Ribavirin の悪性神経膠腫細胞株に対する抗腫瘍効果と、
Temozolomide および Interferon-beta との併用についての 検討
日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系脳神経外科学専攻
落合 祐之
修了年 2016 年
指導教員 吉野 篤緖
Ribavirin の悪性神経膠腫細胞株に対する抗腫瘍効果と、
Temozolomide および Interferon-beta との併用についての 検討
日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系脳神経外科学専攻
落合 祐之
修了年 2016 年
指導教員 吉野 篤緖
目 目次次
概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 本論文で用いた略語一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 材料と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 図・表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 研究業績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
1 概 概要要
背
背景景:Glioblastoma は成人に最も多く発生する原発性脳腫瘍である。治療には手術、
放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療が行われる。2005年、アルキル化剤
である Temozolomide(TMZ)を使用した第Ⅲ相無作為比較試験において、全生存期
間(over all survival:OS)の延長を認めたが、14.6ヶ月と極めて予後不良な疾患である。
Interferon-beta (IFN-β) はtype I IFNsに分類され、抗ウィルス作用をもつサイトカイン として発見された。その後、免疫賦活作用、血管新生抑制作用、細胞増殖抑制やアポ トーシスの誘導による抗腫瘍作用など様々な生物学的活性が示されてきた。近年、
glioblastoma の治療において、IFN-βを TMZ と併用することにより、抗腫瘍効果が増
強するという報告がなされている。そして本邦において、TMZとIFN-βの併用療法に よる臨床効果を評価する多施設共同第 I 相試験である a multicenter phase I trial of interferon-beta and temozolomide combination therapy for high-grade gliomas (INTEGRA
Study)が行われている。同試験では、生存期間の中央値が 17.1 ヶ月、1年の無増悪
率は50%と良好であり、現在第II相無作為比較試験が進行中である。一方、核酸アナ ログであるRibavirinは抗ウィルス薬とされ、Interferon-alpha2aと併用することで慢性 C型肝炎の標準治療薬になっている。このRibavirinが乳癌や急性骨髄性白血病に対し 抗腫瘍効果を認めるという報告が散見されている。また、ごく最近当教室からも悪性 神経膠腫細胞株に対して Ribavirin が抗腫瘍効果を認めることを報告した。しかし、
その作用機序は明らかではない。そこで、本研究では Ribavirin の悪性神経膠腫細胞 株に対する抗腫瘍効果の作用機序を検討し、さらにTMZとIFN-βとRibavirinを併用 することで、抗腫瘍効果が増強されるかを検討した。
2 方
方法法: 2種類の悪性神経膠腫細胞株(U-87MG、U-138MG)を用いて、Ribavirinに 対する細胞増殖抑制試験を行った。次に、Ribavirinの悪性神経膠腫細胞株に対する抗 腫瘍効果の作用機序を flow cytometry、ウエスタンブロット法及び蛍光顕微鏡を用い て解析した。また、7種類の悪性神経膠腫細胞株(A-172、AM-38、T98G、U-87MG、 U-138MG、U-251MG、YH-13)を用いて、TMZ + IFN-β + Ribavirinの 3剤併用による 細胞増殖抑制試験を行った。さらに、3剤併用の抗腫瘍効果が相乗効果であるかを検 討した。相乗効果であるかの評価は、2種類の悪性神経膠腫細胞株(A-172、U-251MG) を用いて、Combination Index(CI)を算出し行った。
結
結果果:Ribavirinは2種類の悪性神経膠腫細胞株に対し、細胞増殖抑制効果を認めた。
Flow cytometryによる解析より、Ribavirinがアポトーシスとcell cycle arrestを誘導す ることが示唆された。また、ウエスタンブロット法による解析から、RibavirinはAtaxia telangiectasia mutated(ATM)、p53 pathwayの活性化を誘導した。さらに、蛍光顕微鏡 でRibavirinによるDNA double-strand breaks(DSBs)を示す、リン酸化H2AX(γH2AX) の誘導を認めた。そして、Ribavirin はTMZ 、IFN-β と併用することで細胞増殖抑制 効果の増強を認めた。CIはA-172、U-251MGにおいて、0.68(CI < 1.00)、0.98(CI <
1.00)であり、3剤併用での抗腫瘍効果は相乗効果であった。
結
結論論:悪性神経膠腫細胞株に対して、RibavirinはDSBsを引き起こし、ATM、及び p53を活性化すると考えられた。さらに、p53 pathwayの活性化によりアポトーシスと cell cycle arrestを誘導することで抗腫瘍効果を示すと思われた。また、RibavirinをTMZ、
IFN-βと併用することで、相乗効果による抗腫瘍効果を得られることが示された。今
後、Ribavirinの悪性神経膠腫に対する臨床応用に期待が持たれる。
3 本論文で用いた略語一覧
WHO World Health Organization OS over all survival
KPS Karnofsky performance status TMZ Temozolomide
IMPDH inosine-5’-monophosphate dehydrogenase eIF4E the eukaryoteic translateon initiateon factor 4E MGMT O6-methylguanine-DNA methyltransferase IFNs Interferons
IFN-β Interferon-beta Bax BCL-2-associated X
ARAF1 apoptotic protease activating factor 1 FADD Fas-associated death domain protein DSBs DNA double-strand breaks
