序を明らかにし、新規治療薬の開発に資する研究 を行うことを目的とした。

方法:関節滑膜は

RA

患者および

OA

患者に施行された人工膝関節置換術の際に採 取された。各患者由来の滑膜からマスト細胞を培養し樹立した。

DNA chip

を用いて

OA

および

RA

由来マスト細胞の遺伝子プロファイルを網羅的に調べた。

OA

患者由 来マスト細胞

(

以下

OA

マスト細胞と呼ぶ

)

RA

マスト細胞における遺伝子発現量

は定量的

RT-PCR

法で測定した。

IgE

および

IgG

依存的な活性化に違いが見られるか

を検証するために、

OA

および

RA

マスト細胞からのアラキドン酸代謝物の産生とヒ スタミン遊離量を

enzyme-immunoassay (EIA)

法で測定した。関節滑膜から

OA

患者

(12)

5

由来線維芽細胞

(

以下

OA

線維芽細胞と呼ぶ

)

RA

患者由来線維芽細胞

(

以下

RA

線維芽細胞と呼ぶ

)

を培養し、遺伝子発現量を定量的

RT-PCR

法で測定した。

OA

マ スト細胞と

RA

線維芽細胞を共培養することで変化する

OA

マスト細胞の遺伝子発 現量を定量的

RT-PCR

法で測定した。

OA

マスト細胞と

RA

マスト細胞の性質を決定 する因子として、

microRNA (miRNA)

に着目し、両マスト細胞の

miRNA

のプロファ イルを網羅的に調べた。

OA

マスト細胞と

RA

マスト細胞の

prostaglandin synthase 2 (PTGS2 = COX-2: cyclooxygenase-2)

の発現量と

miR-199a-3p

の発現量を定量的

RT- PCR

法で比較し、相関性を調べた。患者の関節液中の

PGD

2、

PGE

2量は

EIA

法で測 定した。統計学的解析は、

Mann-Whitney

U

検定によって行われた。

結果:

DNA chip

の結果、

prostaglandin synthase 1 (PTGS1 = COX-1: cyclooxygenase- 1)

prostaglandin synthase 2 (PTGS2 = COX-2)

thromboxane synthase 1 (TBXAS

)

leukotriene C4 synthase (LTC4S) mRNA

の発現量は

OA

マスト細胞と比較して

RA

マス ト細胞の方が有意に高かった。また、

IgE

依存性刺激において、

PGD

2産生量は

RA

マスト細胞のほうが有意に高かった。一方

LTB

4産生量は

OA

マスト細胞で高い傾向 にあった。

IgG

依存性刺激において

PGD

2産生量は

RA

マスト細胞のほうが有意に高 かった。したがって、

OA

および

RA

マスト細胞は、異なった性質を有していること が明らかになった。

RA

線維芽細胞において

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

LTC4S mRNA

の発現量は

OA

線維芽細胞と同程度であった。

OA

マスト細胞を

RA

線維芽細 胞と共培養しても

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

LTC4S mRNA

の発現量に変化は見ら れなかったことから、両マスト細胞の性質の違いは、線維芽細胞に起因しないこと が示唆された。次に

miRNA chip

の結果、

OA

マスト細胞の方が、

RA

マスト細胞よ り

3

倍以上発現量が高い

miRNA

20

個見出した。これら

20

個の

miRNA

のうち

PTGS2

の発現制御に寄与する

miRNA

miR199a-3p

であった。

miR-199a-3p

PTGS2

の発現量の相関を調べたところ

OA

マスト細胞では相関がなかったが、

RA

マスト細胞では負の相関がみられた。関節液中の

PGD

2量は、

RA

の方が有意に高か ったのに対し、

PGE

2量は両群間に有意な差は見られなかった。

結論:

PGD

2は各種炎症モデルで炎症の抑制効果を持つことが示唆されており、この 報告と本研究の結果から、

RA

マスト細胞が免疫複合体の刺激によって過剰な

PGD

2

(13)

6

を産生することにより、

RA

の炎症を抑制し ている可能性が示唆された。

(14)

7

緒言

1.

関節リウマチ

(rheumatoid arthritis; RA)

RA

は、複数の遺伝的要因に環境因子が加わり自己免疫応答が惹起され、これら の結果として慢性炎症性病態が複数の関節に対称性に生じ、進行性の破壊性関節炎 に至る疾患と考えられている

(1, 2)

RA

患者の血清中には抗シトルリン化蛋白抗体

(Anti-citrullinated peptide antibodies; ACPAs)

などの自己抗体が検出され、これらが病 態発症との関連を示す全身性の自己免疫疾患である

(1, 2)

RA

の炎症の主病変は関 節滑膜である。

RA

では滑膜の毛細血管周囲に抗原提示細胞と

T

細胞の浸潤が起こ り、続いて

B

細胞の浸潤がみられる。

T

細胞のなかでも

Th17

細胞が病態発症に中心 的な役割を担っていることが知られている

(3)

Th17

細胞は、

Interleukin (IL) -17

を 産生し、滑膜線維芽細胞を活性化して炎症を惹起する。滑膜線維芽細胞は炎症が進 展するにつれ増殖し、多層化、絨毛状になる。滑膜の深部では炎症細胞の浸潤と血 管の新生が起こり、肉芽組織が形成されその中で骨破壊を担う破骨細胞が活性化さ

れる

(1, 2)

。血管新生、滑膜表層細胞の増生、炎症細胞の活性化、骨・軟骨の破壊な

どの病態は、種々の細胞から分泌される種々のサイトカインやケモカインが複合的 に働いた結果であると考えられている。前述した

IL-17

や、マクロファージ、滑膜 細胞の作る

Receptor Activation of NF-κB Ligand (RANKL)

、腫瘍壊死因子

(tumor necrosis factor α; TNF-α)

IL-1

IL-6

などの炎症性サイトカインが病態形成の主要因 と考えられている

(1, 2, 4)

1980

年代に

RA

に対するメトトレキサート

(methotrexate; MTX)

の有効性が確立され、アンカードラッグとして

RA

治療の中心

となってきた。また

MTX

の反応が十分でない症例には

TNF-α阻害薬、 IL-6

受容体 阻害薬などの生物学的製剤を使用して関節破壊を抑制し、寛解状態に持ち込める確 率が向上した

(4)

。しかし生物学的製剤は、高価であり、生物学的製剤に反応しない 患者も存在し、より効果的で安価な治療法は望まれる。

2.

