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文法規則の組織化と学習 ― Embedded Subjectsへ の制約 ―

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

文法規則の組織化と学習 ― Embedded Subjectsへ の制約 ―

著者 高橋 孝二

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 14

ページ 1‑12

発行年 1978‑03‑25

その他のタイトル On Learnability of Grammatical Rules ― Formal Constraints onto Embedded Subjects ―

URL http://hdl.handle.net/10105/6396

(2)

文法規則の組織化と学習*

Embedded Subjectsへの制約

       } ヰ

高  橋  孝  二

  (英語学教室〕

 O.変形生成文法(TG)が自然言語に内在する構造上の独立した自律的体系を発見しようと努 めるとき,その試みは母国語・外国語の別を間わず,当該言語を人が習得して行く実際の過程に 合致した経験的に妥当な理論の構築となっていなければならない。この点をChomsky(1977)に 従って再確認するならば,文法理論が人の言語能力としての可能な文法の類(ClaSS)とその機能 を決定し,このようにして得られた普遍文法(UG)の体系と,経験によって適切に与えられる限界 条件(bo㎜dary conditi㎝s)の二つから,ある言語現象が純粋に説明されることになる。視点を 変えて言えば,本来的に学習者が人として持っているUGへの可能性が,限界条件Eを適切に与え

られて実現して行くとき,学習者が自ら選択し構築して行く文法にTGは合致することになる。TG はUGを志向し,またUGの体系内で妥当な経験によって検証され修正される。

 人の言語習得には,一度獲得した言語事実の根底にある文法上の規則性が次のレベルの言語構 造の学習にとって,ある特質を備えた潜在的な発達可能な資料(pOt㎝tiaI data)をその核心にお いて提供するという把え方は正しく,この場合,一文法規則の組織化に基づく規則学習の可能性を,

個々の具体言語の記述的側面(descriptive options)に求めるか,個々の言語を超えつつ統一す る普遍的metatheoryとしてのUGに求めるかによって,TG内の議論が厳しく対立して来ている。

 本稿は,「文法規則の学習」についての本格的考察の第一歩として,英語文法上の主要な構造上 の制約の一つである「文主語(S㎝t㎝tial Subj㏄t)への制約」を軸とし,学生の実際のデータの 分析と普遍的制約との間のギャップについて検討し,メタ・レベルと記述的オプションの接点の 諸相について明らかにしようとするものである。

 1.移動規則の判別(Diagmstics)

 修正拡大標準理論(トレース理論)での文法変形は次の二つに決定的に依存する。

    川 a.Wh一句の移動操作       b. Wh一句以外のNP移動操作

Cho㎜sky(1976)は英語文法の中核をなす変形規貝■」をこの二種にしぼり,これらの操作が一般的 制約に従いながらいくっかの特殊な下位の具体的統語規則に連動して現われるという方向を示し

‡   0n Learnabi1ity of Gram㎜atical Ru1es

      −Forma1ConstraiIlts onto Embedded Subjects

}  Koji Takahashi (Department of EIlglish,Nara University o{Ed凹。ation,Nara)

一1一

(3)

ている。この  Core gmmmar  に帰すことが可能となるような形式上の判別統語配置図が見 出されれば,T㎝gh Movem㎝t,Topi㎝lization,Clefti㎎等の推定上の規則がすべて(1〕の中核規 則に帰属するものであることが明らかとなり,TGにとって望ましい成果が得られることになる。

 Bres㎜n(1975)は,統語構造に対する変形規則の適用可能性を制限する一般的条件を発見し ようとする共通の目的の下で,しかしながら互いに相容れない一般化となってしまっている理論 の中から以下の統書吾論を検討し,いずれも移動規則の判別ないし診断法としての路線上にあるこ とをまず指摘する。次にこれらの条件(制約)がCom amtiveDeleti㎝(CD)という消去規則 にも対応していることを示す。

    12〕CDとCross−0ver条件(ポゥスタルの制約)

     a The students who1thought they−would f1…1k dldn t f1口nk Relatlvlzatlon       }

     b  The st凹dents who一出ey−t110ught   wol】ld fI㎜nk d−dn t Hu11k

(2b)は関係節化という移動規則が同一指示のNPを交叉することによってもたらされた非文である が,元来a㎜phomの一般形式(lexical n㎝n phmse−pr㎝o㎜の図式〕に同一指示の下で違反

