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古くて新らしい鎮痛薬ttaspiriガについて
村 井 繁 夫
岩手医科大学歯学部 薬理学講座 〔受付11976年9月27日〕
1899年にDreserがaspirin(acetylsalicylic acid)を創製して以来, aspirinは有効性,製造 量の多さ,知名度の高さで永年にわたり下熱鎮 痛薬の代表としての位置を占めてきた。しかし 第H次大戦後の新薬開発ブームの結果,続々と 登場してきた多数の新規鎮痛薬群にさしもの aspirinも圧倒されるかのように見えたが, JA−
MAによりaspirinは最も有効な鎮痛薬と折紙を つけられて以来,その有効性が再認識されつつ ある。最近,ワシントン大学より埋伏智歯の抜 歯のケースにおけるdouble−blind testの結果,
aspirin 650mgはcodeine 32mgより有効で,
codeine 32mgはplaceboよりすぐれていない という興味深い報告がなされた。この結果は,
aspirinが一般に与えられている評価以上のす ぐれた効果をもつことを示すとともに,歯科領 域において多くみられる炎症を付随する痙痛に 対しては抗炎症作用をあわせ持つ鎮痛薬の方が 有利であろうということを示唆している。そこ で,この古くて新しいaspirinの作用機序につ いて,最近優勢な末梢作用点説のいくつかを紹 介する。
salicylateにはaspirinを代表として, sodi廿 msalicylate, salicylamide, ethoxybenzamideな
どがあり,これらの鎮痛効果は中枢,とくに痛 覚インパルスの伝導路である視床の抑制による と考えられてきた。この考えはaspirinなどが 熱や電気刺激による痛み閾値を上昇させるが,
脊髄動物ではこの上昇が極度に低下することか ら,作用点は少なくとも脊髄より上位にあると
いう主張をよりどころにしている。しかし,こ れ以外に中枢作用点説を積極的に支持する実験 的証明はほとんどない。それに対して,最近の 研究は酸アミド類を除き,これらの鎮痛,下熱 抗炎症作用を末梢機作に求めた多くの実験成 績を報告している。そのうち,興味深い知見を いくっか紹介すると,まず第一にaspirinの作 用機序がcheInical mediatorとの関係で明確に なりつつある点である。すなわちLimら1、は内 因性発痛物質として現在最も有力なbradykinin の作用とaspirinが拮抗することを指摘してい る。純粋なbradykininは容易Vこtachyphylaxis を起しやすい性質を有するため,真のpain Ine diatorとしては認め難いという批判があるにせ よ,この成績はaspirinの作用点が純末梢で, ne rve endingにあり,痛み受容器でのインパル スの産生の抑制にあることを結論させている。
次にaspirinが炎症の発現に関係していると 考えられてきているprostaglalldinの合成酵素 を抑制するという知見がある。prostaglandinは 点眼により眼に痛みを,また動物実験において bradykinin同様にwrithingを誘発することな どから一時,何らかの疹痛誘発物質的役割を果 しているのではないかと考えられ時期もあった が,ヒトのcantharidin blister base実験で低 濃度で発痛を示さないことなどから,現在では,
bradykinin, histamineなどの直接的な発痛物 質に対するsensitizerとしての役割が示され,
炎症におけるhyperalgesiaに意義をもつとされ ている。したがって,aspirinによるprostagl・
Reentry of a classical analgesicsく゜aspirin,㌧ Shigeo MuRAI
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andin合成阻害は痛み受容器に対するprostagl・
andill sensitizing作用の阻害と考えられ,これ もまたaspirin末梢作用説を裏付ける注目すべ き知見といえよう。またaspirinの鎮痛作用は 炎症過程で遊出してくる加水分解酵素などをそ れらの貯留部位であるlysosomeに留めておく こと(lysOSOme膜安定化作用)3)あるいは局 所浮腫の抑制など,抗炎症作用が発揮された結 果,鎮痛作用が生ずるという主張もある。この 主張は抗浮腫作用の発現以前の時期にすでに痛 み閾値の上昇をみることや,抗炎症薬必ずしも 鎮痛薬ならず(その逆もまたしかり)というこ とから,aspirinの鎮痛作用の説明としては納 得しにくい点が多い。しかし,このaspirinに
よるlysosome膜安定化作用は, aspirinの下熱 作用の機序をleukocytic pyrogenを遊離する leukocyteのlysosome膜安定化によるpyrogen
の遊離阻害にあるとする考え4)を生みだし,従 来の視床下部の体温調節中枢に作用点をもつと 主張されてきたaspirinの下熱作用の作用点を もまた末梢に求めうる点で,魅力的なものであ る。一方,salicylateは副腎のascorbic acidと cholesterolを減少させ,この作用は脳下垂体摘 出により消失することから,salicylateの下垂 体一副腎系に対する刺激作用の存在が指摘され ている。このことから,aspirinの鎮痛,抗炎 症作用を副腎刺激によるsteroid hormoneの放
出ないしは分解の抑制と関係づけようという主 張もある。さらにaspirinの抗炎症作用に関し て,aspir三nのacety1基が血中proteinとの相 互作用により結合steroidをfreeのsteroidに するという意見もあるが,確立はしていない。
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以上,aspirinの鎮痛作用の末梢説にっいて 簡単に述べたが,この古典的で極めてシンプル な化学構造をもつaspirinにおいてすら,その 作用機序の複雑さと解明の遅さをみるにつけ,
続々と登場しつつある新薬のなにほどの作用が 知られた後,販売,使用されているのだろうか と思う時,心細い気持がする。なお,主要な文 献は最後に記したが,aspirinの作用を総合的
に知りたいむきは,L. S. Goodman, A. Gil−
man著,くヒthe pharmacological basis of thera・
peutics(第5版)を参考にされたい。
文 献
1)Lim, R K. S,, Guzman, F., Rodgers, D.
W.,Goto, K., Braun, C., Dickerson, G.
D.and Engle, R. J.:Site of action of na−
rcotic and non−narcotic analgesics determin−
ed by blocking bradykinin−evoked visceral
pain∋ ノ1「(ごみ. ητ. 1)ゐαプタηαε04ッη. 152:25−
58,1964
2) Vane, J. R.: Inhibition of prostaglandin
synthesis as a mechanism of action for aspirin−
like drugs
ム「αzμアε Nεω 13 oZ. 231, 232−235, 1971.
3)Miller, W. S. and Smith, Jr, J. G.:Eff−
ect of acetylsalicylic acud on lysosome. Proε.
ぷoc. Eエク. ・BゴoZ. Mε4. 122, 634−636, 1966.
4)Gander, G. W.,Brown, R. E. and Good−
ale, F.:Mechanism of the antipyretic action
of glucocorticoids. Eηゴocr∠ηoZqgツ, 82, 195−
198, 1968.