ATM Ataxia telangiectasia mutated
DMEM Dulbecco's modified Eagle's medium PI Propidium Iodide Solution
CI Combination index
4 緒 緒言言
神経膠腫(glioma)は外胚葉神経上皮由来の悪性新生物であり、全脳腫瘍の約 4 分の1を占めている。世界保健機関(World Health Organization: WHO)は glioma を 組織像により4段階の悪性度に分類している。中でも最も悪性度の高いWHO grade IV に分類されている膠芽腫(glioblastoma)は、全脳腫瘍の10.8%を占め、成人に最も多 く発生する原発性脳腫瘍である1。Glioblastomaの標準治療は、手術による摘出と放射 線治療及び化学療法による術後補助療法である。一方、昨今の術後補助療法の進歩に も関わらず、その全生存期間(over all survival: OS)は未だ14.6ヶ月と短く、極めて 予後不良な疾患である。glioblastoma の治療を困難にしている要因として、根治的摘 出術が困難であること、有効な薬物治療が少ないことが挙げられる。根治的摘出術が 困難な理由は主に二つある。一つ目は、腫瘍の浸潤性性格が強く、境界が不明瞭な点 である。Glioblastomaの大きさが約4 cmの場合、腫瘍から3 ~ 4 cm離れても細胞の 100個に1個は腫瘍細胞であり、6 cm以上離れた対側大脳半球でも1000個に1個は 腫瘍細胞が存在すると言われている 2。二つ目は、脳には機能局在がある点である。
運動野や言語野などの eloquent areaに腫瘍が存在する場合、摘出術による Karnofsky
performance status(KPS)の低下は避けねばならない。一方、有効な薬物治療が少な
い理由としては、血液脳関門の存在がある。薬剤が血液脳関門を通過するかは、その 薬剤が脂溶性か水溶性であるか、また分子量の大きさなどにより規定される。脂溶性 でかつ分子量が小さい薬剤は血液脳関門を通過しやすい。それゆえ、水溶性で分子量 の大きい一般的に使用されている抗癌剤は、血液脳関門を通過しづらく効果が期待で きない。根治的摘出術には限界があることを考慮すると、glioblastoma の治療成績の
5
向上には術後補助療法のさらなる改善が必要と思われる。
Glioblastoma の術後補助療法としては、2005 年に Stupp らが初発の glioblastoma を 対 象 に 、 放 射 線 治 療 単 独 群 と 放 射 線 治 療 に 第 二 世 代 の ア ル キ ル 化 剤 で あ る
temozolomide(TMZ)を併用した群との第Ⅲ相無作為比較試験を報告した。その結果
は、放射線治療にTMZを併用した群の生存期間中央値は14.6ヶ月であり、放射線単 独治療群の12.1ヶ月と比較して、有意な生存期間の延長が示された3。2009年には同 試験の追跡調査の結果、5年生存率が放射線治療にTMZを併用した群は9.8%であり、
放射線単独治療群の 1.9%と比較して有意に良好な結果であったことが報告されてい
る4。以来、glioblastomaでは、摘出術に加えてTMZ併用放射線療法が世界的な標準
治療となっている。
Ribavirin(1-β-D-ribofuranosy-1,2,4-triazole-3-carboxamide)は、核酸アナログであ り、RNAおよびDNAウィルス感染症に対する抗ウィルス薬として、1972年にSidwell らが初めて報告した 5。Ribavirin はこれまでに RS ウィルスやラッサ熱ウィルスなど の治療に使用され、現在、Interferon-alpha2aとの併用投与により、慢性C型肝炎に対 する標準治療薬となっている 6。この Ribavirin が乳癌や急性骨髄性白血病において inosine-5’-monophosphate dehydrogenase(IMPDH)やthe eukaryoteic translateon initiateon
factor 4E(eIF4E)を阻害し、抗腫瘍効果を示すという報告が散見されている 7-9。ま
た最近、当教室はRibaivirnが7種類の悪性神経膠腫細胞株(A-172、AM-38、T98G、 U-87MG、U-138MG、U-251MG、YH-13)に対して濃度依存的に抗腫瘍効果を示すこ とを報告し(Fig. 1)10、今後さらなる検討が必要であると思われる。
TMZの作用機序としては、DNA のグアニンのO6位にメチル基を付加し、O6-メ チル化グアニンを形成することにより、メチル化グアニンはDNA 複製時にシトシン
6
ではなくチミンと塩基対を形成し、DNA障害が引き起こされると考えられている11。 一方、遺伝子を修復する酵素であるO6-methylguanine-DNA methyltransferase(MGMT) は、TMZにより付加されたメチル基を除去し、TMZの効果を減弱する11,12。MGMT が発現しているglioblastomaはTMZに耐性を示し、その割合は45 ~ 75%であるとの 報告もある12-15。現在、TMZ耐性のglioblastomaに対する治療が大きな課題となって いる。
そこで注目されたのがInterferons(IFNs)である。IFNsは抗ウィルス効果、抗腫 瘍効果、免疫調節の活性化など様々な機能を持ったサイトカイン関連ファミリーであ る。Interferon-beta (IFN-β) はtype I IFNsに分類され、抗ウィルス作用をもつサイトカ インとして発見され、その後、免疫賦活作用、血管新生抑制作用、増殖抑制やアポト ーシスの誘導による抗腫瘍作用など様々な生物学的活性が示されてきた 16,17。近年、
glioblastoma の治療において、IFN-βを TMZ と併用することにより、抗腫瘍効果が増
強するという報告がなされている。その機序としては IFN-βが p53 を介して MGMT の発現を減弱させると考えられている18。本邦において、TMZとIFN-βの併用療法に よる臨床効果を評価する多施設共同第 I 相試験である a multicenter phase I trial of interferon-beta and temozolomide combination therapy for high-grade gliomas (INTEGRA
Study)が行われた。同試験では、生存期間の中央値が 17.1 ヶ月、1年の無増悪率は
50%と良好であり、現在第II相無作為比較試験が進行中である19。
IFN-βが作用するTP53は癌抑制遺伝子であり、ゲノムのインテグリティを保つ役
割を持ち、「ゲノムの守護神」と呼ばれている。p53はDNA損傷などの様々なストレ スシグナルにより活性化される転写活性因子であり、下流の標的遺伝子を活性化する
20。活性化されたp53は、p21を活性化し、G0/G1期のcell cycle arrestを誘導する(Fig.