している。この「交叉の禁止」はCDにも同じようにあてはまる。

     c・Mo「e竺Tltho凹ψtth州w州舳

 } ↓㎞e ア・…1d(f㎞k)

(この図式化でL__」は移動項目と移動先を示し,L__,は比較主要語(comparative head)

と消去領域(deleti㎝Site)を示すものとする。)

   13〕CDと変項制限(ロスの制約)

   (31) 幽 (CNPC)

    a. How hard did you1〕eIie可e t110t t11ese prob1ems wo㎜1d be ? Q口estion      

    b. H・wha・dhawy㎝・ol・edpmblemswhicha・e ?

複雑名詞句制限はCDにも同じようにあてはまる。

     c. Wilt is taner th㎜he belieΨes that he is_.

      ‡

     d.  Wilt is taller tha皿he believes the c1aim that he is

    (3.2.) Coordi11ate Str凹。凹re ConstraiIlt (CSC)

     a. How ollerous and hard do you consider tllese probIems ?       構

     b.  How hard do yo凹。onsider these probems onero凹s and ? 等位接続構造制限はCDにも同じようにあてはまる。

      ‡

     c, Wilt is taller than Bill is str㎝g㎜d

Q凹estio皿

一2一

(4)

    (3.3.) Sentential S㎜bject Constmint (SSC)

ロスのこの制約は以下により一般的特徴を持っメタ・レベルに総合されていくが,「文主語への制 約」の基本的問題をここに求めることが出来る。

      ‡

     o.  How hard is that they wi11 be like1y ?

この文に外置変形(extmpositi㎝)をかけてからQ移動を適用すると正しい英文が得られるので あるが,この現象は第2章で検討する。

     b. How hard is it like1y tllat they wiube ? 文主語制限もCDに同じような効果を持つ。

      ‡

     c  Wllt ls taller th㎜that he ls   ls ge皿em11y be11帥ed

     d. Wilt is ta11er than it is g㎝era11y believed that he is     (4〕 CDとチョムスキーの制約体系

 Chomsky(1975)に明示的に吟味されているように,Ross(1967)の「変項制限」はより強力 な一般制約体系の特殊な具現例であると考えられる。ブレズナンも指摘しているように,「変項制 限」は移動規則の適用を禁止する一定の条件であるのに対して,「COMPからCOMPへ」は強力な 取り出し規則も構造保持の原則の下でこれを許すというものであって,後に検討するように判別 成分構造図を軸とする一般制約体系に組み込まれることになるのであるが,ここではCDとの対 応についてのみ見る。

     a. Who d㏄s Mary believe John saw?

    {

     a: COM耳Mary bel−eves 〔亙COM巧』oh皿saw who〕 COMP−s㎜bstitution

 「文補語への制約」の解明には補文標識体系(㏄町1e㎜㎝ti2er SyStem)の持つ種々の特質が関 与して来るのであるから,次の基底での展開を採用しなければならない。

     b. 百→COMP S

 Subia㏄ncyの原理と,NPはCOMP−mdeを欠いていることから次例は非文法的となる。

      ‡

     c. .Who does Mary believe the c1^i㎜that』ohn saw ?

     c= COM弓Mary beli帥es 〔舳e clai㎜ 〔POM馬Joh掘saw who〕〕

      NP       5

このようなNPの介在(interv㎝ti㎝)による現象はCDにも同じように認められる。

     d I〜emetm0州「芒コ

e.  I,W memt mOre aCtreSSeS tha皿yOuVe heard〔ClaimS abOut piC加I・eS Of」.