関節リウマチとマスト細胞

(a)

関節リウマチとマウスマスト細胞

(15)

8

K/BxN

マウス血清中には抗

glucose-6-phosphate isomerase (GPI)

抗体が含まれてお り、

K/BxN

マウス血清を正常マウスに移入すると、関節炎

(K/BxN-passive arthritis [PA])

が生じる

(5)

K/BxN-PA

Fc

受容体のγサブユニットや

Fc γ RIII

を欠いたマウ スでは発症しない

(6, 7)

。抗

II

型コラーゲンモノクローナル抗体

cocktail

を用いた関 節炎モデルと抗原誘発性関節炎モデルの研究において、

IgG

受容体の活性化が関節 炎発症に中心的な役割を果たしていることが明らかとなっている

(8-10)

。マスト細 胞欠損マウスである

W/W

vマウスと

Sl/Sl

dマウスに、自己抗体を移入した実験から、

K/BxN-PA

にはマスト細胞が必要であり

(11)

、さらに自己抗体誘導性マスト細胞活

性化には

Fc γ R

が関与していることが報告されている

(12)

W/W

vマウスと同様に末 梢血の好中球が少なく、

Kit

に変異を有するマスト細胞欠損マウスである

Pretty2

マ ウスにおいても、

K/BxN-PA

は減弱した

(13)

。また、マウスマスト細胞プロテアー ゼ

6

欠損マウスは

K/BxN-PA

の発症に抵抗性であるとも報告されている

(14)

。一 方、

W

shマウスや

Cpa3

cre/マウスなどのマスト細胞欠損マウスでは関節炎は減弱しな かったと報告されている

(15, 16) (

1)

。これらのことから、

RA

の病態におけるマ スト細胞の役割についてはいまだに議論がある。最新の報告では

K/BxN-PA

を用い て時期特異的にマスト細胞を欠損させると、発症前にマスト細胞を欠損させた時の み炎症を抑制したという報告がある

(17)

(b)

関節リウマチとヒトマスト細胞

RA

患者の滑膜組織では、健常膝関節滑膜組織と比較して

(18)

、あるいは、半月 板切除術後の半月板組織と比較してマスト細胞数が増加し、マスト細胞数と臨床的 な滑膜炎症の程度との相関すること

(19)

、脱顆粒像を示すマスト細胞が増加し、マ スト細胞周囲に

TNF- αや IL-1

が存在すること

(20)

RA

患者の関節液中においてヒ スタミンが検出されること

(21)

、また

MC

TC タイプ

(tryptase

chymase

の両方のプ ロテアーゼを持つマスト細胞

)

のマスト細胞数は、

OA

と健常膝関節滑膜組織と比較 して増加していること

(22)

が報告されている。

RA

患者の滑膜マスト細胞は

OA

患 者の滑膜マスト細胞と比べ抗

IgE

抗体

(23)

、アナフィラトキシン

C5a (24)

に反応し て多量のヒスタミンを遊離することが報告されている。これらの結果からマスト細 胞が

RA

の病態、特に、炎症の増悪に関与していることが示唆されていた。

2012

年、

Lee

らは免疫複合体が高親和性

IgG

受容体である

FcγRI

、低親和性

IgG

受容体

(16)

9

である

Fc γ RIIA

を介して関節滑膜マスト細胞を活性化することを報告したが、

RA

と 変形性関節症

(osteoarthritis: OA)

の関節滑膜マスト細胞表面の

Fc γ RI

Fc γ RII

FcγRIII

および高親和性

IgE

受容体である

FcεRI

の発現量に差はなく、

FcγRI

FcεRI

の架橋によって遊離されるヒスタミン量やサイトカイン量には差がなかった

(25)

。 最近、

RA

患者の関節滑膜組織において

stem cell factor

の受容体である

Kit

やトリプ ターゼなどのマスト細胞特異的遺伝子発現と血清

c-reactive-protein (CRP)

などの

RA

の重症度には負の相関が見られることから、マスト細胞は、

RA

の関節炎において抗 炎症作用を有している可能性が示唆されている

(26, 27)

。したがってヒト滑膜マスト 細胞が

RA

の関節炎の抑制に関与していることが示唆されその機序の解明が治療に 結び付くと考えられる。

3.

関節リウマチと

prostaglandin

アラキドン酸カスケードはアラキドン酸を原料としてプロスタグランディン類

(prostaglandins: PGs)

やトロンボキサン類

(thromboxanes; TXs)

やロイコトリエン類

(leukotrienes: LTs)

などの脂質メディエーターを生合成する代謝経路である

(

1)

。 アラキドン酸は細胞膜のリン脂質に含まれ、活性化した

phospholipase A

2

(PLA

2

)

に よって細胞内へ遊離される。その後、細胞膜にある

cyclooxygenase (COX)

によって 中間体を経て、

PGD

2、

PGE

2、

PGF

2α、

PGI

2および

TXA

2が合成される。また、アラ キドン酸は

arachidonate 5-lipoxygenase (ALOX5)

によって

LTA

2を介して最終的に

LTB

4、

LTC

4、

LTD

4、

LTE

4が生成される。

prostaglandin

は、

RA

の滑膜細胞で産生が亢進し、炎症惹起作用、血管透過性亢

進、

T

細胞の遊走、マトリックスメタロプロテイナーゼの産生誘導など、炎症反応 の調整をする

(28)

。さらに、滑膜の増殖や血管新生にも関与する最も重要なメディ エーターと考えられている

(28)

。コラーゲンによって関節炎を誘導した

DBA/1J

mice

に、

PGD

2受容体のひとつである

DP1

のアンタゴニストを投与すると炎症反応 は増悪する一方で、

PGD

2のもう一つの受容体である

DP2 (

別名

chemoattractant

receptor-homologous molecule on Th2 cells; CRTH2)

のアンタゴニストを投与すると炎 症は不変であった

(29)

。また、

PGD

2を投与すると炎症は抑制され、

DP1

アゴニスト を投与すると炎症は抑制された

(29)

。これらの結果から、

PGD

2は

DP1

を介して炎 症を抑制する役割を担っていることが示された。コラーゲンによって関節炎を誘導

(17)

10

した

DBA/1J mice

では

DP2

アンタゴニスト投与で炎症反応は不変であった

(29)

。ア

ジュバンド誘導性関節炎モデルマウス

(C57BL/6J mice)

を用い、炎症反応の変化を 調べた報告がある。その報告によると野生型マウスと

CRTH2

ノックアウトマウスに 炎症反応を惹起させると、両方のマウスで

PGD

2の産生が亢進し、炎症反応の増悪が 見られたが

CRTH2

ノックアウトマウスの方が、より重度な炎症反応の増悪をみとめ

(30)

。いずれも

PGD

2は関節炎に対し、抑制効果を有することが示唆された。以

上のことを表

2

に示す。

prostaglandin

の中でも

PGE

2は

RA

の炎症惹起に対して重要 な役割を担っている

(31)

PGE

2は

RA

の滑膜組織において発熱、疼痛、血管透過性 亢進、炎症細胞遊走などを引き起こし、炎症を増悪させる。また、破骨細胞を活性 化する作用もあることが知られている

(32)

。骨吸収促進による関節破壊は

RA

の重 要な病態である。また

RA

の滑膜組織では

PTGS2

が著明に発現している

(33)

。これ らのことから

RA

において

PTGS2

を抑制することが抗炎症をもたらす可能性が考え られる。

4.