7
2)21。また、p53が活性化された細胞はアポトーシスへ誘導される。アポトーシスに はミトコンドリアを介した内因性アポトーシスと death receptor を介した外因性ア ポトーシスとがあり22、p53は両方のアポトーシスを誘導することが報告されている
23。内因性アポトーシスの機序は、活性化されたp53がプロアポトーシス遺伝子であ
るBCL-2-associated X(Bax)を活性化し、ミトコンドリア外膜の透過性を上昇させ、
チトクロームcが放出される。放出されたチトクロームcはapoptotic protease activating factor 1(ARAF1)と結合する。ARAF1はcaspase-9を活性化し、アポトーシスの遂行 蛋白であるcaspase-3、caspase-7を活性化することで、アポトーシスを誘導する(Fig.
2)23-25。一方、外因性アポトーシスの機序は、p53が death receptor の一つである
Fasの発現を誘導し、FasにFas-associated death domain protein(FADD)が結合し、さ らにcaspase-8が結合し活性化される。活性化されたcaspase-8はcaspase-3、caspase-7 を活性化し、アポトーシスを誘導する(Fig. 2)23,26,27。
p53を活性化させる要因の一つにDNA double-strand breaks(DSBs)がある20。DSBs は細胞に起こる多くのDNA損傷の中で、最も危険なものとされている。DSBsにより 損傷されたDNAのヒストンH2Aバリアント(H2AX)は、リン酸化(γH2AX)され てDNA損傷部位に集積する28。また、Ataxia telangiectasia mutated(ATM)はPI-3キ ナーゼ蛋白ファミリーの1つであり、DNA損傷部位に起きたγH2AXをいち早く認識 し、自己リン酸化が誘導される29,30。リン酸化されたATMはp53を活性化させ、p53
pathwayの下流シグナルを活性化すると考えられている31。
そこで、本研究ではTP53 genetic statusとMGMTの発現が異なる2種類の悪性神 経膠腫細胞株(U-87MG、U-138MG)を用いて、Ribavirinによるアポトーシスの誘導、
cell cycleへの影響、p53 pathwayの活性化、及びDNAへの影響を検討した。さらに、
8
INTEGRA Study で注目されているTMZとIFN-βにRibavirinを併用することで、抗腫 瘍効果の相乗効果が得られるかを検討した。
9 材
材料料とと方方法法
・
・悪悪性性神神経経膠膠腫腫細細胞胞株株
7種類のヒト悪性神経膠腫細胞株、U-87MG、U-138MG(the American Type Culture Collection, Manassas, VA, USA)、A-172、AM-38、T98G、U-251MG、YH-13(Health Science Research Resources Bank, Sennan, Osaka, Japan)を使用した。
・
・薬薬剤剤
Ribavirin(SIGMA, Saint Louis, MO, USA)、TMZ(LKT Laboratories, St Paul, MN, USA)、IFN-β(Toray, Tokyo, Japan)を使用した。
・
・細細胞胞のの培培養養方方法法
細 胞 株 は Dulbecco's modified Eagle's medium(DMEM; Nissui Pharmaceutical, Tokyo, Japan)に10%仔牛血清(FCS, Life technologies, Grand Island, NY, USA)を添加 した血清培地を用いて、75cm2フラスコ(Iwaki, Chiba, Japan)を使用し、37oC、5%CO2、 95%以上の湿度に調整された恒温器内に入れ培養を行った。
・
・実実験験方方法法
I. Ribavirin単単剤剤にによよるる悪悪性性神神経経膠膠腫腫細細胞胞株株にに対対すするる抗抗腫腫瘍瘍効効果果のの検検討討 II-1. p53おおよよびび MGMTののタタンンパパクク発発現現解解析析
Ribavirin による抗腫瘍効果と p53、MGMT との関係を検討するために、p53 の genetic status 、p53、MGMT のタンパク発現が異なる 2 種類の悪性神経膠腫細胞株
10
U-87MG、U-138MGを使用した。p53のgenetic statusはU-87MGがwild type、U-138MG が mutant と言われている 32,33。また、p53 のタンパク発現は U-87MG が低発現、
U-138MGが高発現と言われている34。そして、MGMTはU-87MGでは発現しており、
U-138MG では発現していないと言われている 35。まず、実験に用いる 2 種類の悪性
神経膠腫細胞株U-87MG、U-138MGについて、ウエスタンブロット法にてp53、MGMT のタンパク発現を解析した。