      NP

 Bres㎜n(1975.1976a,b)は,変項を任意に超えて適用されるCDの下位規則であるところの

S凹bdeleti㎝規則がこれまで見て来たいずれの制限にも従わない性質を持つことから「比較節消去

規則」という変形操作の存在を主張し,チョムスキーの「下接の条件」を中軸とする有界文法体

      一3一

(5)

系に対立する。ここでも問題は文法の性格づけ(characterizati㎝)というメタ・レベルと,文 法が実際の言語使用の面でどのように実現されているか(realizati㎝)という記述レベルの対立 であることを見通していることが要請される。

 基底にある㎜eas凹re−phrase mod証ierが比較される成分から削除される実例として次が挙げら れている。

    15〕a They have m㎝y more㎝emes than we have   fn㎝ds 《NP比較》

     b She seems as血now as she see㎜ed  虹before 《AP比較》

     c, My sister drives田s care1essly as I drive_caref凹ny.《AdvP比較》

15〕の消去領域にはx−manyないしx−muchに相当する定量詞句(QP)が基底で存在していたと考 えるのであるが,このSubdeletl㎝も13〕,14〕の制約に従うことがまず示される。

      ‡

    16〕a, We ended叩buyi㎎as m㎜y ora㎎es as we had dis㎝ssed a plan to buy       apPles   (CNPC)

      ‡

     b. Wilt is taller than Bill is str㎝g㎜d_wide.  (CSC)

      ‡

     c  You have as many reasons for le^vmg hlm as tllat he has      for        leaving yo凹is like1y.  (SSC)

      

     d,  This policy has1〕ee11 as llarmful to o凹r intemsts as people believed tlle        clalm that lt wo㎜Id be   be皿eflclal (COMP−to−COMP)

 このようにSubdelet1㎝はCDと同じ移動変形に課せられた制約を共有するのであるが,フレス ナンは更に移動規貝1」とは性質を異にする特徴をこの部分消去規則が持っていることを指摘する。

    17〕a  Slle llas as many boyfrlends as slle has    books

      事

     b.  How many did she send_books to yo㎜ ?       ‡

     c  Many tho凹gh s止e has_books,she wants more 三曲倒置

(7a)では補文のNP←ma皿y books)からx㎜anyが部分消去されているが,(7b,c)ではこの 定量詞句のみを切り離して移動させることは出来ないという左方枝分かれ修飾構造にかかわる制 限を受けていることを示している。Xの式型による移動規則があれはこのLeft−bm皿。hの制約は 必然的に消滅することになるが,

     d  So man books does slle have   that her garage ls1〕emg

       conΨerted into a Iibrary.

チョムスキーの有界(b㎝皿ded)文法体系では説明できない文法例としてHasegawa(1977) は Bres皿㎝(1976b)と共に次を指摘する。

    {8〕a  S11e ls as fme a teacher as11e Is    a Iawyer       ■

     b.  She is as fine a teacher os a lawyer11e is.

    (9)a, TI1em was皿 t as hrge a n㎜㎜ber o{women as they reported t11at there        WaS     Of men

      ‡

     b.  There wasn t as1町ge a n凹㎜ber of women as of men they reported that

       −4一

(6)

       there WaS.

 このデータから,CDやS凹bdeleti㎝がチョムスキーのwh一旬移動規則に含まれるものする と,17〕の例から明らかなようにwト旬移動の特性として幽か義務的となるが,18い9〕

の例は主要部を元の位置に残した方が文法的であることを示していて,比較節(部分)消去が本 質的に移動を含まないということを明示するとされる。しかしこの場合表層構造レベルでのトレ ース(tra㏄)の配列に問題が帰せられるのであって,これについては筆者の独立した考察がある るのでこれ以上立ち入らないが,この種の「消去」規則を第二変形ルールとしては認めないで次 の総合判別方式を移動規則に課すという立場を支持して行く。 (Chomsky(1976.1977))

    llO〕a.任意の句(X)の移動によって残される成分が空(㎜ll㏄nt㎝t)の文法        カテゴリーは・移動される句がNPである時〔Npe〕と示され・指標(i皿dex)の        有無によって〔Npe〕はトレース(t)と代用形態素(PRO)に二分され二者は相        補分布(complem㎝t肌y distrib凹ti㎝)の関係にあり,更にNP一打a㏄の関係は        NP−PR0の関係と異なる。

 It lS 凹nClear What     tO d0

 ‡

 It ls口皿。lear what for Blll to do

     b.COMPからCOMPへの移動を許容する語い的に決定される「橋渡し述語(bridge)」

       が主文に存在する場合には,S州a㏄ncyの原則の下で次の一般制約に違反して文        が生成されることもあり得る。但し変形規貝1」が適用された後の表層レベルで適切        なトレースの配置図(㏄㎡igmati㎝S)かどうかをチェックする舳erSが働き,ま        た結節丁0P(後出)はbridgeにならない。