関節リウマチ患者の関節液中の

prostaglandin

RA

患者の滑膜細胞では

PGE

2、

PGF

2α、

PGI

2、

TXA

2などが産生され、関節液中で は

PGD

2、

PGE

2、

PGF

2α、

6-keto-PGF

1α、

TXB

2、

LTB

4などが検出される。

RA

患者で は

OA

患者と比較し、関節液中の

PGE

2濃度が有意に高く、

NSAIDs

を服用している

RA

患者ではステロイド服用患者よりも

PGE

2濃度は低いということが報告されてい

(34)

。関節内での

PGE

2産生細胞として関節液中マクロファージや滑膜細胞が挙げ

られる

(31)

PGD

2の合成酵素には

L-PGDS (lipocalin type-prostaglandin D synthase)

H-PGDS (hematopoietic type-prostaglandin D synthase)

があり、末梢組織では

H-PGDS

によって生合成される。

H-PGDS

はマスト細胞、樹状細胞、

Th2

リンパ球などの造血 系の細胞に発現している

(35-37)

。関節液中で検出される

PGD

2はこれらの細胞から 産生されたものと考えられる。ヒト滑膜マスト細胞は

PGD

2を産生することが報告さ

れており

(38)

RA

の滑膜マスト細胞が免疫複合体で刺激され

PGD

2を産生し、局所

の炎症を制御しているという仮説を立てた。

5. microRNA

と関節リウマチ

microRNA (

以下

miRNA)

はゲノム上にコードされ、多段階的な生成過程を経て最

(18)

11

終的に

20

から

25

塩基長の微小

RNA

となる機能性核酸である。特定の

mRNA

に結 合し、その翻訳を阻害したり、不安定化して破壊に導いたりして当該分子の発現を 制御して免疫機能を調節している

(39)

。非常に多くの

miRNA

が関節リウマチと関 係するものとして同定されており、バイオマーカーや、診断や予測、治療への応用 が期待されている

(40)

。例えば、

RA

B

細胞では

miRNA-155

が抗体産生を促進す る役割を果たし

(41)

RA

の線維芽細胞では

miRNA-17

TNF- αのシグナルの抑制

に関与している

(42)

。本研究では

RA

OA

マスト細胞から産生される

PGD

2の量の

差は

miRNA

によって制御されているという仮説を立てた。

(19)

12

目的

RA

患者由来培養マスト細胞がどのようにして、

RA

の炎症を抑制するかその機序を 明らかにし、新規治療薬の開発に資する研究を行うことを目的とした。

(20)

13

対象と方法

1.

使用抗体、試薬、物品

以下の抗体、試薬、物品は、それぞれ下記の会社から購入した。

HistoDenz solution

、ウシ血清アルブミン

(bovine serum albumin ; BSA)

Sigma-Aldrich (Tokyo, Japan)

、ヒトミエローマ

IgE

は、

Calbiochem (San Diego, CA, USA)

、フィコエリスリ ン

(phycoerythrin: PE)

、標識ヤギ抗マウスモノクローナル抗体は、

BD Bioscience (San Jose, CA, USA)

、ウシ胎児血清、ペニシリン

/

ストレプトマイシンは、

GIBCO (CA, USA)

、リンパ球分離溶液

(lymphocyte separation medium; LSM)

は、

Organon Teknika (Durham, NC, USA)

、ヒトリコンビナント

stem cell factor (SCF)

、ヒトリコン ビナント

IL-6

は、

PeproTech (Rocky Hill, NJ, USA)

、無血清

Iscove’s methylcellulose medium

は、

Stem Cell Technologies (Vancouver, BC, Canada)

TaqMan

プライマーは全 て、

Applied Biosystems (Tokyo, Japan)

miRNeasy Mini kit

Qiagen (Hilden,

Germany)

、抗

FcγRI F(ab')

2 フラグメント

(F[ab’]

FcγRI, clone 10.1)

ID Labs (London, ON, Canada)

、マウス

IgG1 F(ab')

2フラグメント

(F[ab’]

2

mIgG1)

および抗マ ウス

IgG F(ab')

2フラグメント特異的ヤギ

F(ab')

2フラグメント

(gF[ab’]

mF[ab’]

2

)

Jackson ImmunoResearch (West Grove, PA, USA)

2.

ヒト滑膜マスト細胞の分離と培養

平成

22

2

8

日付けで関節滑膜組織の使用に際して、倫理委員会・臨床研究審 査委員会の承認番号

RK-100115-4

を受けた。その後改訂版として平成

23

4

12

日、平成

24

12

17

日、平成

25

6

25

日付けで追加承認を受けた。平成

28

2

5

日付け承認番号

RK-160112-2

を受けた。手術前にインフォームドコンセン トを患者とその家族に行い、承諾書を頂いた。その後、日本大学医学部附属板橋病 院にて行われた、人工膝関節置換術で切除された関節滑膜組織の一部を実験に供し た。滑膜組織を酵素的に処理し、細胞を単離した

(

マスト細胞の純度は約

5%)

。マス ト細胞の純度はキムラ染色

(43)

を用いて算出した。マスト細胞の純度を上げるため に、単離された細胞を、

2%

ウシ胎児血清と

100 units/ml

ペニシリン

/ 100µg/ml

ス トレプトマイシンを添加した

Iscove’s modified Dulbecco’s medium (IMDM; Invitrogen)

(21)

14

に再浮遊させた後、

22.5% HistoDenz solution

とリンパ球分離溶液

(LSM: lymphocyte

separation medium)

を用いて比重遠心した。滑膜マスト細胞の前駆細胞と成熟マスト

細胞は、その遠心により得られた沈殿層と

LSM

の境界面の細胞層より回収された

(25)

。キムラ染色陽性細胞

(43)

、すなわちマスト細胞の平均純度は

43 ± 4% (9

検体 の平均

±

標準誤差

)

であった。比重遠心後に回収した滑膜マスト細胞を無血清

Iscove’s methylcellulose medium

200 ng/ml

のヒトリコンビナント

SCF

50 ng/ml

の ヒトリコンビナント

IL-6

を添加した

IMDM

で培養した 。

42

日目には

methylcellulose medium

をリン酸緩衝液

(phosphate buffered saline; PBS)

で溶解し、

0.1% BSA

100 ng/ml

のヒトリコンビナント

SCF

50 ng/ml

のヒトリコンビナント

IL-6

100 units/ml

ペニシリン

/

ストレプトマイシンを含有した

IMDM (

マスト細胞

[MC]

培地と呼ぶ。以下同様

)

に再浮遊させ培養を継続した。

3.