75cm2フラスコ(Iwaki)に細胞を撒き、80%増殖飽和まで培養後trypsin-EDTA solution を用いて細胞を採取した。RIPA buffer(Wako)10 mlにプロテアーゼ阻害剤cOmplete Mini, EDTA-free(Roche Diagnostics)1錠を添加した溶液で蛋白質を抽出後、15,000 rpm、 30分間遠心し、上清を採取した。蛋白質濃度をPierce BCA protein assay reagent(Thermo, Rockford, IL, USA)を用いて測定した。蛋白量を50 µgに調整し、sodium dodecyl sulphate polyacrylamide gel electrophoresis(SDS-PAGE)を行った。ゲルは12% SDS-PAGE mini と4%SDS-PAGE mini(TEFCO, Tokyo, Japan)を使用した。ニトロセルロース膜(GE Healthcaare, Tokyo, Japan)に転写し、1%スキムミルク含有PBSを用いて1時間、室 温でブロッキングを行った。セルロース膜を一次抗体 p53(sc-126)(Santa Cruz Biotechnology, Inc, Dalls, TX, USA)、MGMT antibody(MT3.1)(Thermo)、β-actin
(013-24553)(Wako)を一晩、4oCで処理した。処理後、セルロース膜をTween含有 PBS(PBS-T)を用いて室温で3回(15分、5分、5分)洗浄し、二次抗体Anti-Mouse IgG(Whole Molecule)Peroxidase Conjugade(SIGMA)を1時間、室温で処理した。
転写した蛋白をECL detection system(GE Healthcare)とLas4000(GE Healthcare)を 使用し検出した後、Image J(National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA)を用い て解析した。なお、同様の実験を3回繰り返し行い、再現性を確認した。
11
II-2. U-87MG、、U-138MGににおおけけるる細細胞胞増増殖殖抑抑制制効効果果
2種類の悪性神経膠腫細胞株(U-87MG、U-138MG)を用いて、Ribavirin(10 µM) 投与 96 時間後の細胞数を測定し、細胞増殖抑制効果を検討した。Ribavirin の投与量 は慢性C型肝炎の治療におけるRibavirinの血中濃度と、髄液への移行性を考慮し10 µM とした36。
24 穴プレート(Iwaki)に 1×104個の細胞を撒き、24 時間培養後、薬剤を含む新 鮮培地に交換した。処理後、0.25% trypsin-1mM EDTA-4Na solution(Invitorogen, San Diego, CA, USA)を使用し、細胞を採取した。採取した細胞数をCoulter Counter(Coulter Counter Z1, Beckman Coulter, Fullerton, CA, USA)を用いて測定した。なお、同様の実 験を6回繰り返し測定した。
I-3. アアポポトトーーシシススのの誘誘導導
ア ポ ト ー シ ス の 検 出 と し て 、 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 の 細 胞 膜 に 現 れ る phosphatidylserineに結合するAnnexin Vと細胞内に取り込まれDNAと結合するPIを flow cytometryにて解析する方法が提唱されている37。そこで、Ribavirinによるアポ トーシスの誘導をflow cytometryにて解析した。
6穴プレート(Iwaki)に1×106個の細胞を撒き、24時間培養後、薬剤の投与を行 った。72時間後にPBSで洗浄し、trypsin-EDTA solutionを用いて細胞を採取した。遠 心を行い、PBSで洗浄後、Binding buffer(Wako, Osaka, Japan)100 µlで撹拌し、その 中にAnnexinV, Alexa Fluor® 488(Life technologies, Grand Island, NY, USA)5 µlおよび Propidium Iodide Solution(PI)(Miltenyi Biotech, Auburn, CA, USA)10 µlを添加し、10
12
分間、室温で処理した。Binding buffer 400 µlを添加して、サンプルの全量を500 µl とした。蛍光強度を fluorescence-activated cell sorter(FACS)-Calibur flow cytometer
(Becton Dickson, Franklin Lakes, NJ, USA)を用いて測定した。DNAの分布は、Flowjo software(BioLegend, San Diego, CA, USA)を用いて解析した。FACSによる測定はそ れぞれ3回繰り返し行い、再現性を確認した。
II-4. Cell cycleのの解解析析
Ribavirinによるcell cycleへの影響をflow cytometryにて解析した。
6穴プレートに各々1×105個の細胞を撒き、24時間培養後、薬剤の投与を行った。
投与8、48時間後にPBSで洗浄し、trypsin-EDTA solutionを用いて、細胞を採取した。
PBSで洗浄後、70%エタノールで1時間、4oCで固定した。PBSで洗浄後、RNAse(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN, USA)500 µgを1時間、4oCで処理した。PI12 µlを30分 間、4oCで処理し、PBSで洗浄後、蛍光強度をFACS-Calibur flow cytometerを用いて 測定した。DNAの分布は、Flowjo software(BioLegend)を用いて解析した。FACSに よる測定はそれぞれ3回繰り返し行い、再現性を確認した。
II-5. p53、、phosphorylated p53ののタタンンパパクク発発現現解解析析
Ribavirin(10 µM)投与、0、4、8、24、48時間後のp53、phosphorylated p53の変 化をウエスタンブロット法にて解析した。