        ①p・・p・・iti㎝・1−i・1㎝dC・・diti㎝(PIC)

      =Tensed・S Condition (TSC)

        ②S岬ifi・dS・bie・tC㎝diti㎝・fCh・m・ky(SSCC)

        ③CNPC

        ④皿一i・1㎜dC㎝・tmi皿t(WIC)

 この判別基準110)に合致する成分配置図が一定の体系を持つ言語資料によって担われているとき,

この統語現象はwト句移動規則(Wh Movem㎝t)の適用によって得られたものであると判定する ことになる。移動されるWh一句は次の規則を受け,かっフィルターに従う。

    lma, wh一句をCOMP結節内部の〔±WH〕の左側の位置に移動させること。

      

     b・ 〔COMPwh−Phm・・㏄mp1・㎜㎝ti…〕

      事

     c. 〔  wトPhmseψ〕,¢≠e          COMP

       婁繰幾二㌦が空になること。1幾ζ㌘はいず

 かくして移動規則の判別の問題から変形規則への拡大された一般原則が新しい角度から総合さ れた形式を整えて提出されることになり,本稿での目標を根底に於て支えるメタ・原理が得られ ることになる。

一5一

(7)

    l12目.一つの構造を生成する時に複数個の規則(double ru1es)が適用されることを文        法は許すが,同一領域(dOmain)に1二つの変形操作がかかることはなく,下位頷        域(subdomain)を各々が担当する。

     b.川とllO〕による文法規貝1」の他に新しく複雑な構造を造り出すいかなる変形規則も存        存しない。基底に次の句構造規則を導入することにより,文の文法規則は川とll①        の性質に収敏する。 (仮えば独立したC1eft−fOrmati㎝規則もない。〕

         に二1算、・一・…/:/

1121のメタ原理から引き出される現実の構文は記述レベルの文法で「構文のリスト」としてまとめ られることになるが,文法規則の学習にはこのメタ・レベルを意識することが重要である。

 2.総合文主語制約(G㎝erali2ed S㎝t㎝tia1S凹bject C㎝straint)

 統合文法規則の形式(fo川)への厳密な条件がこのように与えられた今,本題の埋め込まれた 主語(embedded s凹bj㏄t)を巻きこむ統語上の現象と学習者(理想化された1a㎎凹age1eamer から現実の大学レベルの言.語習得者)の学習上の負担(b凹rd㎝)の問題に入ることが出来る。

 Chomsky(1973)の主語条件(Subject Con舳i㎝〕は文結節(S)を循環結節(cyclic node)

と徹した場合の規則の働き方に対して課せられる「有界条件」 (S凹bia㏄ncy Conditi㎝)という 一般制約から直ちに得られる帰結の一つである。即ち,次の構造113〕が与えられるとき,

    l13〕 〔言COMP 〔s…  〔N p...エ...〕 ...〕〕

YはSの外へ取り出されず,特にwト移動規則がYをCOMPの位置に移動させることは不可能とな る。 〔Np… 工… 〕が文中の主語位置にある時は,この主語の範囲内からいかなる要素も取 り出せない。移動規則に課せられた厳密循環性(Strict Cyclicity)によって原理的に阻止される のである。

    u4〕a、 〔Yo山1・interest i血止血〕soemed to me ratller strange.

      ‡

     b. Whom did 〔your interest inε〕seem to me rather str㎜ge?

       (土はWhOmのトレース)

     c・COMP〔s 〔NP stories abo皿t且㎏〕terrified Joh皿       ‡

     d. Who did stories ab㎝いterrifyJo㎞? (tはWhoのトレース)

 Ross(1967)のSSC(3.3.)はSの循環性質に関係なくS凹bja㏄ncyの一つの結果であったが,

チョムスキーの主語条件は文結節の循環性に決定的に依存する。従って次刎5〕のNPは当該Sサ イクルの領域内であれば移動可能である。 (tra㏄の逆転a皿aphomについては後述する。)

    l15〕田・/百COMP/。/。。・ト・・i・・t1〕・肥p口bli・h・d/・fBm ・b・・k〕1〕〕

    b. 〔百COMP〔s 〔of the st㎜dents in the class〕j〔Np several t{〕fai1ed         theexam〕〕