線維芽細胞の分離と培養

前述の滑膜マスト細胞の分離と培養で記述した方法と同様に滑膜細胞を酵素処理 まで行った後に、

2%

ウシ胎児血清と

100 units/ml

ペニシリン

/

ストレプトマイシンを

添加した

IMDM (

以下、線維芽細胞培地と呼ぶ

)

に細胞を再浮遊させ、フラスコ内に

おいて

48

時間、

37 °C

でインキュベートすると、フラスコの底面に線維芽細胞を認

める。トリプシン溶液を加えて細胞をはがした後に

PBS

で回収し、より大きなフラ スコに移し、線維芽細胞培地で培養する。

4. OA

マスト細胞と

RA

線維芽細胞との共培養

OA

マスト細胞と

RA

線維芽細胞を

collagen coting

24

穴プレートを用いてマスト 細胞培地で

96

時間共培養する。まず

RA

線維芽細胞をプレートに線維芽細胞培地と ともに加え、

48

時間インキュベートしコンフルエントにする。その後培地をマスト 細胞培地に置き換え、一穴につき

3×10

5個ずつ

OA

マスト細胞を加える。

96

時間 後、マスト細胞のみ単離する。

RA

線維芽細胞は底面に張り付くため、弱くピペッテ ィングすると

OA

マスト細胞のみ単離可能であった。

5.

滑膜マスト細胞の活性化

FcεRI

の架橋刺激実験では、マスト細胞に

0.5 μg/ml

のヒトミエローマ

IgE

を添加

(22)

15

37°C

30

分間感作させ、一度洗浄した後に

4-(2-hydroxyethyl)-1-

piperazineethanesulfonic acid (HEPES)

緩衝液も再浮遊させた。ヒトリコンビナント

IgE

で感作されたマスト細胞を、ヒスタミン、

PGD

2測定実験

(

マスト細胞数:

100 μl

あたり

1×10

3

)

では抗

IgE

抗体で

30

分間刺激し、サイトカイン測定実験

(

マスト 細胞数:

100 μl

あたり

1×10

5

)

では抗

IgE

抗体で

6

時間刺激した。

Fc γ RI

を介した

IgG

依存刺激を行った。

Fc γ RI

の架橋には、まずマスト細胞を抗

Fc γ RI F(ab')

2フラグ メント

(clone 10.1)

、またはマウス

IgG1 F(ab')

2フラグメントとともに、それぞれ

10

μg/ml

の濃度で

37 °C

30

分間インキュベートした。そして洗浄後に、

HEPES

緩衝

液で再浮遊させ、得られたマスト細胞を

1

および

3 μg/ml

の抗マウス

IgG F(ab')

2フラ グメント特異的ヤギ

F(ab')

2フラグメントとともにヒスタミンおよび

PGD

2アッセー

(

マスト細胞数:

100 μl

あたり

1×10

3

)

では

30

分間インキュベートした。

6. total RNA

抽出、相補的

DNA (cDNA)

への逆転写、定量的

RT-PCR

RNeasy Mini Kit (QIAGEN, Valencia, CA, USA)

を用いて、

OA

および

RA

滑膜由来 マスト細胞から

total RNA

を抽出した。抽出した

total RNA (100 ng)

10 mM dNTP mix

oligo-dT primer (Invitrogen Life technologies)

nuclease-free water

を混合し、

65ºC

5

分反応後、

4ºC

で急冷した。この混合液に

5×First strand buffer

0.1 M 1,4-

Dithiothreitol (DTT)

RNase out

Super Script II (Invitrogen Life technologies)

を添加 し、

42ºC

50

分、

72ºC

15

分反応させ、

4ºC

で急冷し、

total RNA

cDNA

に逆転 写した。逆転写した

cDNA (5 ng)

TaqMan Universal master Mix II (Applied

Biosystems)

FAM

標識された各遺伝子に対するプローブセット

(Applied Biosystems)

もしくは

VIC

標識された

GAPDH

β-actin

に対するプローブセット

(Applied

Biosystems)

Nuclease free water

を、

96

穴プレートに添加し、定量的

RT-PCR

を実施 した。この

PCR

は、

StepOne Plus (Applied Biosystems)

で行なった。定量的

RT-PCR

データは、

StepOne software v2.1 (Applied Biosystems)

で解析し、

GAPDH

もしくは

β-

actin

の発現量を用いて各遺伝子の発現量を標準化した。

7. DNA chip

解析

OA

マスト細胞と

RA

マスト細胞の発現遺伝子を

DNA chip

を用いて網羅的解析を 行った。

OA

マスト細胞と

RA

マスト細胞から

RNeasy Mini kit (QIAGEN)

を用いて

(23)

16

total RNA

を抽出し、前述の方法で

cDNA

に逆転写した。逆転写した

cDNA

biotin

標識されたヌクレオチド三リン酸を用いて、ビオチン化相補的

RNA (Biotin-cRNA)

を合成した。

Biotin-cRNA

Human Genome U133 (Affymetrix)

45ºC

16

時間反 応させ、ハイブリダイゼーションした。その後、

streptavidin-phycoerythrin (PE)

と反 応させ、

Hewlett-Packard Gene Array Scanner (Palo Alto, CA, USA)

を用いて蛍光強度を 読み取った。各プローブの蛍光強度は、

GeneChip Analysis Suite 5.0 (Affymetrix)

で数 値化した。数値化したデータを

Genespring software (Agilent Techologies)

を用いて解 析し、

RA

マスト細胞における発現量が

OA

マスト細胞と比較して高かった遺伝子群 を抽出した。

8. miRNA

の網羅的発現解析

OA

および

RA

マスト細胞

(

それぞれ

3

ドーナー

)

から

miRNeasy Mini kit (Qiagen, Hilden, Germany)

を用いて

miRNA

を抽出した。抽出した

miRNA (100 ng)

に、

miRNA Spile-In solution (Agient Technoligies [Santa Clara, CA, USA])

CIP Master Mix

を添加し、

37°C

30

分間反応させ脱リン酸化させた。その後、

DMSO

を添加し、

100°C

10

分間反応させ、氷上で冷却し反応を停止させた。脱リン酸化処理した

miRNA

溶液に

Cy3

を含んだ

Ligation Master Mix (Agilent Technologies)

を添加し、

16°C

2

時間反応させた。

Cy3

でラベルした

miRNA

を精製し、

miRNA Complete Labeling and Hyb Kit (Agilent Technologies)

と、

55°C

20

時間反応させ、ハイブリダ イゼーションさせた。その後

miRNA

を抽出した。

miRNA

の網羅的発現解析はヒト

miRNA Micro assay kit Release16.0 (Agient Technoligies [Santa Clara, CA, USA])

を用い て行った。

9.