ウエスタンブロット法では、80%増殖飽和まで培養後FBS含有DMEMに加えた 薬剤を投与した。一次抗体として p53(sc-126)、p-p53(sc-101762)(Santa Cruz Biotechnology, Inc)を用いた。
13
I-6. p53 pathwayののタタンンパパクク発発現現解解析析
Ribavirin(10 µM)投与0、4、8、24、48時間後における、p53 pathwayにおける 重要な因子であるp21、Bax、Fas、caspase-8、caspase-9、caspase-3 のタンパク発現を ウエスタンブロット法にて解析した。
ウエスタンブロット法では、一次抗体としてp21(sc-6246)、Bax(sc-20067)、Fas
(sc-8009)、caspase-3(sc-7272)(Santa Cruz Biotechnology, Inc)、Caspase-8(1C12) Mouse mAb、Caspase-9(C9)Mouse mAb(Cell Signaling Technology, Tokyo, Japan)、β-actin
(013-24553)(Wako)を用いた。
I-7. 蛍蛍光光顕顕微微鏡鏡にによよるるγγH2AXのの観観察察
RibavirinによるDNAの損傷を確認するために、投与4時間後におけるγH2AXの
発現を蛍光免疫抗体法にて確認した。
Collagen coated glass bottom dish(MATSUNAMI GLASS IND., LTD., Osaka, Japan) に2×105個の細胞を撒き、24時間培養後、薬剤と FBSを添加したDMEMで 4時間、
37oCで処理した。PBSで洗浄後、細胞を95%エタノールと5%酢酸を用いて10分間、
室温で固定し、さらに1%ホルムアルデヒドと 0.25%トライトン X100 含有のPBS を 用いて5 分間、室温で固定した。固定後、細胞を5%FBS含有の PBSを用いて30 分 間、室温でブロッキングを行い、anti-phospho-Histone H2A.X(Ser139)clone JBW301, FITC conjugate(Merck Millipore, Billerica, MA, USA)を使用し1時間、室温にて染色 した。PBSで洗浄後、蛍光顕微鏡(Olympus IV70, Olympus, Tokyo, Japan)で観察を行 った。
14
I-8. ATM、、phosphorylated ATMののタタンンパパクク発発現現解解析析
ATMはDNA 損傷の一つであるDSBsを感知し、p53 を活性化させる。そこで、
Ribavirin(10 µM)投与、0、4、8、24、48時間後のATM、phosphorylated ATMの変 化をウエスタンブロット法にて解析した。
ウエスタンブロット法では、一次抗体としてATM(sc-23921)、p-ATM(sc-47739)
(Santa Cruz Biotechnology, Inc)を用いた。
II. Ribavirin・・TMZ・・IFN-ββのの33剤剤併併用用にによよるる悪悪性性神神経経膠膠腫腫細細胞胞株株にに対対すするる抗抗腫腫 瘍
瘍効効果果のの検検討討
IIII-1. Ribavirinとと Ribavirin + TMZ + IFN-ββ投投与与にによよるる細細胞胞増増殖殖抑抑制制効効果果のの比比較較検検 討
討
RibavirinにTMZとIFN-βを併用することで、Ribavirin単剤と比較して、細胞増殖 抑制効果が増強するかを7種類の悪性神経膠腫細胞株(A-172、AM-38、T98G、U-87MG、 U-138MG、U-251MG、YH-13)を用いて検討した。Ribavirin単剤投与群とRibavirin + TMZ + IFN-β の3剤投与群に分け、前者はRibavirin(0、0.1、1、10、100 µM)を、
後者はRibavirin(0、0.1、1、10、100 µM) + TMZ(10 µM) + IFN-β(10 IU/ml)を 投与した。TMZとIFN-βはそれぞれの血液脳関門の移行性を鑑みて以前我々が行った 研究で使用した濃度を用いた35,38。投与72~96時間後に細胞数を測定し、薬剤を投与 されていない細胞株の細胞数との割合を算出し、細胞増殖抑制効果を比較した。
15
II-2. TMZ単単剤剤投投与与群群、、TMZ + IFN-ββ 2剤剤併併用用投投与与群群おおよよびび、、TMZ + IFN- ββ + Ribavirin 3剤剤併併用用投投与与群群のの細細胞胞増増殖殖抑抑制制効効果果のの比比較較検検討討
TMZ + IFN-β + Ribavirinの3剤投与はTMZ単剤またはTMZ + IFN-βの2剤投与 と比較して、細胞増殖抑制効果が増強されるかを検討した。7種類の悪性神経膠腫細 胞株(A-172、AM-38、T98G、U-87MG、U-138MG、U-251MG、YH-13)を用いて、
TMZ(10 µM)、TMZ(10 µM)+ IFN-β(10 IU/ml)、TMZ(10 µM) + IFN-β(10 IU/ml) + Ribavirin(10 µM)の3群に分け各薬剤を投与した。TMZとIFN-βの投与濃度は前 述の検討と同様にそれぞれ10 µM、10 IU/mlとした。Ribavirinの投与濃度は前述の検 討で5種類の細胞株で有意な細胞増殖抑制効果を認めた10 µMとした。細胞数の測定 は薬剤投与72時後に行った。
IIII--3. TMZ + IFN-ββ + Ribavirin 3剤剤併併用用にによよるる CIのの算算出出
TMZ + IFN-β + Ribavirinの3剤併用による細胞増殖抑制効果が相乗効果であるか を評価した。薬剤の併用療法を行った場合、その効果が相乗であるか、相加であるか、