英語の主語NPが補文から移動によって取り出せないという事実は,特に補文標識(補文化辞)

一6一

(8)

との共起関係からBresnan(1976a)によって定式化された。

    l16〕固定主語制約(Fixed S皿bject C㎝straint,FSC)

     いかなるNPも隣接する(adja㏄nt)COMPを超えて移動することは出来ない。

     (ここでのCOMPは。omplem㎝tizersを代表するカテゴリー〕

      ‡

     a  Whlch one of hls cats dld Jack c1am that  had eaten        one of his birds ?

     b Whlch㎝e o^1s cats dld Jack c1出1m  had eat㎝

       one of his birds ?       *

     c.  The book tllat tlle editor asked whe出er    co皿M be reviewed        l〕y neXt m011tk WaS f^I・tOO −0ng.

     d. The book that the editor asked whether I d review        for him was very1ong.

       *

     e       または,   〔COMP   VP〕

 非有界(㎜bo…ded)変形規則の存在を主張するブレズナンはFSCを拡大して変項(variables)

と補文標識との間に認められるチョムスキーと方向の異なる制約を提出している。

    /m 変項への補文標識制約(Comple㎜entizer C㎝straint㎝V趾iob1es)

     適正分析(...X,A,Y,...)が与えられ,XとYが変項ファクターでありAが      が定項ファクターであるとき,Aが消去されるためにはX領域の右端記号列が補文標      識にかかっては(㎝din)ならない。

       ∵ 一◇㍉.

      一}=}一        X     A     Y

 筆者は11司が変形の場(domain)を循環的に規定していく有界(b㎝皿ded)文法モデルと同じ性 質を持つ制約であり,l12〕の方向がより経験的に正当化されるものであると考えている。

 「文主語」制約へのWiolati㎝がこれまでの段階で実際に学生の運用能力とどのように結びついて いるかを吟味することにするが,ここで学習者に提示する一次的言語資料(primary li㎎uiStiC date)が次の二つの機能を果すことをChomsky(1965)に従って確認しておく。

    08〕a.学習者が自然言語のどの具体言語に現実にふれるか。

     b.内的生得機構として学習者が保有している言語習得装置が有効に働き出すために,

       その資料は未規定のままであってはならず,適切で本質的な経験に支えられた組        織化された資料言語であること。

 更に学習者の運用能力をチェックする時の基本的立場として,「経験的テスト」 (empirical

      −7一

(9)

test)が従来のi皿d㎜ctive opemti㎝sでなく,文法規則の組織化が生成言語理論によって発見され た原理に密着したものであることを前提として,理論の実証可能性(feasibility)とは学習者が入 手し得る言語資料に基いて自らのg㎝eratiVe gmmmarを選択・発見し,豊かにそれを成長させ て行く過程そのものであることを確認しなければならない。学習されなければならない文法事実 は常にUGを志向していなければならないわけである。より具体的には,学習者が文法規則の制約 体系の下で自由に文を生成し,表層フィルターの別体系によるチェック方式を採用することにな

る。

    l19〕次のデータを説明せよ。

     o Max is impossible to give criticism to.

      

     b   That arg皿mellt is impossible to be wrong.

    12⑪ 学生解答実例

     a・ (19b)の文が正しいと仮定するなら(19a)の元の文型にすることができるはず        である。

        Iti・imp…ib1・t・b・w㎝gth・t苧・g㎜㎝t・

       ところがbe wr㎝gthata㎎凹m㎝tと続ける事はできない。したがってこの文は        正しくない。

      <正解〉

       That arg凹ment is impossible to be wrong witll.

 この解答は〔NpMax〕が移動する前は何らかの語い項目の目的語の位置にあることには気づい

ている。

     b. (19a)の文頭にあるMaxはgive criticism toの目的語であるので文頭に置くご        とができます。 (19b)のThat argum㎝tは目的語ではなくて主語なのでこの文        は誤りである。がしかしfOr that a㎎凹m㎝tとすれば