メディエーターの測定

PGD

2の測定には

PGD

2

-methoxylamine (MOX) enzyme immunoassay (EIA) kit

(Cayman Chemical [Ann Arbor, MI, USA])

を用いた。

PGE

2の測定には

PGE

2

EIA kit

(Cayman Chemical [Ann Arbor, MI, USA])

を用いた。ヒスタミンの測定には

EIA kit

(MBL ([Tokyo, Japan])

を用いた。ヒスタミン遊離率は、

(

放出されたヒスタミン量

/

未刺激のマスト細胞に含まれる総ヒスタミン量

)×100%

として算出した。

(24)

17 10.

関節液の採取

先述の滑膜採取と同様に、日本大学医学部付属板橋病院で行われた人工膝関節置 換術の際、

OA10

例および

RA10

例より関節液を約

10ml

採取した。

OA14

例はすべ

NSAIDs

で治療されていた。

RA3

例は抗

TNF- α抗体あるいは、抗 IL-6

抗体で治療

されていたが、手術の

2-4

週間前に生物学的製剤は中止した。

11.

統計処理

OA

RA

2

群間の検定においては正規分布に従ってない分布の中心分布の差を 検定するため、

Mann-Whitney

U

検定を用いた。

miR-199a-3p

PTGS2

の発現量の

相関は

Spearman

の順位相関係数を用いて相関の強さを検定した。解析には、

GraphPad Prism 6 (MDF, Tokyo, Japan)

を用いた。

p < 0.05

を統計学的に有意差がある とした。

(25)

18

結果

1. DNA chip

解析による

OA

RA

マスト細胞における遺伝子発現量の比較

osteoarthritis (OA)

rheumatoid arthritis (RA)

の滑膜中のマスト細胞の特徴を解析 するため、

OA

患者

(3

ドーナー

)

RA

患者

(3

ドーナー

)

の滑膜から、マスト細胞 を培養し、

DNA chip

を用いて、遺伝子プロファイルを網羅的に解析した。図

2

は、

クラスター解析によって

RA

マスト細胞において

OA

マスト細胞と比較して発現が高 かった遺伝子群を示す。

prostaglandin

thromboxane

leukotriene

の合成酵素である

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

および

LTC4S

が、

OA

由来培養マスト細胞よりも

RA

由 来培養マスト細胞で高発現していた

(

2)

。これらのことから、

OA

および

RA

マス ト細胞は、脂質メディエーターの生合成能に違いがあること示唆された。次に、

OA

および

RA

由来培養マスト細胞のアラキドン酸カスケードにおける、脂質メディエ ーターの合成酵素の発現をより詳細に

DNA chip

のデータを用い比較した。発現量は

normalize

した

RA3

ドーナー、

OA3

ドーナーの発現量の平均化で示した。図

3A

では

prostaglandin

系代謝の酵素である

PTGS1

PTGS2

L-PGDS

H-PGDS

prostaglandin E synthase 1 (PTGES1)

PTGES2

prostaglandin I synthase (PTGIS)

thromboxane

系代 謝の酵素である

TBXAS1

leukotriene

系代謝の酵素である

LTA4H

LTC4S

ALOX5

の発現量を示している。図

3B

prostaglandin

受容体である

(prostaglandin D receptor) PTGDR

CRTH2

prostaglandin E receptor 2 (PTGER2)

prostaglandin E receptor 3 (PTGER3)

prostaglandin E receptor 4 (PTGER4)

leukotriene

系受容体である

cycteinyl leukotriene receptor 1 (CYSLTR1)

の発現量を示している。結果、両マスト細胞間で、

顕著に発現が異なる合成酵素は、

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

LTC4S

であった

(

3A and B)

。図

3C

はマスト細胞特異的遺伝子群の発現量を示しており、マスト細胞

特異的遺伝子群の発現量は、両マスト細胞間で、有意な差が認められなかったこと から、これらの合成酵素の発現が異なる原因は、マスト細胞の成熟度の違いによる ものではないことが考えられた。

2.

定量的

RT-PCR

解析による

OA

RA

マスト細胞における脂質メディエーター合

成酵素の発現の比較

(26)

19

DNA chip

で得られた結果を確認するために

OA

RA

マスト細胞間に差があるとい

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

および

LTC4S

の遺伝子発現量を定量的

RT-PCR

法で解 析した。

PTGS1

PTGS2

PTGES

LTC4S

および

TBXAS1

の発現量を測定した結 果、

RA

マスト細胞で有意に高かったのは

PTGS1

PTGS2

LTC4S

および

TBXAS1

であった

(

4A)

prostaglandin E synthase (PTGES)

の発現量は低く、有意差は見ら れなかった。造血型

prostaglandin D synthase

である

H-PGDS

の発現量を測定したが有 意差は見られなかった

(

4B)

3. OA

RA

マスト細胞における

IgE

依存性脱顆粒反応および脂質代謝物産生量の比 較

遺伝子発現量に有意差があった酵素により影響される脂質メディエーターに

PGD

2、

LTC

4が挙げられる。

OA

RA

マスト細胞に

IgE

依存性の刺激を行い、その 産生量を比較した。抗

IgE

抗体刺激によるヒスタミン遊離量において

OA

RA

マス ト細胞間に有意差はなかった

(

5A)

。抗

IgE

抗体刺激により産生される

PGD

2の産 生量は

RA

マスト細胞で有意に高く、

LTC

4の産生量は、

RA

マスト細胞で高い傾向 にあった

(

5B and 5C)

。一方、抗

IgE

抗体刺激による

LTB

4の産生量は

OA

で高い 傾向にあった

(

5D)

4. OA

RA

マスト細胞における

IgG

依存性脱顆粒反応および脂質代謝物産生量の比 較

IgG

依存性刺激によるヒスタミン遊離量および

LTB

4産生に

OA

RA

マスト細胞間 で有意差はなかった

(

6A and D)

。また、

PGD

2産生量は

RA

マスト細胞の方が有意 に高かった

(

6B)

。図

6C

6D

LTC

4、

LTB

4の産生量を示すが、ほとんど産生さ れなかった。

5. OA

RA

線維芽細胞における

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

LTC4S mRNA

の比較と

OA

マスト細胞と

RA

線維芽細胞共培養による

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

LTC4S mRNA

発現量への影響

OA

RA

マスト細胞でみられた

PTGS1

PTGS2

LTC4S

および

TBXAS1 mRNA

の発現量の差が線維芽細胞でもみられるかどうかを検討するため

OA

患者、

RA

患者

(27)