または拮抗しているかを評価する方法として、Combination Index(CI)を算出するChou Talalay methodが提唱されている39。一般的にn個の薬剤併用によるx%の増殖抑制で のCIの算出方法は以下のように表される。
n(CI)x= !!!!(𝐷𝐷)𝑗𝑗/(𝐷𝐷𝑥𝑥)𝑗𝑗
n(CI)x : n個の薬剤を併用し、x%増殖抑制したときのCI
Dx : x%増殖抑制したときの薬剤濃度
16 D : 併用時に使用した薬剤の濃度
CIの評価はCI < 1の場合は相乗効果、CI = 1の場合は相加効果、CI > 1の場合は 拮抗効果と判定される。本研究では、50%の増殖抑制が得られたときの CI を算出し た。
今回の検討では、50%細胞増殖抑制時のCIを算出するため、TMZ、IFN-β、Ribavirin のそれぞれで IC50値が得られている 2 種類の悪性神経膠腫細胞株(A-172、U-251MG) を使用した。CI算出に必要なA-172、U-251MGの TMZ とIFN-βのIC50値は以前我々 が算出した値を用い、A-172ではTMZ: 52.4 µM、IFN-β: 57.5 IU/ml、U-251MGでは TMZ: 22.5 µM、IFN-β: 26.4 IU/mlとした。 A-172、U-251MG のRibavirinのIC50値は 前述した値を用い、A-172では53.6 µM、U-251MGでは257.7 µMとした。
・
・統統計計処処理理
同一実験を6回以上行っているものは、平均値を算出して表記した。2群間の比 較は t 検定を行った。3 群間以上の比較は一元配置分散解析を行い、要因に有意差が あった場合、その後の検定としてTukey検定を行った。データの解析には、統計ソフ トIBM SPSS Statistics version 21.0(International Business Machines Corporation, Armonk, NY, USA)を使用した。
17 結 結果果
I. Ribavirin単単剤剤にによよるる悪悪性性神神経経膠膠腫腫細細胞胞株株にに対対すするる抗抗腫腫瘍瘍効効果果のの検検討討 II-1. p53おおよよびび MGMTののタタンンパパクク発発現現解解析析
施行したウエスタンブロット法では、p53のタンパクはU-87MGでは発現がなく、
U-138MGでは発現を認めた。また、MGMTはU-138MGのみで発現していた(Fig. 3)。 これら結果はいままでの報告と一致するものであった34,35。
II-2. U-87MG、、U-138MGににおおけけるる細細胞胞増増殖殖抑抑制制効効果果
Ribavirin(10 µM)はU-87 MG、U-138MGに対して有意に細胞増殖抑制効果を認 めた(t検定. p < 0.05)(Fig. 4)。
I-3. アアポポトトーーシシススのの誘誘導導
U-87MG、U-138MGの両細胞において、Ribavirin(10 µM)投与72時間後におい て、Annexin VとPI ともに検出される割合が増加する傾向を示した(Fig. 5)。
II-4. Cell cycleのの解解析析
Ribavirin(10 µM)投与 8、48 時間後に、U-87MG、U-138MG ともに cell cycle のG0/G1期の割合が増加する傾向を示した(Fig. 6)。
II-5. p53、、phosphorylated p53ののタタンンパパクク発発現現解解析析
U-87MGではRibavirin(10 µM)を投与4時間後でp53のタンパク発現が増強し、
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phosphorylated p53のタンパク発現も同様に増強した。一方、U-138MGでは、Ribavirin
(10 µM)を投与しても、p53のタンパク発現は増強しなかったが、phosphorylated p53
のタンパク発現は投与4時間後で増強を認めた(Fig. 7)。
I-6. p53 pathwayののタタンンパパクク発発現現解解析析
Ribavirin(10 µM)投与0、4、8、24、48時間後における、p53 pathwayにおける 重要な因子であるp21、Bax、Fas、caspase-8、caspase-9、caspase-3 のタンパク発現を ウエスタンブロット法にて解析した。
U-87MG、U-138MG ともに、Ribavirin 投与 4 時間後において p21、Bax、Fas、 Caspase-8、caspase-9、Caspase-3のタンパク発現の増強を認めた(Fig. 8)。
I-7. 蛍蛍光光顕顕微微鏡鏡にによよるるγγH2AXのの観観察察
Ribavirin(10 µM)を投与すると、U-87MG、U-138MGともに細胞の核内にγH2AX の集積が蛍光顕微鏡にて確認された(Fig. 9)。
I-8. ATM、、phosphorylated ATMののタタンンパパクク発発現現解解析析
U-87MG、U-138MG ともに、ATM は Ribavirin 投与後 4 時間で発現が増強し、
phosphorylated ATMはタンパク発現が増強し続けた(Fig. 10)。
Ⅱ
Ⅱ. Ribavirin・・TMZ・・IFN-ββのの33剤剤併併用用にによよるる悪悪性性神神経経膠膠腫腫細細胞胞株株にに対対すするる抗抗腫腫 瘍
瘍効効果果のの検検討討
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IIII-1. Ribavirinとと Ribavirin + TMZ + IFN-ββ投投与与にによよるる細細胞胞増増殖殖抑抑制制効効果果のの比比較較検検 討