        For that argument,it is impossible to be wrong. とできる。

 この解答は〔Np that arg凹m㎝t〕が主語位置から移動しているというエ虫笠動のメカニズム を把握している点で注目すべきであり,更に補文標識forの知識とTopi㎝li2ati㎝が混同されてい ることも重要である。次はt㎝ψ・predicatesのクラスとそれらが生起する構造環境を意識的に学 習した解答例である。

     c.i叩。ssib1eはeasyタイプのLexi㏄nに含まれる単語であるので正解はIt is        impossible for舳at argum㎝t to be冊㎝g. でなければならない。

 ここで学習されなければならない「総合文主語制約」から引き出されるフィルターは次の②1〕で

ある。

     いm・…,(これは後に⑬①として拡大さ帆)

 Kmo(1973)の「不完全主語制約」(I㎜o㎜plete Subject Constmint)はRossの制約のいく つかをより精巧にしようとする試みの一つであり次のよう一 ノ規定される。

一8一

(10)

    賜 主語の名詞句(節)の要素は,この要素の移動によって残される成分構造が不完全       な名詞句(節)を構成するに至るならば,これを移動させることが出来ない。

     a.  〔Disc凹ssing aIlything serio凹s wit止hi㎜〕is impossible.

      

     b.  He is the kimd of man 〔w110disc凹ssing anything serioms wi{,〕

       is impossibIe.

     c. He is the kimd of man〔who I would Ilate disc㎜ssing anytlling serio㎜s witIl        f〕. (これは皿。nS凹bieCt poSition)

      NP

 この制約は,〔s舳・… 〕以外の補文が 1の配置構造を持ったままで文の中問(i皿te㎜aI)

       S

位置に分布できないというより一般的制約の特殊な場合であり,23〕のフィルターが学習上有効で

ある。

    03 Np_over_Sテスト(l1b,c参照)

      事

     a. 〔WhOthat〕

      傘

        We㎝n t think oi a皿yone who舳at two㎝d two are fo㎜r         iS uIlk皿0Wn t0.

      ■

     1〕.    〔who for〕

      ■

        We㎝n t舳ink of any㎝e who for Bi11 to t㎝der his resignation         W0皿1d SuI・pI・iSe i−l amy Way.

 このフィルターは文主語に統率される右側の領域が変形規則のかからない島(isl㎜d)を形成 するに至るという議論をも包括する効力を持ってい孔

      ■

     c.  Who do yo凹thinいhat{or Bi11to resi卯wo㎜ld s凹叩rise?

〔that for〕の連続はWh・句移動規則が適用されない場合は許されるからである。

     d.  I am畠凹re that for John to be promoted to f皿11pm{essol         wo皿1d inforiote eΨerybody.

 一般に文領域の中間位置にNP cla口seが〔S wh… 〕以外には分布できないことを上に見た が,外置(Extr叩。siti㎝)適用後の移動については(3.3)の関連で移動される要素の元の位置に 注意しなければならない。

      

    ②靱a.   How likely is 1;1,at』ohn will wi一、the election ?      1〕.  How like1y is it t11at JohIl wi11wiIl the e1ectio皿 ?      c. ??Joh11,it wo山1dn t su1・Prise{or Bi11to resign.

 Z3㎝㎝&Pinkham(1976)は話題化(Topicali2ati㎝)と文主語外置(S㎝t㎝ti81S曲i㏄t 趾trapoSiti㎝)との間に談話特徴(diSCo凹rSe「eat凹reS)同士に相容れない特性があるために

(24c)が非文法的になると考えられるとしているが,メタ・レベルの段階で外置された文主語内 の要素は変形によって取り出せないという制約がある。 再び学生の実例を検討する。

    囲 次を英訳せよ。

        誰が病気だということを君は考慮したのか。

    閉)学生解答実例

一9一

(11)

 この場合,学生は口1〕の具体的フィルターを次の形式aで意識しているから,bのような非文は全 員が避けている。

      }

     ・・ 〔th・t〔NP・〕〕

      ‡

     b・ Who did y㎝take it into c㎝sidemti㎝tha〕was ill?

      ?

     c・  Who did yo皿take into c㎝sidemtion was ill?

        ‡

  この解答。は who did yo凹take it into c㎝sidemtion was ill?より良く考えているが,

外置によるトレースを。b1iterateしている並が,外置された補文の要素によって交叉されないとい う原理を直観的に知っていると思われる正解がある。

     d. Did yo凹take it into coIlsideration who was sick ?