20

の滑膜から単離、培養した線維芽細胞の遺伝子発現量を定量的

RT-PCR

法で測定し た。

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

および

LTC4S mRNA

の発現は、

OA

RA

線維芽細胞 間に有意差はなかった

(

7A)

ALOX5 mRNA

の発現は感度以下であった

(data not

shown)

。また

OA

および

RA

線維芽細胞培養上清中の

PGD

2量を測定したが

EIA

検出

感度以下であった

(data not shown)

。 マスト細胞の顆粒成熟や細胞表面分子の発現 は、微小環境に存在する線維芽細胞に影響を受けることが報告されている

(44)

。こ れらの報告から、

RA

OA

マスト細胞の脂質メディエーター合成酵素発現の違い は、病態局所の滑膜を構成する線維芽細胞に依存しているという仮説を立てた。そ の仮説を検証するために、

OA

由来培養マスト細胞と

RA

由来線維芽細胞を共培養し た。マスト細胞と線維芽細胞間の相互作用によって

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

およ

LTC4S mRNA

の発現量に変化があるかどうかを調べた。

OA

マスト細胞と

RA

維芽細胞を

96

時間共培養し、

OA

マスト細胞のみを単離し、遺伝子発現量を定量的

RT-PCR

法で測定した。

OA

マスト細胞は、

RA

線維芽細胞と共培養しても

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

および

LTC4S mRNA

の発現は、亢進しなかった

(

7B)

。したが って、

RA

の線維芽細胞は

OA

マスト細胞の

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

および

LTC4S mRNA

の発現制御には影響を及ぼしていないことが明らかになった。

6. OA

RA

マスト細胞の

miR-199a-3p

発現量の比較

遺伝子発現を制御する因子として、

miRNA

が重要な役割を担っていることが知ら れている。

OA

RA

マスト細胞に発現量の差がみられた遺伝子群を制御する

miRNA

の発現を解析するために、

OA3

ドーナーと

RA3

ドーナーを用いて

miRNA

chip

解析を行った。その結果、

OA

マスト細胞の方が

RA

マスト細胞より

3

倍以上発 現量が高い

miRNA

20

個見出した

(

3)

。これまでに、

miR-199a-3p

PTGS2

の 発現に関与することが報告されている

(45, 46)

。実際に

miR-199a-3p

の発現に、

RA

および

OA

マスト細胞間で違いが見られるかを検証するために、

15

ドーナーの

OA

マスト細胞と

9

ドーナーの

RA

マスト細胞における

miR-199a-3p

の発現を定量的

RT- PCR

法で比較した結果、

OA

マスト細胞の方が、

miR-199a-3p

の発現が高い傾向にあ ったが有意差を認めなかった

(

8)

7. OA

RA

マスト細胞における

miR-199a-3p

PTGS2

の発現の相関

(28)

21

OA

マスト細胞の

miR-199a-3p

の発現量と

PTGS2

の発現の相関を調べた。

OA

マス ト細胞において相関はなかったが

(

9A)

RA

マスト細胞では、

miR-199a-3p

PTGS2

の発現量には負の相関が認められた

(R = -0.7167

p = 0.0369) (

9B)

。した

がって、

miR-199a-3p

PTGS2

の発現量を負に制御していることが示唆される。

8. OA

RA

患者の関節液中の

PGD

2と

PGE

2量

関節炎と脂質メディエーターの関係を検証するために、

OA

RA

患者から採取し た関節液中の

PGD

2、

PGE

2量を

EIA

法で測定した。患者の詳細は表

4

に示す。

OA

患者

10

名、

RA

患者

10

名から採取した関節液では

OA

患者より

RA

患者の関節液で は、

PGD

2濃度が有意に高かった

(

10A)

OA

患者

14

名、

RA

患者

10

名から採取 した関節液では

PGE

2濃度は

OA

RA

間に有意差はなかった

(

10B)

。以上より、

PGD

2は、

RA

の病態と関与がある可能性が示唆された。

(29)

22

考察

RA

の病態においては関節炎マウスモデルや滑膜の組織染色を用いた研究からマス ト細胞は

RA

の発症や炎症の増悪に関与するいわゆる

悪玉

として考えられてき た。しかし、ここ

1-2

年の

RA

患者の関節滑膜組織中のマスト細胞関連遺伝子発現や 関節液中のマスト細胞由来のメディエーターが

RA

の重症度や炎症マーカーと逆相 関することが報告され、

善玉

の可能性が示唆されていたが、その機序は不明であ った。本研究では

RA

マスト細胞が免疫複合体の刺激によって過剰な

PGD

2を産生す ることにより、炎症を抑制する可能性を世界で初めて示した。

OA

マスト細胞と

RA

マスト細胞に発現している遺伝子の網羅的遺伝子解析および定量的

RT-PCR

解析に より脂質メディエーター合成酵素に関する

PTGS1

PTGS2

TBXAS1

および

LTCS4 mRNA

RA

マスト細胞で

OA

マスト細胞と比較して有意に発現が高かった。その 結果として

IgE

依存性刺激および

IgG

依存性刺激によるマスト細胞から産生される

PGD

2量は

RA

マスト細胞で有意に高かった。その要因として

miRNA chip

解析を行 い、

PTGS2

の発現に影響を与える

miR-199a-3p

に注目した。

miR-199a-3p

OA

マス ト細胞と

RA

マスト細胞間に有意な発現量の差は認めなかったものの

RA

マスト細 胞において

miR-199a-3p

PTGS2

の発現量は有意な負の相関があり

miR-199a-3p

は 少なくとも

RA

マスト細胞において

PTGS2

の発現を制御している一因子であること が示唆された。

PGD

2受容体および

PGD

2合成酵素の欠損マウスを用いた研究から

PGD

2、特に

HPGDS

由来の

PGD

2は炎症の抑制効果を持つことが示されている

(47-50)

。その機序

としては①

PGD

2が樹状細胞表面の

DP

1を介して樹状細胞の遊走と機能を抑制し、

結果として

T

細胞機能を抑制すること

(49)

、②

PGD

2の分解産物である

15-deoxy- Delta12,14-prostaglandin J

2

(15d-PGJ

2

)

peroxisome proliferator-activated receptor

(PPAR) -γ

依存性および非依存性の系を介して好中球の遊走を抑制することによって

炎症を抑制すること

(50)

、③ 炎症の際に

T

細胞と

B

細胞から産生される

IL-10

を増 加させ、マクロファージから産生される炎症性サイトカイン

TNF-α

を低下させるこ

(50)

が示唆される。実際、関節炎マウスモデルにおいて、

PGD

2受容体の阻害薬

(51)

PGD

2受容体欠損マウス

(30)

を用いた報告からも

PGD

2は炎症抑制効果をもつ

(30)