討
YH-13を除く、6種類の悪性神経膠腫細胞株においてRibavirin単剤投与群と比較
して、Ribavirin + TMZ + IFN-βの3剤投与群の細胞増殖抑制効果が増強した。A-172、 U-138MG、U-251MG の 3 種類において、Ribavirin 濃度が 1 µM 以上の投与時に、
Ribavirin単剤投与群と比較して、Ribavirin + TMZ + IFN-βの3剤投与群で有意に細胞 増殖抑制効果が増強した(t検定. p < 0.05)。またT98G、U-87MGの2種類では、Ribavirin 濃度が1 µM、10 µM投与時に、Ribavirin単剤投与群と比較して、Ribavirin + TMZ + IFN-βの3剤投与群で有意に細胞増殖抑制効果が増強した(t検定. p < 0.05)。AM38
では Ribavirin 濃度が 0.1 µM、1 µM 投与時に、Ribavirin 単剤投与群と比較して、
Ribavirin + TMZ + IFN-βの3剤投与群で有意に細胞増殖抑制効果が増強した(t検定. p
< 0.05)。A-172、T98G、U-87MG、U-138MG、U-251MGの5種類ではRibavirin濃度 が10 µM投与時に有意に細胞増殖抑制効果が増強した(t検定. p < 0.05)(Fig. 11)。
II-2. TMZ単単剤剤投投与与群群、、TMZ + IFN-ββ 2剤剤併併用用投投与与群群おおよよびび、、TMZ + IFN- ββ + Ribavirin 3剤剤併併用用投投与与群群のの細細胞胞増増殖殖抑抑制制効効果果のの比比較較検検討討
T98G、U-87MG、U-138MG、YH-13の4種類の細胞株において、TMZ + IFN-β + Ribavirinの3剤併用投与群では、TMZ単剤投与群、TMZ + IFN-βの2剤併用投与群と 比較して有意に細胞増殖抑制効果が増強した(Tukey検定. p < 0.05)。また、A-172、 AM-38、U-251MGの3種類において、TMZ + IFN-β + Ribavirinの3剤併用投与群では TMZ単剤投与群と比較して有意に細胞増殖抑制効果が増強し(Tukey検定. p < 0.05)、
TMZ + IFN-βの2剤併用投与群との比較においても、細胞増殖抑制効果が増強する傾
20 向がみられた(Fig. 12)。
IIII--3. TMZ + IFN-ββ + Ribavirin 3剤剤併併用用にによよるる CIのの算算出出
TMZ + IFN-β + Ribavirinの3剤併用時のCIはA-172においては0.68(CI < 1.00)、 U-251MGにおいては0.98(CI < 1.00)であった(Fig. 13)。
21 考 考察察
Ribavirinは、乳癌おけるIMPDH阻害作用や急性骨髄性白血病におけるeIF4E阻
害作用などによる抗腫瘍効果が報告されている7-9。既に報告した様に、Ribavirinによ る7種類の悪性神経膠腫細胞株に対する抗腫瘍効果の検討では、濃度依存的に細胞増 殖抑制効果を認めた10。実臨床における、脳腫瘍患者に対する化学療法を考える上で、
最も重要なひとつに血液脳関門を通過するか否かがある。Ribavirinは慢性C型肝炎の 治療薬としての内服量である800 mg/日にて、血中濃度が13 μMとなり、分子量が
244.2と小さく、髄液移行性が70%であると報告されている36。細胞増殖抑制試験に
おいて Ribavirin 濃度が 10μM の時に十分な細胞増殖抑制効果を認めており、
Ribavirinはglioblastomaの新たな治療薬と成り得る可能性がある。しかし、Ribavirin による悪性神経膠腫細胞株に対する抗腫瘍効果の作用機序は明らかにされていない。
そこで、本研究では、Ribavirinによる悪性神経膠腫細胞株に対する抗腫瘍効果の作用 機序及び、INTEGRA studyで注目されているTMZとIFN-βにRibavirinを併用投与す る効果について検討した。
・
・アアポポトトーーシシスス、、cell cycleへへのの影影響響
Flow cytometry による解析では、2種類の細胞株で、Ribavirin 投与により共に
Annexin V、PIの両方の検出される割合が増加した。Annexin V、PIが共に検出される 割合が増加した場合、後期アポトーシスが誘導されていることを示すと言われている
37。つまり、悪性神経膠腫細胞株へRibavirinを投与することで、アポトーシスが誘導 されると考えられた。さらに、cell cycleの解析ではRibavirin投与後48時間でG0/G1
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期の割合が増加し、cell cycle arrestが誘導されることが示唆された。これらの結果か らRibavirinはアポトーシスとcell cycle arrestを誘導することで悪性神経膠腫細胞株に 対する抗腫瘍効果を発揮すると考えられた。
・
・RRiibbaavviirriinn のの pp5533 ppaatthhwwaayy へへのの影影響響
次に、Ribavirinの投与がp53 pathwayに及ぼす影響に対してウエスタンブロット