このデータは外置変形が空虚に(Va㎝ouS1y)にかかっている場合と区別しなければならない。

次例はCNPCのviolati㎝ではない統語現象だからである。

    肌I舳/;:1ごヅt㎞州㎞㎞㎜L

     しT、、、㎞_舳I舳/;:1ご/i、、㎞州㎞

 (26c)は「意味上の優勢」(semantic domin㎜㏄〕の問題からtake〜i皿to㏄nsidemti㎝が 舳・移動のbridge VPにならないという接近方法も可能であるが,筆者はトレース消去要素の s㎝ct㎜ry の問題に帰着させたい。ここでもまた,So・shlft等の類似の統語上の制約と共に,

COMPの構造上の特質に帰せられることになる。

 3.評価の尺度(帥aluati㎝measmre)の問題

 個別言語の持っ個々の文法規則は,それらの規貝1」が満たしている抽象的なメタ・レベルの普遍 的な形式上の特性(UG)がいわば分散した(s㎝ttered)かたちで反映しているものである。筆者 は,英語という個別言語の文法規則がUGの一部を反映し,日本語という個別言語もまたUGの一 部を反映していると考えるなら,両言語が共通にUGから直接的に引き出して来る不可欠な部分の 解明の後に残る異質な部分は「文法規則の翻訳」という学問的作業に引き継がれることになると いう展望を持っている。文法規則の適正な組織化から合理的に案出されて来る「表層フィルター」

が補文化辞の諸性質と関連させて体系化されるならば,言語の学習可能性(leamability)に関す る研究に実質的に貢献することになる。本稿のような基礎研究に於ても,学習の到達度を統計的 結論とは質的に異なる,しかし厳密に評価し得ると主張できる根拠を提供してくれる理論がこの 定式化されたフィルターの体系(の断片)である。注意しなければならないのは,チョムスキーが

「評価の手順」(1965)について戒めているように,これは文法モデル間の比較や選択の問題ではな く,単なるテクニカルな規約の問題でもなく,学習者が期待している潜在的資料の一部を成すと ころの「評価の尺度」であるという点であり,ここがトレース理論の言語学習に実質的に寄与で きる重要な接点である。

「埋め込まれた主語への制約」を統一するフィルターを定式化するためには,右方への移動によ

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る左方位置に残されるトレースも,次の有界条件の下で可能であることを確認しなければならな

い。

    口a 先行詞としての資格(ant㏄e引㎝舳。od)を与えられたNPを overmler1と呼び       トレースを oVerm−ed 要素と呼ぶとき,次の制約が得られる。

      (Fiengo,1977)

     a.統御規則(㎝ermle)がAとBに関与し,Aが先行詞でありBがトレースであるな        らば,AはBの左方に位置するか,AはBを逆統率(asy㎜㎜etri㎝uy command)

       している。       ({固参照)

     b…  .〔α… 〔NP e〕… 〕・・.〔NP X〕.

 この〔Np e〕カ泣によって消される現象が前述の鵬〕であるが,文主語の右領域の「島」の性質 に関連して,外置変形によって生じる並の機能を学生は次のように報告している。

       ‡

    鵬〕a.  Did〔th3t you fo凹md t11e tr凹t11〕surprise Bill?

     1〕.Did並s1』rprise Bill〔t11at yo凹fo凹nd the tr㎜th〕 ?

     c.ロスのSSCよりもこの制約の適用範囲は広い。

     d.並を入れる(出す)ことによって自然な英文になった。

 この〔Np e〕はトレースのままでも有効であることがChomsky(1977)によって示されている が,これらの現象を含めて,embedded subj㏄tsへの制約は次の(30.b)のフィルターによって 肥えられることになる。

    ㏄〕… b・・い…iWd〔Sth・t〔NP・〕㎜yi・t・…ty㎝〕

      (ここでfはSのトレース)

     b!  〔S±WH〔Np e〕… 〕但しSやそのトレースが〔Np NP  … 〕の        文脈(c㎝text)の中に含まれていれば良い。(ここでCOMP→±WH)

 筆者にはNP COMP fをLo8i㎝l For㎜のsyntaxに属する「極大フィルター」と徴す独立し た考察があるが,具体的な「教材」はこのような体系を学習者に意識させるように構築されなけ ればならない。      (October24.1977)

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参照

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