23

ことが示唆される。ヒトの

RA

において

PGD

2の阻害薬を用いた臨床研究はなく、

PGD

2の直接作用は不明である。

PTGS

の阻害薬である

NSAIDs

は抗炎症作用があり

OA

RA

に用いられている。

NSAIDs

RA

の病態を悪化させたという報告はないが、この理由として

NSAIDs

PGD

2のみならず

PGE

2や

PGI

2の産生を抑制し、

PGE

2は関節炎症を惹起している主要 因子であることから

(52)

、抗炎症効果は

PGE

2の抑制効果である

(53)

。したがって マスト細胞が産生される

PGD

2を特異的に抑制した場合、炎症は増悪するかどうかは 今後の更なる検討が必要である。

RA

患者の関節滑膜組織における

Kit

tryptase

などのマスト細胞特異的遺伝子発 現量と

RA

の重症度には負の相関が見られること

(26)

RA

患者の血清

CRP

tryptase

レベルにも負の相関が見られること

(27)

より、マスト細胞は、

RA

の病態に

おいて抗炎症作用がある可能性があると示唆されていた。本研究では、

RA

マスト細 胞からの

PGD

2過剰産生がその抑制効果の一因である可能性が示唆された。実際、大 腸炎および大腸炎関連大腸がんマウスモデルにおいては、マスト細胞から産生され る

PGD

2が大腸炎および大腸炎関連大腸がんの抑制因子であると報告されており

(54)

RA

においても同様の機構が想定されるが、関節炎マウスモデルを用いた検証 が必要である。最新の報告においても

K/BxN-PA

を用いて時期特異的にマスト細胞 を欠損させると、発症前にマスト細胞を欠損させた時のみ炎症を抑制したという報

告がある

(17)

が、マスト細胞からは

TNF-α

IL-6

、ヒスタミン、プロテアーゼや

PGD

2といった様々なメディエーターが遊離、産生されるため、本研究とは異なった 結果がでたものと考えられた。本研究では今後マスト細胞から産生される

PGD

2のみ を欠損させ関節炎マウスモデルで検討する予定である。

Lee

らはヒト

RA

OA

の関節滑膜からマスト細胞を分離し、その表現型を解析し た 。その結果、免疫複合体が

FcγRI

FcγRIIA

を介して関節滑膜マスト細胞を活性 化することを報告した

(25)

。しかし

RA

OA

の関節滑膜マスト細胞表面の

FcγRI

FcγRIIA

FcγRIII

および

FcεRI

の発現量に差はなく、

FcγRI

FcεRI

の架橋に よって遊離されるヒスタミン量やサイトカイン量にも差は見られなかった。この時 点ではアラキドン酸代謝産物の産生量の違いは検討しなかったが、本研究の検討で その差が明らかとなった。

RA

の炎症局所においてマスト細胞を活性化させる因子は 免疫複合体であり、実際にヒトの抗 シトルリン化蛋白抗体がヒトのマスト細胞を活

(31)

24

性化させたという報告がある

(26)

。本研究のマスト細胞の刺激実験において

IgE

依 存性の系を用いた理由は、

Lee

(25)

の検討で免疫複合体による刺激よりもマスト 細胞に強い活性化が起こり、

Fc ε RI

Fc γ RI

および

Fc γ RIIA

のすべての受容体は

common γ -chain (FcR γ )

とのダイマーであり、共通の細胞内シグナル伝達系を使うた

(55)

、一つの実験系として使用した。もちろん

RA

の炎症局所で

IgE

依存性の刺

激でマスト細胞が活性化することは、考えにくい。

RA

マスト細胞を

IgE

依存性の刺激を行うと

LTC

4は

RA

で有意に多量に産生され

たことは

LTC4S

の発現が高いことで説明される

(

4A)

。一方

LTB

4が

OA

マスト細

胞から有意に多量に産生される理由としてアラキドン酸カスケード

(

1)

より、

OA

においては

LTC4S

の発現量が低く、相対的に

LTB

4の産生に傾いたものと考えら れる。また、

IgG

依存性刺激では

LTC

4、

LTB

4の産生量が低かった

(

6C

6D)

Fc ε RI

はαβγ

2

のヘテロテトラマーであるが

Fc γ RI

Fc γ RIIA

はαγ

2

のヘテロダイマー で

β

鎖をもたない

(56)

β

鎖はロイコトリエンの産生を上げることを

Nunomura

らは 示しており

(57)

IgG

依存性刺激では

β

鎖が関与しないためと考えられる。したがっ て、

RA

の炎症局所においてマスト細胞を活性化させる因子は免疫複合体であるので アラキドン酸代謝産物としては

PGD

2のみ過剰産生されると考えられる。

OA

RA

の対照疾患としていいかという問題がある。確かに健常人の滑膜組織を そのコントロールとすべきであるが、倫理的な問題があり、健常人から研究のため に滑膜組織を採取することは極めて難しい。

RA

研究においては歴史的に

RA

のコン トロール疾患として

OA

を用いてきた

(21-24)

OA

の発症年齢は通常

50

歳以上で、女 性は男性の

3

4

倍多い点も

RA

の患者の年齢と性差に有意差がつき難いという点

(58)

OA

では通常

CRP

は陰性で病態が炎症ではない点、また、

OA

患者で人工膝関節 置換術を施行される患者数も多く、検体が入手しやすい点も歴史的に

OA

がコントロ ール疾患として使用されてきた理由であろう。

Lee

らはヒト

RA

OA

の関節滑膜からマスト細胞を分離し、分離直後のマスト細 胞と培養滑膜マスト細胞の顆粒構造を電子顕微鏡による観察にて比較し同様の顆粒 構造であること、細胞表面に発現している受容体を比較し、

Kit

Fc γ RI

Fc γ RIIA

Fc γ RIII

および

Fc ε RI

の発現量に差はなかったが、

Fc γ RII Βの発現量に差異があったこ

とを報告した

(25)

。すなわち、本研究で実験に供したマスト細胞は培養滑膜マスト 細胞であり、このマスト細胞は、滑膜組織の炎症局所に存在するマスト細胞と同一

(32)

25

ではない。そのため現在、本研究で示した

PGD

2の産生量の差異について、ヒト

RA

OA

の関節滑膜からマスト細胞を分離し、分離直後のマスト細胞を用いて比較検 討している。

さらに、本研究で使用した

RA

の滑膜組織は 人工関節を要した極めて重篤かつ進 行したものであり、 様々な治療介入後の検体のため初期や活動性のある時の病態で はマスト細胞は違う動きをしている可能性が十分考えうる。最近の報告では、活動 性のありなしの