法を用いて検討した。Ribavirinを投与することにより、p53がリン酸化され、p53 の 下流signal であるp21、caspase-3が活性化された。p21はp53により活性化され、サ イクリンを抑制することで、cell cycleをG0/G1期で静止することが知られている40。 上述のG0/G1期へのcell cycle arrestは、Ribavirinがp53 pathwayを活性化し、p21を 活性化することで誘導されると考えられた。一方、アポトーシスの誘導には、カスパ ーゼカスケードと呼ばれるシグナル伝達経路が形成されている。カスパーゼは、アポ トーシスの比較的初期に関わるイニシエーター・カスパーゼと、実行そのものに関わ るエフェクター・カスパーゼに2つに大別される22。また、アポトーシスは細胞膜の 受容体からの(death receptorを介した)外因性アポトーシスと、ミトコンドリアを介 した内因性アポトーシスの2つの系により大別される22。Ribavirin投与により、エフ ェクター・カスパーゼである caspase-3 が活性化されており、上述の flow cytometry による解析と合わせ、アポトーシスが誘導されることは間違いないと考えられた。さ らに、ウエスタンブロット法によるタンパク発現の解析ではRibavirinの投与により、
death receptorの一つであるFas の発現が増強し、caspase-8 の発現の増強も認め、
外因性アポトーシスの誘導が確認された。また、内因性アポトーシスを誘導する、Bax
ならびにcaspase-9の増強も認めた。これらのことから、Ribavirinはp53 pathway
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を活性化し、外因性アポトーシスと内因性アポトーシスの両方を活性化することで、
悪性神経膠腫細胞株に対してアポトーシスを誘導すると考えられた。
・
・Ribavirinのの DNAへへのの作作用用
さらに、Ribavirin が p53 の活性化を誘導する機序を検討した。DNA に様々な要
因でDSBsが起こるとH2AXがリン酸化されて損傷部位に集積することが知られてい る 28。そこで蛍光顕微鏡にて H2AX のリン酸化であるγH2AX を観察したところ、核 内でドット状に集積していることが観察され、Ribavirinの悪性神経膠腫細胞株に対す る抗腫瘍効果の作用機序のひとつはDSBsであると考えられた。DSBsはATMにより 感知され、ATMの自己リン酸化を誘導し、p53を活性化すると言われている31。ウエ スタンブロット法によるタンパク発現の解析にて悪性神経膠腫細胞株に Ribavirin を 投与することで、ATM及びphosphorylated ATMの増強を認めた。Ribavirin投与によ りDSBsが誘導され、ATMがDSBsを感知し、p53を活性化すると考えられた。
・
・Ribavirinとと p53ににつついいてて
以上のことをまとめると、悪性神経膠腫細胞株に対する Ribavirin の抗腫瘍効果 の作用機序のひとつとして、DSBsを誘導しATM、p53 pathwayを介して、cell cycle
arrest及びアポトーシスを起こすこと考えられた。この作用機序において、p53の活性
化がRibavirinの作用の重要な点と思われる。そこで、TP53 mutationの有無とRibavirin の効果について検討してみると、TP53 wild typeであるU-87MGに比べて、TP53 mutant
である U-138MGでは効果が弱いように思われた。しかし、U-138MG では control と
比較して有意に細胞増殖抑制効果を認めており、ウエスタンブロット法の解析におい
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てもRibavirinの投与により、phosphorylated p53の発現が増強されていた。このこと から、RibavirinはTP53 mutationの有無にかかわらず、抗腫瘍効果を認めると考えら れた。但し、TP53 mutationの有無により、p53のタンパク活性を示すreportor activity はU-87MGで36%、U-138MGで9%と報告されており34、Ribavirinの効果はreportor activityに依存する可能性がある。また、p21はp53 pathwayに依存しない系にて活性 化されるという報告もある41。TP53 mutantであるU-138MGでも、ウエスタンブロッ ト法の解析にてp21が活性化されていることから、Ribavirinはp53 pathway非依存的 にp21を活性化している可能性があり、今後の検討が必要と思われる。
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・Ribavirinとと MGMTににつついいてて
Glioblastomaの標準治療薬であるTMZはMGMTが発現していると効果が減弱す
るとされている12。本研究では、RibavirnはMGMTが発現しているU-138MGにおい て有意に細胞増殖抑制効果を認めており、TMZ耐性のglioblastomaに対しても、抗腫 瘍効果を発揮することが期待できる可能性がある。
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・Ribavirinとと TMZ及及びび IFN-ββととのの併併用用ににつついいてて
Ribavirin の TMZ と IFN-βとの併用投与により、悪性神経膠腫細胞株に対して、
細胞増殖抑制効果の増強が得られた。また、TMZ + IFN-β + Ribavirinの3剤併用投与
はTMZ単剤、TMZ + IFN-βの2剤併用投与と比較して、有意な細胞増殖抑制効果を認
めた。また、Chou Talalay methodによるCIの算出により、TMZ + IFN-β + Ribavirin の3剤併用による細胞増殖抑制効果は相乗効果であった。
3剤併用の相乗効果の作用機序について考えてみると、TMZ とIFN-βとの相互作