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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:菱沼 光恵

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名: P. gingivalis fimA II型の気管上皮細胞への感染に対するBestatinの有用性

要介護高齢者や重症心身障害児者における死亡原因の第1位は呼吸器疾患であり,歯周病に代表される 口腔疾患も深く関与することが知られている。歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis (P. g.) は線毛の 遺伝子 (fimA) で分類した場合,重症歯周病患者に多く検出されるのはII (P. g. fimA II) であるとされ ている。糖非分解性である P. g.がエネルギー産生のために分泌するプロテアーゼの中で,特に Aminoacyl-histidine dipeptidase (PepD) は,P. g. fimA II型に多く発現するとの報告がある。従って,歯周病病 原細菌が原因となる呼吸器疾患の発症や進行を抑えるためには,PepDの活性を阻害することでP. g. fimA II 型の増殖や炎症応答の抑制が鍵となると思われる。また,既に臨床応用されており,抗がん作用や抗炎症 作用を有するアミノペプチダーゼ阻害剤の一種であるBestatinは,P. g.の増殖を特異的に抑制することが報 告されていることから,呼吸器疾患の発症や進行抑制に対して有力な候補となると考えられる。従って,

本研究では気管上皮細胞であるBEAS-2B細胞に対するPepDの影響ならびにPepDに対するBestatinの有用 性について検討した。その結果,PepDP. g.の代表的な病原因子であるLPSよりもBEAS-2B細胞のIL-8 産生量を増大させ,Bestatinによって著しく活性阻害をうけることが判明した。慢性炎症は細菌の宿主細胞 や組織への繰り返しの侵入によって生じる。本研究にてP. g. fimA II型は時間経過とともに侵入菌数は減少 するもののBEAS-2B細胞内への侵入は可能であることが示され,慢性炎症に関与する可能性が十分にある と考えられた。次にBEAS-2B細胞に侵入したP. g. fimA II型へのBestatinの有用性について検討を加えたと ころ,細菌の生存には影響を及ぼさないが,P. g. fimA II型のBEAS-2B細胞内への感染,侵入によって惹起 される炎症応答を調整する可能性があると考えられた。P. g. fimA II型が侵入したBEAS-2B細胞では,IL-6 およびIL-8の遺伝子発現は増加するがIL-6シグナル伝達経路にあるSTAT3ならびにSOCS3は変化を認め られないことから,複雑なサイトカインネットワークが形成されていることが推察された。また Bestatin 添加によって,P. g. fimA II型侵入で増加したIL-8遺伝子発現が有意に減少したことから,IL-8の発現をコ ントロールすることが炎症制御の鍵となることが考えられた。Bestatinは菌体と宿主細胞表層に存在するア ミノペプチダーゼに働くことで,細菌と炎症応答の両方を制御するのに有用であると推測されることから,

臨床応用に向けて更なる検討を重ねる意義があると思われる。

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