RA

の滑膜組織中のマスト細胞数を比較すると活動性のある場合に 有意に増加しており、寛解したままの患者と再燃した患者の

RA

の滑膜組織中のマ スト細胞数を比較すると再燃した患者で有意に増加しているという

(59)

。このよう に

RA

の活動性の違いにより微小環境の影響を受けてマスト細胞は、動態を変化さ せると思われ、本研究のデータはあくまでも人工関節を要した極めて重篤かつ進行 した

RA

の 滑膜組織 から樹立した培養マスト細胞の結果であるという限界が存在す る。

また、

RA

のある患者は抗サイトカイン生物学的製剤で治療されていたが、英国お よび日本リウマチ学会のガイドライン

(60, 61)

に従い術前

2-4

週間前に中止した。

インフリキマブでは、血中半減期は、

8.4

日であり、

2-3

週間の休薬にて有効血中濃 度以下になり、エタネルセプトでは、血中半減期は

4.6

日であり、1週間以上の休薬 にて有効血中濃度以下になるが

(62)

DMARDs

のみの使用

RA

患者と比較して抗

TNF

抗体薬剤使用

RA

患者において手術部位の感染頻度が高いという報告があり

(63)

、術前

2-4

週間前に中止しても免疫に対する効果は無視できないため、データの 解釈も慎重であるべきであろう。また、

OA

患者すべてに

NSAIDs

が投与されていた が

NSAIDs

PTGS1

および

PTGS2

の酵素の阻害薬であり

(64)

PTGS2 mRNA

の発 現量には影響を及ぼさない。しかしながら、本研究で使用した

RA

および

OA

の培 養滑膜細胞は少なくとも

12

週間両者同じ条件で培養した後の細胞であり、培養前に 使用した 抗サイトカイン生物学的製剤や

NSAIDs

の影響が結果を反映しているとは 考えにくい。

12

週間以上同一の条件で培養しても両マスト細胞間に発現している特定の遺伝子 の発現量が異なるという事実は、マスト細胞の分化の違いやメチル化など

epigenetic

な修飾が関与していることが想定される。実際

Taketomi

らとの共同研究で

IL-3

依存 性骨髄由来培養マスト細胞

(

粘膜型で未熟なマスト細胞

)

を線維芽細胞と共培養した

(33)

26

PTGS1 mRNA

1.4

倍、

PTGS2 mRNA

387

倍、発現量が上昇したため

(45)

、 線維芽細胞との細胞間相互作用による成熟を想定したが影響はなかった。これは、

滑膜マスト細胞が結合織型のマスト細胞でありすでに成熟度が高いマスト細胞であ ると考えた。次に

miRNA

に注目した。

miRNA chip

解析を行い、

miR-199a-3p

に注目 した理由は、

OA

マスト細胞の方が

RA

マスト細胞より

3

倍以上発現量が高い

20

miRNA

のうち、唯一

miR-199a-3p

が直接に

PTGS2 mRNA

の発現を関節の軟骨細

胞において抑制したという報告があったからである

(45, 46)

miR-199a-3p

発現を検 討した実験では

RA

マスト細胞では

miR-199a-3p

の発現と

PTGS2

の発現との間に負 の相関が見られたことから、

RA

マスト細胞では

miR-199a-3p

により

PTGS2

発現が 制御されている可能性が考えられた。滑膜マスト細胞における詳細な機序を調べる ためには、

OA

マスト細胞に

anti-miR-199a-3p inhibitor (AM11779, has-mir-199a-3p;

Ambion, Austin, TX)

をトランスフェクションすることにより

miR-199a-3p

の発現を 抑制し

(65) PTGS2

の発現が上がることと、

RA

マスト細胞に

miR-199a-3p

を強制発

現させ

PTGS2

の発現が下がることを証明しなければならない。今後の課題である。

また、

RA

マスト細胞における

PTGS2

発現調節に他の

miRNA

が関わっている可能性 も考えられる。ヒト肺がん細胞では

miR-146a

PTGS2

発現を制御しているという 報告されている

(66)

。また、肝がん細胞 では正常肝細胞より

PTGS2

の発現が低 く、その制御に

miR-16

が関与していることが報告されている

(67)

。今後は

miR chip

OA

マスト細胞において高値を示した他の

miRNA

に関して

PTGS2

の発現制御に どのように関わっているかを検討する必要がある。また本研究では

PTGS2

の発現制 御のみに着目したが、今後は

RA

マスト細胞で高かった別の脂質代謝関連遺伝子に 関しても同様に

miRNA

による調節が起こりうるかを検討する必要がある。さらに、

Kuwano

らの報告では

PTGS2

発現は

IL-1β

TNF-α

などのサイトカインによっても制 御されることが示されており

(68)

、炎症性サイトカインによる

PTGS2

および他の遺 伝子の発現制御の検討も今後の課題である。また本研究では

DNA

メチル化について は検討しなかったが今後の検討が必要である。

最後に

RA

OA

の患者の関節液中の

PGD

2と

PGE

2濃度を比較したところ

RA

患 者で関節液中

PGD

2量が有意に高かった。

PGD

2の産生細胞としてマスト細胞のみな らずマクロファージ、樹状細胞、リンパ球、線維芽細胞があり

(36)

、すべての総和 としての関節液中の

PGD

2濃度が示されている訳であるが、

PGD

2の合成酵素に

L-

表 4: OA 、 RA 患者の検査結果、治療情報
図 1:  アラキドン酸カスケード
図 3: DNA chip 解析を用いた OA 、 RA マスト細胞における脂質メディエーター関連
図 5: OA 、 RA マスト細胞における IgE 依存性脱顆粒反応および脂質代謝物産生量の
+4

参照

関連したドキュメント

図 4.症例 3 61 歳,女性.術前,術後の単純 X 線像 a.術前.Larsen grade 5,距腿関節 18°外反.距骨の圧潰と距骨下関節の亜脱臼.

臨床経過:胸部CT(図1)では両肺に多発結節影と気

143 なる,異所性の造血組織が検出され,この形成に,滑

ブドウ球菌外毒素toxic shock syndrome toxin− 1(TSST−1)はtoxic shock syndrome(TSS)の原

クロファージ型細胞(M型細胞)において金粒子は細胞突起,ライソゾ「ム,ゴルジ装置に有意に局在していた。

Amino acid and periodontal profiles in rheumatoid arthritis patients with tumor necrosis factor targeted therapy. Tetsuo Kobayashi 1, 2) , Moe Okada 2) ,

T-cell leukemia あるいは成人 T 細胞白血病・リンパ腫 adult T-cell leukemia-lymphoma と呼ば れますが同じものです)、HAM (HTLV-1 関連脊髄症 HTLV-1

研究要旨  ヒトにおける、関節リウマチ(RA)の免疫学的異常と臨床像、リスク遺伝子である HLA‑DRB1